• 検索結果がありません。

恥と罪悪感の研究の動向

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "恥と罪悪感の研究の動向"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2008年 第16巻 第1号 49-64 2008, Vol. 16, No. 1, 49-64

恥と罪悪感の研究の動向

Recent research on shame and guilt

Ritsuko Azami

University of the Sacred Heart, Tokyo 聖心女子大学   薊   理津子

特 集

  In previous studies, emotions of shame and guilt were considered to be similar; however, recent empirical studies show that they are clearly different. In other words, shame is maladaptive whereas guilt is adaptive. In this paper, the author reviews recent studies on shame and guilt. The paper includes characteristics and functions of shame and guilt, measurement methods, antecedent factors such situation and cognition, and cross-cultural research. In addition, the future applications of studies on shame and guilt are discussed from the following two perspectives. The first is moral education, which is based on the assumption that anticipated shame and guilt deter deviant behavior. The second is humiliation. Recent findings employing clinical studies indicate that shame is linked to narcissism and domestic violence. Humiliation has been discussed as a theme relevant to shame and violence, and is important in interpersonal relationships and social problems. Therefore, further studies regarding humiliation are suggested.

Key words: shame, guilt, self-conscious emotions  近年、自己意識的感情(self-conscious emotion)に注目が高まっており、それらの機 能や特徴について論じられる機会が増加してき た ( e . g . , Lewis, 1992  高 橋 監 訳   1997; Tangney & Salovey, 1999;永房,2006)。恥 (shame)と罪悪感(guilt)を巡る問題もこ の領域における重要な研究テーマの一つである。 Ferguson(1999)によると、恥と罪悪感は誕 生してすぐに見られる怒りや、悲しみなどの他 の感情とは質的に異なっていて、社会的、自己 再帰的(self-reflexive)、自己意識的、もしく は自己評価的であると述べている。つまり、こ の2つの感情は、内省的な特徴を持ち、何らか の基準に基づいて自己を評価する働きがある。 特に、恥や罪悪感は社会的苦境場面(social predicament)において生起しやすい。社会的 苦境場面とは、他者に迷惑をかけたり、規範を 逸脱してしまったり、人前で失態を曝してしま うような場面のことであり、集団や社会への適 応が問われる危機的場面である。これらの感情 はそうした危機を知らせる警告信号として働き、 自己モニタリングの過程を促し、所属の欲求 (Baumeister & Leary, 1995)を満たすよう、 集団や社会への適応へと個人を導くと考えられ る(Haidt, 2003)。そのため、これらの感情は 道徳的感情としても位置づけられている。

1 本稿を作成するに当たり、ご指導頂いた聖心女子大学菅原健介教授、有益なご助言をくださった大阪大学大学院人間科学研 究科佐々木淳専任講師に感謝致します。また、審査者の先生方にご指摘を頂きましたこと深く感謝の意を表したいと思います。

(2)

 このように、従来、道徳的感情や内省的な感 情として一まとめに議論されてきた恥と罪悪感 であるが、最近の研究から、恥と罪悪感は全く 異なる感情であり、恥は不適応的機能を持ち、 一方、罪悪感は適応的機能を持つという知見が 提 起 さ れ て い る ( e.g., Tangney, 1995a, 1995b;Tangney & Dearing, 2002)。こう した指摘は、自己意識感情の心理的機能を明ら かにするという純粋学問的興味の観点からだけ でなく、道徳教育や人事管理などの応用的領域 においても極めて興味深いテーマと考えられる。 そこで、本論では、恥と罪悪感との性質や機能 の差異に関する内外の諸研究を概観し、方法論 的な問題点も含め、今後の研究の方向性につい て考察してみたい。  なお、恥という概念に相当する英語はshame と embarrassment であり、類似した感情とし て見なされることが多いが、Buss(1980)に よると、前者は道徳的な意味合いを含む強い感 情であり、後者は shame に比べて弱い感情で、 日常でしばしば感じるものとされている。特に、 shameは guilt と比較されることが多いことか らも、embarrassment よりも shame は道徳的 意味合いが強いといえる。本論では道徳性の意 味を含む恥を扱うため、欧米での研究について はshameに関する研究を中心に紹介する。なお、 shameの辞書的な訳語としては、“恥、恥ずか しさ、羞恥心、恥辱、不名誉”であるので、本 論ではshameを恥と表記して、以降論じていく。 1.恥と罪悪感の不適応的・適応的機能  恥と罪悪感は一般に類似した感情であると見 なされることが多かったが、その理由について Tangney & Dearing(2002)は以下の2点を 挙げている。第一に、直接的な観察が困難であ る内的現象であること、第二に、いずれも自己 への内省的評価と関連した感情であり、その相 違が明確でないという点である。しかし、これ ら2つの感情を詳細に検討した研究からは、以 下のような相違が指摘されている。  臨床家である Lewis(1971)は自身の臨床経 験から恥と罪悪感の相違について次のように述 べている。恥は罪悪感よりも苦痛な感情で、身 が縮むような感覚、肩身が狭い感覚、無価値感、 無力感が付随し、無価値で非難されるべきもの として自己をとらえ、その結果として逃避行動 を促す。一方、罪悪感は、核となるアイデンティ ティーもしくは自己概念に影響を与えない。そ のため、恥よりも苦痛な感情ではないが、逸脱 行為について緊張、自責、後悔を抱くので、謝 罪 な ど の 修 復 行 動 が 促 さ れ る 。 こ の Lewis (1971) の 知 見 の 実 証 を 目 的 に 、 Tangney (1993)は恥と罪悪感の苦痛の程度や、それら が生じた際の感覚について調査を行い、Lewis (1971)の知見通り、恥は罪悪感よりも苦痛を 伴い、劣等感、身が縮むような感覚、他者から 見られている感覚、逃避願望が高いことを示し ている。Table1は Tangney によって整理さ れた恥と罪悪感の相違点である。  さらに、Tangney は恥と罪悪感を個人特性 としてとらえ、その特徴や機能を比較する一連 の研究を行っている。すなわち、独自に開発し た尺度によって恥や罪悪感を感じやすい程度を 測定し、これと他の個人特性との関連を調べる ことで、怒りや攻撃性、精神的健康、共感性、 さらには道徳性の側面から、恥と罪悪感がどの ような特徴や機能を持っているのかを検討して いる。それらの結果を概観すると以下のように なる。  ま ず 、 怒 り や 攻 撃 性 に つ い て で あ る が 、 Tangney, Wagner, Fletcher & Gramzow (1992)は、恥を感じやすい人間ほど、他人に 責任をなすりつけ、怒りを感じやすく、敵意な どの攻撃的な認知をしやすいが、対照的に、罪 悪感を感じやすい人間は、他人に責任をなすり つけず、怒りを抑制し、敵意などの攻撃的認知 を抱かない傾向を示している。それに加えて、 恥を感じやすい人間は怒りの制御ができない、 という側面も見出された(Tangney, Wagner, Barlow, Marschall, & Gramzow, 1996)。次 に、精神的健康に関しても、Tangney, Wagner, Gramzow(1992)は恥を感じやすい人間は抑

(3)

うつ、不安、敵意、不安障害、妄想的観念、精 神病傾向などの心理症状を有しているが、一方 で、罪悪感はそれらの心理症状とほとんど関係 が認められず、敵意などのいくつかの不適応的 な項目との間に負の相関が認められたとしてい る(Tangney & Dearing, 2002)。さらに、 Tangneyは共感性についても検討している。 共感性は人間関係を円滑に進めていくのに役立 つものであり、適応のひとつの指標となる。 Tangney(1991,1994,1995a,1995b)に よると、共感性は、恥を感じやすい人間ほど感 じにくく、罪悪感を感じやすい人間ほど感じや すいことが示された。  TangneyはKohlberg(1969)やPiaget(1952) が示す道徳的認知よりも、道徳的感情こそが行 動に直接関係していると論じ、恥と罪悪感の道 徳的役割についても考察している(Tangney & Dearing, 2002)。この研究では児童期から 青年期までの縦断調査を行い、第5学年時の恥 と罪悪感の感じやすさが、18-19歳時のどのよ うな行動を予測するかを検討した。その結果、 第5学年時の恥の感じやすさは、18-19歳時に おける、犯罪、危険な性行為、薬物の使用、薬 物・飲酒運転を予測し、建設的な地域への奉仕 への関与を抑制していた。一方、第5学年時の 罪悪感の感じやすさは、18-19歳時における、 避妊、良識のある運転、大学への適応、地域へ の貢献を予測し、さらに、自殺未遂やヘロイン の使用、薬物・飲酒運転、犯罪を抑制すること が示された。つまり、恥は非道徳的な行動を導 き、罪悪感は道徳的行動を導くという明確な傾 向が見出されている。以上のように諸研究をま とめると、恥は自己にとっても、対人関係や道 徳的側面にも不適応的で、罪悪感は適応的だと いうことになる(Tangney & Dearing, 2002)。  本邦では、有光が一連の研究から、恥は怒り や外的帰属と正の相関、罪悪感はそれらとは負 の相関が見られ(Arimitsu, 2002)、恥は向社 会的行動を抑制し、罪悪感は違反行為を抑制、 向社会的行動を促進することを見出しており (有光,2002b)、さらに、罪悪感が他者志向 的で共感性と関係している(有光,2006)こと を示している。また、薊・余語(2003)は日本 人 大 学 生 を 対 象 に 、 Tangney, Wagner, Fletcher et al.(1992)の追試を行っているが、 その結果、Tangney, Wagner, Fletcher et al.(1992)とほぼ同様の結果が認められ、恥 を感じやすい人間ほど怒りを感じやすく攻撃性 が高いこと、一方で、罪悪感を感じやすい人間 ほど怒りを感じず、攻撃性が低いことが認めら れている。以上の研究から、本邦においても Tangney & Dearing(2002)とほぼ一致する 結果が得られている。  しかし、Ferguson(1999)は Tangney が一 連の研究で示した「恥が不適応的で罪悪感が適 応的である」という知見に関して、そもそも、 これらの研究では恥の不適応的な側面と罪悪感 の適応的側面しか扱われておらず、罪悪感の不 適応的な性質や恥の適応的な性質を示す特性も 存在する可能性は否定できないと批判している。 実際、罪悪感の不適応的特徴が認められた研究 もあり、たとえば、Harder(1995)は恥だけ でなく罪悪感も精神病理と関係していることを 示している。さらに、Ferguson, Stegge, Miller & Olsen(1999)によると、罪悪感は場面想 定法によると適応的であると示されるが、半投 影法を用いると不適応的な特徴が見られると指 摘している。加えて、DSM- Ⅳでは抑うつの特 徴に強い罪悪感があると記されており、病理群 を対象とした研究を行えば、罪悪感が不適応的 に働く可能性も考えられる(Orth, Berking & Burkhardt, 2006)。  Tangney の知見を支持する研究の多くは、 恥と罪悪感を特性として扱ったものであり、状 態としての恥や罪悪感の研究は極めて少ない。 恥を感じやすい人が不適応的だということと、 恥という感情を感じることが不適応につながる ということは別な議論が必要である。さらに、 Tangneyの一連の研究では、自身が作成した TOSCAという尺度を用いたものがほとんどで ある。このTOSCAに関しては次に述べるよう な妥当性に関する疑問もあり、こうした測定

(4)

ツールの問題も含め、恥が不適応的で罪悪感が 適応的であるという知見については、今後もさ らに検討していく必要があるだろう。 2.恥と罪悪感の測定法  恥と罪悪感はいずれも社会的苦境状況から生 じることもあり、従来、類似した概念として扱 われてきた。確かに両者に共通点はあるものの、 Tangneyの一連の研究において、恥と罪悪感 は異なる機能を持つことも示されている。それ ゆえ、恥と罪悪感の特徴を明らかにするには両 者を測定し比較しながら検討していくことが必 要である。有光の一連の研究(有光,2001a, 2001b,2002b,2006;Arimitsu, 2002)では、 恥と罪悪感を特性として測定し、罪悪感を測定 する質問紙として自身が作成した罪悪感状況別 尺度(有光,2002a)と、恥を測定する質問紙 として状況別羞恥感情尺度(成田・寺崎・新浜, 1990)を使用している。これら有光による一連 の研究で用いられている質問紙以外にも、恥を 測定する質問紙(e.g., 永房,2003)、および、 罪悪感を測定する質問紙(e.g., Kugler & Jones, 1992)はそれぞれ開発されており、そ れらを用いた多くの興味深い研究がある。例え ば、永房(2003)では、恥を同調不全、社会規 律違反、視線感知、自己内省の4つの下位尺度 に分け、それらと道徳意識との関係性を検証し ている。また、Kugler & Jones(1992)は罪 悪感を特性罪悪感、状態罪悪感、道徳規範の3 つの下位尺度に分類し、それらと対人関係もし くは非対人関係の中での逸脱行為との間の結び

つきを明らかにしている(Jones, Kugler & Adams, 1995)。しかし、恥と罪悪感は類似し ている感情として論じられていることをふまえ ると、2つの感情を個々に検討するよりも、両 者を比較しながら検討すべきであり、さらに共 通した条件の下で両者を同時に測定できる尺度 がある方が有用性が高い。以下では、恥と罪悪 感を比較検討する測定法を挙げる。  恥 と 罪 悪 感 を 測 定 す る 代 表 的 質 問 紙 に 、 Test of Self-Conscious Affect(TOSCA; Tangney, Wagner, & Gramzow, 1989; Tangney, Dearing, Wagner, & Gramzow, 2000)があるが、これは特性としての恥や罪悪 感を測定する質問紙である。TOSCA は恥と罪 悪感を感じるであろうシナリオを提示し、恥と 罪悪感という単語を使用せずに、そこで生じる 認知の特徴を調べることによって、恥を感じる 傾向、また、罪悪感を感じる傾向を測定する。 この尺度は、作成者である Tangney 自身が定 義した「恥は自己、罪悪感は行為に焦点化され る」という区別に基づき作成されている。たと えば、“仕事をしていて、あなたは計画を立案 するのをギリギリまで先延ばしにし、結局、計 画はうまくいきませんでした。”というシナリ オが提示される。そして、それに対する反応と して、自分は仕事ができない無能な人間だと 思う、私は計画をやり損なったことに関して 叱責を受けても仕方ないと思う、という項目を 評定する。この場合、が自己に焦点を当てて いるので恥、が行為に焦点を当てているので 罪悪感に相当する。 Table1 恥と罪悪感の相違(Tangney, 1995b 安藤訳 2002) 恥 罪悪感 評価の対象 全体的自己 特定の行動 苦痛の程度 相対的に強い 相対的に弱い 現象的経験 無価値感、無力感 緊張、自責、後悔 自己の操作 観察する自己と観察される自己の分離 自己は統合された状態 自己への影響 全体的な価値低下による自己評価の減損 全体的な価値低下を伴わない 他者への関心 他者による評価への関心 他者への影響に対する関心 反事実的過程 自己の一側面の心理的取り消し(undoing) 行動の一側面の心理的取り消し 動機的側面 逃避への欲求 告白・謝罪・償いへの欲求

(5)

 TOSCA は Tangney の特殊な定義を前提に しているものであり、実際に恥と罪悪感を測定 しているか疑問を呈する見方もある。TOSCA の妥当性と信頼性については欧米と本邦の両方 に お い て 確 認 さ れ た と す る 研 究 ( Woien, Ernst, Patock-Peckham, Nagosgi, 2003;菊 池,2003)がある一方で、批判的な考察もある。 岡田(2005)はTOSCAの項目の詳細な内容分 析を行っているが、その結果、結局、恥の項目 は自尊心の低さ(低下)を、罪悪感の項目は社 会的スキルの高さを測定しているにすぎないと 指摘している。また、薊(2006a)は TOSCA の自己焦点(恥の反応)と行為焦点の項目(罪 悪感の反応)に加え、「恥ずかしいと思う」、「罪 悪感を感じる」という直接的な表現の項目を組 み入れ、前者と後者とが一致するかを検討した。 すると、対応する項目間の相関は必ずしも高く はなく、シナリオによっては全く関係が認めら れないものもあったことが報告されている。 TOACAはあくまで、Tangney による恥と罪 悪感の定義を前提にした尺度であり、この定義 の妥当性も含めた検討の余地があるように思わ れる。なお、研究数はTOSCAよりも少ないが、 TOSCA以外にも恥と罪悪感の特性を測定する 尺度は作成されている。Personal Feelings Questionaire(PFQ;Harder &  Lewis, 1987;Harder, Cutler & Rockart, 1992)も そのひとつである。PFQ は恥と罪悪感のそれ ぞれに関連した特徴や感覚を表す形容詞を示し、 どれくらいの頻度でこれらを経験するかを評定 させるものである。項目例としては、“無力で、 麻痺したような感覚”などが恥に相当し、“後悔、 深い反省”などが罪悪感に相当する。また、菊 池・有光(2006)がTOSCAを参考にして、日 本人大学生向けの自己意識的感情尺度を作成し ている。この尺度はTOSCA同様、シナリオを 提示して認知の特徴を調べる形式であり、罪悪 感状況別尺度(有光,2002a)と状況別羞恥感 情尺度(成田他,1990)を基にシナリオが作成 されている。  一方、状態としての恥と罪悪感、すなわち、 ある特定の状況で個人がどの程度、恥や罪悪感 を 感 じ た か を 測 定 す る 尺 度 と し て 、 State Shame and Guilt Scale(SSGS;Marschall, Sanftner, & Tangney, 1994)がある。この 尺度の項目は、恥(“私は穴があったら入って 隠れたい”など)と罪悪感(“私は後悔している、 深い反省をしている”など)の感覚の描写から 構成されている。また、薊(2006b,2007)は 類義語辞典、また、菅原(1992)や樋口(2000) から、恥と罪悪感に類する用語を複数抜粋し、 特定の場面において、それらをどの程度感じた かについて評定を求めている。これは、本邦に おける恥の下位情緒(菅原,1992;樋口, 2000)に留意したものであり、恥と罪悪感の表 現用法の多様性が考慮されている。そして、こ れらの感情について因子分析した結果、恥は屈 辱感と羞恥感の2つに分かれ、それらに罪悪感 を加えた3因子を見出した。具体的には、屈辱 感の項目は「屈辱的」「体面が傷つく」などで あり、羞恥感の項目は「恥ずかしい」「決まり 悪い」などであり、一方、罪悪感の項目は「罪 悪感を感じる」「申し訳ない」などである。こ の他、Orth et al.(2006)や Breugelmans & Poortinga(2006)も恥と罪悪感の状態尺度を 作成しているが、いずれも、両感情に伴う身体 感覚、行動傾向、内的思考を項目化し、指標と したものである。なお、恥と罪悪感の指標は相 関が高いので、他の指標との関連性を分析する 際にはそれぞれの影響を除くために偏相関分析 を 用 い る こ と が 多 い ( e.g., Tangney & Dearing, 2002)。

3.恥と罪悪感を喚起する要因  恥と罪悪感の議論は上述したような特徴や機 能についての研究が多く、それらを喚起する要 因 に つ い て は あ ま り 検 討 が さ れ て い な い (Tracy & Robins, 2004)。以下では、恥と 罪悪感を喚起する要因として、状況的要因とセ ルフ・ディスクレパンシー理論からの説明を含 めた認知的要因を紹介する。

(6)

3-1.状況的要因  文化人類学者である Benedict(1946 長谷川 訳 1972)は、日本を恥の文化(shame-culture)、 欧米を罪の文化(guilt-culture)と規定してい る。恥の文化とは他者の批判を念頭に置くこと によって行動が律せられる社会であり、罪の文 化とは道徳の絶対的基準から、人間の内側にあ る良心により律せられる社会を意味する。つま り、同じ逸脱行為を犯したとしても、恥は他者 の存在があってはじめて生じる公的(public) 感情であり、罪悪感は他者の存在を必要としな い私的(private)感情であるという。恥と罪 悪感を区別するのは他者の存在であるという考 え方である。  この Benedict(1946  長谷川訳  1972)の考 えを支持する見解は多い。Ausubel(1955)は、 他者に否定的評価を受ける状況では恥が、一方、 個人が自己の道徳的基準に一致していないと感 じる状況では罪悪感が生じると論じている。ま た、Harder(1995)は外的なものによって価 値付けられると恥が生じ、内的なものに価値付 けられると罪悪感が生じると述べている。これ らの知見は、いずれも恥が公的で、罪悪感が私 的なものであるという前提に立っている。実証 研究においても、Smith, Webster, Eyre & Parrott(2002)が上述の知見を支持する結果 を得ており、道徳的であるかないかに関わらず 公での露出(public exposure)の状況では、 罪悪感よりも恥を強く感じていたと報告されて いる。しかし、公的か私的かの状況的な差によっ ては恥と罪悪感を区別できないとする見方もあ る。 Tangney, Marschall, Rosenberg, Barlow, & Wagner(1994)によれば、子ど もと大人に恥、罪悪感を感じる場面を自由記述 させたところ、他者がその場にいなくても、想 像の中で他者の存在を感じれば恥を感じている ことを明らかにした。また、Tangney, Miller, Flicker, & Barlow(1996)は成人に恥と罪悪 感の経験を尋ねているが、公的状況においても 恥と罪悪感の両方が生じることを示している。 さらに、Keltner & Buswell(1996)も同様

な研究を行い、恥が罪悪感よりも公的状況と強 く関係する証拠は見られなかったと報告してい る。また、Tangney, Stuewig, & Mashek (2007)は、先の Smith et al.(2002)で見ら れた恥と公的露出の関係は、公的状況というよ りも他者から受ける評価に注目した結果である と考えており、恥と罪悪感が生じる状況はどち らも基本的には社会的であると述べている。  恥と罪悪感の喚起を別な状況的要因によって 区 別 し よ う と す る 議 論 も あ る 。 Keltner & Buswell(1996)の研究よると、恥は自分自身 もしくは重要他者の基準への適合の失敗と関係 し、他方、罪悪感は他者を害する、または義務 を犯す行動と関係していることがと示されてい る。これは恥が重要他者から否定的な評価を受 ける状況で生じ、罪悪感が道徳的逸脱状況で生 じ る と い え る 。 ま た 、 Olthof, Ferguson, Bloemers, & Deji(2004)は恥に特異的な状 況として性役割と一貫しない行動(Ferguson, Eyre, & Ashbaker, 2000)などに注目する。 これらの恥のケースは自己像に関する一定の基 準には抵触しているものの、その基準には必ず しも道徳的な要素が含まれていない。このこと から、Olthof et al.(2004)は、恥と罪悪感 がアイデンティティーの次元と道徳性の次元で 区別されるという道徳性アイデンティティー (morality-identity)アプローチを提言して いる。すなわち、恥は他者からの評価に関連す るような社会的アイデンティティーが脅威を受 ける状況で生じ、一方、罪悪感は自身が道徳的 違反を犯す、または道徳的に悪い結果をもたら す状況のときに生じると考える。Olthof et al.(2004)はアイデンティティーと道徳性を 操作したシナリオを提示し検討を行った結果、 12歳以上の子どもにおいて、このアプローチが 正しいことを確認した。これまで恥に特異的な 状 況 と し て 、 性 役 割 と 一 貫 し な い 行 動 (Ferguson et al., 2000)の他に、太りすぎ、 もしくは、痩せ過ぎのような身体や外見に対し て恥を感じやすい(Wilson, 2001)、ことが指 摘されているが、Olthof et al.(2004)のア

(7)

プローチからは、これらも説明が可能である。  また、本邦でも、薊(2007)は道徳基準と優 劣基準の基準を設定し、それらが自己意識的感 情とどのように関連するかについて検討を行っ ている。この研究では恥を屈辱感と羞恥感に分 け、それらに罪悪感を加えた3つの感情を扱っ ているが、その結果、逸脱行為を犯し、他者に 叱責を受けるという同一の状況においても、道 徳的に低い評価を受けたと感じた場合には罪悪 感が喚起され、優劣基準で低い評価を受けたと 感じた場合には屈辱感が喚起されることを見出 している。この他に、恥のみを扱った研究であ るが、成田他(1990)や樋口(2000)が恥の喚 起される状況を整理している。成田他(1990) は、かっこ悪さ、自己不全感、気恥ずかしさ、 性の4つの状況を見出した。また、樋口(2000) は成田他(1990)や菅原(1992)などを基に、 公恥系状況、私恥系状況、対人緊張系状況、照 れ系状況、対人困惑系状況、性的状況の6つに 分類している。なお、罪悪感が喚起される状況 については、有光(2002a)が検討しており、 他傷、他者配慮不足、利己的行動、他者への負 い目の4つの状況が見出された。 3-2.認知的要因  恥と罪悪感は状況の違いが反映されたもので はなく、生じた問題への自己の関わり方をどう 認知するかによって分岐するとの見方がある。 先にも述べたように、Lewis(1971)やTangney (e.g., 1995a,1995b;Tangney & Dearing,

2002)によると、恥は本人の注意が全体的自己 (global self)に当てられた時に感じられる ものであり、そのため不適応な自己機能、つま り短絡的な逃避や攻撃行動を導きやすいと考え る。一方、罪悪感は行動に焦点が当てられるた め良心の呵責、後悔の感覚が生じるので、謝罪 や修復行動のような補償的、適応的な行動が促 されると論じている(Baumeister, Stillwell & Heatherton, 1994;Tangney, 1991,1995a, 1995b)。この自己と行為の焦点化については、 Niedenthal, Tangney, & Gavanski(1994)

が実証を試みている。この研究では、まず、社 会的苦境場面が描かれたシナリオを提示するが、 一方の群には、そのシナリオのような苦境場面 に遭遇しないための理想的な“自己”のあり方 を想像させ、もう一方の群には、理想的な“行 為”のあり方を想像させた。たとえば、“試験 に失敗した”というシナリオを提示し、“自分 がもっと賢かったらよかった(自己のあり方)” もしくは“もっと勉強すればよかった(行為の あり方)”というように想像させる。自己を想 像させた群は、行為を想像させた群よりも恥を 感じやすく、逆に、行為を想像させた群は自己 を想像させた群よりも罪悪感を感じていた。  こうした知見に対して、Olthof et al.(2004) は、特定の行為に焦点を当てることで罪悪感が 生じるという説明では、逸脱行為を伴わないで 生じる罪悪感の説明ができないことを指摘して いる。たとえば、死亡した仲間、もしくは自分 よりもさらに被害を受けている他者に対して、 自分が生存しているために感じる生存者の罪悪 感(survivor guilt;Baumeister  et  al., 1994)などは、自らの行為とは関係なく罪悪感 を覚えるものである。

 Tracy & Robins(2004)はLewis(1971) と Tangney & Dearing(2002)の自己もしく は行為かの焦点化という区別を、変化させるこ とが難しい全体的帰属か、変化させることが可 能な特定の側面への帰属の問題として位置づけ、 帰属のタイプの相違が恥と罪悪感をそれぞれ導 くことを示唆した。それによると、恥は、能力 のような内的で変化させることが難しい自己全 体への帰属によって生じ、一方、罪悪感は努力 のような内的で変化させることが可能な自己の 特定の側面への帰属によって生じると考えた。 しかし、その後、Tracy & Robins(2006) がこの仮説の検証を試みたところ、恥と罪悪感 を状態としてとらえるか、特性としてとらえる かで帰属のタイプが異なることを示しており、 特性としての恥は外的帰属と正の相関が認めら れる(Tangney, Wagner, Fletcher et al., 1992)が、状態としての恥は内的帰属と正の相

(8)

関が認められたと報告している。  なお、恥と罪悪感が喚起される要因について は、セルフ・ディスクレパンシー理論(Self-discrepancy theory;Higgins, 1987)からも 論じられている。この理論によると、恥は現実 自己(actual self)と他者が自分に望む理想 自己(ideal self)との不一致により生じ、そ こには重要他者からの否定的評価を受けたとい う想像が含まれる。他方、罪悪感は現実自己 (actual self)と義務自己(ought self)と の不一致により生じ、道徳的弱さ、無価値であ る感覚が生じるとする。この見解については、 支持する研究がある一方で(Orth, et al., 2006)、恥は全てのタイプの自己の不一致と関 係しており、罪悪感では全てのタイプの自己の 不一致と関係が認められなかったとする報告 (Tangney, Niedenthal, Conver, & Barlow, 1998)もあり、恥と罪悪感に関するセルフ・ディ スクレパンシー理論の適用可能性については、 今後、さらなる研究の積み重ねが必要と思われ る。 4.国際比較文化研究  恥と罪悪感は複雑な感情であり、恥と罪悪感 が区別されていない言語が存在することからも、 文化間の相違があるのではないかと指摘されて いる。また、多くの研究が欧米で行われている ため、欧米で得られた知見が普遍性を持つのか どうかは確認が必要である。有光(2002c)は 恥と罪悪感の特徴や機能の違いについて、自身 の一連の研究結果と米国の研究結果とを比べて おり、2つの感情が喚起される状況については 本邦の方が多面的であるが、機能についてはほ とんど相違がないと述べている。また、恥を感 じる状況について、中里・松井(2007)は日本、 アメリカ、トルコの中高生を対象に比較してい る。それによると、トルコの中高生は日本とア メリカの中高生よりも、多くの状況で恥を感じ やすいが、“自分だけみんなと違うことをして しまったとき”のような仲間に対する恥は日本 の中高生はアメリカやトルコの中高生に比べて 高いことが示された。さらに、アメリカの中高 生はトルコと日本の中高生よりも“自分で立て た目標が達せられなかったとき”のような自身 の基準に対して恥が高いことが見出された。こ の研究の結果は日本、アメリカ、トルコの中高 生が恥を感じる状況が多面的であるという点で 有光(2002c)の知見と一貫している。  上述した特徴や機能、状況を扱った研究以外 に 、 恥 と 罪 悪 感 の 構 成 概 念 に つ い て 、 Fontaine, Luyten, de Boeck, Corveleyn, Fernandez, Herrera, Ittze´s, & Tomcsa´nyi (2006)がベルギー人、ハンガリー人、ペルー 人を対象として検討しているが、いずれの文化 圏においても恥と罪悪感が区別され、またそれ ぞれの構成概念がほぼ等しいことを示している。 加えて、社会的苦境状況において生じる身体感 覚や認知的特徴などが、個人内反応-個人間反 応(intrapersonal-interpersonal)の次元と ともに、罪悪感-恥の次元として明確に分岐す ることを見出している。また、Breugelmans & Poortinga(2006)は、ララムリ・インディ アンとジャワ人でも同様の二次元が認められる ことを示し、非西欧圏においても恥と罪悪感が 区別されるとともに、概念の内容もほぼ等しい ことを見出している。しかし、詳細に検討する と、西欧文化圏では恥の特徴であるはずの「無 力感と矮小化した感覚」が、このサンプルにお いては罪悪感の方に強く関連しており、西欧文 化においては罪悪感の特徴であった「将来の行 動を変化させる」という特徴がここでは恥に関 連する特徴として位置づけられていた。このこ とから、Breugelmans & Poortinga(2006) は非西欧文化圏の人にとって、恥は建設的社会 的行動と関係し、罪悪感はネガティブな自己感 情と関係する可能性を指摘している。 5.今後の展望  恥と罪悪感の特徴や機能、喚起要因が示され る中、応用面でも様々な視点からの研究が行わ れつつある。以下では、モラル教育と屈辱感と いう2つの観点から、今後の恥と罪悪感に関す

(9)

る応用的研究の展望について論じる。 5-1.恥と罪悪感とモラル  恥や罪悪感がどのような行動を促進するかと いう問題を扱った研究が多い中、恥や罪悪感の 行動抑制効果に注目した研究も存在する。特に、 行動に対して恥や罪悪感を予期することの効果 については、逸脱行為の抑止という点から注目 されている。たとえば、Hynie, MacDonald & Marques(2006)は HIV の感染防止という視 点から、避妊具を使用しなかった場合において 予期される恥と罪悪感の影響を検討している。 その結果、恥と罪悪感を感じるだろうと予測す る人ほど、避妊具の使用意図が高くなっていた。 Tangney & Dearing(2002)は、罪悪感のみ が道徳的行為を促進すると論じているが、この 研究では恥も罪悪感と同様に逸脱行為を抑止す る可能性を持つことを示している。また、菅原・ 永房・佐々木・藤澤・薊(2006)は、駅前など の公共場面において迷惑行為を行うことへの恥 と罪悪感を感じる程度を尋ね、それが実際の行 為経験とどう関連するかを検討している。それ によると、罪悪感は迷惑行為と関係が認められ ず、むしろ、恥が迷惑行為を抑止することが示 された。さらに、中里・松井(2007)は、恥が 子どもの非行を抑制するという知見を示してい る。これらも、Tangney & Dearing(2002) の、恥が逸脱行為を促進し、罪悪感が道徳的行 為の促進に影響を与えるという知見とは異なり、 むしろ正反対の結果である。

 Tangney & Dearing(2002)は、恥が不適 応的機能をもち、罪悪感が適応的機能をもつと いう主張に沿い、恥を減少させて罪悪感を増大 させていくといった子どもの養育目標を提案し ている。しかし、上記の知見は、モラル教育に 関して罪悪感だけでなく恥の効果にも注目すべ きであることを示している。従来から恥が道徳 的に働くと考えられていた本邦においては、子 どもに恥を経験させることで、教育に役立てよ うという議論がある。飛田(2005)は、子ども のしつけの中で、どの行動が恥ずかしいかと理 解させることで、社会的生活を身につけさせる 必要性を提言している。だが、一方で、岡野 (2002)は恥を感じるということは子どもたち の行動に強く影響を与えるので、それが過小で も過剰でも問題が生じる可能性を示唆している。 子どもが感じる恥だけでなく、養育者が経験す る恥が、子どもに及ぼす影響も重要である。久 崎(2005)は、質問紙調査と実験室実験の結果 から、子どもが逸脱行動をしたときに恥を経験 しやすい養育者の子どもは、修復行動が遅い傾 向が見出された。また、恥という感情は多様で あり、罪悪感に限りなく近い、内省的、建設的 な恥の意識も存在する。薊(2006b)では恥を 屈辱感と羞恥感に分けて検討しており、屈辱感 は不適応的であったが、羞恥感は他者配慮のよ うな適応的機能をもつことも示された。恥とい う感情をモラル教育に用いるには、こうした恥 の多様性にも配慮し、それぞれの機能を明らか にしていく必要があるだろう。 5-2.屈辱感  臨床研究において、恥は自己愛と関係がある ことが指摘されている(Lewis, 1987;岡野, 1998)。岡野(1998)は、“恥は自己愛的な欲求 の破綻から生まれる感覚である”と述べており、 恥と自己愛は表裏一体の関係であると示唆して いる。Gramzow & Tangney(1992)は恥と 罪悪感、自己愛との関係性を明らかにしており、 自己愛の下位因子によって異なる結果を得てい る。すなわち、罪悪感は自己愛のどの側面とも 関係が認められないが、恥は自己愛の中の不適 応的側面と関係しているというものであった。  ま た 、 家 庭 内 暴 力 に つ い て 、 Wallace & Nosko(2003)は夫の妻に対する暴力的で虐 待的な行動の核に恥の存在を指摘している。家 庭内暴力を行う夫は境界性人格障害など人格的 問題を有することが多い。こうした夫が恥を感 じるような事態におかれると、自己の欠陥を認 識させられ、強い苦痛を味わうことになるとい う。その際、恥への防衛的なスクリプトとして、 怒りと暴力が用いられる。暴力によって自己の

(10)

弱みを隠し、相手を物理的、精神的に縛りつけ、 自己を中心とする軌道から妻が去らないという 保証を得ることで、妻との分離に関する予期、 もしくは、懸念を低減する(Wallace & Nosko, 1993)。  このような恥と暴力に関連するテーマへの関 心が高まる中、少しずつ論じられるようになっ てきた感情に“屈辱感(humiliation)”がある。 屈辱感についての研究も、恥の一側面として、 やはり、臨床研究の中で論じられることが多 かった。たとえば、Lansky(1987)は、家庭 内暴力を論じるに当たって、恥を感じることに よって生じた怒りが背景にあることを指摘し、 この怒りを屈辱感として論じている。また、連 続殺人のような社会問題の根底にも屈辱感が大 きな役割を果たしているという指摘もある。連 続殺人を犯した人は自分に屈辱感を与えた相手 を憎んでいるために、その相手と似た特徴を持 つ人間(たとえば、髪の色や髪型が似ている、 など)を、憎んでいる相手と同一視してしまう ことで殺人を犯す。しかし、殺した人間は、自 分に屈辱感を与えた人間ではないので、特徴が 似ている人間に再び会うと殺人を繰り返すとい う(Hale, 1994)。  自己意識的感情における屈辱感の位置づけは まだ十分でないものの、Gilbert(1998)によ ると、屈辱感は恥とは異なる性質があるとし、 Figure1のように恥と屈辱感の類似点と相違 点を整理している。これによれば、他者によっ て自分が傷つけられたという焦点化が屈辱感の 問題であり、そのために屈辱感を感じた人間は 憎しみの感情が生じやすく、自分を傷つけた他 者への報復を望み、攻撃的になりやすいとして いる。また、薊(2007)は、恥と罪悪感を表現 する言葉について因子分析を行った結果、罪悪 感の因子に並び、恥に関連する用語が屈辱感と 羞恥感の因子に分けられることを見出している。 また、薊(2006a,2006b)は、他者に迷惑を かけた場面で屈辱感を覚えるほど、多くの不適 応的特徴を示すようになることを報告している。 それによると、屈辱感を強く感じるほど、迷惑 をかけた相手だけでなく、周囲にも責任を転嫁 する傾向が生じ、そのため怒りが生じやすくな る。さらには、他者への配慮を示しにくく、迷 惑をかけた相手に謝罪して関係を修復するよう な傾向は認められず、こうした状況からの逃避 への願望も高かった。  屈辱感はまた企業という組織での人間関係に も大きな影響を示す。Fitness(2000)は職場 での怒りを喚起するエピソードを調査し、屈辱 感は部下よりも、上司や同僚によって喚起され ることを見出し、また、屈辱感は個人が人前で 批判されたり、からかわれた場合に生じやすい が、職場において、そうした批判は上司や部下 からよりも同僚から受けるケースが多いことを 報告している。さらに、恥は生産性を減少させ ると同時に、職場の機能不全を引き起こしたり、 離職を促す可能性を示唆する知見(Poulson, 2000)があるが、これに加え、屈辱感は批判し た同僚への報復を意図させることも考えられる。 企業の人間関係は、上司と部下の地位の上下関 係や、同僚との関係、あるいは部署間での利害 関係などが絡み合う特殊な場である。こうした 場の中で、自己の社会的立場や尊厳を守るには 複雑な配慮や戦略が必要となり、自己意識的感 情もまたそうした人間関係の影響を大きく受け ることになる。  さらに、屈辱感は人間の尊厳に関わる感情と して、個人対個人の問題だけでなく、現代の社 会問題、国際的政治問題の見地からも、極めて 重大で強力な感情だと考えられる。最近では、 国際的政治問題の視点からの知見も得られてお り、第一次世界大戦において敗戦したドイツが 第二次世界大戦に至るまでの経緯やソマリアの 内戦の深刻化について、屈辱感が根底にある問 題として論じられている(Lindner, 2006a)。 また、イラク戦争後のイラクにおける混沌とし た状況は、アメリカがイラク国民の屈辱感を考 慮しない政策を取っているために生じていると 示唆されている(Lindner, 2006b)。このよ うに、屈辱感は単に内的な体験に留まらず、個 人の行動や対人関係、あるいは社会のあり方に

(11)

も極めて強い影響を与える感情の一つと言える。 それにも関わらず、屈辱感に関する実証研究が 少ないのは残念である。自己意識的感情の領域 において、今後の研究の発展が期待される対象 と言えよう。 引 用 文 献 安藤清志(2002).罪悪感と社会的行動(Ⅰ)罪悪 感による行動のコントロール 東洋大学社会 学研究所年報,34,23-39.

  (Ando, K. (2002). Guilt and social behavior: (Ⅰ) Persuasion by eliciting guilt feelings. Annual of the Institute of Social Relations, Toyo University, 34,23-  39.)

有光興記(2001a).罪悪感,羞恥心と性格特性  性格心理学研究,9,71-86.

  (Arimitsu. K. (2001a). Guilt, shame/em-barrassment, and their personality corre-lates. Japanese Journal of Personality, 9, 71-86.)

有光興記(2001b).罪悪感,恥と精神的健康との

関係 健康心理学研究,14,24-31.

  (Arimitsu. K. (2001b). The relationship of guilt and shame to mental health. Japanese Journal of Health Psychology, 14, 24-31.)

有光興記(2002a).日本人青年の罪悪感喚起状況 別の構造 心理学研究,73,148-156.   (Arimitsu. K. (2002a). Structure of guilt

eliciting situations in Japanese adoles-cents. Japanese Journal of Psychology, 73, 148-156.) 有光興記(2002b).罪悪感,羞恥心と問題行動の 関係 日本心理学会第66回大会発表論文集, 891.   (Arimitsu, K.) 有光興記(2002c).恥と罪悪感 教育と医学,50, 72-79.   (Arimitsu. K.)

Arimitsu, K. (2002). Guilt, shame, embarrass-ment, anger, and the self. Proceedings of Ⅹ Ⅹ Ⅴ  International congress of ap-plied psychology, Singapore.

Figure1 恥と屈辱感の共通点と相違点(Gilbert, 1998, p.261 Figure11.2より改変)

᜝࡜⨥ᝏឤࡢ◊✲ࡢືྥ

Recent research on shame and guilt

Figure1㸬᜝࡜ᒅ㎯ឤࡢඹ㏻Ⅼ࡜┦㐪Ⅼ㸦Gilbert, 1998, p.261 Figure11.2 ࡼࡾᨵኚ) ᝏཱྀࡸ⿕ᐖ࡟ᑐࡍࡿᩄឤࡉ ⮬ᕫ㜵⾨ࡢ㢪ᮃ 」㞧࡞ឤ᝟ ቑຍࡋࡓぬ㓰 ཯ⱄ ෆ㒊࡬ࡢᖐᒓ ᝏ࠸࣭Ḟ㝗ࡢ࠶ࡿ⮬ᕫ ຎ➼ឤࡢෆⓗឤぬࢆక࠺ ⮬ᕫព㆑ࡢ㧗ࡲࡾ ୙ᙜ࡞ฎ⨨࡬ࡢ᫂☜࡞ឤぬをకࢃ࡞࠸ ᚟ㆶࢆᙉࡃồࡵ࡞࠸ እ㒊࡬ࡢᖐᒓ ᝏ⪅࡜ࡋ࡚ࡢ௚⪅ ຎ➼ឤࡢෆⓗឤぬをకࢃ࡞࠸ ௚⪅࡬ࡢᙉ࠸↔Ⅼ ୙ᙜ࡞ฎ⨨࡬ࡢᙉ࠸ឤぬࢆక࠺ ᚟ㆶࢆᙉࡃồࡵࡿ ඹ㏻Ⅼ ᜝ ᒅ㎯ឤ

(12)

有光興記(2006).罪悪感,羞恥心と共感性の関係  心理学研究,77,97-104.

  (Arimitsu. K. (2006). Guilt, shame/embar-rassment, and empathy. Japanese Journal of Psychology, 77,97-104.)

Ausubel, D. P. (1955). Relationships between shame and guilt in the socializing process. Psychological Review, 62,378-390. 薊理津子(2006a).恥と罪悪感の機能の検討 

─ Tangney の shame, guilt 理論を基に─.聖 心女子大学大学院論集,28,77-96.

  (Azami, R. (2006a). Psychological func-tions of shame and guilt in Japanese: Differentiating haji and zaiakukan. Seishin Essays, 28,77-96.) 薊理津子(2006b).アルバイト場面における屈辱 的恥,羞恥感,罪悪感の機能.日本社会心理 学会第47回大会発表論文集,336-337.   (Azami, R.) 薊理津子(2007).屈辱感・羞恥感・罪悪感の関連 要因の検討─他者要因と道徳基準・優劣基準 の視点から探る─.聖心女子大学大学院論集, 29,89-105.

  (Azami, R. (2007). Psychological factors that differentiate humiliation, embarrass-ment and guilt. ─A research of situa-tions: Close relationships or strangers and standards: Morality-nonmorality and superiority-inferiority.─ Seishin Essays, 29,89-105.)

薊理津子・余語真夫(2003).自己意識感情(恥・ 罪悪)と怒り・攻撃性との関係 日本感情心 理学会第11大会発表論文集,15.

  (Azami, R. & Yogo, M.)

Baumeister, R. F. & Leary, M. R. (1995). The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation. Psychological Bulletin, 117, 497-529.

Baumeister, R. F., Stillwell, A. M., & Heath-erton, T. F. (1994). Guilt: An

interperson-al approach. Psychologicinterperson-al Bulletin, 115, 243-267.

Benedict, R. (1946). The chrysanthemum and the sword. Boston: Houghton Mifflin.   (ベネディクト,R.  長谷川松治(訳)(1972).

定訳菊と刀─日本文化の型─ 社会思想社) Breugelmans, S. M., & Poortinga, Y. H. (2006).

Emotion without a word: Shame and guilt among Rara´muri Indians and rural Javanese. Journal of Personality and Social Psychology, 91,1111-1122.

Buss, A. H. (1980). Self-consciousness and social anxiety. San Francisco: Freeman. Ferguson, T. J. (1999). Guilt. In D. Lecinson, J.

J. Ponzetti, Jr., & P. F. Jorgensen (Eds.), Encyclopedia of human emotions. vol.1. New York: Macmillan Reference USA. Pp.307-315.

Ferguson, T. J., Eyre, H. L., & Ashbaker, M. (2000). Unwanted identities: A key vari-able in shame-anger links and gender differences in shame. Sex Roles, 42,133-  157.

Ferguson, T. J., Stegge, H., Miller, E. R., & Olsen, M, E. (1999). Guilt, shame, and symptoms in children. Developmental Psy-chology, 35,347-357.

Fitness, J. (2000). Anger in the workplace: An emotion script approach to anger epi-sodes between workers and their superi-ors, co-workers and subordinates. Journal of Organizational Behavior, 21,147-162. Fontaine, J. R. J., Luyten, P., de Boeck, P.,

Corveleyn, J., Fernandez, M., Herrera, D., Ittze´s, A., & Tomcsa´nyi, T. (2006). Unty-ing the Gordian Knot of guilt and shame: The structure of guilt and shame reactions based on situation and person variation in Belgium, Hungary, and Peru. Journal of Cross-cultural Psychology, 37, 273-292.

(13)

Gilbert, P. (1998). Shame and humiliation in the treatment of complex cases. In N. Tarrier., A. Wells., & G. Haddock (Eds.), Treating complex cases: The cognitive be-havioural therapy approach. John Wiley & Sons Inc. pp.241-271.

Gramzow, R., & Tangney, J. P. (1992). Proneness to shame and the narcissistic personality. Personality and Social Psy-chology Bulletin, 18,369-376.

Haidt, J. (2003). The moral emotions. In R. J. Davidson, K. R. Scherer, & H. H. Gold-smith (Eds.), Handbook of affective scienc-es. Oxford: Oxford University Press. pp. 852-870.

Hale, R. (1994). The role of humiliation and embarrassment in serial murder. Psychol-ogy: A Journal of Human Behavior, 31, 17-23.

Harder, D. W. (1995). Shame and guilt assessment, and relationships of shame-proneness and guilt-shame-proneness to Psycho-pathology. In J. P. Tangney & K. W. Fisher (Eds.), Self-conscious emotions: Shame, guilt, embarrassment, and pride. New York: Guilford Press. pp.368-392. Harder, D. W., Cutler, L., & Rockart, L. (1992).

Assessment of shame and guilt and their relationship to psychopathology. Journal of Personality Assessment, 59,584-604. Harder, D. W., & Lewis, S. J. (1987). The

assessment of shame and guilt. In J. N. Butcher & C. D. Spielberger (Eds.), Advances in personality assessment. Vol.6. Hillsdale, NJ: Erlbaum. pp.89-114.

Higgins, E. T. (1987). Self-discrepancy: A theory relating self and affect. Psychologi-cal Review, 94,319-340.

樋口匡貴(2000).恥の構造に関する研究 社会心 理学研究,16,103-113.

  (Higuchi, M. (2000). A study on the

structure of shame. Japanese journal of social psychology, 16,103-113.)

久崎孝浩(2005).幼児の恥と罪悪感に関連する行 動に及ぼす発達的要因の影響 心理学研究, 76,327-335.

  (Hisazaki, T. (2005). The influence of developmental factors on behaviors rele-vant to shame and guilt in young children. Japanese Journal of Psychology, 76,327-335.)

Hynie, M., MacDonald, T. K., & Marques, S. (2006). Self-conscious emotions and self-regulation in the promotion of condom use. Persinality and Social Psychology Bulletin, 32,1072-1084.

Keltner, D., & Buswell, B. N. (1996). Evidence for the distinctness of embarrassment, shame, and guilt: A study of recalled antecedents and facial expressions of emotion. Cognition and Emotion, 10,155-  171.

菊池章夫(2003).TOSCA-3(短縮版)日本語版 の検討 岩手県立大学社会福祉学部紀要,5, 35-40.

  (Kikuchi, A. (2003). An examination of a Japanese Form of TOSCA-3. Bulletin of the Faculty of Social Welfare, Iwate Prefectural University, 5,35-40.)

菊池章夫・有光興記(2006).新しい自己意識的感 情尺度の開発 パーソナリティ研究,14, 137-148.

  (Kikuchi, A., & Arimitsu, K. (2006). Con-struction of self-conscious emotion scale. The Japanese journal of personality, 14, 137-148.)

Jones, W. H., Kugler, K. E., & Adams, P. (1995). You always hurt the one you love: Guilt and transgressions against partners. In J. P. Tangney & K. W. Fisher (Eds.), Self-conscious emotions: Shame, guilt, embar-rassment, and pride. New York: Guilford

(14)

Press. Pp.301-321.

Kugler, K. E., & Jones, W. H. (1992). On conceptualizing and assessing guilt. Jour-nal of PersoJour-nality and Social Psychology, 62,318-327.

Kohlberg, L. (1969). Stage and sequence: The cognitive developmental approach to so-cialization. In D. A. Goslin (Ed.), Hand-book of socialization theory and research. Chicago: Rand McNally. pp.347-480. Lansky, M. R (1987). Shame and domestic

violence. In D. L. Nathanson (Ed.), The many faces of shame. New York: Guilford Press. pp.335-362.

Lewis, H. B. (1971). Shame and guilt in neurosis. Madison, CT: International Uni-versities Press.

Lewis, H. B. (1987). Shame and the narcissis-tic personality. In D. L. Nathanson (Ed.), The many faces of shame. New York: Guilford Press. pp.93-132.

Lewis, M. (1992). Shame: The exposed self. NY: Free Press.

  (ルイス,M.  高橋恵子(監訳)(1997).恥の 心理学─傷つく自己─ ミネルヴァ書房) Lindner, E. G. (2006a). Humiliation, killing,

war, and gender. In M. Fitzduff & C. E. Stout (Eds.), The psychology of resolving global conflicts: From war to peace. Vol.1. Nature VS Nurture. Praeger Security In-ternational. pp.137-174.

Lindner, E. G. (2006b). Making enemies: Humiliation and international conflict. Praeger Security International.

Marschall, D., Sanftner, J., & Tangney, J. P. (1994). The State Shame and Guilt Scale. George Mason University, Fairfax, VA. 永房典之(2006).自己意識感情とその働き 北村 英哉・木村 晴(編) 感情研究の新展開 ナ カニシヤ出版 pp.169-189.   (Nagafusa, N.) 永 房 典 之 (2003). 恥 意 識 尺 度 ( Shame-Consciousness Scale)作成の試み 東洋大 学大学院社会学研究科紀要,40,42-47.   (Nagafusa, N. (2003). An attempt to

create “Shame-Consciousness Scale”: It’s development and examination of validity. Bulletin of the Graduate School, Toyo. University Graduate program of Sociology, 40,42-47.)

中里至正・松井 洋(編)(2007).「心のブレーキ」 としての恥意識─問題の多い日本の若者たち─  ブレーン出版

  (Nakasato, Y., & Matsui, H.)

成田健一・寺崎正治・新浜邦夫(1990).羞恥感情 を引き起こす状況の構造─多変量解析を用い て─ 関西学院大学人文論究,40,73-92.   (Narita, K., Terasaki, M., & Niihama, K.

(1990). The structure of situations which elicit “shuuchi” emotion-using a multi-variate analysis. Jinbun-ronkyu (Bulletin of Kwansei Gakuin University: Faculty of Humanities), 40,73-92.)

Niedenthal, P., Tangney, J. P., & Gavanski, I., (1994). “If only I weren’t” versus “If only I hadn’t”: Distinguishing shame and guilt in counterfactual thinking. Journal of Per-sonality and Social Psychology, 67,585-595. 岡田顕宏(2005).日本心理学会第69大会ワーク ショップ 恥と罪悪感を測る─TOSCA をめ ぐって─   (Okada, A.) 岡野憲一郎(1998).恥と自己愛の精神分析─対人 恐怖から差別論まで─ 岩崎学術出版社   (Okano, K.) 岡野憲一郎(2002).恥と教育 教育と医学,50, 34-43.   (Okano, K.)

Olthof, T., Ferguson, T. J., Bloemers, E. & Deji, M. (2004). Morality- and indentity-related antecedents of children’s guilt and shame attributions in events

(15)

involv-ing physical illness. Cognition & Emo-tion, 18,383-404.

Orth, U., Berking, M., & Burkhardt, S. (2006). Self-conscious emotions and depression: rumination explains why shame but not guilt is maladaptive. Personality and Social Psychology Bulletin. 32,1608-1619. Piaget, J. (1952). The origins of intellingence

in children. New York: International Uni-versities Press.

Poulson, C. F., Ⅱ. (2000). Shame and work. In N. M. Ashkanasy, C. E. Ha¨rtel,, & W. J. Zerbe, (Eds.), Emotions in the work-place: Research, theory, and practice. Westport, CT: Quorum Books. Pp.250-  271.

Smith, R. H., Webster, J. M., Parrott, W. G., & Eyre, H. L. (2002). The role of public exposure in moral and nonmoral shame and guilt. Journal of Personality and Social Psychology, 83,138-159.

菅原健介(1992).対人不安の類型に関する研究  社会心理学研究,7,19-28.

  (Sugawara, K. (1992) A typology of social anxiety. Japanese journal of social psychol-ogy, 7,19-28.)

菅原健介・永房典之・佐々木淳・藤澤 文・薊理 津子(2006).青少年の迷惑行為と羞恥心─公 共場面における5つの行動基準との関連性─. 聖心女子大学大学院論叢,107,57-77.   (Sugawara, K., Nagafusa, N., Sasaki, J.,

Fujisawa, A., & Azami R. (2006). Deviant behavior and shame in Japanese adoles-cents. ─Five behavioral standards for public space─. Seishin Studies, 107,57-  77.)

Tangney, J. P. (1991). Moral affect: The good, the bad, and the ugly. Journal of Person-ality and Social Psychology, 61,598-607. Tangney, J. P. (1993). Shame and guilt. In C. G.

Costello (Ed.), Symptoms of depression.

New York: Wiley. Pp.161-180.

Tangney, J. P. (1994). The mixed legacy of the superego: Adaptive and maladaptive aspects of shame and guilt. In J. M. Masling & R. F. Bornstein (Eds.), Emprical perspectives on object relations theory. Washington, DC: American Psychological Association. Pp.1-28. Tangney, J. P. (1995a). Recent advances in

the empirical study of shame and guilt. American Behavioral Scientist, 38,1132-  1145.

Tangney, J. P. (1995b). Shame and guilt in interpersonal relationships. In J. P. Tangney & K. W. Fisher (Eds.), Self-conscious emotions: Shame, guilt, embar-rassment, and pride. New York: Guilford Press. Pp.114-139.

Tangney, J. P., & Dearing, R. L. (2002). Shame and guilt. New York: Guilford Press.

Tangney, J. P. Dearing, R. L., Wagner, P., & Gramzow, R. (2000). The Test of Self-Conscious Affect-3 (TOSCA-3). George Mason University, Fairfax, VA.

Tangney, J. P., Marschall, D. E., Rosenberg, K., Barlow, D. H., & Wagner, P. E. (1994). Children’s and adults’ autobiographical accounts of shame, guilt and pride expe-riences: An analysis of situational deter-minants and interpersonal concerns. Un-published manuscript.

Tangney, J. P., Miller, R. S., Flicker, L., & Barlow, D. H. (1996). Are shame, guilt and embarrassment distinct emotions? Journal of Personality and Social Psycholo-gy, 70,1256-1269.

Tangney, J. P., Niedenthal, P. M., Covert, M. V., & Barlow, D. H. (1998). Are shame and guilt related to distinct self-discrepancies?; A test of Higgins’s (1987)

(16)

hypotheses. Journal of Personality and Social Psychology, 75,256-268.

Tangney, J. P., & Salovey, P. (1999). Prob-lematic social emotions: Shame, guilt, jealousy, and envy. In R. M. Kowalsky & M. R., Leary, (Eds.), The social psychology of emotional and behavioral problem: Interfaces of social and clinical psychology. Washington DC: American Psychological Association.   (タングネー,J. P.・サロベイ,P.(2001).恥・ 罪悪感・嫉妬・妬み:問題をはらむ社会的感 情 コワルスキー,R. M.・リアリー,M. R.  安藤清志・丹野義彦(監訳)臨床社会心理学 の進歩─実りあるインターフェイスをめざし て 北大路書房 pp.191-221.)

Tangney, J. P., Stuewig, J., & Mashek, D. J. (2007). Moral emotions and moral behav-ior. Annual Review of Psychology, 58, 345-372.

Tangney, J. P., Wagner, P.E., Barlow, D. H., Marschall, D. E., & Gramzow, R. (1996). Relation of shame and guilt to construc-tive versus destrucconstruc-tive responses to anger across the lifespan. Journal of Personality and Social Psychology, 70, 797-809.

Tangney, J. P. Wagner, P. E., Fletcher, C., & Gramzow, R. (1992). Shamed into anger?: The relation of shame and guilt to anger and self-reported aggression. Journal of Personality and Social Psychology, 62, 669-675.

Tangney, J. P., Wagner, P. E., & Gramzow, R. (1989). The Test of Self-Conscious Affect

(TOSCA). Unpublished measure, George Mason University, Fairfax, VA.

Tangney, J. P., Wagner, P. E., & Gramzow, R. (1992). Proneness to shame, proneness to guilt, and psychopathology. Journal of Abnormal Psychology, 101,469-478. 飛田貞子(2005).恥としつけ 教育と医学,50,

48-54.   (Tobita, S.)

Tracy, J. L., & Robins, R. W. (2004). Putting the self into self-conscious emotions: A theoretical model. Psychological Inquiry, 15,103-125.

Tracy, J. L., & Robins, R. W. (2006). Ap-praisal antecedents of shame and guilt: Support for a theoretical model. Personal-ity and Social Psychology Bulletin, 32, 1339-1351.

Wallace, R., & Nosko, A. (1993). Working with shame in the group treatment of male batterers. International Journal of Group psychotherapy, 43,45-61.

Wallace, R., & Nosko, A. (2003). Shame in male spouse abusers and its treatment in group therapy. Journal of Aggression, Maltreatment & Trauma, 7,47-74. Wilson. J. (2001). Shame, guilt and moral

education. Journal of Moral Education, 30, 71-81.

Woien, S. L., Ernst, H. A. H., Patock-Peckham, J. A., Nagosgi, C. T., (2003). Validation of the TOSCA to measure shame and guilt. Personality and Individ-ual Differences, 35,313-326.

参照

関連したドキュメント

The objectives of this paper are organized primarily as follows: (1) a literature review of the relevant learning curves is discussed because they have been used extensively in the

Note that most of works on MVIs are traditionally de- voted to the case where G possesses certain strict (strong) monotonicity properties, which enable one to present various

Note that most of works on MVIs are traditionally de- voted to the case where G possesses certain strict (strong) monotonicity properties, which enable one to present various

The set of families K that we shall consider includes the family of real or imaginary quadratic fields, that of real biquadratic fields, the full cyclotomic fields, their maximal

In Section 3 using the method of level sets, we show integral inequalities comparing some weighted Sobolev norm of a function with a corresponding norm of its symmetric

In addition, under the above assumptions, we show, as in the uniform norm, that a function in L 1 (K, ν) has a strongly unique best approximant if and only if the best

In Theorem 4.2 we prove, given existence and uniqueness of so- lutions, the strong Markov property for solutions of (1.1), using some abstract results about local martingale

As already mentioned, the above selection has to be regarded as a way to reduce complexity, however, pursuing the objective of designing models suitable to provide a