現地ブランドの下での成長 -- アフリカの中国企業
(特集 南アフリカの経済・社会変容)
著者
木村 公一朗
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
206
ページ
24-25
発行年
2012-11
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003829
●はじめに
近年、中国企業の存在感が世界 各地で増している。中国の対外直 接投資︵投資︶は、製造業の発展 が大きな注目を集めるようになっ た一九九〇年代以降、海外の市場 や資源 、技術等を獲得するため 、 急増した。また、一九九〇年代末 以降、中国政府が海外への投資等 を奨励する﹁走出去﹂戦略を打ち 出したこともあり、その勢いは加 速している。 南アフリカでも、一九九〇年代 以降、中国からの投資が増加した ︵参考文献①︶ 。アパルトヘイト期 の南アフリカ政府は、台湾との外 交関係はあったが、反共産主義等 の立場から 、中国との国交はな かった。しかし、南アフリカが一 九九〇年代に入って民主化し始め ると、両国は国交樹立︵一九九八 年 ⑴ ︶に向けた交渉を始めるとと もに、貿易や投資の実施を認める ようになった。中国企業は、南ア フリカの豊富な資源はもとより 、 急成長が期待された黒人市場の獲 得を目指し、 輸出や投資を行った。 この一九九〇年代という時期 は、中国企業が海外市場に関心を 持ち始めたころでもある。中国都 市市場が飽和するなか、企業は中 国農村市場に加え、海外市場の開 拓にも本腰を入れ始めた。主要産 業のひとつである家電産業でも 、 テレビ市場等を獲得するため、家 電メーカーが国交樹立の前後に対 南アフリカ投資を行った。現地に 工場を建てたのは、上海市の国有 企業 ・上海広電 ⑵ 、青島市の国有 企業 ・ 海信、 厦門市の国有企業︵当 時 ⑶ ︶・厦華である。●投資の決定要因と現実
投資要因の第一は、テレビ︵完 成品︶に対する南アフリカ側の高 い輸入関税である。南アフリカ市 場で価格競争力を維持したけれ ば、どの国の企業であれ、基本的 には現地でテレビを組み立てる必 要がある。 しかし、あらゆる企業が投資で きるわけではない。投資に踏み切 るには、不慣れな海外で事業を営 むだけの競争力がいる 。つまり 、 技術力といった自社固有の優位性 が必要となる ︵参考文献②︶ 。また、 このこととも関係するが、海外生 産の実施には高い固定費用負担が ともなうため、生産性の高い企業 しか投資できない︵参考文献③︶ 。 実際、南アフリカに投資した中国 企業はいずれも、中国を代表する 家電大手であった。 しかし 、 いく ら 家 電 大 手で あ っ ても 、 先 進 国 企業 と比 べ 、 そ の 技 術力 や ブ ラ ン ド力 は 依 然と し て 弱 い。 ま た 、 中 国 に 進 出 し た 外 資 系 企 業 と 中 国地 場企 業 の 平均的な生 産性を比較す る と 、 家 電 関 係 の あ らゆ る 業 種で 、 外 資 系 の方 が 、 地 場 よ りも生 産 性 が 高 い ︵参考文献 ④︶ 。競 争 力 や生 産性 だ け を 見 る と 、 中国企 業 が 、 低廉 で 良 質な労働力 や、 発 達 し た 産 業 集 積 、 こ れ ま で 築 い て き た ブ ラ ン ド や 販売網等 の 優位性 が あ る 中 国を離れ 、 海 外 に 渡る の は 難しそ う な 印 象 を 受ける。 多国籍企業化する新興国企業の 増加を受け、発展途上国企業の投 資に関する事例研究も蓄積されて きたが、 これまでの投資理論では、 発展途上国企業の特徴にあまり注 意が払われてこなかった。その結 果、投資先で先進国企業と発展途 上国企業が競争する状況もあまり 想定されてこなかった。 それでは、 中国企業は、先進国出身の企業も 多い南アフリカ市場で、どのよう に事業を営んできたのだろうか?●自社ブランドと
OEM
供給
南アフリ カ の 中 国 家 電 メー カー は、 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 も 生 産 ・ 販 売し て い る が 、 南 ア フ リカ企業 に 対する相手先ブ ラ ン ド の 製 品製造 ︵O E M ︶ も 行 っ て い る 。 南 ア フリ カ企業 に は 、 ブ ラ ン ド を持 つ 家 電南ア
フ
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アジ研ワールド・トレンド No.206 (2012. 11)メーカーと 、 プラ イ ベ ート ・ ブ ラ ンド ︵ P B︶ を 運 営 す る大 手 小 売 チェー ン が 含 ま れ る 。 O E M 供 給 は 、 もと もと中国企業 に と っ て 重 要な事業だ が 、 輸 出 の 場合 の み な らず、 投 資先 で も 重視され て い る 。 まだ世界 に 通 用するブ ラ ン ド力が ない な か 、中 国 家 電 メ ー カ ー は 、 投資先 の 有名ブ ラ ン ド ・ メ ーカ ー や、全 国 に 店 舗 を 展 開 す る 小 売 業 者にOEM供 給 す る こ と で 、 南 ア フリカ事 業 を 拡 大 させ てきた。 表は、中国家電メーカーによる OEMおよび部品供給先のうち 、 筆者が確認できたものである。上 海広電は 、南アフ リカの白物家電大 手 Defy や 、小売業 者 Pick n P a y にO E M 供 給 し て い る 。上海広電は進 出当初 、多くの自 社ブランド製品を 展 開 し て い た が 、 二〇一〇年九月の 時点で 、上海広電 ブ ラ ン ド の 市 場 シェアはほとんど な か っ た 。 一 方 、 海信は OEM供給 が 比 較 的 少 な い 。 二〇一〇年は 、 Sansui ブランド を運営する企業にOEM供給して いたが、二〇一一年は、自社ブラ ンド製品のみを生産した︵海信で のインタビュー、二〇一一年一〇 月二八日︶ 。海信は 、OEM供給 も行うが、広告や販路構築のコス トを負担してでも、自社ブランド 製品を展開していこうとしてい る。OEM供給では、売上げが供 給先の業績に振り回されるリスク があるためだ。この海信と上海広 電の中間に位置するのが厦華で 、 同社は、自社ブランド製品の展開 とともに、OEM供給も積極的に 行っている 。表中の game は、 南 アフリカの大手小売である。 また、 投資企業以外でも、家電大手の康 佳やTCLは、南アフリカ企業へ の部品輸出を手掛けている。 このようなOEM・部品供給が あるため、ブランド別でみた市場 シェアよりも多くの中国企業製品 ︵または部品︶が 、南アフリカ市 場で売られていることになる。ブ ラウン管テレビ市場をみると、海 信と厦華のシェアはそれぞれ約 五%、液晶テレビ市場ではそれぞ れ約一〇%である︵二〇一〇年時 点︶ 。中国企業も南アフリカ市場 の一角を占めるようになっている が、 その存在感はまだ大きくない。 しかし、上述のとおり、現地ブラ ンドの下でその企業成長を実現さ せてきた。