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高等学校における租税教育についての一考察 : 租税・財産権を基盤にした授業案構築の研究

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Ⅰ.研究の目的

1.本研究における問題の所在  高校生の租税についての認識が本研究の主たるテー マである。本研究フィールドの高校生に「私たちに とって税とは何か?」と問いかけ,自由に記述しても らったところ約 62.5%の生徒が税金を納めることは義 務であると回答している一方で約 37.5%の生徒は「わ からない,知らない」と回答した。  「税を納めるというのは国民の義務である」という 記述は間違ってはいないが,他の表現で税を表した記 述が極端に低い状況には認識の偏りを感じる。このよ うな高校生に,適切な租税教育を実践するためにかけ られる公民科の授業時数は不足していると考える。こ こに本研究が注目するべき問題が隠されていると考え る。 2.問題が生じた要因  本稿ではこの問題が生じる理由として,租税そのも のの本質を学校で学ぶ機会が極端に少ないところに原 因があると考えている。そこでこの問題を解消するた めの 2 つの道を提案したい。一つ目は,小中学校での 租税教育の機会の充実であり,もう一方は高校での租 税教育の充実である。本研究は高校を研究対象にして いることから,第 2 番目の道を中心に考察を進めるこ とにする。もともと「租税教育は本来学校教育の正規 の課程で,教科書を用いた適切な授業が行われること が前提であるが,受験科目に入っていないこともあり, 必要な授業時数が確保されていないのが現状で,カリ キュラムの一層の充実が求められている」1)という課 題が指摘されていたところでもある。この指摘をその まま受け入れて租税に関する授業時数を増やすという ことは他の単元を削るということにもつながる。それ はそれで別の問題が生じてしまう。本研究では,他の 単元を減らすことなく租税に関する授業数を拡大する という具体的な手立てを提案してみたい。 3.研究の目的  そこであらためて研究の目的であるが,限られた授 業時数の中で充実した租税教育をする手立てにはどの ようなものがあるのかを明らかにすることを追究する と定めることにする。

Ⅱ.研究の方法 

1.研究の方法  問題解決の方法として,本研究では公民科ではなく 地歴科の授業,特に「世界史 A」の授業に注目する。  具体的には,「世界史 A」において「租税と財産権」 に関する発問を継続して発信し続けるという方法を採 用した。通常「世界史 A」の授業では租税の仕組みや 財産権そのものについての学習を本時の目標にするこ とはあまりない。本稿では,あえて歴史の学習を進め ながら公民科の学習内容を含んだ発問を継続していっ た。その結果,高校生の租税に関する学びがどのよう に変容するのかを分析することにした。  研究フィールドは,33 名の高校生である。高校で 初めて歴史的分野を学習する集団で,次年度に公民科 「現代社会」の履修を予定している。「世界史 A」での 検証授業において生徒が記述した内容を分析するとい う手法を採用した。また,授業を展開する中で多くの 表 1 検証前の税金の意味に関する認識状況 検証前の税金の意味に関する認識状況 納税は義務である その他の回答 その他の回答の例 62.5% 37.5% 記述なし。知らない。義務教育だけ が義務である。

高等学校における租税教育に

ついての一考察

─租税・財産権を基盤にした授業案構築の

研究─

The Journal of Economic Education No.34, September, 2015

Teaching Tax at High School: A Study on Course Design Based on Taxation System and Property Rights

Kaneko, Mikio

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先行研究の分析も同時に行った。 2.本研究の結論  本研究の結論を先取りしてまとめると次のようにな る。結論の第 1 は,歴史の学習を進める中で継続して 公民科の学習内容である「租税」や「財産権」に関す る発問を取り入れることで高校生の租税についての見 方が多様化していくということである。結論の第 2 は, 同様に歴史の学習中に公民科の要素を混ぜ合わせるこ とで,よりよい社会を形成するためには,自ら積極的 に税を払うという生徒が急増したということがあげら れる。結論の第 3 は,本実践を 1 年間継続した結果, 租税に関して否定的な態度をとる生徒が約 1 割にまで 減少したということがあげられる。

Ⅲ.研究の経過

1.授業実践の枠組み作成  現在行われている高校における社会科系授業の典型 的なモデルは図 1 左のようなものである。大きな単元 のもと設定された様々な単元を毎時間復習からはじめ て本時,次の時間の予告とつないでいく形式である。  一方で,本研究では図 1 右のようなスタイルを採用 する。つまり,「地理」,「世界史」,「日本史」「現代社 会」,「政治・経済」,「倫理」といった社会科系科目に 共通する用語や概念を選び,複数の科目にまたがって 意識的に発問等で取り上げ,世の中を歴史的及び社会 的に見る力を育てるという授業方法である。  本研究では「世界史 A」の授業に社会科系科目共通 の「租税」と「財産権」を積極的に取り上げて授業を 進める。この検証授業の後に履修をはじめる「現代社 会」でも同様の用語を用いて,1 つの社会を多角的に 見ることができる力を育てるのである。これを図でイ メージ化したものが次ページの図 2 である。 2.先行研究 (ア)社会科授業研究の視点  本研究に関連の深い先行研究を 4 つの枠組みに整理 した。その中の第一番目の枠組みが社会科授業研究の 視点からの先行研究である。  まずはじめに歴史系の科目と公民科系の科目を編み 込んだ授業を企画した研究として「中学校社会科(第 3 学年)において歴史的分野と公民的分野を融合した 特設単元(歴史・公民融合単元)『私にとっての現代』 の開発・実践」の研究がある。研究成果として「現代 という時代は,過去,そして未来ともつながっている (切り離しえない)との気付きが生まれていることが 確認でき」たことをあげている。2)  同様に中学校の先行研究で広島大学付属福山中・高 等学校における「日本史教育における世界史的視野に 関する基礎的研究」がある。この研究では「複雑な現 代社会の諸問題を多角的に鋭くとらえる能力を育成す る際に必要となる比較・グローバルな視点」として 「世界史的視野」が必要であるとしている。3)  東洋英和女学院中等部の研究では,大正デモクラ シーを学習する際に「近代と現代の政治や法律のしく みを比較・検討する形で,歴史的分野と公民的分野の 内容の接続を試みる必要があろう」4)と指摘している。  中学校日本史教育の分野でファシズムをどのように 教えるかを追究した「『公民学習』の場面を取り入れ た『歴史学習の試み』」では「戦時体制を扱う中学 2 年 あるいは 3 年生初期の段階では公民的分野の学習を前 提 に で き な い。 従って,本 授 業で は公民的分野の政 党に関する学習を 先 取りする形 で, 公民の教科書も参 考 にさせ な がら, 歴史・公民の総 合 領域の学習として 構想し,実践した」 5)成果をまとめてい る。 (イ)租税教育の学 図 1 典型的な社会系科目の授業モデル例 【社会系科目「A」の授業モデル】 大単元 単元 前時の復習→本時の目標 単元 前時の復習→本時の目標 単元 前時の復習→本時の目標 単元 前時の復習→本時の目標 【「世界史 A」の授業モデル】 大単元 単元 ☆前時の復習→本時の目標 租税に関する発問をする 財産権に関する発問をする 単元 ☆前時の復習→本時の目標 租税に関する発問をする 財産権に関する発問をする 単元 ☆前時の復習→本時の目標 租税に関する発問をする 財産権に関する発問をする 単元 ☆前時の復習→本時の目標 租税に関する発問をする 財産権に関する発問をする

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術的視点  税教育に関する学術論文として「イギリスの学校に おける税教育についての一考察」があげられる(山 根:2013)。イギリスのシティズンシップ教育の中で どのような税教育が行われているのかという視点で教 科書分析が行われている。そこでは「税の分類(直接 税と間接税およびその中の税の種類),税の使い道に ついての記述は簡潔になされている。しかしながら, 税に関する具体的なデータは少なく,記述されている ページ数も全ての教科書が 2 ページと少ない。国の財 政が赤字であることの説明もなされていない(英国・ UK の累積赤字は,日本ほどではないが,2010 年で GDP の 60 パーセントである)。シティズンシップ教育 における税教育の重要さを考えると,教科書における その取り扱いは軽過すぎると言わざるを得ない。」6) いう学校現場において租税を題材にして授業を進める 際の道標となる指摘がなされている。イギリスの 4 名 の経済教育学者に行ったインタビューの結果では「イ ギリスにおいては,シティズンシップにおいてさえ, 税のことをあまり教えられていないという認識につい ては,4 氏とも共通」している一方で「生徒が税金に ついて学ぶことが重要であると考えて」おり,「生徒 に教えるべき税教育の内容については控えめであ る」7)ということが明らかにされている。  大学生の租税観を検討した「租税教育の今日的意義 と課題」(真島:2014)では,社会科の授業づくりを 研究している大学生が感じる税意識の意義の大きさを 背景に先行研究を分析し,「あなたは税を納める時に 抵抗感を感じますか」というアンケートを実施分析し ている。8)大学生対象の研究ではあるが,その多くは 未来の教師となるであろうグループであり,教える側 の意識を調査した重要な研究であると考える。  「消費者教育としての税教育について」の研究では, 大学の授業である「家庭経済学」受講の学生を対象に した意識調査がまとめられている。学生の意識は「税 に対して,マイナスイメージが強く国民として経済負 担のありかたを前向きに考える姿勢に欠けるといえよ う」9)と分析しており,高校の公民科教科書を分析し 「国民(消費者)の立場から税を考えるためには,家 計の立場から考えることが必要であると思われるが, 社会科の教科書の殆どが財政の立場からのみ,税を取 り上げている。また,税について,“考えさせる”内 容のものは,わずかで,ほとんどが,税について,通 り一遍の知識の羅列といった印象が強かった」10)とし ている。 (ウ)やさしい租税教育の視点  税理士会「やさしい税金教室【平成 26 年度版】」で は,はじめに納めるところの違いにより税金を区別し, その次に所得税・贈与税・相続税・消費税・地方税と いう順番で説明している。11)  日本税理士会連合会作成のパワーポイント教材「税 理士による高校生のための租税教室」では,「政府は 法令を設けて悪人を取り締まり,善人を保護する。し かし,それを行うには多くの費用が必要になるが,政 府自体にそのお金がないので,税金としてみんなに負 図 2 社会系科目全体を意識した授業モデル例 【「世界史 A」の授業モデル】 大単元 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 【「世界史 A」の授業モデル】 大単元 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 【「世界史 A」の授業モデル】 大単元 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる 単元 ☆前時の復習→本時の目標 授業中に社会系科目に共通 する用語にふれる

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担してもらう。これは政府と国民の双方が一致した約 束である」12)と税金の仕組みを伝えることに加えて歴 史的視点からも税の必要性を説いている点でわかりや すい教材になっている。  国税庁が作成した「私たちの生活と財政の役割」は 高校生に伝えたいメッセージとして「税は公共サービ スの対価」であれということ「自らの代表が,国の支 出の在り方を決めることと,自らが国を支える税金を 負担しなければならないことは表裏一体」であること, 「税の使い道を監視する(関心を持つ)ことも納税者 として重要」だということがあげられている。13) (エ)租税思想の視点  租税思想史としてはじめにあげるのは島恭彦『財政 思想史』(島:1982)である。「契約によって国家権力 を創立し,これに服従する人民の目的は,先ず自己の 自然権=財産権を一そう安全に保持する事にあった。 それ故にもし所有権が存在しなければ,国家権力に対 する服従義務も存しない。」,「権力の行使には莫大な 費用がかかるのであるが,この公共費を負担する義務 のあるものは公権力の行使によって利益をうける財産 権所有者でなければならない」14)という内容は本研究 における指導案作成の軸になるものである。  その上で「主権者または国家の必要な経費とは何か。 この経費のうち,どれを社会全体の一般的な拠出に よってまかなうべきか。また,この経費のうち,どれ をその社会のある特定部分だけの,すなわち,ある特 定の成員の拠出によってまかなうべきか」,「全社会が 負うべき経費をまかなうために,全社会に納税させる 方法にはどのようなものがあるか」,「ほとんどすべて の近代政府が,この収入の一部を抵当に入れたり,あ るいは債務を負うようになってしまった理由と原因は 何か」15)という問題を教師と生徒が共有できる授業を つくりあげていきたい。  中学校卒業時点での高校生が持ち得ている知識は 「税を納めることは国民の義務である」ということで ある。このような生徒にどのような教材を提供するべ きかについて多大なる影響を与えてくれた先行研究に 『私たちはなぜ税金を納めるのか』(諸富:2013)をあ げたい。「『生命と財産の保護』は,上から恩恵として 与えられるものではなく,自ら勝ち取ったものなので ある」,「必要な経費を市民は自発的に拠出するの だ」16)という視点を教材観として教師が持つことの意 義は大きいと考える。  税を納める人々の心にアプローチした『租税抵抗の 財政学』(佐藤,古市:2014)では,どうして日本で は痛税感が強いのかという問題意識のもとで様々な分 析が行われている。現在の高校生がやがて社会人に なった時に , この痛税感の輪に加わるのであろうか。 それともよりよい社会の形成を積極的に意識して租税 に関して別の意識を持つようになるのか。この研究で は「日本の租税負担率はきわめて低いにもかかわらず, 『税負担が重い』と回答したものの割合は(略),国際 的に高位にある」17)と指摘している。「政府が,財政 が『人のためにある』という説明と実践を放棄し,租 税抵抗を避けるために安易に債務や受益者負担に依存 したことが,この国を際限ない財政再建の泥沼におし やり,人々を生活困窮に陥れている」18)と指摘してい る。「自分の意思による支払いではないということ, 自分に利益が帰着しないかもしれないということ,租 税のこの特徴が国家嫌悪や租税抵抗を引きおこす原因 になる」19)と述べた上で「税制を立て直す際に必要な ことは,近代税制が生まれた起源へと立ち戻ることで ある」20)という結論に至っている。本検証授業は社会 科系科目全般にわたる基盤の必要性を主張している が , 公民科における租税教育を充実させるための世界 史教育の意義を認識させる研究である。 3.授業展開の概略  「世界史 A」の前半部分では , 租税や財産権は学習内 容の前面にはあまり出てこない。そこをあえて租税や 財産権について授業中に頻繁に触れることで高校生の 学びを揺さぶろうとしているのが本研究で検証した授 業展開の特徴である。実際に教科書で太文字表記され ている用語も表 2 のようになっている。  読者である高校生はこの表記を見て何を受け止める のであろうか。権力者や宗教の存在を認識することは すぐに想像できる。しかし , 支配されている多数の 人々の生活を意識することは少ないであろう。  そこで「世界史 A」の教科書にはほとんど登場しな い支配されている人々を意識させる発問を織り交ぜた 単元の展開をしたらどうなるであろうか。表 3 は「世 界史 A」の年度初めの学習内容を示している。主とし て様々な地域の権力者を中心として学習は展開される。  そこで従来行われている支配されている人々を意識 させる試みをもう一歩強く踏み込んで各地域の時代ご とに「租税及び財産権」を意識させる発問を行った。  「世界史 A」で経済学習の内容を積極的に取り入れ ることで生徒の社会認識はどのように変化するのか。

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4.検証授業の途中経過  検証授業が約 3 ヶ月経過した頃に生徒に「私たちに とって税とは何か?」という問いを発して自由記述を 行った。多岐に及ぶ記述内容から共通する事項をあぶ り出した結果が次の表 4 である。  注目するべき点は「我々がよりよい社会を創り上げ るためには租税が必要だ」ということを認識するよう になった生徒が多数出現したことである。また第二点 目に「国王復活拒否型」という記述内容をあぶり出し た。世界史を学習していく中で,市民革命前の学習で は「農民に対する重税」や「過酷な労働」が反乱原因 となって権力者がその座を追われるというパターンが 度重なり出てくる。この時点では,高校生にとって租 税は悪者として心に写るのであろう。一方で生徒達の 多くは租税はよりよい社会を創るために必要だと考え ている。少しずつではあるが次年度の「現代社会」を 履修する準備が整いつつあることを認識できる。 5.市民革命の学習  表3の「単元の展開」のパターンは,やがて市民革命 にまでたどりつき,教科書の前面には登場しない人々 が,知らないうちに生徒の心の中で重要な登場人物と して定着していった。表 5 は「イギリスの革命」と「ア メリカ独立革命」の学習時の単元で行った発問である。 表 2 世界史 A における重要語句の例 各単元における重要語句の例 主たる学習内容 重要語句 諸 地 域 世 界 の 特 質 1 【東アジア世界】 ・東アジアの風土 ・中国文明の特質 ・東アジア世界の形成 「殷」,「周」,「春秋・戦国時代」,「諸子百家」,「秦」,「皇帝」,「始皇帝」, 「漢」,「高句麗」,「新羅」,「百済」,「邪馬台国」,「ヤマト政権」,「隋」,「大 運河」,「唐」,「宋」,「科挙」,「高麗王朝」 2 【南アジア・東南アジア世界】 ・南アジアの風土と人々 ・古代インド文明 ・東南アジア文明の形成 「インダス文明」,「カースト制度」,「バラモン教」,「仏教」,「ガウタマ=シ ッダールタ」,「マウリヤ朝」,「アショーカ王」,「クシャーナ朝」,「カニシカ 王」,「グプタ朝」,「ヒンドゥー教」 3 【西アジア世界】 ・西アジアの風土 ・古代オリエント文明 ・イスラーム世界の形成 「シュメール人」,「アッシリア」,「アケメネス朝」,「ヤハウェ」,「ユダヤ教」, 「キリスト教」,「ムハンマド」,「イスラーム教」,「ヒジュラ」,「カリフ」 表 3 単元の展開 単元の展開 教師の発問または指示 生徒の反応予測 指導にあたっての留意点 諸 地 域 世 界 の 特 質 1 【東アジア世界】 ・秦の時代に皇帝を頂点とする官 僚政治体制がつくられました。と ころで始皇帝は生活費をどうやっ て集めていたのでしょうか? ・農民が負担していた。 ・諸外国から力で奪い取った。 ・教科書は当時の権力者を中心に 描いており,支配されている大勢 の人々の視点から世の中を見るこ ともできるということに気付かせ る。 2 【南アジア・東南アジア世界】 ・カニシカ王の金貨が教科書に掲 載されていますが,クシャーナ朝 に税金はあったのでしょうか? ・「あった」または「ない」。 ・仏教と関係があるのかもしれな い。 ・中央アジアに進出して支配した 地域から集める。 ・ 教科書には登場しないたくさんの 人々が存在していたことをあらた めて意識させる。 3 【西アジア世界】 ・ギザのピラミッドの写真が教科 書にありますが,このピラミッド を造った労働者の費用はどのよう にして誰が負担したのでしょう か? ・奴隷に仕事をさせていた。だか ら給料はいらない。しかし,生活 費は面倒見ないといけないなぁ? ・日本の年貢のようなものがあっ たのかなぁ? ・農民は自分の財産をどのように  して守っていたのだろうか?守る だけの財産があったのだろうか? 守れなかったとしたら人々はどの ような行動をとるのだろうか?と いった発問で生徒の想像を揺さぶ りながら当時の歴史を学習するよ うに心掛ける。

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6.大きな政府と小さな政府  本実践を始めて約 10 ヶ月後に「私たちは大きな政 府と小さな政府のどちらを目指すべきだと考えます か?」という質問をして自由に記述させた。  結果は ,「大きな政府」を望んでいる生徒が約 44%, 「小さな政府」を支持している生徒が約 31%,「未記 入」が約 25%であった(図 3)。もっとも多かった 「大きな政府」を支持する理由として「税金は高くて もよい。その分政府の政策が充実している方がよい社 会である」というものであった。約 44%の生徒が税 金を積極的に納めるべきだと主張していることに注目 したい。 7.租税という言葉から連想されるものは  1 年間の授業を終えるにあたって租税のイメージを 調査した。調査方法は『日本人の財政意識』(藤巻: 2012)の中で紹介されている平井源治氏が実施したア ンケート調査をもとにして作成した調査用紙を配布し て実施した。具体的には,「『税金』という言葉から連 想するイメージに関する質問について,回答選択肢と して会費,罰金,寄付,没収,献金及び料金という 6 単語を用意」21)し,この中から優先順位をつけて 2 つ の用語を選ばせた。この 6 つの単語は 2 個ずつ 3 つの グループに分けて分析することができる。「寄付 , 献金 は肯定的態度,会費,料金は中立的態度,罰金,没収 は否定的態度」22)を表している。分析結果は次の通り 表 4 税金の意味に関する認識調査 税金の意味に関する認識状況 類 型 人 数 主な記述内容 よりよい社会建設型 10 税を納めるのはよりよい社会を創るため 国民の義務型 5 税金を納めるのは国民の義務である 所得再分配型 2 税があるおかげで貧富の差が縮小する 自分の利益型 2 払った税金で結局は自分が得をする 会費型 2 税金はサークルの会費のようなものだ 政治参加型 1 税金を払うことで政治に参加することができる 税金=消費税型 1 税金というのはモノを買うときに払うものである 国王復活拒否型 4 王政の復活は困る。そのためには費用が必要。 財政赤字解消型 1 日本の借金を返済するために税がある 表 5 単元の展開 単元の展開 教師の発問または指示 生徒の反応予測 指導にあたっての留意点 1 【イギリスの革命】 ・17世紀前半のイギリ スでは国王が王権神授説 をとり,新税を課して厳 密な国教会の宗教政策を とったので史上初の革命 が進行したとテキストに は書いてありますが,な ぜこのことが革命につな がっていったのでしょう か? ・宗教政策があまりにも 厳密であったことが影響 しているのかな? ・新しい税をとるにあた って,話し合いはあった のかな? ・だれかが富を独占しち ゃったんじゃないかな? ・国王と議会との関係を 発問を通して理解させる ように留意する。 ・様々な生徒の反応をつ なぎ合わせながら教科書 の記述を理解させる。 2 【アメリカ独立革命】 テキストに出てくる「代 表なくして課税なし」と はどういう意味なのでし ょうか? ・ どこの誰が代表になっ てどこで発言できるのか を整頓したい。 ・テキストにあるボスト ン茶会事件の絵と関係が あるのかな? ・ 重商主義政策,植民地 の貿易を抑えるというの はどういうことをいみす るのかを発問をつなぎ合 わせながら生徒と共に考 える雰囲気をつくるよう 留意する。

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である(表 6)。  この結果から 2 つのことが指摘できる。第 1 は,本 検証授業開始時には税金のイメージは「国民の義務」 かまたは「わからない」という 2 つのグループに分け られていたのは指摘したとおりである。この集団を対 象に「世界史 A」の授業で各時代の人々の「租税及び 財産権」に関する発問を繰り返し行った結果,生徒の 税金に対するイメージは肯定的態度が約 3 割を占め , 否定的態度が約 1 割という数値に変容したということ である。先行研究でも税金は納めるではなく「とられ る」23)と表現している大学生の存在が指摘されていた。 高校生の社会科教育の在り方にわずかながらの光が見 えてきたことが認識できる。  第 2 の指摘は , 平井氏の研究である「千葉県浦安市 , 福岡県久留米市 , 及び岩手県東和町の 3 地域の住民を 対象として財政意識に関して実施したアンケート調査 の結果」24)(表 7 左)と,本研究フィールド内の高校 生の示した数値(表 7 右)とが異なるということであ る。税金を肯定的に受け止める高校生の数値の高さ及 び否定的に受け止めている高校生の数値の低さを認識 ができる。

Ⅳ.研究の成果

1.生徒の変容  本研究全体を通しての生徒の変容をまとめたものが 図 4 である。全体を概観すると , 第 1 に生徒の税に関 するとらえ方が多様化していることがわかる。第 2 に , 租税に関する抵抗が減少していることを読み取っ た。第 3 に , 市民の感覚とも比較すると税金のイメー ジを否定的に捉えている数が高校生の方が低い傾向に あることを認識した。 2.本研究で明らかになったこと  貴重な先行研究の中から本研究で明らかになったさ さやかな点をまとめると次のようになる。第 1 に , 公 民科で租税について学習する前に「世界史 A」の授業 の組み立て方を変えることで税に関する認識の基盤が 形成されつつあるということがあげられる。第 2 とし て公民科で租税を学ぶ授業時間数が不足しているとい う課題解消に向けての手立てとなるべき材料を提供で きたのではないかと考える。第 3 に , 租税抵抗の減少 傾向と租税に関するとらえ方の多様化をあげることが できる。 表 6 税金のイメージ(%) 肯定的態度 33.7 中立的態度 54.1 否定的態度 12.3 会費 28.6 料金 25.5 寄付 20.4 献金 13.3 没収 9.2 罰金 3.1 肯定的態度 13.2 中立的態度 56.4 否定的態度 30.3 肯定的態度 33.7 中立的態度 54.1 否定的態度 12.3 表 7 税金のイメージの比較(%) 図 3 生徒が希望する政府の規模 未記入 25% 小さな政府 31% 大きな政府 44% 大きな政府と小さな政府(%) 図 4 本研究における生徒の変容全体像 肯定的態度 33.7 中立的態度 54.1 否定的態度 12.3 納税は国民の義務 租税の意味が不明 類型 人数 よりよい社会建設型 10 国民の義務型 5 所得再分配型 2 自分の利益型 2 会費型 2 政治参加型 1 税金=消費税型 1 国王復活拒否型 4 財務赤字解消型 1 未記入 25% 小さな政府 31% 大きな政府44% 大きな政府と小さな政府(%)

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Ⅴ.おわりに

 本研究では,限られた授業時間の中でも社会科系科 目の授業内容の一部を再構築することで十分に租税に 関する学びができるのではないかということを検討し てきた。この学びは,今日の社会を歴史的・社会的に 大きく捉え直す重要な機会を高校生に提供することに もつながると考える。多くのご教示をいただくことが できれば幸いである。以上で本稿を閉じる。 註 1) 東京税理士会「租税教育のための実施手引き」平成 22 年, p.4 2) 大嶋正克,熊田禎介「中学校社会科における歴史・公民 融合単元の開発とその意義─特設単元「私にとっての現 代」の実践を通して─」『宇都宮大学教育学部教育実践総 合センター紀要』第 37 号,2014 年,p.65 3) 大江和彦「日本史教育における世界史的視野に関する基 礎的研究」『広島大学附属福山中・高等学校中等教育研究 紀要』第 34 号,1994 年,pp.15-19 4) 坪井龍太,水谷悟「中学校社会科教育における歴史的分 野と公民的分野の接続に関する授業検証研究─「大正デモ クラシー」を事例にして─」『東洋英和大学院紀要』第 9 号,2013 年,pp.43-62 5) 奥山研司「『公民学習』 の場面を取り入れた『歴史学習の 試み』 ─“ 日本の戦時体制・ファシズム ” をいかに教える か─」全国社会科教育学会『社会科教育論叢』第 45 集, 2006 年,pp.71-75 6) 山根栄次「イギリスの学校における税教育についての一 考察」『三重大学教育学部紀要第 64 巻教育科学』2013 年,  p.254 7) 山根前掲書,p.260 8) 真島聖子「租税教育の今日的意義と課題─なぜ税は “ とら れる ” のか?─」『日本社会科教育学会全国大会発表論文 集第 10 号第 64 全国研究大会』2014 年,pp.230-231 9) 渡辺純子「消費者教育としての税教育について」『東京家 政大学研究紀要第 31 集(1)』p.82 10) 渡辺前掲書,p.85 11) 税理士会「やさしい税金教室【平成 26 年度版】」日本税 理士連合会 12) 日本税理士会連合会「税理士による高校生のための租税 教室」平成 26 年パワーポイントスライドより 13) 国税庁「私たちの生活と財政の役割」パワーポイントス ライドより 14) 島 恭彦『財政思想史 島恭彦著作集 1』有斐閣,1982 年, pp.136-137 15) 池上惇『財政思想史』有斐閣,1999 年,pp.14-15 16) 諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思 想史』新潮社,2013,p.26 17) 佐藤滋古市将人『租税抵抗の財政学─信頼と合意に基づ く社会』岩波書店,2014 年,p.4 18) 佐藤前掲書,p.34 19) 佐藤前掲書,p.39 20) 佐藤前掲書,p.41 21) 藤巻一男『日本人の納税者意識』税務経理協会,2012 年, p.22 22) 藤巻前掲書,p.22 23) 真島前掲書 24) 藤巻前掲書,p.22

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 そして,我が国の通説は,租税回避を上記 のとおり定義した上で,租税回避がなされた

 アメリカの FATCA の制度を受けてヨーロッパ5ヵ国が,その対応につ いてアメリカと合意したことを契機として, OECD

夫婦間のこれらの関係の破綻状態とに比例したかたちで分担額

それを要約すれば,①所得税は直接税の中心にして,地租・営業税は其の

のニーズを伝え、そんなにたぶんこうしてほしいねんみたいな話しを具体的にしてるわけではない し、まぁそのあとは