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付加価値会計情報について
清 水 哲 雄 1 序 伝統会計としての企業会計はいわゆる所有主の立場に立って彼の利益計算を 主目的とし,あわせてこれが経営管理に役立つことをその目的としている。し かしながら経営規模の拡大とインフレのなかにあっては今日の企業の成績は単 に利益の大きさのみでは判断できない状況にある。けだし使用資本の大きい割 には利益が小さかったり,あるいは利益のなかにインフレによる保有利得が混 入されていて真の営業利益とは考えられないことがあるからである。そこで伝 統的方法にかえて生まれ代わるものに企業社会会計と付加価値会計がある。殊 に後者は有用な情報提供の手段となり得るものであり,企業の利益計算のほか にその利害関係者たる株主,従業員,債権者,政府などの所得をも構成する経 なま済価値の計算表示をするものである。そうすることによって企業の生の現状を ユラ 情報として提供することができる。制度会計に対比される情報会計は企業に生 起した事実をあるがままに記録し,これを報告することによって企業をとりま く内外の利害関係者が,企業に対する自己の意思決定をおこなううえに役立つ 情報を提供するものである。それゆえに何よりも有用性を最優先させ,目的適 合性の公準に導かれる企業会計でなければならない。このことから情報会計に おいては会計的測定は事実のあるがままの写像としての時価を用いることが合 目的的であると考えられる。企業の利害関係者が要求する情報のなかには企業 の処分可能利益や経営管理者,従業員,地域住民,消費者が自らの意思決定に 役立ち将来の行動指針として役立つ資料も含まれる。それは企業の経営努力の 1) 阪本安一:『現代会計の基礎理論』中央経済社,昭和57年,pp.8!∼82。 2)阪本安一:前掲書,177ページ。2 彦根論叢 第225号 結果として得られた利益と,企業の努力に関係なく得られた利益とを峻別する ことからはじまる。したがってこれらの資料は現在の価値に依らなければそれ ぞれにとって有用性はないから,付加価値会計では客観的証拠性をもつ取得原 価基準よりもむしろ企業にとっての価値たる時価を重視する。けだし時価は企 業の現状を示し,企業の状況判断を正しくおこなわしめるのに役立ち,企業が 経済社会において創造した価値であり,企業の社会に対する貢献度を示す価値 3) であるからである。本小論では付加価値会計を情報会計のうちに捉えこれを検 討する。 1[付加価値会計と会計主体 伝統的企業会計は資本の提供者に対して経営者の受託責任を明らかにするた めに存在する。この考え方は企業を所有主の集合体とみるいわゆる所有主理論 といわれ,19世紀末にアメリカのSprague Charles E,スイスのHttgli F,ド 4) イツのSc埴rGF.などによって主張された。この理論のもとでは企業が保 有する資産は所有主の財産であり,負債もまた所有主の債務であり両者の差額 は正味財産として所有主に帰属するものとする。したがって企業会計はこの正 味財産の増減を把握するのがその目的であった。しかしこのような所有主理 論は企業それ自体に法人格が認められ,また所有と経営の分離が進んでくると 企業を所有主から独立した別個の存在とみなし,企業の資産は所有主のもので はなく企業自体のものとし,また負債および資本は資産を調達するための源 泉とみるようになった。このような企業観を企業主体論という。アメリカでは Folsom E.(}.ドイツではBerliner M, Nicklisch H・などによって主張され ら た。この企業主体論のもとでは資産=他人資本+自己資本と考え,会計上の利 益はその処分によって所有主に分配されるまでは企業体の利益と考え,負債に 3) 阪本安一=前掲書,pp.90∼91。 4) Littleton A. C.:Accounting Ewolution彦。 f900, New York 1933. P.184.片野一一 口訳:『リトルトン会計発達史』同文舘,昭和42年,280ページ。 5)Littleton A・C・:ibid, pp・195一一203片野一郎訳:前掲書, pp.296・一307。
付加価値会計情報について 3 対する利子も他人資本主に対する利益の配分と考えた。その後企業規模の急速 な拡大や利害関係者の多様化にともない企業の社会的責任と公共的制度として の役割を重視した企業体理論が主張された。この理論はアメリカのSuojanen Waino W・, Sprouse Robert T., Raby W. しによって1950年忌に主張された。 そのうちのSuojanenによると,所有主理論proprietorship theoryや企業主 体論entlty theoryはいずれも企業の利益に対して請求権をもつ自然あるいは 擬制的人格たる法人の存在をそれらの理論の根拠としている。しかしながら企 業は今や公共的存在物としてその存在は社会的責任を担っているから,企業は 株主,債権者,従業員,得意先,政府および一般大衆などの多くの利害関係者 集団のために存在する。したがって会計主体としての企業はすべての利害関係 者に対して責任を遂行する組識化された共同体organized associationであり, 彼等から委託された経営目的を達成しなければならないという社会的責任を負 っている。このような企業観からSuojanenは伝統的な利益概念にかえて新た に付・加価値概念concept of value addedを導入し,従業員に支払う賃金も株 主に配分される配当金も同じ次元に立つものとして企業が創造した経済価値を 測定してそれらをすべての利害関係者に分配する過程を示す付加価値計算書 の value added statementを重視する。付加価値という概念は元来国民経済のレ ベルでの計算や分析に用いられたものであるが,これを個別企業の計算や分析 に適用しようとする背景には企業規模の拡大による資本(所有)の分散や利害 関係者の多様化にあると考えられる。換言すれば個別企業は今や社会的に公共 物としての存在が強くなってきたことを意味する。このことは企業は利益の追 求だけによって社会的在在の意義を果たすものではなく,企業が国民経済全体 の所得の増大にどれだけ貢献したかを知ることに意義を見出す。ここに企業 ア が社会的所得を創り出し,その付加価値創造の計算をおこなう意義が存する。 6)Suojanen Waino W.:“Accounting Theory and the Large Corporatioバthe Accounting Review July 1954. pp. 39!一’一398. 7)青木脩,小川洌,山上達人編;『企業付加価値会計』有斐閣.昭和56年,pp.78∼ 800
4 彦根論叢 第225号 Morleyによっても利益は株主中心の考え方であるのに対して付加価値は従業 員,債権者,株主,政府の共同努力の産物である。したがって利益は付加価値 う の一部にすぎないとしている。このことから付加価値会計は現行の制度会計の 立場ないし領域よりも広いものとな:る。 伝統会計においては費用は支出基準によって認識され,また収益は収入基準 によって認識される。しかし付加価値会計においては費用の認識は支出基準で はなく,費用の測定時における支出見込額や実際支出額をその後の物価変動指 数によって修正した修正原価やカレント・コスト,再調達原価等によっておこ なわれる。付加価値は企業の経営努力の結果として得られた経済的成果を示す ものでなければならないから経営努力を示す費用とその努力の結果を示す収益 とは同一の価格水準で認識されなけれぽならない。したがって経営努力に関係 なく生ずる利益の如きもの,例えば保有利得や贈与によって取得された経済価 9) 値,偶然発見益等に経営成果たる付加価値に含めてはならない。 企業が自己の労働力や労働手段を利用して企業外部から受け入れた有形,無 形の経済財を消費し,その結果消費した以上の価値量を生産してその生産物の うえに付加した経済価値がここにいう付加価値会計における付加価値である。 したがってたとえば外注工賃は前給付価値であって付加価値ではないが,社会 経済的見地からは外注工賃は労働の対価であるから付加価値である。すなわち 付加価値=企業が生産した経済価値一首企業から購入し受け入れた財の消 費額(前給付価値) である。受取利息,配当金は被投資会社が生んだ付加価値であって投資会社が 生んだ付加価値ではない。また費用・損失にしても経営努力のため以外の企業 の外部事情の変化から生ずる損失たる天災,盗難,火災なども付加価値の計算 からは除外されなければならない。付加価値のうち人件費は最も重要な構成要 素であり付加価値を生む原動力であるが,人の労働力を充分に発揮するために 8) Morley Michael F.: The Value Added Stetement−A review of its use in Cor− porate Reports Gee & Co. 1978. p, 3. 9)阪本安一=前掲書,pp.83一一84。
付加価値会計情報について 5 は土地利用の対価たる地代や他人資本利用の対価たる利子などが必要であるか ら,これらの利用のための価値も付加価値と考えられる。租税については企業 が国や公共団体から受け入れた社会的給付に対して支払われる対価とみる見解 もあるが,しかしむしろこれは企業の租税負担能力の大きさを示すものである から,企業が付加価値の形成に参加した社会への分配分であると考える方が妥 当している。 企業は国民経済という大きなシステムのなかのサブ・システムであると考え るならば,企業は財貨,サービスを生産しこれを社会に提供するという目的を 達成するために社会から原材料や用役をインプットし生産活動をおこなうこと によって社会に種々のものをアウトプットする。この生産活動が付加価値を生 む変換過程である。すなわち外部から購入した原材料や用役は他の企業が生産 した価値であり,それは自己の企業が生み出した生産物のなかに含まれている から前給付(原価)として売上高から差し引かれる。これに対して賃金や利益 などは企業の変換過程において新しく価値が創造されたものであり,企業の利 害関係者たる従業員や経営者,資本提供者にとっては彼等の所得となる。売上 高から外部購入原材料および用役費用を差し引いたものを粗付加価値といい, さらにこれから減価償却費を差し引いたものを純付加価値という。前者の立場 エ ユ ラ ラ をとるのはイギリスのCorporate ReportやCox B., Wood E. G., Gilchrist 14) 15) R.R.であり後者の立場をとるのはMorley M F.である。前者のWoodに よると付加価値とは企業が自ら創造する価値をいうから,(1)人件費としては直 10)阪本安一:前掲書,pp.86一一88。 11) The Accounting Standards Steering Committee: Tlte CorPo?”ate Report A dis− cussion paper 1975. 12) Cox Bernard: Value Added−A nappreciation for the accountant concerned with industry. Heinemann 1979. 13) Wood E. G.: Added Value−The Key to Prosperity. Business Books lg78. 14) Gilchrist R. R.: Managing for Profit−The added value concept. George Allen and Unwin 1971. ls) Morley Michael F.: The Value Added Stateuent−A review of its use in Corporate Reports. Gee & Co. 1978.
6 彦根論叢第225号
接賃金,間接賃金,給料,監督者報酬,休日支払,国民保険料,年金負担額,賄 い費,その他の従業員福利費。(勾財務費用としては銀行利子,分割払購入利子, 抵当権付長期借入金利子。㈲減価償却費としては工場減価償却費,車両減価償 ユの 却費。(4)税引前純利益が付加価値を構成する要素と考えられる。これを分配グ ループ別にみると(1)賃金,給料その他人件費は従業員に対して。(2)配当と借入 金利子は投資家に対して。(3)利益に対する税金は政府に対して。(4)減価償却費 わ と留保利益はより多くの富を創造するために付加価値が分配される。Gilchrist の場合も減価償却費は付加価値の1つに数:えられ利益とともに企業内部に蓄積 の ユ ラ されて将来より多くの富を生み出す源泉とされる。Morleyは減価償却費を控 除して計算すると二重計算が避けられるとする。けだし減価償却費は本質的に は外部購入の材料費と同じものであり,ただその消費がその期間内に発生する か,あるいは数期間にわたるかの違いである。また消耗品購入で毎;期取り替え ていく場合は外部購入の項目であるから減価償却費も同じ取り扱いにしなけれ ば一貫性を欠くことになる。さらに資本集約度(固定資産が総資産に占める割 合)の違いが減価償却費のところで調節され付加価値額に反映されて企業間の 比較特に労働分配の比較を可能にする。これに対して粗付加価値説の立場から はつぎの批判がある。(1)購入項目に減価償却費を含めると事実関係(購入項 目)と主観的判断事項(減価償却費)が購入項目に混在することになる。(2)減 価償却費も留保利益も非現金支出項目として企業の維持拡張計画に利用される の という利点を失なう。後者は正に経営財務における自己金融の発想である。 16)Wood E. G.l op. cit.小JII洌,真船洋之助他訳:『付加価値と生産性一企業繁栄の 鍵一』中央経済社,昭和56年,15ページ。 17)Wood E G.:op. cit.小川洌,真船洋之助他年:前掲書,18ページ。 18)Gilchrist R. R=op. cit.鈴木一成訳:『ギリクリスト付加価値経営一付加価値によ る利益管理一』税務経理協会,昭和54年,45ページ。 19) Morley Michael F.: op. cit. pp. 57一一一一58. 20)山上達人:「コーポレート・レポートと付加価値計算書一M.F、モ・一L一リィの所説を 中心として一」『会計』第116巻第6号18ページ。付加価値会計情報について 7 皿 付加価値計算書の作成 企業の付加価値は販売過程に入ったものと企業内の滞留しているものとの2 側面から考えられる。前者は期間中に発生した売上高から,そのなかに含まれ ている他企業から提供された財の経済価値たる前給付を差し引くことによって 付加価値が計算される。後者はその期間の生産高からその生産に必要であった 前給付価値を差し引くことによって得られる。すなわち生産過程において付加 価値は既に発生しているのであるが,生産が完了して手持となっているものに ついては当期価額基準による正味実現可能価額で評価される。また企業が生産 したもののなかには企業外へ販売しないで自家消費することがある。この場合 にも正味実現可能価額によって発生した付加価値を計算しなければならない。 付加価値計算書は企業の損益の表示に重点をおく損益計算書とは異なり,企 業を取り聞く利害関係者に対して必要な経済情報を提供するものである。しか も企業の労務安定性や生産性の向上がどのように利害関係者に結び付き,かつ う その社会的貢献度を高めるものであるかを示すのに大きな力となっている。い まここに通常の損益計算書を与え,これによって付加価値の計算をしてみよ おう う。 損 一計 算 書 工 売 上 高 1,製品及び商品売上高 2.作業屑売上高 3.総 売 上 高 4。売上値引及び戻り高 ll売 上 原 価 1.期首商品棚卸高 2,当期商品仕入高 3.期首製品棚卸高 ¥’ Z618, 202 36, 061 7, 654, 263 8, 675 ¥ 7, 645, 588 115, 890 1, 696, 794 343, 564 21)阪本安一:前掲書,93ページ。 22) 阪本安一:前掲書,102ページ。 23)阪本安一:前掲書,pp.94∼96。
8 (1) (2) 求め, する。 彦根論叢第225号 4. 当期製品製造原価 4, 936,807
合計 7,093,055
5.期末商品棚卸高 143, 339 6.期末製品棚卸高 372,786 7.他勘定振替高 1, 013, 110売上総利益
(付)製造原価報告書資料=期首仕掛品棚卸高 期末仕掛品棚卸高 販売費及び一般管理費: この企業の在庫に関する増減はつぎのとおりである。 在 庫 増 減 高 製品在庫増加高 期末製品 ¥ 372,786 期首製品 343,564 差 引 増 商品在庫増加高 期末商品 143,339 期首商品 115,890 差 引 増 仕掛品在庫増加高 期末仕掛品 1,507, 978 期首仕掛品 1,374,511 差 引 増 合 計 増 5, 563, 820 2, 081, 768 1, 374, 511 !, 507, 978 1, 1!0, 616 ¥ 29, 222 27, 449 133, 467 190. 138 在庫増の原価を売価基準に修正するために商品及び製品の売上原価率を さらに販売費及び一般管理費率を求めて原価を正味実現可能価額に修正 売上原解一商」鴛鑑響
営業費率= 売上高
¥ 1, 110, 616 teO. 145262 ¥ 7, 645, 588 在庫増加高を時価に修正する計算は ¥ 5, 563, 820 −O. 7277164 ¥ 7, 645, 588 販売費及び一般管理費付加価値会計情報について 9
売価一野獣
¥190,138 =¥ 261,280 0.7277164 正味実現可能価額を求めるには売価から販売に関する費用たる事後費用を差し 引く。よって ’¥261,280×(1−0.145262)=¥’223,326 となる。 (3) うえの正味実現可能価額による在庫増加高を当期の売上高に加えるとカ レント・ヴァリューによる当期生産高が得られる。 ¥’7,645,588十¥223,326=¥7,868,914 (4)期間における付加価値生産高はうえのカレント・ヴァリューによる当期 生産高から当企業が他企業から受け入れた前給付たる商品仕入高,材料仕入 高,燃料消耗品仕入高及び人件費等付加価値構成分を含まない販売費・一般管 理費等の営業費を差し引いて求められる。 つぎに純付加価値説をとるMorleyの勧告する標準会計実務はつぎのようで の ある。 (1)売上高から付加価値税を除く。 (2)購入項目には材料費,燃料,サービス料(税込み)が含まれる。消i費税 地方税,道路税,ライセンス税などを含む。ここで製品,仕掛品変動分中の労 務費を処理する。また営業上の賃借料を含む。 (3)減価償却費は購入項目の1つとして独立して控除する。 (4)種々の営業外項目や異常項目は,付加価値計算書の上部区分として別記 して加減する。 ⑤ 従業員分配には取締役給料などの全報酬を含む。年金,年金掛金,社会 保険料等を含む。政府補助金は控除し,付加給与fringe benefit(住宅手当, 通勤手当等の本給に付加される給与を意味する)は含まない。 (6)資本提供者分配の内容は前払税金控除後の配当(純額),税引前利子(長 期・短期)を含む。設備,土地,建物についての金融上の賃借料を含む。 24)Morley Michael F.=op. cit. pp.14!一一144.山上達人:前掲論文, pp.27∼29。10 彦根論叢第225号 (7)政府配分は英国の法人税(前払税金を含む)及び利益に対する海外税の みとする。補助金はこの項目ではなく,その補助金によって減少する費用項目 の場所で相殺して示す(たとえば賃金や減価償却費等の場所で)。繰延税金は ここで示される。 ⑧ 留保利益の項目のなかから減価償却費をはずす。 ⑨ 連結付加価値計算書においては,子会社の少数株主に支払われる配当を 含む。また親子会社の留保利益を含む。 25) つぎにMorleyによる付加価値計算書の雛型を示す。 モデル付加価値計算書 XYZ株式会社およびその子会社一1977 (単位:100万ポンド) (1976)
外部売上
217 140
差引:購入材料・サービス 81 52 滅価償二目費 22 17 103 69 グループ付加価値 114 71 加算:=投資収益 16 25 異常利得(損失) !8 (6) 関連会社利益のグループ持分 9 13 分配・留保に用いられる付加価値 157 !03 上記合計をつぎのように適用 従業員へ 給料・年金・社会保険料 資本提供者へ 借入金利子・賃借料 XYZ社の株主配当 子会社の少数株主配当 利益に対する税金として政府へ 国 内 税 海 外 税 将来の成長のためグループに留保された利益 72 −7:.一! 12 10 8 30 31 5 36 !9 157396615163
6 2
1
1 3 0 1 25)The Corporate RepQrtでは付加価値計算書に最低つぎのものの記載を必要としてい付加価値会計情報について 11 Morleyは損益計算書から付加価値計算書を作成する手順をマニュアルとし て示している。ここでのキー・ポイントは,購入項目が全部の記入の終了後に 埋められて,付加価値計算書の上下区分の数値を平均させる役割を果たすとと もに付加価値計算書を上下区分の両方からチェックして計算が正しいことを検 証するようになっている。 (1) うえのような付加価値計算書のモデルを準備する。そして付加価値計算 書につぎの数値を入れる。 (2)会社(あるいはグループ)の損益計算書から付加価値計算書に売上高の 数値を入れるQ ③ この段階では未だ購入項目の数値は入れない。この項目は後に差引平均 の数値となる。 ㈲ 付加価値計算書に減価償却費を記入する。 (5)営業外収益があれば記入する。異常損失項目は控除額として記入する。 子会社の税引前利益の持分割合を記入する。 ⑥ 従業員項目の下に当年度の支払総額すなわち賃金総額,年金,年金掛 金,その他手当,従業員の社会保険料を入れる。但し政府から受け取る従業員 に対する補助金は差し引いておく。 (7)資本提供者の項目の下に短期,長期の借入金の当年度支払利子総額およ び金融上の賃借料または土地,建物の賃借料総額を入れる。なおここには当年 度の前払法人税を控除した支払,宣言配当の純額および子会社の少数株主への 支払配当額も含む。 (8)政府項目の下にメインストリームおよび前払の国内法人税の当年度分, および利益に対して支払われる海外税を入れる。ここで記入される税金には親 る。1.売上高,turno▽er 2.購入材料・用役, bought一一in naterials and services 3.従 業員の賃金・便益employees’wages and benefits 4.配当・支払利子, dividends and interest payable 5.税金, tax payable 6.再投資のための留保額amount retained for reinvestment. The Corporate Report. p. 49. 26)Morley Michael E:op。 cit. pp.147∼149.青木脩=,小川洌,山上達人編:前掲 書,17!ページ。
12 彦根論叢第225号 会社・子会社において支払われる税および関連会社の税金の持分割合を含む。 (9)留保利益の下にすべての費用や配当の引当をした後の当年度の会社の税 引後の利益を入れる。連結付加価値計算書においてはさらに単に親会社の分だ けではなく,子会社の当年度の留保利益および関連会社の留保額の持分割合も 追加する。 ⑩ 付加価値計算書の下部区分の合計額を算出する。 (11)付加価値計算書の上部区分の合計額を入れて購入費用の項目に差額数字 を入れる。このようにして購入項目数値が算出されると,消費税,地方税等を 含んだ親会社,子会社の購入材料,サービス料の当年度総額を別に計算して上 の数値が正しいかどうかを検算する。 IV 会計弘報としての付加価値計算書 WoodはCorporate Reportsにもとづいた付加価値論を展開するのである が,ここではICI社の付加価値計算書の実例について検討する。 ICI社の付加価値計算書によれば,すべての数値は付加価値総額を100とす る百分率で示され従業員,政府,出資者,再投資の各グループ別に扱われてい る。この表はICI社の総収益に対する付加価値は1968年∼!974年に42.4%∼ 48.6%にあり平均値としての44.5%からのバラツキは極めて小さい。これは原 材料と購入用役のコスト上昇に合わせて販売価格を幅広く上げたことによる。 全人件費は総付加価値の48.9%∼57.7%の変動がある。このパーセントの高い 年(1972年)には政府の分け前は低くなり,反対に付加価値に対する人件費の 低い年(1968年)には税金部分は上っている。ただ人件費の上昇が急激であ り,この勢いで上昇すれば1975年は64%,1985年は85%,1991年にe# IOO%と なってICI社は収益力のない会社にな:ってしまう程であったが,幸いなこと う に1973年の好景気のときにそれは改善された。 ICI社のマンペワーの生産性と資本生産性の関係は表にみられるように従業 員1人当りの付加価値は年を追って上昇を続け,1968年∼1975年に2倍以上に 27)Wood E・G・:op. cit.小川洌,真船洋之助他訳:前掲書, pp.56・一一57。
付加価値会計情報について 13 1CI社:百分率付加価値計算書 12月末現在 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974% % % % % % 90 収益の源泉 売上高一イギリス 売上高一海外 全売上高 特許権使用料その他の 営業収益 投資収益 関係会社からの純利益 全収益 減算=原材料費および 購入用役 = 付加価値 48.4 46.9 45.9 44.8 44.5 42.0 39.1 48.8 50.6 5!.0 52.2 52.6 54.6 57.3 97.2 97.5 96.9 97.0 !.5 !.! 1.2 O.8
L3 L4 O,8 O.8
一 一 Ll !.4
97.1 96.6 96.4 Ll O.8 O.7 0,8 1.1 L5 1.0 1.5 1.4 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 !00.0 55.8 56,0 57.6 55.9 54,0 5!.4 56.0 4−4.2 44.0 42.4 44.1 46.0 48.6 44.0 回忌価値の配分 従業員へ: 賃金・給料 年金基金負担金 成果配分ボーナス 計 政府へ; 法人税 配当金にかかる税 減算;補助金 計 出資者へ: 借入金への支払利息 株主への配当金 関係会社の少数株主 配分 計 企業内への再投資 減価償却 留保利益 計 =・ t加価値 44.1 45,4 49.7 51.1 5L 9 43.4 41.9 3.0 2.9 3.3 4.3 4.6 5.2 5.61.8 L6 L2 LO 1.0 1.6 L9
48,9 49 9 54.2 56.4 57.5 50.2 49.4 !2.4 !2.1 9.2 4.4 4.3 4.3 1.9 2.3 2.7 7.4 3.6 2.8 7.1 13.3 16.33.3 一 一
3.0 2.5 2.4 14.9 1/一1.1 10.8 5.3 S.2 5,5 6.2 6.1 5.9 L4 1.8 1.6 8.2 6.2 5.8 1.9 7.4 108 13.9 6.5 5.4 4.8 5.1 4.6 4.0 2.1 2.3 1.4 12.9 13.! 13.0 13.9 13.7 12.3 10.2 18.7 17.5 17.8 18.6 18.4 14.4 12.5 4.6 5.4 4.2 2.9 3.0 12.3 14.0 23.3 22.9 22.0 21.5 21.4 26.7 26.5 100.0 100.0 !00.0 100.0 100.0 100.0 100.014 彦根論叢 第225号 ICI社=マンパワー生産性,賃金と資本の生産性 12月 現在 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 付 加 価 値 従 業 員 数 イ ギ リ ス 海 外 計 百万ポンド 563 611 640 千人 139 145 142
48 52 52
693 137 53 803 1091 1348 1361 135 132 !32 12964 67 69 66
従業員1人当り付加価値 187 197 194 190 199 199 201 195 百万ポンド 3010 3101 3299 3647 4035 5482 6706 6979 賃 金・給 料 イ ギ リ ス 海 外 計 利益分配ボーナス年金負担金
総 人 件 費 人件費1ポンド当り付加価値 平均賃金・給料: イ ギ リ ス 海 外 計 百万ポンド 188 2!4 241 262 281 313 374 45960 63 79 92 136 161 191 227
248 277 318 35410 !0 8 7
!7 18 21 30
417 474 565 6868 17 25 17
37 57 76 82
275 305 347 39! 464 548 666 785 2.05 2.00 !.84 1.77 1.73 1.99 2.02 1.73 百万ポンド 1352 1475 1697 1912 2081 2371 2833 3558 1250 1211 1519 1736 2125 2402 2768 3439 1326 1406 1639 1863 2095 2382 2811 3518 固 定資 産 総 資 産 固定資産ポンド当り付加価値 総資産ポンド当り付加価値 インフレーション調整固定資産* インフレーション調整総資産* 固定資産1ポンド当り付加価値 総資産1ポンド当り付加価値 百万ポンド 972 1016 1076 1157 1487 1557 1675 1774 0. 58 O. 60 O. 59 O. 60 0. 38 O. 39 O. 38 O. 39 1160 1185 1233 1425 1869 2143 2412 2748 0. 69 O, 92 !. 09 O. 96 0.43 O.51 O.56 O.50 1955 2310 2281 3158 3889 3732 0.56 O.58 O.60 0. 35 O. 35 O. 36 *現在の購買力により調整付加価値会計情報について 15 なっている。この数値はインフレの影響を受けているのであろうが,8年以上 にわたって1人当りの付加価値という意味の生産性は実質的にも向上してい る。人件費1ポンド当りの付加価値は,たとえぽ1968年には賃金・給料その他 の人件費の1ポンドを支払った後にICI社は減価償却,支払利息および税引 前利益をカバーできる1.05ポンドを別にもっていることを示す。その数値は 1968年以来一般に下降を続けているが,インフレ的要因を考慮に入れると実質 的にはさらにその数値は悪いものになる。資本の生産1生については付加価値と 年々対応させることによって固定資産1ポンド当りの付加価値と使用総資産1 ポンド当りの付加価値がわかる。これらの指標は年々増加しているが,各資産 のインフレによる影響を考慮すれば相当変化する。けだし貸借対照表の数値は 歴史的な資産価額にもとつくが,付加価値は現在価値の数値にもとつくからで ある。インフレ調整後でみれば1973年∼1975年の固定資産および総資産1ポン ド当りの付加価値は1968年∼1971年の数値に近いことをみればICI社の資本 ラ 生産性は安定的であるといえる。 企業は法の定めるところによって株主に年次営業報告書および年次財務諸表 の提示を要求されている。しかし株主や企業内部者たる中間管理者や監督者は 企業が提供する財務諸表を読みこなす力を必ずしももっていない。伝統的方法 によって作成される連結損益計算書は第1に売上高と利益数値との間には非常 に大きな情報の隔りがある。これによって売上高と営業利益との差額分はどう なっているのかが不明である。けだし株主は利益と配当金のみに関心があると 仮定されているからであろうし,また詳細な会計情報は特に競争会社がその情 報を入手したならばその会社に損害を与えると考えたからであろう。第2は利 益数値の多様性である。営業利益,税金および補助金控除前利益,同控除後利 益税金および特別項目控除後利益,留保利益が示されているが株主や従業員 はどの利益が自己にとって有用であるかが問題である。 会計情報の提供に関する近年の最も大きな進歩の1つは付加価値計算書の導 28)Wood E. G.:op. cit.小川洌,真船洋之助他訳:前掲書, pp.58∼61。 2g)Wood E G.:op. cit.小川洌.真船洋之助他訳:前掲書, pp.79一一82。
16 彦根論叢 第225号 入である。これは英国の会計基準委員会によって1975年7月に公表された会社 報告書The Corporate Reportである。これには従業員数,年令分布,性別, 立地条件,労働時間,給料,訓練時間,労働組合の名称,労働移動,欠勤,事 故等を示した雇用報告書のような考え方を含んだ会社報告書の様々な様式を勧 告していると同時に財務報告書については政府との貨幣交換,外国通貨での取 引,大企業の個々の事業部門の分離および将来の見通しについての報告書のよ うな付加的な報告書の必要性を認めている。特にそれは如何に企業努力の成果 が従業員,資本家,国家および再投資間に配分されるかを示す付加価値計算書 30) の公表を勧告している。因みに英国の大会社100社のうち%が付加価値計算書 ラ を公表している。 付加価値計算書の主な利点は,すべての販売収益に何が生じたかを示すこと である。それは一見して販売収益の半分以上が企業に材料とサービスを提供し た人々に配分されていると理解される。付加価値計算書は企業によって得られ た富を識別するが,売上高は外部供給者によって作られた富を含むものであ る。付加価値総額の配分を示す区分では半分以上が従業員に配分されているこ とを示している。その他政府への配分や一般株主への配分および残りの付加価 値は減価償却費,留保利益に再投資されていることを示している。会計情報の 表示として単に紙片に数字を書くこと自体は会計情報伝達の第1段階にすぎな い。多くの人々はむしろ計算表はつまらない読み物になり勝ちであることを認 めているので,図式,図表を使うことは効果的である。すなわちブロック・ダ イヤグラム,グラフ,円グラフ,フロー・チャート,硬貨の積み重ね等である。 さらにこれらの伝達手段による真の理解は伝達のプPセスが一方通行ではなく 33) 相互的でなければならない。 貨幣価値変動を考慮した付加価値計算書の会計情報としての効用を考えてみ 30)Wood E。 G.:op. cit.小川洌,真船洋之助他訳;前掲書, p.84。 31) Morley Michael F.:“The Value Added Statement in Britain”The Accounting Review July 1979 p.618. 32)Wood E・G・:oP・cit・小川洌,真船洋之助他訳1前掲書, pp.88∼89。 33)Wood E。 G.:op. cit.小川洌,真船洋之助他訳:前掲書, pp.91∼93。
付加価値会計情報について 17 よう。インフレによっては富は創造されない。したがって保有利得は付加価値 ではなく,インフレによる富の再配分である。原価ベースと現在購買力current 34) purchasing Powerベースによる付加価値計算書を示すとつぎのようである。 売 上 差引1材料・サービス
減価償却費
純付加価値
適 用: 従 業 員 へ 資本貸付者へ 10%利子つき借入金の利子 政 府 へ 留 保 利 益 CPP修正 19x×年付加価値計算書 原価ベース 純付加価値計算書 (換算) 100 ×110/!0520 ×110/105
20 ×110/55
40 600021
︵∪0 ・⊥2 × 110/105 (×110/105) 貨幣項目: (換算なし) CPP営業利益 貨幣項目; (単位:ポンド) CPPベース 純付加価値計算書 105 21 40 61 4400
11
2130
1
10 13純付加価値
60 44
(注) 期首の小売価格指数は100,期末の指数は1!0,設備購入時の指数は55であっ た。棚卸品はなく,材料は直ちに消費された。 £!0の貨幣利得は,10%利子つき借入es金£looの!0%のインフレ分を示す。 当年度の配当支払いはなく.短期の貨幣利得・狽失もなかった。 この表では売上高,購入材料項目や従業員分配分が小売価格指数(期中平均 指数に対する期末指数)で修正され,減価償却費も当該資産の取得時の指数に よって調整されている。そして重要な点は資本貸付者(債権者)に対する利子 分がインフレによる貨幣項目(債務者利得)としてその価値が留保利益の方 へ振り替えられている。政府分はそのままとなっているがこれは法人税が遅れ て支払われたためである。その結果付加価値は原価ベースよりも小さくなって 34) Morley Michael F.: The Value Added Statement−A review of its use in Corpo− rate Reports. Gee&Co.!978. p.90.山上達人;前掲論文23ページ。18 彦根論叢 第225号 いる。 つぎに時価CCAベースによる付加価値計算書を検討してみる。 CCA修正 19 x×年付加価値計算書 (単位:ポシド) 原価ベース CCAベース 純付加価値計算書 純付加価値計算書
売上
差引:材料・サービス 20 23(注)!00 100
減価償却費 20 33(注)
40 56
純付加価値 ’ 60 44
適 用:従業員へ 20 20
資本提供者へ 1Q 10
政 府 へ 10 10留保利益へ 20
留保営業利益 460 44
利益換算; 原価ベース利益 £20 差引:実現保有利得 材料(23−20) 3 設備(33−20) 13 16 時価ベース営業利益 4 (注)材料・サービスは時価換算して£23。設備は£200から £330になっているので,減価償却費は£33に換算(10%定額法)。 CCA修正付加価値計算書においては購入項目,減価償却費および留保利益 が時価修正されて変動している。短期の貨幣利得(営業貸付者からの債務者利 得)については,購入項目で控除することとなり,このようなインフレの影響 分は供給者から留保利益への振り替えと考えられる。すなわち計算的には購入 項目から控除することによって付加価値が大きくなり留保利益は大ぎくなる。 長期の貨幣利得によるインフレ効果は債権者から留保利益へのティーム・メン ■〈 ・一内の振り替えであり,付加価値分配が変動するのに対して,短期の場合は付加価値会計情報について 19 供給者から留保利益への振り替えであるので購入項目のみが変動し,付加価値 35) 計算書の下部区分間の振り替えはないことになる。 付加価値計算書から得られる付加価値の数値によって付加価値指標を計算す ることができる。これら各種の付加価値指標は経営管理の目的に利用される。 Cox B.は英国最大の化学会社であるICI社lnperiai Chemical lndustries Ltd. の事例によって9個の比率をあげ,これを要約付加価値計算資料からそれらの 36) 数値を計算している。 要約付加価値計算資料 単位:ポンド 控 除 法 加 算 法 売 上 236 差引購入費 (136) 100 固 定資 産 営業投 資 棚卸資産・売上債権 現 金 資 産 合 計 流 動 負 債 使用 資 本 (注) 期間中の臨時利益は除外。 1)付加価値/使用資本 97 20 10! 34 252 58 194
費費益値
却 面 イ
件償西 加
人減利付
56 1i 33 100 これは使用資本の生産性の尺度を示すものである。使用資本とは固定資産 営業投資,流動資産から流動負債を控除した額を示し100/194=0.52ポンド となる。これは使用資本1ポンドについて0.52ポンドの付加価値を生産したこ とを示す。 35)Morley Michael E=ibid. pp.92一一94.山上達人:前掲論文, pp.23∼25。 36)Cox Bernard;Qp. cit. pp,68一一79.付加価値指標については,わが国においても各 種のものがあり,日本銀行の主要企業経営分析では9個の指標。日本生産性本部の付 加価値分析では9個の指標。また日本会計研究学会・付加価値会計特別委員会による ものは8個の指標を設定している。20 彦根論叢第225号 2) 付加価値/営業資産 営業資産とは固定資産と流動資産とを加えたものである。100/198 =O.50ポ ンド 3) 付加価値/資本支出 資本支出capital expenditureを24ポンドとすれば,100/24==4.17ポンドと なる。 4)付加価値/消費資本コスト 消費資本コストとは減価償却費を指す。100/11=9,09ポンド 5) 6) 7) 8) 9) 営業利益/付加価値 33/100=0.33ポンド 付加価値/売上 100/236 ・= O.42ポンド 付加価値/従業員数 付加価値/直接時間 付加価値/人件費 100/56=1.79ポンド これら9個の比率についてつぎのような4点からコメントを述べている。 a)各部分(分子・分母)の関係Are the parts related? b)情報の内容What is the message ? c) インフレによる影響How is it affected by infiation ? d)ユーザとの関係Who皿ay use it ? さらにそれらの比率の有用性に評点を付け,各項目を4点満点として総点を
目\
項論
! 付加価値/使用資本 2 付加価値/営業資産 3 付加価値/資本支出 4 付加価値/消費資本 5 営業利益/付加価値 6 付加価値/売 上 7 付加価値/従業員数 8 付加価値/直接時間 9 付加価値/人件費 分子・分 母の関係 3 2 1 3 3 3 3 2 4 情報内容 1 1 1 2 2 1 2 1 4 インフレの影響 当 年 前 年 2 2 4 4 4 4 4 3 4 2 2 4 4 4 4 1 1 4 ユ ーザ との関係 2 1 3 3 3 1 1 1 3 総 点 10 8 13 16 16 13 11 8 19付加価値会計情報について 21 37) 20点とする。この表でみる限り,高得点の9,4,5は有用性の高い付加価値 指標となり,2,8は低く評価されており,分母が従業員数や直接時間などの 非財務的要素の場合の付加価値指標はさらに一層低い評価がなされているが, 経営管理の内部的要素という観点からはむしろこれらの方が重要であろう。 つぎにCoxは伝統的比率たる使用資本当りの営業利益と付加価値比率たる 使用資本当りの付加価値および人件費当りの付加価値の3つの指標について10 年間の推移をグラフで表わしている。経営者は使用資本当りの営業利益を最大 にすること,換言すれば資本利益率を最大にすることを先ず考慮するので第2 の線については重要性を認めていない。先ず第3の線の推移の相異はインフ レに影響されない会社の増加した賃金やボーナスの支払能力を表わすものであ り,第3線は賃金コストが販売価額によってカバーされていることを示すサイ 38) ソであるので重要である。 噸’ @ “k xi一一一一一一Y 1
1
1 1/ t l ,’儀9N
一 x’ t. の s・←圃・一. 1967 一一一一一一一一@営業利益/使用資本 一・一・一一一@付加価値/使用資本 意力口価イ直/人 件 費 ]976 37) Cox Bernard: op. cit. p. 81. 38) Cox Bernard: op. cit. pp. 83一一84.22 彦根論叢i第225号
V 結
び 利益は企業経営の効率化の重要な指標である。これはSchmalenbach E.によ っても利益は経済性測定の尺度として夙に主張されている。しかしSchmalen− bachの場合は所有主理論に立った損益計算論であるのに対.して,ここで扱った のは企業体理論の立場の利益であり付加価値である。利益を多く計上する企業 は雇用を安定させるのみならず,企業の外部者に対しても多大の貢献をしてい る証拠でもある。企業の本当の収益は売上高から原材料等の外部購入費を控除 することによって得られる。この本当の意味の収益こそが原資であって,この 原資たる付加価値を経営に参画したそれぞれの方面に分配する。したがって伝 統会計で考えられる費用はここでは付加価値を構成する要素である。 わが国へ付加価値会計導入の礎石となったものにLehmann M. R.の生産性39) 40)
測定論と米国のラッカー・プランがある。前者は創造価値Wertsch6pfungを 生産と分配の両面から考察し,後老は生産価値production valueという語に よって今日の付加価値概念を表わしている。 企業の成果を測定するための伝統会計における利益の概念は投資家にとって 幾つかのメリットを有しているが,同時に重大な欠点も有している。第1は利 益概念の多様化から成果尺度の1つとしてそれは大きな誤りに導き易い。第2 は世論の現代的風潮たるカレント・コストによる利益概念とくらべて,それは 幾分狭い見方と受け取られる。第3は利益は追求しないが成果を測定し,かつ 改善を要する組織体に適用し難い。したがって単純に利益のみを企業成果の測 定尺度とすることなく広く投資家,従業員,顧客,債権者,政府,非営利企業 等にも適用可能な測定尺度が必要である。それは付加価値計算書から得られる 各種付加価値による指標であり,これらによってそれぞれに必要な会計情報が 39) Lehmann M. R,: Leistungsmessung durch WertschtiPfangsrechnun.cr. Essen 1954. 山上達人訳=『レーマソ生産性測定論』税務経理協会,昭和41年。 40)Rucker A. W.:Gearing V7ages to Productivit:y.!962.今坂朔久編著:「ラッカ 一・プランー成果配分の原理と適用一』日本能率協会,昭和39年。付加価値会計情報について 23 得られ自己の意思決定に役立てることができる。さらに付加価値計算書に資金 計算書funds statementを結合させることによって企業における資金の運用状 態を知り,なお一層会計情報としての有用性が高まる。さらにCorporate Re− portは会計情報として伝統的な財務諸表に加えて非財務情報も含めた広汎な ラ 情報の提供を提案している。それは現行の損益計算書,貸借対照表および資金 計算書のほかに1)付加価値計算書,astatement of value added 2)雇用報 告書,an employment report 3)対政府貨幣取引明細書, a statement of皿oney xechanges with government 4)外貨取引明細書, a statement of transactions in foreign currency 5)将来予測説明書, a statement of future prospects 6) 企業目標に関する説明書astatement of corporate objectives等である。これ らは数値による現状把握と同時に非財務的情報による現状把握であり,これに よってそれぞれの人達の意思決定に役立てようとするものである。 41)Wood E G.:op. cit.小川洌,真船洋之助旧訳;前掲書, pp.41∼43. 42) Knox R. W.: Statement of Source and APPIieation of Funds−A practical Guide to SSAP 10. The lnstitute of Chartered Accountants in England and Wales !977. Worth Brian: C‘Reporting of Value Added” The Aecountant December 23rd/30th, 1976. pp. 728−730. 43) The CorPorate Report p. 48.