第4章
成長ー生残モデル
dynamic pool model
「水産資源学」
北海道大学水産学部
准教授 松石 隆
成長ー生残モデル
Dynamic Pool Model
コホート(年級群)ごとの資源動態をモデル化
加入
成長
自然死亡
自然増加量
Baranov, F. I. (1916) On the question of the biological basis of fisheries Beverton, R. J. H. and Holt, S. J. (1957) On the dynamics of expolited fish
4.1年級群加入と生残過程
N
0:t=0の時の
資源尾数
初期減耗
R:t=t
rの時の
尾数、加入量
R’:t=t
cの時の
尾数
4.2 生残率と全減少係数
生残率
Survival Rate
全減少率
mortality rate
t tN
N
S
=
+1(
1
−
S
)
生残率と全減少係数の関係
全減少係数 Z
total mortality coefficient
ZN dt dN − = ( ) ( ) Z Zt t Z t t t Z t Zt t e e N e N N N S e N N e N N − − + − + + − + − = = = = = 0 1 0 1 1 0 1 0
Z
S
≤
≤
≤
0
1
0
漁獲係数・自然死亡係数・漁獲率
漁獲係数 F Fishing mortality 自然死亡係数 M Natural Mortality 漁獲率 E exploitation rate 自然死亡率 D unconditioned natural mortality rate (F M ) Ze
e
S
M
F
Z
+ − −=
=
+
=
(
)
Z
F
S
E
= 1
−
自然死亡係数について
自然死亡:漁業以外の原 因による死亡 実際にはその要因は 様々 病気 被食 餌不足 環境の影響 他種との競合 (移出・密漁) (放流死亡) 具体的な推定は困難な 場合が多い 標識放流 飼育 漁獲対象となっていない資 源の資源量推定 経験式 感度解析によって結果へ の影響を評価して使用漁獲尾数と漁獲率
C: 漁獲尾数 E: 漁獲率 N: 資源尾数 S: 生残率 F: 漁獲係数 M: 自然死亡係数 Z: 全死亡係数(
)
( )(
e
)
N
M
F
F
N
Z
F
S
EN
C
M F+ −−
+
=
−
=
=
1
1
N C E =4.2.2 1つの年級の生残と死亡
2種類の期間 自然死亡のみが働くとき 漁獲による死亡と自然死 亡の両方が働くとき c t t < t tc ≤(1) t<t
c
のとき
漁獲が開始される前 自然死亡のみのよって減 少 加入量は Mt t t t te
N
N
N
M
dt
dN
−=
−
=
0 c r t t ≤ r Mt e N R = 0 −(2) t
c
<tのとき
自然死亡と漁獲死亡に よって減少 全期間でF, Mが等しいな らば 資源尾数は(
t t)
t tF
M
N
dt
dN
+
−
=
( )( ) ( c r ) c t t M t t M F te
R
R
e
R
N
− − − + −=
=
'
'
(
)
t t ZN N M F dt dN − = + − =4.3 ある年級からの漁獲
4.3.1 平衡漁獲尾数
寿命をt
λとする一生涯の漁獲尾数Y
n 加入量当たり生涯漁獲尾数は
( )( ){
1 e}
R' M F F Y F M t tc n − + − − + = λ ( )( ){
F M t tc}
M (tc tr ) ne
e
M
F
F
R
Y
− + − − −−
+
=
1
λ4.4 年平衡漁獲量
4.4.1 生涯漁獲尾数と年漁獲尾数
毎年同じ加入があり、
成長・生残に変化がな
いとすれば、生涯漁獲
尾数は、1年の漁獲尾
数と一致する
この年間漁獲尾数を
年平衡漁獲尾数とい
4.4.2 平衡年漁獲量
漁獲尾数ではなく漁獲量 (重量)で同様に考える 個体数は以下のように与 えられる t t W N F dt dY ⋅ ⋅ = w ここでWtは個体の重量 ( ) M F Z e R N Z t tc t + = = − − '体重
個体の重量は、von Bertalanffy の成長曲線から以下 のように求められる ( ){
}
( ){
}
( ) ( ) ( ){
}
( ) 3 3 1 1 , 1 3 3 2 3 3 3 0 0 0 0 0 − + − = − = = = − =∑
− − − − − − ∞ − − ∞ ∞ ∞ − − ∞ e e e W e W W ql W ql W e l l t t K t t K t t K t t K t t t t t K tYwの解
以上よりYwを解くと
( ) ( ){
( )( )}
− − = = − + + = − + + − = − − − − ∞∑
1 , 3 , 3 , 1 3 , 2 , 1 , 0 1 3 0 W 0 n t t nK M F n t t nK n t t M A n e nK M F e A e FRW Y c c r c ただし λ4.4.3
加入量当り漁獲量(Y
w/R)の変化
Yw/Rを決定する要因 (1) 個体成長・寿命に関する 物 W∞: 最大到達体重 K: 成長係数 t0: 形式上の体長0の年齢 tλ: 寿命 (2) 漁獲行為に関する物 (3) 生物個体群に関する物 M: 自然死亡係数 tr: 加入年齢(a)Y
w/RのFによる変化
以下のパラメータを
使用
現行のFは0.73
15 8 . 0 1 . 0 7 . 3 3000 1 . 0 0 = − = = = = = ∞ λ t t K t W M c(b)
Y
w/RのMによる変化
Mは信頼範囲が広いこと が多いので、Mの変化を 知っておく必要がある Mが大きくなるとYw/Rを最 大にするFは大きくなる M=0.45を超えるとF=1.0 までの範囲で単調増加 になる(c)
Y
w/RのM, t
cによる変化
tcを3.7~15で変化させる M=0.09では、tc=10.48 で最大 Mが大きくなるにつれて 最適なtcは下がる Mが0.45だとtc=4で最適(d)
Y
w/RとFの関係
Yw/RとYw/RFを示す 後者はCPUEに比例 Yw/RFは単調減少 CPUEは資源量に比例するの で、漁獲の圧力が強い程資源 量が減ることがわかる4.5等漁獲量曲線
Fとtcを同時にかえたとき のYw/Rの等高線 Ywそのものではない、加 入が変化しないと仮定 定常状態を仮定 右上の漁獲量が高い 漁業が振興すると左上か ら右下へ移行 10 . 0 , 1 . 0 18 . 0 , 7 . 3 , 3000 0 = = − = = = ∞ M K t t gr W r7 . 3 = c t 右図をtc=3.7で切断した断面。 F=0.22でY/Rが最大になり、加入量が一定ならば、そこで漁獲量が持続する のでMSYに相当する
適正漁獲量曲線
eumetric fishing curve
A-A’はtcを固定したとき に最大のYPRをとるFを 結んだ線 B-B’はFを固定したときに 最大のYPRをとるFを結 んだ線
漁獲量、資源量ともに増大させる方法
• 右図から、現状P(tc=3.7, F=0.73)をとおる 区域 Yw/R Yw/RF
適切な漁獲方策の定め方
横軸にF、縦軸に金額 (a)適正漁獲曲線で実現 する漁獲高 波線:漁獲コスト (b)漁獲高とコストの差 (収益)、最大にするFが MP(最大収益努力量) (c)は努力量当たり収益F
0.1
tcを固定してFを動かして 解析 Yw/R曲線のF=0における 傾きの1/10の勾配をもつ FをF0.1 F0.1を適正な漁獲強度と して利用する国もある4.5.3 過渡期の漁獲
実際に漁業規制を行う際 には、資源が回復するま でには相当の時間がか かる 特に漁獲規制直後には 漁獲量が落ち込む4.5.4 漁獲の強さと産卵親魚数
産卵親魚数は以下の
ように計算される
( ) ( )( ) ( ) ( ) ( )( ) + = > = ≤∑
∑
∑
= + − − − − − = − − = + − − − − λ λ t t t F M t t M t t t t t M t t m c t t t F M t t M t t m c c c r c c m r m c r c e e e R A t t e Re A t t 1マダイの例
マダイについて、漁獲が なかったときと漁獲したと きの産卵親魚量の比率 を示した(%SPR図) 産卵親魚量が漁獲がな かったときの1/2以上に 保てるようにするには、 右図の「好ましい領域」を 選ぶ必要があるまとめ
年級群の加入と生残過程について
生涯漁獲尾数(量)と年平衡漁獲尾数(量)
等漁獲量曲線(YPR図)の見方
適切な漁獲方策の推定
YPR、Y/RFからの推定 SPRからの推定実際の適用に当たっての注意
Vocabulary
dynamic pool model
survival rate mortality rate total mortality fishing mortality natural mortality exploitation rate unconditional natural mortality rate