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層流型多層方式を用いた超音波流量計測シミュレーションの研究A Study for Simulation on an Ultrasonic Flow Meter Using Laminar Type Multi-layer Method

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hp150196 「京」産業利用(実証利用) K Industrial Use

層流型多層方式を用いた超音波流量計測シミュレーションの研究

A Study for Simulation on an Ultrasonic Flow Meter

Using Laminar Type Multi-layer Method

永原 英知1) 、佐藤 真人1) 、名和 基之2) 、張 会来3) 、岡部 壮志3) 、坪倉 誠4) Hidetomo Nagahara1) , Masato Sato1) , Motoyuki Nawa2) , Huilai Zhang3) , Takeshi Okabe3)

Makoto Tsubokura4)

1) パナソニック株式会社、2) パーソル パナソニック HR パートナーズ株式会社 3) 株式会社数値フローデザイン、4) 神戸大学

1) Panasonic Corporation, 2) PERSOL Panasonic HR PARTNERS Co., LTD. 3) Numerical Flow Designing Co.,LTD, 4) Kobe University

要旨 層流型多層方式の超音波流量計のシミュレーションに必要な、流れの遷移域を含む解析の可能 性を検討した。定常流における検討では、多層部を含む流路で、流れが乱流から再層流化して発 達する挙動を捉えることができた。また、振動流れでは、減速時に生じる遷移をストリーク構造 として捉えることができた。これらにより、超音波流量計のシミュレーションによる現象把握と、 特性予測技術を確立した。今後は、この結果をふまえ、より現実的なモデルにおける解析の検討 に取組む。 キーワード:超音波流量計、層流、遷移流れ、乱流、DNS、振動流 Abstract

This report deals with the possibility of a simulation for an ultrasonic flow meter whose measuring point may be located in the laminar-to-turbulent transition region. In the study for steady flow analysis of multi-layer flow path, transition behavior was obtained precisely. And for pulsating flow, formation of the parallel streak-like pattern indicated the transition from laminar to turbulent flow there. As a result, the numerical simulation for comprehension of phenomena and forecasting the characteristics of the ultrasonic flow meter becomes possible. The method for analyzing the flow in an actual flow meter has been established by the present study. Keywords:Ultrasonic flow meter, Laminar flow, Transition, Turbulent flow, DNS, Pulsating flow

© 2020 Research Organization for Information Science and Technology All rights reserved. Received: 26 October 2018

Accepted: 07 February 2020 Available online: 14 February 2020

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15 1. 研究の背景と目的 新しく開発した“層流型多層方式”の超音波流量計[1]は、多層部における流れの再層流化によ り、安定した流速分布で超音波による流量計測を行うものである。本方式では、多層部の前後で 乱流状態の流れとなる場合があり、その場合、多層部の出入口近傍では遷移状態の流れが生じる。 これまでに遷移状態の流れを DNS で解いた事例は種々あるが、もっぱら、平行平板間の流れ (例えば[2]) や、チャネル流れ (例えば[3]) についてのものであり、多層部を含むものは見当た らない。今回、我々はこのような多層部において、遷移域を含む流れに関し「京」を利用して DNS による定常流解析に取組んだ。 また、このような多層部を有する流路に振動流れが生じる場合の挙動の解析も行った。このよ うな振動流れに関して、流れの遷移に言及した例としての実験による研究例[4]はあるが、DNS 解 析が行われた事例は見当たらない。 本研究では、上記のような解析により、層流型多層方式における流れ現象の解明とそれを踏ま えた特性予測技術の検討を目的とした。 2. 計算モデル 計算モデルの説明をするにあたり、対象とする流量計の構成、計測原理を説明する。 図 1(a) は、本方式における超音波流量計の正面の断面図である。図 1(b) は側面図である。これ に示すように、流路全体は矩形断面をしており、内部は、複数層 (5 層) に分割されている。流れ は図 1(a) の左側から流入する。超音波はセンサ A とセンサ B を V 字型に結ぶ伝搬路にそっ (a)断面図 (b) 側面図 図 1 超音波流量計の構成

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16 て送受信される。センサ A からセンサ B への伝搬時間を T1、センサ B からセンサ A への伝搬時 間を T2とし、これらの値を用いて、式(1)に基づき流速が求められる。ここで、U は流速、θは流 速 U が超音波の伝播路となす角度、L は超音波の実質的伝播長さである。このようにして求める 方法は、伝播時間逆数差法といわれている。 本方式では、多層に分割された流路内で流れを層流化して、安定した流速を測定するが、多層 に分割される前の流れが乱流の場合には、多層流路内で流れ状態が乱流から層流への再層流化が 生じる。また、多層部より下流では、流れは再び乱流状態に戻る。 以下、取り組んだモデルについての仕様を述べる。 (1) 多層流路における定常流解析モデル 定常流において遷移を含む 流れの解析可能性を検討する ため、基礎モデルを用いてシミ ュレーションを行った。 この基礎モデルを図 2 に示 す。2 つのチャンバの間に矩形 断面の流路を挟んだ構成であ る 。 流 路 は 上 流 側 に お け る 100mm の助走路に続き、120mm の多層部、下流側には100mmの 出口部が形成されている。助走路と出口部は 多層に分割されていないダクト形状である。 多層部の斜視図を図 3 に示す。いずれも内 寸を示している。矩形断面の流路は、この多 層部において 4 枚の仕切り板により 5 層に区 切られており、各層の高さは均一で 1.26mm に設定されている。図 3 には、本報告書で使 用する座標系も示してある。 流量は 6,000 L/H に設定した。このときの レイノルズ数は、流路高さを代表長さとし て、助走部で 4,618、多層部の各層で 924 である。 計算格子は、約 2 億 5,000 万節点である。これを 1,920 分割し MPI 並列で解析を行った。 図 3 多層部 (1) 図 2 基礎モデル

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17 (2) 多層流路における振動流解析モデル 振動流における遷移挙動把握の可能性 を調べるため、図 4 に示すダクト形状の解 析モデルでシミュレーションを行った。こ れは、図 2 のチャンバで挟まれた流路部分 に相当する。振動流としては、周波数が 10Hz の流速変動をダクト両端に与えた。 多層部の構成は、図 3 と同じである。 本モデルでは、振動流現象の詳細解析が出 来る様に壁面近傍および中央付近の格子 をそれ以外の部分より細かくした。計算格子は約 1 億 4,000 万節点である。これを 3,840 分割し MPI 並列で解析を行った。 3. 並列計算の方法と効果 (性能) 本研究では解析ソフトウェアとして FrontFlow/red を採用し計算を実施した。 本ソフトウェアにおける、解析の基礎式は、下記の 3 式である。 ・質量保存式 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕(𝜌𝜌) + 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖(𝜌𝜌𝑢𝑢𝑖𝑖) = 0 (2) ・運動量保存式: 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕(𝜌𝜌𝑢𝑢𝑖𝑖) + 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗�𝜌𝜌𝑢𝑢𝑖𝑖𝑢𝑢𝑗𝑗� = − 𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖+ 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗�𝜇𝜇 � 𝜕𝜕𝑢𝑢𝑖𝑖 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗+ 𝜕𝜕𝑢𝑢𝑗𝑗 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖�� (3) ・エンタルピー保存式 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕(𝜌𝜌𝜌𝜌) + 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗�𝜌𝜌𝑢𝑢𝑗𝑗𝜌𝜌� = 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗�𝑘𝑘 𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗� + � 𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 𝑢𝑢𝑗𝑗 𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗� + 𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗� 𝜕𝜕(𝜏𝜏𝑖𝑖𝑗𝑗𝑢𝑢𝑖𝑖) 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑗𝑗 � (4) ここで、ρは流体の密度、u は流速、p は圧力、μは粘性係数である。添え字 i, j は、座標系 の 3 要素を表している。 また、(4)式において、H はエンタルピー、T は温度、k は熱伝導率、𝜏𝜏𝑖𝑖𝑗𝑗はせん断応力を表し、 𝜏𝜏𝑖𝑖𝑗𝑗は下式で定義される。 𝜏𝜏𝑖𝑖𝑗𝑗 = 𝛿𝛿𝑖𝑖𝑗𝑗𝜕𝜕 + 𝜇𝜇 �𝜕𝜕𝑢𝑢𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖 𝑗𝑗+ 𝜕𝜕𝑢𝑢𝑗𝑗 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑖𝑖− 2 3 𝜕𝜕𝑢𝑢𝑘𝑘 𝜕𝜕𝑥𝑥𝑘𝑘𝛿𝛿𝑖𝑖𝑗𝑗� (5) 本ソフトウェアは、非構造格子に基づく有限体積法を採用しており、解析領域全体を分割 し、その分割された領域に対して一つのプロセスを割り当てて MPI 並列計算を実施している。 また、流れの遷移領域の計算を行うため、圧縮性 DNS により非定常計算を行った。 図 4 振動流の解析モデル

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18 本ソフトウェアは「京」計算機などのスパコン上で の大規模計算に向けた高速化チューニングがなされ ており、実行並列化率は 99.998%、並列化効率は 74.3%である。 4. 研究成果 (1) 多層流路における定常流解析結果 図 5 は、図 2 に示したモデルを簡易的に示したもの である。図 5 の (a) ~ (g) に示す位置の流速分布を 図 6 に示す。これらは、図 3 における多層部の幅Wの 中央位置 (y=11.25mm) における xz 面の x 方向流速 (U) の分布である。各グラフにおいて、縦軸は流速値 U (m/s) をこれらのグラフにおける中央流速の最大値 Uc max (m/s) で、無次元化した値 (U/Uc max) であ る。また、横軸は図 3 の座標系で流路高さ方向の位置 z (mm) を流路全体の高さ H (=7.5mm) で無次元化し た値 (z/H) である。 (a) においては、乱流型の流速分 布であり、多層部中央 (d) では層流型となり、 (g) に おいては、また乱流型に戻る。とりわけ、多層部内部 (b) ~ (f) では、フラットな流速分布形状が、放物型 の分布形状に変化しているのがわかる。なお、 (a) の グラフで流速分布が左右非対称の形状になっている のは、図 2 のチャンバから助走路に入る部分において、長周期の変動が発生したために生じたと 思われる。 図 5 流速分布計算位置 図 6 シミュレーション結果

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19 図 7 の多層部と記載した部分のデー タは、図 6 の (b) ~ (f) における中央 層の中央位置における流速 (Uc) の流 れ方向 (x 軸方向) に関する推移を示 したものである。図 7 の助走路、出口 部と示した部分の 2 点は、それぞれ、 多層部の端点から 2mm、50mm の流路 中央における値を参考までに示して いる。グラフの縦軸は Uc を前述の Uc max で無次元化した値 (Uc/Uc max) である。また、横軸は多層部入口端 (b) を原点としたときの、流れ方向の距離 x (mm) である (図 3 の座標系参照) 。 中央層の中央位置における流速は、境界層の発達に伴い増加するが、出口端 (f) (x=120mm) では飽和気味になっている。 以上に示したように、DNS によるシミュレーションは、遷移域を含むこのような流れに対して 解析可能であり、かかる流路の設計にあたり非常に有効なツールであることがわかる。 (2) 多層流路における振動流解析結果 図 8 は、図 4 の解析モデルにおいて、10Hz の振動流が生じているときの多層部長手方向中央 の位置における流速分布である。この位置は、図 5 では、d の位置に相当する。縦軸は流速値 (U) であり、横軸は図 6 と同じである。振動周波数が 10Hz ゆえ、周期は 100ms である。図 8 (a) は 1ms~25ms の経過を示しており、加速時の挙動を示している。流速分布波形は、層流型で、時間 と共に滑らかに変化している。図 8 (b) は、26ms~50ms の経過を示しており、減速時の挙動を示 している。このときは、流速分布波形の崩れが見られる。 図 7 中央層の中央位置における流速値の推移 (a) 加速時 (b) 減速時 図 8 振動流の流速分布の推移

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20 (1) 全体の様子 (2) (1) の一点鎖線部 部分拡大図 図 9 減速時に生じるストリーク構造 (43ms) 図 9 は、図 3 において、多層部の中央層を仕切っている仕切り板の側面から 0.52mm (y+=10) の距離での板に平行な面における流速分布のコンター図である。経過時間は 43ms に おけるものであり、減速時の状態である。図 9 (1) の一点鎖線で囲った部分が多層部に相当する が、この部分の拡大図である図 9 (2) において、流速分布がまだら模様になるストリーク構造が 顕著に見られる。この経過時間における瞬時流速から算出したレイノルズ数では、流れは層流で あるが、振動により乱流に遷移する状況を示している。 今回の振動流れの解析は、まだ、振動が十分安定するまでの時間には至っていないが、DNS により、かかる遷移の状況を把握できることが確認された。 5. まとめと今後の課題 層流型多層方式の超音波流量計のシミュレーションに必要な、流れの遷移域を含む解析の可 能性を検討した結果、下記の様な結論を得た。 (1) 多層流路における定常流解析 多層部を含む流路において、流れが乱流、層流間の遷移を伴う定常流れのシミュレーショ ンでは、DNS により、流れが乱流から再層流化する挙動を捉えることができた。とりわ け多層内部流れにおける流れの発達過程についても詳しく調べることができた。 (2) 多層流路における振動流解析 振動流における検討では、減速時に生じている層流から乱流への遷移状態をストリーク構 造として捉えることができた。 これらにより、超音波流量計のシミュレーションによる現象把握と、特性予測技術を確立し た。今後は、この結果をふまえ、より現実的なモデルにおける解析の検討に取組んでいきたい。

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参考文献

[1] Masato Sato et.al: Ultrasonic Flow Measuring Technique Using Laminar Type Multi-layer Method, Proc. FLUCOME2013, Nara, OS2-03-4, (2013).

[2] 河村洋:平行平板間乱流の大規模 DNS の展開と壁面及び中央部に現れる大規模構造, ながれ, 22(2003), 467-476.

[3] 藤定義,板野智昭: 壁乱流の壁近傍秩序構造と大規模構造, ながれ, 23(2004), 329-339.

[4] 近江宗一,井口学,赤尾不二雄: 長方形管内振動流れの乱流遷移と速度分布, 日本機械学会論 文集 (B 編) , 49 447(1983), 2343-2353.

参照

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