研究論文
ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
-燃料噴射圧力が噴霧特性に及ぼす影響-
西浦 宏亮) 寺師 尚人) 松村 恵理子 千田 二郎
A Study on Entrainment Characteristics in Diesel Spray
- Effects of Fuel Injection Pressure on Spray Characteristics -Kohsuke Nishiura Naoto Terashi Eriko Matsumura Jiro Senda
The purpose of this report is to grasp the entrainment characteristics in diesel sprays. Here, shadowgraph photography, scattered light photography and analysis of free spray in noncombustible field was carried out by using a constant volume vessel. As the result of measurement using shadowgraph photography and scattered light photography, it was found that spray volume is larger with the rise of fuel injection pressure, and spray volume of evaporation field is larger than that of non evaporation field.
KEY WORDS: Heat engine, Compression ignition engine, Fuel spray, Air entrainment (A1) 1.緒 言
近年,化石燃料の枯渇が懸念されており(1),発展途上国における
自動車の需要が今後増加することで,さらなる化石資源の大量消 費が示唆されている(2).同時に,排出される有害物質の増加が予想
されるため(3),今後実使用環境を想定した試験法(WLTC:
Worldwide light-duty test cycle)(4)が導入され,内燃機関において幅広
い運転領域での熱効率の向上および低エミッション化が求められ ている(5)~(6). 内燃機関では,噴霧の微粒化が蒸発過程および混合気形成過程 に深く影響すると言われており,熱発生率や排気物質を左右する 一つの要因となっている(7)~(8).よって,噴霧の微粒化は熱効率の向 上において重要な要素となる.また,内燃機関における燃焼は噴 霧の影響を大きく受け,混合気特性に依存する(9).そのため,噴霧 に依存する燃焼速度や燃焼温度等を制御することが可能になれば, 理想的な燃焼の実現につながり,熱効率を高めることが可能にな る(10).以上より,熱効率の向上および低エミッション化を実現さ せるためには,微粒化過程および混合気形成過程における詳細な 噴霧特性を把握する必要がある. 本研究では,ディーゼル機関において熱効率50 %を達成する ため(11),燃料噴射圧力Pinj,ノズル噴孔径Φdn,燃料温度Tf, パイロット噴射割合Qpilotを変化させた実験を行ない,燃焼に 最適な噴霧を実現する制御パラメータ値を算出することを目 的としている.ここで,本研究における燃焼に最適な噴霧と は,冷却損失を低減させると同時に燃焼効率を維持または向 上させる噴霧として考えている.そして本実験では,ディーゼ ル噴霧の混合気形成過程に関わる空気導入過程に着目し,噴霧形 状を把握するため蒸発場ではシャドウグラフ法,非蒸発場では散 乱光撮影法を用いてディーゼル噴霧の計測を行なった.本報では, 本研究における制御パラメータのうち,噴射率は異なるが燃料噴 射圧力Pinjを変化させた実験を行なうことで,燃料噴射圧力がディ ーゼル噴霧の噴霧特性に及ぼす影響について評価を行なった. 2.実験装置および実験条件 2.1. 実験装置および実験方法 2.1.1.蒸発場での自由噴霧撮影における実験装置 高温・高圧のディーゼル雰囲気場において噴霧の可視化を 行なうため,噴霧の撮影手法としてシャドウグラフ撮影法を 用いた.図1 に実験装置の概略図を示す.本実験における実 験装置は定容容器,可燃予混合気を作製する混合容器,燃料 噴射装置および制御装置,可視化用レーザ照明,ハイスピー ドビデオカメラにより構成される.まず,混合容器内におい てアセチレン,酸素および窒素を組成とする可燃予混合気を 作製し,定容容器内に充填した.その後,スパークプラグを 用いて可燃予混合気を点火・燃焼させ雰囲気場を高温・高圧 にし,雰囲気圧力が任意の圧力まで低下した際に燃料を噴射 した.なお,定容容器には雰囲気場を均一にするため,攪拌 機を設置した.また,燃料噴射装置にはコモンレール式燃料 噴射装置(DENSO:HP-7 システム)を用いて,単噴孔ホールノ ズル(DENSO:G3P インジェクタ)により燃料を噴射した.光 源には,可視化用レーザ照明(Cavitar Ltd.:CAVILUX Smart, 波長λL =640 nm)を用いた.レーザ光は片凸レンズ(f =1200 *2017 年 6 月 14 日受理. 2017 年 5 月 24 日 自動車技術会春季学術講演会にて発表. 1) 同志社大学大学院 (610-0394 京田辺市多々羅都谷 1-3) 2) 愛三工業(株)(474-8588 大府市共和町一丁目 1-1) 3)・4) 同志社大学 (610-0394 京田辺市多々羅都谷 1-3)
*
201340 20174844ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
mm)によって並行光となり噴霧に照射され,再び片凸レンズ (f =1200 mm)を通過し集光され,カメラのレンズ上に像を 結 像 す る . 撮 影 に は ハ イ ス ピ ー ド ビ デ オ カ メ ラ(Vision Research Inc.:Phantom v2011)を使用し,撮影速度は 20,000 fps とした. 2.1.2. 非蒸発場での自由噴霧撮影における実験装置 非蒸発場において噴霧の可視化を行なうため,噴霧の撮影 手法として散乱光撮影法を用いた.図2 に実験装置の概略図 を示す.本実験における実験装置は定容容器,燃料噴射装置 および制御装置,可視化用照明,ハイスピードビデオカメラ により構成され,定容容器内に窒素を充填し,燃料を噴射し た.また,燃料噴射装置にはコモンレール式燃料噴射装置 (DENSO:HP-7 システム) を用いて,単噴孔ホールノズル (DENSO:G3P インジェクタ)により燃料を噴射した.光源に は,可視化用照明(Sumita Optical Glass Inc.:LS-L109)を用いた. 撮影にはハイスピードビデオカメラ(Vision Research Inc.: Phantom v2011)を使用し,撮影速度は 20,000 fps とした. 2.2. 実験条件 2.2.1 蒸発場での自由噴霧撮影における実験条件 表1 に蒸発場での実験条件を示す.本実験では実機におけ る高負荷運転時を想定し実験条件を設定した.供試燃料には 軽油の代替燃料であるノルマルトリデカン(nC13)を使用した. 雰囲気条件は実機における高負荷運転時のシリンダ内を想定 し,雰囲気圧力Paを5.0 MPa,雰囲気密度 ρaを17.97 kg/m3と し,雰囲気温度Taを950 K とした.また,噴射量 mfが5.3 mg となるよう噴射期間tinjを設定し,燃料温度Tf は293 K とした. 本実験では燃料噴射圧力 Pinjを変更した際の噴霧形状の変化 を把握するために,Pinjを50 MPa から 200 MPa まで 50 MPa ずつ変更した.噴射ノズルには単噴孔ホールノズル(dn =0.123 mm)を用いた. 2.2.2 非蒸発場での自由噴霧撮影における実験条件 雰囲気条件が噴霧特性に与える影響を把握するため,蒸発 場に加えて非蒸発場での実験を行なった.表2 に非蒸発場で の実験条件を示す.供試燃料には軽油の代替燃料であるノル マルトリデカン(nC13)を使用した.雰囲気条件は,雰囲気圧力 Paを1.5 MPa,雰囲気密度 ρaを18.75 kg/m3とし,雰囲気温度 Taは室温とした.また,噴射量mfが5.3 mg となるよう噴射期 間tinjを設定し,燃料噴射圧力Pinjは150 MPa とした.噴射ノ ズルには単噴孔ホールノズル(dn =0.121 mm)を用いた. 3.実験結果および考察 3.1. 蒸発場における実験結果および考察 3.1.1. 蒸発場での自由噴霧の撮影結果 図3に燃料噴射圧力Pinjを変化させた際にシャドウグラフ撮 影法を用いて撮影した蒸発場における自由噴霧の撮影画像を 示す.図3 より,燃料噴射圧力の上昇に伴い,噴霧先端到達 距離が増加していることが確認できる.これは,燃料噴射圧 Pulse generator Injector driver
Fig.1 Schematic diagram of shadowgraph photography
Table 2 Experimental condition (Non evaporation field)
Ambient temperature Ambient pressure
Injection fuel amount Injection pressure
Injection equipment Nozzle hole diameter
150
Single hole nozzle 0.121 [K] [MPa] 5.3 [MPa] Ta Pa Pinj Room temperature Test fuel 1.5 Fuel temperature Tf[K] Ambient density ρa[kg/m3] 18.75 [mm] dn [mg] mf 0.356 tinj[ms] Injection duration nC13 Nozzle length ln [mm] 0.8 293
Table 1 Experimental condition (Evaporation field)
Ambient temperature Ambient pressure
Injection fuel amount Injection pressure
Injection equipment Nozzle hole diameter
50,100,150,200
Single hole nozzle 0.123 [K] [MPa] 5.3 [MPa] Ta Pa Pinj 950 Test fuel 5.0 Fuel temperature Tf[K] 293 Ambient density ρ [kg/m3] a 17.97 [mm] dn [mg] mf 0.921,0.479,0.334,0.257 tinj[ms] Injection duration nC13 Nozzle configuration ln /dn[-] 6.5
High speed video camera (20000 fps) Pulse generator Injector driver Injector Constant volume vessel PC Light
Common rail system
ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
力の上昇に伴いインジェクタ先端からの燃料噴出速度が上昇 し,貫徹力が増加することによって噴霧先端到達距離が増加 したものであると考えられる.以下,図3 に示した自由噴霧 の撮影画像より得られた結果を用いて考察を行なう. 3.1.2. 噴霧先端到達距離 図4に燃料噴射圧力Pinjを変化させた場合における気相部の 噴霧先端到達距離の実験結果を示す.図4 より,燃料噴射圧 力の上昇に伴い,噴霧先端到達距離が増加していることが確 認できる.これは3.1.1.項で述べたように,燃料噴射圧力の上 昇に伴いインジェクタ先端からの燃料噴出速度が増加し,噴 霧の貫徹力が増加することによって噴霧先端到達距離が増加 したと考えられる.また,t/tinj=0.5 における燃料噴射圧力 Pinj =50 MPa および 200 MPa での噴霧先端到達距離を比較した. ここで,t/tinjとは燃料噴射開始からの時間t を噴射期間 tinjで正 規化した値を示す.t/tinj=0.5 で比較すると,噴霧先端到達距 離において33.2 %の減少が確認できた. 3.1.3. 噴霧角 図5に燃料噴射圧力Pinjを変化させた場合における気相部の 噴霧角の実験結果を示す.本実験では,噴霧角はインジェク タ先端からの噴霧軸方向距離が300×dn (dn:ノズル噴孔径)の 点での噴霧角と定義した(図 5 参照).図 5 より,燃料噴射圧力 の上昇に伴い噴霧角が増加しており,燃料噴射圧力Pinj =50 MPa および 200 MPa で比較すると,24.3 %の増加が確認でき た.これは,燃料噴射圧力の上昇による燃料噴出速度の増加 に伴い雰囲気場とのせん断力が増加し噴霧が微粒化され,噴 霧軸半径方向への分散が大きくなったためであると考えられ る . さ ら に , 本 実 験 の 実 験 結 果 よ り 得 ら れ た 実 験 式 θ=11.58Pinj0.147と北口・松本の式(12)θ=20.49Pinj-0.02の燃料噴射圧 力Pinjの指数を比較すると,異なる傾向の結果となった.これ は,本実験では高温・高密度場による蒸発場で撮影したもの に対して,北口・松本の式においては高密度の非蒸発場で撮 影している.このことから,本実験では雰囲気温度Taの上昇 によるせん断力の増加が噴霧角に影響を与えたと考えられる. 3.1.4. アスペクト比 図6 にアスペクト比 X/Y の定義図を示す.アスペクト比と は,噴霧先端到達距離X を気相部の最大噴霧幅 Y で除した値 であり,アスペクト比の値が大きいほど噴霧先端到達距離が 長く尖鋭な噴霧,値が小さいほど噴霧先端到達距離が短く扁 平な噴霧を表す指標である.図7 に t/tinj =0.5 における各燃料 噴射圧力による気相部のアスペクト比を示す.図7 より,燃 料噴射圧力の上昇に伴いアスペクト比が減少する傾向にある ことが確認できる.これは,燃料噴射圧力の上昇により噴霧 の微粒化が促進され,噴霧軸半径方向への分散が大きくなる ことで扁平な噴霧が形成されたと考えられる.また,各燃料 噴射圧力によるアスペクト比を比較すると,燃料噴射圧力の 上昇に伴いt/tinj =0.5 において最大 17.4 %減少し,燃料噴射圧 力Pinjは噴霧のコンパクト化に寄与することが確認できた. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Time after start of injection t [ms] 10 20 30 40 50 S pr ay ti p pe ne tra tio n X [mm] 0.0 X=35mm tinj_200MPa=0.257[ms] tinj_150MPa=0.334[ms] tinj_100MPa=0.479[ms] tinj_50MPa=0.921[ms]
Fig.4 Spray tip penetration for various Pinj
50MPa
100MPa
150MPa
200MPa
0.1
Time after start of injection t [ms]0.3 0.5 0.7
0 20 -20 0 20 40 0 20 -20 -20 0 20 -20 0 20 0 20 40 0 20 40 0 20 40
Fig.3 Shadowgraph images for diesel spray (Evaporation field)
0 50 100 150 200
Fuel injection pressure Pinj[MPa]
15 20 25 S pr ay a ngl e θ [de g. ] 250 30 Θ ・ųƌƑƍ0.15 Spray angle θ θ X=300dn
Fig.5 Correlation between spray angle and fuel injection pressure Pinj
Spray aspect ratio X/Y
X:Penetration Y:Spray width(Max)
Large Small X Y X Y X Y (Flat) (Acute)
ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
3.1.5. 噴霧体積および噴霧内当量比 図8に燃料噴射圧力Pinjを変化させた場合の気相部の噴霧体 積の時間履歴を示す.本実験における噴霧体積は,噴霧を噴 霧軸方向にdx =1 mm 間隔で分割し,噴霧幅を直径とする円盤 の体積を積算することにより求めている(図 8 参照).図8 より, 燃料噴射圧力の上昇に伴い同一時刻における噴霧体積が増大 していることが分かる.次に,噴霧体積V と噴射開始からの 時間t の指数相関 V∝taを算出したものを表3 に示す.噴霧体 積V に対する噴射開始からの時間 t の指数値 a は表 3 に示す ようにそれぞれ1.92~2.50 の値をとり,燃料噴射圧力の上昇 に伴い指数の値が増大する傾向にあった.これは3.1.2.項およ び3.1.3.項に示したように,燃料噴射圧力の噴霧先端到達距離 と噴霧円錐角の増大したためであると考えられる.ここで, 運動量理論では噴霧体積V は噴射開始からの時間 t の 3/2 乗に 比例するため(13),噴霧体積の大幅な増加が確認できた.さら に,図9 に燃料噴射圧力 Pinjを変化させた場合の,図8 に示す 噴霧体積から算出した噴霧内平均当量比の実験結果を示す. 噴霧内平均当量比は,噴霧内での空燃比の値で理論空燃比の 値を除した値とした.各燃料噴射圧力での噴霧内平均当量比 を比較すると,噴射開始後からおおよそ0.3 ms 以降において 噴霧内平均当量比は燃料噴射圧力の上昇に伴い減少している ことが確認でき,噴霧が希薄化していることが確認できる. 次に,各燃料噴射圧力Pinjにおける同一距離(X =35 mm)での噴 霧内平均当量比を比較したものを図10 に示す.ここで示す到 達距離は,実機エンジンにおいて主燃焼が起こる際のインジ ェクタと壁面との距離を想定したものとして定義した.到達 距離X =35 mm において,燃料噴射圧力の上昇に伴い噴霧内平 均当量比がPinjの指数0.2 乗で減少していることが確認できる. これは,高噴射圧力条件では噴射終了後に十分な時間が経過 し,噴霧体積が増加しているためであると考えられる.次に, 各燃料噴射圧力Pinjにおけるt/tinj =0.5 での噴霧内平均当量比を 比較したものを図11 に示す.t/tinj =0.5 においては到達距離 X =35 mm で算出した噴霧内平均当量比の結果とは異なり,当量 比はPinjの指数1.187 乗で増加する結果となった.これは噴射 期間が短い高噴射圧力条件では,t/tinj =0.5 において噴霧が十分 に発達していないため,空気導入量が少なく噴霧内平均当量 比が大きくなったと考えられる. S pr ay as pec t r at io X/ Y [-] t/tinj=0.5 ŻŒż ・ųƌƑƍ-0.062 0 50 100 150 200 Fuel injection pressure Pinj[MPa] 1.5 2.0 2.5 250 3.0 3.5 tinj_200MPa=0.257[ms] tinj_150MPa=0.334[ms] tinj_100MPa=0.479[ms] tinj_ 50MPa=0.921[ms]
Fig.7 Spray aspect ratio for various Pinj (t/tinj =0.5)
X Y dX=1mm dV V
dV 2 4 Y dX
0 0.4 0.8 1.2 1000 3000 S pr ay v ol um e V [mm 3] 2000Time after start of injection t [ms] 0.0
4000
1.0 0.6
0.2
Fig.8 Spray volume for various Pinj
Table 3 Index number of time after start of injection for various Pinj
Pinj[MPa] α 50 100 150 200 2.01 1.92 2.25 2.50 0 100 20 60 E qu iv al en ce ra tio Φ [-] 40 80 0.4 0.8 1.2
Time after start of injection t [ms]
0.0 0.2 0.6 1.0
tinj_200MPa=0.257[ms]
tinj_150MPa=0.334[ms]
tinj_100MPa=0.479[ms]
tinj_50MPa=0.921[ms]
Fig.9 Equivalence ratio for various Pinj
X=35mm
Φ ・ų
ƌƑƍ-0.23E
qu
iv
al
en
ce
rat
io
Φ
[-]
Fuel injection pressure P
inj[MPa]
50
100 150
200
0
0
250
1
2
3
4
tX=35mm_200MPa=0.451[ms] tX=35mm_150MPa=0.502[ms] tX=35mm_100MPa=0.610[ms] tX=35mm_ 50MPa=0.888[ms]ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
3.2. 蒸発場および非蒸発場での噴霧性状の比較 3.2.1. 非蒸発場での自由噴霧の撮影結果 図12 に散乱光撮影法を用いて撮影した非蒸発場における自 由噴霧の撮影画像を示す.以下,3.1.節で述べた結果および図 12 に示した自由噴霧の撮影画像より得られた結果を用いて蒸 発場における気相部および非蒸発場における液相部での噴霧 特性値の比較および考察を行なう. 3.2.2. 噴霧先端到達距離の比較 図13 に非蒸発場と蒸発場における噴霧先端到達距離の比較 図を示す.図13 より,非蒸発場に比べて蒸発場における噴霧 先端到達距離が小さくなっていることが確認できる.これは, 蒸発場において液滴が周囲気体から受熱することで燃料を構 成する分子の熱運動が活発になり液滴の表面張力が低下し, 液滴の蒸発が促進されたことで噴霧軸半径方向への分散が大 きくなり,噴霧軸方向への分散が小さくなったためであると 考えられる. 3.2.3. 噴霧角の比較 図14 に噴霧角と雰囲気温度の相関図を示す.図 14 より, 雰囲気温度の上昇に伴い,噴霧角が増大していることが確認 できる.これは3.2.2.項で述べたように,周囲気体からの受熱 により液滴の蒸発が促進され,噴霧軸半径方向への分散が大 きくなったためであると考えられる. 3.2.4. アスペクト比の比較 図15 に非蒸発場と蒸発場でのアスペクト比の比較図を示す. 図15 より,非蒸発場に比べて蒸発場のアスペクト比が小さく なっていることが確認できる.また,図15 において非蒸発場 におけるアスペクト比の値は噴射開始からの時間に対して右 下がりの傾向であるが,蒸発場におけるアスペクト比の値は 横ばいの傾向となっている.これは,非蒸発場において噴霧 軸方向には運動量の大きい粗大液滴が多く存在するが,噴霧 軸半径方向に多く存在する微小液滴の蒸発が進行せず分散が 大きくならなかったため,本実験における非蒸発場噴霧の計 測においては噴射開始からの時間に対してアスペクト比が減 少する結果になったと考えられる.
Φ ・ų
ƌƑƍ1.2t/t
inj=0.5
E
qu
iv
al
en
ce
rat
io
Φ
[-]
Fuel injection pressure P
inj[MPa]
50
100 150
200
0
0
30
10
20
250
40
tinj_200MPa=0.257[ms] tinj_150MPa=0.334[ms] tinj_100MPa=0.479[ms] tinj_ 50MPa=0.921[ms]Fig.11 Equivalence ratio for various Pinj (t/tinj =0.5)
Fig.12 Shadowgraph images for diesel spray (Non evaporation field)
0
Time after start of injection t [ms] 10 20 30 40 50 0.2 0.4 0.6 0.8
Non evaporation field Evaporation field S pr ay tip pe ne tra tio n X [mm] 0.0 60 X=35mm
Fig.13 Comparison of spray tip penetration in non evaporation field and evaporation field (Pinj =150 MPa)
0 400 Ambient temperature Ta [K] 15 20 25 Spr ay an gl e θ [deg. ] 800 1200 10
Fig.14 Correlation between spray angle and ambient temperature Ta (Pinj =150 MPa)
0 0.2 0.4 0.6
Time after start of injection t [ms] 0.8 5 10 15 Spr ay as pec t r at io X/ Y [-] 0.0
Non evaporation field Evaporation field
Fig.15 Comparison of spray aspect ratio in non evaporation field and evaporation field (Pinj =150 MPa)
ディーゼル噴霧における空気導入特性に関する研究
3.2.5. 噴霧体積および噴霧内当量比の比較 図16 に非蒸発場と蒸発場での噴霧体積の比較図,図 17 に 非蒸発場と蒸発場での噴霧内平均当量比の比較図を示す.図 16,17 より,蒸発場に比べて非蒸発場の噴霧体積が小さくな り,噴霧内平均当量比が大きくなっていることが確認できる. これは3.2.2.項で述べたように,蒸発場において周囲気体から の受熱により液滴の蒸発が促進されたため噴霧の分散が大き くなり,蒸発場の噴霧においては非蒸発場の噴霧と比較して 噴霧体積が増大したと考えられる. 4.結 言 本実験では,ディーゼル噴霧において燃料噴射圧力およ び雰囲気条件を変化させた際の噴霧特性に関する計測を行 なった.得られた知見を以下に示す. (1) 燃料噴射圧力を変化させた場合の指数相関 V∝taにお ける指数値は1.92~2.50 であり,燃料噴射圧力の上昇 に伴い増加する傾向となる. (2) 燃料噴射圧力の上昇に伴い噴霧内平均当量比は減少す るため,高圧噴射は噴霧の希薄化に有効的である. (3) 蒸発場において,雰囲気温度の上昇に伴い液滴の蒸発 が促進されるため,非蒸発場と比較し噴霧軸半径方向 への分散が大きくなり,噴霧体積は増大する. 謝 辞 本研究は,総合科学技術・イノベーション会議の SIP(戦 略的イノベーション創造プログラム)「革新的燃焼技術」 (管理法人:JST)によって実施された.ここに記して謝意を 表する. 参 考 文 献 (1) 水田美能,塙雅一,“化石燃料供給の我が国への影響”, 日本エネルギー学会誌,第94 巻第 11 号,pp.1234-1242, (2015). (2) 松本泰郎,“世界のエネルギー資源の現状と展望”,自動 車技術,Vol.58,No.11,pp.4-10,(2004). (3) 山口恭平,鈴木央一,“世界統一試験サイクルにおける 燃費および排出ガス性能について-車両試験結果からわ かるJC08 モードとの違い-”,独立行政法人交通安全環境 研究所,(2014). (4) 佐田翼,伊藤聡一郎,喜久里陽,草鹿仁,大聖康弘, 山口恭平,鈴木央一,石井素,“小型ディーゼルエン ジンにおける多段噴射による熱損失低減と熱効率向 上に関する研究”,自動車技術会論文集,Vol.46,No.4, pp.755-761,(2015). (5) 青山市三,“21 世紀の自動車に求めるもの”,自動車技 術会,Vol.62,No.11,p.2,(2008). (6) 石野勅雄,“エンジンの技術革新(<メカライフ特集> 機械の進歩 激動の四半世紀)”,日本機械学会誌, Vol.115,No.1120,pp.134-135,(2012). (7) 新井雅隆,“ディーゼル噴霧とその燃焼”,微粒化, Vol.22,No.77,pp.189-202,(2013). (8) 谷泰臣,森幸雄,望月孝一,鈴木敦志,“多孔ノズル インジェクタの微粒化”,デンソーテクニカルレビュ ー,Vol.5,No.2,pp.27-35,(2000). (9) 廣安博之,“液体の微粒化と噴霧燃焼”,エアゾロル研 究,Vol.12,No.3,pp.189-194,(1997). (10) 新井雅隆,“燃焼における液体微粒化の応用技術”,燃 料協会誌,第70 巻第 4 号,pp.305-308,(1991). (11) 内 閣 府 , SIP 革 新 的 燃 焼 技 術 研 究 開 発 計 画 , http://www8cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/keikaku/1_nenshou.p df(参照日 2017 年 5 月 2 日). (12) 北口浩二,松本雅至,南埜良太,河辺隆夫,表洪志,岡 田周輔,千田二郎,“実験式および数値計算による超高 圧噴射・高密度場ディーゼル噴霧特性の予測(第二報)”, 第21 回微粒化シンポジウム講演論文集,pp.23-28,(2012). (13) Masataka Arai,“Physics behind Diesel Spray and Its
Combustion” , LAMBERT Academic Publishing , pp.198-210,(2016). 0 1000 3000 Spr ay v ol um e V [m m 3] 2000 0 0.4 0.6
Time after start of injection t [ms]0.2 0.8 Non evaporation field
Evaporation field
Fig.16 Comparison of spray volume in non evaporation field and evaporation field (Pinj =150 MPa)
0
Time after start of injection t [ms] 100 20 0 E qu iv al en ce ra tio Φ [-] 60 40 80 0.4 0.6 0.8 0.2
Non evaporation field Evaporation field
120
Fig.17 Comparison of equivalence ratio in non evaporation field and evaporation field (Pinj =150 MPa)