形跡と総括的環境質のフィールド調査∼
著者
長嶋 俊介
雑誌名
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers
巻
46
ページ
38-43
別言語のタイトル
Inprint of Human Activities and Environmental
Disturbances on the Uninhibited Island: Uji
Islands―Field Study for Check the Historical
Trace and the Quality of Comprehensive
Environment―
宇 治 群 島:人 間 諸 活 動 の 痕 跡 と 環 境 負 荷 調 査
∼史 的形 跡 と総 括 的環境 質 の フ ィール ド調 査 ∼
長 嶋俊 介
多島圏研究セ ンター
Inprint of Human Activities and Environmental Disturbances
on the Uninhibited Island: Uji Islands
— Field Study for Check the Historical Trace and
the Quality of Comprehensive Environment —
NAGASHIMA Shunsuke
1宇 治 群 島 の位 置 付 け 坊 津 や 笠 沙 、 そ して 長 島 や 甑 島 に と っ て 、 宇 治 群 島 は 多 年 に 亘 り重 要 な 漁 場 で あ っ た 。 坊 津 や 枕 崎 か ら大 正 期 トカ ラ 海 域 → 昭 和 期 遠 洋 漁 業 ・太 平 洋 海 域 へ の 進 出 前 、 近 海 漁 場 と し て 極 め て 重 要 な 位 置 付 け を し て い る。 地 域 経 済 基 盤 が ま さ に 作 られ た 時 期 に な る 。 ま た 長 島 や 甑 島 で は 宝 石 珊 瑚 の 採 集 に 来 て お り、 そ の 量 と質 で 、 横 綱(地 域 内 ラ ン キ ン グ)を 競 うほ どで あ っ た 。 化 粧 廻 し状 の 幕 もそ れ ら各 地 の 博 物 館 資 料 館 に は飾 られ て い る。写真 l漁 の発 展(坊津歴 中資料センター輝津館)、 坊 津 で は 、 鹿 児 島 全 域 の 地 域 特 性 や 個 性 を 見 直 し た 「地 元 学 」 的 地 図 づ く り の パ ネ ル が あ っ た 。 そ こ で は 、 宇 治 群 島 も 天 然 記 念 物 カ ラ ス バ ト ・ヤ マ シ ョ ウ ビ ン な ど の 飛 来 地 ・ク ロ イ ワ ツ ク ツ ク や マ メ ク ワ ガ タ 等 の 生 息 域 と し て 意 識 さ れ て い る 。 な お 坊 津 に は 女 島 遭 難 者 慰 霊 碑 が あ っ た 。 明 治39年10月24 日33名 の 遭 難 碑 で あ るが 、 刻 印 され た カ ツ オ 漁 以 外 に も宝 石 珊 瑚 で 有 名 な 海 域 で も あ る 。 宇 治 写真2宇 治群 島 「地元学 」的認 識 群 島 は 、そ の 中継 地 点 で も あ る 。 漁 場 の 連 続 性 は 、 甑 ・長 島 か ら 南 下 す る ル ー トで も 言 え る 。 事 実 調 査 時 点 で 、夫 婦 船 漁 師 が 、 宇 治 島 小 浦 波 止 に 停 泊 して 、 船 内 で 網 作 業 を して い た 。 昭 和28 年 鹿 児 島 大 学 調 査 を 受 け て の 宇 治 群 島 開 発 計 画 に 拘 っ た 時 代 を 振 り返 っ た ホ ー ム ペ ー ジ に も 、 甑 島生 活 時 代 の 記 述 が 見 られ る。 東 西 の み な らず 、 南 北 に も ま さ に 連 続 海 域 で あ る 。 坊 津 と ほ ぼ 同 距 離 の 笠 沙 も 、 同 町 内 海 域 で も あ り 、 こ だ わ り が 強 い 。 野 間 半 島 展 望 台 で 、 方 向 を 示 す と と も に 「自 然 の 宝 庫 」 「野 鳥 の 楽 園 」 とす る 記 述 と な っ て い る 。 海 の 冒 険 館:笠 沙 恵 比 寿 で は 写 真4「 ア ドベ ン チ ャ ー ・ ト リ ッ プ ・ポ イ ン ト」 と し て 位 置 づ け て い る 。 だ が 残 念 な が ら 、 笠 沙 町 ・資 料 館 ・売
店 で の 宇 治 ・草 垣 群 島 関 係 の 書 籍 ・資 料 は 、 教 育 委 員 会 作 成 の 『笠 沙 町 史 』 以 外 は 皆 無 で あ る 。 島 と 鯨 ・カ ジ キ 漁 の 「遊 び ゾ ー ン 」 に 、 意 外 な 「環 」 の 存 在 を 提 起 し て い る 。 甑 島 と の 問 の 海 域(笠 沙 か ら は 甑 島 は 大 陸 の 連 な り の よ う な 広 域 性 を 感 じ さ せ る)、 そ こ は 内 海 面 の よ う な 繋 が りで あ る 。 そ こ と 無 人 島 鷹 島 、 野 間 半 島 か ら も 見 え る 津 倉 瀬 、 宇 治 ・ 草 垣 と 連 続 し て 、 さ ら に 黒 島 ・硫 黄 島 ・竹 島 が 連 な る。 ま さ に 、 連 続 的 な 円 環 状 「ク ル ー ズ ゾ ー ン 」 と し て の 可 能 性 は 、 「ブ ル ー ツ ー リ ズ ム 」 に 関 す る 、 本 土 側 か ら の 展 望 を 示 唆 す る も の で も あ る 。 黒 島 は 枕 崎 ・坊 津 ・笠 沙 い ず れ か ら も よ く 見 え る 。 宇 治 群 島 も ほ ぼ そ の 射 程 距 離 に あ る 。 写 真3-4笠 沙 町 の 宇 治 群 島認 識(野 間 半 島) 草 垣 群 島 利 用 認 識 に 興 味深 い 県 の 行 政 判 断 が05年9月 下 され た 。 串 木 野 市 開 発 業 者 の 下 ノ 島2.7haで の 岩 石 採 取 申請 を却 下 した 。 ① 急 峻 で 計 画 通 り採 石 は 困 難 。 ② 表 土 で 海 汚 染 。 水 産 業 利 益 を 損 な う危 惧 。 ③ 搬 出 も 困 難 で 採 算 性 ・継 続 性 に支 障 。 ④ 「草 垣 群 島 全 体 の 自然 環 境 や 景 観 を 損 な う可 能 性 」 が 理 由 。 無 論 上 ノ 島 の 鳥 獣 保 護 区特 別 保 護 地 区 へ の 配 慮 も うか が い 知 れ る。 国 民 的 視 座 で 守 る べ き 価 値 認 識 が 、 無 人 島 環 境 に対 して も為 され る 時 代 が 、 訪 れ て い る 。 重 い 認 識 と して 受 け 止 め た い 。 無 人 島 の 環 境 公 益 性 は 、 広 域 水 面 管 理 拠 点 、 自然 生 命 循 環 の 起 点 と し て も重 い が 、景 観 と して も認 識 され て い る。 2宇 治(家 島)島 宇 治 島 ・向 島 の 問 の 隼 人 の 瀬 戸 、 並 び に 諸 島 近 海 は 小 島 が 多 い の で 、 写 真 の 通 り、 東 海 上 に 停 泊 した 。 灯 台 は95m南 日岳 の 所 な の で 、 意 外 に 低 い位 置 で 瞬
い て い た 。 昆 虫 類 の 飛 来 は な い が 、 飛 魚 ・イ カ が 集 ま り た も で す く い 取 れ る ほ ど で あ っ た 。 近 海 の 豊 か さ が 偲 ば れ る 。 翌 早 朝 ボ ー トで 小 浦 波 止 に 上 陸 。 写 真6は 、 高 波 に も対 応 す る 写真5南 星 丸停 泊位置 堤 防 上 か ら 、 小 浦 波 止 を 見 て い る 。 長 島 の 夫 婦 船 と 後 に 到 着 し た 写 真 の 種 子 島 船 と 出 会 っ た 。10人 程 の グ ル ー プ で 、毎 年 来 て い る 。 単 な る 釣 り 仲 間 以 上 の 愛 好 家 で 、素 潜 り用 具 も あ っ た 。 漁 師 小 屋 は 畳 を 上 げ 板 も 激 し く い た ん で い た 。 窓 ガ ラ ス は か な り 残 っ て お り 、 鳥 の 死 骸 が 数 点 あ っ た 。 発 電 装 置 ・無 線 関係 を取 り付 け た 場 所 後 も確 認 で き た 。 船 を 引 き上 げ る 大 型 の 歯 車 や 魚 を煮 る 大 鍋 も さび て 残 っ て い た 。 ビ ン 類 ・皿 類 は 他 の 無 人 島 に 比 べ て 著 し く少 な く 、 生 活 痕 は 薄 い 。 水 量 は 谷 沿 い に 多 い 。 飲 料 水 取 り 口 と タ ン ク が 残 っ て い た 。 南 日岳 ・灯 台 か ら片 浦 波 止 側 を 見 る と 、 比 較 的 広 い 耕 作 可 能 斜 面 が な だ ら か に 広 が っ て い た 。 多 く の 調 査 写 真6小 浦 波 止(奥 に 老 朽 化 した 小 屋 が あ る) 者 は 、 そ こか ら道 を 求 め て 、 探 索 に入 っ た 。 著 者 は 、 小 浦 波 止 か ら泳 い で 片 浦 波 止 に廻 っ た 。 徒 歩 で も海 岸 ・岩 づ た い に移 動 可 能 で あ る 。 そ の 手 前 一 帯 で 海 洋 生 物 調 査 が 、6名 で 実 施 され て い た 。 透 明 度 は高 い 。 片 浦 波 止 に 入 り込 む と、 石 垣 で 作 られ た 畑 が 、 予 想 外 に 各 斜 面 に 展 開 され て い た 。 た だ し住 居 跡 ・居 住 空 間 は 、 殆 ど見 あ た らな い 。 漁 業 が 主 で あ る の で 、 季 節 限 定 の 、 か つ 手 間 の か か ら な い 作 物 に 限 っ た 栽 培 だ っ た か も 知 れ な い 。 兎 が 一 羽 目 の 上 斜 面 を 走 っ た 。 伏 流 水 的 流 れ が 海 岸 に 達 して い た 。 猛 禽 類 も 上 空 を 飛 ん で い た 。
3宇 治 向 島 に お け る漂 着 物 の 国 籍 調 査 2004年 末 核 最 終 処 分 場 誘 致 構 想(ガ ラ ス 固 化 ・金 属 粘 土 緩 衝 材 で 地 下300m以 下 に 超 長 期 埋 設)と そ の 顛 末 で 、 向 島 南 部 の 堆 積 岩 盤 が 適 地 か と 話 題 と な っ た 。 「過 去 の 火 山 活 動 が う か が れ れ る 岩 」 「。 沖 縄 ト ラ フ の 北 東 部 。 沖 合 に 活 断 層 が あ る 。」 (南 日 本 新 聞05/1/27)と す る 懸 念 が 示 さ れ て い る 。 調 査 員5名 は 、 南 星 丸 に 、 写 真7片 浦 波 止 と背 後 段 々 畑 跡 地(奥 が 広 い) 家 島 成 果 物 を 積 み 込 み 、 続 い て 向 島 ビ ロ ウ 湾 に 上 陸 。 著 者 は 、 流 藻 採 集 物 が 中 国 沿 岸 部 か ら と想 定 され る との こ と な の で 、海 岸 部 漂 着 物 の 国 籍 調 査 を行 っ た。 写 真8向 島 ビ ロ ウ湾 調 査 地 点(対 岸 は 家 島) な お ビ ロ ウ は 斜 面 か ら 頂 上 部 に か か っ て 繁 茂 し て い る 。 ま さ に 名 前 通 り の 湾 で あ る 。 海 岸 ゴ ミ 類 は 、 波 打 ち 際 に は 少 な く 、2メ ー トル 程 の 高 さ か ら 奥 、 大 岩 と 大 岩 の 溝2-3 メ ー トル の 所 に も 、 発 泡 ス チ ロ ー ル を は じ め と す る 漁 具 関 連 等 の ポ リ マ ー が 、 挟 ま っ て お り 、力 を 入 れ て も 簡 単 に は 取 れ な い 。 荒 海 時 集 積 を 暗 示 す る 。 海 岸 部 集 積 ポ イ ン トは 写 真 の 様 に 普 通 で 、 一 見 ど こ に で も あ る 光 景 で あ る 。 た だ 、 国 産 品 や 特 に 生 活 臭 の す る も の が 極 端 に 少 な い 。 漁 具 ・漁 船 生 活 用 品 廃 棄 ・そ し て 中 国 沿 岸 か ら の も の が 目 立 っ て 多 い 。 発 泡 ス チロー ル を 除 く 、 ポ リ マ ー 関 係 で 国 籍 不 明5割 、 日本1割(ペ ッ トボ トル 類)、 中 国3.5割 、 台 湾0.5割 、 欧 州1件 で あ っ た 。 台 湾 と 中 国 は 会 社 の 地 名 、 使 用 漢 字 略 字 、 産 地 国 表 示 、 イ ン タ ー ネ ッ トア ド レ ス 等 で か な り の 確 認 が 可 能 で あ っ た 。 中 国 の ど こ か ら 来 て い る の か が 、 今 回 特 に 大 切 だ っ た の で 、 そ れ ら に つ い て も 、 小 型 レ ン ズ と 接 写 機 能 を 重 ね て 、 可 能 な 限 り撮 影 し た 。
中 国 か ら の も の を 列 記 す る と 、[燐 酸20㍑ 容 器made in China][ヒ マ ワ リ種 菓 子 袋:浙 江**公 司=温 州 市 梅嶼嘆 工 業 区] [ペ ッ ト ボ ト ル:中 国 名 牌 産 品][同:杭 州**公 司=3本][同 別 会 社][同:上 海 市][同:廈門 **公 司][缶 飲 料:廈 門**公 司] [衛 生 用 品 液 体 入 れ 一略 字][ア イ ス ク リー ム 袋 二同][菓 子 袋: 舟 山 定 海**公 司=舟 山 市(上 海 近 郊)][同:別 会 社][同:北 京 市] [小 飲 料 容 器:東 莞 市,略 字][中 飲 料 容 器:浙 江**公 司=浙 江 金 華 市][台 所 用 品made in China]等 。 「浙江 」 と 印 字 さ れ た 網 用 浮 き が10個 以 上 あ っ た 。 そ の 内 の 一 つ が 台 州 塑 料厂(円 内 海 ・海 草 マ ー ク)と 記 さ れ て い た が 、 そ の 他 の も の は 全 て 製 造 元 不 明 だ が 、「浙 *江 」。*所 が 碇 マ ー ク で あ っ た 。 流 れ 藻 に 巻 き 付 い た 浮 き 写 真9海 岸 部 ゴ ミ集 積 ポ イ ン ト 写 真10中 国 産 品漂 流 物(抜 粋) は 発 泡 ス チ ロ ー ル に紐 を 頑 丈 に 巻 い た も の で あ っ た 。 安 価 な 漁 具 そ の も の も 、 藻 類 の 中 国 本 土 沿 岸 起 源 を 傍 証 す る も の だ が 、 海 岸 漂 着 物 も傍 証 以 上 の も の で あ る。