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日本人学生・留学生のストレッサー,レジリエンス,メンタルヘルスの関係:1年間の縦断的検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-82 460

-日本人学生・留学生のストレッサー,レジリエンス,

メンタルヘルスの関係: 1 年間の縦断的検討

○佐々木 恵、中村 美知恵、川戸 悦代 北陸先端科学技術大学院大学保健管理センター 【目的】 「留学生30万人計画」」(文部科学省ほか,2008)に より,わが国の高等教育機関では外国人留学生が増加 の一途をたどっている。高等教育機関では保健管理セ ンターや学生相談室などを中心に学生支援が行われて いるが,留学生を含めて学生のメンタルヘルスを規定 する要因についての臨床実践に活用し得る知見は乏し い。認知・行動論的なアプローチを中心に学生が将来 的に日々のストレス状況を自己管理できるように促し ていくためには,学生がどのような状況でストレスを 知覚するのか(どのようなストレッサーが存在するの か),ストレス状況を克服するために必要な力(レジ リエンス)が学生自身にどの程度備わっているかとい うこととメンタルヘルスとの関係を,留学生も含めて 検討する必要がある。そこで本研究は,学生の基本的 属性,ストレッサー,レジリエンス,メンタルヘルス の関係について, 1 年間の追跡調査によって明らかに することを目的とした。 【方法】 1 . 調査対象者 大学院のみを有する A 大学に X 年 4 月に入学した正規学生310名のうち,同年 4 月の定 期健診を受検した255名の中から, X + 1 年 4 月にも 定期健診を受検し両年においてデータの研究利用に同 意した188名を本研究の対象とした。このうち,欠損 値のない188名(男性158名,女性30名,日本人学生 129名,留学生59名,平均年齢23.93歳(SD=2.56))を 最終的な解析対象とした。 2 . 測度  X 年 4 月と X + 1 年 4 月で同一の調査用 紙を用いて縦断的検討を行った。社会統計学変数とし ては,年齢,性別,国籍,経済状況が含められた(留 学生については日本におけるこれまでの滞在期間と主 観的日本語力について問う項目が含まれたが本研究で は分析対象外であった)。ストレッサーについては 「友達をつくること」「教員との関係」「勉強・研究」 をはじめとする 9 項目でそれぞれ「全く問題がない」 〜「非常に問題である」の 4 件法で回答を求めた(留 学生についてはこれらに加えて「日本語」「日本の文 化になれること」も項目に含められたが本研究では分 析対象外であった)。レジリエンスについては精神的 回復力尺度(小塩ら,2002;「新奇性追求」「感情調整」 「肯定的な未来志向」の 3 下位尺度)の21項目を,精

神症状についてはKessler 6(原版:Kessler et al.,

2002,日本語版:Furukawa et al.,2008)の 6 項目 を用いた。 3 . 手続き 調査用紙は日本語版と英語版が用意さ れ,調査対象者は各自で回答可能な版により回答し た。その上で健康診断の他の検査を受けるとともに, カウンセラー(研究実施者)との個別面談へ進んだ ( 1 人あたり 3 〜 4 分)。カウンセラーは調査用紙の記 入内容を確認し,メンタルヘルスに関する健診業務 (調査用紙の記載内容を確認するとともに学生生活に おける心配事の有無を確認・状態に応じて学生を学生 相談に誘う)を行った上で調査用紙を回収した。調査 用紙上のデータの研究利用同意欄で「同意する」に チェックが入っている学生のデータのみを研究対象と した。 4 . データ解析 性別(男性/女性),国籍(日本人 学生/留学生),経済状況(「悪い」以下/「まあまあ」 以上), X 年 4 月のストレッサー経験頻度(各項目を 「問題なし」「問題あり」に分類し「問題あり」と回答 した合計数をストレッサー経験頻度とした:中央値未 満/中央値以上),レジリエンス(各尺度いずれも中央 値未満/中央値以上), X 年 4 月のK6スコア( 8 点以下 / 9 点以上)を 2 値化し, X + 1 年 4 月のK6スコア( 8 点以下/ 9 点以上)を従属変数とした。まずそれぞれ の単純相関をカイ二乗検定により検討した。その後, すべての変数を投入したロジスティック回帰分析を 行った。 5 . 倫理的配慮 本研究は「人を対象とする医学系 研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省, 2014,一部改正2017)に基づいて研究計画が立案され, 北陸先端科学技術大学院大学ライフサイエンス委員会 において,研究倫理審査・承認を受けた上で行われた (承認番号29-006)。 【結果】 X 年 4 月から X + 1 年の 1 年後のK6スコアを予測す るためのロジスティック回帰分析の結果がTable 1に 示されている。 X 年 4 月の時点から 1 年後の X + 1 年 4 月のK6が 9 点以上の状態であることを予測する要因 としては,国籍,レジリエンスのうちの「肯定的な未 来志向」,K6スコアの 3 点となり,留学生であること (OR=2.655, p <0.05),「肯定的な未来志向」スコアが 中央値未満であること(OR=0.313, p<0.05),K6スコ アが 9 点以上であること(OR=4.893, p<0.01)となっ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-82 461 -た。 【考察】 本研究の結果より, X 年 4 月の時点から 1 年後の X + 1 年 4 月のK6が 9 点以上の状態であることを予測 する要因としては,国籍,レジリエンスのうちの「肯 定的な未来志向」,K6スコアの 3 点となった。特に学 生本人について変容させることが可能な側面として は,「肯定的な未来志向」を高めることが重要である ことが示唆される。この点については,行動面での成 功体験の積み重ねや,認知面での変容が介入の可能性 として検討し得ると考えられ,将来の研究ではそのよ うなプログラムが結果的にメンタルヘルスを高めるか どうかを検証することが求められる。 【引用文献】

Furukawa et al.(2008). The performance of the Japanese version of the K6 and K10 in the World Mental Health Survey Japan. International

Journal of Methods in Psychiatric Research, 17 ( 3 ), 152-158.

Kessler et al.(2002). Short screening scales to monitor population prevalences and trends in n o n - s p e c i f i c p s y c h o l o g i c a l d i s t r e s s . Psychological Medicine, 32, 959-976. 文部科学省ほか(2008). 「留学生30万人計画」骨子 文部科学省・厚生労働省(2014). 人を対象とする医 学系研究に関する倫理指針 小塩ほか(2002). ネガティブな出来事からの立ち直 りを導く心理的特性-精神的回復力尺度の作成- カ ウンセリング研究, 35, 57-65 【付記】 本研究はJSPS科研費 JP17K04410(研究代表者:佐々 木恵)の助成により行われた。研究協力者の皆様に御 礼申し上げる。

参照

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(出所)本邦の生産者に対する現地調査(三井化学)提出資料(様式 J-16-②(様式 C-1 関係) ) 、 本邦の生産者追加質問状回答書(日本ポリウレタン) (様式