一 般演 題 〈研 究〉 口演9DV・ 子 ど も虐待 予 防 33
家族機 能 か らみ た育児 で の親 の衝動感 情 とその背 景
-親 は 「
キ レた」 時、 ど う対処 してい るの
か?-鳥取大学医学部保健学科 ○鈴 木 康 江 〃 前 田 隆子 〃 片 山 理 恵 〃 佐 々木 くみ 子 〃 西 村 正 子 I.緒 言 最近,毎 日の よ うに 「虐 待 」 に関 す る報 道 が され て お り,様 々 な施 設 で対 策 が講 じられ て い るが,減 少傾 向が 認 め られ な い.「 虐 待 」 当事 者 達 は,多 くの 場 合 事 実 を認 識 せ ず,「 しつ け」の一 環 と して 実施 して い る と言 うこ とが 多 い.ま た,そ の時 の気 分 に つ い て は 「キ レた」 とい う表 現 す る こ とが 多 い.こ の よ うな 「キ レ る」 とい う衝 動感 情 が 出現 す る場 面 は どの よ うな状 況 下 に あ り,ま た 「キ レた」 時 に は どの よ うな対 処 行 動 が 実 践 され て い る の か,さ ら に個 々 の 対処 行 動 の 差 は どの よ うな背 景 因 子 が 存在 す るの か につ い て,家 族 機 能 か らみ て分 析 した の で 報 告 す る. II.方 法 1)調 査 対 象:Y市 に在 住 す る0歳 ∼5歳 ま で の 乳幼 児 が い る保 護 者,年 齢 構 成 比 に 準 じて 3000件 を無 作 為 抽 出.2)調 査 方 法:無 記 名 の 自記 式 質 問 調 査 票 とプ ライ バ シー 保 護 な どの 倫 理 的 配慮 を記 した 文 書 を同封 し,郵 送 に よ り配 布お よび 回 収 した.3)調 査 期 間:平 成16 年7月1日 ∼30日.4)調 査 内 容:家 族機 能(家 族APGAR),家 族 構 成,「 キ レた 」 頻度, 場 面,対 処 行 動,「 しつ け」 と して実 施 して い る内容.5)分 析 方 法:SPSS Ver.11,01J for Windows(SPSS社)を 使 用 し,Peasonの 相 関係 数 を用 い た. 「家 族APGAR」:家 族 の構 成 員 が5つ の質 問 に3段 階 で 回答 す る.各 々 に0∼2点 が 与 え ら れ10点 満 点 で 採 点 す る.6点 以 下 を家 族 機 能 障 害 と判 断 す る. 本 稿 で は 「キ レ る」 とは,抑 圧 す る こ との で き な い衝 動 感 情 を い う. III.結 果 調 査 用紙 の 回収 率 は44.5%で,表1の よ うな年 令 ・性 別 構 成 で あ った.回 答 は 父親 が3.0%,母 親 が95.3%,そ の他1.7%で あ った.こ の うち65.5%が この3ヶ 月 の 中で 「キ レた 」経 験 が あ る と回 答.対 処行 動 と して,25%は 何 も しな い が,39%は 「人 に あた る」17%は 「物 に あ た る」 対 処 行 動 を示 し,「人 に あ た る」対 象者 は配 偶 者,子 どもで あ った.ま た,「 キ レた 」場 面 に 付 い て 自由記 載 した もの を分 類 す る と,最 も多 い の が,子 ども 表1構 成の統制 が 効 かず,言 うこ と を聞 か ない 場 面,次 に親 自 身 の心 身 の 状態 が不 安 定 な 時,家 族 関係 が悪 い時 で あ っ た.「しつ け」と して実 施 してい る 内容 で 最 も多い の が,「軽 く叩 く」次 いで 「感 情 的な 言葉 」「強 く叩 く」で あった.少 数 で は あ るが, 図1年 齢別,家 族APGAR6点 以 下の 比 「外 に放 置 」2.6%,「 食 餌 を 与 え ない 」0.5%と い う回答 もあ った.家 族 機 能 につ い て の調 査 で6点 以 下 は 全 体 の46.4%が6点 以 下 を 占め,年 齢 別 の 家 族 機 能 点 数 を 図1に 示 す. この家 族機 能 と家 族 構 成 人 数 との 間 に は有 意 に 正 の相 関が,子 どもの 年 齢 との 間 に は負 の 相 関が あ った.ま た,「キ レた」回 数 に つ い て は子 どもの 年齢,親 自身 が 実 践 して い る近 所 と の挨 拶 の程 度 との 間 には 有 意 に 正 の相 関が,家 族 構 成 人 数 との 間 に は 負 の相 関 が有 意 に あ っ た.し か し,家 族 機 能 との 相 関 関 係 は認 め られ な か っ た. IV.考 察 親が「 キ レた 」 とい う感 情 を もつ の は 半数 以 上 が経 験 し,特 殊 な感 情 で は な く,育 児 の 中 で 日常 的 に多 くあ る場 面 で あ る こ とが わ か った.こ の感 情 は 子 どもの年 齢 高 く,小 家 族 な ほ ど,ま た親 自身 が 実 践 して い る近 所 との挨 拶 が希 薄 な ほ ど 「キ レた 」回 数 が 増 した.小 家 族, コ ミュニ ケ シ ョンが近 隣 と充 分 に取 れ な い家族 に お いて,「 キ レる」回 数 が 多 くな り,小 家 族 が孤立す る こ との もつ 問 題 を示 して い る と考 え る.ま た 家 族機 能 は家 族 数 が 増 え る ほ ど障 害 されな い.こ れ らか らも,家 族成 員 間で の 相 互扶 助 関係 は育 児 に お い て重 要 で あ り,少 子 化 の中で は 「キ レる」 こ とを減 少 させ る こ とや 家族 機 能 を維 持 して い く こ とが 困難 にな って き てい るの で はな い だ ろ うか と考 え る.和 田 のの3歳 児 を対 象 に した 調査 で は家 族 機 能 障 害 と された割 合 が36.8%で あ り,今 回 の3歳 児 で は47.0%あ り,調 査 年 度 に よ る もの か,あ るい は地域 性 に よ る もの か,さ らに 検 討 を要 す る. V.結 論 親 が 「キ レた 」時,ど う対 処 して い るの か,家 族 機 能 と対 処行 動 お よびそ の背 景 に つ い て 調査 した.親 が 「キ レた 」 とい う感 情 を もつ の は 日常 的 に多 くあ る場 面 で あ り,子 どもの 年 齢 が 高 く,小 家 族 に な るほ ど頻 度 が 増 した.ま た,家 族 機 能 は家 族 数 が多 い ほ ど障 害 され て お らず,家 族 成 員 間 で の 相 互 扶 助 関 係 は 育児 に お い て重 要 で あ る と考 え る. 引用文献
1) Gabriel S. A personal for a family function test and its use by physicians. J Fam Prac 1978 ; 6: 1231-1239.
2) Mark M. The use of the family APGAR in screaaning for family dysfunction in a family practice center. J Fam Prac 1987; 24: 394-398
3) 和 田紀 子: 3歳 児 健 診 を利 用 した 児 に み られ る 問 題 と家 族 機 能 の 評 価. 小 児 保健 研 究. 59 .1.2000.25-34
一 般 演題 〈研 究〉 口演9DV・ 子 ども虐 待 予 防 34
わが国の看護職教育におけるDVに
関す る
教育の実態 と教員意識調査
神戸市看護大学看護学部 ○ 高 田 昌 代 大阪市立大学医学部看護学科 友 田 尋 子 I.緒 言 わ が 国 で は2000年 に 制 定 され た 「DV防 止 法 」で 、医療 関 係 者 の役 割 と して被 害 者 の 承認 後 の報 告 と情 報 提 供 の努 力義 務 が 明記 され た 。DV被 害 者 は そ の 暴 力 に よ り身 体 的 な らび に 精 神 的影 響 を受 け 、死 に 至 る ほ どの重 大 な 健 康 障 害 をお こす 問題 を被 る こ と とな る。 臨 床 にお い て 、 医療 従 事 者 の 多 くがDV被 害 者 に 遭遇 す る に もか か わ らず 、 医 療 関 係 者 の DV被 害 者 へ の対 応 は 十 分 で は な い こ とが 明 らか で あ る。 そ の 原 因 の ひ とつ と して 教 育 の未 整 備 が 考 え られ た。 そ こで 、 わ が 国 に お け る看 護 職 教 育(保 健 師 助 産 師 看 護 師 教 育)に お け るDVに 関す る教 育 の 現 状 と教 員 の 意 識 を 明 らか にす る こ とを 目的 に 着 手 した。 II.方 法 2003年6月 に 、全 国 の看 護 系 大 学 、看 護 系短 期 大 学 、保 健 師 お よび 助 産 師 の 専 修 学 校291 校 の 教 員792人 を対 象 にUSA・ マ サ チ ュ ー セ ッ ツ州 のSHARED Projectが 作 成 した調 査 票を 日本 語 に翻 訳 した 調 査 票 に よ る郵 送 調 査 を行 っ た。 調 査 票 の依 頼 文 に 、 倫 理 的 な 配 慮 に つ い て記 載 し、返 信 を も って 研 究 へ の承 諾 とみ な した 。回 収 は 、学 校 毎 に一 括 して 返 送 と した。 今 回 、DVと は、 「現 在 、あ るい は過 去 に親 密 な 関係 に あ っ たパ ー トナ ー に 対 して 暴 力 を振 る うこ とを言 う。 典 型 的 に は 、 身 体 的 、 精 神 的 、性 的 暴 力 、 脅 し、 強 制 を と もな う コン トロ ー ル のパ タ ー ンで 、通常、時間の経過 とともに程度がひ どくなる もの。DVは 人 種 、社 会 経 済 的 地 位 、能 力 、性 的 志 向 に 関わ りな くお こ る もの。」 と定 義 した。 III.結 果 1.回 収 数 お よ び背 景 有 効 回 答 数(率)は 教 員349人(43.6%)、 学 校(以 下 、 大 学 ・短 期 大 学 ・専 修 学校 を一 括 し て 学 校 とす る)153校(52.2%)で あ っ た。 全 体 の うち母 性 看 護 ・助 産 学 を専 門領 域 と して い る教 員 は129人(36.9%)を 占め た。 2.講 義 の 実施 状 況 講義 の 中 で 少 しで もDVに 関 す る 内容 を入 れ て い る 教員 は99人(28.4%)で 、学 校 別 で は83 校(54.2%)で あ った 。 そ の 中 で も、大 学 で の 実施 率 が64.3%、 専 門 領 域 別 で は 、 母 性看 護 ・助 産 学 の 教 員 が45.3%と 最 も多 か っ た。 母 性看 護 ・助 産 学 領 域 で 内容 を入 れ て い る科 目は 、 概
論 関係 、 ケ ア を 学 ぶ 科 目、 ウ ィ メ ン ズヘ ル ス関 係 の科 目等 必 須 ・選 択 科 目か か わ らず 、 多 様 で あ った。 教 員 の 教 育 方 法 は 、 特 別 講 義 を組 ん で い る とこ ろ も あ る が 、89.9%が 通 常 の 講 義 の 中で 取 り入 れ て い る。 講 義 で は 討 論 や ロー ル プ レイ な どの 工夫 を し、 教材 と して 、 ビデ オ な どの視 覚 教 材 や 読 み物 を利 用 して い た。 そ れ らの 講義 内 でDVに 関す る 内 容 の 占 め る 時 間 は、DVだ け を取 り扱 っ た講 義 で は平 均60.0分 、 講義 の 中 でDVに も触 れ る程 度 の場 合 は 平 均26.7分 で あ っ た。 講 義 内容 は 、 半数 以 上 の 学 校 が 講 義 の 内 容 に含 ん で い る の は「DV一 般 的用 語 ・概 論 」 「心 理 ・社 会 的 な影 響 、パ ワー とコ ン トロー ル な ど」 「夫 ・恋 人 か らの 性 暴 力 」 であ り、DV防 止 法 の な か で 定 め られ て い る情 報 提 供 で あ る 「シ ェル タ ーや 被 害 者 援 護 サ ー ビス の説 明 とそ の利 用 方 法 」 に 関 して は 半 数 に 満 た な か った 。 これ らの 内容 を今 回 の 対 象 学 校152校 か ら見れ ば 「通 報 義 務 、DV防 止 法 の解 釈 」 は24.2%(37校/153校)の 学校 の 学 生 が学 ぶ にす ぎ な い こ とに な る。 また 、 ス ク リー ニ ン グや 記 録 に つ い て は 、18.1%の 学 校 で講 義の 中で 教 育 して お り、対象 学 校152校 か ら見れ ば9.8%の 学 生 が 学 ん で い る こ とに な る。講 義 の なか で 、 記録 に つ い て 教 えて い るの は 、 教 員7名 、6校 で あ っ た。 この7名 の うち6名 は母性 看 護 ・助 産 学 領 域 の 教 員 で あ った 。 3.実 習 の 実施 状 況 DV被 害 者 に対 応 す るた めの 臨 床 実 習 は 、 精 神 科 看 護 実 習 にお い て 受 け持 ち患 者 がDV被 害者 で あ った た め にお こな った と回 答 した1名 の み で あ った。 4.教 員 の満 足度 お よび 必 要性 現在 のDVに 関 す る教 育 に満 足 してい る教 員 は14.2%に す ぎず 、母 性 看 護 学 ・助 産 学 の 専 門領域 の教 員 の満 足 度 が 最 も低 か った。 必 要性 は 、教 員 全 体 の85.6%が 必 要 で あ る と回 答 し てお り、 母性 看護 学 ・助 産 学 領 域 の 教 員 が 最 も高 か っ た。 一 方 、 教員 のDVに 関す る 学 習 経 験 は全 体 の35.2%で あ っ た。 IV.考 察 医療 関係 者 はDVが 保 健 医 療 シス テ ム と して の 対応 を 必 要 とす る重 要 な 健 康 問 題 で あ る こ とを認 識 し、DV被 害 者 に対 す る 正 しい理 解 を もち 、ス ク リー ニ ン グ、安 全 の た めの ア セ ス メ ン ト、介 入 ・対応 、 記録 とい う役 割 を もつ。 今 回 の調 査 で は 、学 校 間 の 差 は あ るが 約 半数 の 学校 でDVに 関 して 何 らか の 教 育 が な され て い た。 しか しな が ら、そ の 内 容 は 一 般 的 な理 解 に とどまっ て い る こ とが 多 く、 医療 関係 者 と して の役 割 に ま で 時 間 を割 く こ とが で きず 、教 員 は現 状 で満 足 して い な い状 況 が推 測 で き た。 教 員 と して は 、母 性 看 護 ・助 産 学 の 教 員 が他 の 領域 の教 員 に 比 べ 関 心 、行 動 力 と も高 く、DVを 女性 の健 康 問題 と して捉 えた 教 育 が 必 要 で あ る と考 え て い る こ とが示 唆 され た。 一 方 、 教員 のDVに 関す る学 習 経 験 は 低 く、 今 後 、 実 践 に結 びつ く教 育 が で き る よ うな ツ ール や プ ログ ラ ム 、教 員 研 修 が必 要 と考 え る。 V.結 論 DVに 関 す る教 育 は 、健 康 問題 と して一 部 の教 員 に よ っ て看 護 職 教 育 に 取 り入 れ は じめ て い る こ とが 明 らか に な っ た。 しか し看 護 職 教 育 全 体 のDVに 関す る教 育 の 状 況 は 十 分 で は な く、今 後 、 実践 に結 び つ く教 育 を 考 え て い く必 要 が あ る。 日本助産学会誌 第18巻第3号(2005.3) 145
一般 演 題 〈実 践 報 告 〉 口演9 DV・ 子 ども虐待 予 防 35
当院 で の周 産期 にお け るDV被
害者 へ の取 り組 み
大阪大学医学部附属病院分娩育児部 ○ 長 岡 淳 子 〃 河 村 有 亜 〃 田中 春 美 〃 産婦人科外来 今 田 恭 子 〃 吉 岡 キ ヨ子 I 緒言 2001年 にDV防 止 法 が 制 定 され 、DVは 人権 侵 害 で あ り犯 罪 で あ る こ とが 明 確 に され た が 、 DV被 害 者 の 多 くが助 け を求 め る こ とをそ の 加 害者 か ら妨 害 され た り、助 け を求 め る気 力 さえ 失 うよ うな状 況 に置 かれ て い る場 合 が 多 い の が現 実 で あ る。当院 で は2002年 以 降 にDVの 被 害 を受 けた妊 産婦 の分 娩 が 数 例続 き、 具 体 的 な支 援 や 援 助 の方 法 を 考 え る必 要 性 を感 じた 。 そ こで の反 省 を踏 ま え検 討 した結 果 、当 院受 診 の全 妊 婦 を対象 に外 来 か らDVス ク リー ニ ン グ を開 始 す るに 至 っ た。 そ の 経緯 と発 見 され た被 害者 へ の支 援 方 法 に つ い て 報 告 す る。 II 実 践 内 容 1.DV被 害 者 の 分 娩 を経 験 し、 対 応 の 必 要性 を 認識 す る ま で 実 際 の 一 症 例 は 、妊 娠12週 に夫 か ら暴 力 を受 け鼓 膜 破 裂 し医 師 の診 察 中 に 自 らDVの 被 害 を告 白 した。 そ の後 精 神 的 に追 い詰 め られ 自傷 行 為 に及 ん だ。 他 症 例 で は 、 妊 娠 中 に夫 の 暴 力 か ら脳 挫 傷 に な り当院 救 命 救 急 セ ン ター に搬 送 され た ケー ス もあ っ た。 い ず れ も被 害 が 表 面化 して お りDV被 害者 で あ る こ とが 明 らか で あ っ た。 これ らの経 験 か ら、担 当 した 産 科 医 と外 来 ・分 娩 育 児部 助 産 師(以下 病 棟 助 産 師)はDV被 害 者 の情 報 を 医師 ・助 産 師 で 共 有 し周 産 期 のハ イ リス ク要 因 と して 対応 を検 討 す る必 要 性 が あ る と考 えた 。 そ こで2003年 に は周 産期 医 療 に 関 わ る全 ス タ ッフ(産科 医 、小 児 科 医 、外 来 ・病 棟 助 産 師 、産 婦 人 科 病棟 助 産 師 ・看 護 師)を 対象 にDVに 関 す る勉 強 会 を2回 実 施 した。 ま た 2003年4月 か らは継 続 的 にDV支 援 の 対応 を検 討 す る グル ー プ(DVワ ー キ ン グ グル ー プ 、以 下DVWG)を 産 科 医 ・病 棟 助 産 師 ・外 来 助 産 師 で組 み 、月1回 の定 期 ミー テ ィ ング を 行 って い る。 2.DVス ク リー ニ ン グの 実 際 DV被 害者 の 多 くはそ の 被 害 を 告 白で き な い で い る こ とは緒 言 に も述 べ た 。周 産期 は 被 害者 で あ る妊 婦 が お よそ1年 間 にわ た り頻 回 に 医 療機 関 を受診 す る。 この機 会 に 自 ら告 白 で き な い妊 婦 が そ の 事 実 を明 らか に で き る よ うな対 応 が必 要 で あ る と、DVWGが 検 討 を進 め る 中 で ま とま っ た。 そ こで 受 診 全妊 婦 を対 象 に2003年6月 か ら妊 娠 期2回 、 産 褥 入 院 中1回 、産 褥 1ヶ 月 健 診 時1回 の 計4回 のDVス ク リー ニ ン グ を開 始 し、ス ク リー ニ ン グ を実 際 に行 う助 産 師 向 けのDV対 応 マ ニ ュアル を作 成 した。ま た 、ス ク リー ニ ン グ用 紙 は診 療 録 に綴 じ込 み 、用紙 に は妊婦 名 を記 載 してい な い。 ス ク リー ニ ン グ の広 報 は な るべ く人 目に つ か ず 、被 害者 で あ る妊 婦 が1人 で 見 る こ とが で き る よ うにす るた め 、産 婦 人 科 外 来 の トイ レと内 診 室 にポ ス ター を掲 示 した。また そ の ポ ス ター 横 に 「産婦 人科 外 来 」とだ け 記載 され た カ ー ドを設 置 し、 そ のカー ドを助 産 師 に渡 せ ば 声 に 出 さず と もDVの 相 談 で あ る こ とが わ か る よ うに 工 夫 した。 3.周 産 期 のDV支 援 シス テ ム と被 害 者 へ の 対 応 この ス ク リー ニ ン グ で妊 娠 中にDVの 事 実 が判 明 した症 例 は、 週1回 行 われ る周 産 期 カ ン ファ レン スで ハ イ リス ク症 例 と して外 来 担 当 医が 情 報 を提 供 す る。 この カ ン フ ァ レン ス に は 担 当医 以外 の 産 科 医 ・小 児 科 医 ・病棟 助 産師 が 出席 す るた め、 情 報 の 共有 が時 間外 入 院 や 分 娩 時 の対応 に も役 立 っ て い る。 また 、 産褥 入 院 中産 科 医 や助 産 師 の 関 わ り、 ス ク リー ニ ン グで DVの 事 実 が判 明 した 場 合は 、病 棟 受 持 ち助 産 師 が 中 心 とな って 小 児 科 医 ・外 来 助 産 師 に連 絡 し、そ の 後 の対 応 に役 立 つ情 報 を共 有 して い る。 この他 、DVWGは 定期 ミー テ ィ ン グで 取 り組 みの状 況 を分 析 し、 改 善 を加 え なが ら この活 動 の充 実 を図 って い る。 最 近 で は、 増 加 す る外 国人妊 婦 向 けの ス ク リー ニ ン グ用 紙(英 語 版 ・中国 語 版)を 作成 し、通 訳 役 で あ る夫 の 同 席 がな くて も質 問 が で き る よ うに なっ た。またDVに 対 す る認 識 を深 め るた め 、受 持 ち助 産 師 が 症 例 のDVサ マ リー を行 うた め の用 紙 を作成 した。 このス ク リー ニ ング に よ り判 明 した被 害 者 に は告 白事 実 は守 秘 され る こ とを約 束 し、母 子 の安全 が確 保 され る方 法 を被 害 者 の 意 思 を尊 重 しなが ら共 に 考 え て い る。 現 時 点 で 我 々 が 医 療 施設 と して行 え る こ とは① 妊 婦 か らの暴 力 を告 白す る電話 が か け られ て きた と きは 来院 を 指示 し、場 合 に よっ て は入 院 して も ら う、② 分 娩 後 の 入 院期 間 を数 日延 長 す る、 ③ 産褥 健 診 の名 目で産 婦 人 科 外 来受 診 予 約 を行 い 、夫(も し くは パ ー トナー)と 別 行 動 が で き る環境 を 設定す る、④ 小 児 科 医 と連 携 し、 新 生 児健 診 の名 目で 小 児科 外 来受 診 予 約 を行 い 新 生児 の 安 全 を確 保す る、 ⑤助 産 師 が地 域 の保 健 師 と連 絡 を取 り訪 問依 頼 をす る、 な どで あ るが いず れ も被害者 の 了解 を得 て 事例 に合 わせ た 対応 を とっ てい る。 配偶 者 暴 力 支 援 セ ン ター な どの 連 絡 先や 緊急 時 対 応 の説 明 も個 別 に 行 ってお り、 これ らの こ とが加 害 者 に知 られ る こ との な い よ うに と付 け加 えて い る。 III 結 果 約1年 半 の 間 に750名 の妊 婦 に ス ク リー ニ ン グを行 った 結 果 、27名(3.6%)の 被 害 者 を 見 出 した。 現 在 は 妊婦 を対 象 にス ク リー ニ ン グ を行 って い るが 、 ポ ス ター を見 た 婦 人 科 患 者 か らも相 談 の電話 が外 来 にか か る こ とが あ る。 IV 考 察 と今 後 の課 題 日本 にお け るDVに 対 す る対 策 は 欧 米 に 比べ 遅 れ て お り、被 害 に苦 しむ 女 性 が どれ ほ どい る のか 実態 を把 握 で き な い で い るの が 現状 で あ る。始 めて 間 もな い我 々 の取 り組 み で は あ るが 、 この ス ク リー ニ ング が な けれ ば発 見 し得 な か った 症 例 が ほ とん どで あ る。 しか し被 害 者 の 話 を じっ く りと聞 くに は マ ンパ ワー の 不 足 を感 じる。DV被 害者 へ の 取 り組 み が病 院 挙 げ て の も のに なれ ば 、 マ ンパ ワー 不 足 の解 消 だ け で な く多 くの被 害者 の支 援 に繋 が る と考 え る。 また DVに 対 す る 医療 者 間 の 認識 の差 異 を埋 め る努 力 は 、DVWGが 計 画 し行 っ て い こ うと考 え て い る。 日本助産学会誌 第18巻第3号(2005.3) 147