事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS))
1.案件名
国 名: ネパール国
案件名: 和名 ネパールヒマラヤ巨大地震とその災害軽減の総合研究
英名 The Project for Integrated Research on Great Earthquakes and Disaster Mitigation in Nepal Himalaya
2.事業の背景と必要性
(1)当該国における地震防災分野の開発実績(現状)と課題 ネパールはプレート衝突帯に位置しており、山岳地形の形成と巨大地震の発生という地 質学的なリスクを日本同様に抱えている国である。首都カトマンズ(人口約100万人)の位置す るカトマンズ盆地は過去、大きな地震災害が度々発生しており、1934年のビハール地震(マグ ニチュード8.4)では、カトマンズ盆地の建築物のうち約20 %が破壊され、9,040人の死者を出 し、2011年9月18日にはインドを震源とするシッキム地震(マグニチュード6.9)により、市内で7 名の死者、136名の負傷者が発生した。ネパールNational Seismological Centreの観測データによれば、2013年に発生したマグ ニチュード4以上の地震はFar Western及び Mid-Western 地域を中心に25回発生しており、 災害履歴から考えても、地震発生リスクが高まっていることが指摘されてきたが、建築物の耐 震化や土地利用規制、建築基準法の遵守等、具体的な地震対策は取られなかった。そうした 中、2015年4月25日に発生したネパール/ゴルカ地震(マグニチュード7.8)ではネパール全国 で死者8,856人、負傷者22,300人、約600,000棟が全壊、285,000棟が半壊1という被害が生 じ、実質GDP成長率予測値も0.8%下方修されるなど、長期にわたる影響が懸念されている。 ネパール/ゴルカ地震の発生によってもたらされた断層間圧力の変化により、カトマンズ盆地 周辺の地震発生リスクは震災以前よりも高まっていると考えられており、ネパール/ゴルカ地震 よりも大きな被害をもたらす可能性のある地震へ備えるための対策の検討は喫緊かつ重要な 課題となっている。 本事業では以下の成果の達成を通して、地震被害・リスクの軽減を目指すものである。 ① 断層の科学的評価によって対象地域における地震発生ポテンシャルを明らかにする ② カトマンズ盆地の地震動モデルを作成し、シナリオ地震に基づくシミュレーションを行う ③ 対象地域の地盤モデルを作成し、対象地域のハザード評価を行う ④ 地震観測網及び情報処理能力を強化し、地震関連情報の発信能力を強化する ⑤ 科学的分析結果に基づいた被害軽減の対策の提言及び高等教育レベルにおける人 材育成
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(2)当該国における地震防災分野の開発政策と本事業の位置づけ
ネパール政府は 2009 年に災害リスク国家管理戦略を制定し、対象災害の一つとして地震 を上げている。地震防災分野は 2009 年に設置された National Platform for Disaster Risk Reduction においても優先プログラム中の課題の一つに位置づけられている。
ネパール/ゴルカ地震の発生を受けて 2015 年 6 月 25 日に開催されたネパール復興に関 する国際会議においてネパール政府はネパール/ゴルカ地震からの単なる復興・復旧のみな らず、第 3 回国連防災世界会議(2015 年 3 月)において採択された「仙台防災枠組 2015-2030」における「より良い復興(Build Back Better)」を目指すことを基本方針とすること を表明した。本事業では、日本の知見を活用し精緻なハザード分析を行うことで、地震災害リ スクの低減に資することを目標としており、ネパール政府の上記戦略に資するものである。 (3)地震防災分野に対する我が国及び JICA の援助方針と実績 JICA は 2002 年に「カトマンズ盆地地震防災対策計画調査」を実施し、JICA 国別分析 ペーパー(2014 年 4 月)において、「都市環境改善」プログラムの中の一課題として整理、 2015 年より「カトマンズ盆地における地震災害リスクアセスメントプロジェクト」を実施している。 また、2015 年に発生したネパール/ゴルカ地震を受け、日本政府の方針である「仙台防災 協力イニシアティブ」(2015 年 3 月)を念頭に、「より良い復興」をコンセプトとしたネパールの 災害に対するレジリエンス強化実現に向けて、JICA は、国際緊急援助隊による緊急・人道支 援から開発までをシームレスに行うこととし、復興支援関連活動において、防災力の向上を図 るとともに、迅速な復興に貢献することを目標としている。 (4)他の援助機関の対応 2009 年の「災害リスク管理国家戦略」の策定を受けて、ネパール国内務省、国連機関、主 要なドナーが集まり、ネパールリスク軽減コンソーシアム(NRRC)を UNDP 主導の下、立ち上 げた。2011 年から 2014 年をターゲット期間とした 5 つのフラグシッププログラム(①学校及び 病院の安全②事前準備と応急対応③コシ川流域の洪水管理④統合化されたコミュニティ防災 ⑤災害リスク管理に係る政策/制度への支援)を設置、プログラム毎に中心支援ドナーを設定 し実施してきた。
2015 年 6 月に Post Disaster Needs Assessment がドナーの協力も得て実施され、ネパ ール政府は 2015 年 12 月に復興庁を設置したが、具体的なアクションプランが含まれた復興 計画は 2015 年 2 月 15 日現在、まだドラフト段階にある。
3.事業概要
(1)事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む) 本事業はカトマンズ盆地及び中央ヒマラヤ地震空白域において、地震ポテンシャル評価、 地震動予測、ハザード評価を行い、地震観測機関の能力向上を図るとともに、科学的分析に 基づいた対策への提言等を行うことにより、将来のネパールヒマラヤ巨大地震によるカトマンズ盆地における地震対策及び防災・減災に貢献することを図るものである。 (2)事業スケジュール(協力期間) 2016 年 4 月~2021 年 3 月 (60 か月) (3)本事業の受益者(ターゲットグループ) 直接受益者;研究メンバー及び関連省庁(約 40 名) 間接受益者:カトマンズ盆地内自治体及び住民(約 176 万人) (4)総事業費(日本側) 約 3.5 億円 (5)相手国側実施機関 【代表機関】産業省 鉱物地質研究所(DMG) 【協力機関】トリブバン大学、都市開発省 都市開発建設局他 (6)国内協力期間 【代表機関】東京大学 【協力機関】高知大学、北海道大学、応用地質、ホームサイモメーター社、建築研究所他 (7)投入(インプット) 1)日本側 研究員派遣(地震周期シミュレーション、強震動観測、地震観測システム他) 長期専門家/業務調整員 機材供与(地震計、強震計、トレンチ調査他、約 1.6 億円) 研修員受け入れ、その他 2)ネパール国側 プロジェクトスーパーバイザー(1 名)、プロジェクトマネージャー(1 名)、合同調整委 員会、共同研究者にかかる予算の確保、関連データの提供、執務スペース、その他 (8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発 1)環境に対する影響/用地取得・住民移転 ① カテゴリ分類(A,B,C を記載) C ② カテゴリ分類の根拠 観測・分析作業が中心であり、環境配慮に該当する活動はない。 ③ 環境許認可 該当なし
④ 汚染対策 該当なし ⑤ 自然環境面 該当なし ⑥ 社会環境面 該当なし ⑦ その他・モニタリング 該当なし 2)ジェンダー平等推進・平和構築・貧困削減 特になし 3)その他 特になし (9)関連する援助活動 1)我が国の援助活動 カトマンズ盆地を対象としては、「カトマンズ盆地地震リスク評価プロジェクト(技術協力型開 発調査 2015 年 5 月~2018 年 4 月)」、「ネパール地震復旧・復興プロジェクト(緊急開発調 査 2015 年 7 月~2017 年 6 月)」が実施されている。 対象地域・災害が一致する「カトマンズ盆地地震リスク評価プロジェクト」と本事業成果は 以下の様に相互に補完・連携することを想定する。 地震リスク評価プロジェクトで行われるハザード評価に対し、本事業研究メンバーはその専 門的知見から助言を行い、両プロジェクトにおけるハザード評価の基本コンセプト(想定シナリ オ地震等)に齟齬が生じることを避ける。まら、リスク評価プロジェクトより地盤モデルや関連観 測データを受領し、本事業活動を効率的に行うよう取り組む。
2)他ドナー等の援助活動 災害リスク管理国家戦略(2009 年)の策定を受けて、ネパール国内務省、国連機関、主 要なドナーが集まり、UNDP 主導の下、NRRC を立ち上げている。2011 年から 2014 年をタ ーゲット期間2とした 5 つのフラグシッププログラム(①学校及び病院の安全②事前準備と応急 対応③コシ川流域の洪水管理④統合化されたコミュニティ防災⑤災害リスク管理に係る政策/ 制度への支援)を設置し、プログラム毎に中心支援ドナーを設定し実施している。 JICA はフラッグシップ④及び⑤を中心として同枠組みを支援しており、本事業は同フラッ グシッププログラム⑤に位置付けられる。2015 年 4 月のネパール/ゴルカ地震の発生を受け、 カトマンズ盆地内外での地震観測活動に対する計画が複数の研究機関によって進められて いるが、ネパール側の能力強化が含まれたものはわずかであり、本プロジェクトとの重複はな い。