• 検索結果がありません。

知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発 -北海道今金高等養護学校モデル-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発 -北海道今金高等養護学校モデル-"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発 -北海道今金高等養 護学校モデル-. Author(s). 北村, 博幸. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 66(1): 41-49. Issue Date. 2015-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7799. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.1. 平 成 27 年 8 月 August, 2015. 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発 ― 北海道今金高等養護学校モデル ―. 北 村 博 幸 北海道教育大学函館校障害児臨床教室. Development of Career Education at High School for Students with Intellectual Disabilities ― Model of Hokkaido Imagane Special Support High School ―. KITAMURA Hiroyuki Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,知的障害高等養護学校の学校研究におけるキャリア教育開発のプロセスを検討 することを通して、知的障害高等養護学校のキャリア教育のモデルを提案することを目的とす る。キャリア教育をテーマとした学校研究を,計画(Plan)・実践(Do)・評価(Check)・改 善(Action)のプロセスを通して検討した。結果,知的障害教育におけるキャリア教育の用語 と概念の明確化, 「今金高等養護学校版キャリアプランニングマトリックス」の作成,研究成 果の多様な情報発信,キャリア教育の視点による授業改善と教育課程改善,学校研究のプロセ スの明確化,ができた。課題として,キャリアプランニングマトリックスを活用した授業実践 と評価を重ねて,より生徒の実態と地域の特性に応じたキャリアプランニングマトリックスに 改訂していくことがあげられた。. Ⅰ.はじめに. の在り方について」 (中央教育審議会,1997)や「今 後の専門高校における教育の在り方等について」. 本邦では,経済不況や雇用形態の変化といった. (理科教育および産業教育審議会,1998)等にお. 社会経済状況の変化に加え,新規学卒者の非正規. いて,高等学校における進路指導や職業教育の見. 雇用の増加や就職後3年以内の離職率の増加が問. 直しが必要であるとの問題提起がなされた。. 題となってきた。. これに応じ,「初等中等教育と高等教育の接続. この状況下, 「21世紀を展望した我が国の教育. の改善について」(中央教育審議会,1999)にお. 41.

(3) 北 村 博 幸. いて,学校間および学校と社会の円滑な接続を図. の特性や在籍する児童生徒の実態に応じて教育課. るために小学校段階から教育課程に位置づけて. 程が編成されなければならない。キャリア教育に. キャリア教育を段階的に実施することが求められ. 関しても同様である。. た。. そこで,本研究では知的障害高等養護学校の学. キャリア教育の定義は, 「児童生徒一人一人の. 校研究におけるキャリア教育開発のプロセスを検. キャリア発達を支援し,それぞれにふさわしい. 討することを通して,知的障害高等養護学校の. キャリアを形成していくために必要な意欲・態度. キャリア教育のモデルを提案することを目的とす. や能力を育てる教育」 (キャリア教育の推進に関. る。. する総合的調査協力者会議,2004)とされ,その 後「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要 な基盤となる能力や態度を育てることを通して, キャリア発達を促す教育」 (中央教育審議会, 1). Ⅱ.方 法 1.期 間. 2011)とされた。. 平成24年4月から平成26年3月まで。. 特別支援教育においては,平成21年版特別支援. 毎月1~2回(1回の平均は約60分)。. 教育高等部学習指導要領(文部科学省,2009)の 2) 中に,キャリア教育の推進が示された。. 2.研究体制. それに前後して,知的障害教育においても教育. 学校長,教頭,教諭,実習教諭(実習助手),. 委員会を中心にキャリア教育に関する研究が始. 寄宿舎指導員(代表)及び研究アドバイザー(筆. まった(岩手県立総合教育センター特別支援教育. 者)。. 室,2008;東京都教育委員会,2009)。 知的障害児童生徒のキャリア発達支援の枠組み. 3.場 面. として, 「職業観・勤労観を育むための学習プロ. 学校研究の場面として,校内研修会,校内学習. グラムの枠組み(例)」(国立教育政策研究所生徒. 会,研究授業,公開研究会を設定した。. 指導研究センター,2002)をもとに「キャリア発 達段階・内容表(試案)」(国立特別支援教育総合. 4.手続き. 研究所,2008)が示された。さらに,この試案の. キャリア教育をテーマとした校内研究を,「生. 検証と改善がなされ「キャリアプランニング・マ. 徒が主体となる」「教育課程の見直しを行う」「組. トリックス(試案)」(国立特別支援教育総合研究. 織の見直しを行う」という3つの視点の基づき,. 所,2010)が新たに示された。キャリア教育では. 計画(Plan)・実践(Do)・評価(Check)・改善. 能力を「competency(ある課題への対処能力)」. (Action)のプロセスで推進した。. ととらえている。この能力観に基づき,キャリア プランニング・マトリックス(試案)では「人間 関係形成能力」 「 ,情報活用能力」, 「将来設計能力」,. Ⅲ.学校研究とキャリア教育全体計画. 「意志決定能力」の4つの能力領域に分けられ,. 1.共通理解. さらに各能力領域には発達段階に応じた詳細な観. キャリア教育の学校研究にあたり,①から⑧ま. 3). 点が示された。 このキャリアプランニング・マ. での実践を通して,教職員における共通理解を. トリックス(試案)に基づく教育実践が全国の学. 図った。. 校教育現場で数多くなされてきている(菊地一. ① 学校研究の推進のための校内研修日と校内. 文,2012) 。. 学習会を学校計画に明確に位置づけ,学校の. 知的障害教育においては,学校がおかれた地域. 年間行事計画を作成した。. 42.

(4) 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発. ② 教職員の共通理解を図るため,卒業生の卒. また,保護者向説明用については,キャリア教. 業後の生活や仕事の状況,全国の知的障害特. 育というのは「車に乗っているお子様がいます。. 別支援学校におけるキャリア教育の実践例を. お子様一人一人が自分の得意・不得意にあった車. 校内研修の内容として最初に取り上げた。. (生き方)を周りの大人と一緒に探して,それに. ③ 専門的な用語を身近なことばに置き換えな. 乗りこんで,自分にあった進路(すなわち就労先. がら研究を進めた。どうしても必要な専門用. であったり,趣味であったり)を周りの大人と相. 語に関しては,用語に解説を加えた。. 談しながら最終的には自分で選び,夢や希望や目. ④ 各教職員が主体的で能動的に研修会に参加. 標といった目的地を自分で見つけながら進んでい. できるように,教職員一人一人のそれぞれの. く・・・という力を身につけさせることです。」. キャリアを話題とした研修会を実施した。. と例示を含む平易な言葉で示した。. ⑤ 各教職員の意見を引き出せるように,小グ ループに分かれ話し合った。さらに一人一人. 3.計 画(Plan). の意見を付箋紙に記入し,ホワイトボードに. 学校教育目標である「豊かな心と体を作り,努. 貼り出し,全体で話し合った。. 力する生徒を育てる」の達成と,目指す生徒像で. ⑥ 教職員から出された意見をキャリアプラン. ある「豊かな心と健やかな体を作る生徒」,「希望. ニング・マトリックス(国立特別支援教育研. に向かって努力する生徒」,「自ら判断し行動する. 究所,2010)にあてはめて,指導内容をイメー. 生徒」を育成するための教育方針として「キャリ. ジ化した。. ア教育全体計画:北海道今金高等養護学校版キャ. ⑦ それぞれの校内研修や学習会の終了後に内. リアプランニングマトリックス」(以下,キャリ. 容を資料(研修部だより)として作成し,教. アプランニングマトリックス)(表1)を①から. 職員に配布した。. ③までの実践を通して作成した。. ⑧ 保護者との共通理解を図るため,学校説明. ① 在校生の学校生活の様子と卒業生の生活や. 会や保護者懇談会にて取り組みを紹介した。. 仕事の状況を明らかにし,生徒の実態と学校. また,関係機関や地域との共通理解を図るた. の状況を把握した。. めに,啓蒙冊子を発行し,配布した。. ② 学校教育目標を最終目標とした。その達成 のために必要な教育方針・指導方針を各教科. 2.キャリア教育の考え方(定義). や各学年段階に応じて示した。. 中央教育審議会の答申(2011)や先行研究(石. ③ 生徒の実態と学校教育目標及び教育方針・. 塚,2009;下山,2009;山崎,2013)を参考に,. 指導方針に基づき,キャリアプランニングマ. 教職員用と保護者向説明用にわけてキャリア教育. トリックスを作成した。. の考え方(定義)を示した。 教職員用については,キャリア教育とは「自己. 4.実 践(Do). 有能感や自信,意欲,向上心や夢・希望・目標を. キャリアプランニングマトリックスの個々の項. 抱かせ,自分の人生をよりよく生きるための努力. 目に基づき,系統的な指導の形の見直し及び授業. や工夫を自ら続けられる心と体,スキルを身につ. づくりの改善を行った。. けさせること。その一要素として,進路指導・進. 系統的な指導の形の見直しを①から③までの実. 路決定があり,進路を決めさせることだけではな. 践を通して行った。. い。そうして身につけた知識や技術,価値観や考. ① これまでの教育活動を,キャリアプランニ. え方は,この厳しい世の中をたくましく“生きる. ングマトリックスと照らし合わせて見直しを. 力”になる。 」と定義した。. 行った。授業に関しては,授業担当者の委員. 43.

(5) 北 村 博 幸. 表1 今金高等養護学校版キャリアプランニングマトリックス 観点の中身 (解説). 指導観点. 心と体. 自己理解. 職 業. 自己内省. 知識・技術. コミュニ ケーション. 応用力. 感 性. 44. ・元気 ・体力 ・健康 ・食生活 ・睡眠・休養 ・規則正しい生活 ・ストレスコントロール. 指導の柱. 1学年段階 (学びを通して気づく・知る). 心身の健康. ○ 健康でたくましい心と体の必要性に気づかせ,身につけることができ るよう指導する。. 基本的生活習慣の確立. ○ 生活リズムを整え,望ましい食生活や規則正しい生活ができるよう指 導する。. 長所・課題の理解. ○ 自分の長所や課題に気づくことができるよう指導する。. 他者からの評価の受容. ○ 他者から受けた評価に,耳を傾ける気持ちを育む。. ・自己の長所や課題を見つける力 ・他者からの評価を受ける力. ・責任感 ・向上心 ・自立心 ・実行力 働く態度・能力 ・職業理解 ・分析能力 ・働く意識 ・働く喜びを知る ・将来の目標を立てる力 ・将来の目標に向けて課題を解決 職業理解 する力 ・集中力 ・持久力 ・持続力 ・忍耐力 ・積極性 ・自主性 ・素直さ ・忠実さ ・負けず嫌い ・前向きである ・様々な物に興味を持つ ・謙虚な心 ・反省の心 ・感謝の心 ・公共交通機関の利用 ・金銭管理 ・職種に応じた知識技能 ・読み書き計算 ・常識 ・マナー ・身だしなみ・礼儀 ・ルール ・整理整頓 ・声の大きさ ・あいさつ ・返事 ・報告 連絡 相談 ・言葉遣い ・話す ・聞く ・協調性 ・人づきあい ・他者理解 ・洞察力 ・判断力 ・理解力 ・計画性 ・意思決定 ・柔軟性 ・効率性 ・情報収集 ・情報活用 ・取捨選択能力 ・自己統制力 ・危険回避 ・協力 ・余暇の充実. ・発想力 ・表現力 ・感受性. ○ 与えられた仕事の意味を理解して時間いっぱい集中し取り組めるよう 指導する。 ○ 身の回りのいろいろな仕事について,社会との関わりやその仕事に求 められる能力などを考える力を育てる。. 物事に対する意欲. ○ 時間いっぱい集中して学習する意識を持ち,目標を達成しようとする 気持ちを育む。 ○ 自主的・積極的に活動に取り組む大切さを知り,自ら努力を続けよう とする気持ちを育む。. 課題を解決しようとす る心. ○ 成功や失敗を繰り返しながら反省を積み重ね,他者の意見も受け入れ ながら,自分の気持ちや考えを整理する力を育てる。 ○ 自己決定・自己反省の過程を繰り返し,課題を解決する姿勢を育てる。. 社会の仕組みなどの 知識・技術. ○ 集団生活を通して,社会のルール,マナー,礼儀などを意識して生活 し,行動できる力を育てる。. 読み書き計算などの 知識・技能. ○ 金銭管理や読み書き,計算などの生活に必要な基礎的知識が身につく よう指導する。. 自分から相手に発信. ○ 場や状況に合わせた声の大きさで,あいさつ,返事・報告ができる力 を育む。. 相手の話を聞いて判断. ○ 相手の話を最後まで落ち着いて聞くことができる力を育む。. 相手を受け入れ, 自らそこに参加する. ○ 相手の考え・気持ちを受け入れる力や集団に合わせる力を育てる。. 意思決定. ○ TPOに応じて何ができるか,何をすべきかの選択肢を与え,その意 味を理解させ,選択していける(判断する)力を育てる。. 将来設計. ○ 目標を達成するためには工程があることを理解させ,与えられた計画 や工程に取り組ませ,習慣化できるよう指導する。. 情報活用. ○ 学校・寄宿舎・地域社会の中には様々な活動があることを,体験を通 じて理解できるよう指導する。. 人間関係. ○ 集団活動に参加し,他者と協力することができる力を育む。. 感受性. ○ 事象や人物によって様々な感じ方・とらえ方があることを知り,経験 や疑似体験を通じてその価値に気づいたり認めたりできる心を育む。. 表現力. ○ 真・善・美として感じたことを言葉・造形・音楽・行動などで表現で きる力を育む。.

(6) 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発. 2学年段階 (将来を意識し,自ら学ぶ・行動する). 3学年段階 (将来を見据え,自ら学ぶ・行動する). ○ 自らの体と心の変化をとらえ,心身の健康を維持できるよう指導する。 ○ 自立した生活を意識し,望ましい生活習慣を身につけることができる よう指導する。. ○ 卒業後の生活を見据え,自ら心と身体の健康が保てるよう,望ましい 生活を組み立てる力を育てる。. ○ 自分の長所や課題を受け入れるとともに,自己肯定感を持つことがで きるよう指導する。. ○ 自分の長所や課題を踏まえて,自分の気持ちや考えをしっかりと持ち, 自分らしさを持てるように指導する。. ○ 他者から受けた評価を受け入れる気持ちを育む。. ○ 他者の気持ちや考えを理解・尊重し,自分のあり方・生き方に生かす ことができる力を育てる。. ○ 手早さ,正確さ,丁寧さを意識しながら,与えられた仕事に取り組む 事ができる力を育てる。. ○ 自ら仕事の工程や課題を理解し,効率よくやりとげる力を育てる。. ○ 自分の適性がわかり,将来の職業について具体的に考えることができ る力を育てる。. ○ 職業生活の中にやりがいや生きがいを見いだし,前向きに自己の未来 を設計する意識や社会の一員である自覚を育てる。. 継 続. ○ 自らの課題解決に向け,素直な気持ちで物事に取り組む姿勢を育てる。 ○ 他者への感謝の気持ちを持ち,それを表現する姿勢を育てる。 継 続. ○ 社会のルール,マナー,礼儀などを,状況に応じて使うことができる 力を育てる。. ○ 社会人として必要なルール,マナー,礼儀を身につけ,社会の一員と して生活できる力を育てる。. ○ 身につけた知識を,日常生活で生かすことができる力を育てる。. ○ 身につけた知識を応用し,社会の中で生きていく力を育てる。. ○ あいさつや返事,簡単な敬語を使うなど,社会生活に必要な意思表現 能力が高まるよう,日常的に指導する。. ○ その場に応じたあいさつ,返事・報告をする力と,相手の人権を尊重 するような適切な言語能力を育てる。. ○ 必要な支援を他者に求めることができる力を育む。. ○ 解決出来ない問題に対して,地域の中で適切な相談相手を選んで支援 を求める力を育てる。. ○ 相手の立場や考え方を理解して受け入れ,かかわることができる力を 育てる。. ○ 自分や他者のよい点を認め,思いやりを持って,よりよい人間関係を 形成できる力を育む。. ○ TPO,自己の個性や興味・関心に基づいて,よりよい選択をできる 力を育む。. ○ 卒業後の家庭生活・社会生活・職業生活において,自らの意思と責任 でよりよい選択・決定を行うことができる力を育む。. ○ 家庭生活・学校生活に必要な習慣の確立を目指し,職業生活に生かす 力を育む。. ○ 社会生活・職業生活等に必要な習慣の形成に向けた指導をするととも に,余暇の活用等を図り,前向きに自己の将来を設計する力を育む。. ○ 自らの興味のある活動や職業等に関して,様々な情報を収集し,自ら 活用できる力を育成する。. ○ 希望する進路の実現に向け,卒業後の生活に必要な情報収集・取捨選 択をし,自ら判断して活用できる力を育む。. ○ 集団においいて自分が果たす役割を理解し,周りと協力することがで きる力を育む。. ○ 集団の一員として自ら役割を理解し,協力していくとともに,その役 割を遂行していく力を育む。. 継 続. ○ 事象や人物によって様々な感じ方・とらえ方があることを理解した上 で,柔軟に物事を受け入れる心を育む。. ○ 真・善・美として感じたことを,自身の理想や希望を込めて言葉・造 形・音楽・行動などで適切に表現できる力を育む。. ○ 卒業後の豊かな生活を目指し,真・善・美として感じたことを,自身 の理想や希望を込めて適切に表現できる力を育む。. 45.

(7) 北 村 博 幸. 会(例:生活単元学習部会)において,時間. 行う自己評価,生徒同士が行う相互評価,ポー. 割や学校行事に関しては,担当委員会(例:. トフォリオによる評価,等を開発した。. 教育課程検討委員会)において検討し,改善. ② 記録しやすく,次年度に引き継ぎが容易な. を行った。. 記録様式を開発した。作業学習では「評価様. ② キャリアプランニングマトリックスの内容. 式」を作成した。. を,各種の経営案に反映させた。学年経営案. ③ 画像データを教員がアクセスしやすいよう. や学科経営案にある「目標」や「重点」は,. に校内LANにおいて管理し,適宜評価に活. キャリア教育全体計画にある教育方針を具体. 用した。. 的にして取り入れた。(表2)(表3). ④ 評価方法を組み合わせて,生徒の変容を多. ③ キャリアプランニングマトリックスと授 業・行事や各種経営案をもとに,題材の取捨. 面的とらえるようにした。 ⑤ 評価の観点を授業の目標と一致させ,具体. 選択や配列,指導時期,指導体制等多面的に 判断して各種年間指導計画を作成した。. 的な表現で評価できるようにした。 ⑥ 評価結果をデータベース化し,生徒の変容. 同時に,作業学習では授業づくりを④から⑧ま. を経年的にとらえることができるようにした。. での視点で改善し,授業実践を行った。. 指導者の評価を,授業改善につなげられるよう. ④ 生徒の様子がキャリアプランニングマト. にすることに留意し⑦から⑧の実践を通して行っ. リックスのどの段階にあるのかをチェックす. た。. ることで実態の把握を行った。. ⑦ 授業は複数の教員で行うため,各教員が相. ⑤ 生徒の実態に応じた単元毎の指導計画を作. 互に指導について評価を行った。. 成した。その際,生徒にキャリアプランニン. ⑧ 生徒,保護者,教職員,学校評議員が行っ. グマトリックスのどの段階の成長を促すかを. た学校評価の結果を,指導者の評価として活. 明記した。. 用した。. ⑥ 単元毎の指導計画に基づき授業の指導案を 作成した。作成に際しては,キャリアプラン. 6.改 善(Action). ニングマトリックスから取り入れた内容に関. 生徒の評価及び指導者の評価をもとに,各取り. して,教師側の抑えとして意味づけ・価値づ. 組み一つ一つを分析し,目標達成に不足している. け・重みづけ・関連づけを行った。. 部分を探り,以下の①から④までの取り組みを通. ⑦ 授業の指導案の中に個別の指導計画に示さ れている生徒一人一人の個別の目標も反映さ せた。 ⑧ 指導案に基づき指導の手だて,教材・教具, コミュニケーションの取り方を工夫した。. して計画や実践の改善を行った。 ① 最も改善につながる検討が可能な会議を設 定し,改善策を作成した。会議としては,教 科部会,指導形態部会,学科部会,学年部会, であった。 ② 個別指導や個別の支援が必要と考えられた. 5.評 価(Check). 場合は,放課後等を活用し指導及び支援を. 授業実践の後に,生徒の評価と指導者の評価を. 行った。. 行った。. ③ 校外で行われる研究会や研修会に参加し,. 生徒の評価を,生徒の変容を明確にとらえるこ. 新たな知見や実践例を収集し,学校の教育活. とに留意し①から⑥の実践を通して行った。. 動の改善に役立てた。. ① 多様な評価方法を開発・実践を通して生徒. また,校内においても学習会を計画し,特. の変容をとらえた。評価方法として,生徒の. にキャリア教育に関する学習会を定期的に開. 46.

(8) 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発. 表2 学年経営案(抜粋) 形 態. 学年. 日常生活の指導. 生活単元学習. 課題学習 (国語) (算数). 目 標. 1学年. あいさつ,言葉遣い,身だしなみなどの基本的な生活習慣を身につけさせる。. 2学年. 自立した生活を意識し,望ましい生活習慣を身につけさせる。. 3学年. 卒業後の生活に必要な基本的な生活習慣の定着を図る。. 1学年. 家庭生活・社会生活において必要となる基礎的な知識・技能・コミュニケーション能 力を習得させる。. 2学年. 社会の一員として必要なコミュニケーション能力や,生活するために必要な知識・技 能を育てる。. 3学年. 自分で考え,進んで活動し,周囲を認め,仲間と協力する姿勢を育てる。. 1学年. 日常生活に必要な国語,数学的な基礎的知識の定着を図る。. 2学年. 社会生活に必要な国語,数学的な基礎的知識を身につけさせるとともに,それを社会 の中で活用する力を育てる。. 3学年. 社会生活に必要な国語,数学的な基礎的知識を身につけるとともに,実社会で働くた めに必要な態度及びコミュニケーション能力を育てる。 表3 学科経営案(抜粋). 学 科. 目 標 ①正しい手順や方法で作業を行い集中力や作業に必要な体力などの基本的な能力を身につけさせる。 ②挨拶,返事,報告などの作業をするのに必要な基礎となる力を身につけさせながら,仲間と協力 して取り組む姿勢を育てる。対応の仕方など基本的な行動様式を育成する。. 産 業 科. ③健康・安全指導を徹底するとともに,整理整とん,清掃などの習慣を育成する。 ④生産から販売,納品までの流通過程の学習を通し,流通の仕組みを体験させ働く喜びや意欲の向 上を図る。 ⑤「作業強化日」 「現場実習」を通し,自らの課題を整理するとともに課題解決への意欲を高める。 ⑥販売学習などを通し,実践的な態度や勤労意欲を育成する。 ①縫工,リサイクル,紙漉,環境整備等の作業を通して興味関心の幅を広げ,生活経験を豊かにす るとともに,働くことの意義や喜びを理解する気持ちを育てる。 ②現場実習,作業強化日などを通して自己の長所を知り課題を理解し,他者から受けた評価を受け 入れる気持ちを育てる。. 生活家庭科. ③働くために必要な態度・習慣,集中力や注意力,課題解決に向けて努力する姿勢を育てる。 ④作業学習や日常生活に必要な基本動作及び巧緻動作,協応動作の向上を図るとともに,社会のルー ルやマナー,礼儀を身につける力を育てる。 ⑤安全に作業に取り組めるよう,道具等の取り扱いに気をつける力を育てる。 ⑥ホームルームや他教科と関連を図りながら,望ましい生活習慣や健康を維持できる力を育てる。 ⑦場に応じた挨拶,返事・報告をする力や,必要な支援を他者に求めることができる力を育てる。. 催し,キャリア教育の観点を日常の指導や支. 7.連 携. 援につなげられるように取り組んだ。. キャリア教育を推進するにあたっては,連携が. ④ キャリア教育を円滑に推進していくための. 必須の条件となる。そこで,教職員同士の連携,. 組織のあり方について,校務分掌検討委員会. 保護者との連携,関係機関との連携,地域社会と. を設置し改善策を検討した。. の連携,に取り組んだ。 教員同士の連携では,指導効果の向上のために 各授業の枠をこえて話し合いを行い,指導目標,. 47.

(9) 北 村 博 幸. 指導時期を設定した。同様に,学校行事において. トリックス」を作成したことがあげられる。この. も校務分掌の枠をこえて話し合いを行い,より教. キャリアプランニングマトリックスは生徒の実態. 育効果の高い行事を運営した。. や地域の様子,社会状況の変化に応じて,常に改. 保護者との連携では,入学前の学校説明会や入. 訂がなされる前提で作成されたことも大きな特徴. 学後最初の学年懇談会において,キャリア教育の. である。. 必要性について説明し,キャリア教育に関わる各. 第三に,研究成果の情報発信を広く行ったこと. 活動について協力を求めた。日常的に保護者と連. があげられる。具体的には,キャリア教育の啓発. 絡を取りながら,個別の指導計画や個別の支援計. 冊子である「いまようからのキャリア教育のすす. 画を作成し,また評価も行った。. め」(北海道今金高等養護学校,2014)を作成し. 関係機関との連携では,キャリア教育の推進上. 関係機関に配布したこと,また,知的障害養護学. 必要と考え教育行政との連携を図った。例えば,. 校だけではなく幼稚園・小学校・中学校・高等学. 学校がおかれている地域は交通の利便が極めて悪. 校の教員も対象としたキャリア教育に関わる公開. く,生徒が現場実習先に行くことができない場合. 研究会を定期的に開催したことである。. があったため,学校と現場実習先の送迎のために. 第四に,キャリア教育の視点で授業改善を継続. 町と連携しスクールバスの活用を行った。. し,質の高い授業を目指し,日々の授業実践が取. 地域社会との連携では,生徒の将来の社会生活. り組まれるようになったことがあげられる。この. に向けた準備として,地域住民との交流も必要と. 授業の改善を通して,最終的には教育課程の改善. 考え取り組みを行った。町民公開授業を年3回実. を目指したことが特徴である。. 施したり,一部の学校行事を町民に公開したり,. 第五に,学校教育現場における学校研究の推進. 日常的に学校と町の連携を図った。. のプロセスと留意事項を示したことがあげられ る。学校教育現場ではどの学校も学校研究に取り. Ⅳ.おわりに. 組んでいる。しかし,学校研究の推進にあたって は多くの課題も指摘されている。安部(2010)は,. 学校教育における様々な課題の中にキャリア教. 学校研究の課題として①発表のための形式的な研. 育の充実がある。. 究になりやすい,②曖昧で抽象的なことばによる. 北海道今金高等養護学校が,そのキャリア教育. 混乱がある,③よそ行きの授業の公開になってい. の研究と実践を平成24年度から平成26年度にかけ. る,④研究の蓄積がされない,⑤批判にさらされ. 先導的に行ったことにまず大きな意義がある。2. 意欲を失う,をあげている。本研究で示した学校. カ年の校内研究の顕著な成果として,以下の5点. 研究のプロセスと留意事項はこれらの課題解決に. をあげることができる。. もつながると考えられる。. 第一に, 「キャリア」「キャリア発達」「キャリ. 最後に課題として次のことを指摘できる。. 教育」というその内容の把握が困難な用語と概念. 本研究で作成したキャリアプランニングマト. を,教員はもとより保護者にも分かりやすく定義. リックスを活用して授業を計画し実施し評価する. したことがあげられる。その上で,知的障害高等. ことを重ね,活用しにくい点を明らかにする。活. 養護学校では職業教育と進路指導を中心に行われ. 用しにくい点の要因を分析し,常に生徒の実態と. てきたキャリア教育に関わる内容を,作業学習と. 地域の特性に応じた「今金高等養護学校版キャリ. 学校行事を通して実践できたことである。. アプランニングマトリックス」の改訂版の作成を. 第二に,キャリア教育の実践を通して,生徒の. 継続することが課題である。. 実態と地域の特性に応じた「キャリア教育全体計 画:今金高等養護学校版キャリアプランニングマ. 48.

(10) 知的障害高等養護学校におけるキャリア教育の開発. 石塚謙二(2009):特別支援教育×特別支援教育-イン. 謝 辞. ターンシップ・就労支援はここまで変わる-.東洋館. 北海道今金高等養護学校の学校研究に参加をさ せていただけましたことにつきまして,高嶋利次 郎校長をはじめとして全教職員の皆さまに心より お礼申し上げます。中でも,多くのご示唆をいた だきました研修部長の矢倉一教諭(現:北海道中 札内高等養護学校幕別分校)には記して感謝申し 上げます。. 出版社. 岩手県立総合教育センター特別支援教育室(2008) :特別 支援学校(知的)キャリア教育推進ガイドブック. 菊地一文(2012):特別支援教育のためのキャリア教育 ケースブック-事例から学ぶキャリア教育の考え方-. ジアース教育新社. キャリア教育の推進に関する総合的調査協力者会議 (2004) :児童生徒一人一人の勤労観,職業観を育む教 育の推進推進について(調査研究報告書) . 国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2002) :児童 生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について.. 註 1)キャリアとは,人が生涯の中で様々な役割を果たす 過程で,自らの役割の価値や自分と役割の関係を見い だしていく連なりや積み重ねである。 キャリア発達とは,社会の中で自分の役割を果たし ながら,自分らしい生き方を実現していく過程である。 2)第1章 総則,第2節 教育課程の編成,第4款 教育 課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項,4 職業 教育に関して配慮すべき事項,⑶。 3)人間関係形成能力とは、他者の個性を尊重し,自己 の個性を発揮しながら,人とコミュニケーションを図 り,協力・共同する力。 将来設計能力とは,夢や希望を持って将来の生き方 や生活を考え,社会の現実を踏まえながら,前向きに 将来を設計する力。. 国立特別支援教育総合研究所(2008):知的障害者の確か な就労を目指した指導方法・指導内容に関する研究. 平成18・19年度課題別研究報告書. 国立特別支援教育総合研究所(2010):知的障害教育にお けるキャリア教育の在り方に関する研究.研究成果報 告書. 文部科学省(2009) :平成21年版特別支援教育高等部学習 指導要領. 名古屋恒彦(2013) :知的障害児発,キャリア教育.東洋館 出版社. 理科教育および産業教育審議会(1998):今後の専門高校 における教育の在り方等について. 下山英雄(2009) :キャリア教育の心理学-大人は,子ど もと若者に何を伝えたいのか-.東海教育研究所. 東京都教育委員会(2009):知的障害特別支援学校におけ るキャリア教育の推進.. 情報活用能力とは,学ぶこと・働くことの意義や役 割,その多様性を理解して,幅広い情報を進路や生き. 山崎保寿(2013) :キャリア教育の基礎・基本-考え方・ 実践事例・教材・重要資料集-.学事出版.. 方の選択に生かす力。 意思決定能力とは,自分の意思と責任でよりよい選 択・決定を行う力。その過程で,課題や葛藤に対して 積極的に取り組み克服する力。. 参考文献 北海道今金高等養護学校(2013) :平成24年度北海道今金 高等養護学校研究紀要.. 引用文献. 北海道今金高等養護学校(2014) :平成25年度北海道今金 高等養護学校研究紀要.. 安部博志(2010) :発達障害の子どもの指導で悩む先生へ のメッセージ.明治図書. 中央教育審議会(1997):21世紀を展望した我が国の教育. (函館校准教授). の在り方について(答申). 中央教育審議会(1999):初等中等教育と高等教育の接続 の改善について. 中央教育審議会(2011):今後の学校におけるキャリア教 育・職業教育の在り方について(答申). 北海道今金高等養護学校(2014):いまようからのキャリ ア教育のすすめ-障がいを持つ児童・生徒を指導・支 援されている学校の皆様へ-.. 49.

(11)

(12)

参照

関連したドキュメント

都道府県 高等学校 体育連盟 都道府県

オーディエンスの生徒も勝敗を考えながらディベートを観戦し、ディベートが終わると 挙手で Government が勝ったか

また、学内の専門スタッフである SC や養護教諭が外部の専門機関に援助を求める際、依頼後もその支援にか かわる対象校が

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

8 地域巡り(地域探検) 実施 学校 ・公共交通機関を使用する場合は、混雑する ラッシュ時間を避ける。. 9 社会科見学・遠足等校外学習

○現場実習生受け入れ 南幌養護学校中学部3年 3名 夕張高等養護学校中学部3年 1名

課題 学習対象 学習事項 学習項目 学習項目の解説 キーワード. 生徒が探究的にか