コンテナラウンドユース推進に関する報告書
コンテナラウンドユース推進に関する報告書
目次
0.背景及び目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.CRU の意義及びメリット ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.CRU の取組の経緯と現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2.1 CRU の取組の経緯と現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2.1.1 輸送事業者主導の取組の経緯と現状 2.1.2 荷主主導の取組の経緯と現状 2.2 現行の CRU の形態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2.2.1 事例に基づく CRU の形態分類 2.2.2 CRU の形態毎の整理 3.CRU 推進に当たっての課題と課題解決の方向性 ・・・・・・・・・・・・・10 3.1 課題の整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3.1.1 輸送事業者主導の取組における課題 3.1.2 荷主主導の取組における課題 3.2 国や自治体により現在行われている取組 ・・・・・・・・・・・・・・・12 3.2.1 国土交通省関東地方整備局 3.2.2 阪神国際港湾株式会社 3.2.3 埼玉県 3.2.4 佐野市 3.3 CRU 推進に当たっての課題解決の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・13 3.3.1 CRU の規模の拡大 3.3.2 効率的運用方法の普及 3.3.3 既設施設・設備の活用及び整備 4.CRU の推進に向けて(CRU の推進方法の提案) ・・・・・・・・・・・・・15 4.1 CRU 推進に向けた情報発信の強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 4.1.1 既存の取組との連携による情報共有の拡大 4.1.2 取組を希望する事業者に対する情報発信 4.2 CRU 取組効果の評価方法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・164.3 マッチング率向上のための情報共有・提供 ・・・・・・・・・・・・・・16 4.3.1 NACCS を活用したコンテナ内陸輸送情報の共有 4.3.2 車両の空き状況の共有 4.3.3 コンテナ情報マッチングシステムの支援 4.4 新しい CRU の推進方法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 4.4.1 海上コンテナの国内貨物輸送での利用拡大 4.4.2 リースコンテナの活用 4.5 ICD に関する情報の共有と機能充実及び活用 ・・・・・・・・・・・・・・19 4.5.1 ICD に関する情報の共有 4.5.2 ICD の機能充実及び活用 4.6 CRU 推進のための体制の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 (参考 1)CRU の主体別のメリット・デメリット (参考 2)ICD の機能比較表 (参考 3)コンテナ情報マッチング支援システムの現状
コンテナラウンドユース推進協議会設立準備委員会
委員名簿
(敬称略・五十音順)
氏名 所属・役職
(委員長)
増井 忠幸
東京都市大学 名誉教授
(委 員)
荒井 文義
株式会社太田国際貨物ターミナル 営業部長
礎 司郎
公益社団法人全日本トラック協会 輸送事業部長
犬井 健人
日本通運株式会社 海運事業部 専任部長(ロジスティクス企画)
菊地 力
久和倉庫株式会社 専務取締役
佐藤 孝之
みなと運送株式会社 つくば支店 支店長
佐藤 正弥
一般社団法人日本経済団体連合会 産業政策本部 上席主幹
多田 秀明
日本コンテナ輸送株式会社 営業部 部長
土本 哲也
株式会社クボタ 機械海外総括部 物流企画グループ長
福森 恭一
キヤノン株式会社 ロジスティクス統括センター 副所長
藤本 治生
NPO法人エスコット 理事長
正木 裕二
株式会社東芝 執行役常務附(ロジスティクス担当)
吉沢 勇一
本田技研工業株式会社 SCM 統括部 SCM 企画室管理ブロック主幹
(オブザーバー)
国土交通省物流審議官部門物流政策課
(事務局)
経済産業省商務流通保安グループ物流企画室
公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会
株式会社 三菱総合研究所
コンテナラウンドユース推進協議会設立準備委員会 開催概要
【第1回準備委員会】
日時:2014年11月28日(金)16:00~18:00
場所:経済産業省 本館17階 第3特別会議室
議題:コンテナラウンドユースの取組に関する現状及び課題について
次第: ①経済産業省からの挨拶
②準備委員会開催趣旨
③議事の取扱い
④準備委員会の今後の予定等
⑤委員紹介等
⑥コンテナラウンドユースの取組の現状と課題
⑦自由討議
【第2回準備委員会】
日時:2014年12月24日(水)15:30~17:30
場所:経済産業省 本館17階 第1特別会議室
議題:コンテナラウンドユースの取組を進めるために
次第: ①CRU の現状と課題
(通常のコンテナ輸送、CRU の現状、主体ごとのメリット・デメリット)
②取組推進に向けた課題と解決の方向性
(現状から見た課題と今後の拡大を見据えた課題に対する解決の方向性)
③自由討議
【第3回準備委員会】
日時:2015年3月3日(火) 16:00~18:00
場所:経済産業省 本館17階 第3特別会議室
議題:コンテナラウンドユースの取組を進めるために
次第: ①これまでの議論の整理
②コンテナラウンドユース推進に向けた方策の検討について
③コンテナラウンドユース推進協議会設立準備委員会報告書(案)について
④自由討議
0. 背景及び目的
コンテナラウンドユース(CRU:Container Round Use)は、輸入で使用した海上コンテナ から貨物を降ろした後、空となった海上コンテナを港に返却することなく輸出若しくは国内 輸送で使用する取組である。CRU は、環境負荷低減、輸送の効率化、コスト縮減や港湾で の渋滞緩和1等の効果があると考えられており、近年、荷主、輸送事業者、自治体等により 様々な取組が行われている。 CRU は、港湾における渋滞によりコンテナ輸送が非効率になっていたことに対して、輸 送事業者が港の外にデポを設置し、特に荷主を限定せず、港とデポ間をできるだけ実入りコ ンテナの輸送にする取組から始まったと考えられる。また、荷主企業側での取組としては、 輸出入貨物のある荷主が、輸入貨物配送後の空コンテナを港のコンテナヤード(コンテナの 集積場所)に返却せずに続けて輸出に利用する取組から始まったと考えられる。 上記の取組は、いずれも途中でコンテナのリフトオン/オフ(コンテナの積み降ろし作業) を伴わないオンシャーシの取組であり、「輸入と輸出のタイミングが近くなければ成立しな い」、「コンテナの修理ができない」等の制約があることから、インランドコンテナデポ(ICD) 2 を経由する取組も進められてきている。 コンテナラウンドユースは、政府における物流施策や物流行政の指針を示した『総合物流 施策大綱(2013-2017)』において推進するべき取組として記載されているところ であり、この取組を推進すべく、経済産業省では、平成25年度に実施した「コンテナラウ ンドユースの実態調査とモデル作成」事業に続き、平成26年11月、国内における海上コ ンテナ輸送の効率化に向けた「コンテナラウンドユース推進協議会設立準備委員会」を立ち 上げた。本委員会では、コンテナラウンドユース推進に向けた今後の更なる取組を念頭に置 き、コンテナラウンドユースを巡る現状把握、課題整理を行い、取組を推進していく上での 課題やその方策等について検討を行った。 1 (一社)東京都トラック協会 海上コンテナ部会が平成26年12月8日から26日まで実施した『東京港各コンテ ナターミナルにおける海上コンテナ車両待機時間調査(第5回)』の結果によると、ゲートに並び始めてからゲートアウ トまでの平均待機時間は、一番長いターミナルで2時間17分、調査対象車両別に見ると、7時間1分掛かっている事 例がある。 2港から離れた内陸部にある通関物流基地。本報告書では、通関、保税機能を持つ施設だけでなく、通関、保税機能を持 たない類似の施設(荷役機能等の有無に関わらずコンテナを保管する機能を持つ施設)も対象に含めている。
1. CRU の意義及びメリット
現在、海上コンテナの陸送は、輸入の場合は、貨物の入った海上コンテナを倉庫等まで輸 送し、海上コンテナから貨物を降ろした後、空になった海上コンテナ(空コンテナ)を港に 返却することが一般的であり、輸出の場合は、空コンテナを港から輸送し、倉庫等で貨物を コンテナに積み、再度港まで輸送することが一般的である。この状況下では、空コンテナの 輸送が必ず発生し、非効率な状況が生まれている。これに対し、CRU は、輸入で使用した 海上コンテナから貨物を降ろした後、空コンテナを港に返却することなく輸出で使用する取 組である。 CRU を推進することで空コンテナ輸送を削減できるため、物流の効率化や環境負荷低減 (温室効果ガス排出量削減等)に繋がるとともに、空コンテナの搬出入が減ることによる港 湾地区の渋滞緩和にも寄与するものであるため、社会的意義は大きい。特に温室効果ガス排 出量削減効果については、地球温暖化防止に向けた 2020 年以降の国際的な枠組3が 2015 年 に合意されようとしている中、コンテナラウンドユースの取組は CO2排出量削減の一手段 として有効なものである。 図 1 CRU の概要 また、上記の効果の他、CRU に関係する各主体にとって以下のようなメリットがある。 荷主 ・ 輸送コストの削減 空コンテナの輸送が削減されることによる燃料費等の削減により、輸送コストが削 減できる。 ・ 空コンテナの定時的な確保(輸出荷主) 港湾地区においてコンテナの搬出入による渋滞が発生することが多く、空コンテ ナを定時的に確保しづらいという問題があるが、輸出荷主の近隣に所在する輸入 3国際社会では、地球温暖化防止に向け、1992 年に国連気候変動枠組条約を、1997 年に京都議定書を採択し、先進国を 中心とした CO2等の温室効果ガス削減の取組を進めてきた。さらに現在、2020 年以降の新しい法的枠組の構築に向けた 検討を進めており、本年(2015 年)中に国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)で合意する見込みである。荷主や ICD から空コンテナを調達することで、空コンテナを定時的に確保するこ とができる。特に ICD を利用できる場合はスケジュールの自由度も高くなること が多く、輸出荷主にとってメリットが大きい。
・ コンテナのフリータイムの有効活用
ICD を利用した CRU において、空コンテナを自身の拠点に近い ICD に返却、また は ICD からピックアップすることで、港までの輸送に比べ輸送時間を短縮するこ とが可能になり、返却やピックアップの際に設定されているフリータイムを有効活 用することができる。 ・ 社会的イメージの向上 環境負荷低減活動を積極的に行っている企業として、社会的イメージが向上する。 フォワーダー ・ 荷主に対する営業の材料 CRU 実施の体制を整えることで、「CO2排出量削減になる、輸送料金が低減する、 コンテナの定時的な確保が可能になる」等を荷主に対する営業の材料にすることが できる。 輸送事業者 ・ トラックの実車率及び回転率向上 空コンテナの輸送が減るため、実車率が向上し、1 運行あたりの運賃収入が向上す る。また、港湾地区で空コンテナを返却するために待機車両の列に並ぶ時間がなく なるため、、トラックの回転率向上やドライバーの効率が向上する。 ・ ドライバー不足への寄与 ドライバー不足によって庸車が難しく、荷主企業の輸送需要に応えることができな い状況が発生している。通常の輸送においては、輸出と輸入のために港と内陸間を 車両が 2 回転していたところが、CRU を実施することにより 1 回転になることでド ライバー不足対策にもなる。 ・ 荷主に対する営業の材料 CRU 実施の体制を整えることで、「CO2排出量削減になる、輸送料金が低減する、 コンテナの定時的確保が容易になる」等を荷主に対する営業の材料にすることがで きる。 ICD 運営事業者 ・ 新しい事業機会の創出 CRU の実施によりコンテナ保管やリフトオン/オフによる収入を増加させることが できる。また、CRU の拠点としての機能が荷主や船社に対する営業の材料となり、 CRU の拠点としての認知度が向上することにより取扱物量が増加する可能性があ る。
(地域の産業競争力の強化)
CRU は、ICD と荷主との距離が近いほど効果が大きい。そのため、ICD の立地地 域は、輸出入産業の産業競争力が高まることになる。このようなメリットを踏ま え、自治体等が主導して ICD を設立する動きも見られる。
CRU は、社会的意義だけではなく、上記のような関係主体にとっても実施するメリット があるため、近年取組を拡大する動きが見られており、国土交通省(関東地方整備局等)や 自治体(埼玉県、佐野市等)においても取組が進んでいる。
2. CRU の取組の経緯と現状
2.1 CRU の取組の経緯と現状 2.1.1 輸送事業者主導の取組の経緯と現状 CRU の取組は、もともと輸送事業者の工夫として始まったと考えられる。日本コンテナ 輸送(株)は、京浜港における渋滞によりコンテナ輸送が非効率となっていたため、内陸部 にデポを設置し、港湾とデポの間はできるだけ実入りコンテナで輸送し、港湾地区にトラッ クが入る回数を減らす取組を 1990 年頃に始めた。この取組は、片道の空コンテナ輸送を削 減するものであり、CRU のさきがけと言える。また、これはトラックの運用効率向上のた めの取組であり、コンテナはオンシャーシのままデポに保管していた。このような取組は、 現在でも日本通運(株)、吉田運送(有)(茨城県)等他の輸送事業者が実施している。 また、コンテナ運用の利便性のために船社が空コンテナを港湾地区ではなく内陸部に保管 しておく取組(ICD のバンプール4としての利用)も従来から行われているが、この空コン テナを活用した CRU も日本通運(株)、大竹運送(株)(福島県)等が実施している。この 取組は、オンシャーシでのコンテナの保管に比べ、短時間での取り回しには向かないが、保 管スペースが節約でき、保管用にシャーシを必要としないためコンテナを大量に保管できる 利点がある。 このような輸送事業者主導の取組は、輸送事業者が一定数の輸入及び輸出荷主を確保して いる場合に可能となる。 2.1.2 荷主主導の取組の経緯と現状 輸送事業者主導の取組とは別に、荷主主導の取組も存在する。これは、輸出及び輸入双方 の貨物を持ち、スケジュールやコンテナのコンディションの調整等が容易に実施できる荷主 が自社内での取組として、輸出入コンテナを活用した CRU の取組を始めたものと考えられ る。自社内で CRU を実施することができる程の輸出入双方の貨物を保有する荷主は限られ るため、この取組は一部にとどまっているが、現在でも、キヤノン(株)や本田技研工業(株) 等がこの取組を実施している。 自社内での取組の後に、CRU の取組を拡大させるため、始められたと考えられるのが、 複数荷主間での CRU の取組である。複数荷主間の CRU として最も初期の取組としては、 青森県三沢市所在の輸入者と JUKI(株)の取組が挙げられる。この取組は船社の働きかけ により 1993 年に始まったもので、空コンテナを青森県三沢市所在の輸入者から JUKI(株) 大田原工場に直接回送するオンシャーシの取組であった。近年では(株)東芝と(株)クボ タがオンシャーシで年間 1000 本程度の CRU を実施した(東芝とクボタの取組は現在行わ れていないが、クボタは他の企業と連携することによりオンシャーシでの取組で年 2000 本 規模の CRU を実施している)。 複数荷主間での取組により CRU の可能性が広がったが、オンシャーシで輸出企業にコン テナを直接回送する場合には輸出及び輸入のタイミングが合わないと CRU を実施できない ため、オンシャーシでの取組で CRU の実施本数を増やすことには限界があった。このため、 ICD を利用した CRU も行われるようになり、その代表的な事例が(株)クボタを中心とす 4 コンテナの集積・保管、受け渡しを行う場所る、みなと運送(株)つくば支店を ICD として利用する取組であり、輸入者 10 社、船社 8 社と連携することで年 4500 本規模の CRU を実施している5。この関係者各社が協力する取 組により、荷主側では、CO2排出量及び輸送コストに関して、それぞれ最大で約3割の削減 効果を得ることが出来ており、さらに、輸送車両の実車率の向上にも繋がっている。 2.2 現行の CRU の形態 以上、紹介した事例から CRU の形態を整理すると以下のようになる。 (1)輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの取組 (2)輸送事業者主導の ICD でリフトオン/オフする取組 (3)荷主主導の直接回送するオンシャーシでの取組 (4)荷主主導の ICD でリフトオン/オフする取組 2.2.1 事例に基づく CRU の形態分類 (1) 輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの取組 輸送事業者主導で行う CRU の形態では、ICD を所有・管理する輸送事業者が、自身が請 け負っている輸入の輸送で使用されたコンテナを輸出のための輸送に使用して CRU を成立 させている。この場合、輸出側、輸入側両方の情報を把握している輸送事業者がマッチング を行うため、スケジュールのマッチングが容易となる。マッチングをする際、輸出側と輸入 側のタイミングがマッチ(同日中)している場合は、ICD にてコンテナをリフトオフして保 管することなく、オンシャーシの状態で回送することができる。この方法で取組を行う場合、 ICD ではコンテナのコンディションチェック、簡易整備を実施することになる。 図 2 輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの CRU 5 2015 年 3 月 12 日開催『コンテナラウンドユースフォーラム』にて配布された資料『パネリスト各位の取 組等の紹介』によると、クボタ(株)筑波工場から年間約10000本のコンテナの輸出が行われており、 その内約20%がオンシャーシでの取組、約45%が ICD を利用した CRU の取組によるものである。
(2) 輸送事業者主導の ICD でリフトオン/オフする取組 この取組は、(1)輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの取組と同様に、 ICD を所有・管理する輸送事業者が、輸出入の輸送を組み合わせて CRU を成立させる方法 であり、オンシャーシのままコンテナを回送するのではなく、ICD にてコンテナをシャー シからリフトオフし、コンテナの一時保管を行う。この方法では、輸送事業者の顧客間で のマッチングとなるが、ICD にてシャーシを用いることなくコンテナの保管が可能となる ため、(1)輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの取組よりもスケジュール の柔軟性が高まり、マッチング率を高められると考えられる。 またこの形態では、ICD にてコンテナをリフトオフして一定期間保管することができ、 ICD へのコンテナの搬入から搬出まで余裕をもたせることができる。 図 3 輸送事業者主導の ICD でリフトオン/オフする CRU (3) 荷主主導の直接回送するオンシャーシでの取組 荷主主導で CRU を実施する際、輸入荷主と輸出荷主が同じ船社を利用しており、さらに 輸出と輸入のタイミングが合う場合は、輸入荷主から輸出荷主へオンシャーシでコンテナの 回送を行うことが可能である。この取組の場合、船社に加えて委託先の輸送事業者も同一で ある必要がある。このため荷主を含めた関係主体間で CRU を実施する際の仕事の分担、ま た利益の分配について事前に調整を行うことが必要である。 その後スケジュールのマッチングにあたっては、輸入側が輸出側に輸入スケジュールを連 絡し、荷主自身または荷主から依頼されたフォワーダーが一回毎に CRU の実施を決めてい くという方法を取っていることが多い。 この形態では、輸入側から輸出側へコンテナを直接回送するため、車両の稼働率や港湾で
のゲートオープン時間等を考慮すると、輸出入のタイミングが合っていることに加え、輸入 側で使用した後のコンテナが輸出側の要求する品質に達していることが必要になる。これら の事項を調整するには時間が掛かるが、成立した場合は、ICD を利用する CRU と比較して ICD での諸コストが掛からないため、CRU1回あたりのコスト削減率は高くなると考えら れる。 さらに、この形態の場合、船会社によるコンテナのコンディションチェックを経ないため、 事前に船社とコンテナのダメージやコンテナのダメージに起因する貨物のダメージに関す るリスク負担に関する取り決めをしていることがほとんどであり、その場合、輸出側企業が リスクを負担していることが多い。 この取組では、船社は、コンテナのリフトオン/オフの負担をすることがなく、さらに、 内陸でコンテナが滞留することもないため、船社側にとっても問題がない。 図 4 荷主主導の直接回送するオンシャーシでの CRU (4) 荷主主導の ICD でリフトオン/オフする取組 (3)荷主主導の直接回送するオンシャーシでの取組ではスケジュールの調整が難しいこ とから、荷主主導の ICD でリフトオン/オフする取組も行われている。この取組では、輸 入荷主が利用した後のコンテナを ICD で保管することで、オンシャーシでの取組と比べて スケジュールの調整が容易となる。この形態ではマッチングは荷主から依頼されたフォワー ダーが行っている場合が多い。 ICD でコンテナの保管とリフトオン/オフが行われる場合、コストを負担する主体は契約 の内容により異なる。船社とデポ契約した ICD の場合は、船社がコストを負担する場合が 多い。さらに、この場合、ICD にコンテナを返却した時点で船社にコンテナを返却したこと になるため、輸出側が ICD からピックアップしたコンテナを使い輸出した際に貨物ダメー ジが発生した場合は、コンテナを供給した船社に責任を求めることが一般的である。
ICD を利用する場合、オンシャーシでの取組と比べ、ICD を経由する分だけ CRU1回あ たりの輸送距離は延びるが、CRU を実施しない場合と比べると総輸送距離を削減すること ができる。
図 5 荷主主導の ICD でリフトオン/オフする CRU 2.2.2 CRU の形態毎の整理 以上の CRU の取組を形態ごとに整理すると、輸送事業者主導の取組か荷主主導の取組か、 ICD の利用の有無及び利用方法で整理することができる。 まず、輸送事業者主導の ICD を経由するオンシャーシでの取組と輸送事業者主導の ICD でリフトオン/オフする取組は、いずれも輸送事業者主導であり、ICD での保管方法のみオ ンシャーシか野積みかで異なっている。これらの場合には同一の輸送事業者が扱う複数荷主 間で CRU が実施されている。また輸送事業者と荷主との契約によっては、CRU が成立した 場合に輸出側が支払う国内輸送料金が割り引かれる場合がある。一方、輸入の時点では CRU 成立が確定していないため、輸入荷主への料金の割引は行われないことがある。 これに対し、荷主主導の直接回送するオンシャーシでの取組と荷主主導の ICD でリフト オン/オフする取組は、いずれも荷主が主導しており、この二つでは ICD の利用有無が異 なっている。輸送事業者主導の取組と比べると、マッチング主体は荷主が委託するフォワー ダーであり、現在のところ輸入荷主及び輸出荷主がともに複数である取組は行われていない。 また CRU が成立した場合、荷主が支払う国内輸送料金が割り引かれるが、割引率について は荷主と輸送事業者の協議の結果決定される。 なお、いずれの場合においても輸出入荷主で利用する船社が同一でないと CRU が成立し ない。
3. CRU 推進に当たっての課題と課題解決の方向性
3.1 課題の整理 CRU の形態ごとの特徴を踏まえ、課題と国や自治体で現在行われている取組、課題解決 の方向性を整理する。 なお、船社は、世界各港におけるコンテナのインバランス解消を重視しており、国内での CRU は荷主や輸送事業者が主導して取組を進めていくものと考えていると思われる。その ため、当面は荷主企業主導で、ICD 運営事業者及び輸送事業者等と連携して CRU を進めて いくことが重要である。 3.1.1 輸送事業者主導の取組における課題 ○輸送事業者自らの顧客間でのマッチングに限定されるため規模を拡大しにくい ・輸送事業者主導の取組には、ICD を経由するオンシャーシでの取組と ICD でリフト オン/オフする取組があり、いずれも輸送の効率性や利益率の向上につながる場合に 輸送事業者の判断で実施されており、荷主や船社には特段の負担をかけていない。し かしながら、輸送事業者自らの顧客間でのマッチングに限定されるため規模を拡大し にくい。さらに、競争関係にある輸送事業者が連携することは難しい上、輸送事業者 間で荷主に関する情報を交換し連携するためには荷主の了解が必要である。今後、規 模を拡大していくためには、荷主に協力を求めていくことが必要である。 3.1.2 荷主主導の取組における課題 (1) オンシャーシでの取組、ICD でリフトオン/オフする取組共通の課題 ①荷主にとっての課題 ○荷主間でのコンテナの管理責任や料金設定等の事前調整の必要性 ・CRU を実施する前に、コンテナの管理責任や料金設定等につき、事前に荷主間で 調整を行っておく必要があり、調整に時間と労力が掛かる。 ②フォワーダーにとっての課題 ○マッチング作業等の新たな業務の発生 ・荷主主導の取組の場合には、荷主から依頼を受けたフォワーダー側でシステム構築 やシステム運用等の新たな業務が発生する。 ○荷主による業務委託絞込みに起因する業務減少リスク ・輸入企業と輸出企業との間で業務を一元化することにより、荷主企業からの業務委 託が絞り込まれることが多いため、フォワーダーは業務を失う場合がある。 ただし、CRU 実施に際し、委託先を輸入企業側に合わせて 1 社に絞ったものの、 輸出企業側の通関等の業務に関しては、委託先から再委託される形で元の委託先が 引き続き実施したケースがある。 ③輸送事業者にとっての課題○荷主による業務委託絞込みに起因する業務減少リスク ・輸入企業と輸出企業との間で業務を一元化することにより、荷主企業からの業務委 託が絞り込まれることが多いため、輸送事業者は業務を失う場合がある。 ○海上コンテナの輸出と輸入に係る輸送コスト削減を求められる可能性 ・海上コンテナの輸出と輸入に係る空コンテナの輸送が削減されるため、その分の輸 送コスト削減を荷主から求められる可能性がある。(これは荷主にとっても輸送コ スト削減が一つの目的であり、実際に空コンテナの輸送距離が減少するため必然的 と言える。) 空コンテナの輸送だった部分を実入りコンテナの輸送という付加価値の高い輸送 に置き換えるため、空コンテナの輸送削減メリットを荷主等の関係者間で適正に 配分することを事前に調整することが必要である。港と内陸の拠点間の往復 1 回 あたりの輸送運賃を上昇させることができれば、必ずしもデメリットにはならな いと考えられる。 (確実に事前マッチングして運行の効率性を損なわないことが前提である。) (2) 直接回送するオンシャーシでの取組における課題 ①荷主にとっての課題 ○コンテナ品質に起因する貨物の損傷に関するリスク ・この取組では、船社側によるコンテナチェックを経ないため、コンテナのダメージ に起因する貨物の損傷に関するリスクが、原則として荷主側に発生する。実際には、 荷主から委託を受けたフォワーダーがコンテナ品質を確認し、CRU に使用できる か判断した後、必要に応じて整備が実施されている。 ○コンテナ品質に起因するコンテナの再手配のリスク ・コンテナの品質を確認した結果、コンテナにダメージがあり貨物を積み込めず、別 途コンテナを手配しなければならないリスクが発生する。 ②輸送事業者にとっての課題 ○待機時間発生による運行効率低下のリスク ・直接回送するオンシャーシでの取組には、輸入貨物と輸出貨物の輸送を車両が 1 ラウンドで実施できることが前提であるが、輸送事業者にとっては、バンニングや デバンニング開始までに待機時間が発生することもあり、運行効率が低下するリス クがある。荷主に対して、待機時間発生の抑止策や待機時間による所要コストの負 担要請を行うことが望ましい。 (3) ICD でリフトオン/オフする取組における課題 ①ICD 運営事業者や荷主等の CRU 実施希望者にとっての課題 ○ICD の持つ機能の違いと ICD に関する情報共有の必要性 ・ICD によって有する機能(『コンテナのリフトオン/オフ』『コンテナの洗浄』『コン
テナの修理』等)が異なっているため、ICD の CRU への対応可能性は拠点により異 なってくる。 実現したいマッチング率や保管するコンテナの規模等を考慮して適切 な ICD を活用できるよう、CRU 実施希望者への ICD の施設に関する情報の提供や利 用希望者への施設の提供が必要である。さらには既存の施設で機能が不足している場 合には、不足する機能の整備等が課題である。 3.2 国や自治体により現在行われている取組 CRU の取組にあたっては、これまでも国・自治体による施設整備や CRU の実施に対する 補助、情報発信や情報共有等各種の支援が行なわれている。以下に今後の課題解決の方向性 を考える上で重要となる最近の代表的な取組を紹介する。 3.2.1 国土交通省関東地方整備局 (株)太田国際貨物ターミナル(群馬県)の海上コンテナターミナルは、国際コンテナ戦 略港湾の整備の一環として平成 21 年度~24 年度に整備された。 また、京浜港物流高度化推進協議会を運営し、物流高度化に向けた取組の一環として、コ ンテナマッチングや CRU の普及や情報発信に取り組んでいる。協議会での主要な取組は以 下の通りである。 荷主意見交換会:平成 23 年度から荷主との港湾政策に関する情報共有、荷主間での 情報共有、企業間ネットワーク構築、コンテナマッチング等の物流効率化に向けた取 組に関する情報共有等を目的に京浜港の主な背後圏である関東圏内で県別に開催。 京浜港物流高度化シンポジウム:平成 25 年度から物流効率化を進めるために、コン テナマッチングの具体的な取組や最新の動向を紹介して、企業・団体間のコンテナマ ッチングの促進を図ることを目的に開催。 3.2.2 阪神国際港湾株式会社 阪神国際港湾株式会社では、阪神港陸上輸送等貨物誘致事業の中で、阪神港を利用し、コ ンテナラウンドユースに取り組む事業者を支援している。同事業では、該当する事業者に事 業を委託し、新規貨物量及び増加貨物量に応じ、1TEU あたり 5,000 円以上を基準として業 務委託料を支払う取組を行っている(1 事業上限 2,500 万円)。 また、現在複数船社とデポ契約を結んでいる阪神インランドコンテナデポ(滋賀県野洲市) を保有している。 3.2.3 埼玉県 埼玉県では、平成 26 年 10 月に埼玉県コンテナラウンドユース推進協議会を設立し、企業 間の情報交流の場の提供、コンテナラウンドユース社会実験、コンテナラウンドユースに関 わる保険制度、コンテナマッチング支援制度等の取組を実施している。 平成 27 年 3 月時点で協議会の構成員は、荷主 7 社、陸運事業者 14 社、船会社 5 社、その 他物流関係事業者 11 社、保険会社 2 社、金融機関 2 社となっており、主に現場(営業担当 等)の責任者が構成員となっている。 また、平成 26 年 11 月~平成 27 年 1 月末にコンテナラウンドユース社会実験を行い、デ ータ取得費として輸入コンテナ又は輸出コンテナ 1 個(片道)あたり 3,000 円を支払って
CRU を実施した事業者からデータの報告を求めた。この結果、輸入企業 16 社、輸出企業 11 社、陸運事業者 14 社、船会社 9 社が関係した 245 件の報告を受けており、16.7t-CO2の削 減効果があったと推計している。これらの情報を活用し、今後県の物流効率化施策の検討を 行うとしている。 3.2.4 佐野市 佐野市では、内陸の港となる「佐野インランドポート」の設立を平成 22 年度から検討し てきており、平成 26 年度に事業計画を決定したことに伴い予算措置が行われ、平成 27 年度 に基本および詳細設計を実施、平成 29 年度中の供用開始を計画している。コンテナの積み 降ろし、コンテナの管理・保管、空コンテナ置場やシャーシ置場、コンテナの修理・清掃等 の機能を備える予定であり、運営方式は、指定管理者制度を導入する予定である。計画して いるインランドポートの業務内容には、コンテナマッチングや将来的には港頭地区とのシャ トル便構想などが含まれており、インランドポートが主導する物流効率化の取組として期待 されている。 3.3 CRU 推進に当たっての課題解決の方向性 3.3.1 CRU の規模の拡大 CRU の課題には、CRU の取組規模を拡大することが有効なものが多い。取組規模を拡大 するためには、「参加者を増やして CRU の対象となるコンテナの母数を増加させる方法」 と「同じ数のコンテナに対しマッチング率を上げる方法」がある。まだ CRU の認知度が高 いともいえない現状を考えると、まずは参加者を増やしてコンテナの母数を増やす取組が先 決であり、このためには情報共有方法の確立や複数荷主間連携が有効と考えられる。 その上で、マッチング率を上げる方策を検討すべきである。このための手段としては、ICD の活用はもとより、海上コンテナの国内貨物輸送への利用等が考えられ、さらに、中小の輸 出入企業へ CRU の裾野を広げるためにも、複数の荷主が参加しやすい仕組みとして【N 対 N】(輸出企業・輸入企業ともに複数)による CRU 実施の仕組構築が有効と考えられる。 3.3.2 効率的運用方法の普及 CRU は多くの主体が関わる取組のため、通常のコンテナ輸送業務に対して追加的な作業 が発生する。そのため、追加的に必要となる業務を効率化させていくことが重要となる。例 えば、コンテナの管理責任や運用方法について、輸出入荷主間や荷主-船社間での事前合意 が必要となるが、そのような先進事例について情報発信・共有することができれば、新たに 実施する主体にとって事前準備に必要な作業を削減することができる。また、CRU の実運 用の際にも、コンテナとトラック輸送のマッチング方法を確立して共有していくことで、運 用の効率化を図ることが可能となる。 3.3.3 既存施設・設備の活用及び整備 CRU を実施するためには ICD としての機能を持つ施設を有効に活用していく必要がある。 このような施設として、既存の輸送事業者が保有する拠点や JR 貨物の駅を活用するなどの 検討も重要である。 また、ICD としての機能は、コンテナの整備機能の有無等、施設によって違いがある。
CRU の取組状況によっては、必要とされる ICD としての機能が異なるため、どの地域にど のような設備・サービスが提供可能な拠点があるのかについて、荷主や輸送事業者が把握で きるような体系的な情報整理及び情報発信が重要である。 また ICD は、現状の CRU の取組において、コンテナの洗浄や修理の整備機能やコンテナ の保管機能を駆使することによって、コンテナのマッチング率向上において重要な役割を果 たしているが、このような機能が不足している施設もある。このため、必要に応じて施設整 備を進めることも重要である。
4. CRU の推進に向けて(CRU の推進方法の提案)
以上の検討を踏まえ、CRU を推進する方法を提案する。 4.1 CRU 推進に向けた情報発信の強化 CRU をさらに推進していくためには、様々なチャネルを用いて情報を発信し、運用上の ノウハウを普及し、取り組みやすくしていく必要がある。このため、以下のような方策を推 進すべきである。 4.1.1 既存の取組との連携による情報共有の拡大 荷主や輸送事業者等の関係者で連携して情報を共有することによりマッチングするコン テナの組み合わせを見出すことが重要である。このような連携先の事業者を見出す機会とし て既に各地で情報共有の機会などが設けられているが、このような機会の利用促進を図ると 共に、さらに充実させていく必要がある。具体的な方法を以下に示す。 催事の開催等 2015 年 3 月に開催したコンテナラウンドユースフォーラムでは参加者 400 名以上 と、多くの関係者の参加を得て、CRU に既に取組んでいる事業者からこれから取組 を検討する事業者まで幅広い層に対する情報共有に資する機会となった。今後はこの ような活動をさらに強化し、CRU の意義の普及や、CRU 推進のためのより具体的な 情報の発信等に用いていくことが望ましい。 地方自治体の取組との連携 自治体等が個別に行っている活動への協力、さらには、最新情報の共有や普及方法 を検討するために、個別に活動を行っている自治体等と連携して情報交換を行うこと が必要である。また、CRU の取組支援やインランドデポ設置を検討している自治体 等と連携し、関心のある荷主への情報提供等の連携を図っていくも重要である。 製・配・販連携協議会6等との連携、案件創出 製・配・販連携協議会のような荷主企業が集まる場や、荷主や物流事業者・フォワー ダーなどによって構成されるグリーン物流パートナーシップ会議などにおいて CRU の取組概要を紹介するなど、情報共有を行うことで、CRU の普及・啓発を促し、CRU の取組に参加する企業の母数を増やすことを目指すべきである。 4.1.2 取組を希望する事業者に対する情報発信 今後取組を開始したい事業者の場合には、CRU の進め方や関係者間での責任範囲の設定 等について把握したいという要望があろう。このため、以下のような情報を発信し、普及啓 発を進めることが有効と考えられる。 「コンテナラウンドユース推進の手引き」の改訂 新規に CRU の取組を始めようとする事業者を対象にした、CRU の取組のメリット や実施する際のポイントを記載した「コンテナラウンドユース推進の手引き」を平成 6 2011 年 5 月に経済産業省が主導し、サプライチェーンの効率化等を進めるために設立した協議会。製造、 卸売、小売の各社(加盟企業 53 社)が連携し、非効率な商慣習の見直しに向けた取組を推進している。25年度に策定した。現状では、取組のメリットが中心に掲載されているが、取組を 始めるにあたっての調整方法や課題となると考えられる事項についても掲載し、ガイ ドライン(仮称)として取り纏める。 先進的取組事例の紹介 船社又は船社から委託された会社によるコンテナチェックを経ずに、荷主の責任に おいてコンテナチェックが行われる場合の荷主間でのリスク負担に関する事前の取 決め等は、新たに取組を始める事業者には時間と負担が掛かる作業となる。そこで、 事前に取決めが必要となる事項を洗い出し、モデルを作成し、さらには、まだ広く浸 透していない CRU 実施時の課題の解決策に関する先進事例とともに紹介することに より、CRU の取組の円滑化を図る。 4.2 CRU 取組効果の評価方法の検討 地球温暖化防止に向けた 2020 年以降の新しい法的枠組が、2015 年に国連気候変動枠組条 約第 21 回締約国会議(COP21)で合意する見込みである中、今後企業に対してもより一層 の温室効果ガス排出量削減が求められる可能性がある。CRU は空コンテナの輸送が削減さ れるため、温室効果ガス排出量の削減にも有効な取組である。そのため、今後、CRU 実施 のインセンティブとなるよう、温室効果ガス排出量削減効果の計算方法を検討すべきである。 4.3 マッチング率向上のための情報共有・提供 CRU をさらに推進していくためには、海上コンテナを使った輸出入を多く行っている事 業者を把握し、内陸部でのコンテナの動きを分析した上で、マッチングの機会を増やしてい く必要がある。このため、以下のような方策を推進すべきである。 4.3.1 NACCS を活用したコンテナ内陸輸送情報の共有 CRU を多数成立させるためには、マッチング可能なコンテナをできるだけ多く把握する 必要がある。このためには CRU 対象となりうるコンテナの所在を確認できる仕組みが必要 となる。コンテナの情報を取扱う仕組みとしては輸出入及び港湾・空港手続とこれに関連す る民間業務を処理する官民共同システムである NACCS があり、同システムでは輸出入に関 わる全てのコンテナの港湾での各種手続きを取り扱うことができるようになっているが、輸 入コンテナが港湾から内陸にどのように輸送されるかの情報は含まれていない。このため、 NACCS に、“輸入におけるデバンニング地等の情報の入力欄”を新設し、CRU 実施希望者 がデータを入力して相互に開示する仕組みを設けることができれば、CRU のためのマッチ ングに必要な情報を共有する仕組みとなり得る。 この仕組みは、行政機関に対する手続きではなく純粋な民間業務であるため、その開発に は NACCS の民間利用者間でのコンセンサスの形成が必要となる。また、新規のシステムの 開発投資及び運用に要する費用については、NACCS では利用者負担を原則としていること から、仕組みを利用する者がこれら費用を負担して開発運営できるようにする必要がある。 このことから、このような仕組みに関するニーズを把握し、具体的な運営方法を確立する必 要がある。 また、新しい情報を付加することが難しい場合には、既存の輸入者情報やコンテナ搬出メ ニューを用いることの可能性も検討する必要がある。
現在 NACCS は第 6 次更改を控えており、平成 28 年 3 月に開催される予定の第8回情報 処理運営協議会を経て、更改の最終的な仕様書が確定される予定である。そのため、第 6 次更改に合わせて上記のような仕組みを構築するためには、荷主が連携し、早急に仕組み構 築に向けた取組を開始する必要があると考えられる。
NACCS とは
NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)は、入出港する船舶・航 空機及び輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続及び関連す る民間業務をオンラインで処理するシステムである。 海上貨物の場合には、船舶の入港、輸入貨物の船卸しから国内引取りまで、輸出貨物の 保税地域への搬入から船積み、出港までの一連の税関手続及び関連民間業務をシステムで 処理している。 行政機関(税関等)や通関業者に加え、船社、銀行、NVOCC(フォワーダー)、荷主も 利用している。 出典:輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社ホームページ(http://www.naccs.jp/) 4.3.2 車両の空き状況の共有 国内での貨物輸送においては、貨物輸送の波動性から生じやすいスポット貨物や空きトラ ックの情報を交換しスポット輸送を成立させる求貨求車システム7が運用されている。一方、 海上コンテナ輸送では、コンテナの内陸輸送情報が共有されたとしても全ての車両の輸送状 況が把握できるわけではない。このため、別途車両の空き情報を共有できる仕組みを設けて マッチングできるようにし、貨物の増減に柔軟に対応できるとともに輸送事業者の情報交換 の場を設けて多くの輸送事業者が参加しやすくすることも一案である。 このような取組は既に開始されつつあるが、これにより CRU のマッチング率を高め、輸 送事業者が実車率を上げ効率的な運行が可能となることも期待されるため、取組が普及・拡 大するよう推進していくことが有効と考えられる。 4.3.3 コンテナ情報マッチングシステムの支援 既存のマッチング支援システムは、主に輸入コンテナ(輸入企業)と輸出コンテナ(輸出 企業)のマッチングに主眼が置かれている。今後大規模な取組への対応や効率的な運用を想 定した場合には、輸入コンテナと輸出コンテナに空コンテナを加え、それらを車両とマッチ ングする必要がある。現在、コンテナと車両のマッチングシステムが個別の取組向けに開発 され運用され始めている。このようなシステムを基に、広く一般で使用できるマッチングシ ステムを開発し、取組の実施者(ICD 等)に普及させていくことができれば、より効率的で 大規模な取組に繋げることが可能となることから、長期的な視野を持ち、関係者が一体とな って開発支援することが望まれる。 7求貨求車情報ネットワーク WebKIT(http://www.nikka-net.or.jp/kit/wkit/top06.html)等
4.4 新しい CRU の推進方法の検討 CRU 成立にあたっての様々な制約条件を緩和し、マッチングの確率を上げる方策として、 従来の一般的な CRU とは異なる新しい CRU の推進方法を検討する。ここでは既に一部で 取組が開始され、規制緩和により実現可能性が高まった海上コンテナの国内貨物輸送への利 用を中心に提案する。さらに、リースコンテナの活用等その他の方法についても引き続き研 究していくことが望ましい。 4.4.1 海上コンテナの国内貨物輸送での利用拡大 海上コンテナ(免税コンテナ)やコンテナトレーラーに係る国内貨物輸送への転用に関す る近年の規制緩和により、海上コンテナを利用した国内貨物輸送が以前に比べ実施し易くな っている。CRU においては、輸入荷主と輸出荷主のマッチングが基本であったが、海上コ ンテナの国内貨物輸送への利用を検討し、国内貨物の荷主とマッチングさせることで、CRU 実施率を高めることが可能である。規制緩和の内容は以下の通りである。 海上コンテナ(免税コンテナ)の規制緩和 免税コンテナの国内転用の規制が平成 24 年度より緩和されている。これにより、 以前までの再輸出期間や輸送経路等の制限が緩和されている。 規制緩和前 規制緩和後 再輸出期間 原則3 か月 原則1 年 空コンテナの国内運送へ の使用 不可(貨物を積んで輸入さ れたコンテナのみ) 制限なし 国内運送の経路 制限あり (貨物取出地から 積込地迄の通常経路のみ) 制限なし 国内運送の使用回数 1 回に限る 制限なし 国内運送使用の事前申請 必要 不要 海上コンテナトレーラーの規制緩和 従来は外国貨物(外貨)を搭載した海上コンテナを輸送するコンテナトレーラー に限り、駆動軸重(11.5 トン:通常は 10 トン以内)の特例措置が許可されていたが、 平成 27 年 5 月から 6 月にかけて、改正された関係省令等の施行がされることで、内 国貨物(内貨)を搭載した海上コンテナを輸送するコンテナトレーラーにも駆動軸 重(11.5 トン:通常は 10 トン以内)の特例措置が適用される予定である。これによ り、従来、内貨輸送の際、最大積載重量が約 24 トンだったところ、外貨を搭載した 海上コンテナ輸送と同一条件(最大積載重量約 30 トン)になることで、1 輸送あた りの経済性が向上する。 また、上記の通り、法制度面での課題はなくなっているが、設備面等についての課題を整 理すると以下の通りである。
床面の高さの違いへの対応 シャーシに搭載された海上コンテナの床面は、国内貨物輸送での通常の物流拠点の作 業場より高いことから、物流拠点におけるドックレベラー等のトラックの高さに対し て柔軟に対応可能な設備の導入を促進することが必要である。 コンテナの開き方の違いへの対応 通常、国内貨物輸送に用いられるトラック車両は「ウイング(側面開き)」が主流で あるのに対し、海上コンテナは「観音開き」が主流である。観音開きの場合は、フォ ークリフトを使用して、コンテナの後ろ側から貨物を積み込む、もしくはコンテナ内 部での積み込み作業が発生し、「ウイング」の場合と作業方法が異なるため、対応が 必要である。 ドライバーの契約体系の違いへの対応 国内輸送のトラックドライバーは荷役作業を行うことが多いが、海上コンテナトレー ラーのドライバーは通常荷役作業を行わないため、ドライバーによる荷役作業を必要 としない荷役方法等の対応が必要である。 4.4.2 リースコンテナの活用 CRU を実施するに当たっては、輸入荷主と輸出荷主で同じ船社を利用していることが前 提となっている。この制約を緩和するためには、船社以外の荷主、輸送事業者、デポ運営者 が主体のリースコンテナの活用も一案であり、今後さらに研究していく必要がある。 4.5 ICD に関する情報の共有と機能充実及び活用 4.5.1 ICD に関する情報の共有 今後 CRU の取組を拡大するためには、参加者を拡大することが必要である。そのために は複数荷主間で連携した CRU を開始し、輸入荷主、輸出荷主ともに一定の条件を満たした 場合には参加できるようにすることが有効であると考えられる。複数荷主間で CRU を実施 する場合は、輸出入のタイミングや使用しているコンテナの状態等が異なってくると考えら れるため、コンテナの保管機能や洗浄機能を持った ICD の利用が必要になる。 このように今後 CRU の取組の拡大において ICD の利用がますます重要となると考えられ るが、ICD の情報はまだ多くの関係者に共有されていない。CRU を実施する際に必要とさ れる ICD としての機能を有している施設はまだ一部にとどまっているが、類似の機能を備 え、CRU を実施する際の ICD として利用可能と考えられる施設も存在すると思われる。こ のため、それらの施設も含めた情報を集約し、わかりやすく荷主等に提供することで CRU の検討を支援することが考えられる。 なお、既存の取組事例でも鉄道貨物輸送を活用した事例があるが、これは鉄道駅をコンテ ナの取扱拠点として用いるとともに、トラック輸送から鉄道輸送にモーダルシフトすること によってさらに CO2削減を実現した取組となっている。このような鉄道貨物輸送を活用し た CRU は鉄道事業者側でも取組を開始しているが、鉄道貨物輸送に関する情報を荷主等に 提供することが望ましい。これにより荷主側での検討も促し、CRU 実施の際の選択肢とし て利用を推進していくことが期待される。
4.5.2 ICD の機能充実及び活用 ICD が荷主企業や船社の求める機能を充実させるため、実入りコンテナを扱える荷役機械 やコンテナの整備体制の確保を行うことも重要である。既に経済産業省や国土交通省、自治 体等で施設整備支援*を行っているがそれらも活用して機能充実を図る必要がある。 また、既に一部で実施されている ICD で実入りコンテナを扱う CRU の拡大や、さらには、 ICD が保有するシャーシを利用した CRU 等の新たな取組手法について実施可能性の検討を 行うことも有用と思われる。 *(参考)支援策の一例 経済産業省:『次世代物流システム構築事業費補助金』 荷主と連携して行う物流効率化による CO2排出削減を実現する実証事業に 対して支援を行う事業。CRU については、ICD が荷役機器や洗浄設備を導 入して実証を行う際や、マッチング等を行う情報システムを構築し実証を行 う際に支援することができる。 4.6 CRU 推進のための体制の整備 CRU 推進に向けては、今回抽出された課題を整理し、引き続き解決策の検討を進めてい く必要がある。また、解決策の考案や取組の普及のため、引き続き関係者間での意見交換等 を継続することも必要である。これらにより、CRU の取組の機運を高め、取組を拡大して いくことが必要であると考える。 このため、まずは荷主企業を中心とした個別の取組や地域ごとの関係者間で連携した取組 を積極的に支援するとともに、抜本的な CRU 取組の拡大を図るため【N 対 N】(輸出企業・ 輸入企業ともに複数)による CRU 実施の仕組作りに向けた検討を積極的に推進することが 必要である。 その上で、将来的には全国的な組織体制を構築することを目指すべきである。 (以 上)