南九州産白色粘土の研究 : 第5報甑島セリサイトの
硫酸溜出物
著者
小牧 高志
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
1
ページ
93-96
別言語のタイトル
STUDIES OF THE WHITE CLAY IN THE SOUTH KYUSYU
: REPORT 5 STUDY ON THE DISTILLATE OF THE
KOSHIKI-ISLAND SERICITE BY SULFURIC ACID
南九州産白色粘土の研究 : 第5報甑島セリサイトの
硫酸溜出物
著者
小牧 高志
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
1
ページ
93-96
別言語のタイトル
STUDIES OF THE WHITE CLAY IN THE SOUTH KYUSYU
: REPORT 5 STUDY ON THE DISTILLATE OF THE
KOSHIKI-ISLAND SERICITE BY SULFURIC ACID
南 九 州 産 白 色 粘 土 の 研 究
第5報
甑 島 セ リサ イ トの 硫 酸 溜 出物
小
牧
高
志*
STUDIES
OF THE WHITE
CLAY IN THE SOUTH
KYUSYU
REPORT
5 STUDY
ON THE DISTILLATE
OF THE
KOSHIKI-ISLAND
SERICITE
BY SULFURIC
ACID
Takashi
KOMAKI
The
Koshikijima
sericite
is composed
of SiO_2, Al_2O_3
and
K_2O, chiefly. under the
condition
at 250°C temp. 2 hours reacts
96% H_2SO_4,
the distillate
of sericite is 82.4%
Al_2O_3, and
85.9%
K_2O. thus,
this
sericite
is decomposed
by H_2SO_4 easily,
and is
excellent
material
of potassum
and alumina.
Received June 2, 1961.
緒 論 著 者 は さき に 甑 島 産 セ リサ イ トの 基 礎 的 研究1)を お こな つ た が,こ れ にお い て こ の粘 土 は 極 め て 優 秀 な性 質 を 持 つ て い る こ とが 判 明 した.セ リサ イ トは窯 業 の み な らず 塗 料 面,電 気 絶 縁 体,カ リ原料 とな して ど,広 い 利 用度 を もつ て い る もので あ る.本 報 に おい て は そ の成 分 中,ア ル ミナ,カ リの 含 有 量 の多 い こ と に着 目 して油 浴 中で 硫 酸 と反 応 させ て セ リサ イ トを 分 解 し,そ の溶 液 中に 含 ま れ る アル ミナ,カ リの溶 出率 を しらべ,そ れ によ つ て硫 酸 カ リ,硫 酸 ア ル ミ,明 バ ン,さ らに は コ ロイ ド珪 酸 の製 造 に 関す る基 礎 の デ ー タを 求 め る た め に実験 を お こな つ た. 試 料 の調 製 お よび装 置 試 料 は甑 島 セ リサ イ トの 基 礎 的 研究 を お こな つ た場 合 と全 くお な じもので そ の 化 学成 分 は第1表 に示 す と お りで あ る. 第1表 甑 島セ リサ イ トの化 学 成 分(%) この試 料 を400℃,600℃ お よび800℃ に それ ぞ れ 1時 間 焼成 した もの を 第1図 に示 す よ うな硬 質 製 摺 り 合 せ の 三 角 フ ラ ス コに10g入 れ て 硫 酸 を20cc,30cc, お よ び40cc加 え て250℃ の 油 浴 中 で1時 間,1.5時 間 お よび2時 間反 応 させ て セ リサ イ トを 分解 し,そ の 溶 液 に つ い てAl_2O_3お よ びK_20の 溶 出率 を もとめ た. Al_20_3に普 通 の重 量 法 によ り,又K_20は 炎 光分 析 法 2) に よ り測 定 した. 実験 結 果 お よび 考察 最 初油 浴 させ るま え に予 備 試験 と して 湯 浴 上 で反 応 *応 用化 学 教 室 Fig.1試 料 の 硫 酸 に よ る 分 解 装 置 略 図94 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第1号 させ て み た が,溶 出量 はAl_20_3は わ ず か に2.7%し か な くK_20も23.6%と 非 常 に低 い値 で あつ た.こ の よ うに低 温 度 で は分 解 度 が非 常 に低 い の で 長 時間 反 応 を お こな つて も非 常 に低 い値 しか 得 られ な い.そ れ 故, 本 実験 に おい て は硫 酸 の沸 点 近 い 温 度 で試 料 と反 応 さ せ る こと に よつ て,試 料 と よ く混 合 し分 解 を促 進 させ るた め に第1図 に示 した よ うに250℃ の温 度 中で 反 応 を お こなつ た.又 硫 酸 の逸 脱 を 防 止 す るた め に摺 り合 わ せ 用 の 硬 質 ガ ラ スを 使 用 し 上 部 に は 冷却 管 を つ け た.又 使 用 した 硫 酸 の濃 度 は96%の もので あ る.セ リサ イ トを 生 の ま ま の もの と400℃,600℃ お よ び80 0℃ に 焼 成 した もの につ い て のAl_20_3とK_20の 溶 出 率 は第2表 の よ うな結 果 とな つ た, まず 粘 土 を 仮 焼 せず 生 の ま ま につ い て硫 酸 と作 用 さ 第2表 甑 島 セ リ サ イ トの 濃 硫 酸 に よ るAl_20_3・K_20の 溶 出 率(250℃) せ た 場 合 に は 硫 酸 の 使 用量20ccで 反 応 時 間1時 間 で はAl_20_3の 溶 出率 は45.3%,K_20の 溶 出率 は71.0% で あ るが,硫 酸40ccを 用 いて2時 間 反応 させ る とAl_2 0_3は82.5%と 急 激 に 溶 出率 が 大 き く なつ て くるが K_20で は85.9%で 余 りそ の 差 が 大 き くな い.こ れ は Al_20_3の場 合 は 硫 酸 との 反 応 が 徐 々に 進 行 す る反面 K_20で は急 速 な 反応 速 度 を 示 す た め と 考 え られ る. さ らに硫 酸 の 使 用量 を50cc,60ccお よ び70ccに 増 加 させ て2時 間 の反 応 を み た 場 合Al_20_3お よ びK_20と も,も はや 増加 が認 め られ な い.こ れ によ り粘 土10g に対 しては 濃 硫 酸 は40ccで 良 い とい う結 果 が 判 明 し た.つ ぎ にセ リサ イ トを400℃ に1時間 仮 焼 した もの に つ い ては 硫 酸20ccで1時間 の 反 応 時 間 で はAl_20_3 の 溶 出率 は27.2%と 極 め て低 い 値 が 得 ら れ た に す ぎな い がK_20の 場 合 には65.0%と 生 の 場 合 に比 較 し て6%程 度 の減 少 が見 られ るだ け で あ る,さ らに硫 酸 40ccを 使 用 して2時 間 反 応 させ た場 合 で はAl_20_3に 48.1%,K_20に73.1%の 溶 出率 を 示 して い る.こ の よ うに400℃ に仮 焼 す る と硫 酸 によ る分 解 は非 常 に低 下 して くる.さ らに600℃1時 間 仮 焼 物 に つ いて み る と硫 酸20cc反 応 時 間1時 間 の 場 合 で はAl_20_3の 溶 出率 は20.9%K_20は64.3%で あ り硫 酸40cc反 応 時 間2時 間 の 場 合 で もAl_20_3は30.3%,K_20は68.0% と な り400℃1時 間仮 焼 物 よ り も更 に溶 出率 は 低下 し て い る.800℃1時 間仮 焼 物 の 場 合 に つ いて み る と硫 酸20cc1時 間 の反 応 時間 で はAl_20_3は 僅 か に18.5% しか 溶 出せ ずK_20で も47.5%し か溶 出 して こな い. 硫 酸40cc2時 間 の反 応 時 間 の 場 合 で もAl_20_3は25.7 %と 極 め て低 い 値 しか示 さずK_20で も59.3%と か な り低 くな つ て い る.こ の よ うに高 温 に仮 焼 す る とセ リ サ イ トのOH基 が 失 わ れ て一 部 に焼 結 が 生 じ,硫 酸 との接 触 が 低 下 す る と共 に構 造 論 的 に 強 い結 合 が起 つ て 分解 され 難 くな る もの と思 わ れ る. つ ぎに粒 子 の大 き さが甑 島 セ リサ イ トと大 体 一 致 し て い る尾 原 陶石 お よび 粗 粒子 の 多 い 日立 セ リサ イ ト 3) の 場合 と甑 畠 セ リサ イ トにつ い て 同一 条 件 で 硫 酸 に よ
小 牧:南 九 州 産 白 色 粘 土 の 研 究 95 る溶 出率 を 第2図 お よ び第3図 に示 した. → 仮 焼 温 度 ℃ Fig.2硫 酸 に よ る ア ル ミ ナ の 溶 出 率 → 仮 焼 温 度 ℃ Fig.3硫 酸 に よ る カ リ ウ ム の 溶 出 率 第2図 に 示 す よ う に セ リサ イ トを そ の ま ま の 状 態 で 硫 酸 に よつ て 溶 出す る と 甑 島 セ リサ イ トの8λ5%に 較 べ て 日立 セ リサ イ トで は78%,尾 原 セ リサ イ トで は75%と 甑 島 セ リサ イ トが 最 も多 い 溶 出率 を示 して い るが400℃ に仮 焼 した場 合 につ い て み る と尾原 セ リ サ イ トの56%に 比較 して 甑 島 セ リサ イ トで は46%と 逆 に低 い 値 を示 して い る.更 に600℃ 仮 焼 物 にお い て も 日立 セ リサ イ トの50%,尾 原 セ リサ イ トの48%に 比較 して 甑 島 セ リサ イ トは31%,800℃ 仮 焼 物 で は 日 立 セ リサ イ トの41.5%,尾 原 セ リサ イ トの37.5%に 比 較 して 甑 島 セ リサ イ トで は 僅 か に25%程 度 しか 溶 出 して い な い.又 温 度 の 増 加 と溶 出率 の 関 係 に つ いて み る と 日立 セ リサ イ トと尾原 セ リサ イ トで は大 体 直 線 関係 がみ られ るに反 して 甑 島 セ リサ イ トで は 曲線 関 係 がみ られ る.甑 島 セ リサ イ トは これ か らみ て も他 の 尾 原 セ リサ イ トや 日立 セ リサ イ トに比 較 して 粒子 の結 合 に よ る結 晶 構造 の 変 化 が早 く起 る もの と考 え られ る. 一 方K_20の 溶 出率 につ い て 第3図 にみ られ るよ う に 一 般 的 に甑 島 セ リサ イ トの溶 出率 は他 の 尾 原 セ リサ イ トや 日立 セ リサ イ トに 比 較 して大 きい 傾 向 を示 して い る.す な わ ち生 の場 合 につ い て み る と甑 島 セ リサ イ ト のK_20の 溶 出率 は86%近 い値 を示 す が 日立 セ リサ イ トで は70%程 度,尾 原 セ リサ イ トで は69%程 度 の 溶 出 率 しか示 して い な い.400℃ 仮 焼 物 で は甑 島 セ リサ イ トの74%と 比 較 して他 の二 者 は64%と 約10%程 度低 い値 を 示 して い る.そ して600℃ の場 合 で は甑 島 セ リサ イ トは68%程 度 で あ るが 尾原 セ リサ イ トで は 60%,日 立 セ リサ イ トに な る と急 に減 少 して55%以 下 の溶 出率 しか 示 してい な い.こ の よ うにK_20の 溶 出率 は甑 島 セ リサ イ トの場 合 は 他 の二 者 と比 較 して仮 焼 温 度 に か か わ らず 溶 出率 が 遙 か に 大 きい こ とが 判 り,カ リ肥料 そ の他 カ リ原 料 と して有 力 な 地 下資 源 で あ る と考 え られ る.こ の よ うに甑 島 セ リサ イ トは硫 酸 に よつ て 比較 的分 解 し易 く,こ れ に よつ て 硫 酸 カ リ, カ リ明 バ ン或 い は残 堤 と してのSiO_2分 の 工 業 的利 用 が容 易 で あ ると考 察 され る. 結 論 鹿 児 島県 甑 島産 セ リサ イ トにつ い て硫 酸 によ つ て分 解 した 溜 出物 につ い て 考察 した 結 果96%硫 酸 で250℃ の 温 度 の も と に2時 間 反応 させ る とAl_20_3分 は82.5 %,K_20分 は85.9%の 最高 値 を 示 した.又 同一 条 件 で は硫 酸 の量 を ふ や して もそ れ 以上 の 溶 出率 は示 さな か つ た.又 尾 原 セ リサ イ トや 日立 セ リサ イ トと比較 し た 場 合,遥 か に高 い溶 出 率 が得 られ る ことか ら甑 島 セ
96 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第1号 リサ イ トは カ リ原 料 又 は ア ル ミ原 料 と して も よい 資 源 で あ る と考 え られ る. な お本 研究 は"甑 島 セ リサ イ トの 工 業 的利 用"に 関 して の 文 部 省科 研 費 の一 部 に よつ て行 わ れ た こ とを 附 記 す る. 参 考 丈 献 1.小 牧:鹿 大 工 紀,No.9(1960). 2.た と え ば 福 島:分 析 化 学 講 座,3-B,共 立 社(1956). 3.末 野,ほ か:セ リサ イ ト資 源 と そ の 利 用,碩 学 書 房(1951).