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早生温州の着色に及ぼすリン酸カリ液肥の葉面施用の影響 II. 着色始期の散布施用について-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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早生温州の着色に及ぼすリン酸カリ液肥の葉面施用の影響

ⅠⅠ.着色始期の散布施用について

樽谷 勝,出口 秀夫,三木 政数

RIND COLOR OF WASE SATSUMA MANDARIN AS AFFECTED

BY FOLIAR APPLICATION OF POTASSIUM

PHOSPHATE LIQUID FERTILIZERS

IIApplicationin Autumn Color−Break Period

Masaru KuRETANI,Hideo DEGUCHIand Masakazu MIKI

Effectsoffoliarapplicationofpotassiumphosphateliquidfertilizersinautumncolor・breakperiodonfruitquality, ratioofthe丘rstharvesttothetotalyeild,andrindcoloroiWasesatsumamandarinwerestudied 1Thetreatmentincreasedsugarcontentanddecreasedacidityalittle 2 Thefoliarsprayadvancedcoloring,Whichinturnincreasedtheratioofthe鮎stharvest,judgingbyrindcolor development,tOthetotalyeildby60% 3RindcolordevelopmentofindividualfruittreatedwasmoreunifoImanddeeperthanthatofcontrol 前報と同様に香川大学農学部附属農場の18年生温州みかんの「三保早生」を供して,9月末期の果実の着色始期に おけるリン酸カリ液肥剤の乗面施用が,果皮の着色状態並びに果汁の糖度,酸畳等に及ぼす影響を調査した 1慣行的な着色状態の判定に基づく,果実の初回収穫盈の比率は,無施用対照区の約42%に対して,リン酸カリ 液肥剤の散布施用区では65−72%で,早期の探収量が多く,着色促進の効果がみられた 2収穫した果実の部位別着色判定備による着色状態の差は,無施用対照区及び含3要素液肥散布施用区に較ぺて, リン酸カリ液肥剤の散布施用区では,果実の部位別の着色程度判定億の差が小さく,果皮全面の着色濃度が高く,果 実の着色状態が優れた 3収穫果における果汁の糖度及び酸畳の比較では,リン酸カリ液月巴剤の散布施用区では,無施用対照区及び含3 要素液肥散布施用区に較べて,僅かではあるが増糖,減酸の徴候がうかがわれた 緒 当地方の柑橘栽培では,−・般に夏季から秋季及び果実の着色,収穫期にわたる気候の変化並びに気象状態が,樹体 及び果実の発育をはじめ,着色の早晩・良否,果実の品質・等級などに対して支配的要因となり,それがその年の豊 凶あるいは品質・等級の良否,ひいては市場価格及び経営上の収益性に関与することが少なくない 本研究の実験では,例年における気候的及び気象的要因による豊凶や品質差の不安定性を少しでも緩和し,とくに 早生温州における着色促進及び増糖,減酸をはかることを目指して,リン酸カリ液肥剤の菓面施用の効果を得ようと 試みているものである 前報(1)の場合には,盛夏季散布及び初秋季散布で,両実験ともに果実の着色始めに対しては比較的早い時期から, しかもその散布施用の回数も3回ずつとしたい しかしながらその結果は果汁の増糖,減酸に対しては,必ずしも期待 (香川大学農学部附属農場)

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するほどの明確な効果は得られなかった そこで本報においては,さらにリン酸カリ液肥剤の散布施用が,とくに早生温州の着色促進,増糖,減酸等に及ぼ す効果を得ることのために,前報の場合よりも散布施用の時期を着色始め期(いわゆる蛍尻期と言われる時期)に近 づけ,また−・部散布液の濃度を高くしたり,−・回処理とした場合の,散布施用を試みた.その結果について報告する 材料及び方法 1.供試樹及び散布施用の時期・方法 前報(1)と同様の本学部附属農場果樹園の階段畑に植栽の,18年生の早生温州「三保早生」を用い,1区畠樹ずつを 供した 供試液肥剤として前報と同じ液肥剤を用いたが,次のような散布用の調製液をもった散布施用区,すなわち,含3 要素液肥300倍区,含P・K液肥300倍区,リン酸一カリウム500倍区と,無施用対照区の4区を設けた 散布施用の時期及び方法としては,果実の着色始め期に相当する9月29日の1回散布とした.散布施用は1樹当た り約3ゼ盈を,菜面散布による仝樹処理とした‖ なお,本実験は前報と同じ1983年に実施したものである 2.試験期間中の気象状態 前報(1)に記したとおりであるが,本実験を開始した9月下旬以降の着色期に相当する10月中旬の間は,例年に較 ぺて降雨日数,降雨量は多かった 3.調査項目及び方法 (1)初回収穫果数,果垂とその比率 当農場において例年のごとく慣行的な着色判定によって10月25日と,11月8日の2回に分けて収穫した.その収穫 日別の採収果の個数及び果重畳と,その仝探収量に対する比率を調査した (2)収穫果の着色状態 前項の収穫果を通常の選果機による選別を行ったM級果について,収穫後5日目における果実の果頂部,果赤道部, 果梗部の果皮表面の着色状態を調査した巾 着色状態の調査及び着色液度の判定は前報の場合と同様に,農林省果樹試 験場(1977年)作成の『果実の成熟度判定のためのカラ・−チャ−ト』のオレンジ用を使用した (3)果汁の糖度,酸畳及び糖/酸比 前項の果実着色状態の調査に供した10月25日及び11月8日収穫果で,それぞれ常温下に5日間置いたものについて, 各区数個ずつを任意にとり−・括搾汁し,その果汁中の糖度(屈折糖度計示度),酸盈(N/10NaOH滴定,クエン酸 換算)及び糖/酸比を調査した 結 果 (1)薬害,果実汚染及び着色異状等の徴候 各供試の散布処理による薬害的徴候あるいは果面への汚染,果皮の着色異状等は全く観察されなかった (2)初回収穫果数,果畳とその比率 10月25日及び11月8日の2回に分けて収穫した供試3樹当たりの収穫日別の採収異数及び果重と,それぞれの仝 採収量に対する比率を調査した結果は,表−1のとおりである すなわち,これを各収穫日別のうちで特に初回収穫日における全採収果重に対する果重の比率で比較すると,リン 酸−・カリウム500倍区が720%で最も高く,含P・K液肥300倍区が約65%で前者に次ぎ,いずれも無施用対照区及び 含3要素液肥300倍区に較べて,かなり高いことが注目される このことは初回収穫日とした10月25日における相対的な着色状態が,慣行的な着色状態の判定からみて,リン酸 −カリウム500倍区及び含P・K液肥300倍区では,他の両区に較べて着色が外観的判定においても進んでいたものと 言える (3)収穫果の着色状態 前項の収穫日別の収穫果(M級果)について,採収5日後における果実の部位別着色状態を調査した結果は,表一2 のとおりである

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表−1収穫日別の採収果数・果畳とその比率(3樹当たり) 初回収穫(10/25) 第2回収穫(11/8) 合計採収量 実数 比率 実数 比率 実数 比率 果数 965 43.5 1,254 565 2,219 100

無施用対照区 果重 802 42.7 107“7 57.3 187.9 100

含 3 要素液肥 果数 908 420 1,253 58.0 2,161 100

300倍区 果盈 807 436 1042 56.4 184い9 100

含 P・K 液 肥 果数 1,494 660

771 34.0 2,265 100

300倍区 果重 132小0 651 708 34“9 202小8 100

リン酸−・カリウム 果数 1,918 712 776 28“8 2,694 100

500倍区 果重 1686 720 65小6 28‖0 234.2 100

注:果数…個,果垂…kgで示す。 表−3 果実の糖度,酸畳及び糖/酸比 (収穫果;M級果) 表−2 収穫果の部位別着色状態(M級果) 甲種日 糖度 (%) 酸畳 (%) 糖/酸比 10月25日 100 1.224 8.12 無施用対照区 11月8日 10.8 1.438 7‖52 平 均 10.4 1.331 781 10月25日 10“0 1.437 696

含3要素液肥 300 11月8日 98 1120 8.76

倍区 平 均 99 1.279 7小74 10月25日 10.2 1.307 7い80

含P・K液肥 300 11月8日 11.0 1い193 9.22

倍区 平 均 10.6 1,250 8,48 10月25日 10小4 1“291 8,06

リン酸一・カリウム 500区 11月8日 10.8 1.128 958

平 均 106 1209 8.77 収穫日 果頂果赤果梗 部 道部部 平均 10月25日 7り00 5.63 383 534 無施用対照区 11月8日 7.86 7.43 736 755 平 均 7.43 6小53 557 6.52 10月25日 6.94 5小56 344 5小31

含3要素液肥 300 11月8日 857 7.71 7小14 7。81

倍区 平 均 7..75 6.63 5.29 6り56 10月25日 7.65 6.12 412 5..96

含P・K液肥 300 11月8日 8.57 8.36 814 8.36

倍区 平 均 8.11 7,24 6.13 7.16 10月25日 7.56 644 4小08 602

リン酸−・カリウム 500 11月8日 8い93 8.07 7小93 831

倍区 平 均 8。24 7小25 600 7.16 注:収穫後5日目の測定である。 注:収穫後5日目の調査である。

上表において初回収穫果(10月25日)と第2回収穫果(11月8日)と較べた場合,全体的に初回収穫果のほうが着

色状態を示す借は低く,第2回目の収穫果において着色が進み,果皮の着色は前者の場合より濃厚な状態にある・し

かしこれを各区間で各部位別の着色値で比較すると,ほぼいずれの場合でも含P・K液肥300倍区及びリン酸−・カリウ

ム500倍区において,そ・れぞれの着色値がはるかに高い億を示している‖ なかでも平均値が8・0以上を表わした部分に

おいては,果皮の着色に朱紅色が強く濃厚な着色状態が観察された・

(4)果汁の糖度,酸畳及び糖/酸比

各収種日別果実のM級果について,任意の数個ずつの試料から搾汁した果汁の糖度,酸畳及び糖/酸比を調査した

結果は,表−3のとおりである…

まず,果汁の糖度についてみると,含P・K液肥300倍区及びリン酸−・カリウム500倍区においては,わずかではあ

るが他の2区に較べて糖度が高く,一・方,含3要素液肥300倍区では無施用対照区よりもやや低い値がみられた・

酸含量についても,各区相互間に大きな差は見られないが,概して含P・K液肥300倍区及びリン酸一カリウム500

倍区の両区では,無施用対照区及び含3要素液肥300倍区に較ぺて,僅少ではあるが酸含畳が少なく,その傾向は平

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均備において明らかにみられた したがって,前両者の関係から貿出される糖/酸比について見ると,糖度による借よりも酸鼻の備に基づく糖/酸 比が比較されることになる.すなわち,その債は酸義の支配が大きく11月8日の収穫果の場合は,特に含P・K液肥 300倍区及びリン酸−・カリウム500倍区では,他の両区に較べてはるかに高い億であった 上表のうちで合3要素液肥300倍区における糖度及び酸鼠が,他区に較べて目立って低い値を示したことは,その 時期の降雨とチッ素成分の影響によることもあると推定される 考 察 温州ミカン果実の着色に関与すろ諸要因及びそれらが着色に及ぼす影響については,すでに多くの報告や記述に よって明らかにされているところである‖ この場合とくに,気候及び気象状態の異常事態への対応をはじめ,肥培管 理の合理化など,栽培技術の適確なるコントロ”・・・・・ルが要求される 前報(1)にも引用したごとく,高橋(2)及び松本(3)らの記述によれば,温州ミカン果実の着色に及ぼす肥料的要素に ついては,チッ素過多は着色遅延及び着色不良の原因とされ,リン酸は果実を早熟にし着色を早め,またカリやマグ ネシウムは果皮の色を濃くするものとされている.さらに肥料要素のうちで果汁成分に重要な関係をもつものは,リ ン酸とカリであり,リン酸が不足すれば果皮の緑色減退を遅らせ,酸の減少を妨げるとし,早生温州のごとく早期採 収を目的とするものでは,カリを減じてリン酸の増施が必要であるとしている. このような関連の観点からするならば,野呂,執ら(4)が行った実験で,宮川早生に対する第一・リン酸カリ液 (03%)の9月下旬における兼面散布が,着色促進効果を示したという報告は,早生温州の着色促進をはかるための, 合理的な技術対策であると考える… また,湯田ら(5)は,温州ミカンの品質及び着色に及ぼすリン酸並びに植物ホル モンの菓面散布に関する実験において,リン酸第1ナトリウム及びリン酸第1カリウムの菓面散布が減酸効果にはた らき,1983年の試験でリン酸第1カリウム(1,5%水溶液)の7月上旬より9月上旬の1回処理で,その結果,リン 酸処理は果実の肥大に影響を及ぼさなかったが,減酸効果は顕著であったことを認めており,リン酸を果実内に効率 よく導入すると,減酸の効果が現われることが明らかであることを報告している‖ 近時になって,温州ミカンの需要面からの着色促進及び外観,品質・食味の向上を求める関心は高くなってきてお り,前記のような肥料要素のコントロ・−ルによる施肥法や菓面散布とは異なった方向性からの着色札 ホルモン剤等 の開発・利用が実用化されつつあり,それらの単用又は混合使用による菜面散布に関する試験結果も多い(6) 他方,校本(3)の記述によれば,9月ないし10月のミカン果実の液胞発達期(果汁増加期)に乾燥状態におかれると, 果汁中の全糖含量又は糖度が著しく高くなるとしている“しかし,当地方における通例的な気候及び気象状態からし て,例年的に盛夏季の寡雨・乾燥後にくる秋季の降雨状態(ときには9月上旬∼10月中旬にわたる曇天の連続,長期 の降雨もある)では,必ずしも上記のような果汁増加期に当たる9月∼10月の,乾燥状態による増糖現象を期待する ことは難かしいことである小 筆老らの目指すところは,当地方のもつ宿命的な特異な気候条件下において,一・股的な柑橘栽培はもちろん,とく に早生温州ミカンの栽培において,連年の安定した栽培・経営に資するための着色促進及び品質向上をはかり,ある いは夏季から秋季に移行するに際して予想される天候不順がもたらす着色遅延,又は品質低下を事前に阻止するら;必 要な対策技術の確立を求めようとするものである.. この意味において,リン酸カリ液肥剤の素面施用に関する時期,濃度及び方法等の模索的実験の中において,当地 方における例年的に安定・確実な着色促進法として,また品質向上対策としての成果が得られることを期待するもの である.前報(1)の盛夏季散布又は初秋季散布施用の実験結果と,本掛こおける着色始期散布施用との比較において, 同じ年度内における実験でありながら,初回採収量及び果実の着色状態,あるいは果汁中の増糖,減酸に現われた効 果は,本報の場合の方が前報の場合よりも幾らか優れた効果が見られたことは,他の例にも見られるごとく,秋季で も着色期に近い時期あるいは着色始期の菓面施用が,また一・部の液肥剤の散布例のごとく濃度を高めることの利点等 がうかがわれた.

(5)

引 用 文 献 (i)樽谷 勝,寺尾 勇:早生温州の着色に及ぼすリ ン酸カリ液肥剤の菜面施用の影響,Ⅰ盛夏季散 (5) 同県柑橘試験場報告,昭和27・2$年度,70(1955). 湯田英ニ,平尾佳史,桜井大樹,中川昌一・:温州 ミカンの果実品質に及ぼすリン酸ならびに植物ホ ルモンの効果,園芸学会昭和59年度秋季大会研究 発表要旨,54−55(198頼 (6)岩塩 功:カンキツの品質向上に関する諸問題, 園芸学会昭和54年度秋季大会シンポジウム講演要 旨,32−40(1979) (1986年5月31日 受理) 布・初秋季散布について,香川大学農学部学術報 告,38(1),37−44(1986) (2)高橋郁雄:柑橘,310−314,369−374,東京,養賢 堂(1965) (3)松本和夫:柑橘園芸新乱197−217,東京,養賢堂 (1975) (4)野呂徳男,敬 一雄:早生温州成熟促進試験,静

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