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金属と絶縁体のはざまに広がる豊かな物性

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Academic year: 2021

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金属と絶縁体のはざまに広がる豊かな物性

物性分野で取り扱われる物理量のなかで,電気抵抗ほど 劇的に変化する量はほかにない.物質によって電気抵抗率 は,絶縁体(106 Ω cm のオーダー)から金属(10−4 Ω cm の オーダー)まで実に 10 桁以上も変化する.この違いは固体 物理のバンド理論によってよく説明される.固体中の電子 は原子核がつくる周期的ポテンシャルの影響により,バン ドを形成する.もしフェルミ準位がバンド間のエネルギー ギャップ中にあれば(図(a))物質は絶縁体となり,そう でなければ(図(b))金属になる.電気抵抗率の劇的な違 いは,絶縁体のエネルギーギャップ(数 eV のオーダー)が 室温(300 K≒0.03 eV)に比べて,十分に大きいことによる. バンド理論は大きな成功をおさめたが,破綻する場合も ある.たとえば図(b)でバンドのちょうど半分を電子が占 めたとき(half-filled という),バンド理論は金属を予想する. しかし,電子間のクーロン反発力がある程度強くなると, 電子は互いを避けようとして身動きがとれなくなり,各原 子に局在して物質は絶縁体となる.この状態はモット絶縁 体とよばれるが,その記述には電子の遍歴性と局在性にま つわる多体問題をよく考える必要がある.モット絶縁体で は,局在した電子が磁性の源になるほか,化学組成や外場 のわずかな変化によって物性が大きく変わり,超伝導や巨 大磁気抵抗,外場誘起金属絶縁体転移などのおもしろい物 性を示す.また新しい秩序相や量子凝縮状態が現れる可能 性も秘めている. 最近になり,絶縁体でも金属でもない新しいカテゴリー の物質系が注目されている.たとえば,グラフェン,分子 性導体,トポロジカル絶縁体の表面状態などでは,図(c) のようにフェルミ準位付近でバンドが線形分散をもち有効 質量がゼロとなる状態が実現されている.この状況では, スピン・軌道相互作用により電子の運動とスピンが強く相 関し,電場による磁化制御や光のカイラリティとの結合な ど,新しい物性が現れる.これらが物質にどのような新機 能を与えるか,今後の物質開発の指針となる可能性がある. 会誌編集委員会 価電子バンド 伝導バンド フェルミ準位 (a) (b) (c) ©2016  日本物理学会

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