I. は じ め に 筆者らは,既報1)において新潟県国川地すべりを事 例に農業水利施設の特殊性と地すべり災害の関係か ら,農業水利施設の被災が点的であったとしても水路 ネットワークへの通水が十分に行われなければ営農活 動へ影響が及ぶことを指摘した。特に融雪期は地すべ りの発生頻度が相対的に高く,また水田灌漑の開始時 期と近接していることから,この時期の水利施設の被 災とその復旧は,その水路の受益地帯にとって当該年 の営農の可否を左右する。 本報では,新潟県糸魚川市で融雪期に発生した谷たん根ね 広田地すべりによる災害を例に,中山間圃場整備地区 における農業基盤の被災とその復旧,耕作者と各行政 当局の対応について報告する。 II. 谷根広田地すべり 新潟県が実施した関連する調査報告書2)をもとに, 谷根広田地すべりの概要について記す。谷根広田地す べりは新潟県糸魚川市谷根地内の標高約 400〜500 m の緩斜面に位置する。ここでは 1975 年から 1980 年 にかけて団体営圃場整備事業が実施され 41.5 ha の水 田が整備されている。地すべりは 2015 年 4 月 24 日 に発生した。当地は地形的には巨大地すべりの滑落崖 付近に位置しているが,これまで地すべり防止区域と しての指定はされておらず,また地すべりの発生を示 唆する変状も確認されていなかった。 地すべり発生時の様子を写真-1 に示す。地すべり の規模は,長さ約 400 m,幅約 80〜150 m,推定移動 土砂量約 36 万 m3である。地質構成は新第三紀層の泥 岩を基盤とし,その上に崩積土や風化泥岩が堆積して いる。地すべり頭部滑落崖周辺には,基盤である泥岩 の上に安山岩・凝灰角礫岩が堆積している。地すべり 発生直後には,滑落崖から多量の湧水があり,滝のよ うな状態になっていた(写真-2)。今回の地すべりは, 融雪により多量の地下水が滑落崖周辺から地すべり地 内に流入したことで発生したものと考えられる3)。 III. 応急および復旧工事 1. 地すべり発生直後の応急対応 地すべり発生後の応急対応の流れを図-1 に示す。 本地すべりが発生した 4 月 24 日から翌日にかけて, 緊急調査(ラジコンヘリによる航空写真撮影,専門家 による現地踏査)が行われ,被害状況調査結果をもと に関係機関による打合せが行われた。 この地すべりにより,農地 2 ha,農道 116 m,パイ *新潟大学農学部,**新潟県魚沼地域振興局 ***新潟県糸魚川地域振興局,****新潟県新発田地域振興局 *****新潟県農地部 地すべり災害,圃場整備地区,災害復旧工事,応 急仮設工事,農業水利施設
小特集 「農村協働力」を活かした防災・減災力の強化 5
谷根広田地すべりによる圃場整備地区の被災と復旧
Disaster and Restoration of the Land Consolidation at Tanne-Hirota Landslide Area
NABA KITA ANZO INEMURA
稲 葉 一 成
(INABAKazunari) *沖 田
悟
(OKITASatoru) **神 蔵 直 樹
(KANZONaoki) ***峰 村 雅 臣
(MINEMURAMasanori) ****ENPOUYA ODA UZUKI
傳 法 谷 英 彰
(DENPOUYAHideaki) *****粟 生 田 忠 雄
(AODATadao) *鈴 木 哲 也
(SUZUKITetsuya) *報 文
写真-1 地すべり発生時の様子(2015 年 4 月 24 日撮影) 写真-2 滑落崖付近の多量の湧水(2015 年 4 月 24 日撮影)プライン 251 m,排水路 246 m,幹線用水路 2 カ所 403 m(大滝用水路,西側用水路)の被災が判明した (写真-3,4)。なかでも,大滝用水路とパイプライン の被災は約 30 ha の農地に対して用水供給が不能とな る深刻なものであった4)。 被災した大滝用水路,西側用水路,パイプラインに ついては,5 月 10 日からの代かき時期が目前に迫っ ていたことから,用水確保対策が至上命題であった。 西側用水路については,下流の渓流から代替的に用水 確保は可能であった。しかし,大滝用水路およびパイ プラインの応急工事については,工法・材料の面にお いて 3 つの課題があった。①パイプライン復旧のため の管材の早期確保が困難,②短期間でパイプラインを 施工できる工法の選定,③地すべりの動態を踏まえた 施工である。このうち,③については IV.章において 改めて記す。 応急工事は糸魚川市が主体であったが,国,県,市 が一体となって検討した結果,以下の対応とした。パ イプラインについては,布設されていた箇所が地すべ り土塊内にあったため,原位置への復旧は不可能で あった。また,管材調達に時間がかかること,開削を 伴う工法では施工期間が不足し,代かきまでに復旧が 間に合わないことから,地すべり土塊を避けて迂う回さ せるとともに,水道用の仮設配管材(ステンレス管) を用いて地表露出配管にて短期間で仮復旧を行うこと にした(写真-4 ②)。 本地区は谷根川の右岸に位置しており,大滝用水路 は谷根川から取水し,地すべり発生地点を横断して用 水を供給していた。また,この時点では地すべり活動 は継続しており,地表面の沈下などが続いていた。そ のため谷根川からの取水をあきらめ,関係者の理解を 得て,応急対策として西側用水路と大滝用水路との間 を短絡させて,水を一時的に西側用水路から補給する ことにした(写真-4 ①)。その後,用水需要が増加す る夏までに谷根川から仮設用水路を設置する計画とし た。この仮設用水路は,土水路内にポリエチレン波状 管を設置することにより可とう性を持たせた(写真-4 ③)。 これらの応急工事は 4 月 30 日に着手し,西側用水 路からの用水補給は 5 月 7 日に,パイプラインは 5 月 8 日にそれぞれ完了した。仮設用水路工事についても 6 月 18 日に着手し,6 月 29 日には完了し,無事に用 水を供給することができた。以上のように,地すべり 発生から約 2 カ月後には用水の送水に対する復旧が完 了した。 農 業 農 村 工 学 会 誌 第 85 巻 第 12 号
Water, Land and Environ. Eng. Dec. 2017 20 1144 図-1 応急対応の流れ(水利施設) 写真-3 地すべりによって寸断された用水路 (左上・右:西側用水路,左下:大滝用水路) 写真-4 主な被災箇所と応急工事の状況 上写真 ×:被災箇所,実線矢印:従来の水の流れ,破線矢印:短絡または迂回 させた箇所 下写真 ①:西側用水路から大滝用水路への短絡(6 月 29 日まで) ②:地すべり土塊を迂回させたパイプライン(地表配管) ③:従来の水源を導入して大滝用水路を仮復旧(6 月 29 日から)
2. 本格的な復旧工事と営農対応 応急工事と並行して,新潟県においてはこの間,糸 魚川市と協力し,県単独事業などにより復旧工法確定 のためのボーリング調査や地すべり防止区域への指定 申請などを実施し,災害復旧工事計画を立案した(図 -2)。本地すべりの発生は,頭部滑落崖の周辺から多 量の地下水が供給されたことによる。よって,地すべ り対策としては,地下水排除工を主体として計画し た。また,水路などの工事を進めるうえで,滑落崖の 安定化が必要であるため,地すべり頭部に法枠工を計 画した。樹立した災害復旧事業のうち,新潟県は水抜 きボーリング(10 カ所),集水井(1 基),土留め(148 m),法枠(約 4,400 m2),斜面整形(約 40,100 m3)な どの地すべり対策工に加え,大滝用水路と西側用水路 の復旧を担当した。糸魚川市はパイプライン,農地, 農道の復旧を担当した。これらの工事は 2015 年 9 月 から開始され,2016 年 11 月末には竣工した(写真 -5)。 今回の地すべりにより被災した農地のうち 1.33 ha については,土砂が厚く堆積しており,原形に復旧す るにはコスト高となることが予想された。このため, 糸魚川市と地元関係者で話し合った結果,流出土砂を 整形し,そのまま被覆することで,現況の 0.1 ha 区画 から 0.2 ha へ拡大し,復旧することになった(写真 -5)。復旧後の農地は,農業普及指導員が土壌分析・ 施肥指導などを実施することとした。そのほかにも, 関係機関による合同説明会を開催し,農家の不安事項 への対応,営農面でのサポートを行った(表-1)。当 初,大規模な被災であったことから,被災農家の一部 には営農の継続にあきらめムードもあったが,早い時 期に関係機関が一体となって対応したことにより,営 農・復旧への意欲が向上した。 表-1 農家への対応(県,市,土地改良区,農協などによる) 被災当初の農家の不安 対応 用水確保の見通し 用水の必要な 5 月 10 日までに仮設で確保する 秋に注文した苗 注文済み苗への柔軟な対応(被災によるキャンセル無償,配送遅延要望) 作付けが遅れた場合 県・農協による相談窓口の開設技術対策資料の配付 災害復旧事業費の農家 負担金 災害復旧事業制度の説明(負担金は年度末まで 不明,過去事例で概算額算出) 地すべり防止区域への指定(県の災害復旧事業 への上乗せ) 復旧見込み時期 2016 年度中の復旧を目指す 日本型直接支払い 災害の場合の猶予期間,復旧工事中の対応 地すべり再発への不安 地すべり防止区域への指定(防止工事実施可能) IV. 地すべり動態と被災施設の復旧 地すべり発生直後に応急工事を実施する場合,地す べりの動態が作業の安全性および進捗に大きく影響す る。本地区では,応急工事に着手した翌日の 5 月 1 日 より移動杭,5 月 21 日よりパイプひずみ計による動 態観測を実施した(表-2)。その結果,移動杭の変位 量,パイプひずみ計のひずみ量ともに値が小さく,顕 著な累積傾向も認められなかった。4 月 24 日の地す べり発生時には大規模な動きがあったものの,その後 はほとんど動きがなかった。そのため,大滝用水路に ついては,地すべり地内を横断する形であっても,可 とう性を持たせることによって仮復旧が可能となった (写真-4 ③)。また,パイプラインについては,地すべ り土塊がこれ以上側方に広がる恐れもなかったことか 図-2 災害復旧工事計画概要 写真-5 竣工時の様子(2016 年 11 月 30 日撮影,右側の水田 は区画を拡大した部分) 表-2 パイプひずみ計の計測結果 (2015 年 5 月 21 日〜7 月 26 日)2) 設置 場所 (m)深度 測定 最大値 (μs) 日変動絶対 値(最大) (μs) 累積変動絶対 値(最大) (μs/月) 累積傾向 頭部① 9 508 16 131 ややあり 17 275 23 55 わずかにあり 頭部② 9 171 24 88 ややあり 12 100 7 5 不明瞭 中腹部 8 341 11 68 ややあり 12 −43 6 6 不明瞭
ら,既存の農道に沿って比較的元の位置に近い場所で の仮復旧が可能となった(写真-4 ②)。本地区におい て一連の応急工事が可能となった主な要因の一つに は,このような地すべり動態が挙げられる。 しかし,地すべり動態は個々の地すべりによってさ まざまである。たとえば,本地区と同様に融雪期に発 生した国川地すべりでは,地すべり発生から 2 週間に わたって顕著な動きが続き,また,土塊の流動性も高 かった。このため,土塊の到達範囲が当初の予想以上 に広がり,応急工事中に再度被災している1)。 応急工事においては,土塊の移動距離,速度,到達 予想範囲など,地すべりの動態を的確に把握したうえ で,それに応じて適切な工法,材料を選択する必要が あるが,現状ではこれらを選択するための方法や判断 基準を確立するまでには至っていない。 V. ま と め 本報では,2015 年 4 月 24 日に発生した新潟県糸魚 川市の谷根広田地すべりによる災害を例に,中山間圃 場整備地区における農業基盤の被災と復旧,耕作者と 各行政当局の対応について報告した。農業水利施設の 被災においては,代替水源がないなかで,被災後の水 路システムの迅速な再構築の必要性に迫られたが,工 法と材料を工夫することで応急工事を行い,5 月上旬 には通水が可能となった。この応急工事が可能となっ た要因の一つには,本地すべりの動きが発生時以降で はほとんどなかったことが挙げられる。 地すべり発生直後に応急工事を実施する場合,地す べりの動態を的確に把握し,それに応じて適切な工 法,材料を選択する必要がある。特に早急な対応が求 められる場合には,必要な材料の確保が困難で代替材 を利用せざるを得ない場合もあり得る。しかし,現状 ではこれらを選択するための方法や判断基準を確立す るまでには至っていない。このためには,今後も被災 とその復旧事例を収集・分析していくことが必要であ る。 謝辞 本報をまとめるに当たり(株)新協地質上越営 業所の協力を得た。ここに記して感謝申し上げる。 引 用 文 献 1) 鈴木哲也,稲葉一成,峰村雅臣,傳法谷英彰:地すべりによ り被災した農業水利施設の復旧に関する技術課題,水土の 知 84(9),pp.45〜48(2016) 2) 新潟県糸魚川地域振興局:平成 27 年度県単地すべり災害 関連調査事業第 3 次応急地質調査業務委託報告書(2015) 3) 稲葉一成,山本尚史,宮田翔平,沖田 悟,神蔵直樹,粟生 田忠雄,鈴木哲也:谷根広田地すべりの発生機構,日本地 すべり学会第 56 回研究発表会講演集(CD),pp.87〜88 (2017) 4) 沖田 悟,坂詰仁史,渡辺秀一,稲葉一成,粟生田忠雄,鈴 木哲也:谷根広田地区地すべり災害での農業水利施設の被 災状況とその復旧計画,平成 28 年度農業農村工学会大会 講演会講演要旨集,pp.897〜898(2016) 〔2017.11.6.受理〕 略 歴 稲葉 一成(正会員) 1999年 新潟大学大学院自然科学研究科 2007年 新潟大学農学部 現在に至る 沖田 悟(正会員) 1988年 新潟県入庁 2017年 魚沼地域振興局農業振興部 現在に至る 神蔵 直樹(正会員) 1996年 新潟県入庁 2016年 糸魚川地域振興局農林振興部 現在に至る 峰村 雅臣(正会員) 1988年 新潟県入庁 2016年 新発田地域振興局農村整備部 現在に至る 傳法谷英彰(正会員) 2007年 新潟県入庁 2014年 農地部農地管理課 現在に至る 粟生田忠雄(正会員) 1996年 鳥取大学乾燥地研究センター COE 研究 員 新潟大学農学部 現在に至る 鈴木 哲也(正会員) 2011年 新潟大学農学部 現在に至る 農 業 農 村 工 学 会 誌 第 85 巻 第 12 号
Water, Land and Environ. Eng. Dec. 2017 22
稲葉 一成・沖田 悟・神蔵 直樹・峰村 雅臣 傳法谷英彰・粟生田忠雄・鈴木 哲也 新潟県糸魚川市で発生した谷根広田地すべり災害を例に,中 山間圃場整備地区における農業基盤の被災と復旧について報告 する。当地区では,地すべりによりパイプライン 251 m,幹線 用水路 2 カ所 403 m などが被災したことで,約 30 ha の農地に 対して用水供給ができなくなる恐れがあった。本地すべりは発 生時には大規模な動きがあったものの,その後はほとんど動き がなかったことから,幹線用水路については,地すべり地内を 横断する形であっても,可とう性を持たせることによって仮復 旧が可能となった。また,パイプラインについては,資材調達 と施工に時間がかけられないことから,代替品として水道用の 仮設配管材を用い,地表露出配管にて短期間で仮復旧を行っ た。 (水土の知 85-12,pp.19〜22,2017) 地すべり災害,圃場整備地区,災害復旧工事,応急仮設工 事,農業水利施設 (報文) 石狩川頭首工の設計・施工・管理の特徴 門間 修・佐藤 禎示・桑原 康弘 篠津地域は,石狩川下流右岸の 1 市 2 町 1 村(江別市,当別 町,月形町,新篠津村)に広がる平野部に位置し,道内有数の 水田地帯となっている。当地域の農業水利施設は,昭和 30〜40 年代に篠津地域泥炭地開発事業により整備されたが, 冷害防止のための深水灌漑用水などが不足するとともに,施設 の老朽化が進行した。このため,平成 8 年度に着手した国営か んがい排水事業「篠津中央二期地区」により,老朽化の著しい 石狩川頭首工をその下流側に新たに建設することとし,平成 29 年度に完了予定である。本報では,国内有数の一級河川である 石狩川の下流部で改築が進められている新頭首工の設計・施工 ・管理の特徴について報告する。 (水土の知 85-12,pp.25〜28,2017) 国営かんがい排水事業,頭首工,改築,仮締切り工,魚道 工,取水管理 (報文) 直轄海岸保全施設整備事業「福富地区」の完工 今井 武三・日野 英登 「福富地区」の海岸保全施設は,干拓事業により昭和 21 年度 から 54 年度にかけ築造されており,築後 30 年以上が経過する 中で亀裂や老朽化が著しく進行し,また,有明海特有の超軟弱 地盤上に築造されていることから地盤沈下による堤防高さの不 足も生じており,台風や高潮等に対する十分な防災機能が果た されない状況にあった。このため,堤防延長 7,569 m を対象と して,堤体の補強・改修を行い,台風・高潮等から背後地の農 用地等を防護し,地域住民の生命・財産を守ることを目的とし て平成 18 年度より事業を実施してきた。平成 29 年度をもっ て事業完了を迎えることとなり本事業の経過と概要をここに紹 介する (水土の知 85-12,pp.29〜34,2017) 堤防,海岸堤防,干拓堤防,海岸保全施設,福富海岸 ダム管理マニュアルへの「解説版」新規作成による技術伝承 寺村 伸一・松本 安弘・髙瀬 賢一 「徳之島地区」は,島内のサトウキビを中心に飼料作物,野菜 などに対し,徳之島用水事業により徳之島ダムを築造し,水源 を確保するとともに基幹水路などを造成し,中核農家の育成と 地域農業の振興に資するため平成 9 年から事業に着手し平成 29 年度をもって完了を迎えるところであり,施設管理は土地 改良区が行うこととなっている。しかし,要員の不足や膨大な 管理作業,さらにはダム技術の専門性など課題もあり,従来の 管理規程や水利使用規則だけでは十分な管理が行えず,全国的 にマニュアルの整備が始まっている。本報ではさらに,マニュ アルに記載されているものの背景や,基準からはずれた場合の 対応などの解説を“教科書ガイド”的にとりまとめ,将来の施 設管理の軽減に寄与する取組みを行ったので紹介する。 (水土の知 85-12,pp.35〜38,2017) ダム管理,BCP,管理マニュアル,ダムカルテ,解説版 (報文) 国営大井川用水農業水利事業の完了と整備の取組 三木 秀一・白鳥 勝弘・鷲津 瑛子・中嶋 英夫 大井川用水地区の受益地域は,静岡県の中央に位置し,牧之 原台地の東側と西側に広がる農業地域である。牧之原台地の東 側に位置する大井川扇状地域は,用水の浸透量が多く,農業用 水の確保に苦しんできた。一方,牧之原台地の西側に位置する 小笠地域は,ため池を築き稲作を行うほど用水不足に苦しんで きた。これらの地区の用水の安定供給などを図るため,一期事 業が,昭和 22 年度から 43 年度にかけ実施されたが,施設の老 朽化による機能低下や営農形態の変化などにより安定的な用水 供給が困難な状況になった。このため,二期事業が平成 11 年 度に着手された。本報は,平成 29 年度に二期事業が完了を迎 えるに当たり,事業の展開や特徴を報告するものである。 (水土の知 85-12,pp.39〜43,2017) 大井川用水,耐震,開水路整備,二期事業,地域用水,小 水力発電 (技術リポート:北海道支部) 低コスト農地整備の実現に向けた情報化施工の効果検証 杉原 浩二・小林 義宗 近年,労働者人口の減少に伴う建設現場での労働力の確保 や,農村における農家人口の減少および高齢化といった農業生 産性の低下が課題となっている。本報では,北海道で試行され ている低コスト農地整備の実現に向けた“情報化施工”に関す る効果を通常施工と比較検討した。その結果,起工測量では整 地工・排水路工ともに作業時間・労務数が短縮され,バックホ ウ施工の場合には施工効率が向上していた。また,出来形管理 をみると排水路工で作業時間・労務数が短縮されていたが,両 施工区域における土壌硬度には差がみられなかった。このよう に,情報化施工による労力軽減・施工効率向上などの効果を通 じて建設コスト縮減への可能性が示唆された。 (水土の知 85-12,pp.44〜45,2017) 情報化施工,情報通信技術(ICT),泥炭地,起工測量,施 工効率,出来形管理,土壌硬度