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フェーズドアレーアンテナを用いたSPS試験衛星パターン測定法

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Vol.6 (2021), pp. 42-46

42 -シンポジウム論文-

フェーズドアレーアンテナを用いた

SPS 試験衛星パターン測定法

A pattern measurement method of SPS test satellite with phased array antenna

藤 野 義 之

*1‡

・井 上 拓 哉

*1

・小 坂 優 太

*1

・田 中 孝 治

*2

Yoshiyuki F

UJINO

, Takuya I

NOUE

, Yuta K

OSAKA

and Koji T

ANAKA

現在,宇宙太陽発電(SPS)を実現させるために小型衛星を用いた実証実験が計画されている.実証実験におい

ては,衛星から送信されるビーム形状を正確に評価することが必要となる.これまでは送信アンテナをパラボラア

ンテナとしてビーム形状を再現,評価してきた.今回,フェーズドアレーアンテナとした場合の基地局配置の指針 を示し,二次元最小二乗法によってパターンを再構成し有効性があることを確認した.また,勝浦だけでなく,臼 田を通る軌道をについて,その有効性や課題を示した.

A demonstration experiment using a small satellite is planned to realize space solar power system (SPS). In this experiment, accurate evaluation of the beam shape transmitted from the satellite is needed. So, the beam shape had been reproduced and evaluated as a parabola antenna. In this paper, the antenna changed to a phased array antenna for more realistic situation. Then, a guideline for base station placement was shown, and the pattern was reconstructed by the two-dimensional minimum square method to confirm its effectivity. In addition, the orbit passing through Usuda as well as Katsuura were shown.

Keywords:SPS, Two-Dimensional Least Squares Method, Phased array antenna 1. は じ め に 現在,宇宙太陽光発電(SPS)を実現させるために小型 衛星を用いた実証実験が計画されている.ここでは,衛星 軌道上から地上間へのマイクロ波電力伝送能力の評価を行 うことを目的としている1).そのため,送信されるビーム 形状を正確に再現することが必要となる.そこで,複数の 受信局を地上に設置してビーム形状を再現することが検討 されている.この手法では,有限な受信局のデータから正 確なパターン推定を実施する必要があり,著者らはフット プリント測定を実施し,誤差の含まれる測定データを二次 元最小二乗法によってパターン近似を行い,ボアサイト位 置やレベルを推定する手法について検討を行ってきた2) 今までは,簡易化のため送信アンテナをパラボラアンテ ナとして計算していたが,実際に衛星に搭載される送信ア ンテナはフェーズドアレーアンテナであり,送信アンテナ を実際に近い形にしても同様にパターンを再現できるのか を検討した.また,これまでは勝浦を通る軌道だけの仮定 をしていたが,新たに臼田を通る軌道を作成し,その有効 性や受信局配置の影響について検討したので報告する. 2. 実験計画と前提条件 第 1 図に実験計画のイメージを示す1).衛星は低軌道で 約 3 日後に戻ってくる準回帰軌道で周回しているものとす る.千葉県勝浦市にあるJAXA の宇宙通信所(以下勝浦中 心局),観測所がある長野県佐久市にある臼田宇宙空間観 測所(以下臼田中心局)の上空を通過することを想定する. これまでは,簡易化のためパラボラアンテナで近似をして いたが実際に衛星に搭載される直径 1.9 m の送信用フェー ズドアンテナとして計算した.第 2 図と第1表に計算に用 いたアレーアンテナの図とパラメータを示す. 地上の受信局は勝浦中心局,臼田中心局を中心に衛星軌 道と直交する方向に1 次元上に配置した(第 3 図).衛星 が移動しているため,進行方向にある同線上の受信局は, 同じデータを取得するため,1 次元状に配置しても等価的 に2 次元の受信データを得ることができる. 第2 図,第 1 表のアレーアンテナの理論のアンテナパタ ーンをGRASP 上で計算した.2 次元パターンの計算値を第 † 第 6 回宇宙太陽発電シンポジウム,2020 年 12 月 4-5 日,オン ラインにて発表

‡ Corresponding author: Yoshiyuki FUJINO E-mail :[email protected]

*1東洋大学

〒350-8585 埼玉県川越市鯨井 2100,

TOYO University.,2100,Kujirai,Kawagoe,Saitama 350-8585,Japan

*2宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所

〒252-5210 神奈川県相模原市中央区由野台 3-1-1, ISAS/JAXA.,3-1-1,Yoshinodai,Chuuou-ku,Sagamihara,Kanagawa 252-5210, Japan

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4 図に示す.ピーク値は 39.4 dBi で,ビーム幅は 1.6 度であ った.パラボラモデルよりもビームが細くなるため受信局 間隔をパラボラ時の約 0.7 度間隔では受信局数が少なくな り標本が少なくなる.そこで,受信局間間隔を変えて精度 の比較を行う. また,試験衛星のビームは真下に固定し,特定の受信局 には向けていない.中心局を中心に±7.6 km の範囲で受信を する.また,伝搬損の差(L-L’)は小さいため無視する. 3. 再 構 成 手 法 地上の各局で受信したレベルから,二次元最小二乗処理 によって最適化することでアンテナパターンを描く.開口 面アンテナの dB 値で表されたパターンのメインローブ付 近は二次関数で近似することができるという原理 3)から, 各受信局の衛星受信電力の測定値を式(1)で近似する. 𝑧 𝑎𝑥 𝑏𝑦 𝑐𝑥 𝑑𝑦 𝑒 (1) ここで z は受信レベル,x は Azimuth(衛星から見た方位 角), y は Elevation (衛星から見た仰角)を示しており, a, b, c, d, e の係数を最小二乗法で推定する.また 2 次関数 が上に凸の形状をもつ条件として,a<0, b<0 とする.サイ ドローブ成分を少し含むデータで近似すると精度が悪くな るため機械的にメインビーム内のデータのみ活用すること を前提として受信データを選択する2) また,受信局では必ず受信レベルに誤差が生じ,受信レ ベルは理論値と異なることが考えられる.そのため,得ら れた各受信局の理論データに,意図的に正規分布で標準誤 差3.0 dB の誤差を与えてその影響の評価も同時に行った. 4. 仮定した衛星軌道 衛星が軌道上を移動することを利用するため,第2 表に 示した条件を満たす準回帰軌道を仮定した.太陽同期準回 帰の場合では軌道傾斜角が97 度で,勝浦を通る軌道が南北 方向となり,受信局を直交する方向,すなわち,東西方向に 展開しなければならなくなるが,勝浦の東側は海面で,受 信局が設置しにくいため採用しなかった. 第 5 図に仮定し た衛星軌道と第6 図に勝浦局付近の衛星軌道を示す. 一方,臼田では第3 表に示す太陽同期準回帰軌道を仮定 した.第7 図に仮定した衛星軌道と第 8 図に臼田局付近の 衛星軌道を示す. 第5 図 仮定した準回帰軌道 第2 表 仮定した準回帰軌道 軌道傾斜角度 45 度 軌道高度 388 km 回帰周回数 46 回 第2 図 衛星に搭載されるフェーズドアレーアンテナ1) 第4 図 理論パターン(等高線) Azimuth[deg] E lev at io n[ d eg ] -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 10 0 -10 -20 [dBi] 39 36 30 25 20 15 第3 図 衛星と受信局群の関係 第1 表 アレーアンテナの計算数値 パラメータ 数値 アンテナ直径 1900 mm 素子間隔(サブアレー間) 70.37 mm 素子数(サブアレー) 512 個 周波数 5.729 GHz

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44 5. ボアサイト推定精度 ビーム幅が狭くなったため,各受信局の受信間隔は従来 の1 秒から 0.5 秒おきに測定データを得るものとした. 第6 図 勝浦局付近の軌道(□印は 0.5 秒毎のマーカー) 第7 図 仮定した太陽同期準回帰軌道 第8 図 臼田局付近の軌道(□印は 0.5 秒毎のマーカー)4) 受信局はピーク利得から-10 dB 内にある等価的な受信位 置のデータを標本にして関数近似をする.受信局間の間隔 を0.2, 0.3, 0.4, 0.5 度(地上距離で約 1.3, 2.0, 2.7, 3.3 km)と 変えて比較した. 採用したデータより最小二乗法を用いて アンテナパターンの再構成を行い,ボアサイト位置とピー ク利得を算出しこれを第4 表,第 5 表に示す. また,受信局の許容誤差の検討も行った.誤差検討では 各受信局の受信レベルに標準偏差3.0 dB の正規分布誤差を 与え,それを2000 回繰り返し,ボアサイト位置の分布とボ アサイト位置のばらつきとして,標準偏差と平均確度を計 算し比較した.ボアサイト位置の分布を第9 図,第 10 図に, 距離の分散と平均確度を第6 表,第 7 表に示す. 理論のピーク利得が 39.42 dBi であるのに対し,いずれの 受信局配置でも理論より0.3 dB ほど高く出た.同一受信局 間隔では臼田より勝浦のほうはピーク利得が0.1 dB 低く精 度が高くなった.これは各軌道の衛星進行方向の間隔が違 うことによるものである. 平均確度は勝浦,臼田共に受信局間間隔が狭いほど標準 偏差,平均確度が小さくなりばらつきを抑えられている. これは,間隔が狭くなることで受信局数が増加し,それぞれ の持つ誤差を互いに補正しあっているためである.両軌道 共に0.3~0.4 度間隔でのばらつきに差異はほぼない.一方 で,0.2, 0.5 度間隔では平均確度に差異はないものの臼田の 標準偏差は勝浦の約2 倍とばらつきが大きくなっている. 前回行ったパラボラモデルでの結果の-10 dB 範囲内利用 7 局配置である 0.4 度間隔で比較すると,等価的な受信局数 は23 局で受信間隔が 1.0 秒であるため衛星進行方向の等価 的な受信局間隔が広くなる 2).ボアサイト位置の誤差が約 30 m でありアレーアンテナでの結果は 1 m 未満と精度が良 くなった. 一方で,標準偏差は 600 m でありアレーアンテナでは 1000 m とこれより大きくなった.平均確度は 800 m で同じ 勝浦軌道とはほぼ同じと言える結果となった. 第3 表 仮定した太陽同期準回帰軌道 軌道傾斜角度 97 度 軌道高度 362 km 回帰周回数 47 回 第4 表 勝浦軌道での再構成結果 受信局 間間隔 [deg] 実際の 受信局 数 等価的 な受信 局数 ピーク 利得 [dBi] ボアサイト位置誤差 Az [m] El [m] RMS [m] 0.2 13 53 39.73 0.08 -0.12 0.15 0.3 9 37 39.76 0.08 -0.12 0.14 0.4 7 27 39.78 0.02 -0.09 0.09 0.5 5 21 39.63 0.14 -0.18 0.23 理論 - - 39.42 0 0 0 第5 表 臼田軌道での再構成結果 受信局 間間隔 [deg] 実際の 受信局 数 等価的 な受信 局数 ピーク 利得 [dBi] ボアサイト位置誤差 Az [m] El [m] RMS [m] 0.2 13 53 39.83 -0.04 -0.21 0.21 0.3 9 37 39.85 -0.04 -0.22 0.22 0.4 7 27 39.84 -0.02 -0.18 0.18 0.5 5 21 39.74 -0.06 -0.23 0.23 理論 - - 39.42 0 0 0

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6. 衛星が可視である範囲について SPS 試験衛星を用いた実証実験では,第 11 図に示すよう に,衛星が地上局の真上に来る時刻を 0 分としたとき,-5 分程度より,地上局から衛星にパイロットビームを送信し, 実験運用に入ることが計画されている1) しかし,衛星が地平線に上がってから沈むまでの時間は 約10 分 31 秒であり,-5 分では仰角が低く,地形が邪魔に なり,衛星が可視にならない可能性がある.そこで, -5 分か ら1 分おきに-1 分まで,地上局周辺で衛星が可視である範 囲の計算を行った. 勝浦局を通る準回帰軌道についての結果を第12 図に,臼 田局を通る太陽同期準回帰軌道についての結果を第 13 図 にそれぞれ示す. 結果として,-5 分では全ての受信局が不可視となり,-3 分 では,勝浦は全て可視となるが,臼田は 3 局が不可視となる. このため,実験時間の観点では勝浦が有利である.また,臼 田は山岳のため,受信局配置の際,地形を考慮する必要があ る. (a) 受信局間間隔 0.2 度(1.3 km) (b)受信局間隔 0.5 度(3.3 km) ●:ボアサイト分布 □:等価的な受信位置 +:実際の受信局位置 第9 図 勝浦軌道でのレベル誤差によるボアサイト分布4) (a) 受信局間間隔 0.2 度(1.3 km) (b)受信局間隔 0.5 度(3.3 km) ●:ボアサイト分布 □:等価的な受信位置 +:実際の受信局位置 第10 図 臼田軌道でのレベル誤差によるボアサイト分布4) 第7 表 臼田軌道でのレベル誤差の影響 受信局 間隔 [deg] 実際の 受信局 数 等価的 な受信 局数 標準偏差 RMS[m] 平均確度 [m] 有効 データ数 0.2 13 53 938.4 582.5 1999 0.3 9 37 816.8 699.7 1996 0.4 7 27 879.7 771.6 1993 0.5 5 21 3,308.6 1,533.1 1925 第6 表 勝浦軌道でのレベル誤差の影響 受信局 間隔 [deg] 実際の 受信局 数 等価的 な受信 局数 標準偏差 RMS[m] 平均確度 [m] 有効 データ数 0.2 13 53 488.6 600.5 2000 0.3 9 37 882.6 746.9 1999 0.4 7 27 966.2 851.7 1995 0.5 5 21 1,567.9 1,255.0 1989

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46 第11 図 パイロットビームの送信 7. ま と め SPS 実証衛星搭載アンテナのビーム形状の再現性をシミ ュレーションによって評価した.送信アンテナを実際に搭 載されるフェーズドアレーアンテナとして計算し,勝浦, 臼田それぞれを通る最適な軌道を仮定し,どちらの軌道で も精度は大きく変わらない事を確認した.現実的な問題と して受信レベルに誤差があるときの検討を行ったが勝浦と 臼田において受信局間に誤差(3 dB)があるときのボアサ イト平均確度は両者に違いはあまり見られない.想定され るばらつきの範囲である標準偏差は一部を除けばほぼ同じ であり,(等価的)受信局の配置規則が同じならば衛星の軌 道傾斜角や衛星軌道方向の配置間隔に依らず誤差によるボ アサイト推定への影響への違いは少ないと言える. 今回仮定した軌道おいて,地形による実験時間の制限に ついて,勝浦と臼田の両局で検討を行い,勝浦の方が実験 時間の観点では有利であることを示した. 参 考 文 献 1)橋本弘藏, 三谷友彦, 吉野純樹,谷島正信,上土井大助,池田人, 冨木淳史, 福島洋,川崎繁男,田中孝治, 本城和彦,日景隆, 小紫 公也, 藤野義之,袁巧微, 宗正康: 太陽発電衛星のための小型衛 星を用いたマイクロ波ビーム制御実験, 第 14 回宇宙科学シンポ ジウム講演集(2014), pp. 2-185.

2)Y.Fujino, et. al., Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol.16, No.3

(2018).

3)Johnson, Designer Notes for Microwave Antennas, Artech House (1991), pp.180-181. 4)国土地理院: 地理院地図,https://maps.gsi.go.jp/,参照 Jan. 3,2021. 5) 国 土 地 理 院 : 基 盤 地 図 情 報 数 値 標 高 モ デ ル , https://fgd.gsi.go.jp/download/menu.php (2021.2.13 受付) (a) -5 分(仰角 1.2°) (b) -3 分(仰角 11.641°) (c) -1 分(仰角 41.17°) +:実際に配置する受信局 □:衛星の移動に伴う等価的な受信局 ピンクに染まっている箇所が可視範囲 基盤地図情報 数値標高モデル(国土地理院)をもとにカシミール 3D を用いて作成5) 第12 図 勝浦での衛星の可視範囲 (a) -5 分(仰角 2.198°) (b) -3 分(仰角 13.508°) (c) -1 分(仰角 44.479°) +:実際に配置する受信局 □:衛星の移動に伴う等価的な受信局 ピンクに染まっている箇所が可視範囲 基盤地図情報 数値標高モデル(国土地理院)をもとにカシミール 3D を用いて作成5) 第13 図 臼田での衛星の可視範囲

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