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小豆島のアカネズミ属2種の採集,およびアカネズミの形態的特徴-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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小豆島のアカネズミ属2種の採集,およびアカネズミの形態的特徴

金 子 之 虞

香川大学教育学部生物学教室

Two Species of Apodenus and Some Measurements and

Character・istics of A。SPeCiosus fr・Om theIs小Of

Sh6do−Shima,theInland Sea ofJapan

Ⅵ1kibumiKANEKO,BiologicalL/aboratory,穐culty ofEducation,Eagawa

t′′・−∼、‥・べ′り/、ソ1止・′′′=′h′′.・・・、・J里川′′

ABSTRACT:Icollected16specimens of Apodemus speciosus ar]d six specimens

of A。argenteuS from theIs。Of Sh6do−Shima,AprillO−12,1976・ Fourteen

specimens of A.speciosus fr・0ふtheIs・(S−pOPulation)wer・e COmPar・edin skull

ar】d exter−nalmeasurements and some char.acteristics of skullwith34specimens

collected fr・om fourlocalitiesin Kagawa Pr・efecture,Shikoku(K−pOpulation),

March23−28,1971。 Age of each specimen was determined by upper tooth

WearSo Two populations were composed of pr’egnant females and active malesin

repr.oduction・Antero−eXternalcusp of upper molar 2 appearedin the same fashionin the two populations。The position of anter’0−palatal foramen was

situated anteriolyin the S−pOpulation thanin the K Comparisons of the same

age−gr・oupin males showed that the mean values of some measur.ements ofskull

except ML and ZW were slightlylonger.in the K thanin the SThe statistical

test(t−teSt)of the value,however,WaS nOt different exceptin CBL,C−Z,

and Dias of theⅢage−−grOup

瀬戸内海の野ネズミの報告には,淡路島(徳 田,1941),屋代島(大島)・長島(Imaizumi, 1962,1964),および芸予諸島内の大島・伯方 島・大三島・生口島・因島・向島(金子,1974) がある。これらの報告のうち,Imaizumi(1962, 1964)のみが,アカネズミApo(g¢例%8叩β¢宜08祝8 の形態的特徴を扱っており,他の著者は分布の 報告だけである。 この論文では,瀬戸内海の中で淡路島につい で2番目に広い面積をもつ小豆島(1524km2)の 野ネズミ 2種(アカネズミとヒメネズミA.αγ− gβ嘘紬さ)の採集報告と,外部形態と頭骨につ いて,小豆島慶アカネズミを四国本島香川県産 のアカネズミと比較した結果とを述べる。 稿をはじめるに先だち,小豆■島の採集に同行 し御助力下さった,香川県立坂出高等学校の森 井隆三教諭,および京都府立城南高等学校の岩 淵暁教諭に対して深く感謝する。また,原稿を 読んで下さった香川大学教育学部植松辰美教授 に謝意を表す。 調 査 方 法 筆者は,1976年4月10∼12日討2晩にわたっ て,香川県小豆郡土庄町星が城の標高650−700 mのヒノキC加βCypαγゐ0ると%βα林(林床 ヒサカキ助γ釘αJαpOれ宜cα,サルトリイバラ ぶ仇す′α∬Cん五和)(A地点)と,標高700−750 mの混交林(B地点),および同郡内海町のス スキ〟独聞出払s戒催那ゐ原と休耕地(標高 50−100m)(C地点)でネズミ類の採集をおこ なった(第1図)。各地点別緯度・経度・およ びワナ数を第1表に示した。ワナとしては,金

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第1図 採集場所略図図中のA,B,およびC 地点の説明は本文中にあり一. 属製ギロチントラップを,エ・サとしてはカボチ ャC%¢祝γ∂宜とα朋0β血ぬ種子を用いた。 ネズミの回収をおこなったのは,4月11と12 日の朝である。採集した標本はただちに外部測 定・開腹され,10労ホルムアルデヒド溶液で固 定された。その後,実験室にて頭骨標本作製に 供された。 比較の資料に用いた,香川県四国本島産アカ ネズミは,すでに金子(1972)によって分布調 査報告された標本である。採集は1971年3月23 ∼28Eヨにわたっておこなわれた。採集場所採集 日・緯度・および経度は,高松市】・官町香東川 (23・24日,34016−N,134001−E),丸亀市南町 松木土器川(25日,34014−N,133051−E),善通 寺市三条町西原(26日,34014−N,133048■E), ≡二豊郡豊中町本山財田川(27・28日,34008tN, 133042†E)である。標高は0∼50mの範囲に含 まれる。アカネズミが採集された棲息場所は, 休耕田・河川敷・および堤防である。標本数は 34頭で,言十測・固定・および頭骨標本作製の要 領は,小豆島産と同様である。 体重(BW)の測定は銀秤で01gまで,頭 胴長(H&BL)・尾長(TL)・後足長(H FL)・耳長(EL)は,竹製ものさしとディ バイダt−を用い01mmまで読みとった。頭骨の計 測は,ミツトヨ製ダイヤル式カリ/く・−で01mmま で読みとった。計測部位は以下に詳述する範囲 であり,第2囲に表した。頭蓋基底長(CBL) 第2図 頭骨の計測部位.図中の記号は本文中に あり左右両側にある部位は左側を測定し た. :後顧顆から前上顎前端までの距離,C−−Z: 後頭顆から上顎骨の頬骨突起の吹板前上端まで の距離,C−Ml:後頭顆から上顎Mlの前端 までの距離,Ⅰ−M3:切歯の前端から上顎M 3の後端までの距離,歯隙間長(Dias):切歯 歯根部の後端から白歯列歯根部の前端までの距 離,臼歯列長(ML):上顎Ml前端からM3 後端までの距離,切歯孔長(IFL):口蓋孔 の最大長,鼻骨長(NL):鼻骨最大長,顆骨 弓幅(ZW):頬骨弓最大幅,眼窟間幅(IOW) :限窟間の前頭骨最小幅。 性的成熟可能個体の判建はつぎの方法にした がった。雄の副精巣尾部が管状を呈した個体と 雌の胎児をもっていた妊娠個体について両名の 最小体重(経では胎児体重を除いた畳)は,と もに34gであった。したがって,34g以上の体 重を示す個体を性的成熟可能個体(成体)とし た。 各標本の年令査定には,疋田・村上(1981) の上顎臼歯の唆耗を基準とし,オリンパス製双 眼実体顕微鏡(Ⅹ−Trうを用いておこなった。 上顎第2日歯前外側の喫頭の出現の有無,お よび前口蓋孔中央部の位慣についても,同上の 顕微鏡を用いた。ただし,前者については,唆 耗が進行して曖頭の出現の有無を明確に判断で

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きない個体は除かれた。後者については,第2 白歯の中央より前か後かで,その位置を区別し た。 結 果 と 考 察 捕獲された野ネズミの種類は,ネズミ科のア カネズミApo(gβ仇祝さβpβ¢ゐβ≠β16頭と,ヒメ ネズミA。αγgβ常吉β髄β6頭である(第1表)。 第1表 各採集地点別緯度・経度・ワナ数・描 獲されたネズミの種類・および捕獲率 響をもっているかは今後の課題である。 16頭のアカネズミのうち,1頭は尾のみ採集 され,1頭は頭部が食害されていた。残り14頭 について雌雄別に繁殖状況を整理した(以下S 群と称す)(第2表・第3図)。参考のため香 第2表 S群とK群の雌雄別繁殖状況 妊娠率開 個体数 哺乳中の 経産直後 体の数 妊娠個 の個体数 34g以上 個体数 繁殖率陶 個体数 部管状の 副将巣尾 個体数

S群 8 5 5 100 6 6 2* 1 667

K群 22 22 22 10012 12 3** 4 ′37.5 アカネズミ ヒメネズミ 捕獲 () 採集 給 地点 皮 *胎児数は4と3,**胎児数はす−ベて4。 川県四国本島直の個体群(以下K群と称す)の 繁殖状況も第2表・第3図に載せた。成体雄に 対する性的成熟個体の割合は,S・K両群とも 1009らであった。しかし,S群の成体雌に対す る妊娠雌の割合はK群の約2倍である(第2表)。 また,K群の雄はⅡ令以上すべて性的成熟に.達 しているのに対して,S群のⅢ・Ⅳ令の雄個体 では性的成熟に達していなかった(第3図)。

A 34031−N134019−E 36 2 1 0 2 70

B 340311N134019■E 54 2 0 3 1 56

C 34029tN134018tE 63 9 2 0 0 88 捕獲率は56∼889らで,ススキ原・休耕地が− 番高かった。ヒメネズミは標高の高い星が城の ヒノキ林と混交林においてのみ採集された。ア カネズミは上記棲息場所と標高の低いススキ原 ・休耕地でも採集された。 筆者は,香川県三豊郡豊中町箕浦のマック宜ヶ批β spp。林中の潅木とシダの密生しているところ でヒメネズミを採集しており(Kar】eko,1979), 小豆島におけるヒメネズミの分布も,標高より も山林という棲息場所に規定されているといえ るであろう。また,瀬戸内海の他の島興部の野 ネズミ相についてみると,淡路島にはアカネズ ミとヒメネズミが棲息する(徳田,1941)以外, 屋代島・長島(Imaizumi,1962),大島・伯方 島・大三島・生口島・田島・向島(金子,1974) ではアカネズミの棲息が確認されている。島に おけるヒメネズミとアカネズミの分布のし方は, その島の面積の大きさによってほぼ説明できる ことを筆者ほすでに述べた(金子,1980)。す なわち,ヒメネズミは島の面積150k貯以上に分 布し,アカネズミは27kⅡP以上に分布している。 面積1524kⅡPの小豆島には上記2種が棲息して いるが,面積1338kⅡPの壱岐にはアカネズミの みである。したがって,この両島の面積の差約 19kⅡ戸がヒメネズミの棲息にとってどのような影 cn 5 む rd ∑ 0 Agegro岬ⅢⅡ=VVⅥⅦ Ⅱ ⅢⅣVⅥⅦ 0 第3図 年令群別個体群構成と繁殖状況。 雄:A一性的未成熟個体,B一性的成熟個 体。 雌:C一性的未成熟個体,D−経産直後哺 乳中の個体,E一妊娠個体・

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従来鑑別的特徴として扱ってきたことを保証す ることができたといえよう。 以上のことから,この両群は,採集時期が最 高20日しか隔っていないが,繁殖活動および個 体群構成の点では相異していると推測される。 ただし,個体数が十分でないという点もあるの で,今後この点を補って検討する必要があるだ ろう。 S群14頭とK群34頭の前口蓋孔中央部の位置 (第3表)には,統計的に有意な差がみられた (ズぎ=444,0025〈p〈005)。いままで,この形 質はアカネズミについて検討されたことはなか ったが,カヤネズミ〟宜cγ0ケ花yβ例慮れ%≠%βにお

mea已巨ga皿rS旨加

いて地理的変異が認められている(今泉,1970)。1ム 今後検討す−ベき課題である。 13 上顎第2臼歯外側前方にある唆頭の出現の有 無(第4表)は,K群の左側と右側には統計的 に有意差はなかった(裏=007,075〈p〈09)。 この事実にもとづいて,S群とK群の左側につ いて有意差を検討した結果,両群間に.差を認め ることはできなかった(ズ2=049,050〈p〈075)。 今回の結果を,Tokuda(1941)の資料と比較し ても統計的な差はみられなかった(ズ2=001, 090くp〈095)。したがって,この形質につい ての地理的変異は非常に少ないものと考えられ, 第3表 前口蓋孔中央部の位置 【 ⅢIV V Ⅵ Ⅶ Age Ⅲ 皿 Ⅳ 〉 Ⅵ Ⅶ Age 第4図 頭骨各部位の年令別成長(雄) 上顎第2日歯 上顎第2日歯 中央より前 中央より後 mm 16 †8 17 q−0 5

二・

○・・・、 、○・−・・・く ●−■−_. BW S群 10 4 14 K群 11 23 34 ほm25 21 27 48 /. ●/ 24

30

mnn 120・ 110 100 第4表 上顎第2白歯外側前方の唆頭出現の 有(+)無(−) H&BL +(痕跡的なものを含む)一 計

−も

K群左側 12 18 30 K群右側 11 19 30 / 計 23 37 60 12 18 30 4 10 14 Ⅱ 】皿】V V VI VJ ‡ Ⅶ IV V Ⅵ 〉1 16 28 44 第5園 外部形態と体塞の年令別成長(雄),平均値と 標準偏差の表示は第4図と同様.

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1)小豆島(香川県小豆郡土庄町と内海町)で 野ネズミの採集を,1976年4月10・∼12日にお こない,アカネズミApodβ仇≠さ8pβCゐさ%さ 16頭と,ヒメネズミA・αγgβれ古か弘さ6頭を採 集した。 2)このアカネズミ14頭を,香川県四国本島産 の34頭(1971年3月23∼28日採集)と比較し た結果,繁殖状況と個体群構成の点で差兵を 認めた。 3)両群の個体の上顎第2日歯外側前方の唆頭 の出現の有無には,統計的差異を認め′ること はできなかったが,前口蓋孔中央部の位置に は,統計的な差異がみられた。 4)同一年令群ごとに,雄の外部形態・体重・およ び頭骨各部域の計測結果を,小豆島産と四国 本島香川県産で比較した結集,大部分の形質 で後者の平均成長は前者のそれを上まわった。 しかしながら,平均値の間に′はⅢ令の3形質 を除いて統計的有意差は認められなかった。 引 用 文 献 疋田努・村上興正。1981。アカネズミの齢推定 法.日生態会誌 30:109−116.

Imaizumi,Y・1962・On the species for−

mation of the Apodemus speciosus

group,With specialreference to the

impor・tanCeOf r’elative valueinclassifica− tion‖Par・tl.β扇g.他方宜。ぶ¢省。肋8。(7「披yo) 5:163−259. 各年令群ごとに,外部形態・体重・および頭 骨各部域の計測結果を,標本数の多い雄につい てみる(第4・5図)。Ⅶ令はK群になく,Ⅰ 令はS群にないので,Ⅲ∼Ⅵ令の範囲で両群を 比較することになる。平均値では懐向的にみる と,成長が重なり合うのは頭骨ではZW,外部 形態ではH&BLとHFLである。S群がK群 よりも大きいのはMLである。K群がS群より も大きいのは,上述の形質以外にみられた。し かしながら,Ⅲ・Ⅴ・およびⅥ令について統計 的に検定をおこなうと(第5表),m令のCBL, C−Z,およびDiasを除いて,両群の平均値の 間に有意差は認められなかった。この原因とし 第5表 S・K両群の平均値のf検定値. ()内は(げ」・*印のみ002くp〈005,他はⅣ・S。 形質 Ⅲ令 Ⅴ令 Ⅵ令 1057(4)1325(2) 1070(4) 0617(2) 2048(5) 0158(2) 2152(5) 0362(2) 0457(5) 0469(2) 0071(5) 2121(2) 0 0429(5) 3000(2) CBM 3920*(3) ZW 2084(3) C−Z 3442*(3)

C−Ml O185(3)

Ⅰ−M3 1105(3)

Dias 2503*(3) ML l225(3)

IOW O773(3)

H&BL 1554(3) 0322(5)1617(2)

BW l019(3) 0542(5) 0419(2) TL l411(3)1106(5) HFL O685(3) 0050(5) 0581(2)

EL O185(3) 0430(4) 0175(2) 1964。On the species for■ma− tion of the Apodemus speciosus gro叩, With specialrefer.ence to theimportan1− ce of r・elative valuein classifieation・ Par・t2 β≠Jg。∧厄≠宜。ぶ¢宜.Aオ≠さ.(ro吻0) 7:127−177. 今泉書典.1970.対馬の陸棲哺乳類.国立科学 博専報(3):159−176. 金子之史.1972.北四国沖横平野における野鼠 採集報告。香大教育研報 Ⅰ(213):1−7・ +.1974.小哺乳類について.本州四国 連絡架橋に伴なう周辺地域の自然環境保全の ための調査報告(その2)。学術調査編(動 て,1つには両群の各年令群ごとの個体数が少 ないことがあげられる。両群は,ほぼ同時期に 採集しているので,季節的成長の要因を取り除 いて比較されている。したがって,S群がK群 よりも多くの形質で現実に成長が劣っているこ とを明かにすることができるのであれば,多く の離島のアカネズミが大きいという事実と対照 させると,興味あるテ・−マを提供するものと思 われる。 要

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金子・之史.1980.与島および楷石島の小哺乳類 について.昭和54年慶一・般国道(香川県側) 自然環境調査報告書:17−35。 徳田御稔.1940。日本生物地理.古今書院,東 京∴ 物):23−27. Kaneko,Y.1979.The occurTenCe Of Eothenomys s仇iihiincultivatedfields atthef00tOf the SanukiRange,Shikoku,

参照

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続いて川崎医療福祉大学の田並尚恵准教授が2000 年の