事例 44
デサントジャパン株式会社
販 売 職 の契 約 社 員 から正 社 員 への転 換 を通 じ、長 期 で働 ける環 境 を 整 え、働 く意 欲 やサービスレベル向 上 をめざす 会 社 設 立 年 2016 年 本 社 所 在 地 東 京 都 豊 島 区 目 白 1-4-8 業 種 スポーツウェアの製 造 と販 売 正 社 員 数 1,221 名 ※販 売 職 正 社 員 込 み (男 性 450 名 、女 性 771 名 ) (2017 年 3 月 1 日 現 在 ) 非 正 規 雇 用 労 働 者 数 契 約 社 員 657 名 ※販 売 職 契 約 社 員 込 み (男 性 170 名 、女 性 487 名 ) (2017 年 3月 1 日 現 在 ) 資 本 金 9,000 万 円 売 上 高 131,543 百 万 円 (連 結 ) 取 組 概 要 <背 景 > ・労 働 力 人 口 減 少 による厳 しい採 用 環 境 ・労 働 法 の改 正 を踏 まえた人 事 制 度 の整 備 ・質 の高 いサービスを提 供 するために、働 く環 境 を改 善 <内 容 > ・2016 年 に販 売 職 の月 給 制 契 約 社 員 約 550 名 を一 括 正 社 員 化 ・2016 年 以 降 、正 社 員 登 用 試 験 により 1 年 半 で約 80 名 を正 社 員 登 用 ・考 課 表 にもとづく能 力 重 視 の評 価 制 度 の導 入<効 果 ・結 果 > ・高 い販 売 知 識 と技 術 をもった人 材 の確 保 、定 着 ・離 職 者 の減 少 ・求 人 応 募 者 数 の増 加 同 社 は、大 手 スポーツウェア製 造 ・販 売 会 社 の一 つで、日 本 はもとより、アジアをはじめとした世 界 各 国 へ積 極 的 な事 業 展 開 を進 めている。 2016 年 には、グローバル事 業 の拡 大 と日 本 事 業 の再 構 築 ・強 化 を目 的 に、株 式 会 社 デサント をグルーバル本 社 とし、新 たに日 本 事 業 を担 うデサントジャパン株 式 会 社 を設 立 するなど、グループの 再 編 を行 った。 近 年 は、販 売 職 の正 社 員 化 や働 き方 改 革 にも取 り組 み、長 時 間 労 働 の抑 制 、年 次 有 給 休 暇 の取 得 促 進 など、人 事 ・労 務 管 理 面 でも積 極 的 な対 応 を進 めている。
1. 取 組 の背 景
◆採 用 力 強 化 のために人 事 制 度 を見 直 す
同 社 は、本 部 スタッフと販 売 職 で異 なる人 事 制 度 体 系 を持 っている。本 部 スタッフは、正 社 員 の 総 合 職 (グローバル社 員 )という位 置 付 けである。一 方 、販 売 職 は、百 貨 店 や直 営 店 で勤 務 し、 店 長 を含 めて全 員 を契 約 社 員 として採 用 してきた経 緯 がある。しかし、2016 年 以 降 、契 約 社 員 で ある販 売 職 の中 から正 社 員 への登 用 を進 めている。 同 社 が、契 約 社 員 である販 売 職 を正 社 員 に登 用 する決 断 をした背 景 には、採 用 環 境 の厳 しさが 大 きな要 素 としてあった。例 えば、契 約 社 員 の募 集 を行 っても、応 募 者 のモチベーションの低 さは気 に なり、仮 に採 用 につながっても優 秀 な従 業 員 が転 職 してしまうことも多 かった。社 内 でも、「有 期 雇 用 では将 来 に不 安 を感 じ、キャリアプランも描 きにくい」ことなどが要 因 と分 析 していた。 加 えて、2013 年 の労 働 契 約 法 の改 正 で、同 一 企 業 との間 で、有 期 労 働 契 約 が反 復 更 新 され て通 算 5 年 を超 えた時 に、従 業 員 側 からの申 し込 みにより、無 期 労 働 契 約 に転 換 しなければならな い「無 期 転 換 ルール」が制 度 化 された。この法 改 正 も同 社 が無 期 雇 用 化 を真 剣 に考 える一 つのきっ かけになった。 労 働 力 人 口 が減 少 する中 で、採 用 競 争 力 をつけることは欠 かせない。すでに勤 務 している人 に安 心 して働 ける環 境 を整 備 し、能 力 のある人 に長 く働 き続 けてもらい、顧 客 によりよいサービスを提 供 す るためにも制 度 改 革 が必 要 と認 識 し、取 組 を進 めた。 まず 2014 年 に、販 売 職 に対 して能 力 評 価 制 度 や職 務 等 級 を設 定 するなど処 遇 面 や雇 用 条 件 等 の人 事 制 度 を大 きく変 えた。そして 2015 年 から 1 年 程 度 かけて販 売 職 の無 期 雇 用 化 (正 社 員 化 )の整 備 を進 め、2016 年 6 月 から実 施 に踏 み切 った。 出 典 )デサントジャパン株 式 会 社 提 供2. 取 組 の内 容 ①(正 社 員 登 用 )
◆3タイプの販 売 職
2016 年 以 前 、販 売 職 は基 本 的 に店 長 を含 めて全 員 契 約 社 員 であったが、給 与 の支 払 い形 態 が、「月 給 (年 俸 月 給 )」「日 給 」「時 給 」の3タイプあり、それぞれ「SC 社 員 」「パートナー」「アルバイ ト」といった呼 称 を社 内 では用 いていた。 同 社 では、採 用 時 は基 本 的 に日 給 制 の「パートナー」での採 用 で、業 務 上 必 要 な基 本 動 作 の確 認 、アパレル素 材 の知 識 等 を筆 記 試 験 で審 査 し、月 給 制 である「SC(セールスコーディネータ=) 社 員 」に昇 格 できるようになっていた。 販 売 経 験 のない従 業 員 の場 合 、人 により違 いはあるものの、「パートナー」での採 用 から、「SC 社 員 」になるまでに、概 ね2~3年 程 度 かかるケースが多 かった。「SC 社 員 」は、契 約 社 員 であっても社 内 ではランクが違 うと認 識 されており、賞 与 の支 給 、月 ごとの予 算 の達 成 給 やインセンティブも用 意 さ れているので、従 業 員 にとっても「SC 社 員 」になることに処 遇 面 でのメリットがあった。◆2014 年 に販 売 職 の人 事 制 度 を大 幅 改 正 ~能 力 にもとづく評 価 の重 視 ~
同 社 では 2014 年 の段 階 で販 売 職 に対 し、役 割 責 任 給 の増 加 や能 力 にもとづき評 価 をする制 度 を導 入 するなど、大 規 模 な人 事 制 度 の改 正 を行 った。 それまでの評 価 は、主 に売 上 を重 視 したものであった。そのために本 人 の能 力 がいくら高 くても、売 上 の少 ない店 舗 に配 属 されてしまうと、処 遇 面 の改 善 が期 待 できないという問 題 を抱 えていた。しかし、 従 業 員 の評 価 を能 力 にもとづくものに変 更 することにより、評 価 にあたって店 舗 の売 上 の影 響 を抑 制 し、公 平 性 を確 保 できるようになった。 また、1~4級 までの等 級 を設 けて、職 能 基 準 を明 確 にした。目 安 としては、一 般 スタッフは 3~4 級 、店 長 は 3 級 から、その上 のスーパーバイザーは 2 級 、特 に優 秀 な店 長 が 1 級 となっている。 等 級 を整 備 したことにより、勤 続 年 数 ではなく、能 力 にもとづく評 価 が徹 底 できた。個 々の能 力 によ り同 じ等 級 にとどまる人 、急 ピッチでスキルアップする人 、人 事 サイドから「等 級 を上 げたい」人 、中 途 採 用 者 の中 で優 秀 な人 を一 気 に高 い位 置 につけるなど、さまざまなケースに対 応 しやすくなった。◆販 売 職 の「SC 社 員 」を一 括 正 社 員 化
人 事 制 度 の整 備 が進 んだ 2016 年 6 月 に、約 1,000 名 いた契 約 社 員 のうち、フルタイム勤 務 で 正 社 員 に近 い倫 理 観 と素 質 を持 っている「SC 社 員 」約 550 名 を、一 斉 に「正 社 員 」に登 用 した。「SC 社 員 」はすでに、「パートナー」から昇 格 する時 に試 験 を受 けているので、特 に試 験 等 を課 すことなく「販 売 職 正 社 員 」への登 用 を実 施 した。「SC 社 員 」が契 約 社 員 であった時 代 には、約 束 された昇 給 やキャ リアップがみつけづらい面 があった。しかし、「販 売 職 正 社 員 」に対 しては、「考 課 表 」にもとづき、能 力 を中心 とした評 価 を行 うようにした。一 般 的 に販 売 職 の場 合 、「販 売 職 正 社 員 」に登 用 されて、「一 般 スタッ フ」になった後 は、「副 店 長 (相 当 )」「店 長 」「スーパーバイザー」といったキャリアを歩 むことになるが、昇 給 やキャリアアップの見 通 しが以 前 よりも立 てやすくなった。 「正 社 員 (販 売 職 )のキャリア」 出 典 )デサントジャパン株 式 会 社 へのヒアリング調 査 をもとに作 成