1.研究の背景と目的
本研究の目的は次の2点である.第1の目的は,小売業における合理的な棚割変更時期を販 売実績データに基づき決定する分析フレームを開発することにある.第2の目的は,その分析 フレームを用いた販売実績データの分析結果に基づき,棚割変更時期のあり方について提言す ることにある. わが国の一般消費財の主たる販売小売業であるスーパー・マーケットでは通常,各商品カテ ゴリーの棚割が年に2回,3月と9月に変更され,品揃えとスペース配分が見直されている. この年2回の定期的な棚割変更を実施するために当事者である小売業のみならず,それを支援 する卸売業,製造業も相当な労力と調査・分析費用を投入している.この商習慣は多くのスー パー・マーケットにおいて定着しているものではあるが,下記の状況を踏まえたとき,見直し を検討すべき段階にあると思われる. 人口減少の影響もあり,わが国の市場規模は緩やかに減少する流れにある.この流れに連動し, これまで日本国内を主たる市場としていた一般消費財を扱う小売業,卸売業,製造業各社も, 新興国を中心とする国外市場への進出,もしくは進出の準備を進めている.この状況の中で, 企業は様々な方針転換を図りつつある.例えば,一般消費財の製造業においては営業戦略を大 きく変更しはじめている.以前に国内製造業に行ったヒアリングによれば「製造業各社は国内 担当の営業スタッフを新興国に配置換えし,国内の営業スタッフの人数を絞り込む方針にある.」 という.一方で「人口1億人を超える国内市場は,大きな成長が見込めないとは言うものの市場 規模の縮小は緩やかであり,依然として製造業各社にとって売上の支柱となっている.しかも, 市場における競争自体は非常に激しいものがある.」という状況にある.以上の現状を勘案する と,小売業を通じて消費者に自社の商品を販売する卸売業,製造業の国内市場の営業担当者は 今までよりも少ない人数で,国内における厳しい競争を勝ち抜くことを要求されるようになる と考えられる.このような状況に対応してゆくためには,製造業各社は営業担当者1人当たりの 能力を高めると同時に,1人当たりの業務を効率化し,売上に貢献しない活動を積極的に減ら してゆく必要があると思われる. この「業務の効率化のために売上に貢献しない活動を減らす」という視点から見た場合,卸 売業,製造業の主たる営業活動の1つであるリテールサポート(小売業の棚割計画や販促計画の商品カテゴリー販売実績の量的・質的な季節変動に
基づく小売業の棚割変更時期の決定手法
鶴 見 裕 之
立案業務を支援する活動)についても大幅な見直しが必要になるだろう.この見直しの方向性 は3つある. ・第1の方向性はリテールサポートを実施する“内容”の絞込みである ・第2の方向性はリテールサポートを実施する“小売業”の絞込みである ・第3の方向性はリテールサポートを実施する“機会”の絞込みである ただし“内容”と“小売業”の絞込みは,既に行われているものである.具体的には小売業 の規模(または成長性)によって,規模の大きい小売業はリテールサポートの内容を充実させ, 規模の小さい小売業はその内容を必要最低限のものとする方針がとられている.つまり“内容” と“小売業”の絞込みは同時に行われる.しかしリテールサポートの“機会”の絞込みは行わ れていない.例えばリテールサポートの大きな活動の1つである棚割提案も小売業の棚割変更 に合せて,年2回,春と秋に,カテゴリー特性とは関係なく,習慣的に実施されている.しか しながら,従来の活動の惰性的継続を見直す必要に迫られている現在,活動は本当に必要な機 会に絞り込むべきである.また,このような業務の効率化は卸売業,製造業のみならず,小売 業にも共通した課題であり流通全体で課題解決に取り組むべき段階に至っている. スーパー・マーケットにおける棚割変更は,製配販の各企業が協働して実施する業務となっ ている.その機会を必要なものだけに絞り込むことは,スーパー・マーケットに関連する流通 全体の効率化に貢献するものと考えられる.その機会の絞り込みのためには,そもそも各カテ ゴリーにおいてどの時期に棚割変更を行うのが合理的であるかを把握する必要がある.本研究 では,この棚割変更時期を考える材料として消費者の購買行動のカテゴリー毎の季節性に着目 する.季節性が存在し,購買行動の変化のタイミングが年に2回,3月頃と9月頃にあるよう ならば,そのカテゴリーは現状と同様に春と秋の年2回の棚割変更が必要であると判断される であろう.しかし,それ以外の場合,例えば季節性が存在しないカテゴリーの存在が確認でき れば,全カテゴリーが春と秋に一斉に棚割変更を行う必然性は無く,カテゴリーによってその 機会を絞り込むべきと判断すること出来る. 以上の背景に基づき,消費者の商品カテゴリー購買行動の季節変動を質的・量的の両面から 評価する分析フレームの開発を行ない,いくつかのカテゴリーの分析結果から現在の棚割変更 時期の妥当性を検証する.その上で,今後の棚割変更時期のあり方について提言する.なお, 年の2回の棚割変更に加えて新商品の投入による,小規模な棚割変更も不定期に行われるが, これは戦略的な棚割の変更ではなく,メンテナンスに近いものであるため本研究における議論 から除外する.
2.既存研究の整理と本研究の意義
2.1 既存研究の整理 どのタイミンで棚割変更を実施すべきか,という問題に関して,マーケティング研究,実務 の双方における知見はほとんど蓄積されてはいない.マーケティング研究における棚割に関する研究としてはBultez and Naert(1988),Corstjens and Doyle (1981),Lim et al.(2004)などがある.例えば,代表的な研究の1つであるBultez and Naert(1988)では,棚の総スペースの制約下における商品スペース配分の最適解を求める
ための方法を次式の様に提案している. . . , , , Max s t s S s g q s s C 0 i i i n i i 1 1 1 g 1 # $ -] g
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ただし, giは商品 i の単位当りの売上総利益, qiは商品 i の売上数量, Ciは商品 i のハンド リングにかかるコスト, siは商品 i に配分されるスペース, S は売場総スペースである. また実務における棚割の業務プロセスについては,米国ではFMI(Food Marketing Institute),欧州ではECR Eourope,国内では流通経済研究所などによって既に確立されている. 例えば,流通経済研究所(2008)では棚割計画の手順を3つに分割し,消費者の意思決定基準 に合わせて商品グループを形成する「グルーピング」,商品グループ毎の棚割におけるスペース 配分と配置を決定する「ゾーニング」,商品グループ内の商品の陳列スペースを決定する「フェ イシング」により棚割を設計することを提案している.そして,この手順は国内においても標 準的なものとなっている. このフェイシングに当たっては一般に“バスタブ理論”と言われる商品の売上金額シェア(も しくは売上個数シェア)に比例したスペース配分が用いられている.また棚割における商品の 選定にはクロスABC分析と呼ばれる考え方が用いられる(図1).POSデータを用いて,商品 を売上金額上位から順に並べ,累積シェア上位80%の商品をAランク,累積シェア上位80%か ら95%の商品をBランク,累積シェア上位95%から100%の商品をCランク,取り扱いのない商 品をZランクとし,自チェーンのPOSデータにおけるランクと,市場POSデータ1におけるラン クを比較する.その分析結果より,市場(即ち他チェーン)において売上上位の商品にも関わ らず,自チェーンに導入されていない商品を導入候補としてリストアップする.また市場(即 ち他チェーン)と自チェーン双方においてCランクに位置するカット候補としてリストアップ する.棚割変更後における商品の選定を検討する上で,実務においては非常によく使われる手 法である. 自チェーンデータ A (一般に 上位80%) B (一般に 上位80% ~ 95%) C (一般に 上位95% ~ 100%) Z (自チェーン 取り扱い無し) 市場データ A 導入候補 B C カット候補 図1.クロスABC分析の考え方 1 多くの場合は,市場の複数チェーンのPOSデータを合算した市販のデータが利用される.2.2 本研究の意義 これらの棚割変更に関するマーケティング研究や実務における議論は,消費者の視点に立ち 如何に棚割変更を実施するか?という点にフォーカスされている.本研究は消費者の視点に立 ちながら如何に棚割変更を実施“しないか”という点にフォーカスする.つまり,棚割変更の 効果を追い求めたのが従来の研究であるとすれば,本研究は無駄な棚割変更を廃止し,棚割変 更の効率を求める研究と位置づけられる. 棚割変更の機会を減らすべきと判断されたカテゴリーの商品を生産する製造業,もしくはそ の商品を取り扱う卸売業は,年に2回,自社に関係するカテゴリーの売場に小売業の商品部の 注目を集める機会を奪われる本研究の結果を受け入れ難いものと捉える可能性もあるだろう. しかしながら,わが国の流通全体の効率化という観点からは,業務の見直しはどこかで議論す る必要があり,その議論のタイミングはより早い方が望ましい.企業が業界ではなく,自社の 直近の利益を優先した活動を行うことは至極当然であるが,業界全体の効率化に関する取り組 みを行う事は長期的な視点から見れば,自社の利益になる.本研究の意義は企業各社が自主的 には取り組みづらいが,長期的には企業各社の利益に繋がることを目指している点にある. 2.3 研究の流れ 本研究では最終的な提言に向けて,次のようにヒアリング調査とデータ分析を実施する. はじめに,分析フレーム開発において参考とすべき視点を収集するため,国外の小売業,卸 売業,製造業を対象としたヒアリング調査を実施する.ヒアリング調査では春・秋ごとの定期 的な棚割変更を行っていない米国市場の企業における変更タイミングの実態,およびその判断 材料を把握する. 次に,ヒアリング調査の結果をベースとして,実際に売場で商品を購入する立場にある消費 者の購買行動に焦点をあて,購買の量的な側面(カテゴリーにおける売上金額のトレンドの変化) や,購買の質的な側面(カテゴリーにおいて購買する商品のシェアの変化)の双方について, 季節毎の変化を把握するための分析手法を提案する.この分析手法を複数カテゴリーのPOSデー タに適用し,各カテゴリーにおいて棚割変更が必要なタイミングについて評価した結果に基づ き,これからの小売業における棚割変更時期のあり方について提言する.
3.ヒアリング調査
3.1 ヒアリング調査の目的 上述のように日本国内においては,棚割は年に2回,春と秋に品揃えとスペース配分が見直 されている.夏季と冬季の気温・湿度の差が大きい,また新製品の投入サイクルが早いなどの 理由により国内市場の小売業においてはそれが当然とされてきた.しかしながら,米国市場の 小売業においては,日本と同様に季節毎の気温の差が大きい地域であっても春・秋ごとの定期 的な棚割変更を行っていない.各国の流通の中でも,非常に激しい競争環境にある米国小売業 における棚割変更のタイミング,およびその判断材料について把握するため,2012年5月に米 国においてヒアリング調査を実施した.3.2 米国における現状 ヒアリング調査は,米国西部にある中規模の小売業,及び卸売業,製造業数社を対象に実施 した.対象者は次の通りである. ・食品小売業A社 店長 ・食品小売業B社 社長 ・食品小売業C社 ゼネラル・マネージャー ・食品卸売業(ブローカー)D社 社長及び社員 ・食品卸売業(ボランタリー・チェーン主宰卸売業)E社 マーケティング・マネージャー ・食品卸売業(ボランタリー・チェーン主宰卸売業)E社 売場開発マネージャー ・食品製造業F社 マーケティング・マネージャー ヒアリング調査対象企業の実態から,米国市場の各企業における棚割変更の実態,並びにタ イミングの判断材料は概ね次の通りであることが分かった. ・米国市場の小売業において,一般に春・秋に定期的に棚割変更を行うことはない ・米国市場の小売業において,同時期にほぼ全カテゴリーの棚割変更を行うことはない ・ 米国市場の小売業では下記の根拠に基づき,カテゴリー毎に必要なタイミングを判断し, 棚割変更を実施する ① 棚割変更の実施タイミングはいくつかあるが,第1の実施タイミングは「カテゴリー需 要期の季節が到来する前のタイミング」(図2における①のタイミング:需要期に備えた 準備に相当する棚割変更) ② 第2の実施タイミングは「カテゴリー内において特定のサブカテゴリーの売上が拡大す るなどの需要の中身が変化するタイミング」(図2における②のタイミング:消費者の質 的な変化に対応するための棚割変更) ③ 第3の実施タイミングは「新商品が投入されるタイミング」(図2における③のタイミン グ:新商品に対する需要を取り逃がさないための棚割変更) ④ 第4の実施タイミングは「上記のタイミングで棚割変更を実施する影響で,売場縮小な どを余儀なくされた別カテゴリーが出たタイミング」 上記の内,第3の実施タイミングは日本国内市場も同様であり,上述のように新製品投入に 合せ不定期に実施されるメンテナンスに近い小規模な棚割変更のタイミングに該当する.しか し,それ以外は根本的に日本国内とは異なる判断材料に基づき棚割変更に関する決定を行って いることが把握された.米国における棚割変更のやり方が,消費者特性の異なる我が国の市場 においても有効であるとは限らない.しかしながら,その決定には明確な理由があり,必要が 有るから棚割を変更し,必要が無ければ変更しない,という極めて合理的な決定が行われている. 特に市場が縮小傾向にあり,より合理的な流通の構築が必要になりつつある国内企業が学ぶべ き点は多いと思われる. なお,棚割変更の店舗オペレーションは本部から派遣される棚割変更専門のキャラバン隊に より実施される.キャラバン隊は毎月,店舗を巡回し,棚割変更の必要な売場について棚替え 作業を行う.また一般に1店舗当り1ヶ月の棚割変更カテゴリー数は,多いときでも10カテゴ リー程度となっている.
前 ク ー ピ ① ② 需 要 変 化 ③ 新 製 品 売上金額 週 上 売 の 体 全 ー リ ゴ テ カ 上 売 の ー リ ゴ テ カ ブ サ る あ 上 売 の 品 商 新 る あ 図2.カテゴリーにおける棚割変更タイミング
4.POSデータを用いた分析フレームの開発
ヒアリング調査の結果を踏まえて,POSデータを用いた棚割変更時期の分析フレームを開発 する.この分析フレームによる分析結果から,米国における必要性に応じた棚割変更タイミン グの判断基準に基づき,日本国内における棚割変更時期の妥当性について検証する. 4.1 量的・質的な季節変動の把握 米国における第1の棚割変更の実施タイミングである「カテゴリー需要期の季節が到来する 前のタイミング」を判断するには,カテゴリーの量的な季節変動を把握する必要がある.この 量的な季節変動の把握はPOSデータによるカテゴリーのトレンド分析によって行う.トレンド 分析は実務においては主に店頭プロモーションの実施時期の判断に利用される手法である(流 通経済研究所,2008).本研究ではカテゴリーの週次金額PI(来店客数1000人当りの売上金額) から5週移動平均を算出し,カテゴリー売上のトレンドを把握する.このとき,金額PIの平均 と標準偏差から当該週の5週移動平均の標準化得点を求め,標準化得点が+1以上の期間をカテ ゴリーの需要ピークの期間と定義する.本研究では,この需要ピークの前の時期が第1の棚割 変更タイミングであると判断する. 第2の実施タイミング「カテゴリー内において特定のサブカテゴリーの売上が拡大するなど の需要が変化するタイミング」について検討するには,カテゴリーにおける質的な季節変動を 把握する必要がある.本研究では週毎のカテゴリー内における商品の売上金額の構成比を求め, 各週の構成比に基づくクラスター分析を実施する.なお,クラスター化の方法としてウォード法, 距離の定義には平方ユークリッド距離を用いる.この分析により商品の各週の構成比をパター ン化する事ができる.そのパターンが変化する時期が,カテゴリー売上の質的な季節変動の時 期であると言える.本研究では,この変動の前の時期が第2の棚割変更タイミングであると判断する. またPOSデータから,ある新商品の売上比率が急激に伸びているタイミングが抽出されれば, その前の時期が,事後的に第3の実施タイミング「新商品が登場したタイミング」であると判 断することが出来よう.ただし,新製品の売上比率が狙い通りに伸びるかどうかは事前には分 からないので本研究では議論の対象外とする.また,第4の実施タイミング「上記のタイミン グで棚割変更を実施する影響で,売場縮小などを余儀なくされた別カテゴリーが出たタイミン グ」についても売場縮小カテゴリーをどう選択するかはまた別の議論になるため本研究では議 論の対象外とする. 4.2 データ 販売実績データとしてNPI(全国POSデータ・インデックス)を用いる.NPIは財団法人流通 経済研究所が提供する全国の総合スーパー・マーケット,スーパー・マーケットを中心とした 店舗のPOSデータを収集したデータベースである.このNPIに含まれる近畿地域における24店 舗のアイテム別週次販売実績データを用いる2.期間は2011年4月~2012年3月である。なお特 定の1店舗のPOSデータを用いなかった理由は,1店舗のデータを用いた場合,店舗内の店頭 プロモーションの影響が強く結果に反映され,市場全体における消費者の購買行動の季節性を 把握するのが困難となるためである. 分析対象のカテゴリーの単位はJICFS3細分類とした.また,分析対象カテゴリーは,複数の カテゴリーを分析した結果から,特徴的なカテゴリーであった「つゆカテゴリー」「インスタン ト・コーヒー・カテゴリー」「マーガリン・カテゴリー」を選択した. 4.3 分析結果と考察(つゆカテゴリー) 図3はつゆカテゴリーにおけるトレンド分析の結果と,クラスター分析の結果を同時表記し たものである.図3では点線が週毎の金額PI,実線が金額PIの5週移動平均の推移を示している. また,実線に沿って表示されているマークはクラスター分析の結果を表している.なお,クラ スター分析の結果は表1の通りである.カテゴリー内の商品数が多いことを勘案し,売上上位 商品の累積シェア50%以降の商品は「その他」として合算した.分析の結果,デンドログラム および解釈のしやすさから52週を4クラスターに分類した.表1では商品の合計シェア順に割り 振った商品番号,その商品のタイプ,各クラスターの売上金額シェア,全期間の売上金額シェ アである合計シェアを表示している.また,クラスターの特徴を見やすくするために,合計シェ アの1.5倍の箇所を網掛けで表記している. クラスター名については下記の通り設定した.クラスター1は,合計シェアに比して「うど んつゆ」タイプの商品のシェアが相対的に大きいことからクラスター1の名称を「うどんつゆ 比率大」とした.クラスター2は,合計シェアに比して「そうめんゆつ」タイプと「めんつゆ」 タイプの商品のシェアが相対的に大きいことからクラスター2の名称を「そうめんつゆ・めん つゆ比率大」とした.クラスター3は,合計シェアに比して「そうめんゆつ」タイプと「めん 2 2011年3月11日の東日本大震災の影響で関東以北の地域では物流の状況が悪化するなどの影響があり, また複数の地域に跨いだデータでは,地域ごとの嗜好性の違いがデータに影響する可能性を勘案し,今回 は近畿地域に絞って分析を行った. 3 JICFSとは「JANコード商品情報データベース」システムのことである.商品情報を一元的に管理するデー タベースサービスシステムであり流通システム開発センターが管理運営を行なっている.
つゆ」タイプの商品のシェアが相対的に大きいが,特に「そうめんつゆ」タイプの商品のシェ アが大きくなっていることからクラスター2と区別するためにクラスター3の名称を「そうめ んつゆ比率大」とした.クラスター4は,合計シェアに比して「鍋つゆ」タイプの商品のシェ アが相対的に大きいことから,クラスター4の名称を「鍋つゆ比率大」とした. 以上の結果に基づき,めんつゆカテゴリーにおける棚割変更時期について検討したい. 図3のトレンド分析による量的な季節性に着目したとき,2011年6月27日週から8月1日週 までの間,5週移動平均の標準化得点が+1を超えている(なお,金額PIの平均は133.58円/1000 人,標準偏差は20.35円/1000人となっている).またその需要ピークに向けた需要拡大が開始さ れるのは4月上旬となっている.このことから米国における第1の実施タイミングの判断基準 に従うと、需要ピークに向けて需要拡大が開始し始める前の3月には棚割変更を実施するのが 妥当であると考えられる.また2011年12月12日週から2012年1月16日週にかけてもう1つの小 さな需要のピークがある.しかし,期間中,最も数値が大きい12月19日週であっても,5週移 動平均の標準化得点は+0.83であり,+1を超えていないため需要ピークとは判断しなかった. またクラスター分析による質的な季節性に着目したとき,2011年4月からの数週間は概ね「そ うめんつゆ・めんつゆ比率大」の購買傾向が続き,2011年6月27日週からは概ね「そうめんつゆ 比率大」の購買傾向が継続している.この期間に需要もピークを迎え,そして,2011年8月8日 週からは需要が下り坂になり,再び「そうめんつゆ・めんつゆ比率大」の購買傾向が続いている. 以上の様に,途中,そうめんの需要が特に拡大する時期があるが概ね,ピークの前後を通じて そうめんつゆとめんつゆが需要の中心となっていることから,質的な季節変動の観点から判断 し,3月に「そうめんつゆ・めんつゆ」を中心とする棚割変更を実施すべきであると言えよう. また2011年9月19日週以降は概ね「鍋つゆ比率大」の傾向にある.質的な季節変動の観点か 0 5 0 0 1 0 5 1 0 0 2 0 5 2 20 11 04 04 20 11 04 18 20 11 05 02 20 11 05 16 20 11 05 30 20 11 06 13 20 11 06 27 20 11 07 11 20 11 07 25 20 11 08 08 20 11 08 22 20 11 09 05 20 11 09 19 20 11 10 03 20 11 10 17 20 11 10 31 20 11 11 14 20 11 11 28 20 11 12 12 20 11 12 26 20 12 01 09 20 12 01 23 20 12 02 06 20 12 02 20 20 12 03 05 20 12 03 19 金 額 PI ( 円 /1 00 0人 ) 均 平 動 移 週 5 大 率 比 ゆ つ ん ど う そ う め ん つ ゆ ・ め ん つ ゆ 比 率 大 大 率 比 ゆ つ ん め う そ 鍋 つ ゆ 比 率 大 金額PI 図3.つゆカテゴリーのトレンド分析結果
ら見て,第2の実施タイミングの判断基準に従うと,需要の中身が入れ替わる時期である9月 に「鍋つゆ」を中心とする棚割変更を実施すべきであると言えよう. 以上の様に,量的な季節性と質的な季節性の双方から総合的に判断した結果,つゆカテゴリー においては現行と同じ3月と9月における棚割変更が妥当であると判断される. 4.4 分析結果と考察(インスタント・コーヒー・カテゴリー) 図4はインスタント・コーヒー・カテゴリーにおけるトレンド分析の結果と,クラスター分 析の結果を同時表記したものである.また,クラスター分析の結果は表2の通りである.デン ドログラムおよび解釈のしやすさから52週を4クラスターに分類した.カテゴリー内の商品数 は比較的少ない方であるが,シェアが非常に小さい商品も含まれるため,売上上位商品の累積 シェア約80%以降の商品は「その他」として合算した. クラスター名については下記の通りである.クラスター1は特徴となる商品がなく,他カテ ゴリーに比して各商品のシェアが合計シェアに近いことからクラスター1の名称を「通年平均」 とした.クラスター2は合計シェアに比して「商品1」のシェアが相対的に大きいことからク ラスター2の名称を「商品1比率大」とした.クラスター3は合計シェアに比して「商品2」 表1 つゆ:クラスター別売上金額シェア(単位は%:網掛けは合計シェアの1.5倍の箇所) 番号 タイプ クラスター 1シェア: うどんつゆ 比率大 クラスター 2シェア: そうめんつゆ・ めんつゆ比率大 クラスター 3シェア: そうめんつゆ 比率大 クラスター 4シェア: 鍋つゆ 比率大 合計 シェア 1 うどんつゆ 11.1 5.8 3.0 8.0 7.1 2 めんつゆ 9.0 5.6 2.9 6.0 5.8 3 めんつゆ 4.0 6.4 6.3 1.6 3.8 4 めんつゆ 4.2 4.1 2.4 2.8 3.3 5 めんつゆ 3.0 3.2 4.4 1.4 2.5 6 めんつゆ 2.0 3.4 3.0 1.9 2.4 7 めんつゆ 2.4 1.9 2.3 1.8 2.0 8 めんつゆ 1.1 3.3 3.9 0.7 1.9 9 うどんつゆ 2.6 1.8 0.8 1.9 1.8 10 めんつゆ 1.9 2.1 1.6 1.5 1.7 11 鍋つゆ 1.6 1.1 0.7 2.2 1.6 12 そうめんつゆ 0.3 3.2 4.3 0.2 1.6 13 めんつゆ 2.1 1.4 0.7 1.7 1.5 14 うどんつゆ 2.9 1.2 0.7 1.5 1.5 15 そうめんつゆ 0.4 2.5 5.2 0.0 1.5 16 めんつゆ 1.7 1.3 0.8 1.3 1.3 17 鍋つゆ 0.6 0.7 0.2 2.1 1.2 18 めんつゆ 0.7 1.9 1.6 0.9 1.2 19 鍋つゆ 1.0 0.3 0.1 2.0 1.2 20 鍋つゆ 0.6 0.1 0.0 2.0 1.0 21 鍋つゆ 0.7 0.3 0.1 1.8 1.0 22 めんつゆ 1.8 1.1 0.6 1.1 1.1 23 そうめんつゆ 0.2 1.8 3.7 0.0 1.1 24 めんつゆ 1.2 0.8 0.7 1.1 1.0 25 めんつゆ 0.9 1.1 1.1 0.8 0.9 26 その他 41.9 43.6 48.7 53.6 48.8
のシェアが相対的に大きいことからクラスター3の名称を「商品2比率大」とした.クラスター 4は合計シェアに比して「スティック」タイプのシェアが相対的に大きいことからクラスター 4の名称を「スティック比率大」とした. 以上の結果に基づき,インスタント・コーヒー・カテゴリーにおける棚割変更時期について 検討したい. 図4のトレンド分析による量的な季節性に着目し,第1の実施タイミングである「カテゴリー 需要期の季節が到来する前のタイミング」について検討する.2012年2月20日週から3月5日 週までの間,5週移動平均の標準化得点が+1を超えている(なお,金額PIの平均は231.76円 /1000人,標準偏差は67.61円/1000人となっている).またその需要ピークに向けた需要拡大が 開始されるのは9月26日週となっている.このことから米国における第1の実施タイミングの 判断基準に従うと、需要ピークに向けて需要拡大が開始し始める前の9月に棚割変更を実施す るのが妥当であると考えられる.また,10月3日週から需要が拡大し,上述のピークに向かう 途中の12月5日週前後にも小さく需要のピークであるように見える期間がある.しかし,これ は標準化得点が+1に至らず,その後に2月後半のより大きいピークがあることから,需要のピー ク時期とは判断しないこととした. またクラスター分析による質的な季節性に着目したとき,つゆカテゴリーの様にある期間, 継続するような購買行動の傾向は見受けられないことが分かる.1ヶ月に満たない需要の変動 は棚割変更よりも,むしろ特別陳列などによる店頭プロモーションによって対応すべきと考え られる.そこで,1ヶ月に相当する5週間を基準として,連続して同一の購買行動傾向が5週間 以上続いている場合には棚割変更を検討すべきと考える.しかしながら,この基準で見たとき, 図4では5週間以上連続するような傾向は見受けられないため,質的な季節変動の側面から見 図4.インスタント・コーヒー・カテゴリーのトレンド分析結果 0 5 1 0 0 2 0 5 2 0 0 3 0 5 3 0 0 4 0 5 4 0 0 5 0 5 5 金 額 PI ( 円 /1 00 0人 ) 0 5 0 0 1 20 11 04 04 20 11 04 18 20 11 05 02 20 11 05 16 20 11 05 30 20 11 06 13 20 11 06 27 20 11 07 11 20 11 07 25 20 11 08 08 20 11 08 22 20 11 09 05 20 11 09 19 20 11 10 03 20 11 10 17 20 11 10 31 20 11 11 14 20 11 11 28 20 11 12 12 20 11 12 26 20 12 01 09 20 12 01 23 20 12 02 06 20 12 02 20 20 12 03 05 20 12 03 19 均 平 動 移 週 5 通年平均 大 率 比 1 品 商 商品2比率大 スティック比率大 金額PI
た場合には,棚割変更を行うべきタイミングは年間を通じて存在しないと判断することができる. 以上のことから,2月後半の需要ピークに向けて需要が拡大しはじめる時期である9月にの み,同様に棚割変更を実施すべきであると言えよう.ただし,その内容は特定のあるタイプの サブカテゴリーのスペースを広くするといったものではない.1年間の中での需要の変化では なく,より長期的な消費者のカテゴリー購買行動の変化に対応するための棚割変更という位置 づけになるであろう. 4.5 分析結果と考察(マーガリン・カテゴリー) 図5はマーガリン・カテゴリーにおけるトレンド分析の結果と,クラスター分析の結果を同 時表記したものである.また,クラスター分析の結果は表3の通りである.デンドログラムお よび解釈のしやすさから52週を4クラスターに分類した.カテゴリー内の商品数は比較的少な い方であるが,シェアが非常に小さい商品も含まれるため,売上上位商品の累積シェア約80% 以降の商品は「その他」として合算した. クラスター名については下記の通りである.クラスター1は特徴となる商品がなく,他カテ ゴリーに比して各商品のシェアが合計シェアに近いことからクラスター1の名称を「通年平均」 とした.クラスター2は合計シェアに比して「商品1」のシェアが相対的に大きいことからク ラスター2の名称を「商品1比率大」とした(ただし,元々のシェアが大きいことから,平均 に対して1.5倍には至っていないため表3で網掛け表記はしていない).クラスター3は合計シェ アに比して「商品2」のシェアが相対的に大きいことからクラスター3の名称を「商品2比率大」 表2 インスタント・コーヒー:クラスター別売上金額シェア (単位は%:網掛けは合計シェアの1.5倍の箇所) 番号 タイプ クラスター 1シェア: 通年平均 クラスター 2シェア: 商品1比率大 クラスター 3シェア: 商品2比率大 クラスター 4シェア: スティック比率大 合計 シェア 1 A社 フリーズドライ 16.6 42.8 16.0 12.5 19.5 2 A社 スプレードライ 9.3 6.9 27.3 4.9 13.3 3 B社 スプレードライ 7.4 4.6 5.4 5.7 6.3 4 A社 フリーズドライ 7.2 4.1 3.6 5.9 5.7 5 A社 スプレードライ 8.9 5.3 3.4 2.6 6.2 6 A社 輸入品 4.6 0.4 3.7 2.1 3.5 7 A社 フリーズドライ 2.8 2.0 2.4 3.9 2.7 8 A社 スプレードライ 2.6 2.3 2.6 3.8 2.7 9 A社 商品2増量タイプ 3.5 1.3 1.1 1.3 2.3 10 B社 スプレードライ 3.0 1.8 1.9 1.8 2.4 11 B社 商品3スティック 1.8 1.9 2.0 3.4 2.1 12 B社 商品3スティック 1.8 1.9 1.9 3.6 2.1 13 B社 フリーズドライ 2.3 1.5 2.3 1.9 2.1 14 C社 フリーズドライ 1.5 0.7 1.0 1.5 1.2 15 A社 スプレードライ 1.5 0.6 1.2 1.6 1.3 16 B社 商品3スティック 1.0 0.9 1.1 2.0 1.1 17 C社 フリーズドライ 1.1 0.5 0.8 1.2 1.0 18 A社 商品1カフェインレス 0.9 0.7 1.0 1.3 0.9 19 A社 高品質 0.8 0.7 1.1 0.8 0.9 20 A社 高品質 0.9 0.3 1.1 1.2 0.9 21 その他 20.4 18.9 19.2 37.1 21.8
とした.クラスター4は合計シェアに比して「商品3」「商品4」のシェアが相対的に大きいこ とからクラスター4の名称を「商品3・4比率大」とした. 以上の結果に基づき,マーガリン・カテゴリーにおける棚割変更時期について検討したい. 図5のトレンド分析による量的な季節性に着目したとき,期間中2011年4月18日週,9月19 日週,12月5日週,2012年2月13日週に需要が高まる時期がある.しかし,それぞれの標準化 得点は+0.52,+0.68,+0.77,+0.94となっており標準化得点が+1を超える期間がない(なお, 金額PIの平均は188.56円/1000人,標準偏差は22.59円/1000人となっている).2012年2月13日週 の数値が+0.94と標準化得点+1に近いが,次に需要の大きい12月5日週との5週移動平均の値を 比較すると3.84円/1000人程度の差しかなく,他の需要期と比べて大差がない.ほぼ同程度の需 要が年間を通じて繰り返し現れており,2012年2月13日週を需要のピーク時期とは見なすこと は出来ないと判断した.従って,需要ピークとなる時期自体がなく,量的な季節変動の側面か ら見た場合には,棚割変更を行うべきタイミングは年間を通じて存在しないと判断することが できる. またクラスター分析による質的な季節性に着目したとき,つゆカテゴリーの様に,ある期間, 継続するような購買行動の傾向は見受けられないことが分かる.1ヶ月(5週間)に満たない 需要の変動は棚割変更よりも,むしろ特別陳列などによる店頭プロモーションによって対応す べきと考えられるが,マーガリン・カテゴリーの購買傾向は全て5週間以内に変化している.こ のように,インスタント・コーヒー・カテゴリー以上に非常に短い期間で購買傾向が変わって おり,季節に特有の購買傾向といったものが無いと考えられる.このことから質的な季節変動 の側面から見て,棚割変更を行うべきタイミングは年間を通じて存在しないと判断することが できる. 図5.マーガリン・カテゴリーのトレンド分析結果 0 0 1 0 5 1 0 0 2 0 5 2 金 額 PI ( 円 /1 00 0人 ) 0 5 20 11 04 04 20 11 04 18 20 11 05 02 20 11 05 16 20 11 05 30 20 11 06 13 20 11 06 27 20 11 07 11 20 11 07 25 20 11 08 08 20 11 08 22 20 11 09 05 20 11 09 19 20 11 10 03 20 11 10 17 20 11 10 31 20 11 11 14 20 11 11 28 20 11 12 12 20 11 12 26 20 12 01 09 20 12 01 23 20 12 02 06 20 12 02 20 20 12 03 05 20 12 03 19 均 平 動 移 週 5 通年平均 大 率 比 1 品 商 商品2比率大 商品3・4比率大 金額PI
以上の様に,トレンド分析による量的な季節性から見ても需要のピークと呼べる期間がなく, クラスター分析による質的な季節性から見ても特定の時期に共通した購買行動の傾向が見受け られない.そのため,マーガリン・カテゴリーは基本的に年間を通じて需要は変動しておらず, 季節性に基づいた棚割変更のタイミングが存在しないカテゴリーと言えよう.インスタント・ コーヒーと同様に,棚割変更を行うのであれば,1年間の中での需要の変化ではなく,より長 期的な消費者のカテゴリー購買行動の変化に対応するための棚割変更という位置づけになるが, その変化がない場合は基本的には棚割変更が必要ないカテゴリーであると言えよう.
5.結論
5.1 まとめ 本研究は,国内スーパー・マーケットで3月と9月にほぼ全カテゴリーにおいて棚割変更が 習慣的に実施されているという現状に対して,消費者の購買行動に基づく,より合理的な棚割 変更時期の意志決定のあり方について提言することを目的として行ったものである.この目的 に対して,消費者の商品カテゴリー購買行動における量的・質的な季節変動に基づき,適切な 小売業の棚割変更時期を抽出する分析フレームを提案した.また,その分析フレームは3月と 9月に定期的な棚割変更を実施していない米国におけるヒアリング調査に基づいて開発した. 分析フレームはカテゴリー需要の量的な季節変動を捉えるトレンド分析と,質的な季節変動を 捉えるクラスター分析から構成されており,本研究では複数のカテゴリーにおいて分析した結 果から,特徴的な結果が得られたつゆカテゴリー,インスタント・コーヒー・カテゴリー,マー ガリン・カテゴリーに適用した結果を整理した. つゆカテゴリーは,量的な季節変動,質的な季節変動の双方から総合的に評価した結果,従 来の様に3月と9月に定期的な棚割変更を実施すべきカテゴリーであると判断された.またイ ンスタント・コーヒー・カテゴリーは,量的な季節変動から見て9月に定期的な棚割変更を実 表3 マーガリン:クラスター別売上金額シェア (単位は%:網掛けは合計シェアの1.5倍の箇所) 番号 タイプ クラスター 1シェア: 通年平均 クラスター 2シェア: 商品1比率大 クラスター 3シェア: 商品2比率大 クラスター 4シェア: 商品3・4比率大 合計 シェア 1 a社 レギュラー 26.3 37.5 21.8 15.1 26.6 2 b社 カロリーオフ 7.9 7.8 24.4 9.6 11.9 3 b社 バター入り 8.7 5.5 6.5 17.5 8.6 4 b社 レギュラー 6.3 4.1 4.6 16.9 6.8 5 a社 べに花油入り 3.9 3.9 3.7 3.9 3.8 6 c社 バター入り 2.6 4.9 2.8 2.4 3.2 7 d社 高品質 3.9 3.6 3.2 3.1 3.5 8 a社 カロリーオフ 3.5 3.2 3.2 3.0 3.3 9 b社 カロリーオフ 3.2 3.2 3.0 3.1 3.1 10 c社 バター入り 4.1 1.5 1.9 3.1 2.8 11 a社 レギュラー 2.9 2.8 2.5 2.6 2.7 12 e社 カロリーオイル 2.8 2.3 2.3 2.0 2.5 13 c社 レギュラー 2.4 2.3 1.6 1.2 2.0 14 その他 21.4 17.4 18.5 16.7 19.1施すべきカテゴリーであると判断された.しかし,質的な季節変動と呼べる傾向は無く,従来 行われている3月における棚割を実施すべき合理的な理由は見受けられなかった.マーガリン は,量的な季節変動,質的な季節変動の双方ともに乏しく,従来の様に3月と9月に定期的な 棚割変更を実施すべき理由は見受けられなかった. このように小売業の棚割変更時期の分析フレームを複数のカテゴリーに適用した結果,必ず しも3月と9月に定期的な棚割変更を実施すべき積極的な理由がないカテゴリーが抽出された. 5.2 提言 スーパー・マーケットは米国から輸入された業態である.しかし,実際には多くの日本独自 の売場作りのノウハウが開発されている.その過程で年に2回の棚割変更が,商習慣として根 付いたからには,それなりの理由があって根付いたものであり,必ずしも米国のノウハウに従 うのが最良とは限らない.しかしながら,商習慣として根付いているからという消極的な理由で, 無批判に活動を継続し,それを見直さないことは問題である.国内人口が増加し,市場規模が 拡大してきた段階においては,その商習慣を見直す必然性は小さかったかも分からない.しかし, 現在の日本市場は,人口減少傾向にあり,従来の方法を疑いなく踏襲すべき段階にはなく,商 習慣の見直しは行わざるを得ない状況に至りつつある. 従来の日本のスーパー・マーケットは需要開発のために,出来るだけ多くの仕掛けを消費者 に向けて実施する方向で進んできたと思われる.その意味では高いサービス・クオリティの店 舗が実現されてきたと言える.売上の動向に関係なく,年に2回,棚割変更を実施し,売場を リフレッシュしてきたのもその流れの1つであると言えよう.しかしながら,消費者の観点か ら見たときにそれほど季節毎に購買が変わらないようなカテゴリーにおいても,定期的に棚割 変更が行われたとしてもそれは消費者満足の向上に繋がらない.供給側の自己満足と評価せざ るを得ないだろう.即ち,カテゴリーによっては年2回の棚割変更は過剰スペックとなっている. そのようなサービスが店頭においては無批判に継続され続けている現状は消費者にとって得る ところが少なく,供給サイドの製配販の各企業にとってもは効率の悪い投資と言わざるを得ない. 流通全体の効率を高め,新たな環境変化に対応するためには,これまで行って来た業務を見 直してゆく必要がある.その見直しの1つとしてスーパー・マーケットにおける棚割変更に関 しても,当事者である小売業が中心となり,卸売業,製造業を含む関連企業は,商習慣を批判 的に再検討すべきである.その検討は,商品カテゴリーの販売実績に基づいて行われるべきで あり,カテゴリーによって不必要と判断されたタイミングでの棚割変更は停止し,必要であれ ば実施する,という合理的な判断を取り入れるべきである. そして,効率化により新たなに確保された人材や時間,資金を今後,拡大が予測される高齢 者や単身世帯,少人数世帯の需要に対応した新しい製品の開発や新しい販売方法の開発に振り 向けるべきできである. 5.3 今後の課題 最後に本研究の課題について言及しておきたい. 今回は複数の分析結果から典型的な事例を抽出したが,今後はより多くのカテゴリーのデー タに本フレームによる評価が実施され,全体的な構造が把握されるべきであろう. また今回は量的な季節性と質的な季節性を別々の分析によって評価した.この点に関しても
一体的モデルにより分析が実施される方が,より自然であり,統合的な分析フレームの開発が 期待される. また質的な季節性の評価は,本研究では単品単位で行った.しかしアイテム数が多いカテゴ リーでの分析を想定した場合,分析が困難になると予想される.そのため,サブカテゴリー単 位でその季節性を捉えられるような分析モデルが好ましいと言える. 日本国内の流通を取り巻く環境は現在大きく変化しつつある.この変化に対応するためには, 従来から惰性的に行われてきた商習慣を見直し,そこから生まれた余裕を新たな環境に対応し た流通の開発に投資すべき必要がある.棚割計画だけでなく,流通における多くの活動が,販 売実績に基づき今一度見直され,流通全体の合理化が推進されることを期待する. <謝辞>本研究は科研費(課題番号:23730399)の助成を受けたものである.また横浜国立大 学経営学部の辻田由美助手には草稿を丁寧に読んで頂き,分かりにくい表現や記述の改善につ いてご助言頂いた.記して感謝申し上げたい.
参 考 文 献
Bultez, A., and Naert, P. (1988), "SHARP: Shelf Space for Retailer's Profit", Marketing Science 7, 211-231. Corstjens, M., and Doyle, P. (1981), “A Model for Optimizing Retail Space Allocation,” Management
Science, 27, 822-833.
Lim, A., Rodrigues, B., and Zhang, X, (2004), “Metaheuristics with Local Search Techniques for Retail Shelf-Space Optimization”, Management Science, 50(1), 117-131.
流通経済研究所(2008)『インストア・マーチャンダイジング』日本経済新聞出版社.
〔つるみ ひろゆき 横浜国立大学経営学部准教授〕 〔2012年10月9日受理〕