• 検索結果がありません。

高校生・大学生の経済リテラシーの分析と課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "高校生・大学生の経済リテラシーの分析と課題"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

要旨  米国で開発された Test of Economic Literacy Fourth Edition(TEL4)を翻訳・翻案し,TEL4 日本語 版を作成した。これを日本の高校生と大学生を対象に 2014 年から 2015 年にかけて実施した。これによっ て,日本の高校生・大学生の経済リテラシーの現状として,第 1 に高校生と大学生には,経済の基本的な 概念(機会費用等),起業家,公共財,GDP,金融など理解度の低い経済概念があることを指摘した。第 2 に高校生と大学生の平均得点に有意差が見られないことが判明した。経済リテラシーをより定着させる ためには,生徒・学生が自ら考え自分の言葉で説明し討論するような学習が必要である。 キーワード:経済リテラシー,Test of Economic Literacy,米国の経済教育,経済学習のスタンダード

Ⅰ.はじめに

 Test of Economic Literacy のシリーズは高校生の 経済リテラシーの水準を測定するための標準テストで ある。米国の Walstad らによって開発され,NCEE (現在のCEEの前身)及びCEE(Council for Economic Education: アメリカ経済教育協議会)によって実施さ れてきた。  その第 3 版である Test of Economic Literacy Third Edition (以下,TEL3) は,2011 年に Walstad, Rebeck, Butters によって改訂され,Test of Economic Litera-cy Fourth Edition(以下,TEL4)として米国で実施さ れ報告書が出版された。1)  そこで筆者らも,TEL4 を日本向けに翻訳・翻案し, 「第 11 回生活経済テスト:経済リテラシーテスト: TEL4 フォーム A」を作成した。本テストは日本にお いても,2014 年から 2015 年にかけて高校生・大学生 を対象に規模の大きい調査を行うことができた。高校 生は,主に高等学校において経済を学習中の状態であ り,大学生は高等学校において経済を学習済みと解釈 することができる。本研究の目的は,その結果を分析 し,日本の高校生・大学生の経済リテラシーの現状や 相違について分析し,課題を明らかにすることである。

Ⅱ.TEL4 とその意義

 TEL3 で 問 う 基 礎 的 な 理 論 や 概 念 は, い わ ゆ る Framework(Saunders & Gilliard, 1995)2)

Stan-dards(NCEE, 1997)3)の両者に準拠していた。しかし, 2010 年に後者の Standards が改訂されて(以下,スタ ンダード第 2 版4)),CEE の重点もスタンダード第 2 版 に移ったため,TEL4 はスタンダード第 2 版のみに準 拠して作成されている。  筆者らは,言うまでもなく日本独自のテスト問題を 作成する必要性も認識している。しかし,TEL4 が米 国で実施されてそのデータが揃っていること,筆者ら の 呼 び か け に よ っ て TEL4 が 欧 州, 中 国, 韓 国, ニュージーランド,オーストラリアの共同研究者に よっても実施されること,それによって国際比較分析 が可能なことなどの理由から,TEL4 を日本向けに翻 訳・翻案することに意義があると考えている。各国共 通のテスト問題を同時に実施し,その結果について国 際的な比較分析を行い,意見交換をするという点で TEL4 の意義が大きいことを強調しておきたい。  また,問題の内容についても世界に共通する経済の 基礎的な理論や概念を問うものであるので,日本語版 を作成しても,それは日本の教室でも十分使用可能で

高校生・大学生の経済リテラ

シーの分析と課題

The Journal of Economic Education No.35, September, 2016

An Analysis of Economic Literacy among High School and University Students in Japan with TEL4

Abe, Shintaro Yamaoka, Michio Asano, Tadayoshi 阿部 信太郎(城西国際大学) 山岡 道男(早稲田大学) 淺野 忠克(東京都市大学)

(2)

ある。以上のことから,引き続き,TEL4 についても 日本語版を作成し調査することとしたのである。

Ⅲ.TEL4 の設問の分類とスタンダード第

2 版

 TEL3 の設問数は 40 問であったが,TEL4 は 45 問 になっている。これは,設問が準拠するスタンダード が 20 あるため,設問数を増やさざるを得なかったた めである。TEL4 は 40 分間で実施することを想定して いる。TEL3 を実施した経験から,高校生が 40 分間に 45 の四者択一の設問に解答することは,時間的に無 理のないことが判明していたので,改訂にあたり 5 問 追加された。  スタンダード第 2 版は,経済についての教育内容が, 20 の命題で表されている(後述の資料 1 参照)。また, 各設問は認知レベルにおいて,知識,理解,応用に分 類されている。表 1 は,各設問を認知レベルとスタン ダードによって分類したものである。表 1 から,それ ぞれバランス良く作問されていることがわかる。 TEL4 が 準 拠 し て い る Voluntary National Content Standards in Economics は,そのまま訳せば,「経済 学における任意の全国共通学習内容基準」ということ になる。つまり,日本のように全国的に法的拘束力を 持つ学習指導要領を持たない米国において,「任意」 に学校で経済の教育課程を作成する場合の学習内容の 基準を提案するものである。NCEE(National Council on Economic Education)が作成し 1997 年に公表した 初版は,山岡道男,淺野忠克,栗原久,阿部信太郎が 中心になり 2000 年に翻訳が出版されている。5)  しかし,初版のスタンダードも年を経て見直しが必 要となってきた。そのため 2010 年にスタンダード第 2 版が作成・公表されることとなったのである。資料 1 は,初版の翻訳を土台にしてスタンダード第 2 版を翻 訳したものである。

Ⅳ.日本における TEL4 の結果の概要

 TEL4 日本語版「第 11 回生活経済テスト:経済リテ ラシーテスト:TEL4 フォーム A」は,2014 年から 2015 年にかけて高等学校 5 校,655 名と大学 4 校,199 名を対象に実施された。全体の概要は表 2 に示す通り である。平均正答率は,高校生 56.2%,大学生 57.1% 表 1 各設問の認知レベルおよびスタンダードによる分類(*表中の数字は設問番号を表す)  スタンダード(キーワード) 認知レベル 知識 理解 応用 1.希少性,選択,生産資源 2,3 1 2.意思決定,限界分析 4 3.経済システムと配分メカニズム 5,6 4.経済的な誘因(インセンティブ─価格,賃金,利潤等) 7 8 5.自発的な交換と取引 9,10 6.特化と比較優位 11,12 7.市場と価格 13,14 8.需要と供給 15.16.17 9.競争 20 18,19 10.経済内の制度・組織 22 21 11.貨幣とインフレーション 25 23 24 12.利子率 26,27 13.労働市場と所得 28 29 14.企業家精神 30 15.物的・人的資本投資 32 31 16.政府の経済的な役割 33 34 17.政府の失敗と特殊利益団体 35 18.産出,所得,雇用と価格水準 36,37 38,39 40 19.失業とインフレーション 41 42 20.財政政策と金融政策 44 43,45 設問数 6 14 25

出典:Walstad,WilliamB.,KenRebeckandRogerB.Butters(2013),Test of Economic Literacy: Examiner's Manual(Fourth Edition),CouncilforEconomicEducation,p.9. を翻訳。

(3)

であり,両者に有意差は見られなかった。なお,大学 生の学部学科専攻の内訳は,経済学系・社会科学系 34.7%,教育学系 30.2%,理工学・自然科学系 23.1%, その他であり,テストを受けた科目は経済学系・社会 科学系であった。  TEL4 は,米国の高校生対象に作成されていて,米 国では高校で経済を学習した生徒と未学習の生徒の結 果の相違を分析している。それによれば,学習した生 徒の得点の方が高く,経済学習の効果が現れてい る。6)日本では,高校生は公民科現代社会,政治・経 済の授業の中でテストを受けているので,高校の公民 科で経済を「学習中」と解釈することができる。一方, 大学生は,高校公民科の経済を「学習済み」と解釈す ることができる。そして結果的には,TEL4 日本語版 で測定した両者の経済リテラシーには有意差が見られ なかったこととなる。

Ⅴ.高校生と大学生の経済リテラシーの特

徴と課題

 45 の設問の個々の正答率は,高いものから低いも のまでばらつきが現れている。このことから判明した 日本の高校生と大学生の経済リテラシーの特徴と課題 を述べる。 1.機会費用:機会費用に関する設問(設問 02)の正 答率は高校生 34.7%,大学生 32.7%である(両者の正 答率に有意差無し。n.s.)。これは,機会費用という概 念を学習していない,あるいはしてこなかったことを 反映している。米国においてもOpportunity Costとい う概念は,言葉を見ただけでは理解できないようで, 経済を学んでいない生徒(without economics)の正 答率は低い。ただし,経済を学んだ生徒,すなわち経 済の科目を選択した生徒(with economics)について は,正答率が上昇していて,経済を学んだ効果が現れ ている。日本でも意識的に取り上げ,例題等を通して 考え方を身につけさせる必要がある。 2.ミクロ経済:需要と供給,価格メカニズムに関す る設問(設問 16,17,28)の正答率は,高校生,大学 生ともに高い。ミクロ経済の概念は理解しやすいもの と思われる。 3.マネーストック:マネーストックに関する設問 (設問 24)の正答率はかなり低く,高校生 18.4%,大 学生 16.6%である(両者の得点に有意差無し。n.s.)。 マクロの金融・金融政策については,生徒・学生はわ かりづらいことが現れている。 4.上記の概念のほかに,起業家(設問 30),公共財 の特質(設問 33),GDP(設問 36)に関する設問の正 答率が高校生,大学生ともに低かった(いずれにおい ても両者の正答率に有意差無し。n.s.)。  以上のことから,日本の高校生と大学生の経済リテ ラシーの課題をまとめると以下の通りである。  第 1 に,大学生は高校で経済を学習済みであり,大 学でも経済学系・社会科学系の講義を受けているのに もかかわらず,全体的に高校生と大学生の平均得点に 有意差を見ることができない。TEL4 の設問の特徴は, 知っているかどうかという「知識」の問題とともに, 説明したり知識を活用したりする「理解」「応用」の 問題が多いことである(表 1 参照)。したがってこう した結果になるのは,経済概念を使って考え答えを導 き出す学習が不十分だからと言えよう。TEL4 によっ て基本的な経済概念を学んだうえで大学の経済学系の 科目を受ければ,学生の科目内容についての理解はよ り深まるものと考えられる。  第 2 に,理解度が顕著に低い経済概念があるという ことである。例えば,機会費用については,ほとんど 学習していないか,学習したとしても定着していない のであろう。同様に,起業家についての理解度も低い。 起業家精神を重視することが,米国の経済教育の特徴 の 1 つであり,スタンダード第 2 版においても 1 つの スタンダードが起業家精神に充てられている(スタン ダード 14)。こうした設問のあるところが米国らしい が,日本でも今後,意識的に取り扱う必要があると考 えられる。さらに,比較的身近なミクロ経済に対して, マクロ経済や金融は,生徒・学生にとってわかりづら いということである。

Ⅵ.考える教材としての TEL4

 前節で述べた通り,TEL4 による調査では,日本の 高校生と大学生の平均正答率に有意差は見られず, 個々の設問の正答率においても有意差が見られたのは 45 問中 10 問のみであった。また,機会費用の正答率 が低いことを指摘したが,これは講義で定義を説明す 表 2 TE4 の結果の概要 高校生 大学生 標本数 988 199 平均正答数(45 問中) 24.59 25.71 標準偏差 7.47 6.65 標準誤差 2.99 2.97 信頼性(Coefficient α) 0.84 0.80 正答率(%) 54.64 57.13

(4)

る程度では,その考え方が定着しないことを示してい る。  一方,TEL4 の設問の多くは具体的な経済の事象を 設定して,そのことについて考えて答えを導き出すよ うになっている。そこで,TEL4 の実施後に設問を教 材として使って,生徒・学生が設問について自分の言 葉で例をあげて説明したり,討論したりすることが考 えられる。例えば下記の設問 1 を取り上げる。 1.新しい公立高校を建設することの機会費用とは, ①新しい学校の先生を雇う金銭的費用である。 ②新しい学校を今ではなく,もっと後で建設すると きにかかる費用である。 ③新しい学校にかかる費用にあてるために,市民が 納める税率を変更することである。 ④新しく学校を建設する代わりに,あきらめなけれ ばならない財・サービスの中で最高の価値のもので ある。  この設問を通して,この場合,あきらめた選択肢に はどのようなものがあるか,あきらめた選択肢を順序 付けて最高の価値のものは何かを考えさせることに よって,機会費用の考え方と,なぜこの概念が重要な のかを具体的に理解させることが可能であろう。  同じく,自分の言葉で説明する例として,関税に関 する下記の設問 35 を取り上げる。 35. 関税に関する記述で正しいのは,次のどれか。 ①関税は輸出品の市場を拡大する。 ②関税は保護産業の雇用を減らす。 ③関税はある集団に利益をもたらす一方で,他の集 団には不利益になる。 ④関税はその国で最も効率的な産業の成長を促す。  この設問に関して A 大学の学生(n = 52)に,正答 と思う選択肢を選ばせたうえ,自分の選んだ選択肢に ついて,なぜそれが正答と思うのか理由を書かせた。 そうしたところ,選択肢では正答の③を選択できた学 生のうち,理由を的確に書けた者は 41.7%であった。 なお,この場合,「関税をかけることにより国内産業 は利益を受けるが外国の産業には不利益になる」「関 税をかけることにより国内産業は利益を受けるが消費 者は不利益になる」のどちらかを書ければ正答とした が,「外国の産業には不利益になる」と書いた者が 78.0% で,国内の消費者のことに触れたり,外国の産 業と国内の消費者の両方に触れたりした者は少なかっ た。選択肢では何となく正答が選べたものの,それを 言語で説明するのは困難であることを示している。し たがって,この設問を教材にして,関税によって利益 を得る集団は何か,不利益を受ける集団は何か,その 理由は何か,など討論することによって,関税や利益 団体などの概念について具体的に理解させることが必 要であろう。

Ⅶ.おわりに

 TEL4 による今回の調査によって判明した,高校生 と大学生の経済リテラシーの現状と課題をいくつかあ げる。第 1 に,経済の基本的な概念(機会費用等), 起業家,公共財,GDP,金融など理解度の低い経済 概念があることである。第 2 に,高校生と大学生の平 均正答率に有意差が見られないことである。また,ほ とんどの概念においても同様に正答率に有意差はな かった。大学生は高等学校において経済を学習したは ずなのだが,本テストの設問が問うような内容につい ては,その学習の効果が現れていないのである。  基本的な経済の理論や概念は,経済について考え解 釈するための基本言語である。しかし,それらの習得 には,用語の定義や制度について説明するだけの講義 型授業だけでは限界があるものと思われる。今後,例 題,練習問題やアクティブラーニングのような教育方 法により,生徒・学生が自ら考える場面を授業内で 作っていくことが課題であると言えよう。  その際,TEL4 は調査のツールとしてだけでなく, 考えさせる教材としても活用することができる。 TEL4 の設問を使って,なぜそれが正答あるいは誤答 なのかを考え,自分の言葉で説明したり討論したりす ること(言語活動)によって,生徒・学生の経済リテ ラシーを更に高めることができるであろう。 〈資料 1〉スタンダード第 2 版7) 1. 生産資源は限られている。したがって,人々は自分が欲 しいすべての財・サービスを手に入れることはできない。 その結果,人々はあるものを選択したら,他はあきらめ なければならない。 2. 効率的に意思決定するには,ある選択肢の追加的費用と 追加的便益を比較する必要がある。たいての選択は,何 かを若干多くするとか,あるいは少なくするといった行 為を意味するのであり,「すべてかゼロか」という選択は, ほとんどない。 3. 財・サービスを配分するために,さまざまな方法が利用 できる。個人的に,あるいは,政府を通して集団的・集 合的に行動している人々は,さまざまな種類の財・サー ビスを配分するために使う手段を選択しなければならな い。

(5)

4. 人々が,正の誘因(報酬)と負の誘因(ペナルティ)に 対して,どのように反応するかは予想可能である。 5. 自発的な交換は,参加者すべてが利益を期待できる場合 にだけ発生する。このことは,国内の個人や組織の間で の取引についてあてはまる。また,個人や組織の国際的 な取引についても通常あてはまる。 6. 個人,地域,国家が,最も低い費用で生産できるものに 特化して,他の個人,地域,国家と取引をすると,生産 も消費も増加する。 7. 買い手と売り手が出会い互いに影響を及ぼし合うとき, そこに市場ができる。この両者の相互作用によって市場 価格が決定され,これによって希少な財とサービスが配 分される。 8. 価格は売り手と買い手にシグナルを送り,誘因(インセ ンティブ)を与える。需要や供給が変化すると,それら に応じて市場価格も動き,誘因に影響を与える。 9. 生産者の間に競争があると費用と価格は低下し,生産者 は,消費者が買う意志を持ちかつ実際に買うことのでき る製品を生産しようとする。買い手の間で競争があると 価格は上昇し,財・サービスは,それに対して他の人よ りも高い金額を支払う意志があり,かつ実際に支払うこ とができる人に配分される。 10. 制度・組織は,市場経済において個人・諸集団の目的達 成を助けるために発達する。重要な制度・組織の例とし て,銀行,労働組合,企業,法制度,非営利組織があげ られる。明確に定義され法的に施行される財産権制度も また異なる種類の制度であり,市場経済にとって不可欠 なものである。 11. 貨幣は,取引,借入れ,貯蓄,投資をより容易にすると ともに,財・サービスの価値の比較をより容易にする。 経済の中の貨幣量が全般的な価格水準に影響を与える。 インフレーションは,全般的な価格水準の上昇のことで あり,貨幣の価値を低下させる。 12. インフレ率で調整された金利は,預金額と借入額を均衡 させるように上下する。このような金利の動きによって 希少な資源を現在使用するか,それとも将来使用するか という配分の仕方に影響を及ぼす。 13. たいていの人にとって,所得は,自分が売ることのでき る生産資源の市場価値によって決定される。労働者の所 得は主に,彼らが生産したものの市場価値によって決ま る。 14. 起業家とは,新しいビジネスを始めるリスクを意図して 引き受ける人のことである。既存のビジネスと類似して いても,そこへ新しいベンチャー企業として乗り出した り,新しいイノベーションを導入したりする。起業家に よるイノベーションは,経済成長の重要な源泉となる。 15. 工場・機械・新技術に対する投資や人々の健康・教育・ 訓練に対する投資は,経済成長を促進し,将来の生活水 準を高めることができる。 16. 政府の政策による便益がその費用を上回る場合であるな ら,市場経済において政府が果たす役割がある。政府は 多くの場合,国防,環境問題への取り組み,財産権の設 定と保護,市場競争の活性化などを行う。政府の政策の 大部分は,直接的,間接的に人々の所得に影響を及ぼす。 17. 政府が政策を実施するとき,費用が便益を上回る場合が ある。これは,有権者,政府高官,公務員が直面する誘 因が原因となることがある。あるいは,一般の人々に費 用を負担させることができる特別利益団体の行動が原因 となることもある。また,経済効率よりも社会的な目標 が追求されることが原因となることもある。 18. 一国の所得,雇用,物価の全体的な水準(マクロ水準) の変動は,その経済の中のすべての家計,企業,政府機 関などが行う支出と生産の相互作用によって決まる。所 得と雇用の全体的な水準が下がると,景気後退が起こる。 19. 失業は,個人や経済全体にとって損失となる。インフレ は予期される場合も予期されない場合も,個人や国に とって損失となる。失業は景気後退期に増加し,景気回 復期に減少する。 20. 連邦政府の財政政策と連邦準備制度(FRS)の金融政策 は,雇用,産出高,物価の全体的な水準(マクロ水準) に影響を及ぼす。 註 1) Walstad, W.B., K.Rebeck, and R.B.Butters, Test of eco-nomic literacy: Examiner’s manual, 4th ed., New York: Council for Economic Education, 2013.

2) Saunders, P., and J.Gilliard, (eds.). A framework for teach-ing basic economic concepts. New York: National Council on Economic Education, 1995.

3) National Council on Economic Education (NCEE). Volun-tary national content standards in economics. New York: National Council on Economic Education, 1997.

4) Council for Economic Education (CEE). Voluntary na-tional content standards in economics. New York: Council for Economic Education, 2010. 5) 財団法人消費者教育支援センター編訳『経済学習のスタ ンダード 20: 21 世紀のアメリカ経済教育』財団法人消費 者教育支援センター,2000 年. 6) Walstad, W.B., K.Rebeck, and R.B.Butters. 2013. 上掲書, p.18。 7) Council for Economic Education (CEE). 2010. 上 掲 書, p.70 を財団法人消費者教育支援センター(2000 年)上掲 書を土台にして,筆者が翻訳したものである。

参照

関連したドキュメント

高校生 (直営&FC) 大学生 中学生 (直営&FC)..

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

 高校生の英語力到達目標は、CEFR A2レベルの割合を全国で50%にするこ とである。これに対して、2018年でCEFR

日本語で書かれた解説がほとんどないので , 専門用 語の訳出を独自に試みた ( たとえば variety を「多様クラス」と訳したり , subdirect

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

定期的に採集した小学校周辺の水生生物を観 察・分類した。これは,学習指導要領の「身近

日本の生活習慣・伝統文化に触れ,日本語の理解を深める