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ロボット支援訓練の無作為化比較試験

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 767 ~ 768 頁(2015 ロボット支援訓練の無作為化比較試験 年). 767. 分科学会シンポジウム 1(日本支援工学理学療法学会). ロボット支援訓練の無作為化比較試験* ─ ReoGo と Gait-Assistance Robot ─ 蜂須賀研二**. はじめに 脳血管疾患の死亡数は第 4 位へと減少したが 1),介護を要す る疾患としては第一位であり 2),死亡数は減少したもののもっ ともリハビリテーション(以下,リハ)を要する疾患である。 さらに高齢化および少子化のために 15 ~ 64 歳の現役世代人口 は減少し,リハ訓練や介護福祉を担当する専門職種は相対的に 不足してしまう。少ないスタッフで大きい需要を満たすには, ロボット支援訓練の導入は必須の状況である。. 訓練支援ロボット. 図 1 簡易型上肢訓練ロボット(MA2). リハ医療福祉分野のロボットは,自立支援ロボット:障害を 有する者がロボットを装着あるいは操作して自らの生活の自立 を高めるもの,介護支援ロボット:介護する者がロボットを装 着あるいは操作して,障害者への介護を安全に適切に実施する もの,訓練支援ロボット:障害者へのリハ訓練を補助あるいは 代行するもの,就労支援ロボット:障害者の就労を補助あるい は代行するもの,その他に分類できる。 本稿ではおもに訓練支援ロボットを取り上げるが,片麻痺患 者を想定し,上肢訓練支援ロボットと下肢訓練支援ロボットに 大別する。 1.上肢訓練支援ロボット. 3). 上肢訓練支援ロボットには,ロボット・アームの先端にある グリップを握らせ,ディスプレイの指示にしたがいグリップを. 図 2 ReoGo. 動かす手先効果器型と,上肢に密着して保持し動きを支援する 外骨格型がある。. 2.下肢訓練支援ロボット. 3). 手 先 効 果 器 型 に は,MIT-Manus(InMotion Arm, Inter-. 下肢訓練支援ロボットは,足先効果器型,外骨格型,ロボッ. active Motion Technologies),Mirror-Image Motion Enabler,. ト・アーム制御型に分けられる。. Bi-Manu-Track(Reha Stim),鏡像運動方式運動角度支援型. 足先効果器型には,足を足板に乗せ足板を前後に動かして歩. 上 肢 訓 練 ロ ボ ッ ト(MA2, 産 業 医 科 大 学, 図 1),NeReBot. 行に類似した動きを繰り返す Gait Trainer がある。外骨格型. (Mechatronics),ReoGo(Motorica,図 2)など多くの報告が. には Driven-gait orthosis があり,下肢に沿った支柱と関節部. あ り, 外 骨 格 型 に は T-WREX(Biorobotics),ARMin(SMS. にサーボモーターが設置されており,体幹を懸垂しながら下肢. Lab),Armeo Power(Hocoma)などがある。. を制御してトレッドミル歩行を行う。Lokomat(Hocoma)の 商品名で市販されている。懸垂はしないが外骨格構造で下肢. *. Randomized Controlled Study of Robot-assisted Training: ReoGo and Gait-Assistance Robot ** 独立行政法人労働者健康福祉機構九州労災病院 門司メディカルセ ンター (〒 801–8502 福岡県北九州市門司区東港町 3–1) Kenji Hachisuka, MD, DMedSci: Moji Medical Center, Kyushu Rosai Hospital, Japan Labour Health and Welfare Organization キーワード:ロボット,歩行訓練,上肢訓練. の動きを制御する LOPES Exoskeleton Robot, HAL(Hybrid Assistive Limb),Wearable Power-Assisted Locomotor (WPAL),Rehab REX(REX Bionics),ReWalk(Argo Medical),Ekso(Ekso Bionics)なども公開されている。 ロ ボ ッ ト・ ア ー ム 制 御 型 に は 歩 行 支 援 ロ ボ ッ ト(GaitAssistance Robot;以下,GAR)がある(図 3)4)。ロボット・.

(2) 768. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 と強度が同じであれば両者はほぼ同等である 6)。下肢ロボット 支援訓練でも,ロボット支援訓練と理学療法を組み合わせると 歩行自立度は向上するが,歩行速度や歩行能力に有意差はな い。有意な改善があるのは,発症後 3 ヵ月以内で歩行不能の患 者を対象とする場合であった 7)。 ロボット支援訓練の長所は,正確に,安全に,十分量の反復 訓練ができることであるが,臨床的有用性は必ずしも確立して いるわけではない。ロボットが斬新なコンセプトと革新的機構 であっても,それをもって治療効果があるとはいえない。これ までの研究報告からは,ロボット支援訓練の効果は通常訓練よ り優れる,同等,劣るなど,様々である。一部の市販されてい る訓練支援ロボットは革新的治療法として話題になっているが, 患者・家族および社会へのアピールや差別化の手段として使用 されているが,これらの訓練支援ロボットが真に超高齢化社会. 図 3 歩行支援ロボット(GAR). におけるリハ問題の解決策となるかは,現時点では十分なデー アームが直接大腿および下腿の動きを制御し,トレッドミル上. タはない。一般に麻痺が軽度から中等度であれば,ロボット支. を歩行させることができる。GAR は体幹を懸垂する必要はな. 援訓練と療法士による訓練との間で得られる成果に大きな相違. く,ロボットの着脱や fitting も Lokomat や HAL よりも容易. はない。引き続き有用性に関する臨床研究が必要であり,ロボッ. である。GAR は 1999 ~ 2003 年にかけて安川電機がプロトタ. ト支援訓練にもっとも適した患者はなにか,また,どんな訓練. イプを開発し,その後産業医科大学が臨床試験を実施した 5)。. 方法であれば人的負担が軽減されるか検討すべきである。 今後の訓練支援ロボット開発の方向性として,ロボット支援. 無作為化比較試験の自験例. 訓練が療法士訓練よりも有意に優れているか否かの観点より. 1.上肢訓練支援ロボット(以下,ReoGo)の臨床試験. も,ロボット支援訓練を導入することにより,ひとりの療法士. 2008 年 11 月~ 2010 年 5 月にかけて,産業医科大学,兵庫. が安全により十分量の訓練を提供できる,より多くの患者に対. 医科大学,回復期リハ病院 6 施設で亜急性期片麻痺患者を対象. 応できる,療法士の肉体的負担が軽減する,医療コストが低下. とした多施設無作為割付前向比較試験を実施した。715 名の片. するなど,総合的な有用性に着目した取り組みが重要である。. 麻痺患者から選択基準に合致する 60 名を選択し,無作為にロ ボット訓練群と対照群に振り分けた。いずれも作業療法士に. おわりに. よる訓練を 40 分間実施し,ロボット訓練群には ReoGo 訓練を. ReoGo と GAR を用いた我々の無作為化比較試験を紹介し,. 20 分間,対照群には OT 指示による自主訓練を 20 分間追加し. いずれも対照群に比して有意な改善を認めた。ロボット支援訓. た。結論として,発症から 8 週以内の片麻痺患者で作業療法と. 練の総合的な有用性に関しては十分なデータはなく,今後も最. ReoGo 訓練を併用すると,6 週間の介入によりロボット訓練群. 適患者や訓練条件などさらなる臨床研究が必要である。. では Fugl-Meyer 評価で肩 / 肘 / 前腕と屈筋共同運動の改善が 有意に大きかった。 2.下肢訓練支援ロボット(以下,GAR)の臨床試験. 5). 産業医科大学では歩行不能である発症後 4 週以内の重度片麻 痺患者を対象として,GAR を用いた無作為割付前向比較試験 を実施した。重度片麻痺患者 274 名から選択基準に合致する 30 名を選択し,無作為にロボット訓練群と対照群に振り分け た。いずれも理学療法を 60 分間実施し,ロボット訓練群には GAR 訓練を 20 分間,対照群には平地歩行訓練を 20 分間追加し, これらを 4 週間実施した。介入終了時には下肢機能はロボット 訓練群がやや良好,歩行速度もやや早くなったが有意差はな かった。歩行機能分類ではロボット訓練群が有意に大きな改善 を示し,非麻痺側下肢筋力も有意に大きな増加を示した。すな わち,発症から 4 週以内で歩行困難な重度片麻痺患者を対象に すると,理学療法と GAR 訓練を併用した訓練は,理学療法お よび平地歩行訓練の組み合わせよりも有意な歩行機能の改善と 筋力増加を認めた。. ロボット支援訓練への期待と問題点 上肢ロボット支援訓練は,作業療法士による訓練と訓練時間. 文 献 1) 厚生労働省大臣官房統計情報部:平成 25 年(2013)人口動態統計 の 年 間 推 計.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/ suikei13/index.html(2015 年 4 月 12 日引用) 2) 厚生労働省大臣官房統計情報部:平成 22 年国民生活基礎調査の概 況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/ (2015 年 4 月 12 日引用) 3) 蜂須賀研二:リハビリテーション医療における先端医療の動向. 病院.2014; 73: 556–560. 4) Hachisuka k, Saeki S, et al.: “A prototype walking assist robot and its clinical application for stroke patients with severe gait disturbance”. In: Ring H, Soroker N, (eds): Advances in Physical and Rehabilitation Medicine. Monduzzi Editore, Bologna, 2003, pp. 23–26. 5) Ochi M, Wada F, et al.: “Gait training in subacute stroke patients with severe gait disturbance using a full weight-bearing GaitAssistance Robot: A prospective, randomized, open, blindedendpoint trial”. J Neurol Sci. 2015; 353: 130–136. 6) Norouzi-Gheidari N, Archambault PS, et al.: Effects of robotassisted therapy on stroke rehabilitation in upper limbs: systematic review and meta-analysis of the literature. J Rehabil Res Dev. 2012; 49: 479–496. 7) Mehrholz J, Elsner B, et al.: Electromechanical-assisted training for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 7: CD006185..

(3)

図 3 歩行支援ロボット(GAR)

参照

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