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再生可能エネルギー由来の二次エネルギー製造・貯蔵の分析(その2)

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第39 回エネルギー・資源学会研究発表会の内容をもとに

再生可能エネルギー由来の二次エネルギー製造・貯蔵の分析(その2)

Analysis of Production and Storage of Secondary Energy Derived from Renewable Energy (2)

本 田 敦 夫

*

・ 手 塚 孔 一 郎

*

・ 荻 本 和 彦

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・ 岩 船 由 美 子

**

Atsuo Honda Koichiro Tezuka Kazuhiko Ogimoto Yumiko Iwafune

・ 片 岡 和 人

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・ 東 仁

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・ 礒 永 彰

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・ 福 留 潔

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Kazuto Kataoka Hitoshi Azuma Akira Isonaga Suguru Fukutome (原稿受付日 2020 年 6 月 23 日,受理日 2021 年 4 月 13 日) 1.まえがき 我が国では2018 年に策定された第 5 次エネルギー基本 計画において再エネの主力電源化が明確に打ち出されたの に続き,2019 年 6 月,パリ協定に基づく長期低排出発展戦 略(長期戦略)が閣議決定され,G20 大阪サミットに向け て発信され,国連にも提出された.その中では,今世紀後 半のできるだけ早期に温室効果ガスの「実質ゼロ排出」を 目指すと明記され,大幅削減につながるイノベーションの 推進を含め地球温暖化対策を加速させ,2050 年に温室効果 ガスを80%削減するための方向性が提示されている. 過去の報告1)2)を発展させた前回の報告3)においては,「再 生可能エネルギー100%(以下 RE100%)」を目指す全国を対 象とした電力需給の簡易解析に,再エネ由来の二次エネル ギーとして取り上げた水素の需給解析を組み込んだモデル 分析により,再エネ大量導入の世界では,電力貯蔵と共存 し電力貯蔵を補完する形で水素等の新たな二次エネルギー の製造・貯蔵を起点とするエネルギーシステムが経済的合 理性をもつことを明らかにした. 本論文では,前回は固定値扱いとしたPV・風力の導入 量もパラメータとし,さまざまな条件において最も経済的 なシステムとなる PV・風力の最適導入量を検討すること で,大量の再エネ電力と水の電気分解による水素の大量製 造・貯蔵・利用が一体となったエネルギーシステムが成立 する可能性を分析し,将来のエネルギー需給のあり姿を考 察した.2 章で今回の検討の手法と前提条件を,3 章で検討 の結果,4 章で考察,5 章で結論について述べる. 2.解析手法と条件 解析モデルや前提条件について下記に示すが,詳細は文 献3)も参照されたい. 2.1 モデル 本解析では,PV,風力,電力貯蔵設備(蓄電設備),負荷 配分可能電源で構成された電力システムに加えて,余剰電 力を用いた水の電気分解による水素製造設備・貯蔵設備を 対象とする. (1) 電力システムと PV・風力 電力システムについては,1年間(8760 時間)の需給を 1 時間単位で解析する.需要,PV と風力の発電出力は,2013 年の北海道から九州までの9 エリアのデータを用いた.前 回の報告においては,PV,風力の導入量は,その年間発電 量の合計が年間需要量と一致するように決めることをもっ て RE100%とし,PV・風力の年間発電量=年間需要量は 910TWh/年(PV438 TWh/年,風力 472 TWh/年),設備の導 入量はPV388GW,風力 222GW にて条件を固定したが,今 回はPV,風力の導入量もパラメータとして検討した. 本検討では,RE100%での出力変動への対応や再エネ由 来の余剰電力の活用を主眼とするため,原子力,地熱,一 部の流れ込み式水力,海洋エネルギー発電(潮力)など安 定した出力を期待できる電源としたFirm 電源は,設備容量 をゼロとして扱い,考慮しない.需要に対し,まずPV と 風力の発電が,次いで,余剰および不足分に対し電力貯蔵 Abstract

This paper aims to study how secondary energy and supply-demand of entire energy system should be towards 2050 and beyond where renewable energy plays a major role as energy sources. In various future scenarios, using mathematical models for supply-demand analysis of electric power and hydrogen, we assume generation of surplus electricity, operation of power storage, hydrogen production and storage equipment. We also conduct an assumption, economic analysis and optimization of capital and operation costs. The result indicates that “hydrogen system comprised of hydrogen production, storage” and “renewable energy for power generation” have mutually supportive relationship with each other and it is possible that their massive, integrated and coordinated introduction is one of desirable forms of energy system to realize decarbonization in an economically feasible manner.

Key words : Renewable energy 100%, Energy storage, Secondary energy, Electrolysis , Generation curtailment

Corresponding author; Atsuo Honda, E -mail: [email protected]

*大阪ガス㈱ 情報通信部ビジネスアナリシスセンター 〒541-0045 大阪市中央区道修町 3-5-11 **東京大学 生産技術研究所 〒153-8505 東京都目黒区駒場 4-6-1 As 棟 ***株式会社J-POWER ビジネスサービス 〒104-0045 東京都中央区築地 4-6-4 **********

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設備の充放電が割り当てられる.電力貯蔵設備にはkW を 単位とする入出力容量,kWh を単位とする電力の貯蔵容量 (実際には入出力容量に対する貯蔵時間数)に関する2 つ のパラメータがあり,入出力容量と貯蔵容量の範囲での運 用が行われる.さらに残る供給の不足分に対しては,負荷 配分可能電源(火力)の発電が充てられ,毎時の出力の最 大値をその必要容量とする.燃料として天然ガスとともに, 真のRE100 検討のため,余剰電力による水の電気分解(以 下,電解)で製造される水素も想定する. (2) 水素の製造・貯蔵・利用 余剰電力は水素の製造・貯蔵に用いることができると想 定する.水素製造・貯蔵にも用いられない最終的な余剰は, PV と風力の合計の抑制電力量として計算される. 水素製造設備は電力の入力容量,水素貯蔵設備は貯蔵容 量がパラメータとなる.経済性では,電力システムの設備 費と運用費に,水素の製造・貯蔵の設備費・運用費を加算 する一方で,負荷配分可能電源の燃料として水素を利用す ることによる化石燃料削減メリット,あるいは非電力部門 での水素販売収入のメリットを電力システムの電力供給コ ストから控除したものを総費用として評価する. 非電力部門に供給される水素については再エネ由来の水 素を対象とする需給制約(以下,「再エネ水素需給制約」) の有無を検討する.再エネ水素需給制約のないケースでは 製造された水素は貯蔵設備がなくても,全量販売される. 一方,再エネ水素需給制約があるケースでは,再エネ水素 需給制約がないケースでの年間製造量=年間販売量を 365 日で除する量にて,日々の水素需要は安定し変動がないと 想定して一定値に固定する.水素製造に使われる余剰電力 が PV,風力の出力や需要により大きく変動する状況下で は,水素需給のミスマッチの原因として大きな制約となる. 日単位で水素需給のミスマッチを貯蔵設備容量の範囲で吸 収すると想定することで,再エネ水素需給制約による販売 機会の逸失を評価し,最適な貯蔵設備の導入量を検討する. (3) 費用 以上の解析モデルを作成し,PV,風力の設備容量,電力 貯蔵設備の入出力容量,貯蔵時間数,水素製造設備の入力 容量と水素貯蔵設備の容量をパラメータとして,電力シス テム全体における年間の設備費,運用費とそれに基づく電 力供給コストおよび単価を試算する.前述の再エネ水素需 給制約は水素技術に対して保守的想定となることと合わせ, 以下の将来の時間軸を揃えた電力貯蔵技術との比較面でも, 水素技術の想定が楽観的とならないことに留意している. 設備費・運用費については,負荷配分可能電源は天然ガ ス火力とし,風力と併せ2015 年のコスト検証 WG 報告書 の諸元4)のうち2030 年に到達できる範囲で最も安い費用を 用い,建設費は負荷配分可能電源12 万円/kW,風力 20 万 円/kW と想定した.PV については,近年の大きなコストの 低下を考慮して建設費を10 万円/kW と想定した.電力貯蔵 設備については,入出力容量あたりに単価を 1 万円/kW, 貯蔵容量あたりの単価を1 万円/kWh とした. 負荷配分可能電源は,必要容量に応じて設備費と運用費 が,発電量に応じて燃料費が算出される.天然ガスの燃料 費については,検証WG 報告書諸元に基づき,燃料価格は 842$/t(@113$/円),発電効率は 57%(HHV)と想定した. 水素製造設備については,水素・燃料電池戦略ロードマ ップ5)6)に基づき,水電解効率4.3kWh/Nm3-H 2,水電解設備 22.3 万円/(Nm3-H2/h)(電気入力当たり約 5.19 万円/kW)と した.水素貯蔵設備は,貯蔵方式を液化貯蔵ではなく圧縮 貯蔵の前提とし,日本原子力研究所報告書 7)において最も 規模が小さく 16,800Nm3-H2の貯蔵量の水素タンクの圧縮 機込みでの単価としては最も高い約 0.9 万円/Nm3-H 2とし た.水素販売による控除メリットは,水素・燃料電池戦略 ロードマップ等に基づき,販売価格を30 円/Nm3-H2とした. なお,設備寿命は,PV25 年,風力 25 年,負荷配分可能電 源40 年,電力貯蔵設備 25 年に,水素製造・貯蔵設備は文 献8)を参考に 30 年とした. (4) 定式化とパラメータ設定 本検討では簡易モデルにより前回報告と同様に目的関数 である電力供給コスト(水素販売メリットを控除)の最小 化を行うとともに,新たな評価指数として CO2排出量を追 加した. [電力供給コスト] + + − (1) : 電力供給のための固定費 (PV,風力,負荷配分可能電源の設備費・運用費) : 電力供給のための燃料費 (負荷配分可能電源の燃料費) : 水素供給のための固定費 (水素製造設備, 水素貯蔵設備の設備費・運用費) : 水素販売の控除メリット [CO2排出量] − (2) : 電力供給のためのCO 排出量 (負荷配分可能電源のCO 排出量) : 水素製造がもたらす CO 排出削減量 以下に,定式化およびパラメータの設定を示す.

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[電力需給バランス,電力貯蔵の定式化] ℎ + ℎ − ℎ + + − = + (3) = + ℎ (1 − ) −( ) (4) 0 ≤ ℎ ≤ ℎ (5) 0 ≤ ℎ ≤ ℎ (6) 0 ≤ ℎ ≤ ℎ (7) + − ≥ 0 (8) 0 ≤ ≤ (9) [電力需給バランス,電力貯蔵のパラメータ] : 電力需要(時刻 t(t = 1~8760) における9エリア合成,送電端ベースのkWh 値. 以下,各電源の出入力等のパラメータも同様), ℎ : 負荷配分可能電源の最大出力, ℎ : 負荷配分可能電源の出力, ℎ : 電力貯蔵設備放電出力容量, ℎ : 放電出力 : 放電損失率 ℎ : 電力貯蔵設備充電入力容量, ℎ : 充電入力 : 充電損失率 ∶ 電力貯蔵設備貯蔵容量 : 電力貯蔵設備貯蔵量(充電残量) : PV 出力 : 風力出力 : PV 出力余剰量と風力の出力余剰量の合計 : 水電解水素製造設備への入力電気 [電気から水素への変換の定式化] δ × ≤ (10) δ × ∑ ( ) = (11) [電気から水素への変換のパラメータ] δ: 水電解水素製造設備の効率 = 1 4.3kWh/ − : 水素製造設備容量 (9エリア合成の − / hour 値) : 水素製造量(日付 d(d = 1~365) における9エリア合成の − / day 値) [水素から電気への変換の定式化] η × = ℎ (12) ℎ = ∑ ( ) ℎ (13) ℎ = ℎ + ℎ (14) [水素から電気への変換のパラメータ] η: 水素火力発電設備の効率(= 1.985 kWh/ − ) ℎ : 負荷配分可能電源発電量(日付 d(d = 1~365)における9エリア合成の ℎ/ day 値 ) ℎ : 〃 うち天然ガス燃焼 ℎ : 〃 うち水素燃焼 [水素需給バランス,水素貯蔵の定式化] = + − (15) ≤ (16) ≤ (17) [水素需給バランス,水素貯蔵のパラメータ] : 水素需要(日付 d(d = 1~365) における9エリア合成の − / day 値. 以下,水素送出量についても同様) : 水素送出量(=供給量) : 〃 うち発電部門向け : 〃 うち非電力部門向け ∶ 水素貯蔵設備貯蔵容量 : 水素貯蔵設備貯蔵量 (日付d(d = 1~365)の終了時点における 9エリア合成の − 値) 2.2 検討の流れ 前回は固定値扱いとしたPV・風力の導入量も自由変数 として,主に4つの検討を行った. 検討(1)では,電力需給に限定した解析で,再エネ導入量 拡大ケースでのRE100(負荷配分可能電源での化石燃料の 不要化)に必要な電力貯蔵設備や水素設備,その時のコス トを検討し,RE100 制約のない場合と比較した. 検討(2)からは,非電力部門での水素販売を前提とし,電 力貯蔵技術および水素技術の導入量を最適化対象として, 再エネ導入量拡大が水素技術の最適導入量に与える影響に ついて検討した. 表 1 各検討における変数の扱い 検討(3)は検討(2)と逆方向の検討として,再エネおよび 水素技術の導入量を最適化対象として,「水素製造技術の高 度化に伴う水素製造設備単価の低下」や「水素利用技術の 検討(1) 検討(2) 検討(3) 検討(4) 前半 後半 再生可能 エネルギー PV導入量(kW) 9ケース 2ケース 2ケース 最適化 最適化 風力導入量(kW) 9ケース 2ケース 2ケース 最適化 最適化 電力貯蔵 設備 入出力容量 (kW) 実現容量RE100 最適化 最適化 固定 固定 貯蔵容量 (kWh) 実現容量RE100 最適化 最適化 固定 固定 水素 利用 なし 発電部門 非電力部門 非電力部門 非電力部門発電部門 製造設備単価 - (2030年)固定 (2030年)固定 3ケース (2020年, 2030年, 2050年) 固定 (2050年) 再エネ水素 需給制約 - (有)固定 (有)固定 (有・無)2ケース (無)固定 製造設備容量 (Nm3/h) なし 最適化 最適化 最適化 最適化 貯蔵設備容量 (Nm3) なし 最適化 最適化 最適化 最適化 解 析 結 果 ⇒3.1節 ⇒3.2節 ⇒3.3節 ⇒3.4節

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高度化とそれに伴う水素需要の拡大」が最適導入量に与え る影響について検討した. 検討(4)のケーススタディーでは,検討(3)の結果に基づき, 水素を非電力部門に加え発電部門に供給する場合の電力・ 水素需給を検討した.表 1 に各検討における変数の扱いを まとめる.(1)~(4)の各検討での結果を次章の 3.1~3.4 の各 節にて述べる. 3.解析結果 3.1 再エネ導入量拡大による発電部門の RE100 実現 前回の報告において,負荷配分可能電源(天然ガス火力 発電)が不要となる「真のRE100」を電力貯蔵設備のみで 実現するには,PV388GW,風力 222GW の条件下では, 101,144GWh という膨大な量の電力貯蔵設備が必要となり, 電力供給単価も86.70 円/kWh と高くなることを示した. 今回,PV・風力の導入量をパラメータとし,より多くの 余剰電力の発生を許容した最適化により,RE100 をより経 済的に導出できる可能性を検討した(検討(1)).具体的には, PV と風力の導入量を 1.25 倍から 3.00 倍まで 0.25 倍刻みで 各々増やしていく. まず電力貯蔵設備のみで検討する. 電力貯蔵設備の入出 力容量を各ケースの余剰電力の最大値で,その場合に負荷 配分可能電源がゼロとなる最小の貯蔵時間数により貯蔵容 量を決定する.結果を図 1 に示す. 図 1 PV・風力導入量別の電力貯蔵設備による RE100 実現 負荷配分可能電源を不要とするのに必要な電力貯蔵設備 は再エネ導入量の拡大に伴い大幅に削減されていき,前回 よりも大幅に低コストで真のRE100 を実現できることを確 認した.最も低コストにRE100 を実現するのは,PV で 2.00 倍,風力で2.25 倍の導入量のケースであり,PV・風力の導 入コストが増加し,余剰電力量も大きくなるが,それを上 回る電力貯蔵設備の削減メリットが生まれる. 次に,余剰電力で製造する水素が負荷配分可能電源の燃 料として天然ガスを置換することを含めたRE100 について, 上記のPV2.00 倍および風力 2.25 倍の2つの導入量拡大ケ ースにより検討する.2つの導入量拡大ケースの結果を図 2,図 3 に示す.いずれも,まず電力貯蔵設備を用いず水素 設備のみで RE100 を達成する場合(ケース B)は,電力貯 蔵設備と水素設備の導入がない場合(ケースA)や,電力 貯蔵のみでRE100 を達成する場合(ケース C)よりも電力 供給コストは高くなる.また,電力貯蔵設備と水素設備の 併用での容量最適化の検討では,今回の想定では水素設備 は導入されない(ケースC). 次に,RE100 達成制約を外したコスト最小化も検討する (図 2,図 3 のケースD,ケース E).電力貯蔵設備を用い ない場合(ケースD),水素設備は導入されるが RE100 達 成制約有りの場合(ケース B)より導入規模は小さい.電 力貯蔵設備と水素設備の併用での容量最適化の検討では, PV2.00 倍のケースでは水素設備は導入されない(図 2 のケ ースE)のに対して,風力 2.25 倍のケースでは水素設備が 導入される結果となった(図 3 のケースE).ケース E でも 負荷配分可能電源の化石燃料消費はケース A と比較して, PV2.00 倍のケースで 10%,風力 2.25 倍のケースで 53%, 残存する.これと比較して,RE100 達成制約有りの場合(ケ ースC),この化石燃料消費をなくすため,特に大容量の電 力貯蔵設備が必要となる. 図 2 電力貯蔵設備と水素燃料火力によるRE100 実現① (PV 2.00 倍拡大,777GW のケース)

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図 3 電力貯蔵設備と水素燃料火力によるRE100 実現② (風力発電2.25 倍拡大,500 GW のケース) なお,電力貯蔵装置コストが2 倍に高止まりしたケース も検討した(図 2,図 3 のケースF,ケース G).この場 合,電力貯蔵設備と水素設備の併用での容量最適化の結 果,電力貯蔵設備とともに水素設備も導入された(ケース G).電力貯蔵設備のみの場合(ケース F)に比べ,電力貯 蔵設備の設備・運用費の節減が負荷配分可能電源および水 素設備の設備費を上回る.ケースG は,PV2.00 倍あるい は風力2.25 倍の両ケースとも,大容量の電力貯蔵と水素 の設備が必要となる. 3.2 再エネ導入量拡大による水素技術導入拡大効果 前節の前半の検討においてRE100 を最小コストで実現で き る と さ れ た PV2.00 倍 導 入 ケ ー ス (PV777GW , 風 力 222GW)および風力 2.25 倍導入ケース(PV388GW,風力 500GW)について,前回報告ケース(PV388GW,風力 222GW) での検討と同様に,非電力部門での水素販売を前提とし, 電力供給コストが最小となる電力貯蔵設備と水素製造・貯 蔵設備の最適導入量を算定し比較する(検討(2)).なお,各 ケースの脱炭素の比較は考察にて示すが,PV777GW,風力 500GW という導入量は,影響の方向を見るために一例とし て選定したもので,既往の調査9)10)11)で得られている我が国 の導入ポテンシャルと比較しても大きいことには留意が必 要である.水素製造設備の単価は2030 年目標の 22.3 万円 /(Nm3-H2/h)に,再エネ水素需給制約は有りにて条件を固定 している. 結果を図 4 に示す.PV 導入量 2.00 倍ケースは,水素製造 設備の最適導入量は36GW から 180GW へと大きく増加す るとともに,電力貯蔵設備の最適導入量も 397GWh から 472GWh へと増加する.一方,風力導入量 2.25 倍ケースで は,水素製造設備の最適導入量は36GW から 167GW へと 大きく増加するが,電力貯蔵設備の最適導入量は 397GWh から55GWh へと減少する.図 5 に両ケースにおける通年 での電力需給状況を示す.PV と異なり風力は夜間も発電す るため,その大量導入ケースでは夜間に放電する機会が減 少し,電力貯蔵設備の必要量は小さくなる.そのため風力 導入量2.25 倍ケースでは,水素の製造が相対的に優位性を 持ち,水素技術の導入が電力貯蔵技術に比べて進むことと なる.PV だけでなく風力も拡大するケースでは電力貯蔵設 備の導入は抑えられる一方,水素は PV と風力のどちらの 拡大に対しても親和性を持つと言える. 図 4 再エネ導入量拡大による水素技術導入の拡大効果 電力供給単価については,PV2.00 倍導入ケースおよび風 力2.25 倍導入ケースのいずれの場合も,前節の発電部門の RE100 実現で検討した各ケースよりも大幅に小さくなって いる.負荷配分可能電源が残り,発電部門はゼロエミッシ ョンとなっていないが,余剰電力で製造された水素は経済 的合理性をもちながら非電力部門での燃料脱炭素化に大き く貢献する.なお,本節の検討では水素需要の全量の供給 とそれを可能にする貯蔵設備を課していないことから,前 節の中での比較対象としては,RE100 とそれを可能にする 貯蔵設備を課していないケースE が最も妥当と考えられる. 水素設備について前節では,PV2.00 倍導入ケースで導入さ れず(図 2 のケースE),風力 2.25 倍導入ケースでも本節 と比較して小さい導入量(図 3 のケースE)となっている. 一時貯蔵した電気エネルギーを再び電気に戻す電力貯蔵設 備と同じ機能・用途で水素設備を水素発電への水素供給専 用に導入することは,非電力部門への新燃料としての供給 の場合と比較しても,経済性が小さいことが分かる. 3.3 水素製造技術と水素利用技術の高度化効果 続いて,前節の検討(2)とは逆方向の検討として,再エネ および水素技術の導入量を最適化対象として,水素の製造

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および利用の技術高度化が最適導入量に与える影響につい て検討した(検討(3)).水素製造技術の高度化として,水素 製造設備の価格について,2020 年目標の 34.8 万円/(Nm3 -H2/h),2030 年目標の 22.3 万円/(Nm3-H2/h)および 2020 年か ら 2030 年の価格低下率にて更に価格が低下すると仮定し た2050 年の 14.3 万円/(Nm3-H 2/h)の3ケースを想定した. また,水素利用技術の高度化とそれに伴う水素需要拡大の 一例として,再エネ余剰電力で製造された水素の全量を貯 蔵設備がなくても販売できると想定し,これまでの検討で は必要としている再エネ水素需給制約を除いたケースを比 較した.なお,電力貯蔵設備は,前節のケース3 での最適 導入量である13GW,55GWh で固定した. 結果を図 6 に示す.水素製造設備の価格が低下すると, 再エネ水素需給制約の有無によらず,水素製造設備の最適 導入量および再エネの最適導入量が増加し負荷配分可能電 源の発電電力量は減少し脱炭素に貢献する.また,再エネ 水素需給制約を除いた場合も傾向は同様であり,その効果 はさらに大きい.この結果については次章で考察する. 図 6 水素技術高度化による再エネ導入の拡大効果 3.4 発電部門への水素供給 前節の検討(3)の結果を基に,水素を非電力部門に加え発 電部門に供給する場合の電力・水素需給を検討した(検討 (4)).前節のケース 6 を本節のケース A とし,水素製造設 備と余剰電力による水素製造ポテンシャルの全量を販売可 能で,その365 分の 1 の量を毎日供給する等の条件はケー スB,ケース C でも同様とする.ケース B では,発電部門 での利用を非電力部門での利用より優先させ,余力を非電 力部門に供給する範囲でコストを最小化するが,発電部門 のゼロエミッションは制約としない.ケースC では,発電 図 5 需要,PV, Wind の 2013 年データにもとづく需給解析結果例(通年 8760h) (上段の導入量想定 PV: 777 GW, 風力: 222 GW, 電力貯蔵設備: 81 GWx5.8 hours, 負荷配分可能電源:99 GW) (下段の導入量想定 PV: 388 GW, 風力: 500 GW, 電力貯蔵設備: 13 GWx4.3 hours, 負荷配分可能電源:104 GW) 0 100 200 300 400 500 600 G W h/ h 風力 PV 放電 負荷配分可能電源 出力抑制 需要 0 100 200 300 400 500 600 G W h /h 風力 PV 放電 負荷配分可能電源 出力抑制 需要 PVと異なり風力は夜間も発電するた め,その大量導入ケースでは夜間に 放電する機会が減少し,電力貯蔵 設備は導入効果が小さくなる

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部門での利用を非電力部門での利用より優先させるととも に,発電部門をゼロエミッション化し天然ガス消費の全て を水素で代替する制約のもとでコストを最小化する.2 ケ ースにおいて再エネ導入量と水素製造設備・貯蔵設備の導 入量最適化を検討した.結果を図 7 に,ケースB とケース C の水素の年間の需給を図 8,図 9 に示す. ケースA は水素製造ポテンシャルの全量を評価価値の高 い非電力部門で販売できる条件での最適化であり,これ以 上の電力供給単価の下げ代はない.電力供給単価は,ケー スA→ケース B→ケース C と制約条件が強まると高くなる. ケースB では,PV308GW,風力 202GW と再エネ導入量は 小さくなる.負荷配分可能電源での水素による燃料代替の 量は限定的で非電力部門への水素供給も少ない.ケースC は,PV855GW,風力 371GW で,余剰電力により負荷配分 可能電源の燃料は全て水素になるが,PV・風力・水素製造 設備のコストが嵩む.水素の多くは非電力部門へ供給され る. なお,前回報告でも述べた通り,負荷配分可能電源の化石 燃料を代替することによるコスト削減効果は22.50 円/Nm3 -H2であり,30 円/Nm3-H2と想定している水素販売単価より 小さい.この場合,非電力部門への供給に対し発電部門へ の水素供給は7.5 円/Nm3-H2のコスト増加となり,経済的合 理性はないことになる.ここで比較検討したのは,発電部 門のゼロエミッションも個別の重要課題と考えるためであ る. 図 7 発電部門と非電力部門への水素供給配分 図 8 水素の年間365 日の需給 (ケースB:発電部門優先) 図 9 水素の年間365 日需給 (ケースC:発電部門ゼロ排出) 4.考察 4.1 水素技術の更なる導入の可能性 今回想定でPV が 6.3 円/kWh,風力が 8.9 円/kWh となる 発電単価(送電端)がさらに低下する場合には,全ての検討 ケースで電力供給コストは低下し,最適なPV,風力,水素 技術の導入量も増加する可能性があることは今後の検討課 題である. 水素側の要素としても,今回は水素製造単価の低下を検 討したが,水電解効率,水素貯蔵設備の単価や水素販売価 格の想定も検討課題である. 4.2 負荷配分可能電源の必要性 3.1 節の電力需給に限定した検討の結果より,負荷配分可 能電源を不要とするのに必要な電力貯蔵設備は再エネ導入 量の拡大に伴い大幅に削減されていく.しかしながら,負 荷配分可能電源の不要化,あるいは負荷配分可能電源での 化石燃料代替により発電部門のRE100 を実現するには,大 規模な電力貯蔵設備,または水素設備が必要である.この ため,負荷配分可能電源での化石燃料消費の不要化は経済 性の低下を伴う.発電部門のゼロエミッション化が求めら れる場合でも,調整力・慣性力の必要性も含めて負荷配分 可能電源を残すこと,さらにそこでの化石燃料消費を許容 しつつ CCS という選択肢も追求することが現実的な解と 考えられる.なお,海外からの輸入水素については,別途 検討が必要である. 4.3 再エネ水素需給制約 図 10 に,水素の需給として,毎日の製造量,販売量など を示す.3.3 節の,再エネ水素需給制約があり 2050 年の水 素製造設備単価で最適導入量の貯蔵設備ありのケース(図 6 のケース3 に対応)と再エネや電力貯蔵,水素製造の設 備導入量は同じまま,上段には再エネ水素需給制約がなく 再エネ余剰電力で製造された水素の全量を貯蔵設備がなく ても販売できるケース,中段には再エネ需給制約があり貯 蔵設備がないケースを示す.下段は図 6 のケース3 である. 図 11 には,図 10 の下段(図 6 のケース3)のケースで,

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毎日の貯蔵設備の貯蔵量も示す. 図 10 水素の年間365 日の需給 (上段:需給制約なし,中段:需給制約あり・貯蔵なし, 下段:需給制約有り・貯蔵あり.下段が図 6 のケース3) 図 11 水素の年間365 日の需給,貯蔵量: (図 6 のケース 3,図 10 の下段に対応) 図 10 において,水素製造量(=水素販売量)は,上段に 比べて中段のケースで 42%,下段のケースで 37%減少して いる.水素製造量が毎日の変動が大きい一方で水素需要は 毎日一定とし,販売量以上の製造や製造量以上の販売を不 可とした制約(上段から中段への変化)が販売量逸失に大 きく影響を与える一方,最適導入量の貯蔵設備で逸失販売 量を減少できる効果(中断から下段への変化)は 12%と小 さい.このように,本研究において,あくまで考え方の一 例として設定している再エネ水素需給制約が大きく影響を 与える構造が理解できる. 4.4 水素需要拡大の重要性 再エネ水素需給制約の考慮が不要となる図 10 の上段のよ うな状況とはどのようなものか考察する.再エネ由来の水 素の全量を貯蔵設備がなくても販売できる状況とは,水素 需要が十分に大きく成長しており,最大で1 億 Nm3-H2 模で製造される日もある再エネ由来の水素供給を十分に吸 収できる状況となっていることを意味する. 図 12 の右側に,そのイメージとして,図 6 のケース6 に 対応して再エネ水素需給制約がない場合の最適化結果であ るPV354GW,風力 229GW,水素製造設備 90GW の条件で の年間の再エネ由来水素の製造状況および,それに重ねる 形で水素基本戦略 12)での将来の目指すべき姿の水素消費 「年間1000 万トン」相当の 3 億 m3/日の水素需要を示す. 本ケースの検討結果の状況が,水素基本戦略目標ほどに需 要が拡大した世界で再エネ由来水素が優先的に利用される 状況と近いことが分かる.一方でその逆に,水素利用の高 度化や水素需要の成長が遅れている将来を想定する場合に は,図 12 の左側に図 6 のケース3 に対応した年間の再エ ネ由来水素の製造状況を示したように,再エネ水素需給制 約の考慮も不可欠で,再エネ拡大を抑制する影響を与える と考えられる. 図 12 水素需給のイメージ(通年365 日) (左側:図 6 のケース 3 の結果に対応.PV253GW,風力 184GW) (右側:図 6 のケース 6 の結果に対応.PV354GW,風力 229GW) 4.5 水素利用技術高度化 水素のまま最終需要家に利用される形の水素需要だけで なく,市場規模が大きく,かつ最終需要家側の現状技術で は様々な用途への適用性や利便性の面で価値の高い電気や 別の合成燃料(以下,「新燃料」)等,他の二次エネルギー への転換に利用される水素も含めて広く水素需要と捉え, この広義の水素需要を拡大していくことにより,4.4 節に記 載の状況を作り出すことに繋がる可能性がある.あるいは 産業用プロセス等における水素利用設備が拡大し,水素製 造量の多い日には水素利用による生産品を生産・貯蔵して おくことが許容されることも,同様である. 3.3 節の検討結果は,水素利用設備の低コスト化が進み大 規模導入が経済的に成立し水素需要が拡大する状況,供給 側でも再エネ由来以外のプロセスによる水素供給の多様 化・拡大が進む中で再エネ由来の水素がコスト面から優先 的に利用されるような状況となれば,今回検討した再エネ 水素需給制約は緩和されていき,再エネ最適導入量が拡大 し脱炭素に寄与することを示していると解釈できる. 4.6 CO2削減効果の試算 前回の報告において,FCV トラックへ販売する場合,お よび,負荷配分電源の化石燃料を代替する場合の2つを事 例に,マーケット側からの逆算で得られる水素の許容購入 価格について考察した.今回は,水素製造設備への投入

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kWh あたりの CO2削減効果を比較検討する. ・FCV トラックへの水素供給について,日本自動車研究所 の報告書13)より,Tank-to-Wheel ベースでの車両エネルギ ー効率はディーゼルトラックに対してFCV が約 2.2 倍高 いこと,水素の発熱量12.79(MJ/ Nm3),軽油のCO 2排出 係数18.79(g-C/MJ)より,水素製造設備への投入 kWh あた り の CO2 削 減 効 果 は 1kWh÷4.3(kWh/Nm3-H2)×12.79 (MJ/Nm3-H 2)×2.19×18.79(g-C/MJ)×44/12/1000=0.448 ㎏ -CO2/kWh. ・負荷配分可能電源における化石燃料代替について,水素 発電の効率57%(HHV)(天然ガス火力発電と同じ),LNG のCO2排出係数13.87(g-C/MJ)より,水素製造設備への投 入 kWh あたりの CO2削減効果は 1kWh÷4.3(kWh/Nm3 -H2)×12.79(MJ/Nm3-H2)×13.87(g-C/MJ)×44/12/1000=0.151 ㎏-CO2/kWh. ・上記2つの中では高くなった FCV トラックへの試算値 を代表値の一例として用いて,水素製造設備への投入 kWh あたりの非電力部門(運輸部門)の CO2削減効果を 0.448 ㎏-CO2/kWh と想定. ・ 負 荷 配分 可 能電 源 で は 所 内 損 失 率 を 2%として発電 kWh(送電端)あたりの CO2排出 量は 3.6MJ/57%/98% ×13.87(g-C/MJ)×44/12/1000=0.328 ㎏-CO2/kWh. 以上の想定値を用いることで,検討(2)の 3 ケースと検討 (3)の 6 ケースの CO2排出量をそれぞれ図 13 および図 14 に 算定した.再エネ導入の拡大は負荷配分可能電源の発電量 を削減するだけでなく,水素製造・貯蔵・利用の促進をも たらし非電力部門のCO2排出量を削減することも合わせて 脱炭素に貢献することが図 13 で示されている.また,水素 製造技術の高度化に伴う水素製造設備単価の低下,水素利 用技術の高度化とそれに伴う水素需要の拡大は,再エネ最 適導入量の拡大も促し負荷配分可能電源の発電量を削減す ること,および水素製造により非電力部門のCO2排出量削 減量が増えることの両面から脱炭素にも貢献することが図 14 で示されている. 図 13 発電部門CO2排出量(検討(2)の 3 ケース) 図 14 発電部門のCO2排出量(検討(3)の 6 ケース) 4.7 水素貯蔵の限界 図 11 が示すように水素貯蔵設備は,季節により数日から 数週間単位で入出力を繰り返している.前回報告したよう に,このような比較的長期間の時間的隔たりに対するエネ ルギーの需給のギャップを埋める水素の製造・貯蔵を起点 とするエネルギーシステムが,図 5 が示すように日単位で 充放電を繰り返す電力貯蔵と共存・補完する形でベストミ ックスを形成していることが示されている. しかし,本検討で設定される再エネ水素需給制約と貯蔵 設備コスト(約0.9 万円/Nm3-H 2)から導出された各ケース の最適な貯蔵容量は最大でも毎日の水素需要の0.5 日分程 度であり,それによる改善効果は 4.3 節で述べたように 12%程度,また貯蔵設備を経て販売される水素は最大でも わずか8%で大部分は生産されたその日に販売・消費され る構造である. 電気と比べれば貯蔵面での優位性はあるとは言え,常温 常圧で気体である水素は,貯蔵のための設備費用が高く, その前提においては,上記に示唆されるように,消費需要 規模との比較で大規模に貯蔵設備を導入するには経済性の 問題を伴う.したがって,水素は貯蔵というプロセスをな るべく介さず,製造との時間的・場所的な隔たりの小さい 形での利用を優先することが望ましい.最終需要家におけ る適用性や利便性の面から優位なエネルギーである電気や 新燃料への転換も有力である.常温常圧で液体の新燃料な ら,それらに加えて貯蔵面でも優位となる. 5.結論 本論文では,再生可能エネルギー100%を目指す全国を対 象とした電力需給の簡易解析に,再エネ由来の二次エネル ギーとして取り上げた水素の需給解析を取り込むことで, この実現に大きな役割を果たすPV,風力,電力貯蔵設備, 水素製造・貯蔵設備,負荷配分可能電源の稼働状況を想定 し,設備費・運用費を含めた経済性分析により,設備形成 を含めた二次エネルギーのあり姿を考察した. 本検討では,RE100%での出力変動への対応や再エネ由 1 2 3 ベース PV2.00倍 風力2.25倍 負荷配分可能電源の発電量 TWh/年 146 87 71 水素製造設備への入力電力 TWh/年 41 348 446 負荷配分可能電源のCO2排出(①) 万トン 4,775 2,845 2,338 水素製造による非電力部門でのCO2削減(②) 万トン -1,839 -15,601 -19,994 計(①+②) 万トン 2,935 -12,757 -17,656 -20,000 -15,000 -10,000 -5,000 0 5,000 1 2 3 万 t-C O 2/ 年 発電部門のCO2排出量(水素製造による非電力部門削減分を控除) 負荷配分可能電源のCO2排出 水素製造による非電力 部門でのCO2削減 1 2 3 4 5 6 負荷配分可能電源の発電量 TWh/年 340 322 303 246 220 218 水素製造設備への入力電力 TWh/年 0 9 23 127 157 172 負荷配分可能電源のCO2排出(①) 万トン 11,137 10,551 9,933 8,050 7,199 7,144 水素製造による非電力部門でのCO2削減(②) 万トン 0 -401 -1,020 -5,677 -7,030 -7,718 計(①+②) 万トン 11,137 10,150 8,912 2,373 169 -575 -9,000 -6,000 -3,000 0 3,000 6,000 9,000 12,000 1 2 3 4 5 6 万 t-C O2 /年 発電部門のCO2排出量(水素製造による非電力部門削減分を控除) 負荷配分可能電源のCO2排出 水素製造による非電力部門でのCO2削減 計

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来の余剰電力の活用を主眼とするため,原子力,地熱,水 力等,安定した出力を期待できる非化石電源は設備容量を ゼロとして扱い,海外輸入水素も対象外としていること, あらゆるケースを網羅的に確認したものではないことには 留意が必要であるものの,解析結果により,以下の結論を 得ている. 再エネと水素は相互に親和性が高いこと,つまり再エネ 導入の拡大は水素製造・貯蔵・利用を促進することと合わ せて脱炭素にも貢献するものであり,再エネ拡大時,特に 風力の拡大時に放電機会が限定されてしまうという電力貯 蔵設備の問題も水素にはないことを検討(2)で,また,水素 製造技術の高度化に伴う水素製造設備単価の低下,水素利 用技術の高度化とそれに伴う水素需要の拡大は,再エネ最 適導入量の拡大も促すことで脱炭素にも貢献することを検 討(3)で,定量分析により示した.経済合理性の面,CO2 排 出削減の効率性の両面から,水素利用は発電部門ではなく 非電力部門で優先されるべきであり,発電部門で用いられ る水素を主眼とする水素製造装置は,経済面からは導入の ハードルが高いことを検討(1),検討(4)等から示した. 脱炭素の実現のため,再生可能エネルギーの導入と負荷 配分可能電源(火力発電)の燃料脱炭素化を合わせた発電 部門のゼロエミッション化の取り組みと共に,非電力部門 で用いられる燃料を脱炭素化していく取り組みも有効であ ることを検討(2)・検討(3)で示した.前回の報告とあわせて, 今後の設備形成やイノベーションの方向性について,本質 的かつ有用な示唆が示されていると考える. 参考文献 1) 荻本和彦,占部千由,斉藤哲夫,2050 年に向けた日本の エネルギー需給検討-将来の再生可能エネルギー100% の可能性と課題,エネルギー・資源学会第 34 回エネル ギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集 31-5 (2018,1.25~1.26) 2) 荻本和彦,宇田川佑介,占部千由,岩船由美子,下田吉之, 山口容平,2050 年に向けた低炭素システムの検討-RE100%領域の新たな二次エネルギーの必要性につい て,エネルギー・資源学会第 37 回研究発表会講演論文 集 10-1(2018,6.11~6.12) 3) 本田敦夫,手塚孔一郎,荻本和彦,岩船由美子,片岡和人, 東仁,礒永彰,福留潔,再生可能エネルギー由来の二次 エネルギー製造・貯蔵の分析, エネルギー・資源学会 論文誌 41 巻 5 号,pp186-195 (2020) 4) 経済産業省:コスト検証 WG 報告書(2015 年 5 月) https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/ basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cos t_wg_03.pdf(アクセス日 2021.4.1) 5) 経済産業省:水素・燃料電池戦略ロードマップ(2019 年 3 月) https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001 /20190312001.html(アクセス日 2019.11.29) 6) 経済産業省:水素・燃料電池戦略ロードマップに向け た対応状況(2019 年 6 月) https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environm ent/suiso_nenryo/pdf/017_s02_01.pdf( ア ク セ ス 日 2019.11.29) 7) 日本原子力研究所:水素供給コストに関する評価(2005 年 7 月) https://jopss.jaea.go.jp/pdfdata/JAERI-Tech-2005-038.pdf(アクセス日 2020.11.4) 8) 柴田善朗,木村謙仁,カーボンニュートラルメタンの将 来ポテンシャル, 日本エネルギー経済研究所 (2018 年 2 月) http://eneken.ieej.or.jp/data/7769.pdf( ア ク セ ス 日 2021.1.19) 9) 環境省:2050 年再生可能エネルギー等分散型エネルギ ー普及可能性検証検討委託業務報告書 https://www.env.go.jp/earth/report/h27-01/H26_RE_4.pdf(アクセス日 2020.11.4) 10) 斉藤哲夫,占部千由,荻本和彦,2050 年に向けた日本の エネルギー需給検討:風力発電の導入量推定, エネル ギー・資源学会第 33 回エネルギーシステム・経済・環 境コンファレンス講演論文集 18-4 (2017,2.2~2.3) 11) 斉藤哲夫,占部千由,荻本和彦, 2050 年に向けた日本の エネルギー需給検討:風力発電の導入量推定(その 2), エネルギー・資源学会第 36 回研究発表会講演論文集 8-2(2017,6.7~6.8) 12) 経済産業省:水素基本戦略(2017 年 12 月) https://www.meti.go.jp/press/2017/12/20171226002 /20171226002.html 13) 財団法人 日本自動車研究所:総合効率と GHG 排出の分 析報告書(2011 年 3 月) http://www.jari.or.jp/Portals/0/jhfc/data/report /2010/pdf/result.pdf(アクセス日 2019.11.29)

図 3  電力貯蔵設備と水素燃料火力による RE100 実現②  (風力発電 2.25 倍拡大,500 GW のケース)  なお,電力貯蔵装置コストが 2 倍に高止まりしたケース も検討した(図 2,図 3 のケース F,ケース G).この場 合,電力貯蔵設備と水素設備の併用での容量最適化の結 果,電力貯蔵設備とともに水素設備も導入された(ケース G).電力貯蔵設備のみの場合(ケース F)に比べ,電力貯 蔵設備の設備・運用費の節減が負荷配分可能電源および水 素設備の設備費を上回る.ケース G は, PV2.

参照

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