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高校生のLINEでのやりとりに対する認知と友人関係の関連─LINEで嫌な体験をした時と対面時の変化の検討─

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大堀  優 *・永山 智之 **

高校生のLINEでのやりとりに対する認知と友人関係の関連

─LINEで嫌な体験をした時と対面時の変化の検討─

要約  本研究では,高校生のLINEでのやりとりに対する認知と友人関係の関連,及びLINEで嫌な体験をした 時と実際に対面した時の気持ちの変化について検討することを目的とした。質問紙調査を行い,911名の データを分析した。その結果,両尺度の下位因子の一部に弱い正の相関が見られた。加えて,LINEにお ける嫌な体験がある場合に,LINEに対する認知として「既読無視への不安」,「つながり感」,「即時返信へ のとらわれ」,「やりとりの齟齬の感覚」,「攻撃性の増加」をより強く感じ,友人関係のあり方として「積極 的相互理解」「防衛的」「被愛願望」をより強く感じていたことが示された。また,LINEで嫌な体験をし た際の気持ちは,実際に対面する際にもその気持ちを維持したままの場合が多く,対面前に第3者に相談 することによりポジティブな気持ちに変化することが示唆された。 キーワード:LINE,友人関係,高校生,嫌な体験,対面 Ⅰ.問題と目的 現代青年は内面的な深い関わりを避け表面的で 楽しい関係を求め,友人を傷つけないように気遣 いつつ,他者からの評価に過敏で自分が傷つくよ うな不快情動から回避しようとする(千島・村上, 2016)。現代社会において,人々の価値観が変化 し,より多くの個性を受け入れる人間関係になっ た一方で,多様な人間関係を円滑に行うためのコ ミュニケーションが必要になった(土井,2009)。  現代青年の友人関係において,大きな影響を与 えているのがスマートフォンであり,学校だけで なく,どこにいても誰かと繋がることが可能とな り,コミュニケーションを取ることができるよう になった。総務省(2017)の調査では,スマー トフォンの個人保有率は20代で94.2%,13 19歳 でも81.4%と高い数値を示している。また,我が 国におけるモバイル端末によるインターネット利 用 時 間(2016年 ) は, 平 日1日 あ た り10代 は 108分,20代は125分となっており,他の年代と 比較しても極めて長いことが示されている。  スマートフォンの普及と同時に利用が増加して きたのがSNS(Social Networking Service)であり, 10代,20代においては,スマートフォンやSNS が各個人と一体ともいえる媒体となっているとさ れる(総務省,2017)。スマートフォンとSNS の普及に伴い,常時誰かと繋がることにより,友 人関係のつながりがSNS上まで拡大したことが, LINEにおける「既読無視」への恐怖や,返信し なければならないというプレッシャー など「LINE疲れ」という問題となってきている(土 井,2014)。  SNSは2000年代から普及し始めたため,心理 学的研究がなされるようになって日が浅いのが現 状である。また,ネット上のみの人間関係に焦点 を当てたものが多いが,SNS上のつながりは,ク ラスなどの人間関係と重なっていることも多い。 そのため,SNSに対する認知と友人関係のあり方 の関連について検討することは,ネットを通じて 常時つながり続ける若者の友人関係のストレスに ついて理解を深め,問題解決の手がかりになるの ではないか。 *  株式会社サルビアジュニア ** 兵庫教育大学

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発達心理臨床研究 第27巻 2021  2019年7月 (ⅲ)質問紙の構成  フェイスシート:学年,年齢,性別について記 述式で回答を求めた。 LINE尺度:時岡ら(2017)が作成された33項目。 LINEでのやりとりに対する認知やそこで生起す る感覚・感情,それらに基づく行動傾向について, 「既読無視への不安」,「気軽さ」,「やりとりの齟齬 の感覚」,「攻撃性の増加」,「即時返信へのとらわ れ」,「つながり感」の6因子で構成されている。6 件法で回答を求めた。 友人関係尺度:落合・佐藤(1996)の友人関係 の深さ・広さを測る35項目を大谷(2007)が再 構成した32項目。友人関係のあり方に関する「防 衛的」,「自己自信」,「全方位的」,「積極的相互理解」, 「同調」,「被愛願望」の7因子で構成されている。 7件法で回答を求めた。 LINEにおける嫌な体験に関する自由記述: ①LINEをしていて,嫌な体験をしたことがある か ②誰と体験したのか ③どのようなやりとりか ④その時どのような気持ちになったか ⑤その後誰かに相談したか ⑥やり取り後に実際に対象の人物と会ったとき, どのような気持ちになったか ⑦やり取り後,実際に会ったときに時間の経過に よる気持ちの変化があったか の7項目について自由記述で回答を求めた。 (ⅳ)倫理的配慮  学校長に本研究の要旨,倫理的配慮について説 明した依頼文を提示して研究許可を得た後,質問 紙の表紙に調査協力者のプライバシーが保護され, 回答を拒否する権利があることなどを記載して配 布した。 Ⅲ.結果 (ⅰ)記述統計量  平均年齢は16.42歳,標準偏差は5.00,平均使 用時間は43.96分(標準偏差68.95)であった。  本研究では,LINEを対象とする。LINEは2011 年からサービスを開始したSNSの一つである。主 に「トーク」と呼ばれるチャットを中心としてい る。特徴として,文章だけでなくスタンプでも返 信可能であること,自分が発信した発言を相手が 見たかわかる「既読機能」がある。LINEはSNSと されているが,やりとりの相手は携帯電話のアド レス帳に登録されている人や,直接LINEの友達 登録をした人になる。時岡ら(2017)は現代青 年特有の友人関係がLINEでのやりとりに対する 認知やそこで生起する感覚・感情,それらに基づ く行動傾向(以下,LINEに対する認知)へ与え る影響を検討し,友人から傷つけられることへの 恐れが,LINEでのやりとりへのアンビバレント な気持ちを生むと示唆している。本研究では,さ らに深さと広さの2次元で捉えられてきた(落合・ 佐藤,1996)従来の友人関係との関連を検討し たい。  本研究では,時岡ら(2017)と同様に高校生 を対象とする。現在の10代のSNS利用率は81.4% となっており,LINEの利用率は79.3%と高い普及 率となっている。高校生は中学生よりもスマート フォンを所有している割合が高いとされている (ベネッセ総合教育研究所,2014)。また,学校 における現実の人間関係は固定的で限定されたも のになりやすく,既存の関係のなかでLINEによっ て嫌な体験が生じた場合,相手にその後実際に会 う可能性が高いと考えられるためである。  以上を踏まえ,本研究では,高校生のLINEに 対する認知と友人関係の関連,及びLINEで嫌な 体験をした時と実際に対面した時の気持ちの変化 について検討することを目的とした。 Ⅱ.方法 (ⅰ)調査協力者  A県のB高等学校に通う高校生を対象に質問紙 調査を行い,LINEの使用時間を0分と回答した者 も除外した911名(男子647名,女子255名,不 明9名)の回答を分析対象とした。 (ⅱ)調査実施期間

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くなる」の2項目が「攻撃性の増加」に組み込ま れる結果となった。α係数は「既読無視への不安」 で.87,「つながり感」で.87,「即時返信へのとらわ れ」で.85,「気軽さ」で.86,「やりとり齟齬の感覚」 で.85,「攻撃性の増加」で.70であった。  友人関係尺度でも先行研究と同様の6因子構造 が得られ,先行研究に則って命名した(表2)。 α係数は「全方位的」で.91,「自己自信」で.88,「積 極的相互理解」で.87,「防衛的」で.95,「被愛願望」 で.88,「同調」で.83であった。 (ⅲ)LINE尺度と友人関係尺度との関連  LINE尺度と友人関係尺度の関連を検討するた 男女別の平均使用時間は男子で34.77分(標準偏 差52.48),女子で66.18分(標準偏差94.20)で あった。 (ⅱ)尺度の因子分析  因子分析(最小二乗法,プロマックス回転)を, 因子負荷量の絶対値が0.4以下であった項目を削 除して繰り返し行ったところ,LINE尺度では先 行研究と同様の6因子構造が得られ,先行研究に 則って命名した(表1)。ただし,時岡ら(2017) と異なり,「やりとり齟齬の感覚」の「LINEで次々 とメッセージが送られてくるとわずらわしい」, 「たくさんのLINEの通知がくると見るのをやめた 表1.LINE尺度の因子分析結果

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が送られてくるとわずらわしい」,「たくさんの

LINE の通知が

くると見るのをやめたくなる」の

2 項目が「攻撃性の増加」に

組み込まれる結果となった。α係数は「既読無視への不安」

.87,「つながり感」で.87,「即時返信へのとらわれ」で.85,

「気軽さ」で

.86,「やりとり齟齬の感覚」で.85,「攻撃性の増加」

.70 であった。

友人関係尺度でも先行研究と同様の

6因子構造が得られ,

先行研究に則って命名した(表

2)。α係数は「全方位的」

.91,「自己自信」で.88,「積極的相互理解」で.87,「防衛的」

.95,「被愛願望」で.88,「同調」で.83 であった。

(ⅲ)

LINE 尺度と友人関係尺度との関連

LINE 尺度と友人関係尺度の関連を検討するために,全

1.LINE 尺度の因子分析結果

れたものを表記する。

「既読無視への不安」は,全体でも男女別でも「被愛願望」

(順に

r=.25,p< .01;r=.27,p< .01;r=.25,p< .01)と,男子で

「同調」(

r=.20,p< .01)と弱い正の相関が示された。「つなが

り感」は女子で「被愛願望」(

r=.24,p< .01)と,男子で「防衛的」

r=.22,p< .01)と弱い正の相関が示された。

「即時返信へのとらわれ」は女子で「被愛願望」(女子:

r=.29,p< .01)と,男子で「防衛的」(r=.23,p< .01)と弱い正の

相関が示された。「やりとりの齟齬の感覚」は女子で「被愛願

望」(

r=.26,p < .01)に弱い正の相関が示された。「攻撃性の

増加」は,全体と男子で「防衛的」(順に

r=.22,p< .01;r=.23,

p< .01)と弱い正の相関が示された (表 3)。

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106

発達心理臨床研究 第27巻 2021  「即時返信へのとらわれ」は女子で「被愛願望」 (女子:r=.29,p< .01)と,男子で「防衛的」(r=.23, p< .01)と弱い正の相関が示された。「やりとり の齟齬の感覚」は女子で「被愛願望」(r=.26,p < .01)に弱い正の相関が示された。「攻撃性の増 加」は,全体と男子で「防衛的」(順にr=.22,p< .01;r=.23,p< .01)と弱い正の相関が示された (表 3)。 めに,全体と男女別に相関分析を行った。以下, r=.2以上の値が示されたものを表記する。  「既読無視への不安」は,全体でも男女別でも「被 愛 願 望 」( 順 にr=.25,p< .01;r=.27,p< .01; r=.25,p< .01)と,男子で「同調」(r=.20,p< .01)と弱い正の相関が示された。「つながり感」 は女子で「被愛願望」(r=.24,p< .01)と,男子 で「防衛的」(r=.22,p< .01)と弱い正の相関が 示された。

4

2.友人関係尺度の因子分析結果

(ⅳ)嫌な体験の有無による

LINE に対する認知の違い

LINE における嫌な体験の有無による LINE に対する認知

について検討するため,因子ごとに対応のない

t 検定を行っ

た。「既読無視への不安」,に対する認知「つながり感」,「即

時返信へのとらわれ」,「やりとりの齟齬の感覚」,「攻撃性の

増加」において,嫌な体験があるほうが有意に高かった(順

t=4.14,df=101.67,p<.01;t=2.85,df=95.25,p<.01;t=2.86,

df=98.31,p<.01;t=5.56,df=103.51,p<.01;t=2.43,df=98.04,

p<.05) (表 4)。

(ⅴ)体験の有無による友人関係のあり方の違い

LINE における嫌な体験の有無による友人関係のあり方に

ついて検討するため,因子ごとに対応のない

t 検定を行った。

「積極的相互理解」,「防衛的」,「被愛願望」において,嫌な

体験があるほうが平均値が有意に高かった(順に

t=2.77,

df=90.09,p<.01;t=2.17,df=88.03,p<.05;t=2.86,df=87.28,

p<.01) (表 5)。

(ⅵ)自由記述の分類

自由記述で回答を求めた「その時どのような気持ちになっ

たか」と「やり取り後に実際に対象の人物と会ったとき,どのよ

うな気持ちになったか」の

2 項目について,臨床心理学専攻

の大学院生

4 名によって,KJ 法を参考にそれぞれ整理した。

全記述

52 個を整理し「その時どのような気持ちになったか」

において「怒り」「嫌な気持ち」「うざい」「めんどくさい」「悲し

い」「しんどい」「孤独」「拒否」「ない」「その他」の

10 個のカテ

表2.友人関係尺度の因子分析結果

(5)

のあり方について検討するため,因子ごとに対応 のないt検定を行った。「積極的相互理解」,「防衛 的」,「被愛願望」において,嫌な体験があるほう が 平 均 値 が 有 意 に 高 か っ た( 順 にt=2.77, df=90.09,p<.01;t=2.17,df=88.03,p<.05; t=2.86,df=87.28,p<.01) (表5)。 (ⅵ)自由記述の分類  自由記述で回答を求めた「その時どのような気 持ちになったか」と「やり取り後に実際に対象の 人物と会ったとき,どのような気持ちになったか」 の2項目について,臨床心理学専攻の大学院生4 名によって,KJ法を参考にそれぞれ整理した。全 記述52個を整理し「その時どのような気持ちに なったか」において「怒り」「嫌な気持ち」「うざ い」「めんどくさい」「悲しい」「しんどい」「孤独」 「拒否」「ない」「その他」の10個のカテゴリーを 抽出した(表6)。また,「やり取り後に実際に対象 の人物と会ったとき,どのような気持ちになった か」において,全記述47個を整理し「拒否」「怒り」 「緊張」「行動」「その他」の6個のカテゴリーを 抽出した(表7)。 (ⅶ)LINEで嫌な体験をした時と実際に対面した 時の気持ちの変化  自由記述の回答が得られたものを対象とし,「体 験の対象」(個人LINE・グループLINE),「誰と」 (ⅳ)嫌な体験の有無によるLINEに対する認知の 違い  LINEにおける嫌な体験の有無によるLINEに対 する認知について検討するため,因子ごとに対応 のないt検定を行った。「既読無視への不安」,に 対する認知「つながり感」,「即時返信へのとらわ れ」,「やりとりの齟齬の感覚」,「攻撃性の増加」に おいて,嫌な体験があるほうが有意に高かった(順 にt=4.14,df=101.67,p<.01;t=2.85,df=95.25, p<.01;t=2.86,df=98.31,p<.01;t=5.56, df=103.51,p<.01;t=2.43,df=98.04,p<.05) (表 4)。 (ⅴ)体験の有無による友人関係のあり方の違い  LINEにおける嫌な体験の有無による友人関係 5 表3.友人関係と LINE に対する認知の相関分析結果 4.嫌な体験の有無ごとの LINE に対する認知 5.嫌な体験の有無ごとの友人関係 ゴリーを抽出した(表 6)。また,「やり取り後に実際に対象の人 物と会ったとき,どのような気持ちになったか」において,全 記述47 個を整理し「拒否」「怒り」「緊張」「行動」「その他」の 6 個のカテゴリーを抽出した(表 7)。 (ⅶ)LINE で嫌な体験をした時と実際に対面した時の気持 ちの変化 自由記述の回答が得られたものを対象とし,「体験の対象」 (個人 LINE・グループ LINE),「誰と」の体験であるか, 「LINE で嫌な体験をしたときの気持ち」,実際に会うまでの 間の「相談の有無」,「実際に会った時の気持ち」,「気持ち の変化」について分類したものを表8 にまとめた。 表6.「LINE で嫌な体験をした時の気持ち」の分類結果と記 述例(n=50) 7.「その後実際に会った時の気持ち」の分類結果と記述(n=47) 気持ちの変化について,「無し」と回答しているものが22 人であったが,「無し」と回答しているものであっても,「その 時の気持ち」と「会った時の気持ち」が異なる者が9 人おり, 表記した気持ちは異なるが,当事者のなかでは変化してい ると捉えていないことが示唆された。変化が生じているものと して,「孤独」から「拒否」,「孤独」から「緊張」,「怒り」から「行 動にでる」,「しんどい」から「切なくなる」,「怒り」から「気分が 悪い」,「嫌な気持ち」から「行動にでる」,「うざい」から「行動 にでる」,「孤独」から「心配」,「ひとり」から「拒否」,「嫌な気 持ち」から「ちょっといや」があげられたが,「会った時の気持 ち」を「変化なし」と回答している,「悲しい」から「悲しい」, 「拒否」から「拒否」と分類上は同じである回答もあり,同様の 感情であっても変化していると捉えていることが示唆された。 カテゴリ分けするには少数であり,分類することはできなかっ たが,総じて嫌な体験をした後は,時間を置いた場合でも, 変化はあれどネガティブな感情を持ったまま対面しているこ とが示された。 気持ちの変化について,「変化なし」との回答が20 人,変 化したとの回答が 16 人であった。その中で具体的な変化と して回答があったのが,6 人(「前向きになった」,「もう過去の ことと思えた」,「つらい」,「忘れてる」,「気まずくなる」,「虚し い」,「友達と思えなくなった」)であった。「つらい」,「虚しい」 などネガティブな気持ちに変化しているものがある一方で, カテゴリ 記述内容 怒り(12%) イライラする・なんなんこいつ 嫌な気持ち(11%) いや・嫌だと思った うざい(5%) うざい・気分が悪い めんどくさい(4%) めんどくさいやつ 悲しい(4%) 悲しい・切ない しんどい(2%) しんどい・病む 孤独(2%) 孤独・ひとり 拒否(2%) 学校にいきたくない ない(2%) 変化なし その他(4%) 呆れる・心配になる カテゴリ 記述内容 拒否(8%) 会わない・無視・早く帰りたい 怒り(6%) 最悪・自分は悪くない 緊張(4%) 緊張・気を遣う 行動にでる(3%) 思っていることを聞く その他(9%) 不安・怖い・しんどい 変化なし(22%) 何も思ってない 5 表3.友人関係と LINE に対する認知の相関分析結果 4.嫌な体験の有無ごとの LINE に対する認知 5.嫌な体験の有無ごとの友人関係 ゴリーを抽出した(表 6)。また,「やり取り後に実際に対象の人 物と会ったとき,どのような気持ちになったか」において,全 記述47 個を整理し「拒否」「怒り」「緊張」「行動」「その他」の 6 個のカテゴリーを抽出した(表 7)。 (ⅶ)LINE で嫌な体験をした時と実際に対面した時の気持 ちの変化 自由記述の回答が得られたものを対象とし,「体験の対象」 (個人 LINE・グループ LINE),「誰と」の体験であるか, 「LINE で嫌な体験をしたときの気持ち」,実際に会うまでの 間の「相談の有無」,「実際に会った時の気持ち」,「気持ち の変化」について分類したものを表8 にまとめた。 表6.「LINE で嫌な体験をした時の気持ち」の分類結果と記 述例(n=50) 7.「その後実際に会った時の気持ち」の分類結果と記述(n=47) 気持ちの変化について,「無し」と回答しているものが22 人であったが,「無し」と回答しているものであっても,「その 時の気持ち」と「会った時の気持ち」が異なる者が9 人おり, 表記した気持ちは異なるが,当事者のなかでは変化してい ると捉えていないことが示唆された。変化が生じているものと して,「孤独」から「拒否」,「孤独」から「緊張」,「怒り」から「行 動にでる」,「しんどい」から「切なくなる」,「怒り」から「気分が 悪い」,「嫌な気持ち」から「行動にでる」,「うざい」から「行動 にでる」,「孤独」から「心配」,「ひとり」から「拒否」,「嫌な気 持ち」から「ちょっといや」があげられたが,「会った時の気持 ち」を「変化なし」と回答している,「悲しい」から「悲しい」, 「拒否」から「拒否」と分類上は同じである回答もあり,同様の 感情であっても変化していると捉えていることが示唆された。 カテゴリ分けするには少数であり,分類することはできなかっ たが,総じて嫌な体験をした後は,時間を置いた場合でも, 変化はあれどネガティブな感情を持ったまま対面しているこ とが示された。 気持ちの変化について,「変化なし」との回答が20 人,変 化したとの回答が 16 人であった。その中で具体的な変化と して回答があったのが,6 人(「前向きになった」,「もう過去の ことと思えた」,「つらい」,「忘れてる」,「気まずくなる」,「虚し い」,「友達と思えなくなった」)であった。「つらい」,「虚しい」 などネガティブな気持ちに変化しているものがある一方で, カテゴリ 記述内容 怒り(12%) イライラする・なんなんこいつ 嫌な気持ち(11%) いや・嫌だと思った うざい(5%) うざい・気分が悪い めんどくさい(4%) めんどくさいやつ 悲しい(4%) 悲しい・切ない しんどい(2%) しんどい・病む 孤独(2%) 孤独・ひとり 拒否(2%) 学校にいきたくない ない(2%) 変化なし その他(4%) 呆れる・心配になる カテゴリ 記述内容 拒否(8%) 会わない・無視・早く帰りたい 怒り(6%) 最悪・自分は悪くない 緊張(4%) 緊張・気を遣う 行動にでる(3%) 思っていることを聞く その他(9%) 不安・怖い・しんどい 変化なし(22%) 何も思ってない 表5.嫌な体験の有無ごとの友人関係 表4.嫌な体験の有無ごとのLINEに対する認知 表3.友人関係とLINEに対する認知の相関分析結果 表7.「その後実際に会った時の気持ち」の 分類結果と記述例(n=47) 表6.「LINEで嫌な体験をした時の気持ち」の 分類結果と記述例(n=50)

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発達心理臨床研究 第27巻 2021 Ⅴ.考察 (ⅰ)LINEに対する認知と友人関係のあり方の関 連  全体でも男女別でも,「既読無視への不安」が高 まるほど,「被愛願望」が高まることが示唆された。 土井(2014)はネットにおけるコミュニケーショ ンの主たる目的は,互いに触れ合うこととしてお り,即座に反応を示さないことは,タッチしてき た相手の手を振り払う行為とみなされるとしてい る。愛情の求めが高まるほど,既読無視をされて 愛情を失う不安が高まることが推察される。また, 男子で「既読無視への不安」が高まるほど,「同調」 という周囲との調和を強く意識することが示唆さ れた。既読に対して返信がないことに,相手の気 を悪くし関係を悪化させたのではないかと感じ, 不安が高まるほど,より周囲と同調するのではな いか。  「つながり感」が高まるほど,女子で「被愛願望」 が,男子で「防衛的」が高まることが示唆された。 「つながり感」はLINEを通して他者とつながって いる感覚であり,土井(2014)は現代の子ども たちは他者とのつながりに強いこだわりを持ち, 現実の友人関係がネットにまで拡張していること を示唆している。LINEで画面越しに誰かと繋がっ ている感覚が強くなるほど女子は皆から愛された いと強く感じるようになり,男子は傷つきたくな いという思い,友人にはありのままの自分は出す ことを避けるのではないだろうか。男子の結果は, 時岡(2017)で,LINEの「つながり感」が「傷 つけられることへの回避」によって促進されたこ とに通じる。一方,榎本(1999)は,高校生の女 子の友人関係の特徴として閉鎖的であり,感情面 においては「安定・信頼」をもっていることをあ げている。LINE上のやりとりにおいても,女子 は閉鎖的な関係のなかで「安定・信頼」をもって おり,画面の向こうに相手がいる感覚,LINEが あればいつでも誰かとつながっているという感覚 になるほど,相手から好かれたいという思いが高 まり,つながり続けようとするのではないだろう か。 の体験であるか,「LINEで嫌な体験をしたときの 気持ち」,実際に会うまでの間の「相談の有無」,「実 際に会った時の気持ち」,「気持ちの変化」につい て分類したものを表8にまとめた。  気持ちの変化について,「無し」と回答している ものが22人であったが,「無し」と回答している ものであっても,「その時の気持ち」と「会った時 の気持ち」が異なる者が9人おり,表記した気持 ちは異なるが,当事者のなかでは変化していると 捉えていないことが示唆された。変化が生じてい るものとして,「孤独」から「拒否」,「孤独」から「緊 張」,「怒り」から「行動にでる」,「しんどい」から 「切なくなる」,「怒り」から「気分が悪い」,「嫌な 気持ち」から「行動にでる」,「うざい」から「行 動にでる」,「孤独」から「心配」,「ひとり」から「拒 否」,「嫌な気持ち」から「ちょっといや」があげ られたが,「会った時の気持ち」を「変化なし」と 回答している,「悲しい」から「悲しい」,「拒否」 から「拒否」と分類上は同じである回答もあり, 同様の感情であっても変化していると捉えている ことが示唆された。カテゴリ分けするには少数で あり,分類することはできなかったが,総じて嫌 な体験をした後は,時間を置いた場合でも,変化 はあれどネガティブな感情を持ったまま対面して いることが示された。  気持ちの変化について,「変化なし」との回答が 20人,変化したとの回答が16人であった。その 中で具体的な変化として回答があったのが,6人 (「前向きになった」,「もう過去のことと思えた」, 「つらい」,「忘れてる」,「気まずくなる」,「虚しい」, 「友達と思えなくなった」)であった。「つらい」,「虚 しい」などネガティブな気持ちに変化しているも のがある一方で,「前向きになった」,「もう過去の ことと思えた」など,ポジティブな変化をしてい るものがあった。「前向きになった」,「もう過去の ことと思えた」という回答においては,実際に会 うまでに嫌な体験を誰かに相談しており,時間の 経過と他者への相談によってポジティブな気持ち への変化があったことがうかがえた(表8)。

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とりの齟齬の感覚が高まるほど,女子は皆から好 かれていたいと強く感じるようになることが示唆 された。  全体と男子で「攻撃性の増加」が高まるほど,「防 衛的」が高まることが示唆された。時岡(2017) は,男女ともに「傷つけられることへの回避」に よって攻撃性は促進されることを示し,否定的評 価への懸念によって被害的になり,その反応とし て攻撃性が高まるとしている。LINEなどネット 上でのやりとりは対面よりも相手の表情などが伝 わらないため,言葉に攻撃性が増しやすい可能性 があるとされている(Castellá, Abad, Alonso, & Silla, 2000)。攻撃性が増すほど,友人にはあり のままの自分はだせないと防衛的になることが示 唆され,自分を見せない関係の中でのLINEのや りとりは,より相手のことを読み取れず,攻撃性 が増すことも推察される。  時岡ら(2017)では,LINEに対する認知に影 響を与える友人関係として,友人から傷つけられ ることをおそれる心性が強い影響を及ぼしており, 友人を傷つけないように配慮することによって, 人間関係の悪化につながる要因を抑制しているこ とが示唆されている。本研究においても,LINE でトラブルにつながりやすいと思われる側面(「既 読無視への不安」,「即時返信へのとらわれ」,「やり とりの齟齬の感覚」,「攻撃性の増加」)において, 男子は「防衛的」になり,傷つけられることへの おそれが高まることが示唆された。他方,女子は 「既読無視への不安」,「やりとりの齟齬の感覚」, 「即時返信へのとらわれ」,「つながり感」が高まる ほど「被愛願望」が高まり,受け身に皆からの愛 情の求めが高まることが示唆された。 (ⅱ)嫌な体験の有無によるLINEに対する認知の 違い  「既読無視への不安」,「つながり感」,「即時返信 へのとらわれ」,「やりとりの齟齬の感覚」,「攻撃性 の増加」に関して,LINEにおける嫌な体験があ る群がない群よりも高いことが示された。嫌な体 験があるほうが,既読後すぐに返信が返ってこな い不安を持つと同時に即時返信にとらわれ,相手  「即時返信へのとらわれ」が高まるほど,女子 で「被愛願望」が,男子で「防衛的」が高まるこ とも示唆された。女子は相手から好かれていたい と思うほど,男子は傷つくのを避けるために本音 を言わないようにするほど,自分が既読を付けた 際に,すぐに返信しないといけないという感覚が 強まることが示唆された。「即時返信へのとらわ れ」のなかの,「LINEでは,無視していると思わ れたくないから,既読をつけたらすぐ返信する」 といった項目があり,相手が否定的に解釈する可 能性を想定することが即時返信にこだわることに つながっていると推察される。  「やりとりの齟齬の感覚」が高まるほど,女子 で「被愛願望」が高まることも示唆された。やり 6 「前向きになった」,「もう過去のことと思えた」など,ポジティ ブな変化をしているものがあった。「前向きになった」,「もう 過去のことと思えた」という回答においては,実際に会うまで に嫌な体験を誰かに相談しており,時間の経過と他者への 相談によってポジティブな気持ちへの変化があったことがう かがえた(表 8)。 Ⅴ.考察 (ⅰ)LINE に対する認知と友人関係のあり方の関連 全体でも男女別でも,「既読無視への不安」が高まるほど, 「被愛願望」が高まることが示唆された。土井(2014)はネット におけるコミュニケーションの主たる目的は,互いに触れ合う こととしており,即座に反応を示さないことは,タッチしてきた 相手の手を振り払う行為とみなされるとしている。愛情の求め が高まるほど,既読無視をされて愛情を失う不安が高まること が推察される。また,男子で「既読無視への不安」が高まるほ ど,「同調」という周囲との調和を強く意識することが示唆され た。既読に対して返信がないことに,相手の気を悪くし関係 を悪化させたのではないかと感じ,不安が高まるほど,より周 囲と同調するのではないか。 「つながり感」が高まるほど,女子で「被愛願望」が,男子で 「防衛的」が高まることが示唆された。「つながり感」はLINE を通して他者とつながっている感覚であり,土井(2014)は現 代の子どもたちは他者とのつながりに強いこだわりを持ち, 現実の友人関係がネットにまで拡張していることを示唆して いる。LINE で画面越しに誰かと繋がっている感覚が強くなる ほど女子は皆から愛されたいと強く感じるようになり,男子は 傷つきたくないという思い,友人にはありのままの自分は出 すことを避けるのではないだろうか。男子の結果は,時岡 (2017)で,LINE の「つながり感」が「傷つけられることへの回 避」によって促進されたことに通じる。一方,榎本(1999)は, 高校生の女子の友人関係の特徴として閉鎖的であり,感情 面においては「安定・信頼」をもっていることをあげている。 LINE 上のやりとりにおいても,女子は閉鎖的な関係のなか で「安定・信頼」をもっており,画面の向こうに相手がいる感 覚,LINE があればいつでも誰かとつながっているという感覚 になるほど,相手から好かれたいという思いが高まり,つなが り続けようとするのではないだろうか。 表8.LINE の嫌な体験をした際の対象と気持ちの変化 「即時返信へのとらわれ」が高まるほど,女子で「被愛願望」 が,男子で「防衛的」が高まることも示唆された。女子は相手 から好かれていたいと思うほど,男子は傷つくのを避けるた めに本音を言わないようにするほど,自分が既読を付けた際 に,すぐに返信しないといけないという感覚が強まることが示 唆された。「即時返信へのとらわれ」のなかの,「LINE では, 無視していると思われたくないから,既読をつけたらすぐ返 信する」といった項目があり,相手が否定的に解釈する可能 性を想定することが即時返信にこだわることにつながってい ると推察される。 「やりとりの齟齬の感覚」が高まるほど,女子で「被愛願望」 性別 体験の対象 誰と その時の気持ち 相談の有無会うとき の気持ち 気持ちの 変化 男 個人 友人 孤独 してない 拒否 有 男 . . 孤独 家族 緊張 有 男 グループ 友人 怒り 友人 行動にで 有 男 グループ クラス しんどい してない 切なくな る つらい 男 グループ 友人 怒り してない 気分が悪 忘れてる 男 グループ . 嫌な気持ち してない 変化なし 有 男 個人 友人 悲しい その他 悲しい 虚しい 男 個人 友人 嫌な気持ち してない 変化なし 有 男 グループ . 拒否 してない 拒否 有 男 個人 友人 嫌な気持ち 友人 行動にで 有 女 個人 その他 うざい 友人 行動にで 有 女 グループ クラス 孤独 その他 心配 もう過去 のことと 思えた 女 個人 クラス ひとり その他 拒否 有 女 個人 友人 嫌な気持ち 家族 変化なし気まずくなる 女 グループ クラブ 嫌な気持ち 家族 ちょっと いや 前向きに なった 女 . クラブ 拒否 友人 変化なし 友達と思 えなく なった 男 個人 その他 怒り してない 怒り 無し 男 個人 友人 その他 してない その他 無し 男 個人 恋人 悲しい 友人 緊張 無し 女 グループ 友人 怒り 家族 行動にで 無し 女 個人 恋人 めんどくさい してない 拒否 無し 女 グループ クラス 悲しい その他 しんどい 無し 女 両方 その他 怒り 友人 拒否 無し 女 グループ 友人 うざい その他 怒り 無し 女 個人 友人 しんどい してない 行動にで る 無し 男 グループ クラス めんどくさい してない 変化なし 無し 男 . . 嫌な気持ち してない 変化なし 無し 男 . . 嫌な気持ち してない 変化なし 無し 男 個人 その他 怒り してない 怒り 無し 男 グループ クラス うざい 家族 変化なし 無し 男 個人 . めんどくさい してない 変化なし 無し 女 個人 友人 ない してない 変化なし 無し 女 個人 クラス その他 してない 変化なし 無し 女 個人 その他 怒り 友人 怒り 無し 女 個人 友人 その他 友人 変化なし 無し 女 個人 友人 その他 友人 変化なし 無し 女 両方 クラス 怒り してない 変化なし 無し 女 個人 その他 拒否 してない 拒否 やりとりし ていませ ん 気持ちに 変化が あった 表記は異 なるが気 持ちに変 化なしと 回答 変化なし 表8.LINEの嫌な体験をした際の対象と気持ちの変化

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発達心理臨床研究 第27巻 2021 手とのつながりが切れたように感じ,「めんどくさ い」においては,相手との関係の維持する気持ち が少なくなった可能性があり,「拒否」という気持 ちになったのではないだろうか。  「行動にでる」というカテゴリは,感情面では なく,「思っていることを言う」,「怒りをおさえて 落ち着いて話す」といった行動面での回答であっ た。前述のように,LINEにおける嫌な体験があ る場合,友人関係のあり方として「積極的相互理 解」が高いことが示された。友人と分かり合うた めには,本音で言い合い,それによって傷ついて も仕方ないというあり方が,嫌な体験のあとに実 際に行動にでることのなったのではないかと推察 される。  このほかにも,嫌な体験のあとに実際に会う際 にはストレスとなっていたことがうかがえた。加 藤(2013)は,既存の関係のなかでSNSを使用 した場合,言い争いなどになった際,既存の関係 への悪影響が予想されるため,否定的感情を直接 伝えることは少ないとしている。LINE上での体 験について抱いた感情を解消することができず, その後実際に会う可能性の高い場合は,関係悪化 を懸念し,相手に言及することがない可能性があ る。そのため,変化が生じてもネガティブな感情 を維持したままになるのではないかと推察される。  変化したとの回答が16人中,具体的な変化が あるものとして,「つらい」,「虚しい」などネガティ ブな気持ちに変化しているものがある一方で,「前 向きになった」,「もう過去のことと思えた」など, ポジティブな変化をしているものがあった。「前 向きになった」,「もう過去のことと思えた」とい う回答においては,実際に会うまでに嫌な体験を 誰かに相談しており,時間の経過と他者への相談 によってポジティブな気持ちの変化があったのは ないかと推察される。  また,「嫌な体験をしましたか」という質問に対 して,「ある」と回答したが,その後の自由記述に 未回答であるものが半数以上であった。嫌な体験 であったため,回答できなかったことが考えられ るが,過去の出来事であるためその時の感情を具 の表情が見えず,文字やスタンプのみで感情が伝 わってこないわずらわしさをより強く感じ,攻撃 性が増すことが示唆される。しかし一方で,他者 とのつながりをより強く感じてもいて,LINEで 誰かを画面越しに身近に感じ,やりとりをしてい ることがうかがえた。 (ⅲ)嫌な体験の有無による友人関係のあり方の 違い  「積極的相互理解」,「防衛的」,「被愛願望」に関 して,LINEにおける嫌な体験がある群がない群 よりも高いことが示された。LINEにおける嫌な 体験があるほうが友人に対して言いたいことを言 うなど,相手とは傷ついても本音で話し合おうと することがうかがえる。しかし,一方で自分をす べては見せない,本音で話すのを避けるといった 反対の側面も強く,アンビバレントな状態である ことも示唆された。 (ⅳ)LINEで嫌な体験をしたあと,実際に会った 際の気持ちの変化について  気持ちの変化について,「無い」と回答している ものが22人であったが,「無し」と回答している ものであっても,表記した気持ちは異なるが,当 事者のなかでは変化していると捉えていないこと が示唆された。「悲しい」から「悲しい」,「拒否」 から「拒否」と分類上は同じであるが「変化があっ た」という回答もあり,同様の感情であっても変 化を捉えていることが示唆され,嫌な体験をした 後は,時間を置いた場合でも,変化はあれどネガ ティブな感情を持ったまま対面していることが示 された。  「悲しい」,「怒り」,「孤独」といった感情が,実 際に会う際には「緊張」となっているのは,トラ ブルや嫌な体験を解決できないまま会うことに よって,対面におけるトラブルと同様の気まずさ が再現されているのではないかと考えられる。  気持ちに変化があった中で,「拒否」という変化 がみられた。「拒否」は無視するといった関わり 自体を避けるものを分類したものである。「拒否」 に変化する前の段階は「孤独」,「ひとり」,「めんど くさい」であり,LINEで嫌な体験をした際,相

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おける状況に応じた切替 教育心理学研究, 55,480-490. 佐藤有耕(1995).高校生女子が学校生活におい てグループに所属する理由の分析 神戸大学 発達科学部研究紀要,3(1),11-20. 時岡良太・佐藤映・児玉夏枝・田附紘平・竹中悠 香・松波美里・岩井有香・木村大樹・鈴木優 佳・橋本真友里・岩井晶子・神代末人・桑原 知子(2017).高校生のLINEでのやりとり に対する認知に現代青年の友人関係特徴が及 ぼす影響 パーソナリティ研究,26(1), 76-88. 総務省(2017).スマートフォン経済の現在と将 来 平成29年度版 情報通信白書. 千島雄太・村上達也(2016).友人関係における キャラ の受け止め方と心理的適応―中学生 と 大 学 生 の 比 較  教 育 心 理 学 研 究,64, 1-12. 体的に描くことができなかった可能性もある。ま た,調査において「嫌な体験がありますか」とい う質問に対して,「ない」と回答しているものが 93%となっており,LINEによるトラブルが報告 されている中でも,高校生においては嫌な体験を していない,または思いだせないという現状が示 された。現在の高校生にはLINEは当たり前のも のとなり,嫌な体験を回避したり,相手に嫌な体 験をさせないようにお互いにしている可能性もあ ろう。また,ほかのSNSも普及し,LINEでの体験 を強く認識することが少なくなっているとも考え られる。 Ⅵ.今後の課題  嫌な体験に関する自由記述を十分に得ることが できなかったため,ごく一部の体験の記述にとど まったが,一般化するにはさらなるデータ収集が 必要となろう。また,気持ちの変化について,自 由記述のみでは変化の間の出来事,気持ちの変化 のプロセスについて十分に検討することができな かった。今後,インタビュー調査を実施し,プロ セスの検討を行うことが期待される。 引用文献

Castellá, V. O., Abad, A. M. Z., Alonso, F. P., & Silla, J. M. P. (2000). The influence of familiarity among group members, group atmosphere and assertiveness on uninhibited behavior through three different communication media. Computers in Human Behavior, 16, 141–159. 土井隆義(2014).つながりを られる子どもた ち―ネット依存といじめ問題を考える 岩波 書店. 加藤千枝(2013).「SNS疲れ」に繋がるネガティ ブ経験の実態―高校生15名への面接結果に 基づいて 社会情報学,2(1),31-43. 落合良行・佐藤有耕(1996).青年期における友 達とのつきあい方の発達的変化 教育心理学 研究,44(1),55-65. 大谷宗啓(2007).高校生・大学生の友人関係に

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発達心理臨床研究 第27巻 2021

Relationship between high school students’ cognition about communication through LINE

and friendships: Examining changes of one’s feeing when meeting friends after having a

bad experience on LINE with them.

Yu OHORI*, Tomoyuki NAGAYAMA*

*Salvia Junior Co., Ltd. *Hyogo University of Teacher Education

This study investigated the relation between high school students’ cognition about communication through the social networking app called LINE and the friendships., and the changes in their feelings when meeting the friends after having a bad experience on LINE. A questionnaire survey was administered and data from 911 high school students were analyzed. The results showed weak positive correlations between some subfactors of both scales. Furthermore, when participants had a bad experience on LINE, they felt stronger on the following cognitions in relation to LINE communication: “concerns about being left on read”, “sense of being connected”, “obsession with quick reply”, “sense of talking past each other”, and “increased aggression”. With regards to the friendships, they felt stronger cognitions on “proactive mutual understanding”, “defensiveness”, and “desired to be loved”. Lastly, the negative feeling emerged from having a bad experience on LINE was brought into the next face to face meeting with the friend. The result suggests that venting out to a third party will help shift the feeing into positive.

参照

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