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ラーニングアナリティクス:3.リアルタイムラーニングアナリティクス

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Academic year: 2021

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(1)特集. Special Feature. [ラーニングアナリティクス]. ③リアルタイムラーニング. 基 応 専 般. アナリティクス 島田敬士. 九州大学. ラーニングアナリティクスに基づく学 習支援. ワーク整備や学習者の端末確保の課題があげられる. 近年では無線 LAN 環境が整備された教室が増えた り,端末が安価になり,個人が端末を所有する機会. これまでの学習支援. が増えたりするなど,これらの課題については徐々.  学習管理システムやデジタル教科書システムに代. に解消されつつある.. 表されるデジタル学習環境を容易に構築,利用する.  対面式講義を行う教師は,授業中に学生の状況に. ことが可能になりつつある.それに伴い,学習者の. 目を配り,状況に応じた柔軟な授業運営を求められ. システムアクセスログや,学習活動の記録を収集,. るが,日本の高等教育で特に多く見受けられる大規. 分析,フィードバックを目的としたいわゆるラーニ. 模な対面式講義においては,教師が学習者全体の状. ングアナリティクスに基づく学習支援に関する取り. 況を把握することは困難である.そこで,デジタル. 組みが行われるようになってきた. . 学習環境を活用した対面式講義において,ラーニン.  たとえば,MOOCs に代表されるオンラインコース. グアナリティクスをリアルタイムに実践することが. へのアクセスログを長期間にわたり分析することで,. できるようになれば,学習者の状況を瞬時に分析し,. 学習者のアクセス頻度と成績の関係を分析したり,ド. その結果を現場の教師に対して直接的にフィード. ロップアウトの傾向を検知できるようになったりす. バックしたり,学習者に対して授業内容の理解を促. る.また,デジタル教科書のページめくりやハイラ. 進するための補助資料を提供したりすることが可能. イト機能などの操作ログを分析することで,多くの. になる.. 学習者が困難を感じている内容を特定することも可 能になる.これらの分析結果は,次期の授業デザイ ンの改善や学習支援に資する有用な情報である.. データ収集・分析基盤  本章では,筆者が所属する九州大学において構築. リアルタイム学習支援の可能性. しているデジタル学習環境:M2B(みつば)学習.  これまでの学習支援の多くは,オフライン型の分. 支援システム 1) の概要ならびにリアルタイム学習. 析に基づくものであり,学期終了後に学習ログの分. 支援に関連する内容を紹介する.. 析を行い,次期の学習・教育改善に繋げる取り組み. 806. といえる.これに対して,実際に教育や学習を行っ. リアルタイム学習ログ収集. ている教室で教師や学生を直接的に支援する研究事.   M 2 B( み つ ば ) 学 習 支 援 シ ス テ ム は, 授 業. 例はまだ少ない.その主な要因として,対面式講義. コ ー ス の 管 理 を 行 う 学 習 管 理 シ ス テ ム M o o d l e,. においてデジタル学習環境を活用するためのネット. ポ ー ト フ ォ リ オ シ ス テ ム M a h a r a , な ら びにデ. 情報処理 Vol.59 No.9 Sep. 2018 特集 ラーニングアナリティクス.

(2) ジ タ ル 教 科 書 シ ス テ ム B o o k R o l l の 3 つ のサ ブ. hara については,学習者が当該システム上にアク. シ ス テ ム か ら 構 成 さ れ る . これらのうち,オー. セスしたり,課題提出や小テスト回答などの活動を. プ ン ソ ー ス と し て 提 供 さ れ て い る Moodle,Ma-. 行った際にただちにそのログがサーバ上に記録され る仕組みが提供されている.. ブックマーク,ハイライト, メモ,検索ボタン.  一方,BookRoll は 2016 年に九州大学で開発を 行ったデジタル教科書システムである(図 -1).授 業中に学習者から最も高頻度に利用されるのはデジ タル教科書であることから,できるだけ細かい操作 単位かつ時間粒度でサーバ上にログを収集する仕組. ページ戻し. みが導入されている.具体的には,教材を開く/閉. ページ送り. じる,ページを進める/戻す,ブックマークする, ハイライトを引く,メモを残すなどの操作が行われ ると,その操作内容,操作が行われた教材 ID,ペー. ■図 -1 デジタル教科書インタフェース. ジ番号,タイムスタンプなどが直ちにシステム上に 記録される(図 -2).. 学習活動分析  図 -3 はリアルタイムラーニングアナリティクス システムの全体像である.図の上部は授業前,図の ■図 -2 デジタル教科書操作ログの例. 授業前. 学生. システム. 教師. 予習状況 小テスト結果 予習資料. 予習実施 小テスト回答. 学習ログ. 要約レポート. 分析. 補足説明する ページの提案. ストリーム処理. 授業中. 操作ログ 教師の説明を 聞きながら 教材閲覧. 状況確認. 操作ログ 内容説明. ログ 統合分析. ■図 -3 リアルタイムラーニングアナリティクスシステムの全体像 3. リアルタイムラーニングアナリティクス. 情報処理 Vol.59 No.9 Sep. 2018. 807.

(3) 特集. Special Feature. 下部は授業中のシステムの振舞いを示している.授. 影しながら授業を進める.学生は個人の端末(PC. 業前には学生は次の授業の教科書を読んで予習する. やスマホなど)でデジタル教科書を開き,教師の説. ように求められており,その学習活動はデジタル教. 明を聞きながらデジタル教科書にブックマーク,ハ. 科書システムに記録される.授業開始直前には予習. イライト,メモを残すなどの作業を自主的に行うよ. 状況を確認するための小テストが実施される.リア. う指示されている.リアルタイム分析では,授業中. ルタイム分析では,授業開始直前に授業を受講する. に教師が説明しているデジタル教科書のページと学. 学生の予習達成状況や小テストの正答状況,さらに. 生たちが閲覧しているページの情報が直ちに集計さ. は小テストの結果に応じて補足説明を行う必要があ. れ,その結果は教師の端末上で確認できる.. る資料の推薦が行われる.  授業中,教師はデジタル教科書をスクリーンに投 単位:秒.  事例紹介を行う対象講義は,大学 1 年生向けに. 810. 729. 開講されている情報科学に関する授業であり,157. 閲覧時間. 648. 名の学生が受講している.授業は座学形式で行わ. 567 486. れ,教師は前方のスクリーンに教材を投影しなが. 405. ら内容の説明を進める.受講生は事前に教材に目. 324. を通して予習をしてくるように求められており,. 243 162. 授業開始前には予習の理解度テストが実施される.. 81 0. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10111213 141516171819202122232526 27282930. ■図 -4 受講生全体の予習状況. ページ. は予習資料のページ番号,縦軸は予習時間(受講 受講する受講生全体の予習状況を把握することが. 90 80. できるため,閲覧時間が短いが重要な内容が含ま. 正答率が 低い. 70 60. れているページについては説明を長めに設けるな. 50. どの運用が可能になる.. 40.  授業開始前に実施される小テストの結果は Moodle. 30 20. システムのログを分析することで取得できる.そ. 10 0. 図 -4 は予習達成状況の可視化例である.図の横軸 生全体の総和)である.教師は授業を始める前に. 100. 小テストの正答率. 分析・可視化事例. 1. 2. 3. 4. 設問番号. 5. の結果をグラフ表示する機能は Moodle でも標準. 6. 提供されている.しかし,小テストの各設問に関 設問文. 連する資料の推薦のような高度な機能は実装され ていないため,九州大学では教材の内容と小テス トの設問文との関係を分析し,正答率の低い設問. 設問4に関連するページ. 正答率の低い設問に 関連する資料を自動 的に推薦. に関連する資料を教師に推薦する方法の開発を進 めている 2).図 -5 は受講生全体の小テストの正答 率ならびに正答率の低い設問に関する関連資料の 推薦例である.この例では設問 4 と設問 5 に対す. ■図 -5 予習理解度確認のための小テストの結果と関連資料の推薦例. 808. 情報処理 Vol.59 No.9 Sep. 2018 特集 ラーニングアナリティクス. る正答率が 50 %を下回っているため,その設問に.

(4) 関連する資料が図の下部に推薦されている.実際. 囲まれて表示される.教師の説明ページを多くの. の授業において教師は推薦されたページを長い時. 学生が閲覧している状況であれば,学生は順調に. 間かけて説明し,その結果として,ブックマーク,. 授業のペースについてきていると解釈できる.一. ハイライト,メモ機能の利用者率が上昇している. 方,教師の説明ページよりも下の方に学生の人数分. ことが確認できている.. 布が延びてくるような状況では,多くの学生が授業.  授業中は授業を担当する教師とその授業を受講. のペースについてきていないと解釈できる.そのよ. している学生が現在開いているデジタル教科書の. うな場合には教師は授業のペースを遅くしたりする. ページ情報がリアルタイムに分析される.その結. などの工夫を臨機応変に実施できるようになる.実. 果は 1 分ごとにページを閲覧している学習者の数. 際にリアルタイム閲覧ヒートマップを確認しながら. に応じてヒートマップ風に教師の PC のブラウザ. 授業を進めた場合では,教師の説明ページと学習者. 上に表示される.図 -6 はヒートマップの例を示し. の閲覧ページの同期率(同じページを開いている割. ている.横軸は時間の経過を表し,縦軸はページ. 合)が高く,ブックマーク,ハイライト,メモ機能. 番号を表している.実際のプラグインでは 1 分ご. の利用率が高いことが確認されている.. とに表示が更新されるため,縦 1 列の表示が 1 分.  今後は,リアルタイムフィードバック情報をより. ごとに右方向に増えていく.各時刻とページ番号. 直感的に表示するための工夫,教師や学生への具体. の対応するセルには,該当ページを閲覧中の学生. 的な授業支援情報の提示法などの開発を進める予定. の人数が表示され,そのセルにはヒートマップ風. である.それらの支援情報を有効活用することが教. の色が塗られる.つまり,人数が多いほど赤系の. 育現場の適応的な改善に繋がることをエビデンスと. 色,人数が少ないほど青系の色が付与される.ま. して残せるようにリアルタイムラーニングアナリ. た教師が説明をしているページに対しては,その. ティクスの取り組みを続けていく.. ページを閲覧中の学生の人数を示す数字が赤枠で ページ番号. 多. 学生の閲覧ページ 教師の閲覧ページ. 少 時刻. ■図 -6 リアルタイムページ閲覧ヒートマップ. 参考文献 1) Ogata, H., Taniguchi, Y., Suehiro, D., Shimada, A., Oi, M., Okubo, F., Yamada, M. and Kojima, K. : M2B System : A Digital Learning Platform for Traditional Classrooms in University, The 7th International Conference on Learning Analytics & Knowledge Understanding(2017). 2) Shimada, A. and Konomi, S. : A Lecture Supporting System Based on Real-Time Learning Analytics, 14th International Conference Cognition and Exploratory Learning in Digital Age (CELDA 2017), pp.197-204(2017). (2018 年 5 月 2 日受付). 島田敬士(正会員) [email protected] 1980 年生.2007 年九州大学博士後期課程修了(博士(工学) ) .九 州大学助教を経て,2013 年より同大准教授.パターン認識,ビッグ データ解析,学習分析の研究に従事.. 3. リアルタイムラーニングアナリティクス. 情報処理 Vol.59 No.9 Sep. 2018. 809.

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