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ダイズ・アズキ不耕起播種栽培におけるモリブデン付加播種が出芽と生育・収量に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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2017 年 4 月 11 日受理 連絡責任者:來田康男(Yasuo_Koroda@pref.hyogo.lg.jp)

ダイズ・アズキ不耕起播種栽培におけるモリブデン付加播種が出芽と

生育・収量に及ぼす影響

來田康男・榎 悦朗・澤田富雄

兵庫県立農林水産技術総合センター農業技術センター農産園芸部(〒 679-0198 兵庫県加西市別府町南ノ岡甲 1533) 要旨:豆類は湿害に弱いだけでなく,播種期が梅雨と重なるため,速やかな出芽・苗立ちの確保が重要となる. 今回,著者らは豆類のダイズ,アズキ種子へのモリブデン(以下,Mo)付加が,ほ場での出芽や収量に及ぼす影 響を検討した.その結果,過湿条件下においても種子への Mo 付加により出芽が促進され,それが収量の確保に 反映されていた. キーワード:アズキ,収量,出芽率,ダイズ,モリブデン付加 ダイズ,アズキは播種期が梅雨と重なり,湿害に弱いた め,速やかな出芽・苗立ちの確保が重要となる.水稲種子, ダイズ種子への Mo 付加処理により湛水処理時の苗立ちが 安定することが報告されているが(原・田坂 2010,原 2011),ダイズ種子では容器による出芽試験の事例であり, 生育・収量の確認には至っていない.そこで本研究ではダ イズの不耕起栽培ほ場で播種後の飽水処理により過湿状態 を発生させて,出芽及び生育・収量に及ぼす影響を調べた. また,播種時に用いられる殺菌殺虫剤(チアメトキサム・ フルジオキソニル・メタラキシル M 水和剤)と Mo の併 用処理の効果も検討し,さらに,アズキにおける本処理の 効果も併せて検討した.若干の知見を得たので報告する.

材料及び方法

兵庫県立農林水産技術総合センター(兵庫県加西市別府 町)場内ほ場で,2014 年はダイズ品種「サチユタカ」, 2015 年はアズキ品種「兵庫大納言」を用いて試験を実施 した.播種時処理として,Mo 処理(Mo 単用区),薬剤処 理(薬剤単用区),Mo+ 薬剤処理(併用区),無処理(無 処理区)の 4 区を設定した.Mo 処理は原(2011)の方法 を参考に,種子 1 kg 当たりに三酸化モリブデン(MoO3) 14.4g,ポリビニルアルコール(PVA)0.144g,水 21.82g を混和して,種子にまぶし,混ぜた後,風乾した.薬剤処 理は,殺菌殺虫剤であるチアメトキサム・フルジオキソニ ル・メタラキシル M 水和剤を種子 1 kg 当たり 8 mL 塗沫 して風乾した.Mo+ 薬剤処理は,種子 1 kg 当たりに上記 の 2 処理を同時処理した.播種については,2014 年は 7 月 1 日,2015 年は 8 月 3 日に 6 kg/10a を不耕起播種した . 播 種方法は播種前にグリホサートカリウム塩(48%)液剤を 薬量 500 mL/10a,希釈水量 100 L/10a で散布し,既成雑草 を枯殺後,播種機(M 社製:MJSE18-6,6 条播)で播種 した.播種密度の株間はダイズ 15 cm,アズキ 18 cm,条 間は 30 cm,播種深度は 2 ∼ 3 cm とした.過湿条件での 出芽への影響を見るために,ダイズでは飽水処理ほ場に加 えて飽水無処理ほ場を設けたが,アズキでは飽水処理ほ場 のみとした.飽水処理ほ場では,播種後に灌水して 3 時間 程度飽水状態とし,その後速やかに排水した.なお,試験 ほ場は,土壌全窒素は 0.15% ∼ 0.18% と肥沃度が中庸で, 排水性にも大きな差異は見られない 3 ほ場を選定し,各ほ 場でダイズの飽水処理,ダイズの飽水無処理,アズキの飽 水処理を実施した.試験規模は 1 区 200m2 で,ダイズで は 4 反復,アズキでは 3 反復とした.調査項目は出芽率, 主茎長,主茎節数,莢数,分枝数,子実重,百粒重とした. 出芽率は播種後 14 日目に 1 プロット 6 条の生育中庸な 1 条 2 m 間の出芽数を調査し,ダイズでは子葉展開,アズキ では初生葉抽出をもって出芽として計数した.その他の調 査項目は,出芽調査を実施した 1 条 2 m 間の個体を採取し て個別調査し,莢数,子実重については個体の値と栽植密 度を基に,m2 当たりもしくは 10 a 当たりに換算した.

結果及び考察

Ⅰ ダイズへの効果 各区におけるダイズの出芽,生育,収量を第 1 表に示し た.出芽率は,飽水処理により出芽率が低下したが . 飽水 処理ほ場,飽水無処理ほ場とも,種子無処理区に比べて Mo 単用区が有意に高い値を示した.一方,薬剤処理区, 併用処理区も出芽率が高く,各処理区間では有意差が認め られなかった.すなわち,Mo 処理による出芽率の向上効 果は,薬剤処理と同等で,両者の併用による相乗効果は確 認できなかった. 7 作物研究 62: 7 − 9 (2017)

Copyright 近畿作物・育種研究会 (The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan)

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第 1 表  Mo 及び殺菌剤がダイズの出芽・生育・収量 に及ぼす影響    㣬Ỉ ฎ⌮ 䛾᭷↓ ✀Ꮚ ฎ⌮ ฟⱆ ⋡ 㻔㻑䠅 ୺ⱼ 㛗 㻔㼏㼙䠅 ୺ⱼ ⠇ᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 ศᯞ ᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 Ⳓᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 Ⳓᩘ 㻔ಶ㻛䟝䠅 Ꮚᐇ 㔜 㻔㼓㻛ᰴ䠅 Ꮚᐇ 㔜 㻔㼗㼓㻛㻝㻜㼍䠅 ྠᕥ↓ ฎ⌮ẚ 㻔㻑䠅 ⓒ⢏ 㔜 㻔㼓䠅 ↓ฎ⌮༊ 㻣㻞㼍 㻢㻟㼍㼎 㻝㻟㻚㻟㼍 㻝㻚㻞㼍 㻟㻞㼍 㻣㻜㻥㼍 㻝㻝㻚㻟㻌㻌㼍 㻞㻢㻣㻌㻌㼍 㻝㻜㻜 㻟㻡㻚㻜㻌㼍 㻹㼛༢⏝༊ 㻤㻥㼎 㻢㻜㼍 㻝㻠㻚㻥㼎 㻞㻚㻤㼎 㻠㻤㼎 㻝㻞㻤㻟㻌㼎 㻝㻣㻚㻟㼎㼏 㻠㻜㻤㼎㼏 㻝㻡㻟 㻟㻤㻚㻞㻌㼎 ẅ⳦๣༢⏝༊ 㻥㻡㻌 㻌 㻌㼎 㻢㻡㼎㻝㻠㻚㻣㼎 㻞㻚㻢㼎 㻠㻢㼎 㻝㻞㻢㻡㼎 㻝㻢㻚㻜㻌㼎 㻟㻣㻤㻌㻌㼎 㻝㻠㻞 㻟㻣㻚㻥㻌㼎 ే⏝ฎ⌮༊ 㻤㻤㼎 㻢㻡㼎 㻝㻠㻚㻥㼎 㻟㻚㻟㼎 㻡㻢㻌 㼏 㻝㻠㻣㻡㻌㼏 㻝㻥㻚㻠㻌㼏 㻠㻡㻤㻌㻌㼏 㻝㻣㻞 㻟㻣㻚㻠㻌㼎 ↓ฎ⌮༊ 㻡㻟㻌㻌㼍 㻠㻠㼍 㻝㻟㻚㻡㼍 㻌㻞㻚㻜 㻟㻤㻌 㻌 㻌㼍 㻡㻤㻣㼍 㻝㻟㻚㻤㼍 㻟㻞㻠㼍 㻝㻜㻜 㻟㻟㻚㻠 㻹㼛༢⏝༊ 㻣㻞㼎 㻠㻤㼍㼎 㻝㻠㻚㻝㼍㼎 㻌㻞㻚㻟 㻠㻡㻌㼍㼎 㻝㻜㻝㻞㼍㼎 㻝㻢㻚㻢㻌㼍㼎 㻟㻥㻝㼍㼎 㻝㻞㻝 㻟㻠㻚㻢 ẅ⳦๣༢⏝༊ 㻣㻡㼎 㻡㻝㼎 㻝㻠㻚㻞㼍㼎 㻌㻞㻚㻠 㻠㻣㻌㼍㼎 㻝㻜㻥㻝㼍㼎 㻝㻢㻚㻣㻌㼍㼎 㻟㻥㻠㻌㼍㼎 㻝㻞㻞 㻟㻡㻚㻞 ే⏝ฎ⌮༊ 㻤㻜㼎 㻡㻢㼏 㻝㻠㻚㻥㼎 㻌㻞㻚㻟 㻡㻠 㼎 㻝㻟㻞㻟㻌㼎 㻝㻥㻚㻞㻌㻌㼎 㻠㻡㻟㻌㻌㼎 㻝㻠㻜 㻟㻡㻚㻝 ✀Ꮚฎ⌮ 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㻖 㣬Ỉฎ⌮ 㻖㻖㻖 㻖㻖㻖 㼚㼟 㼚㼟 㼚㼟 㻖㻖㻖 㼚㼟 㼚㼟 㻖㻖㻖 ஺஫స⏝ 㼚㼟 㻖 㼚㼟 㻖 㼚㼟 㼚㼟 㼚㼟 㼚㼟 㼚㼟 ὀ㻝䠅Ꮚᐇ㔜䠈ⓒ⢏㔜䛿Ỉศ㻝㻡㻑᥮⟬䠊ᩘ್䛾␗➢ྕ㛫䛿䠈ྛᅡሙෆ䛻䛚䛡䜛㻡㻑Ỉ‽᭷ព䜢♧䛩䠊 ὀ㻞䠅ศᩓศᯒ䛷㻖㻖㻖䛿㻜㻚㻝㻑Ỉ‽᭷ព䠈㻖䛿㻡㻑Ỉ‽᭷ព䠈㼚㼟䛿᭷ពᕪ↓䛧䜢♧䛩䠊 ↓ ᭷ ศᩓ ศᯒ 薬剤には種子の腐敗や苗立枯性病害の発生を抑制する効 果があり,出芽率が向上したと考えられる.一方,Mo 付 加による出芽率の向上効果は,水稲の湛水直播では出芽を 阻害する硫化物イオン(S− 2 )の生成を抑えることが確認 されている(九州沖縄農業研究センター 2011).しかし, 一般的には畑条件では酸化状態になるため,硫化物イオン (S− 2 )は主に硫酸イオン(SO4− 2)の形態で存在すると考 えられており,それが,飽水処理の有無に関わらず効果が 見られることから,水稲とは別途の作用によると考えられ る.その解明については今後の課題である. ほ場での生育は,主茎長では飽水処理ほ場が短くなった. また,主茎節数,分枝数,1 株当たり莢数では飽水処理の 有無による数値的な差は少なく,百粒重は飽水処理により 軽くなった.有原(2000)によれば,ダイズは収量の補償 作用が強く,開花期までの生育が不良でも,開花期以降に 乾物生産が盛んとなり,収量が回復した事例が指摘されて いる . 今回の結果はその見解を支持するもので,生育初期 に生じた湿害により主茎長は影響を受けたものの,その後 の栄養成長期,生殖成長期の良好な生育環境下で生育を回 復し,補償作用により主茎節数,分枝数,1 株当たり莢数 が確保された.一方,生育初期の湿害の影響で,主茎長に みられるように,小ぶりの生育となった植物体には相対的 に莢数が多くなり,同化養分量の配分が不足して百粒重は 低下したと考えられる. 一方,種子処理による莢数は,無処理区に対して各処理 区で有意に増加し,これらの区では,1 株当たり子実重も 有意に増加した.莢数と子実重には正の相関(r = 0.745  0.1% 水準有意:各反復込みで計算,n = 32(2 飽水処理 × 4 種子処理× 4 反復))が認められ,各区の増収は,莢 数増加に起因することが明らかである . さらに,莢数と出 芽率との間には正の相関が認められ(r = 0.693 0.1% 水 準有意:各反復込みで計算,n = 32(2 飽水処理× 4 種子 処理× 4 反復))(第 1 図),Mo や薬剤による出芽率向上 が増収に結びついたと考えられる.すなわち,補償作用で 個体の生育の回復が図られても,出芽率の低下による生育 個体数の差は埋められないことを示し,このため出芽や苗 立の向上は収量確保にとって重要な問題であると考えられ る. y=15.544xͲ 116.33 R=0.693*** 䠄n=32䠅 0 500 1000 1500 2000 0 50 100 Ⳓ ᩘ ฟⱆ⋡ 䠄%䠅 䠄ಶ/䟝䠅 第 1 図 出芽率と莢数の関係 なお,ダイズ種子への Mo 付加によるほ場での先行研究

では,モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を種子

1 L 当たり 130 mg 処理(橋本 1977)あるいは 500 mg 処 理(浜口・島田 2012)した事例がある.本研究では三酸 化モリブデン(MoO3)を種子 1 kg 当たり 14.4 g 処理し, 化合物の形態,処理量が異なるが,先行研究での無処理に 対する子実重比率は 110 ∼ 127%(橋本 1977),122%(浜 口・島田 2012)と本研究と同様に Mo 付加による増収効 果が見られている. なお,飽水処理ほ場,飽水無処理ほ場とも,莢数は Mo 単用区,薬剤単用区を併用処理区が上回る傾向を示し,こ の結果,収量も同様な結果となった.上記のように薬剤に は種子の腐敗や苗立枯性病害の抑制効果があり,Mo 付加 には今回の知見で得られたような出芽率の向上や生育の促 進効果があり,作用の異なる両者を併用したことで相加的, 相乗的に働いたと考えられる.その詳細な解明についても 今後の課題である. Ⅱ アズキへの効果 各区におけるアズキの出芽,生育,収量を第 2 表に示し た.出芽率には有意水準 10% で差が認められ,傾向とし ては無処理区< Mo 単用区,薬剤単用区<併用処理区とな り,併用処理で出芽率が向上した. 第 2 表  Mo 及び薬剤がアズキの出芽・生育・収量に 及ぼす影響    12 㣬Ỉ ฎ⌮ 䛾᭷↓ ヨ㦂༊ ฟⱆ⋡ 㻔㻑䠅 ୺ⱼ 㛗 㻔㼏㼙䠅 ୺ⱼ ⠇ᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 ศᯞ ᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 Ⳓᩘ 㻔ಶ㻛ᰴ䠅 Ⳓᩘ 㻔ಶ㻛䟝䠅 Ꮚᐇ 㔜 㻔㼓㻛ᰴ䠅 Ꮚᐇ 㔜 㻔㼗㼓㻛㻝㻜㼍䠅 ྠᕥ↓ ฎ⌮ẚ 㻔㻑䠅 ⓒ⢏ 㔜 㻔㼓䠅 ↓ฎ⌮༊ 㻢㻞㼍 㻟㻞㼍 㻝㻜㻚㻡 㻜㻚㻣 㻌㻢㻚㻠㼍 㻌㻝㻟㻟㼍㻌㻡㻚㻟㻌㼍 㻝㻝㻥㻌㻌㼍 㻝㻜㻜 㻞㻞㻚㻠 㻹㼛༢⏝༊ 㻣㻣㼍㼎 㻠㻝㻝㻜㻚㻥 㻝㻚㻢 㻝㻜㻚㻞㻌㻞㻞㻝㻌㻥㻚㻜㼍㼎 㻞㻜㻟㼍㼎 㻝㻣㻝 㻞㻟㻚㻢 ⸆๣༢⏝༊ 㻣㻝㼍㼎 㻡㻝㻝㻝㻚㻥 㻝㻚㻠 㻝㻞㻚㻣㻌㻞㻡㻡㼎㼏 㻌㻥㻚㻥㻌㼎 㻞㻞㻠㻌㻌㼎 㻝㻤㻤 㻞㻞㻚㻡 ే⏝ฎ⌮༊ 㻤㻟㼎 㻠㻟㼎㼏 㻝㻝㻚㻤 㻞㻚㻜 㻝㻟㻚㻞㻌㻟㻝㻥㻝㻟㻚㻝㻌㼎 㻞㻥㻢㻌㻌㼎 㻞㻠㻡 㻞㻟㻚㻠 ศᩓศᯒ 䈂 㻖 㼚㼟 㼚㼟 㻖㻖㻖 㻖 㻖 㻖㻖 㼚㼟 ᭷ ὀ㻝䠅Ꮚᐇ㔜䠈ⓒ⢏㔜䛿Ỉศ㻝㻡㻑᥮⟬䠊ᩘ್䛾␗➢ྕ㛫䛿㻡䠂Ỉ‽᭷ព䜢♧䛩䠊 ὀ㻞䠅ศᩓศᯒ䛷㻖㻖㻖䛿㻜㻚㻝䠂Ỉ‽᭷ព䠈㻖㻖䛿㻝䠂Ỉ‽᭷ព䠈㻖䛿㻡䠂Ỉ‽᭷ព䠈䈂䛿㻝㻜䠂Ỉ‽᭷ព䠈㼚㼟䛿᭷ពᕪ↓䛧䜢♧䛩䠊 種子処理区間の有意差は主茎長に認められ,主茎節数, 分枝数には認められなかった.莢数では,Mo 単用区が無 処理区より優る傾向にあったものの,薬剤単用区,併用処 理区がさらに優った.子実重では,登熟期の虫害によって 区内のばらつきが大きくなり Mo 単用区と無処理区とに有 意差は認められなかったが,薬剤単用区,併用処理区に有 意差が認められた.百粒重には種子処理区間の有意差は認 作物研究 62 号(2017) 8

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められなかった. アズキに対しても,Mo 付加による生育,子実重への向 上効果は認められたが,薬剤の方がより効果が高かった. Mo が薬剤より効果が劣ったのは,アズキは表面が硬く, ダイズより吸水性が低いこと,また表面が滑らかで Mo が 付加しにくかった(第 2 図)ためと考えられる. 䝎䜲䝈㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䜰䝈䜻㻌 ↓ฎ⌮ Mo ௜ຍ ↓ฎ⌮ Mo ௜ຍ 第 2 図 ダイズ種子,アズキ種子への Mo 付加前後の 様子 ダイズ同様に,莢数,収量は Mo 単用区,薬剤単用区を 併用処理区が上回る傾向を示した. まとめ ダイズ種子への Mo 付加により出芽が促進され,それが 収量の確保に反映された.Mo 付加の効果はアズキよりも ダイズの方が明確であった.

特記事項

① 本試験は,公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協 会(略称 JATAFF)  新稲作研究会の委託試験(2013 ∼ 2014)で実施した. ② 本試験の実施に当たり,(独)農業・食品産業技術総合 研究機構九州沖縄農業研究センター水田作研究領域の原  嘉隆主任研究員(当時)より,Mo 資材提供,技術上の 助言等,多大なる協力を賜った.

引用文献

有原丈二 2000.ダイズ安定多収の革新技術.社団法人農 山漁村文化協会.東京. 浜口秀生・島田信二 2012.モリブデンの施用法が根粒超 着生ダイズの根粒着生と収量に及ぼす影響.日作紀 81 (別 1):70-71. 原 嘉隆・田坂幸平 2010.湛水土中播種におけるモリブ デン付加種子の苗立ち向上効果−落水を必要としない安 価・容易な水稲直播技術の可能性−.日作紀 79(別 2): 18-19. 原 嘉隆 2011.大豆・小麦・大麦におけるモリブデン付 加による湛水時苗立ちの向上効果−安価で簡易な苗立ち 期の湿害緩和技術の可能性−.日作紀 80(別 2):120-121. 橋本鋼二 1977.大豆に対するモリブデン施与の増収効果. 農業及び園芸 52:89-90. 九州沖縄農業研究センター 2011.モリブデン化合物によ る水稲の苗立ち改善のしくみを明らかに.国立研究開発 法人 農業・食品産業技術総合研究機構ホームページ (https://www.naro.affrc.go.jp/index.html).

Infl uence of molybdenum addition to soybean and azukibean seed in untilled

cultivation on seedling emergence, growth and yield

Yasuo Koroda, Yoshiaki Enoki, Tomio Sawada

Hyogo Prefecture Institute of Agriculture, Forestory and Fisheries (1533 Minami-no-oka ko, Behu, Kasai, Hyogo, 679-0198, Japan)

Summary:The bean seeds, which are sensitive to high humidity soil, are often damaged by sowing in the rainy season.

Therefore, securing of rapid seedling emergence is important. We investigated the infl uence of molybdenum (Mo) addition to seeds on budding rate, growth, and yield of the beans. Results indicated that seedling emergence rate was promoted by the Mo addition, leading to the securing of yield.

Key Words:Azukibean, Yield, Seedling emergence rate, Soybean, Molybdenum addition

Journal of Crop Research 62: 7- 9 (2017) Correspondence: Yasuo Koroda (Yasuo_Koroda@pref.hyogo.lg.jp)

9 ダイズ・アズキ不耕起播種栽培におけるモリブデン付加播種が出芽と生育・収量に及ぼす影響

参照

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