• 検索結果がありません。

n 2 + π2 6 x [10 n x] x = lim n 10 n n 10 k x 1.1. a 1, a 2,, a n, (a n ) n=1 {a n } n=1 1.2 ( ). {a n } n=1 Q ε > 0 N N m, n N a m

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "n 2 + π2 6 x [10 n x] x = lim n 10 n n 10 k x 1.1. a 1, a 2,, a n, (a n ) n=1 {a n } n=1 1.2 ( ). {a n } n=1 Q ε > 0 N N m, n N a m"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

澤野嘉宏

1

実数とは

実数とはいったいなんであろうか?有理数という概念は既知の状態からはじめたい. 高校生のときに, 1 1 + 1 4 +· · · + 1 n2 +· · · が収束することを示したことはあるだろうか?この値がπ 2 6 になることを知っている人 もいるであろうが,正確な値を計算するのは大学に入りたてのときは容易ではない. 実数とはと考えたときに,有理数列の極限であると答えるのは正当であろう.実際に, 任意の実数xに対して x = lim n→∞ [10nx] 10n であるからである.右辺に現れた極限は要するに小数点n桁までで数を区切って残りを 切って捨てたものである. 近似をするときに,10進法にこだわる必要はなく,k進法であってもよい.とにかく, 与えられたxを有理数で近似する方法は当然のことであるがとてつもなく多い. 実数とは,このようにして有理数による近似列であることを言う. 定義 1.1. 数列のあらわし方として, a1, a2,· · · , an,· · ·(an)∞n=1 などがあるが,ここでは {an}∞n=1 という記号を用いる. 定義 1.2 (有理数のコーシー列). {an}∞n=1⊂ Q がコーシー列であるとは,任意の有理数 ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり,m, n≥ N のときに, |am− an| < ε が成り立つことをいう.

(2)

これでは,なぜこの定義が実数の近似列の定義にふさわしいか理解できないかもしれ ない.意味をもう少し詳しく考えてみよう. 1. ε = 10−1とすると,それに応じてあるN が決まり,m, n≥ N のときに, |am− an| < ε = 10−1 となる.つまり,Nより添え字が小さいものは無視するとしてam, anの小数第1 位は(繰り下がりによる9が現れる現象を除いて)1しか違わない. 2. ε = 10−2とすると,それに応じてあるN が決まり,m, n≥ N のときに, |am− an| < ε = 10−2 となる.つまり,Nより添え字が小さいものは無視するとしてam, anの小数第2 位は(繰り下がりによる9が現れる現象を除いて)1しか違わない. 3. ε = 10−3とすると,それに応じてあるN が決まり,m, n≥ N のときに, |am− an| < ε = 10−3 となる.つまり,Nより添え字が小さいものは無視するとしてam, anの小数第3 位は(繰り下がりによる9が現れる現象を除いて)1しか違わない. 4. 以下同様にεを10−nと選んで小数n位まで値をそろえられる. 例 1.3. 1. 有理数rが与えられると,an= r, r = 1, 2,· · · とおくことで,コーシー列{an}∞n=1 が得られる. 2. 次の有理数に対するアルキメデスの性質を確認しておこう. 任意の有理数ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,N ε > 0となる. この性質を用いると,いろいろなコーシー列が得られる. an= 1 12 + 1 22 +· · · + 1 n2, n = 1, 2,· · · とする.n > m≥ N のときに an− am = 1 (m + 1)2 + 1 (m + 2)2 +· · · + 1 n2 < 1 m(m + 1)+· · · + 1 n(n + 1) = 1 n− 1 m + 1 < 1 n < 1 N

(3)

であるから,任意にε > 0が与えられたときに,あるN ∈ Nが存在して,N ε > 1 となるから, n > m≥ N のときに,an− am =|an− am| < ε となる.対称性から n, m≥ Nのときに,|an− am| < ε となる. 有理数のコーシー列の定義を書き換えておこう. 定理 1.4 (有理数のコーシー列の書き換え,等号に関する注意). 有理数列{an}∞n=1⊂ Q につき次は同値である. 1. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N のときに, |am− an| < ε (1) が成り立つ. 2. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n > N のときに, |am− an| < ε (2) が成り立つ. 3. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N のときに, |am− an| ≤ ε (3) が成り立つ. 4. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n > N のときに, |am− an| ≤ ε (4) が成り立つ. したがって,これらの4条件はどれもコーシー列の定義として採用できる. 証明. 表面的に()のついた部分の式だけを見ると, (1) =⇒ (2), (3) =⇒ (4) がわかる.したがって,(4)なら(1)を示せばよい. 主張全体を示すためには,(1) 全体を見なくてはいけない.まず,任意にε > 0を取 る.(4) を使いたいが,この ε > 0 に対して用いてはならない.1 2εに対して用いるのである.すると,(4)によって,N ∈ N が存在して, n, m > N ならば,|an− am| ≤ 1 2ε が成り立つ.条件に現れたNMと書き換えて

(4)

M ∈ Nが存在して, n, m > M ならば,|an− am| ≤ 1 2ε が成り立つと仮定してかまわない. はじめに, N = M + 1 とおくことで, n≥ N ⇐⇒ n > M が成り立つことに注意する.また, 1 2ε < ε も成り立つ.このことから, n, m≥ Nならば,|an− am| < ε となる.よって,(1)が示された. 定理 1.5 (有理数のコーシー列の書き換え,N, εに関する注意). 有理数列{an}∞n=1⊂ Q につき次は同値である. 1. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N のときに,|am− an| < ε (5) が成り立つ. 2. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N のときに,|am− an| < 2ε (6) が成り立つ. 3. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N + 1のときに,|am− an| < ε (7) が成り立つ. 4. 任意の有理数ε > 0に対してそれに応じてあるN ∈ Nが決まり, m, n≥ N のときに,|am− an| < 1 2ε (8) が成り立つ. したがって,これらの4条件はどれもコーシー列の定義として採用できる.

(5)

このようにして,N, εを取り替えることができる. 証明. 条件をみて明らかなように(3)と(7)は同値である.したがって,(1)と(5) は同 一であるから,(6)と(8)と(1)との同値性を示せばよい. (8) =⇒ (4) ⇐⇒ (1) =⇒ (6) は明らかであるから,(6) を認めて,(8)を示せばよい.(8)にあるように,任意に有理 数ε > 0を取ってきて(6)を1 4εに対して使う.すると,(6)によってあるN が存在して, m, n≥ N のときに,|am− an| < 2 · 1 4ε が成り立つ.よって,(8)が示された. 有理数のコーシー列{an}∞n=1 がある実数αを近似している列であるとするなら,別 の有理数の近似列{an+ 10−n}∞n=1 も『同じ』実数αを近似しているはずである.そこ で,次のような定義を与える. 定義 1.6 (有理数のコーシー列の相等). {an}∞n=1{bn}∞n=1を有理数のコーシー列とす る.これらが『同じ』であるというのは次の条件を満たしていることである. [条件]任意のε > 0に対してそれに応じてN ∈ Nが決まってn≥ Nのとき に,|an− bn| < ε となる. 『同じ』という概念が出てきたが,数学では同値関係という用語を用いる.同値関係 とは次の定理にある3条件を満たしていることである. 定理 1.7. {an}∞n=1,{bn}∞n=1,{cn}∞n=1 を有理数のコーシー列とする. 1. (反射律){an}∞n=1{an}∞n=1 は『同じ』である. 2. (対称律){an}∞n=1{bn}n=1∞ が『同じ』であるなら,{bn}∞n=1{an}∞n=1 は『同 じ』である. 3. (推移律){an}∞n=1{bn}∞n=1 が『同じ』で,{bn}∞n=1{cn}∞n=1 が『同じ』で あるなら,{an}∞n=1{cn}∞n=1 は『同じ』である. 証明. 12は明らかであろう.3を証明しよう.{an}∞n=1{bn}∞n=1 が『同じ』で, {bn}∞n=1{cn}∞n=1 が『同じ』であるから, [条件]任意のε > 0に対してそれに応じてN ∈ Nが決まってn≥ Nのとき に,|an− bn| < ε となり,

(6)

[条件]任意のε > 0に対してそれに応じてN ∈ Nが決まってn≥ Nのとき に,|bn− cn| < ε となる.これより,任意の有理数ε > 0に対して, [条件] N1 ∈ Nが決まってn≥ N1のときに,|an− bn| < 1 2ε となり, [条件] N2 ∈ Nが決まってn≥ N2のときに,|bn− cn| < 1 2ε となる.N = max(N1, N2)とおくと,n≥ N のときに, |an− bn| < 1 2ε,|bn− cn| < 1 2ε であるから,三角不等式|α + β| ≤ |α| + |β|によって,n≥ Nのときに, |an− cn| ≤ |an− bn| + |bn− cn| < 1 2ε + 1 2ε = ε となる.

1.1

コーシー列のその他の性質

定義 1.8 (有界数列). 数列{an}∞n=1 が有界であるとは,あるM が存在して,|an| ≤ M, n∈ Nが成り立つことである. 定理 1.9. 有理数のコーシー列は有界である. 証明. {an}∞n=1をコーシー列とする.ε = 1 > 0であるから,あるNが定まり,m, n≥ N のときに|an− am| ≤ 1となる.したがって, M = max(|a1|, |a2|, · · · , |aN−1|, |aN| + 1) とおけば,|an| ≤ M, n ∈ Nが成り立つ.

1.2

コーシー列の演算

実数とはコーシー列であると述べたが,ここでは,コーシー列に関する演算を用意して 実数に演算を入れる. 命題 1.10. {an}∞n=1,{bn}∞n=1 をコーシー列とする. 1. {an+ bn}∞n=1はコーシー列である.

(7)

2. {an− bn}∞n=1はコーシー列である. 3. {anbn}∞n=1はコーシー列である. 4. {bn}∞n=1 と0は『同じ』ではないとする.あるε0とNが存在して,n≥ Nのとき は,|bn| > 1 2ε0 > 0 となる. 5. {bn}∞n=1 と0は『同じ』ではないとする.さらに,bn̸= 0, n = 1, 2, · · · とする.こ のとき,{an/bn}∞n=1はコーシー列である. 4,5が他とくらべて難しいので,これだけを証明する. 4の証明. {bn}∞n=1と0は同じではないので,ある有理数ε0 > 0が存在して,任意のN に対して,あるn≥ Nが存在して,|bn| > ε0 が成立する.一方,{bn}∞n=1はコーシー列 であるから,あるN′が存在して,n, m≥ N′のときに,|bn− bm| > 1 2εが成立する.こ こで, 任意のNに対して,あるn≥ N が存在して,|bn| > ε0 であるという条件をN = N′に対して適用すると,あるn≥ N′が存在して|bn| > ε0と なる.したがって,m≥ N′の時には |bm| ≥ |bn| − |bm− bn| > ε0 1 2ε0 = 1 2ε0 > 0 となる.以上より,あるε0とN が存在して,n ≥ N のときは,|bn| > 1 2ε0 > 0 とな る. 5の証明. さて,{an/bn}∞n=1を考える.コーシー列は有界であるから,あるM > 0が存 在して,|an|, |bn| ≤ M が成り立つ.また,4で証明したように,あるε0とNが存在し て,n≥ Nのときは,|bn| > 1 2ε0 > 0 となるが,b1, b2,· · · , bN−1 ̸= 0であるから, κ = min ( |b1|, |b2|, · · · , |bN−1|, 1 2ε0 ) とおけば,|bn| ≥ κ > 0, n ∈ Nが成り立つ.したがって,自然数m, n∈ Nに対して an bn am bm = |anbm− ambn| |bnbm| |anbm− ambm+ ambm− ambn| |bnbm| |anbm− ambm| + |ambm− ambn| κ2 M κ2 (|an− am| + |bm− bn|)

(8)

となる. 以上のことを踏まえて,任意にε > 0を取る.すると,あるN1, N2が存在して, n, m≥ N1=⇒ |an− am| < κ2ε 2M, n, m≥ N2=⇒ |bn− bm| < κ2ε 2M となる.N = max(N1, N2)とすると, n, m≥ N =⇒ |an− am| < κ2ε 2M,|bn− bm| < κ2ε 2M だから,n, m≥ N のとき, an bn am bm Mκ2 (|an− am| + |bm− bn|) ≤ ε となる.よって,{an/bn}∞n=1はコーシー列である. 定義 1.11. {an}∞n=1,{bn}∞n=1 をコーシー列とする. 1. {an}∞n=1+{bn}∞n=1≡ {an+ bn}∞n=1 と定める. 2. {an}∞n=1− {bn}∞n=1≡ {an− bn}∞n=1 と定める. 3. {an}∞n=1· {bn}∞n=1≡ {anbn}∞n=1 と定める. 4. {bn}∞n=1 と0は『同じ』ではないとする.{an}n=1∞ ÷ {bn}∞n=1 ≡ {an/bn}∞n=1 と定 める. 注意 1.12. Aという『量』をBでもって定義するとき,A := B, A≡ Bと書く. 命題1.13.{an}∞n=1,{bn}∞n=1,{a∗n}∞n=1,{b∗n}∞n=1をコーシー列とする.{an}∞n=1{a∗n}∞n=1 は『同じ』で{bn}∞n=1{b∗n}∞n=1 も『同じ』であるとする. 1. {an}∞n=1+{bn}∞n=1{a∗n}∞n=1+{b∗n}∞n=1 は『同じ』である. 2. {an}∞n=1− {bn}∞n=1{a∗n}∞n=1− {b∗n}∞n=1 は『同じ』である. 3. {an}∞n=1· {bn}∞n=1{a∗n}∞n=1· {b∗n}∞n=1 は『同じ』である. 4. {bn}∞n=1{b∗n}∞n=1はどちらも0は『同じ』ではないとする.このとき,{an}∞n=1÷ {bn}∞n=1{a∗n}∞n=1÷ {b∗n}∞n=1 は『同じ』である. 4は他と比べて面倒なので,4だけを証明する. 4の証明. はじめに,コーシー列は有界であるから,M が存在して, |an| + |a∗n| + |bn| + |b∗n| ≤ M が成り立つことに注意する.さらに,{bn}∞n=1{b∗n}∞n=1 はどちらも0は『同じ』では ないから,あるκ > 0が存在して,|bn|, |b∗n| ≥ κが成り立つ.

(9)

任意に有理数ε > 0を与える.すると,あるN1, N2が定まり, n≥ N1=⇒ |an− a∗n| < κ2 2Mε n≥ N2=⇒ |bn− b∗n| < κ2 2Mε となる.したがって, an bn a∗n b∗n = |anb∗n− a∗nbn| |bnb∗n| |anb∗n− a∗nb∗n+ a∗nb∗n− a∗nbn| |bnb∗n| |anb∗n− a∗nb∗n| + |a∗nb∗n− a∗nbn| κ2 M κ2 (|an− a∗n| + |b∗n− bn|) であるから,n≥ N = max(N1, N2)の時には, an bn a∗n b∗n Mκ2 (|an− a∗n| + |b∗n− bn|) < ε となる.よって,{an}∞n=1÷ {bn}∞n=1{a∗n}∞n=1÷ {b∗n}∞n=1 は『同じ』である.

2

コーシー列の大小

実数には大小関係があったのだから,コーシー列にも大小関係を導入しないといけない. そこで,コーシー列が2つ与えられたときに大小関係を導入する. 定義 2.1. {an}∞n=1{bn}n=1∞ をコーシー列とする.{an}∞n=1 ≤ {bn}∞n=1 とは,任意の 有理数ε > 0に対してある実数N が定まり,n≥ Nのときにbn− an>−ε が成り立つ こととする. 命題2.2. {an}∞n=1,{bn}∞n=1,{a∗n}∞n=1,{b∗n}∞n=1をコーシー列とする.{an}∞n=1{a∗n}∞n=1 は『同じ』で{bn}∞n=1{b∗n}n=1∞ も『同じ』であるとする.{an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 である ならば,{a∗n}∞n=1≤ {b∗n}∞n=1 となる. 証明. {an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 であるから,任意の有理数ε > 0に対してある実数Nが定ま り,n≥ Nのときにbn− an>− 1 3εが成り立つ.いあ,{an} n=1{a∗n}∞n=1 は『同じ』 で{bn}∞n=1{bn∗}∞n=1 も『同じ』であるから,N1, N2が存在して, n≥ N1 =⇒ |an− a∗n| < 1 3ε n≥ N2 =⇒ |bn− b∗n| < 1 3ε

(10)

となる.n≥ N∗ = max(N1, N2, N )とすると, b∗n− a∗n= b∗n− bn+ bn− an+ an− a∗n>− 1 3ε− 1 3ε− 1 3ε =−ε となる.したがって,{a∗n}∞n=1≤ {b∗n}∞n=1 となる. 次の性質が得られる. 命題 2.3. {an}∞n=1,{bn}∞n=1,{cn}∞n=1 を有理数のコーシー列とする. 1. {an}∞n=1≤ {an}∞n=1 2. {an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 かつ{bn}∞n=1≤ {an}∞n=1 ならば,{an}∞n=1 ={bn}∞n=1 となる. 3. {an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 かつ{bn}∞n=1 ≤ {cn}∞n=1 ならば,{an}∞n=1≤ {cn}∞n=1 となる. 4. {an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 または{bn}∞n=1≤ {an}∞n=1 の少なくとも一方が成り立つ. 5. {an}∞n=1≤ {bn}∞n=1 ならば,{an}∞n=1+{cn}∞n=1≤ {bn}∞n=1+{cn}∞n=1 である. 6. 0 ≤ {an}∞n=1 かつ{bn}∞n=1 ≤ {cn}n=1∞ であるなら,{anbn}∞n=1 ≤ {ancn}∞n=1 で ある. 証明. 4を示す.仮に,{an}∞n=1 ≤ {bn}∞n=1でなかったとする.すると,ある有理数ε0 > 0 が存在して,任意のN に対して,n0 ≥ N が存在して,bn0− an0 ≤ −ε0 が成り立つ. {an}∞n=1{bn}∞n=1 はコーシー列であるから,このε > 0に対して,あるN1, N2が 存在して, n, m≥ N1 =⇒ |an− am| < 1 3ε0 n, m≥ N2 =⇒ |bn− bm| < 1 3ε0 そこで,N = max(N1, N2)に対してn0 ≥ Nが存在して,an0− bn0 ≤ −ε0 が成り立つ から,m≥ N のとき, bm− am = (bm− bn0) + (bn0− an0) + (an0 − am) < 1 3ε0− ε0+ 1 3ε0 = 1 3ε0 となる.つまり,あるε0とNが存在して, m≥ N =⇒ bm− am <− 1 3ε0 < 0 となる.したがって,任意の有理数ε > 0に対して, n≥ N =⇒ an− bn> 1 3ε0 >−ε であるから,{an}∞n=1≥ {bn}∞n=1 である.

(11)

3

コーシー列の収束

定義 3.1 (有理数コーシー列の列). {{am,n}∞n=1}∞m=1 が有理数のコーシー列の列である とは,各m∈ Nに対して{am,n}∞n=1 がコーシー列である事を意味する. 定義3.2 (有理数コーシー列の列のなすコーシー列). 有理数のコーシー列の列{αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 がコーシー列であるとは,任意の有理数のコーシー列ε = {εn}∞n=1 で 0より真に大きいものに対してあるN ≥ nが存在して,n, m > N であるなら, −ε < αm− αn< ε が成り立つことを意味する. 定義 3.3 (有理数のコーシー列の列の収束). α ={αn}∞n=1を有理数のコーシー列とする. 有理数のコーシー列の列{αn}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1αに収束するとは,任意の有 理数のコーシー列ε ={εn}∞n=1 で0より真に大きいものに対してあるN ≥ nが存在し て,n, m > N であるなら, −ε < αm− α < ε が成り立つことを意味する.収束先αを明示しない(もしくは出来ない)場合は,有理 数のコーシー列の列{αn}∞m=1 ={{am,n}∞n=1}∞m=1 が収束するとか有理数のコーシー列の 列{αn}∞m=1 ={{am,n}∞n=1}∞m=1 が収束列であるという. 実数は有理数の極限として得られる.このことを正確に定式化して証明しておこう. 定理 3.4 (実数の稠密性(1)). 有理数のコーシー列α ={an}∞n=1に対して,有理数列 αm ={am}∞n=1αに収束している. Proof. 有理数のコーシー列ε ={εn}∞n=1 で0より真に大きいものを考えると,有理数ε0 が存在してあるN0が存在して,n≥ N0のときに,εn≥ ε0 > 0 となる.任意に有理数 ε∗ > 0を与えると,{an}∞n=1はコーシー列であるから,あるN が存在して, n, m≥ N =⇒ |an− am| < min(ε∗, ε0) となる.したがって,m≥ N0のときに |α − αm| < min(ε∗, ε0) < ε であるから, lim m→∞αm = αが証明された. 次の性質が有理数にはない重要な性質である. 定理 3.5. 有理数のコーシー列のコーシー列は収束列である. 証明. {αm}∞m=1 = {{am,n}∞n=1}∞m=1 を有理数からなるコーシー列のコーシー列とする. αm ={am,n}∞n=1 はコーシー列であるから,あるN (m)が存在して,n1, n2 ≥ N(m)

(12)

らば、|am,n1 − am,n2| < 2−mとなる.次に,{αm}∞m=1 はコーシー列であるから,任意 のL∈ Nに対してあるM (L)が存在して, m1, m2 ≥ M(L)ならば,− 2−L−2< αm1− αm2 < 2 −L−2 となる.この式をもう少し噛み砕こう.条件によってm1, m2 ≥ M(L)に対してN (m˜ 1, m2) が存在して, m1, m2 ≥ M(L), n > ˜N (m1, m2)ならば,− 2−L−1< αm1,n− αm2,n < 2−L−2 となる.特に, −2−L−1< αm 1,N (m1)+N (m2)+ ˜N (m1,m2)− αm2,N (m1)+N (m2)+ ˜N (m1,m2) < 2 −L−1 ここで, −2−m1 < α m1,N (m1)− αm1,N (m1)+N (m2)+ ˜N (m1,m2)< 2 −m1 −2−m2 < α m2,N (m2)− αm2,N (m1)+N (m2)+ ˜N (m1,m2)< 2 −m2 であるから, m1, m2≥ L + 2ならば,− 2−L< αm1,N (m1)− αm2,N (m2)< 2−L となる. 任意に有理数ε > 0を与えたときに,2−L< εとなるLが存在する.このようなLに 対して,m1, m2 ≥ L + 2であるなら, −ε < αm1,N (m1)− αm2,N (m2)< ε であるから,数列α ={aL,N (L)}∞L=1 はコーシー列である. lim m→∞αm = αを示そう.任意にε > 0を与えて,それに応じてL∈ Nを2 −L< ε なるようにとる.αm− α = {αm,n− αn,N (n)}∞n=1 を調べないといけない. mを任意に固定する.n≥ N(m)とする. αm,n− αn,N (n) = αm,n− αm,N (m)+ αm,N (m)− αn,N (n) である.ここで,先ほど示したように m, n≥ L + 2ならば,− 2−L< αm,N (m)− αn,N (n) < 2−L である.さらに,N (m)の定義から n≥ N(m)ならば,2−mαm,n− αm,N (m)< 2−m である.以上より,m≥ L + 2かつn≥ L + 2のときに −2−L+1< αm,n− αn,N (n)< 2−L+1 がいえた.これより,m≥ L + 2のときに, −2−L+1< αm− α < 2−L+1 となる.これは, lim m→∞αm = α を意味している.

(13)

次の事実の方が実数の連続性としては親しみやすいし,知っている人も多いと思うの で,先ほどの定理を書き換えておこう. 定理 3.6. K ={kn}∞n=1 を有理数のコーシー列,{αm} = {{am,n}∞n=1} を有理数のコー シー列の列とする.もし, α1 ≤ α2 ≤ · · · ≤ αm≤ αm+1 ≤ · · · ≤ K が成り立つならば,α ={αm}∞m=1 は収束する. 証明. αが有理数のコーシー列のコーシー列であることを示せばよい.仮に,そうでなかっ たとすると,ある有理数のコーシー列ε > 0が存在して任意のM に対してあるm1, m2 が存在して,m1> m2 ≥ M かつαm1 − αm2 > εが成り立つ.これは数列{αm}∞m=1 の 階差がεを超えることが無限回あることを意味しているので,αmmが大きければK を超える.これは仮定に反する. 本書ではさらに次の性質をよく使う. 定理 3.7. 実数の部分集合Aが次の条件を満たしているとする. あるMが存在して,a∈ Aならば,a≤ M となる. このとき,このようなMには最小値M0が存在する.つまり,次のような条件を満たし ているM0が存在する. 1. a∈ Aならば,a≤ M0となる. 2. m < M0であるなら,あるa∈ Aが存在して,a > mとなる. 証明. 数列{Mn}∞n=1を次のようにして定める.M1をM0−n, n = 0, 1, 2, · · ·の形の数で 最小なものとする.M1, M2,· · · , Mnが定まったとして,Mn+1は次のようにして定める. 1. すべてのa∈ Aについて,a≤ Mn− 2−nならば,Mn+1 = Mn− 2−nとする. 2. そうでなければ,Mn+1= Mnとする. すると,Mn− 2−n≤ Mn+1 ≤ Mn であるから,{Mn}∞n=1M1− 1 ≤ Mnとなるよう な減少数列である.したがって,極限M = lim n→∞Mnが存在する. a≤ Mn, n = 1, 2,· · · , a ∈ A であるから,a≤ M となる.

(14)

4

まとめ

有理数のコーシー列とは実数を表すためのデーターの集まりであると説明した.したがっ て,有理数のコーシー列とは実数をあらわしていると考えてよい.以上のことを踏まえ ると,次の条件を満たしている集合を有理数全体の集合Qから構成できたことになる. 【代数構造】 (a) 【Rの加法群としての構造】 i. 【0の存在】0 + α = α + 0. ii. 【逆元の存在】任意のαに対して−αが存在して,α+(−α) = (−α)+α = 0. iii. 【結合法則】任意の実数α, β, γ に対して,α + (β + γ) = (α + β) + γ. iv. 【交換法則】任意の実数α, β に対して,α + β = β + α (b) 【環構造】 i. 【1の存在】α1 = 1αが成り立つ. ii. 【結合法則】任意の実数α, β, γ に対して,α(βγ) = (αβ)γ. iii.【分配法則】任意の実数α, β, γに対して,α(β +γ) = αβ +αγ,(α+β)γ = αγ + βγ. iv. 【交換法則】任意の実数α, β に対して,αβ = βα. (c) 【体構造】 i. 0ではない実数αに対して,αα−1 = α−1α = 0. ii. 1̸= 0. 【順序構造】 (a) 【全順序集合】 i. α≤ α. ii. α≤ β, β ≤ α ならば,α = β. iii. α≤ β, β ≤ γ ならば,α≤ γ. iv. α≤ βもしくはβ ≤ αが成り立つ. (b) 【足し算】α ≤ βならば,α + γ ≤ β + γ. (c) 【掛け算】α ≤ β, 0 ≥ γならば,αγ≤ βγ. 1. 【Rの完備性】任意の上に有界な数列は収束する.上に有界な集合には上限がある. 2. 【Qの稠密性】Qを真部分集合として含み,Qの数列からなる数列の極限として あらわされる. われわれは,円周率πを考えるときそれを近似している有理数を考えないのと同じよう に以後,実数とは有理数のコーシー列のことと定義はしたもののどのような有理数のコー シー列かは一切考えない事とする.

参照

関連したドキュメント

This paper is a sequel to [1] where the existence of homoclinic solutions was proved for a family of singular Hamiltonian systems which were subjected to almost periodic forcing...

In the second section, we study the continuity of the functions f p (for the definition of this function see the abstract) when (X, f ) is a dynamical system in which X is a

The conjecture of Erd¨os–Graham was proved by Dixmier [2], by combining Kneser’s addition theorem for finite abelian groups and some new arguments carried over the integers.. Let

(The Elliott-Halberstam conjecture does allow one to take B = 2 in (1.39), and therefore leads to small improve- ments in Huxley’s results, which for r ≥ 2 are weaker than the result

Our main interest is to determine exact expressions, in terms of known constants, for the asymptotic constants of these expansions and to show some relations among

(iii) In Section 4 we show that under the assumptions of Theorem 2.1(i) there exists a positive bounded initial condition u o , for which the solution of the par- abolic problem

More precisely, the category of bicategories and weak functors is equivalent to the category whose objects are weak 2-categories and whose morphisms are those maps of opetopic

Given T and G as in Theorem 1.5, the authors of [2] first prepared T and G as follows: T is folded such that it looks like a bi-polar tree, namely, a tree having two vertices