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中学生・高校生の携帯電話利用に表れた コミュニケーション・ルール(7) -「社会調査及び実習1」2018による調査をもとに

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(1)中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7). 中学生・高校生の携帯電話利用に表れた コミュニケーション・ルール(7) −「社会調査及び実習 1 」2018による調査をもとに−. Communication rules which appeared by the usage of mobile phones in the students of junior high school and high school: Based on the research of the Social Research Training Course I, 2018 藤 本 一 男(作新学院大学人間文化学部) 山 尾 貴 則(作新学院大学人間文化学部). 概 要  本稿は、本学人間文化学部で開講されている「社会調査及び実習 1 」で実施さ れた調査の報告である。調査のテーマは中学生、高校生の携帯電話利用実態の把 握であるが、以前(2012、2013、2014実習)と同様にそれらを踏まえながらも更 に「携帯電話利用の中からどのようなコミュニケーション・ルールが見出される か」を中心的な調査課題にしている。2014調査からは、LINE 利用に関する質問 を追加することを行い、対面 / 非対面コミュニケーションの選択が、性別や学年 (年齢)といった回答者属性によるものと、LINE などの利用/非利用によるもの に区分できる可能性を検討してきた。 キーワード:中学生、高校生、携帯電話、ケータイ、スマホ、LINE、友人、価 値観、マナー、多重対応分析、幾何学的データ解析. 1  調査の概要 1.1 調査の目的  本調査は、本学人間文化学部で開講されている「社会調査及び実習 1 」という科目にお ける学生実習として実施された。調査のテーマは中学生高校生の携帯電話利用実態把握で ある。2012実習から、「携帯電話利用の中からどのような友人観や友人との関係の取り方、 そしてコミュニケーション・ルールが見出されるか」を中心的な調査課題とすることにし 179 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(2) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月. ている1)。そして、2014年度より LINE の利用をめぐった設問を設け、急速に拡大してい る LINE 利用とコミュニケーション・ルールの関係に注目した。  2016年度までは、この流れで、2012、2013、2014、2015と四年間にわたって電子デバイ スが生活に入り込んだ状況での生徒たちのコミュニケーションルールの発見を試みてき た。  しかし、ここにきて、急速なスマートフォンの普及と LINE コミュニケーションの広が りを前に、あらためて、LINE を中心にした現状把握が必要であるという認識にたち、調 査票を再構成することにした。  2017年度調査票でも、LINE に特化した設問を用意した。多くの調査からも明らかなよ うに、今日、中学生、高校生にとって、LINE はデフォルトのコミュニケーションツール である。  2016年度調査を準備する過程の事前調査の中で、 「LINE 民」という言葉にあらわされる ようなネットコミュニティのあり方の「変化」が存在し、そこへの帰属意識が問題になり はじめているという議論があったが、これまでの調査のデータを見る限り、大規模コミュ ニティへの参加は確認されていない。そのため、LINE 利用の規模については、最小限の 設問にとどめている。 1.2 調査の対象  今回も、2007年以降、継続して調査にご協力いただいている宇都宮市内の中学校と高等 学校に今回も協力を依頼した。それぞれ 1 校ずつである。  回答者数(回収数)は、合計で1457レコード(読み込みデータ)である。その中で、学 年不明 3、性別不明 17(両者に重なるもの 1)。よって有効回答は、1438レコードとなる。 詳細は、2.1の回答者属性を参照。更に質問ごとに、シングルアンサー(SA)であるにも かかわらず複数回答(MA)しているものは、NA(無効)として処理した。 1.3 調査の期日  中学校、高等学校が夏休みにはいる直前のホームルームを使って調査していただいたた め、2018年の 7 月の上旬の夏休み前のホームルームに実施している。それに間に合うよう に 6 月末日には、調査票など必要なものを当該校に持ち込んだ。 1.4 調査事項  今年度の調査票も2016年度、2017年度のものを継承し、LINE の利用実態調査を中心に 構成している。回答者属性として性別と学年を聞き、設問は問 1 ∼問24で構成されている。 調査票は、A-1に添付されているので実際の質問内容はそちらを参照されたい。 なお、 2012年以降の調査票の設問対応表は、2016度の報告に添付されているので適宜参照された い(藤本・山尾 2017) 。  今年度の設問は以下のように構成され配置されている。 180.

(3) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7).   1)回答者の基本属性として、学年、性別。   2)問 1 で最もよく利用する情報の連絡手段を聞いている。問 2 では、自分専用にもっ ている機器を確認した(複数回答)。   3)問 3 携帯電話の利用歴を聞いている。ここで「使っていない」を回答した生徒には、 問23を回答してもらい終了。   4)問 4、問 5 では、インターネットマナー講座の経験を聞いている。   5)問 6 以降は、LINE 利用に関する設問となっている。問 7 で LINE のどの機能を使 うかを聞いている。   6)問 8、9、10で、LINE のアドレス交換について聞いている。それは、LINE ID の連 絡先としての重要度を聞くために、クラスメート、初めて知り合った人になにを伝えるか を聞いている(問 8、9)。問10では、「ネット上で知り合った人」からの LINE ID 交換提 案にどのように応答するかを聞いている。   7)問11では、ネットトラブルにあった時の相談先を聞いた。   8)問12∼17で再度、LINE 関係の設問がつづく。   問12、13では、LINE に登録されている「友人」数「公式アカウント」数を聞いた。 問14では、そこに登録されている人たちのなかで、どのような人たちと連絡をとりあって いるのかを聞いている。  つづいて、グループラインについての設問を用意した。  そこでは、いくつのグループラインに所属しているか(問15)、そのなかで一番規模が 大きいグループラインは、何人くらいのものであるのかを聞いた(問16)。  問17では、メッセージの形態についてきいている。   9)問18、19は、メッセージの応答タイミングについて、自分がどのくらいで返信する か、また、どのくらいで返信して欲しいかを聞いた。これは、過去の調査との比較が可能 である。  最後に、LINE を使っていて困った経験の有無を聞き(問20)、その困った内容について 回答してもらっている。  10)問21、22、23、24は、LINE にまつわる困りごと、トラブルについての設問である。. 図 1㻙1 各設問ごとの有効/無効回答数 181 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(4) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月. 1.5 調査の方法  準備された調査票を用いて、中学、高校の各クラスのホームルームを使って調査してい ただくべく担任の先生に調査手順書をお渡しし実査をお願いした。すべての調査が終了し たのち、中学校、高校ごとに回収にうかがった。  なお、調査実習の一環として、各校への調査協力の「依頼状」の作成を行い、その書面 を用いた実施協力依頼を行ったのは例年と同じである。 1.6 集計及び結果の公表  2018年11月24日の学園祭で中間報告をパネル展示として実施し、 本論文によって、 データの詳細集計を含めた報告を行っている。単純集計(属性クロス)の一覧は、A-3 として添付されている。. 2  調査の分析 2.1 回答者属性  集計の詳細は A-3の表「回答者属性」を参照。これらデータの元になった元データで の学年と性別の集計を以下に示す 2)。ここから「不明」を無効処理したもの(総数1438) を分析の対象としている。学年の人数、性別の分布などにやや差は見られるが、再サン プリングは行わず分析を進めた。. 図 2㻙1 回答者属性. 2.2 携帯スマホをいつから使い始めているか(問 3)  2016年調査までは直接利用期間を聞いていたが、2017年度より「利用開始時期」が、他の 設問(例えば LINE ID の交換)に関係しているのではないかと考えそれを聞くようにした。 以下が概要である。 182.

(5) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7). ・高校生のほぼ全員、99.9%が使っている(2017年度は99.6%)。 ・中学生の利用率は73.8%。2016年調査では約50%だったものが2017調査では、70.2% となり20ポイントの増加を確認した。伸び率は減少しているものの更に増加している。 今後もこの傾向は続くと思われる。 ・中学生の使用開始時期をみると、小学校(特に高学年)から使い始めている生徒が増え ていることを確認できる。 ・高校生は、以前は「高校 1 年生になったら持つ」という傾向があったものの、それは 減少している。高 3 から高 2、高 1 と「高校からもった」が減っている。すでに中学 からもっている生徒が、70%に達している。 ・中学生は、未使用は2017年は30%いたのだが、26.2%に減少し所持率が上がっている。 また、小学校高学年から使用も増加している(36.8%)。 2.3 どのサービスを使っているか(問 1)  問 1 では、 生徒たちが利用しているサービスを聞いている。 今回、 我々は、 この設 問を SA(シングルアンサー)としたのだが、これは誤りであった。  これまでの調査から想定されたのは、LINE の利用が圧倒的に多いということであった。 MA(複数回答)で聞いていれば、LINE 以外に利用しているサービスを聞き出せたのだが、 今回は、SA(シングルアンサー)としたために、LINE 以外のものが、LINE に隠れてし. Tw In s emt G ail p Sk p SM FB S. まう結果となってしまった。これは、今後への教訓としたい。. 図 2㻙2. 2.4 問11トラブルがあった時の相談先  スマホ利用には様々なトラブルがついてくる。発生した問題をどのように解決するのか の伴となるのが、誰に相談するか、である。  グラフにはっきりと現れているように、比率として一番大きい相談先は「家族」である がそれは、学年があがるにつれて減少し、「友人」が増えていく。そうした変動分を除く とそれ以外のものは、非常にすくない。その中でも位置を占めているのが、「ホットライ 183 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(6) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月. ンなどの相談機関」であった。基本的に身近(家族か友人)で解決している姿がおもいう. ホッ トラ イン 学 等の 校 の 相談 知り 先 機関 合 生 先 いの 輩 大人 後 輩. かべられる。. 2.5 どのような「文字」を使っているのか。  LINE が中学生高校生のコミュニケーションのデフォルト・ツールになっているわけだ が、そこでのメッセージのやりとりは、どのような形態をとっているのだろうか。  以下にみるように、学年(年齢)に関係なく、5 文字以内、顔文字絵文字、顔文字絵文 字なし、は一定の割合を占めている。相手との「つながり」 (だけ)を確認する機能であれ ば「スタンプのみ」が多いことが想定されたが、その予想は否定された。 (スタンプのみの 左側の 3 つの回答は、すべて文字メッセージが含まれている。問17:設問回答選択肢参照). 3  コミュニケーション・パターン 3.1 LINE ID の交換  今回も、「LINE ID の交換」に注目してみた。LINE の利用率が最も多いため、LINE の ID の交換は、個人的関係構築の承認を意味する。そこで、以下の三つの場面での生徒た ちの「LINE ID の交換」に対する反応を比較した。問 8:クラスメート、問 9:初対面(し 184.

(7) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7). かし顔はわかっている)、問10:SNS などネットで知り合った人(顔は知らない) 。それ ぞれへの反応の特徴は、以下のようになっていた。まずは、基本属性である学年(年齢) と性別で分析している。 3.1.1 クラスメートとの LINE ID の交換(問 8)図3㻙1. 図 3㻙1 問 8「クラスメイト(顔を知っている人)から「LINE の交換をしよう」と言われました。 交換しますか。」. 1 .「交換する」は全体では2017年が92.9%(中学 87.1%、高校95.9%)であったが、今年 は、全体が93.3%と増加。そこで中学は90.1%と増加したが、高校は94.8%と減少している。 2. 「交換する」中学生は、学年が上がると増える。2017年は、83%、88%、90%。今年は、 84.8%、94.6%、89%。 3 年生は、昨年の 2 年生(88%)なので、増えていることになる。 3. 高校は2017年が、97%、95%、95%。 と変化はなかったが、 今年は、94.1%、97%、 93.2%である。 1 項でもみたが、若干の減少が発生している。 3.1.2 初対面の人との LINE ID の交換(問 9)図3㻙2 1 .「する」は、全体の2017年が34.9%(中学22.6%高校41.2%)。今年は、31.4%(中学 25.1%、高校34.4%)である。ここでも高校は減少している。 2 .中学生は、学年が上がると増える。2017年は中1 17%、中2 22%、中3 29%。今年は、 中1 18.6%、中2 25.5%、中3 29.4%である。 3 .高校は2017年は、高1 42%、高2 38%、高3 43%。で、学年による大きな違いはなかっ たが、今年は、高1 36.2%、高2 34.6%、高3 32.4%と全体として減少している。  「クラスメート」(問 8)「初対面」(問 9)での交換「する」は、中学生では学年(年齢) によって増加し、高校生は、昨年度よりも若干減少する傾向を示している。. 185 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(8) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月. 図 3㻙2 問 9「初対面の人(はじめての人)から「LINE の交換をしよう」と言われました。交換し ますか。. 3.1.3 ネットで知り合った顔を知らない人との LINE ID の交換(問10)図3㻙3. 図 3㻙3 問10「SNS(インターネット)上で出会った人(顔を知らない人)から「LINE の交換をし よう」と言われました。交換しますか。」.  気になるのは、顔を知らないひとと LINE ID を交換する(問10)、という行為はどのよ うな属性と連関しているか、という点である。 1 .全体での「する」は、昨年が16.7%であるが今年は10.6%に減少(「しない」は昨年が 80.1%で今年が86.0%、「他のものを交換」も昨年が2.1%であったが今年は3.4%)。 2 .「する」を学年でみても、単調な増加傾向にはない。中 1→中 3 と増えるが、高 1は中 3 より低い。  このように、昨年につづき全体として抽出できる属性は見いだせていない。その意味で は、顔を知らない人との LINE ID の交換は、ランダムに発生している。 3.2 どのくらいのタイミングで返信するか / 期待するか−生徒たちは「すばやく応答する」 ことを迫られているのか  携帯電話、スマートフォンなど携帯デバイスの普及によって、空間的な切れ目がなくなっ ている。つまり、かつては学校が終わって「じゃあね、また明日」といえば、友達とは別 の時空間がまっていたのだが、これら携帯デバイスを介したコミュニケーションの普及は、 186.

(9) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7). その境目をなくしてしまった。そのため、生徒たちは「すぐに応答すること」をせまられ ていると言われている。それがどのような、どの程度のものであるのか、見てみたい。  問18は、友人からメールや LINE などでメッセージがきたら、どのくらいのタイミング で返信するかを聞いている。また、問19では、どの程度のタイミングでの応答を期待する かを聞いている。この両者をクロス集計したものを、agreement plot を用いて、その応答 の一致度を可視化してみた。. 問18. 問18. a)中学男子             b)中学女子. 問19. 問19. 問18. 問18. c)高校男子             d)高校女子. 問19. 問19 図 3㻙2㻙1. 3.2.1 図3㻙2㻙1に見られる傾向  図3㻙2㻙1のグラフの左辺は問18:応答実施タイミング、底辺は問19:応答期待タイミン グ、であり、1 ∼ 5 の数字は回答選択肢(1:5 分以内、2:30分以内、3:1 時間以内、4: 1 日以内、5:気にせず)に対応している。 1)実施と期待が一致すれば、対角線上にのるわけである。中学男子 (左上) が45度よりも上側 にもりあがっているのは、自分が期待するよりも実施のほうが 「緩い」 ことを示している。 それ以外のものも、膨らみ方は、上側なので、 「実施よりも期待の方がゆるい」 傾向にある。 2)右上の一番大きな面積を占めている四角は 「気にしない」を表している。傾向をみると、 187 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(10) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月. 中学生よりも高校生が、 また男子よりも女子が 「気にしない割合」 が大きい。 ただ、 昨年度 の検討でも述べているが、 この 「気にしない」 は、 「 4:1 日以内」 よりも 「長くてもよい」 と いうことではなく、期待も応答も、タイミングには気を使っていないという可能性が大 きく、 それを分離できる設問にしなくてはいけないが、 今回はデザインできなかった。  なお、昨年度と同様、この 1 ∼ 5 の順序性を次の対応分析 2)の実施の課程で確認し たが、今年度調査では、実施と期待での 5 の位置の順序性には違いが生じていなかっ た。そのため、昨年度にコメントした「これは、返信する際になにもストレスを感じ ていない(2017- 問16)、という状況と、相手の応答を待つという際になにもストレ スを感じていない(2017- 問17)、という状況は別であると考えれば、理解できるこ とである」(藤本・山尾2018:174)は、更に検討を加える必要がある。 3.2.2 多重対応分析による学年性別の位置付け  昨年度に引き続き、多重対応分析を用いて、応答の実施 / 期待と学年性別の関係を検討 してみた。今回は、実施(問18)と期待(問19)で構造化したところに、学年性別、利用 期間(携帯デバイスの利用開始時期と現在学年より算出)をサプリメンタリ変数として投 影するという幾何学的データ解析(GDA)3)という手法を用いている。  その結果明らかになったのは、以下の点である。図3㻙2㻙1∼3㻙2㻙4を参照。 1)図3㻙2㻙1は、2017年の構造(藤本・山尾2018)と、掲載はしていないが2018年の構造と 変化がないことが確認された。期待も実行もほぼ対応した位置にあり、また 5 分以内(5 m) 、30分以内(30m) 、1 時間(1H) 、1 日(1D) 、気にせず(NM)が第一主軸上にこ の順番で並んでいることが確認できる。 5 分以内と30分以内は、第 1 主軸上ではほと んど同じ位置にあり、 「 5 分」を引き出しているのは、中 1、中 2 の男性生徒である。 2)次に、このサプリメンタリポイントを調査年次ごとに分解して構造に投影することを 行ってみる。結果は、図3㻙2㻙2である。. 図 3㻙2㻙1 2017年2018年の返信実施 SND/ 期待 REC タイミング  図 3㻙2㻙2 2017年調査と2018年調査を統合して投影 188.

(11) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7).  しかし、この状態では、注目部分が混み入っているために、構造を生成した active 変数 を非表示にして、サプリメンタリ変数部分を選択的に表示させてみた。それが、図3㻙2㻙3、 図3㻙2㻙4である。  これらの図では、構造要素は表示されていないが、先の図3㻙2㻙2の中心部分だけを表示 したものとして位置を解釈する。  男子生徒も女子生徒も、傾向は右側(すぐに応答を期待 / 実施)から左側(1 時間∼) に移行している。  中学生は右側、高校生は左側という位置関係になっている。. 図3㻙2㻙3 返信実施 / 期待タイミングと「学年性別」変数(女子生徒). 図 3㻙2㻙4 返信実施 / 期待タイミングと「学年性別」変数(男子生徒). 3)次に利用期間(現在−利用開始時期)をサプリメンタリ変数として検討することも可 能である。. 図 3㻙2㻙5 利用期間(2018年調査)を構造上に投影したもの 189 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(12) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月.  これをみると、利用年数12年、13年が全体から離れた位置にある。この値を有する生徒 を確認したところ、それぞれ 1 名(高 2 女子)、2 名(高 3 女子)の合計 3 名であること から、これは外れ値として評価することにする。そうした場合、それ以外のものは、重心 (全体の平均)の周りにあつまっており、特に大小との関係は見出せない。  以上みてきたように、生徒たちの反応は、重要な局面では対面行為を重視しているし、 また、応答にしても極端にすぐ返信しなくてはならないという脅迫下に置かれているわけ でもないようである。その意味では藤本2006仮説は否定されている。 3.3 考察および課題  こうした傾向を確認したうえで、以下のような課題が見えてきた。 1)LINE の利用が、初対面の人とも連絡先を交換する場面での行為(なにがしかの連絡 先を交換する)をみるならば、これを、無防備であるという一面的に評価するのでは なく、人間関係の構築への積極性としてみる必要もあるのではないか。もし、そうな らば、LINE の利用を、禁止、危険視するだけの教育から、LINE などのコミュニケー ションツールの利用方法の指導が必要になるのではないか。 2)コミュニケーションツールとしてのケータイ、スマホの活用は、日常生活の中から自 然成長的にひろがっていく。その意味では、声の獲得と似ている。他方、学習での利 用、調べもの、という側面は、なにがしかの教育を受けなくては、自然に活用レベル が向上していくものではない。先の声に対比すれば、文字の獲得に似ている 4)。.  このように整理すると、LINE が爆発的に普及する中で、中学や高校の多くが、持ち込 み禁止を軸にして生徒指導を行うことを再検討する必要に迫られているのではないだろう か。IT 禁止令的な政策のもとでは、限定的なコミュニケーション利用しか成長せず、今 の社会にもとめられている IT 利用の(文字通りの)リテラシーは身につかない。実は、 この傾向は大学の教育現場でも確認されることである。講義の中でわからない言葉などを すぐに調べるというような使い方をできる学生もいるが、大方の学生は、そのような「器 用」な使い方はできない。講義中にスマホをつかっていい、といえば、LINE をはじめて、 おしゃべりモードに入ってしまう。それでは集中力が形成できないので、大学の講義でも 禁止となる。  だが、このような禁止を中心とした、IT デバイス利用のままでは、ネットのパワーを 活用する力は形成されないのである。  宇都宮市のある中学、高校の事例であるが、IT 利用に関する尺度を共有できるのであ れば、全国的な傾向との比較などをおこないながら、ネット活用の方向をさぐっていきた い。  また、蓄積されたデータを活用して、年次変化への分析を射程にいれていきたい。 190.

(13) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7) 注 1)「このテーマは、受講生と行ったディスカッションから得られた、以下のような「仮説」から生 み出されたものである。すなわち、中学生、高校生にとって携帯電話は何ら特別なものではな く、生活必需品であることは誰の目にも明らかである。デジタル・ネイティブ(幼少期からネッ ト環境が存在し、それらに慣れ親しんで育っている世代)という言葉さえすでに死後になりつ つあるような現在、中学生、高校生は「携帯電話でコミュニケーションすること」を「リアル」 なコミュニケーションと区別することなく、家族や友人やその他の人達とやり取りすることの 一部としてごく自然に行っている。だとすれば、携帯電話の使用実態から見出されるのは「携 帯電話を使うからこそ生まれる、特殊なコミュニケーションルール」なのではなく、「中学生、 高校生が他者と関わる際に用いているルールそのもの」なのではないだろうか(藤本・山尾 2013:205)。 こうした「仮説」の下、これまでに実施してきた携帯電話利用調査を踏まえながら、中学生、 高校生における友人観、友人との関係の取り方、コミュニケーションルールを浮き彫りにする ことを目的として、調査をデザインすることにした。」(藤本・山尾、2014:207) 2) 対応分析は、フランスのベンゼクリによって1960年代に提唱され1970年代から普及し始めた質 的データ(カテゴリカル・データ)に対する解析方法である。日本の林知己夫によって1950年 代に提唱された数量化 III 類とアルゴリズムの中核は同等であるといわれている(金 2007:87) 。 カテゴリカルデータの関連性分析においては、クロス表とそれに対するχ二乗検定が用いられ る。しかし、そこで明らかにされるのは、帰無仮説として設定された平均状態が棄却されるか どうかまでであって関連のありようは明らかにされない。 この対応分析を用いることで関連を二次元空間に図示することができる。なお、この空間で表 現されるものは、χ二乗距離である(Clausen 1998:11)。 3) 2 変数のクロス表の行と列の対応関係の分析を行う手法が、2)で説明した(シンプル)対応分 析であるが、これを 3 変数以上の関係に拡張したものは多重対応分析(Multiple Correspondence Analysis:MCA)と呼ばれる。詳細は、Greenacre 2017などを参照。対応分析の機能の一つに、 座標の生成に寄与したいポイントを生成された空間に投影するというものがある。ここでサプ リメンタリ・ポイントというものが使われるが、これを用いて実験データ(experimental data) における実験計画法 / 分散分析的なアプローチを観察データ(observationarl data)に対して行う 手法が幾何学的データ解析(Geometric Date Analysis:GDA)である。本稿ではこの手法を用い ている。詳細は、Le Roux 2004, 2010を参照のこと。 なお、本稿では、対応分析パッケージは FactoMineR を用いた。 4) 声と文字の獲得の議論についてはオング1991を参照のこと。. 文献 Clausen, Sten Erik, 1998, Applied Correspondence Analysis, Sage Publication Inc .,(=2015, 藤本一男 , trans, 『対応分析入門』オーム社) Greenacre, M.J, 2017, Correspondence Analysis in Practice 3rd Edition , CRC(=2019, 藤本一男 ,trans,『対 応分析の理論と実際 第 3 版』(仮題)オーム社) Le Roux, Brigitte, and Rouanet, Henry, 2004, Geometric Data Analysis, Le Roux, Brigitte et.al, 2010,Multiple Correspondence Analysis , Sage Publication Inc., 191 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

(14) 作大論集 第 9 号 2019年 3 月 Sten Erik Clausen,1998, $SSOLHG&RUUHVSRQGHQFH$QDO\VLV$Q,QWURGXFWLRQ, Sage Publications, Inc R Core Team(2013). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. ISBN 3㻙900051㻙07㻙0, URL http://www.R-project.org/. 藤本一男 , 2006,「携帯電話コミュニケーションを考えるための考察 - 非連続歴空間の拡大と可視化さ れる 人間関係」作新学院大学人間文化学部紀要,第四号 pp1㻙14 藤本一男 , 2019,「Supplementary」変数から多重対応分析(MCA)を考える−幾何学的データ解析 (GDA)と多重対応分析(MCA)−、津田塾大学紀要、51号(掲載予定) 藤本一男・山尾貴則 , 2007,「高校生の携帯電話利用実態に関する調査報告(1)」, 作新学院大学 人間 文化学部紀要,第五号 pp59㻙67 藤本一男・山尾貴則 , 2008,「中学・高校生の携帯電話利用実態に関する調査報告(2)」, 作新学院大 学人間文化学部紀要,第六号 pp37㻙43 藤本一男・山尾貴則 , 2009,「中学・高校生の携帯電話利用実態に関する調査報告(3)」, 作新学院大 学人間文化学部紀要,第七号 pp25㻙42 藤本一男・山尾貴則 , 2013,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール」, 作大論集,第 3 号,pp205㻙220 藤本一男・山尾貴則 , 2014,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール (2)」, 作大論集,第 4 号,pp207㻙230 藤本一男・山尾貴則 , 2015,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール (3)」, 作大論集,第 5 号,pp385㻙409 藤本一男・山尾貴則 ,2016,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール (4)」, 作大論集,第 6 号,pp353㻙379 藤本一男・山尾貴則 , 2017,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール (5)」, 作大論集,第 7 号,pp 269㻙297(調査項目比較表付き) 藤本一男・山尾貴則 , 2018,「中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール (6)」, 作大論集,第 8 号,pp163㻙193 オング .WJ, 1991『声の文化と文字の文化』藤原書店 山尾貴則・藤本一男 , 2012,「3.11以降,学生たちの生活上の注意事項,情報摂取メディアはどのよ うに変化したか -「社会調査及び実習 -I」2011による調査をもとに -」, 作大論集, 第 2 号, pp313㻙332 総務省情報通信政策研究所「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告 書」),2017,http://www.soumu.go.jp/main_content/000492877.pdf(2017.07.07) (p72 H28主要なソー シャルメディアの利用率). 謝辞.  2007年以降、本学の社会調査実習での調査を受けれてくださっている、市内の中学校、 高校の先生方、生徒のみなさんに感謝いたします。. 192.

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(28) 中学生・高校生の携帯電話利用に表れたコミュニケーション・ルール(7). A-2 回答用紙(マークシート)  今回も使用したのは、スキャネット株式会社の汎用マークシートシート(SN-0044)で ある。これを、調査票の設問形式にあわせてカスタマイズを行っている。. ・スキャネット株式会社 http://www.scanet.jp/  A5 10択、30問 SN-0044(http://www.scanet.jp/items/sn0044.html)  属性は、11桁数字のところを二ケタのみ利用し、一桁で学年を、もう一桁で性別を表現. している。. 195 Sakushin Gakuin University Bulletin No.9 2019.3.

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図 3 㻙 2 問 9「初対面の人(はじめての人)から「LINE の交換をしよう」と言われました。交換し ますか。 3.1.3 ネットで知り合った顔を知らない人との LINE ID の交換(問10)図3 㻙 3 図 3㻙3 問10「SNS(インターネット)上で出会った人(顔を知らない人)から「LINE の交換をし よう」と言われました。交換しますか。」  気になるのは、顔を知らないひとと LINE ID を交換する(問10)、という行為はどのよ うな属性と連関しているか、という点である。 1 .全体での「す

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