146 香川大学農学部学術報嘗 明暗下で発芽させたエンバク冠鋳病菌 夏胞子におけるぅカロチン含量の比較
谷 利 一・,松 家 昇,内 藤 中 人
Ⅰ 緒 日 華老らほ.さきに(8),エソバク冠播病菌夏胞子のカロチノイド色素は発芽につれて減る旨をのべたその原因として ほ,光線の物理的作用あるいは菌の生理的作用による同色素の分解が−・応考えられようところが上記実験において は,室内で1占時間発芽させた関係上 昼間ほ明所におかれていたわけであるしたがつて,同色素減少の原因を究明 するためにほ,暗黒下で発芽させたときの動向をもしらべる必要を感じ,本実験に着手した.なぬ 供試蘭の喪主で あるエンバク健全其のカロチノイド色素もしらべたので,あわせて報曽する 実験にあたり種々御助言を賜わった本学部諸教官ならびに実験に協力された元専攻生大西練一旦に深甚の謝意を表 する Ⅱ 実験方法および結果 1・発芽胞子のカロチン含量におよぽす日光の影響 (1)1実験方法19封年1月・8日,ガラス室の.エソバク曜病勢(品種ビクトリヤ1号)から既報(8)の方法で新胞子を 形成させ,集めた胞子は秤塩瓶に50c暗黒で貯蔵し,実験のつど−・部をとりだして供試した.なお,実験を瀕わつ た2月中旬まで,そのカロチン合鼠および発芽率(約80%)ははとんど変らなかった、まず,径9cmのぺトリ皿に 兼溜水10mlをいれ,これ紅胞子10mgを均一・に浮かべ,発芽後の菌体をぺトリ皿′5コザつ径2.5cmの折紙に吸引折 過してとり,折紙のまま分析した.抽出後のカロチンほ既報(8)にしたがって,アルけ・カラムに石油、エ・−テル,エチ ルエーテルの混液で展開溶出し,石油エーテル溶液の吸光度から含有率を算出したい磨砕胞子をくり返しペンゾ−ル 抽出する既報(8)のカロチ・ノイド抽出法ほ,多くの試料と時間を必要とし,また,発芽後の試料は水分が多いためあら かじめ貴重乾燥せねばならないしたがって,今回ほⅩOH−,エタノ−ル法(5)およびHCl−エタノ−・ル法(2)「の応用をこ ころみた Ⅸ0Ⅰ‡−エタノール法:径5cm,高さ20cmの共栓つき大型試験管に試料をいれ,占0%ⅩOHlmlと95%.エタノー ル15m】を加え,占00cの浣湯に50分加熱してから分液漏斗に移し,石油エーテルで色素を振とう抽出する.下層の 液には5mlの95%エタノールを加えて再びる00c5ロ分加熱し,石油亮一テソレで残りの色素を抽出する、本操作を4回 くり返して−から,石掛エーテルを合してKOHの反応がなくなるまで水洗し,無水だ硝で脱水,CO2気流下で減圧潰 縮する nCl一・エタノ−ル法:試料をいれた上記試験管に1ルHCllOmlと95%エタノール5mlを加えて栓をし,熱蕩で50分 間煮沸する流水に冷却後,小鼠の脱脂綿で試験管の内壁についた色素をふきとる.脱脂綿はそのまま試験管にい れ,エチリレエーテルを加えてガラス棒で漁押するい 分液漏斗に液を移し,水20mlを加えて振とうし,色素をエーテ ルに溶かす.エ−テルを除いた残部に再びェ−テルを加えて振とうするこれを5回くり返してから,エ−テルを合 してHClの反応がなくなるまで水洗 筋1表 抽出法を異にした場合のカロチン分析偲(mg/g) し,無水己硝で脱水,CO2気流下で 減圧弘縮する. 上記2法によるカロチン分析低 を,磨砕ペンゾ−ル法紅よる既報の 値(8)とくらぺたところ(第1表),発芽 前胞子ではHCl−エタノ−・ル法のは うが近似であり,発芽後の胞子では ⅩOH−エタノ」−ル法のはうがHCl−・OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第13巻第2骨(1962) 147 エタノール法よりもわずかに高かつたしたがって,発芽前胞子にほ牒Cトェタノ−ル法を,発芽後の胞子にほKOH −エタノール法を用いることとした一なお,発芽前胞子のばあい後者の方法のはうが低値を示すのは,発芽後の菌体 と違い試料が粉状であるため,分液漏斗から試験管に移すとき胞子が器壁についてすこし残るからであろう (2)実験結果 暗黒下で胞子を発芽 させたときの動向を明らかにするた め,暗黒250cの定温窒においたぺト リ皿水面に胞子を浮かべ,所定時間発 芽処理してから試料を分析に供した その結果(第2表),発芽処理24時間 でもβ一およびγ・カロチンの含鼻にほ はとんど変化がみられない.なおこの ばあい,胞子は約1.5時間後に発芽し はじめた つぎに,胞子の発芽途中で暗黒にし たときの動向を明らかにするため,晴 天の日に20−500cのガラス室に供試 ぺトリ皿をおき,発芽はじめから占時 間日光にあてたもの,暗黒で15時間発 芽処理して−から占時間日光にあて.たも の,および発芽ほじめから2時間日光 にあてたのち21時間暗黒におき,その 男写2表 暗黒で発芽させた胞子のカロチニ/合鼠(mg/g) 第5表 日光下で発芽させた胞子のカロチン含鼠(mg/g) 後は再び7時間日光にあて−たものの5 楊算定の基準は第2表の発芽0時間の分析値によった 区について−,カロチン含景の変化をしらぺた(筋5表)‖それによると,日光区ほすべて暗黒区にくらぺカロチン合 崖が低く,しかも日光にあてた時間の長いものが減りかたも大きい本表の結果はまた,発芽初期よりも発芽管がか なり伸長してからのはうが日光の影響の大きいことを示しているようであったから,この点を更に確かめるため,つ ぎの実験を行なった すなわち,pH2い0のHCl溶液に胞子を浮かべ未発芽の状態で8時間日光をあてたもの,同じく未発芽の状態で同 時間暗黒においたものの両区カロチン含量を,暗黒の水面に占時間おいて発芽させたものおよび同じく暗黒の水面上 に15時間おいてから占時間日光にあてたものと比較してみた(肇4表),それによると,不発芽の状態で日光紅あて た区でも色素ほ減少しているが,発芽 後に日光をあでた区はどの減少率はみ られない‖ さらに,日光によるカロチンの減少 が主として日光の直接的分解作用によ るのか,日光下で発芽中の胞子の生理 的作用にもとづくのかに探りをいれる ため,抽出したカロチッの石油工一−テ ル溶液湛日光をあて,カロチン分解の 有無を検したすなわら,10mlメス フラスコ紅カロチンの石油エ−テル溶 液をいれて栓をし,d時間日光にあて− 第4表 発芽および不発芽状態における胞子のカロチン含 鼠におよばす日光の影響(mg/g) 槌第5表参照 たものと,同時間暗黒においたものとの吸光皮の変化をくらぺたところ(第5表),暗黒区ではカロチン合鼠がはと んど変らないのに対し,日光区では明らかに低下しているい なあ罪5−5表にかかげた5例とも,γ・カロチンより β−カロチンのはうがいくぶん減少率ほ大きいようである,
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香川大学農学部学術報告 148 第 5 表 日光によるカロチン溶液濃度の変化(吸光度) 2.エンバク健全葉のカロチノイド色素 ガラヌ室栽培のエソバク拠金株からと.った薬を約1cmの良さに切り,その約500g中からatIandom に5g(生粟 壷)を選び1回の実験に供した.KOH・−エタノール法で抽出したカロチノイド色素の石油エーテル溶液を既報(8叱準 じて活性アルミナカラムに展開し,6種色素を分離した(筋占表)い 2種は痕跡程度で同定にほいたらなかったが, 第占表 エソバク健全葉カロチノイド色素の活性アルミナカラムによる分離 含有量 (mg/g) 吸収棒大 (m〃) 溶 出 物 展 開 溶 媒(Ⅴ/V) 0.0る1る 痕跡 0.0051 0..2525 0−004る 痕跡 β−カロチン 末同定Ⅰ クリブナキサンチン ルティン 未同定皿 未同定Ⅱ 石油エーテル:エチル工−テル=80:20 仝 上 =50:5D 仝 止 =50:7D エチルエーテリレ:ユタノ−ルニ9る:4 仝 ⊥ =90:10 仝 上 =85:15 ∼4▲25,44・8,475 基 褐 桃 裁 褐 其 褐 黄 基 4・28,450,475 42D,44・8,4・75 415,4・58,4d5 4種ほ比較的多く,そのうら5種ほ吸収スぺクレレおよび溶出条件から,それぞれβ・カロチン,クリプトキサンチ ン,ルティンに同定した..なお,未同定Ⅰほ色,溶出条件からγ・カロチンの可能性も考え.られる.含有量も既称8) にしたが/つて測定したのであるが,カロチノイド色素の主成分はルティンで,ついでβ−カロチン,未同定Ⅱ,クリ プトキサンチンの順となっている. 11t■ 考 察 ツーカロチンは本菌夏胞子カロチノイドの主成分をなす色素であるが,日光下で胞子を発芽させると同色素がいち じるしく減るにもかかわらず,暗黒で発芽させるとこのような傾向ほまったくみられなかつた.このように日光下 で発芽させるときだけカロチッが減る原因としては,光線の直接的作用による同色素の分解,菌の生理的作用による 分解の両者が一応考えられよう目 前者に関してほ木村($)の報告例があり,後者に関しては,リボキンダーゼの作用 によって生じる不飽和脂肪酸過酸化物の副次的酸化髄色例(1)が大豆で知られている木実験のばあいぼ,分離カロチ ンの日光紅よる減少率が相当高いので,むしろ嘩なる日光の物理的分解作用に主として基因するものと推定せられ るカロチッの減少が不発芽胞子よりも発芽胞子にいらじるしく,また発芽初期よりも,発芽管がかなり伸長し色素 もすでに発芽管に移行している後期に減少率が大きいのも,カロチンが広面精に分散するため,単位カロチンあたり の日光照射星が大きくなるためではなかろうかい 高等植物では播歯胞子と異なり,2,5の特例(46)を除き,γ−カロチッは少ない例えばG.γ沼〝0・S♪∂γα招gf〟∽ ル元♪βγi一班γ・gよ乃fα乃αβが寄生するネズノキ(J〟〝よ♪♂7〝・S如上離別α〝α)の健全柴では全カロチン中β−カロチンの85% に対し,γ一カロチンは10%であり,また,同じく同園の寄主である野生リンゴ(肋Jα・S盲0β邦・ゞまS)の健全粟では, 0.85mg/g(乾燥蚕)のβ−カロチンに対し,γ・カロチンは0である(6).・エンバク健全葉に検出されたβ・カロチン, クリプトキサンチンおよびルタインは冠蘭病菌夏胞子にも存在するが(8),その含有比は葉と胞子とでいちじるしく違 うけすなわち,ルティンは共に未発芽胞子の10倍含まれており,薬におけるカロチノイド色素の主成分をなしている が,β一カロチッほ胞子の約与i7,クリプトキサンチンは約‡ち7にすぎない一−・方夏胞子カロチノイドの主成分である γ−カロチンは共には存在せず,両者における差異の最もいちじるしい色素である.夏胞子にわずか検出されたフヲ
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第13巻第2号(1962) 149 ポクロム(8)ほ共には認められなかった Ⅳ 摘 要 (1)暗黒で発芽させたエソバク冠紡病菌謎胞子(P〟“わ浸α(・αれ那加り厄CoRDA)におけるγ・およぴβ・カロチン合鼠 ほ,発芽前胞子のものとはとんど同じである‖一見 日光下のガラス室で発芽させたものでは両カロチッとも減少 し,その減りかたほ発芽初期より後期のはうがいちじるしいカロチンの減少ほ,日光の直接的分解作用によるもの と推定せられる (2)β−カロチン,クリプトキサンチンおよびルティンは夏胞子,.エソバク健全輩の両者に共通して存在するが, 夏胞子,健全某中における名色莱の含有率には大きい相違がみられる夏胞子カロチノイドの主成分であるγ−カロ チンほ葉にほ存在しない 引 用 文 献 (1)福場博保:酵素研究法,赤堀四郎(編),2,55る, (5)西村光雄:光電比色法各論,勘155,取乱 南江 東京,朝倉(195占) 堂(1957)
(2)IRVINE,GlN小,GoLBUCHUⅨ,M.,ANDERSON,(6)SMITS,B‖L,MITCHELL,H”L:A rich source JlA・:The carotenoid pigments of the uredo− Of ry−CaIOtene,Science,(115),296−297(1951)
SpOIeS Of zust fungi,Can.J‖ Agr‖ Scれ,る4 (7)− ,PETERSON,W.J一:Carotenoids of te・
(5),254−259(1954) 1ialgalls of G.γ∽乃〃.S如川喝薇椚力抑ゆ由一仇ル・離誠一 (3)木村進:トマトの色に関する研究,Ⅳ,カロチノイ α紹αβLK‖,′∂拍.,(9占),21ロー211(1942) ドの定嵐法の検討,農産加工技術研究会誌,5(4), (8)谷利一・,内藤中人:エソバク冠鋳病菌およぴメダ 200−202(195る) ケ赤衣病菌胞子のカロチノイド色素,日臆病報,2占 (4)宮道悦雄,鴫野武:動植物成分,250,東武 共立 (5),10る−111(19る1) (1955)
Comparison of carotene content between uredospores of Puccinia coronata
germinatedin sun−1ight and darkness
Toshikazu TANI,Noboru MATSUKA and Nakato NAITO
Summary(1)The amount ofり′−andβ・CarOtenein uredospores of Puccinia corollata does notdecrease during germinationwhenit takes placein darkness・Whenthespores,Onthe other hand,are germinated in a glass house,boththecarotenes decIeaSe duringthe process.The effect ofthesunりIight upon the decrease of carotenesislargerin the spores ofwhichpigments have beentransferredinto germ・tubes.,It is probable that the sun・1ight directlydecomposesthe carotenes of sporesgerminatinginits pIeSenCe
(2)Healthyleaves of oat containβ−CarOtene,CryptOXanthin,1utein and some undetermined carotenoids, but the predominant carotenoidinleavesislutein.γ−Carotene,the major carotenoidin uredospores of P.coYOnaia,WaS nOt detectedin theleaves of oat
(Received October50,19る1)