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中学校特別支援学級における進路学習 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)中学校特別支援学級における進路学習 篠 原. 真 史. *. Ⅰ.はじめに. 特別支援学級を担当していると,「あの子たちに進路学習は必要なのでしょうか?」と 同僚から質問されることがある。一般に中学校の進路学習については,1年次に主に自己 理解に関わる内容,2年次に職業理解や職業選択に関わる内容,3年次に自分の進路選択に 関わる内容を中心に指導計画が作成されている。それぞれについて学校ごとに必要なワー クシートなどが蓄積されている。また,職業理解に関わって職場体験や職業講話などの行 事に学校を挙げて取り組むことができるようになっている。 冒頭に記した同僚からの質問は,特別支援学級の生徒に当該学年相当の進路学習の内容 を理解させ,同じ歩調をとるようにすることの難しさを配慮しての発言であると推察する ことができる。しかし,少なくともこと知的障害の生徒にとっては大学等の高等教育を受 けることが例外的である以上,進路,すなわち社会に出るための学習は通常学級の生徒よ りも緊急性は高いと考えられる。 本稿では進路学習という視点から,中学校の特別支援教育のより望ましいあり方を考察 する。 近年進路学習に関わってキャリア教育が系統づけられている。キャリア教育については, 「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通 して,キャリア発達を促す教育(中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職 業教育の在り方について(答申)(平成23年1月31日)」という定義があるが,その文書の 中の「キャリア発達の支援」を「キャリア教育」と考え,「社会の中で自分の役割を果た しながら,自分らしい生き方を実現していく過程」「自己の知的,身体的,情緒的,社会 的な特徴を一人一人の生き方として統合していく過程」ととらえていることを本稿でも踏 襲する。. Ⅱ.特別支援学級を取り巻く状況. 2001年からの山梨県内の小学校・中学校の特別支援学級等の在籍児童・生徒数の推移を 図1と2に示す。特別支援学校に在籍する児童・生徒数はこの10年で2倍以上に増加すると. *. 山梨県埋蔵文化財センター. - 30 -.

(2) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). ともに,特別支援学級も小学校で2.2倍,中学校で1.8倍に増加している。また,2010年以 降の自閉症・情緒障害特別支援学級の生徒の増加も統計上顕著である。小学校卒業生の進 路先は図3のように卒業者数に関係なく毎年3割が特別支援学校に進学し,残りの大半が中 学校の特別支援学級に進学している。小学校・中学校の在籍児童・生徒が減少傾向にある 中で,この10年間で特別支援教育の対象となる児童・生徒は倍増していることは顕著な傾 向である。特別支援学級在籍児童・生徒を取り巻く状況に注目したいと考える。なお,図 1と図2においては進路先の関連を持たせるために小学校のデータに対して中学部を,中学 校のデータに対して高等部をそれぞれ加えた。グラフから小学校の増加率も中学部の増加 率も一貫して年々高まっていることは明かである。. ※山梨県教育委員会「山梨の特別支援教育平成25年度版」より作成. 図1. 山梨県の小学校の特別支援学級等の在籍児童数. ※山梨県教育委員会「山梨の特別支援教育平成25年度版」より作成. 図2. 山梨県の中学校の特別支援学級等の在籍生徒数. - 31 -.

(3) ※山梨県教育委員会「山梨の特別支援教育平成25年度版」より作成. 図3. 山梨県の小学校の特別支援学級卒業生の進路先. Ⅲ.特別支援学級在籍生徒の進路. 中学校の特別支援学級を卒業した生徒の進路先を図4に示す。おおむね7割程度の生徒が 特別支援学校の高等部に進学している。また図5に特別支援学級生徒の進学率を示す。同 時期の高等学校進学率が98%前後で推移しているのに対して,特別支援学級の在籍生徒の それは若干低い傾向にある。特に自閉症・情緒特別支援学級が急増した2011年・12年に特 別支援学校または高等学校に進学していない生徒数が増加していることがわかる。. ※山梨県教育委員会「山梨の特別支援教育平成25年度版」より作成. 図4. 山梨県の中学校の特別支援学級卒業生の進路先. - 32 -.

(4) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). ※山梨県教育委員会「山梨の特別支援教育平成25年度版」より作成. 図5. 山梨県中学校特別支援学級の高等学校進学率. Ⅳ.中学校の特別支援学級の進路学習. 以上統計的に特別支援学級の進路状況を概観してきたが,実際の中学校の特別支援学級 での進路学習をめぐって困難な状況を次に記したい。 特別支援学級に在籍する生徒は,通常学級での生活から派生する「対人恐怖」などの症 状を示したり,「不登校」の状態で入級したりすることがある。このような状態の生徒は 時として通常学級の活動に参加できない場合がある。こうした場合,学年や全校での様々 な行事に参加することができないことにもなる。 また,自閉症・情緒障害特別支援学級の場合,在籍生徒の特性や進路選択の可能性の2 点で課題が存在すると考えられる。児童・生徒の特性の面では次の点を指摘することがで きる。 ○特性を教師の視点や教育課程のあり方で考えると ・集団参加に困難さを示す生徒が多く,他の児童生徒と協同して学び合うことが難し く感じられる傾向にあること。 ・高等学校は実際上特別支援学級を活用することが困難なために,通常学級で生活し づらい生徒を受け入れていく体制が十分に構築できないこと ・進路学習が高等学校進学を前提に考えられ,自己理解や職業理解などの内容を踏ま えてはいるものの,「自分の進路=高等学校進学後の生活」についての学習の比重 が高くなっていく傾向にあること。 ・交流学級の中で進路学習を進める場合,内容の理解,学級内での意思交換の面から 所期の目標を達成しきれないことがあること。 ・知的障害や発達障害の生徒のための適切な情報が十分ではないため,教師が生徒や. - 33 -.

(5) 保護者に情報を提供しづらいこと。 ○生徒本人の立場で考えると ・認知機能の偏りが大きいために,学力の向上に結びつきにくい傾向にあること。 ・学力の面では様々な試験当日に高い得点を挙げることが難しいこと。 ・「自分の将来」という言葉が定型発達の生徒よりも理解しづらい傾向にあるために, 学習への動機付けに欠けること。 ・学業成績の面から,将来の様々な可能性が閉ざされていくと認識してしまい,自信 を喪失してしまうおそれがあること。 ・教師も保護者も福祉制度への理解が十分でないために,様々な制度を十分に活用し づらいこと。 進路学習を進めるにあたっての課題は生徒,教師それぞれにあると言える。. Ⅴ.実態調査の結果から見る学力格差. また,図1~5の作成で対象とした期間の中で学習指導要領の改訂が行われた。この中で ベネッセコーポレーションが刊行した「中学校の学習指導に関する実態調査報告書2013」 の「学習指導や学校での取り組み」の項目では,主幹教諭・教務主任に実施したアンケー トの結果,「小学校までの学習内容が定着していない生徒」が「増えた」が39.3%,「授 業についていけない生徒」が「増えた」が33.8%となっている。この2つで「減った」と したのは1割以下であるから,「増えた」の割合の多さは気がかりである。さらに,「学習 意欲のある生徒」は「増えた」が「減った」よりもやや多く,「学習習慣のついている生 徒」と「主体的に学習に取り組む生徒」は「増えた」よりも「減った」が多かった。その 結果として,「学力の水準」が「とても+やや高まった」が24.2%,「とても+やや低く なった」が29.9%と,後者がやや多い。「以前と変わらない」は44.9%で,回答者のほぼ 半数はそのように判断している。また,「生徒間の学力格差」について,「とても+やや 大きくなった」が58.7%と半数を超えていると報告書の中で教育創造研究センター所長の 高階玲治が分析しており,新しい教育課程に対しての教師の評価の一端を示している。 2012年から実施された新しい教育課程では,学習内容が増加するとともに,言語活動や 外国語教育が拡充する。この教育課程実施後に行ったアンケートに対して,生徒間の学力 格差が開いたと答えた教師が多い傾向を考えると,言語活動や外国語教育などへの負担感 が大きい生徒の存在をうかがう結果となったと考えられる。 図1と図2からわかるように特別支援学級に在籍する児童生徒は増加傾向にある。自閉性 障害やADHDなどのLDを除く発達障害の生徒にとっては言語活動の比重が高い教科学 習が苦手な傾向にある。そうした生徒が増加したことが「学力格差が大きくなった」と教 師がとらえる要因の一つになるものと考えられる。. - 34 -.

(6) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). Ⅵ.特別支援学級と進路学習. 「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを 通して,キャリア発達を促す教育」という観点で特別支援教育の対象生徒を見てみると次 の傾向を指摘することができる。 ・学校生活の中で対人恐怖や不登校などの課題を抱える傾向。 ・学業成績の面で学習意欲や自信を喪失する傾向。 中学校の特別支援学級の進路学習は,通常学級の内容に準じながらも上記の傾向に対し て以下の点に留意する必要があると考える。 ・自己理解のための学習が自尊感情の低下につながらないように留意すること。 ・職場体験など職業理解のための活動の中で,福祉制度や福祉的就労の実態が本人だ けではなく保護者にも理解できるようにすること。 ・高等学校や特別支援学校の高等部の学校生活を理解する学習活動の中で,実際に見 学する体験的な活動を取り入れるようにすること。 以上の課題点を克服するために,特に知的障害特別支援学級では知的障害特別支援学校 中学部の各教科, 「職業・家庭科」に示された内容を参考にすることが有効と考えられる。 以下学習指導要領の目標と内容を提示する。. 1. 目標 明るく豊かな職業生活や家庭生活が大切なことに気付くようにするとともに,職業生活 及び家庭生活に必要な基礎的な知識と技能の習得を図り,実践的な態度を育てる。. 2. 内容. (1) 働くことに関心をもち,作業や実習に参加し,働く喜びを味わう。 (2) 職業に就くためには,基礎的な知識と技能が必要であることを理解する。 (3) 道具や機械,材料の扱い方などが分かり,安全や衛生に気を付けながら作業や実習を する。 (4) 自分の役割を理解し,他の者と協力して作業や実習をする。 (5) 産業現場等における実習を通して,いろいろな職業や職業生活,進路に関心をもつ。 (6) 家族がそれぞれの役割を分担していることを理解し,楽しい家庭づくりをするために 協力する。 (7) 家庭生活に必要な衣服とその着方,食事や調理,住まいや暮らし方などに関する基礎 的な知識と技能を身に付ける。 (8) 職業生活や家庭生活で使われるコンピュータ等の情報機器の初歩的な扱いに慣れる。 (9) 家庭生活における余暇の過ごし方が分かる。. 特別支援学級内での集団活動を組織すること【内容(4)】によって,自尊感情を高め. - 35 -.

(7) ていくこと,職場体験活動を充実させること【内容(1)】によって,職業への理解や特 別支援学校の高等部や高等学校への理解を深めていくことなどの手立てを生み出すことが 可能であると考えられる。 その意味で,筆者は以前勤務した中学校で職業・家庭科の時間を設定し,特別支援学校 で行われている作業学習を参考に年間を通じて手漉き和紙やレザークラフトのキーホル ダーなどを製作する時間を設定した。そしてそれらの製品を2月の学校開放日に保護者を 中心に販売し,その収益をもとに食事会を行った。当時この学校は知的障害特別支援学級 に2名,自閉症・情緒障害特別支援学級に4名の生徒が在籍していた。学年も実態もそれぞ れ異なる中で筆者はまず集団活動を通じて自尊感情を回復させることを主眼に二つの学級 の合同授業として職業・家庭科を週2時間設定した。また,二つの学級合同で進路先と考 えられる学校見学を校外学習として設定したり,職場体験の時には体験先と保護者との懇 談会を設定したりして働くことや中学校卒業後の進路についての理解を深めていくことが できるようになったと考える。. Ⅶ.まとめ. 山梨県教育委員会は2011年に「やまなし特別支援教育推進プラン(2011年)」を刊行し た。この中で知的障害特別支援学校の在籍者数の増加の要因を以下のように述べている。 ・特別支援教育に係る施策の整備と社会的な関心が高まってきていること。 ・障害のある児童生徒の保護者や教育関係者において,「特別支援教育」に対する理 解が深まってきていること。 ・保護者は,特別支援教育に大きな期待を抱いており,一人ひとりに応じた教育によっ て子どもの成長発達を促し,自立と社会参加を目指す教育を受けさせたいと考えて きていること。 ・特別支援教育の推進によって,軽度の知的障害のある幼児児童生徒が顕在化し,特 別支援教育の対象となってきていること。 ・支援の必要な子どもに対する支援制度の充実が図られてきていること。 特別支援学級の設置,教職員の配置・研修等の施策が進んだり,地域での療育システム が構築されたりしている結果,特別支援教育の対象となる児童生徒が増加しているとの見 解は誤りであるとは言えない。 その一方で同時期に神奈川県の教員への聴き取り調査を行った遠藤(2010)は「特別支 援教育の現状・課題・未来」の中で「先ず増加現象の背景として,前提となる高等学校の 統廃合問題・学力競走に伴う学校タイプ間の垂直的ヒエラルキーの高まりがあり,そのた めに社会的不安・いじめ回避・何らかの病理や居場所が見いだせなくなった本来通常教育 で教育すべき生徒たちが,特別支援学校に流れ込んでくる構図が成立しつつある。」と述 べている。前述の学力の格差が広がっていると感じている教師の割合が増えたことと関連. - 36 -.

(8) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). するものと考える。 現在,小学校・中学校の特別支援学級は児童生徒が増加している。そうした児童生徒が 多くの困難を抱え,時には二次的な障害を抱えた状態で在籍している。特別支援学級はそ うした児童生徒の困難さをまず解消する役割を有する。とりわけ義務教育の終わりを迎え る中学校の特別支援学級においては,在籍する生徒の自尊感情を回復することや他の生徒 との信頼関係を回復することを通じてそうした困難さを解消・軽減していくことが卒業後 の進路を保障することにつながるものと考える。 そうした考え方に基づいて,特別支援学級の担任教師や担任教師を支える教師集団は, 以下の点を教育課程に取り入れ,在籍する生徒の自己理解を深めることを通じて,低下し てしまった自尊感情を高めることに努めたい。 ・特別支援学級の様々な活動,とりわけ進路学習に関わる内容に体験的な学習活動を 積極的に取り入れることを通じて,生徒の自信を回復する糸口を見い出すこと。 ・他者との信頼関係を回復するための集団活動のあり方として特に校内の特別支援学 級間で連携する手立てを身につけること。 ・福祉的な就労の制度や障害者の権利に関わる内容を伝え,社会参加を果たしている 障害者の日常生活を伝えること。 「社会の中で自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していく過程」を支 援する手立てとして心がけていきたいと考える。. 参考文献. 1)中央教育審議会(2010)今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方につい て(答申). 2)児美川孝一郎(2013)キャリア教育のウソ.ちくまプリマー選書. 3)山梨県特別支援教育振興審議会(2011)平成22年度第2回会議資料. 4)ベネッセコーポレーション(2013)中学校の学習指導に関する実態調査報告書2013. 5)山梨県教育委員会(2013)やまなしの特別支援教育平成25年度版. 6)遠藤俊子(2010)特別支援教育の現状・課題・未来:インクルージョンを手がかりと して.日本女子大学大学院人間社会研究科紀要,16,55‐68.. - 37 -.

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参照

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