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「総合的な学習」と社会教育行政の関わり方

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「総合的な学習」と社会教育行政の関わり方. Author(s). 玉井, 康之. Citation. 北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要, 創刊号: 109-112. Issue Date. 2001-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2773. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) 平成13年3月. “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 創刊号. ReportoftheResearchandEducationCenterforLifelongLearnlng−HokkaidoUniversityofEducationNo・1March. 報告. 「総合的な学習」と社会教育行政の関わり方 玉井 康之 北海道教育大学釧路校. はじめに. 2002年度から,小学校から高校までの全学校において「総合的な学習の時間」が完全実施され る。 「総合的な学習」では,指導要領に具体的な学習内容や到達目標を明記した単元内容が記載さ. れていない。ただ例示として,「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」の四領域が示され,「地 域や学校の特色に応じた課題などについて,学校の実態に応じた学習活動を行うものとする」と. だけ記されている。指導方法としては,「自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・ 実験,見学や調査,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習,問題解決的な学習を 積極的に取り入れること」を重視している。このように子ども達が,自ら体験的な活動や地域の 調べ学習を行うことを通じて,知識を総合化し,問題解決能力を養おうとするのである。 このような内容を持つ「総合的な学習」は,これまでの日本の学校教育の特徴の一つであった ナショナルカリキュラムに基づく画一的な内容ではなく,多様な内容・方法を地域・学校にあわ. せて展開できる内容を含むものとなっている。このような「総合的な学習」では,社会教育の持 つ蓄積と学校とが連携することが重要な課題となるのである。本稿では,「総合的な学習」の可 能性と社会教育との関わりをとらえることを課題としている。. −「総合的な学習」の特性と教科観・指導観の転換の必要性. 「総合的な学習」や「体験的な学習」の教育効果は,そもそも知識の暗記と異なり,点数で計 測できたり,短期的に成果をとらえられるものではない。子ども達の試行錯誤や調べ学習の中で,. 問題解決カヤ,総合的に知識を結びつけて考える力などが長期的に形成されるものである。すで にこの間の様々な調査では,「体験的な学習」をたくさん行った子どもほど,自律心や探求心が 強いことが明らかとなっている。また子ども達は地域に学ぶ活動を通じて,地域を知れば知るほ ど,地域を誇りに思うようになる。体験的な活動を含めて,地域に学ぶ教育活動は地域の人・物 に親しみを持たせる教育でもある。. 「総合的な学習」への相応は,現在どの学校煉試行錯誤段階でとまどいもあるが,とりわけ都. 会の学校を中心に,旧来からの学力観に固執する傾向が強い。そして,学力低下問題を懸念し, 「総合的な学習」を教科の補習や受験勉強の一貫に位置づけようとする傾向が今でも根強く残っ ている。. 実際に教師は,調べ学習などがどのような帰結を迎えるか,展開の過程で常に不安になる。そ の場合に,教師の姿勢として重要なことは,自分が持つ知識や方法の中に生徒を押しとどめない. ことである。日本の場合は,教師が知らないことは取り組まない傾向が強いが,アメリカの指導 法を見ると,教師の未知の教材やテーマに取り組ませている。. −109−. 2001.

(3) 玉井 康之. 最終的に教師が指導上必要とする力は,調べ方の技法とグループワークの技法である。とりわ け子どもの探求心を培うためには,子どもにとって身近な地域のものを探求し,その奥深さを感 じることが重要である。地域の調べ方を身につけておけば,どの地域に行っても調べ学習に取り 組むことができる。またグループワークの方法をとれば,集団思考の中で,多面的な考え方ヤア イデアに気づかせたり,いい意味で切瑳琢磨することができる。 二 地域性に応じた調べ学習のメニューと動機付け. 「総合的な学習」の領域に関しては,当初,教育課程審議会答申などでの例示として,「情報」 「国際理解」「環境」「健康・福祉」の四領域があげられた。そのため多くの研究指定校で,この 例示に沿った実践が展開された。. しかし例示はあくまでも例示である。真似をした後発の学校では,先発事例と同様の展開には ならないという事態も生じてきた。結局地域性や子どもの関心が異なれば,展開の仕方も異なっ てこざるを得ない。また「地域に学ぶ」ということは,その地域にしかないような典型的な特徴 のみを取り上げることではない。身近な生活の中で存在するあらゆるものは,すべて子ども達の テーマとして多彩に取り上げる対象となりうる。 「総合的な学習」の場合は,内容の出発点と帰着点が全く逆の展開になる場合も珍しくない。生. 徒の連想ゲーム的な地域調べ学習の展開の中で,予期せぬ分析内容や方法に発展していくことは 当然起こりうることである。地域テーマの取り上げ方は,身近な個別的な事象から普遍的なテー マに展開しても良いし,逆に普遍的なテーマから個別的な事象に展開しても良い。 地域の調べ学習のメニュー一覧としては,電話帳・住宅地図・郷土副読本・子供向け百科事典. などが参考になる。これらには,地諺フ施設・人材・子どもの興味を引く事項が網羅的に含まれ ている。これらから基礎知識を選択しつつ,実際に地域に出て調べ学習を展開すると,効果は高 い。. 三 社会教育と学校教育の相克と教育計画策定の連携. 1社会教育・学校教育の相克と学社融合の実践的課題 これまで,社会教育行政と学校教育行政は,同じ教育委貞会の中にあっても,必ずしも連携さ れているわけではなかった。市町村の社会教育行政は,首長部局との連携が強く,一方学校教育. 行政は,人事権を持つ都道府県行政との連携が強かった。またカリキュラムにおいては,社会教 育は,地域性を反映するが暖味なカリキュラムであるのに対して,学校数育は,細かく内容が定 められたカリキュラムが法律で制定されている。 このような状況を反映して,しばしば社会教育は,学校教育に村して,「狭い学力にのみ目が いき,青少年の体験的な学習などをやりたがらない」とか,「学校は地域に出ていかないで閉鎖 的である」という批判をしていた。一方学校数育は,社会教育に村して,「学校のカリキュラム. を考慮しないで,行事の動員主義になっている」という批判をしていた。 実際に,社会教育行政関係者で,学校の年間カリキュラム内容をとらえないで,事業計画を立. てている市町村も多い。また学校関係者も学校教育課程が社会教育の事業内容と密接な関係を 持っているにも関わらず,社会教育の事業内容をほとんど知らない人が多い。 このように行政の内部においても学校数育と社会教育の連携がうまく図られているとは言えな いところも多い。本来,近年の大きな課題である生涯学習社会は,学校数育と社会教育を包含し. ー110−.

(4) 「総合的な学習」と社会教育行政の関わり方. た概念であり,切り離して展開することはできない。これらの意志疎通が大きな課題となる。 2 学校経営計画と社会教育計画の連携の必要性. 学校数育と社会教育の意志疎通を図る上で最も重要なことは,学校経営計画と社会教育計画の, 計画投階での意志疎通である。学校も毎年学校経営計画を立てるが,この計画策定時に社会教育. の行事・事業を把握しておけば,それを学校数育課程に組み込むことができる。逆に社会教育 計画策定時に学校教育課程の内容を把握しておけば,それにあわせて社会教育の事業を組むこと ができる。. 例えば,学校でボランティアや地域体験・自然体験学習や環境整備などを企画する時に,その 内容・時期が分かっていれば,社会教育の方で,それにあわせた講座や行事を立てることができ る。行事は,市民行事と学校行事を分ける必要はなく,大人と子どもの共同の行事にできるもの も多い。そして,大人と子どもが触れあうことで,子どもに重要な教育効果を及ぼしている。 また「総合的な学習」で,地域づくりや地域再発見を大きなテーマにする場合に,どのような 施設・団体・人材が市町村内にあるか,また各行政の担当・役割や地域振興計画などを,社会教 育行政が把握しておけば,「総合的な学習」の指導・アドバイスも行いやすくなる。さらに「総 合的な学習」は,家庭での日常的な体験活動などとも関わってくるため,家庭のあり方を見直す 家庭教育講座とも関係してくる。 このように,本来的に一体化することができる学校経営計画と社会教育計画がこれまで独立的. に展開してきたことが,学社融合が求められる背景でもあり,また学校と地域が結びつきにくい 背景ともなっているのである。計画策走段階での連携は,今後の重要な課題と言えよう。. 四「総合的な学習」の展開のための社会教育および行政の役割と課題. 1コーディネーターとしての社会教育行政の役割と課題 すでにみたように「総合的な学習」は,地域との関連を強く有しているため,学校数育行政の. みならず,社会教育行政との関連も強めていかざるをえない。また地域の社会・生活環境全般に. 課題が広がるために,社会教育行政のみならず,一般行政との関連性も強い。「総合的な学習」は まさに生涯学習的な行政の役割を生かした学習活動の典型となりえるものである。 「総合的な学習」に果たす社会教育行政の役割は,第一に,首長部局の一般行政をコーディネ イトする役割である。例えば,役場各部局職員による「出前講座」を組織し,学校や市民の求め に応じてその専門的な分野や地域の現況などを解説することができる。また一般行政も各部局ご. とに様々な地域計画を策定しているが,これを教育の一環に活用することができる。これらの内. 容を生涯学習に生かすとすると,「地域計画」が「地域づくり計画」となる。したがって,社会 教育行政は,各行政部局の地域計画を把捉しておき,学校での「総合的な学習」に活用できるよ うにしておくことが重要である。このように社会教育は,一般行政の各部局の専門的な内容を教 育活動に生かしていくことができる。. 第二の社会教育行政の役割は,所轄の公民館・博物館・図書館などの事業や活動を,学校の「総 合的な学習」と連動させることである。例えば,公民館では様々な事業・講座を担っているが,. それらを学校のカリキュラムの一貫に位置づけて運営することもできる。博物館では,地域の発 掘成果を学習内容と結びつけ,基本的な資料を博物館で策定しておくことができる。図書館では, 子ども達の文献調べ・地域史資料探しの援助をすることができる。このような社会教育行政管轄. −111−.

(5) 玉井 康之. 施設は,地域の素材を有し,市民啓発の役割も担っているため,「総合的な学習」の発展の重要 な媒介施設となる。. 第三の社会教育行政の役割は,地域の諸団体・サークル・施設などとのつながりを持ち,これ らの団体・施設の人材をコーディネイトする役割である。すなわち,社会教育団体・市民サーク ルなどの活動内容・人材を把撞しつつ,生涯学習ボランティアの一貫に組み込んでいくことであ る。これらの団体・施設・人材を把握しておけば,学校・子どもからの問い合わせにも,紹介す ることができる。. 2 リーダーバンクの設置とボランティアの養成の役割と課題 地域の人材をリーダーとして活用する場合に,まず地域の人材を発掘するとともに,人材を養 成していかなければならない。それぞれの社会団体の実践者は,その分野の内容的な専門家でも あるが,必ずしも社会教育の一環として,啓発・指導の役割や社会教育指導者の役割を担ってい るわけではない。これらの実践者が,社会教育的な指導を,意識的にしてもらえるように働きか. けていかなければ,子どもに対する指導でさえも担っていくことはできない。 これらの発掘した人材をさらに,登録していき,全体としてのリーダーバンクの層を厚くして いく必要がある。リーダーバンクは,全市(町)的な人材バンクと学校ごとの人材バンクの両方を 設置していく必要がある。全市(町)的に指導しても良いという人と,自分の学校のみなら指導し ても良いという人に分かれるからである。学校単位で設置するリーダーバンクは,主に学校が設. 置するが,全市(町)的なリーダーバンクは,主に教育委員会が管轄することが適切である。. また「総合的な学習」や市民教育のリーダーは,現在社会活動を担っている人の中から発掘す るだけでなく,新たにやりたい人を養成していくことも重要である。アメリカでは,啓発活動の ボランティアも養成・研修講座を受けて活動に入る人が多い。社会教育行政が,「総合的な学習」. や市民教育のリーダー養成講座を開設し,学校とのパイプ役を担える人を増やしていくことが求 められている。. ぁわりに. 以上本稿では,「総合的な学習」の可能性と社会教育の役割をとらえてきた。指導観や教育内 容が大幅に変わる中では,地域の豊富な素材を活用することが「総合的な学習」を有効に機能さ せることであり,そのためには地域をコーディネイトする社会教育の役割もますます大きくなっ ている。. 社会教育と学校教育が,教育計画策定をはじめ,行政および地域のコーディネイトやリーダー 養成など,様々な分野で連携を図れば,地域づくりも学校教育課程も豊かになっていくのである。. 参考文献. 玉井康之著『地域に学ぶ「総合的な学習」−学社融合時代の学校・行政の役割−』東洋館出版社,2000年. −112−.

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