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差分変動率法を用いたSco X-1時間変動の解析

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差分変動率法を用いた

Sco X-1時間変動の解析

明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系

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要旨

自ら輝くことのないブッラクホールや中性子星を、間接的に明るくすることができる降 着円盤の動きについて理解をし、主星が中性子星の場合、ガス降着の際の X 線がどのよう な変動をするのか考察することを目標にデータ解析を行った。 全天X 線観測装置(MAXI)が観測した Sco X-1 のデータを使用し、差分変動法を用いて normal モード、flaring モードそれぞれの時間変動を求めた。 MAXI が地球を公転する 90 分を 1 点とした orbit データ(1/16 日)と、90 分×16 公転(1 日)を 1 点とした day データを用いて、2009 年 8 月 15 日から 2010 年 2 月 27 日までの範 囲で解析した。 データからflaring モードと normal モードに区分して差分変動法より解析を行った。カ ラー・カラー図よりflaring モードはフレア分枝、normal モードは通常分枝に対応するこ とが分かった。 差分変動率法を用いて、2 ビン時間幅ずつまとめたものを、2 ビン、4 ビン、8 ビン、16 ビンとする。orbit データの 2 ビン、4 ビン、8 ビン、16 ビンはそれぞれ、1/8 日、1/4 日、 1/2 日、1 日となり、day データの 2 ビン、4 ビン、8 ビン、16 ビンは、2 日、4 日、8 日、 16 日となっている。

orbit データでは normal モードと flaring モードの変動率の値が大きく異なっていること が分かった。day データでは比較的 2 つのモードの変動率の値に差はないと考えると、 flaring モードと normal モードの強度変化の違いがよく表れて見られるのは、orbit の時間 スケール(1 日以下)であると考えた。

orbit データと day データをつなげて、変動率の推移をみると、2 日以降(day の変動率) ではorbit データでの変動率を外挿した値よりも、変動率の値が尐し大きくなった。このこ とから、1 日から 2 日に切り替わるタイミングで、X 線の変動の様子が変化することが分か った。Inoue 論文から導かれている変動率と時間の関係の式からも、2 つの時間スケールで 異なるX 線の変動の様子があることが考えられた。

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目次

1 章 序論 1.1 X 線天文学 1.2 X 線連星 1.3 Sco X-1 1.4 今回の観測装置と目的 2 章 解析 2.1 Sco X-1 の観測データ 2.2 解析に使用したデータ 2.3 normal モードと flaring モードの区分 2.4 normal モードと flaring モードのカラー・カラー図 2.5 差分変動率法による normal モードと flaring モードの変動率解析 3 章 まとめと考察 謝辞 参考文献

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1章 序論

1.1 X 線天文学

現在、天体の観測は様々な方法で行われている。私たちの目で確認できる可視光領域以 外の波長での観測も主流となり、宇宙の解明に役立ってきた。 人間が見ることのできる可視光線を含め、電磁波は波長によっていくつかの領域に分か れている。電磁波は波長が短くなるのに従って、エネルギーが高くなり、観測できる天体、 現象が異なる。X 線天文学では宇宙の高エネルギー超高温現象を対象としている。 X 線の波長は1nm から 0.01nm の範囲にあり、可視光よりも短い波長である。エネルギ ーは1keV から 100keV 程度である。X 線はその振動数の速さから、物質の分子構造によら ず、原子レベルで電子と相互作用し、透過率は元素の種類と原子の数によって決まる。 図1.1 電磁波波長図(JAXA) X線は大気を透過することができないためX線での天体観測は観測装置を上空に打ち上 げる必要があった。そのため、X 線による天体観測は 1960 年以降のロケットや人工衛星の 発展に伴って始まった。 1962 年、リカルド・ジャッコーニらが打ち上げた観測ロケットによって X 線星を発見し たことをはじめとしてX 線天文学は本格的に始動した。X 線星の発見により、連星系のガ ス降着とX 線の放出の関係性の議論が深まった。 X 線天文学は、X 線望遠鏡のための光学素子や放射線検出器の開発、実験などの物理学と しての面を持ち、さらには観測から得たデータを解析してX 線を放射する天体や現象など の、宇宙の解明に努めている。

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1.2 X 線連星

1.2.1 近接連星系 私たちの見ている半数以上の星は連星系に属すると言われている。連星系とは2 つ以上 の星が重力を及ぼしあい、互いの周りを公転している系のことである。近接連星系は連星 系のうちの、2 つの星がそのそれぞれの半径ほどまで接近して公転しているものである。よ り近い距離にあるため、潮汐力や条件によってはガスやエネルギーのやり取りも行う。連 星の等ポテンシャル面のロッシュローブという範囲によって、近接連星はさらに3 つの型 に分けられる。 等ポテンシャル面とは、その星の重力とその星に作用する遠心力との和が一定になる面 のことである。 図1.2 2 つの星の等ポテンシャル面(M1、M2 の質量比 4:1) 太線はロッシュローブを表す ロッシュローブは、等ポテンシャル面のうちのラグランジュ点L1 を通る等ポテンシャル 面のことをいう。それぞれの星の重力圏の範囲がくっついた形になっており、ロッシュロ ーブの範囲内に入ったものはその中心の星の重力にとらえられる。 ロッシュローブによって分類される3つの型は、分離型、半分離型、接触型である。片 方の星から放出されるガスがロッシュローブを満たせば半分離型。両方の星がお互いにロ ッシュローブを満たし共通の外層を持てば接触型。両方ともロッシュローブを満たさない ものを分離型とする。

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5 図1.3 近接連星分類型 半分離型や接触型は、ガスの輸送や星の変形などエネルギーの変化によって大きな相互 作用を及ぼす。 半分離型の場合、主にロッシュローブを満たす星を伴星、ロッシュローブを満たさない 星の方を主星とする。半分離型となるには片方がロッシュローブを満たさない必要がある。 したがって、大きさが小さく自らにエネルギーを持たない中性子星やブラックホール、白 色矮星などの高密度天体が主星となる。伴星としては主系列星や巨星などの活動の活発な 星が挙げられる。 ガスの輸送が起こる半分離型では、ガスが主星の重力圏に流れ込むことで、主星を中心 とするリング状のガスの円盤である、降着円盤を形成する。分離型は伴星がロッシュロー ブを満たさないためガスの輸送は起こらないが、伴星からの星風の一部が主星の重力にと らえられた場合には同じく降着円盤を形成する。 1.2.2 X 線連星系 近接連星の3つの型のうち、半分離型の、分離型で起こる降着円盤では、主星に向かっ て尐しずつガスが落ち込んでいくにつれて、電磁波を放射する。その電磁波により自ら光 り輝くことのない主星を明るくすることができる。X線連星の主星は中性子星かブラック ホールであり、それらの主星を光らせる電磁波がX線であった場合をX線連星という。 X線連星は、伴星が比較的小質量の時は、小質量X線連星と呼ばれる。小質量X線連星 は半分離型に多く、強いX線を放射する。分離型では星風によって降着円盤が形成される が、星風の量は星の質量が大きいほど多い。そのため伴星の質量が大きいほど降着円盤が できやすい。このように伴星の質量が大きい場合は、大質量X線連星と呼ばれる。

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6 1.2.3 降着円盤 高密度天体の重力に引かれてガスが落ち込んでいくことを降着という。降着の際に高密 度天体を中心にリング状の円盤を形成し、この円盤からゆっくりとガスが主星へと落ちて いく。この円盤を降着円盤と呼ぶ。ガスがリング状に広がっていくのは、主星の重力に引 かれる際にガスが角運動量を持って落ち込んでいくからである。角運動量を持つのは連星 の公転の作用による。 主星のロッシュローブの範囲にガスが引き込まれるにつれて、ガスと主星の距離は近づ く。ガスの降着流が中心に向かって回転しながら落ちていくとき、主星の持つ角運動量は 一定であるので、主星までの距離に反比例して降着流の回転速度は大きくなる。回転速度 が大きくなることで、ガスに働く遠心力が主星の重力を上回るほどに大きくなっていき、 最終的に重力と遠心力がつりあう位置でリング状のガス円盤ができる。 つりあいの位置でできたリングは角運動量一定で回転している。つりあいの位置で質量 Mの主星の周りを円運動するガスの回転をケプラー回転とする。角速度Ωを表すと、 rは主星までの距離とする。角速度は距離によって変化するため、リングの内側と外側で ガスの速さが異なる。ガス同士が摩擦する粘性の作用によって、内側のガスと外側のガス が同じ角速度になろうと働くため、リングの内側から外側へ角運動量が輸送される。よっ てリング内側のガスは角運動量を失い、重力優勢となるため主星に向かって落ちていく。 反対に、リング外側のガスは角運動量を得て遠心力優勢となりさらに外側へと広がってい く。 粘性はエネルギーにも影響を及ぼす。ガスが降着するに伴って、重力エネルギーが解放 される。ガス降着の際に電磁波が出るのは、重力エネルギーが放射エネルギーに変換され るからである。ガス同士の摩擦で熱が発生することで重力エネルギーが熱エネルギーに、 さらに放射エネルギーへと変換される。 放射のモデルは主に、標準円盤モデルと高温降着流モデルに分けられる。 標準円盤モデル ガス降着での重力エネルギーが効率よく放射エネルギーに転化されるモデルである。放 射で温度が下がり、圧力が下がるため、円盤は幾何学的に薄い。ガスがゆっくりと降着し ていくので重力エネルギーも徐々に解放され、円盤は黒体放射をする。円盤の各部分で黒

𝛺 =

𝐺𝑀

𝑟

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7 体放射をするため、温度の異なる黒体放射が重ね合わさる多温度円盤モデルとも呼ばれる。 内側ほど高温の黒体放射が重なることが考えられる。 高温降着流モデル 高エネルギー放射を考えるモデルとして、高温降着流のモデルが様々に議論されてきた。 放射が非効率でガスの流れが高温、低密度のモデルが現在の有力説である。放射をしない ことで放射冷却がされず、ガスは高温になる。ガスが高温状態になると粘性が大きくなり 角運動量の輸送率が高まった結果、ガスは速く落ち込んでいく。このモデルはRIAF (Radiatively Inefficient Accretion Flow)と呼ばれる。このモデルでは、シンクロトロン 放射などの様々な放射が行われることで、電波からガンマ線までの広い波長域の放射がな される。 標準円盤モデル 高温降着流モデル 放射 効率的 非効率的 光度 ∝ 降着率 ∝(降着率)2 幾何学的厚み(H) H<<r(主星から円盤任意点 までの距離) H~r 光学的厚み(τ) τ>1 τ<1 放射機構 黒体放射 シンクロトロン、コンプトン 散乱、熱的制動放射 表1.1 標準円盤モデルと高温降着流モデルの対照 標準円盤モデルと高温降着流モデルは光度によって分類される。光度が大きくなること は、ガスの降着率が大きくなり放射が効率的になることである。高温降着流モデルが適応 する限界光度は、エディントン限界光度の10%程度である。よって、光度が大きいときを 標準円盤モデル(ソフト状態)、小さいときを高温降着流モデル(ハード状態)とする。

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1.3 Sco X-1

さそり座の位置にあるX 線連星である。Scorpius X-1 とも呼ぶ。1962 年にリカルド・ジ ャッコーニらが行ったロケット観測により、初めてのX 線源として発見された。X 線源と して観測された後、日本とアメリカのグループが共同して、X 線源に対応する可視光天体を 発見。1966 年には国立天文台岡山天体物理観測所の 188cm望遠鏡によって、12.2 等級の 可視光天体であることがわかった。この天体はさそり座の変光星V818 である。 太陽系外の明るいX 線天体で、太陽を除いた定常的な X 線源として 1 番明るい。中性子 星との連星である小質量X 線連星。X 線強度は不規則で、準周期振動が見られる。 表1.2 Sco X-1

中性子星とのX 線連星における、Hasinger & van der Klis の論文によるカラー・カラー 図から、X 線の強度変動の状態は 3 つに分けられる。 図1.4 Sco X-1 カラー・カラー図

連星周期

18.9 時間

赤経

16h24m17.8s

赤緯

-15°31’ 15’’

等級

V818 12.25 等級

質量

V818 0.42M☉(太陽質量)

中性子星

1.4 M☉

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図1.4 では 6-20keV の X 線強度を 4.5-6keV で割ったものを Hard colour 、3-4.5keV を 1-3keV で割ったものを Soft colour としている。図の HB、NB、FB はそれぞれ、水平分 枝(horizontal branch)、通常分枝(normal branch)、フレア分枝(flaring branch)であ る。中性子星とのX 線連星の明るいものは主にこの 3 つの状態で X 線の強度が変化すると されている。

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1.4 今回の観測装置と目的

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているわが国の全天 X 線観測装置 MAXI によ るSco X-1 の観測データを解析する。ISS の軌道周期約 92 分ごとの X 線強度変動をもとに、 それより長い時間スケールでの強度変動の様子を、差分変動率法を用いて調べる。MAXI は以下のようなものがある。 MAXI は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国際宇宙ステーションに搭載した、全天の X 線の強度変化を観測することのできる装置である。

図1.5 左:MAXI 外装 右:MAXI 内部構造 (JAXA)

表1.3 MAXI 基本仕様(JAXA) MAXI には比例計数管を用いたガススリットカメラ(GSC)と X 線 CCD を用いたソリ ッドステートスリットカメラ(SSC)が搭載されている。 図1.6 左:比例計数管 右:X 線冷却 CCD(JAXA) 2種類のカメラを搭載することで低エネルギーから高エネルギーのX 線を観測できる。 カメラがそれぞれ天頂方向と進行方向を向くように設置されてあり、地球を1 周する約 90 分で全天の観測がされている。ガススリットカメラ(GSC)は 2~30keV の X 線を検出し、 大きさ 1.85m×0.8m×1m 質量 520 ㎏ 観測周期 地球1 周 約 90 分

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11 検出面積が広く、より暗いX 線天体の観測が可能。ソリッドステートカメラ(SSC)は 0.5 ~10keV の X 線を高い分解能で検出する。 X 線は、光子のエネルギーが大きいため光子ひとつひとつの検出を行う。その性質を応用 したX 線検出の 1 つが比例計数管を用いたものである。1970 年に X 線天文衛星ウフルに比 例計数管が搭載されX 線の検出に成功している。しかし難点は、比例計数管だけでは X 線 がどの方向から来ているのかということはわからないということだった。MAXI ではこの 点が工夫され、GSC と SSC の2つに、スリットカメラを用いて X 線の位置を検出してい る。スリットカメラによって、X 線の検出器に金属の板を並べたコリメータを置いて観測領 域の幅を狭め、さらにコリメータに直行してスリットを組み合わせることでX 線の来る方 向を決定している。 図1.7 スリットカメラ原理(JAXA)

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12 項目 仕様 ガ ス ス リ ッ ト カ メ ラ X 線検出器 1 次元位置感応型比例計数管(12 台) Xe(99%)+CO2(1%) X 線エネルギー帯域 2-30keV 全検出面積 5350 ㎠ エネルギー分解能 18%(5.9keV) 位置分解能 1mm 位置決定精度 0.1 度 時間分解能 0.1 ミリ秒 空のカバー率 160 度×1.5 度(半値幅)の視野を 2 方向に持つ 瞬時に監視する空の領域は、全天の2% 96 分ごとに全天の 90-98%を走査 ソ リ ッ ド ス テ ー ト ス リ ッ ト カ メ ラ X 線検出器 X 線 CCD(32 枚) 各CCD 25mm 角、1024×1024 ピクセル X 線エネルギー帯域 0.5-12keV 全検出面積 200 ㎠ エネルギー分解能 <150eV(5.9keV) 位置分解能 0.025mm 位置決定精度 0.1 度 時間分解能 5.8 秒 空のカバー率 90 度×1.5 度(半値幅)の視野を 2 方向に持つ 瞬時に監視する空の領域は、全天の1.3% 96 分ごとに全天の最大 70%を走査 速 報 能 力 リアルタイムデータ 全観測時間の50%以上の間、データを即座に地上に転送 X 線天体が視野を横切ってから、地上でのデータ解析を経てイ ンターネットで速報するまでにかかる時間は30 秒以下 機上蓄積データ 残りのデータはいったん機上に蓄積される。X 線天体が視野を 横切ってから速報までに要する時間は20 分~3 時間 ユ ー ザ ー 利 用 速報受け取り 突発的な光度変化を起こした天体の情報を一般ユーザーにイ ンターネットを通じて速報 データ利用 一般ユーザーは、Web プラウザを通しインターネット経由で、 任意のX 線天体や空領域の「画像・エネルギースぺクトル・ 光度曲線」を取得 表1.4 MAXI 基本仕様(JAXA)

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2 章 解析

2.1 Sco X-1 の観測データ

MAXI は 2009 年 8 月から現在まで継続して全天の X 線源と観測している。下の図は 2016 年11 月時点での Sco X-1 の観測データを図示したものである。

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MAXI のデータは、理研が公開しているデータをダウンロードしたものを使用する。ダ ウンロードしたデータはExcel で開くことができ、解析には Excel を用いた。

今回はorbit データと day データを解析した。MAXI は 1 日に 16 回地球を公転するので、 1/16 日を 1 点としたものが orbit データ、1 日(16 周分)ごとのデータとしたものが day データとなっている。

データではX 線のエネルギーを 4 つに分けて表示されており、2-20keV を All バンド、 2-4keV を Low バンド、4-10keV を Med バンド、10-20keV を High バンドとする。All バ ンドはLow、Med、High を合わせたものである。

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2.2 解析に使用したデータ

解析期間:55058.03 ~ 55254.72 MJD(修正ユリウス日) 解析データ:orbit データ day データ 今回の解析には、MAXI の観測開始から約 200 日分のデータを取り出して使用した。使 用した全データを図2.2 と図 2.3 に示した。 図2.2 今回解析に使用した 4 つのエネルギーバンドにおける 1 orbit(1 ビン)ごとの観測データ 0 20 40 60 80 100 120 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ -2 s ^ -1 MJD

orbitデータ 2-20kev X線カウント数(All)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ -2 s ^ -1 MJD

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16 図2.2 今回解析に使用した 4 つのエネルギーバンドにおける 1 orbit(1 ビン)ごとの観測データ(続き) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ -2 s ^ -1 MJD

orbitデータ 4-10kev X線カウント数(Med)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ -2 s ^ -1 MJD

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17 図2.3 今回解析に使用した 4 つのエネルギーバンドにおける 1 day(1 ビン)ごとの観測データ 0 10 20 30 40 50 60 70 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

dayデータ 2-20keV X線カウント数(All)

0 5 10 15 20 25 30 35 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

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18 図2.3 今回解析に使用した 4 つのエネルギーバンドにおける 1 day(1 ビン)ごとの観測データ(続き) 0 5 10 15 20 25 30 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

dayデータ 4-10keV X線カウント数(Med)

0 1 2 3 4 5 6 55058.03 55078.03 55098.03 55118.03 55138.03 55158.03 55178.03 55198.03 55218.03 55238.03 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

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2.3 normal モードと flaring モードの区分

orbit データでは X 線のカウント数がばらついている部分を flaring モード、比較的落ち 着いている部分をnormal モードとする。All バンドについて 2 つのモードに分けた後それ ぞれについて解析を行う。normal モードと flaring モードに分けた図を以下の図 2.4 に示 した。

図2.4 flaring モードと normal モードの区分(赤:flaring 青:normal)

0 20 40 60 80 100 120 55055 55060 55065 55070 55075 55080 55085 55090 55095 55100 55105 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

orbitデータ 2-20kev X線カウント数(All)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 55105 55110 55115 55120 55125 55130 55135 55140 55145 55150 55155 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

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図2.4 flaring モードと normal モードの区分(赤:flaring 青:normal)(続き)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 55155 55160 55165 55170 55175 55180 55185 55190 55195 55200 55205 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

orbitデータ 2-20kev X線カウント数(All)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 55205 55210 55215 55220 55225 55230 55235 55240 55245 55250 55255 X 線数 cm ^ 2 s^ -1 MJD

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2.4 normal モードと flaring モードのカラー・カラー図

はじめに、Med バンドの X 線強度の Low バンドの X 線強度の比(M/L)と High バンド のX 線強度の Med バンドの X 線強度の比(H/M)の関係図を作った。orbit データと day データに対する関係図を、図2.5 と図 2.6 に示した。

図 2.5 orbit データ soft-hard グラフ

f2+~f16+は flaring モードの 2 ビンから 16 ビン n2+~n16+は normal モードの 2 ビンから 16 ビン

図 2.6 day データ soft-hard グラフ

df2+~df16+は flaring モードの 2 ビンから 16 ビン dn2+~dn4+は normal モードの 2 ビン、4 ビン

図2.5 と図 2.6 の soft-hard 図と Hasinger & van der Klis の論文によるカラー・カラー 図(1 章 図 1.4 を参照)とを比較すると、normal モードは通常分枝、flaring モードは水 平分枝に対応していることが確認できた。 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 h ar d( H /M ) sot(M/L)

soft-hard(orbit)

f2+ f4+ f8+ f16+ n2+ n4+ n8+ 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 h ar d( H /M ) soft(M/L)

soft-hard(day)

df2+ df4+ df8+ df16+ dn2+ dn4+

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2.5 差分変動率法による normal モードと flaring モードの変動率解析

2.5.1 差分変動率法 差分変動法は、ある時間ごとにX 線の変動がどれだけあるかを調べることができる。あ る時間幅をビンとする。隣り合った2 つのデータで計算したものを 2 ビン、さらに 4 ビン、 8 ビン、16 ビンとして、同様の計算を行う。 図2.7 Excel でのビンごとの解析例 例として、2 ビンでは

+A2(1) =(A1 + A2) 2 +A2(2) =(A3 + A4)

2 隣り合うデータを足し合わせ、平均を取ったものが上記の式である。4 ビン以降では 2 ビン を足したもの、8 ビンでは 4 ビンを足したもの、16 ビンでは 8 ビンを足し合わせたものと して計算する。 さらに、同じ要領で差の計算も行う。 −A2(1) =(𝐴1 − A2) 2 この差分の絶対値を取って、差分変動率を求めると A = ∑| − 𝐴2(𝑖)| 𝐴2(𝑖) 𝑛 𝑖=0 この式はAll バンドの 2 ビンについての差分変動率を求めたものである。同じように Low バンド、Med バンド、High バンドでも 2 から 16 ビンまでの計算を行う。 All バンド値 2 ビン 4 ビン 8 ビン 16 ビン A1 +A2(1) +A4(1) +A8(1) +A16(1) A2 : : : A3 +A2(2)

A4 : A5

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図2.8 差分変動法解析イメージ

図2.8 では 2 ビンを例にとって、和の平均を赤線、差分を矢印として示している。差分は 平均からの振幅を表す。隣り合った2 つのデータを波に置き換える、つまりフーリエ解析 を行っていることと同じである。

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24 2.5.2 解析結果 orbit データにつき、まず、もとの 1 ビン=[1 orbit の時間幅]のデータについて差分変動 率を求めた。続いて、隣り合う2 ビンの平均を取った 1 ビン=[2 orbit の時間幅]のデータに ついての差分変動率、また、その隣り合う2 ビンの平均を取った 1 ビン=[4 orbit の時間幅] のデータについての差分変動率、さらに、その隣り合う2 ビンの平均を取った 1 ビン=[8 orbit の時間幅]のデータの差分変動率を順次求めた。normal モードのデータの All、Low、 Med、High の 4 つのエネルギー領域ごとの結果を示したものを図 2.9、flaring モードのデ ータに対するものを図2.10 に示した。

図2.9 orbit データ normal モードの差分変動率

A~H はそれぞれ All バンド、Low バンド、Med バンド、High バンド

図2.10 orbit データ flaring モードの差分変動率 0.001 0.01 0.1 1 0 1 2 3 4 変動率 1ビン時間幅(orbit)

差分変動率

( orbit normal)

A L M H 4 8 0.001 0.01 0.1 1 0 1 2 3 4 変動率 1ビン時間幅(orbit)

差分変動率

(orbit flaring)

A L M H 8 4

(26)

25

day データについても、1 ビン=[1 day の時間幅]の隣り合う 2 ビンについて差分変動率を 求めた。orbit データと同様に 1 ビン=1day、2day、4day、8day の時間幅としてそれぞれ の差分変動率を求め、4 つのバンドに対する差分変動率の結果を図の 2.11 と図の 2.12 に示 した。day データにおいては、normal モードが続いている期間が短く、normal モードで は1 ビン=4 day、8 day 時間幅に相当する結果が得られなかったため、1 day、2 day まで を解析した。

図2.11 day データ normal モードの差分変動率

dA~dH はそれぞれ All バンド、Low バンド、Med バンド、High バンド

図2.12 day データ flaring モードの差分変動率 0.001 0.01 0.1 1 0 1 2 3 4 変動率 1ビン時間幅(day)

差分変動率(

day normal)

dA dL dM dH 4 8 0.001 0.01 0.1 1 0 1 2 3 4 変動率 1ビン時間幅(day)

差分変動率

(day flaring)

dA dL dM dH 4 8

(27)

26

orbit データから得られた差分変動率と day データから得られた差分変動率を、隣り合う 2 ビンの時間幅の関数として 1 つの図にまとめたものを図 2.13 と図 2.14 に示した。

図2.13 normal モードの day データと orbit データを日の単位で表した差分変動率

図2.14 flaring モードの day データと orbit データを日の単位で表した差分変動率

0.001 0.01 0.1 1 0.1 1 10 100 lo g Y ( 変 動 率) log Δt(日)

差分変動率

(normal)

dA dL dM dH A L M H 1/8日 1/4日 1/2日 1日 2日 4日 0.001 0.01 0.1 1 0.1 1 10 100 lo g Y ( 変 動 率) log Δt(日)

差分変動率

(flaring)

dA dL dM dH A L M H 1/8日 1/4日 1/2日 1日 2日 4日 8日 16日

(28)

27

3 章 まとめと考察

今回の解析にはSco X-1 の MAXI からの観測データを用いた。MAXI が地球を公転する 周期、約90 分を1点(1/16 日)とした orbit データから、X 線数の変動が大きい時期を flaring モード、変動が小さい時期をnormal モードとして区分した。1 日を 1 点(16/16)とした day データは、ほとんどが flaring モードに対応したデータとなっていたため、全体のデー タを解析したものをflaring モードとし、一方、全体のデータから比較的変動の小さい期間 をnormal モードとして解析を行った。

区分したflaring モードのデータと normal モードのデータそれぞれで、Inoue 2011 の論 文による差分変動率法を用いて解析を行った。orbit データでは 1 点(1/16 日)を 2 つずつ まとめた、1/8 日、1/4 日、1/2 日、1 日の 2 ビン時間幅について、差分変動率を求め、day データでは2 日、4 日、8 日、16 日の 2 ビン時間幅について差分変動率を求めた。day デ ータのnormal モードはデータ数が尐ないため 2 日、4 日の時間幅までの解析を行った。 flaring モードと normal モードを区分して、M バンド/L バンドを横軸に、H バンド/M バンドを縦軸とした図(図2.5、図 2.6)を Hasinger & van der Klis の論文によるカラー・ カラー図と比較した。normal モードは通常分枝、flaring モードはフレア分枝に対応してい ることが分かった。

orbit データでは、flaring モードと normal モードで変動率の値に大きく違いが見られた。 これはもとのorbit データの X 線数のばらつきから、結果的に 2 つのモードが得られると確 認できた。day データは、orbit データと比較すると、2 つのモードの変動率の値に大きな 違いはないと考えた。よって、flaring モードと normal モードが現れるのは、一日以下の 時間スケール(orbit データ)であると考えた。 ある時間スケールt0でX 線強度がランダムに変動しているとすると、Inoue(2011)論文 から Y∝Δt:Δt<<t0の時 Y∝ (Δt)-1/2 :Δt>>t0の時 の2 つの状態になることが示されている。図 2.13 と図 2.14 から All バンドを取り出して、 1 日の時間幅を境に、Y∝(Δt)-1/2に近い2 本の線を引くことができた。今回、Y∝Δtの 部分は見ることができなかったが、Y∝Δtの線は図 3.1、図 3.2 のようになると推測した。 このことからt0が1/8 日よりも短い時間スケールと、t0が2 日~3 日の時間スケールの異 なる2 つの時間スケールで X 線の変動の様子が変化していることが分かった。

(29)

28 図3.1 normal モード、All バンドでの Y に比例する線 黒点線:Y ∝(Δt)-1/2 赤点線:Y ∝Δt 図3.2 flaring モード、All バンドでの Y に比例する線 黒点線:Y ∝(Δt)-1/2 赤点線:Y ∝Δt 0.001 0.01 0.1 1 0.1 1 10 100 lo g Y ( 変 動 率) log Δt(日)

差分変動率

(normal)

dA A Y ∝(Δt)-1/2 Y ∝(Δt)−1/2 Y∝Δt Y∝Δt 0.001 0.01 0.1 1 0.1 1 10 100 lo g Y ( 変 動 率) log Δt(日)

差分変動率

(flaring)

dA A Y ∝(Δt)−1/2 Y ∝(Δt)−1/2 Y∝Δt Y∝Δt

(30)

29

謝辞

ご指導下さった井上一先生、小野寺幸子先生、日比野由美先生、並びにアドバイス頂い た同研究室の津田裕也さん、天文研究室の皆様に感謝申し上げます。本研究に至るまでや、 自分の研究分野を考えるにあたって、先生方には何度も相談にのって頂き大変お世話にな りました。ありがとうございました。

(31)

30

参考文献

[1] 吉岡一男・海部宣男 (2013) 『宇宙を読み解く』NHK 出版. [2] 北本俊二 (1998) 『X 線でさぐるブラックホール X 線天文学入門』 ポピュラーサ イエンス. [3] JAXA 「X 線天文学の世界」<http://astro-h.isas.jaxa.jp/challenge/x-ray/>. [4] JAXA 「全天観測装置(MAXI)」<http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/maxi/>. [5] 天文学大辞典編集委員会編 (2007) 『天文学大辞典』地人書館. [6] 小山勝二・嶺重慎 (2007-2010) 『ブラックホールと高エネルギー現象』(現代の天文 学8)日本評論社.

[7] Hajime Inoue, Takehiro Miyakawa , Ken Ebisawa. 2011. A New X-Ray

Spectro-Temporal Analysis Method and Its Application to the Suzaku MCG-6-30-15 Data.

[8] D.Steeghs, J.Casares. 2002. THE MASS DONOR OF SCOPRIUS X-1 REVEALED. [9] G.Hasinger,M.van der Klis. 1989. Two patterns of correlated X-ray timing and

表 1.3  MAXI  基本仕様(JAXA) MAXI には比例計数管を用いたガススリットカメラ(GSC)と X 線 CCD を用いたソリ ッドステートスリットカメラ(SSC)が搭載されている。  図 1.6  左:比例計数管  右:X 線冷却 CCD(JAXA)    2種類のカメラを搭載することで低エネルギーから高エネルギーの X 線を観測できる。 カメラがそれぞれ天頂方向と進行方向を向くように設置されてあり、地球を 1 周する約 90 分で全天の観測がされている。ガススリットカメラ(GSC)は 2~
図 2.1  Sco X-1  day データ X 線カウント数(http://maxi.riken.jp/top/)
図 2.4  flaring モードと normal モードの区分(赤:flaring  青:normal)
図 2.4  flaring モードと normal モードの区分(赤:flaring  青:normal) (続き)
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参照

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