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伊丹市内で発見された外来クワガタムシ

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Academic year: 2021

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伊丹市昆虫館研究報告 第 5 号 2017 年 3 月

伊丹市内で発見された外来クワガタムシ

田中良尚

伊丹市昆虫館

N0tes on non

-native stag beetle species (Coleoptera, Lucanidae)

observed in Itami City, Hyogo Prefecture, Japan

Yoshinao T

anaka

Itami City Museum of Insects

(2017 年 3 月 22 日受理) はじめに     外国産の昆虫類の野外における発見例については、既 に多数が記録されている(荒谷・細谷 2010)。特に外 国産カブトムシ・クワガタムシについては、植物防疫法 により生体の輸入が禁止されていた頃においても野外で 確認されている(黒子 1997)。外国産カブトムシ・ク ワガタムシは 1999 年に輸入解禁措置がとられたが、そ れ以後、野外での発見例は増加の一途を辿っている(荒 谷ら 2015)。同時に、国内の別地域から人為的に移入さ れた種(国内外来種)がもたらす生態系攪乱及び遺伝子 浸透の問題も危惧されている(高桑 2012, 荒谷・細谷 2016)。  外来種をめぐる昨今の情勢のなか、兵庫県伊丹市にあ る昆陽池公園においても近年、国外ならびに国内移入と 考えられるクワガタムシの発見例があったため、以下に 報告したい。尚、上記発見例は伊丹市昆虫館発行の情報 誌に掲載済みである(田中 2016)が、それらの発見場 所および状況等についても詳細を記録しておく必要があ ると考えたため、本稿にて報告する。 国外由来と考えられるクワガタムシの発見例 採集年月日:2014 年 8 月 3 日 採集場所:昆陽池公園(兵庫県伊丹市昆陽池 3 丁目)      園内西側トイレの中 採集者:小学生男児(氏名不詳)  当該個体(図 1)は、当日の日中、同公園内にある伊 丹市昆虫館(以下当館とする)まで採集者により直接持 ち込まれた。採集者は当該個体を公園内のトイレの中で 発見したと説明しており、当館にて保管することになっ た。しかし翌日になって採集者の保護者から返却を要望 されたため、その個体が外国産種である可能性が高いと いう説明をした上で返却した。そのため、当該個体がそ の後どうなったのかは当館でも把握できていない。  当該個体は背面から撮影した画像しか残っていないも のの、大腮の湾曲が強く、かつ内歯が正中線に対してほ ぼ直角を向いている。さらに前胸背板側縁の湾入部が極 めて前方にあるといった形態的な特徴から、日本産のオ オクワガタ(Dorcus hopei binodulosus, 図 2)とは考え 問い合わせ先 〒 664−0015 伊丹市昆陽池 3−1 伊丹市昆虫館

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32 田中良尚 られず、インドやミャンマー周辺に分布するグランディ スオオクワガタミャンマー亜種(D. grandis moriyai) もしくはそれを親にもつ交雑種の可能性が高い。 国内移入と考えられるクワガタムシの採集例 採集年月日:2015 年 9 月 14 日 採集場所:昆陽池公園(兵庫県伊丹市昆陽池 3 丁目)      西側の雑木林 採集者:長島聖大(伊丹市昆虫館学芸研究員)    当該個体は、当日午前中、同公園内にあるアベマキの 樹液(カシノナガキクイムシの穿孔によって滲出したと 考えられる)を吸汁しているところを採集された。その アベマキの根元には昆虫マットが廃棄されており、クワ ガタムシの死体も認められた(図 3)。状況から、飼育さ れていたものの放虫であることは明らかである。  当該個体(図 4)の大腮は幅広く、最も基部寄りの内 歯が大腮のほぼ中央で突出する。さらに体表面の光沢が 強いという形態的な差異により、本土産のヒラタクワガ タ(Dorcus titanus prifer, 図 5)ではなく、南西諸島産 のアマミヒラタクワガタ(D. t. elegans)、トクノシマヒ ラタクワガタ(D. t. tokunoshimaensis)、オキナワヒラ タクワガタ(D. t. okinawanus)やサキシマヒラタクワ ガタ(D. t. sakishimanus)の内の、いずれかの亜種だと 考えられる。 おわりに -今後考えられる危機-  オオヒラタクワガタ類(D. titanus sspp.)は東南アジ アとその周辺に広域分布し、形態差が認められる地域集 団はそれぞれ亜種として区別されている(藤田 2010)。 今回報告した事例のように、南西諸島産のヒラタクワガ タが本土で放虫された場合、別亜種である本土産ヒラタ クワガタと容易に交雑する可能性がある。自然条件下で 出会う可能性が非常に低い地域の個体同士の交雑は、長 い年月をかけて出来上がった遺伝的地域固有性の喪失を 意味する。このことが局地的ではなく全国的に起これば、 本土産ヒラタクワガタ(D. t. prifer)という固有亜種の 図 1 2014 年 8 月 3 日 に 昆陽池公園で採集さ れたオオクワガタ    (体長不明) 図 2 日本産オオクワガタ (体長 74mm) 図 3 アベマキの根元に廃棄された昆虫マット    (矢印の先は、クワガタムシ死体の頭部)        2015 年 9 月 14 日 長島聖大撮影 図 4 2015 年 9 月 14 日    に昆陽池公園で採集 されたヒラタクワガタ ( 体長 68mm) 図5 本土(大阪府)産 のヒラタクワガタ ( 体長 64mm)

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33 絶滅につながるだろう。  今後、外来種の放虫・侵入・定着による交雑によって 在来の種や亜種の絶滅が起こることは仮定の話ではな く、実際に迫っている危機である。外来種対策は急を要 するが、外国産カブトムシ・クワガタムシに対しての「特 定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法 律(外来生物法)」等による法規制適用については議論 の余地があり、早急な対策及び解決法とはいえない。本 稿で報告した 2 例はいずれも放虫個体の採集例であるた め、特に当館のような博物館においては、意図・非意図 に係わらず放虫を行わないよう啓発を続ける必要がある と考えている。 謝辞  国内移入と考えられるヒラタクワガタ標本および画像 の提供、並びに発見状況についてご教示いただいた、伊 丹市昆虫館学芸研究員の長島聖大氏に感謝申し上げる。 引用文献 荒谷邦雄・細谷忠嗣 (2010) 日本のクワガタムシ・カブ  トムシ類における多様性喪失の危機的状況 . 環境 Eco  選書 1 「日本の昆虫の衰亡と保護」(石井実編). p36- 52. 北隆館 , 東京 . 荒谷邦雄・田津原洋平・山口大輔(2015)福岡市早良  区の背振山麓で採集されたアトラスオオカブトの生  体 . PULEX No.94, p682-683. 荒谷邦雄・細谷忠嗣(2016)ペット甲虫類における外  来種問題 - 意図的導入の罪過とその贖罪 -. 昆虫と自然  51(14), p12-17. 藤田宏(2010)世界のクワガタムシ大図鑑 . 472pp. む  し社 , 東京 . 黒 子 浩 (1997) 貝 塚 の 昆 虫 10. 自 然 遊 学 館 だ よ り  1997 秋号(No.14). 高桑正敏(2012)日本の昆虫における外来種問題(2)  国内外来種問題をめぐって . 月刊むし (499), p29-34. 田中良尚(2016)放虫された?逃げ出した?クワガタム  シ類 . いたこんニュース第 26 号 vol. 13 No.2, p3. 伊丹市内で発見された外来クワガタムシ

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