現代企業の意思決定について
井 上 勝 人 Ⅰ。まえがき。ⅠⅠけ 意ノ監決定の基本問題。ⅠⅠⅠ意思決定の経営学的 考察。ⅠⅤ.むすび。 ] 最近,経営学研究のなかに,伝統的な職能的・管理的思考と異った,極めて 現代的なアブロ−チが形成されるに至った。1)このアプローチに共通に見られ る傾向は,欝lに.経営科学(Management Science)の積極的な援用によって 経営の意思決定の論理構造を究明し,第2に行動科学(BehavioralScience) のそれによって,鵜織内に・おける個人の相互関係,モティベ←ジョン,コミ.ユ ニケ−ジョン等と密接した意思決定のあり方について考察しようとするもので ある。 このような新しい動きは,経営学の中に・おいて:どのような意味を以って,位 置づけられるべきであろうか。 伝統的経営管理学は企業経営を主として−構造と過程の問題として把握し,あ る問題に影響を及ぼしそうなもろもろの要因の作用を払拭して個別的に論究す る態度で貫ぬかれていた。すなわちティラ・−の科学的管理法に始まったアメリ カ経営学半世紀の歴史にしても,同国の経営学の主流がいわゆる管理技術の技 1)「現代的」なる意味は,従来の経営学の中心思考を形成するところの,組織的臥考 と計数的思考とが,現代の競争構造に対応するために,如何に変革されざるを得なかっ たかの発展的段階を意味する。この意味で,歴史家の「近代と現代の論争」における字 義どおりの現代的感覚であり,経営実践紅おいては超現代の課題とも云うべき考え方を も包含するものである。あるいはこの課題ほ,逆に日本の経営実践がもつ大きな問題点 を潜在していると言えよう。香川大学経済学部 研究年報 5 J96β ーヱ6β− 術的合理化の追求を個々別々にとりあげてきたことにその特徴の一つを求める ことができよ・う。そこでは「管理組織」は,経営の経済過程,社会過程,心理 過程等から雫離した存在としてそれ自体独自の技術性,合理性をもつべきもの とされ,これを追求する事が経営管理論の主要課題であった。したがって経営 学の体系を論ずる場合も,財務面,生産面,販売面乃至組織面と計数面の諸体
系を構成内容として成立され,しかもいずれかに.かたよっていたぁが主流であ
ったと解される。その上このような管理組織・計算の合理化を実践において担 うぺく期待される者が,企業の資本的関連からとき離された管理技術の専門化 としての専門経営者・管理者であると措定され,この意味において専門主義・ 職能主義は酒清として企業内部に箪延し,経営管理学を形成したのであった。 しかしながら,現代企業体ほわれわれの目的意識的活動体であり,その存在 は複雑な現実在的繚関連のうちにある。しかして,技術革新の産物である動力 革命の進行,諸々の交通手段や通信施設の発達,とくに強力な電子計算機の出 現と導入は,従来の経営管理のあり方に抜本的な反省を要請してやまない段階 ○●●● に到達し,ここに於て:ダイナミックなシステムの確立を要請されている現状に. 直面したのである。2)かかる要請から,現代経営管理学ほ,経営管理を応用数 学的意思決定論によって解明しようとするオペレ・−シ㌧‡ンズ・リサ剛チまたほ 経営科学(数量的アブロ−チ・),ならびに経営管理を行動科学によって二究明しよ うとするグル−プ・ダイナミックスおよび人間関係学派を中心とするアブロ」− チの2っの方向に結実されつつあるようである。 本稿の目的は,かかる2つのアブローーチに共通な因子乃至目標をなすところ の意思決定の問題に関して研究したいと思う。ところで意思決定の問題は,既 に.これを主要内容とするど汐ネス・エコノミックスなる一周呈の研究があるの で,まずそれらの関連を考察することによって展開の緒口としよう。 ビジネス・エコノミックス乃至マネジアリアル・エコノミックスという名で 出版された書物の内容が,企業に・おける意思決定のための経済分析の体系を形 2)レステム概念は,必らずしも明確な定義づけがなされているとは云い難いが,少く ともその大綱に於てほ,内部構造的組織概念と対比する場合,複雑な要因間の相互関係 を考慮に入れた思考を,意味するものとみてよい。細川進稿「管理者行動のシステム概 念」『経営資料旬報』第446号参照。現代企業の意思決定について ヱ965 ーJ6ク ー 成することにあることについて−は異説はないであろう。3)彼らは−・様に現実的 な基礎の上に立って二,企業の経済過程の構造並びに.管理態様が如何に経営外の 諸条件に.よって制約され,如何に主体的に企業がこれに適応していくかを問題 として:把握せんとした。しかし,その具体的内容は時とともに次第に変わって きていることを見落しては.ならない。すなわち,ビジネス・エコノミックスほは じめ企業の仝経済過程の構造を明らかにすることによって計算機構の拡充を目 途することから,それら諸計算機構に.統一・的な視角と基礎理論を提供すること 軋主眼点がおかれた。それが近年に.おいてこは,さらに計鼠経済学ならびにC収 的接近が次第に援用されつつあるのである。ここにおいてビジネス・エコノミ ックスに.おける意思決定についての役割は飛躍的に増大し,意思決定理論とし
てfunction orientedからmethod orientedへの転換が看取されるのである。4) いうま−でもなくこの変化の原動力は,数理経済学,計量経済学,0βなどのい わば数鼠的科学の進歩であり,これら科学とビジネス・エコノミックスの接近 は益々促進されるであろう。 ところで現代企業の外部環境ほ,従前に倍して激変することが予想される が,学問の発展,すなわち現実への適応ではない。いかにC収的接近が重要視 ●●●●●●●●●●●●●●●● されるとしても,それはあくまで企業の本質に.即して純粋化し体系化されねば ●●●●●● ならない。この意味において経営に関する学問の体系としてほビジネス・エコ 3)この系統に属する人々の体系づけにおいて,1っのプロットタイプとなっている書 物は,.ToelDean,肋〝αg♂′∠αJβco邦0∽≠cざ.1951,であるが特にOR的色彩の強いも
のとしてほ,NeilE。Harlen,CharlesJ.,Chritenson and Richard F.Vancil, 肋狸αgβ㌢ね了点加潤鋸扇“−rβ∬才α紹d C〃ざβ5−・,1962い が挙げられるであろう。このよ うな傾向は益々ビジネス・エコノミックスに吸収され,ビジネス・エコノミックスの ORへの接近は吏紅助長され,ビジネス・エ・コノミックスの体系化が促進されるものと 思われる。 4)ビジネス・エコノミックスの体系が,経営におけるいろいろな機能を中心とした, function・Orioentedともいうぺきものであるに対し,ORの体系ほmethod・Orientedなも のであって,ビジネス・エコノミックスがもっと数法的分析に,そしてORに接近する 必要が認められるが,経営に関する学問の体系としては,これの全くの転換は求めるぺ きでなく,むしろいか紅消化し活用するかが問われねばならない。
Cf…CrWい Churchman,R∴L Ackoff,E。L Arnoff,IniroductiontoOPeraii−ons
香川大学経済学部 研究年報 5 ヱ96∂ −J7()一 ノミックスのそれが0月のものより望ましいものであることは当然であり,し たがってピ汐ネス・、エコノミックスの今後の最大の課題ほ,C収で開発されて いる豊富な分析をいかに自己の体系の中に守肖化してこいくことに.あると考えられ る。ビ汐ネス・エコノミックスの全般的課題ほ上述の如き点に集約される。し からほ,その認識手段としての主要概念ほいかなるものであろうか。 −・般に.経営学的研究ほ,矢島教授によれば「そ・の出発点において,企業体な
る人格を理念型的に予憩する.」。しかも企業体はその実体ほ「人」が動かして
いるのであるから,夷体的にほ経営者の判断である。そこにいかなる「思考」 をなしうる経営者を想定するかによ.って,その後の経営学の理論体系は甚だ異 なったものとなる。けだし経営学における諸学派の派生する所以である。ビジ ネス・エコノミックス紅おいてL経営者に用いられる思考形式は,未来原価と機 会原価である。すなわち或る生産物の原価を決定する場合紅,それが過去に.お いていくばくの原価で生産され,また現在どれだけの価値をもっているかとい うことよりも,むしろ,それが将来いくほくの原価で生産されるかということ に,また,投資の用途を選択することによって獲得される利益と,その用途を 選択したために失われた利益部分がいくはくかということを,問題とする。換 言すれぼ,すでに.行なわれたことだけをアカウンティングのインフオ・−メ・−シ ョンとして記録し利用しようという考え方から,将来やれる可能性のあるいろ いろな手段についてその影響するところを考察しようとするものであり,アク チエ.アル・アカウンティングからオポチ.ユ、ニチイ・アカウンティングへの展開が 主要課題となる。したがって,ビジネス・エコノミックスの展開に示される基 本的乃至最高意味関連的概念は,「不確定状況のもとに.おけるいくつかの代替的 行動のなかから1っを選ぶことを意味する意思決定の問題」であることが,容 易に察知される。かくしてビジネス・エコノミックスほ,そこにおける諸々の特徴的概念一増分概念(incrementalconcept),時間概念叫(longand
shortrun concept),割引の概念,および限界原理(equimarginalprinciple) 等−−をすべて意思決定の解明に編入せしめることに.よって成立しているので ある。 さて,ピ汐ネス・エコノミックスは以上のごとき基礎づ研こよって,新たな 境界儲域一経営学と経済学一【の開拓を志向するものであるが,われわれの現代企巣の意思決定について ーJ7J− 関心を示さざるをえないことは,つぎの点である。すなわち,ビ汐ネス・エコ ノミックスにおける意思決定は,不確定性と選択をその要因としていること, その意味で合理性の限界と数量的接近とを媒介環として,後にふれるように人 間行動の理論に包供せしめうることが窺知できるということ,これである。こ の関連性を開明にするため,次に人間行動の理論について暫く考察しよう。 −・般に・行動科学は,人間行動に関する検証可能な法則を展開することを目的 とし,個人と組織的状況との間の相互作用に中心がおかれる。すなわち,個人 の目標と集団の目標とを調和せしめる動態的過程として\理解され,生理学的・ 心理学的・社会学的側面が強調される。5)しかして,こ.の場合の目標とは到達 すべき最終点を示すゴ・−・ル(goal)を意味し,如何にすべきかのとるべき方法の 手段選択というよりも何故なされるかの叙述的理論を内容とするものと考えて いいのではないかと思う。6)さらに.,相互作用に中心がおかれることから,種 々な要因のつながらを逼Lてそれらの因果関係乃至相関関係を考察しようとす る態度,すなわちシステム的な考.え方を基本とするものである。かく考察して くると,行動科学の基本概念もまた広義の意思決定を中核としていることが推 察されるであろう。しかも,レステム的な考え方の最も重要な点ほ要因間の相 互作用であり,これを現実の意思決定に.おいては,行動理論的アブロ・−チに.お いて.も走塁的な問題設定として,数忌科学的に研究されるところに,われわれ の課題があり,現代的意思決定理論の展開が期待されるものと思われるのであ る。 5)行動科学理論において,ビジネス・エコノミックス払おける.Teanに相応する人ほ, H.A.Simonであろう。彼の種々の数学的論稿は,まさに行動科学理論の最高峰を示す ものと云えよう。特に彼のModelsof Madに結集された緒論稿は,当該理論の白眉を なすものと思う。 その他,この系統に属する人々は,K、Lewin,釣βJd rカβ〃7・.γ査一花S〃C査αJSc∠β乃Cβ
1959.Cい Argyris,The Zmpact of Budgets on PeoPle.1952P“Selznick,
エβαdβ㌢.Sカよ−♪よ〝A(ブ研よ扇√Sfγα′査0紹,1957.MoIenO,S♂Cよ■α朋払わ・.γ α紹d 点βαdβ′,1959い T.Lなどが挙げられる。 6)目標と目的とは,経営学的に必らずしも同義の意味を有するものではない。すなわち 目標ほ目的概念を包摂し,より広い抽象的感党を有するのに対し,目的は実践的執行観 念に結著したより具体的な性貿を有する。換言すれぼ,目標ほ副詞戎いほ形容詞的な性 格をもつが,目的は実践に直線的に結がる動詞的な言辞である。
香川大学裏済学部 研究年報 5 J965 ーZ72− かくて,前述した如く企業の意思決定は,いわば個性的意思決定であり,め まぐるしく変化する条件に対して如何に・対処すべきかの自主積極的な適応力を 発揮すべきかの決断を意味している。しかも不確定要因に充ち充ちたいわば未 知の世界に.おける自己限定の機能であるだけに,今日の重要課題としてわれわ れの提唱する数豊科学と人間行動の理論の関連乃至影響について検討する意義 があると考えるものである。 ところで近時著しい拾頭を示した行劫科学的アブロ・−チの系譜は,既に1940 年代に.おいてその展開の基礎が確立されていたことを見逃してはならない。戦 時経済体制がニ.ユ.−・ディール以降の「恐慌からの脱出」を図るぺき役割を担 っている時期を背景として,実務専門家の側から,近代心理学の行動原理の適 用による意思決定庶理の確立を中心課題とした,組織理論の成立の債権的主張 が試みられたのである。サイモンの「Administrative BehavioI」(1947)がすな わちそれである。サイモンの組織理論の主張は,周知の如く,パ−ナ・−ドのそ れと共にアメリカ経営学に大きな形態的転化をもたらしたものとして脚光をあ びたものである。すなわち,サイモンが近代心理学の具体的適用によって:体系 化しようとした行動科学的な細線告諭が,戦後の近代心箆学(社会心理学)に もとずく行動科学の展開の先駆として重要な役割を果したばかりでなく,彼が 心理学にたいして初出そうとした組織論の体系が,のちに示すように,組織体 の意思決定原理の体系的確立を中核的課題としていたこと自体のうちに,当時 の経営実践のもつ問題意識が推察できるのである。その意味で,戦後アメリカ 経営学の展開の−・特徴を形成する行動科学的アプロ−チによる意思決定原理の 基底とその意義とを把握するための予備的考察として,またその内容において ピ汐永ス・エコノミックスといかに接近するかを検討するために.彼の志恩決定 原理の基本問題の解明は不可歌であろう。 ∬ サイモンの組織論の核心的課題とその現代的関連とを解明するための手懸り として,新たな組織論の提唱について彼がいかなる主張を試みていたかを吟味
しておこう。彼ほ.既に有力であったバーーナ∼ドの組織理論と,数嵐科学的接近
方法とに対する熟考のうえに,新たな組織論の積極的な提唱を読みるのである現代企業の意思決定に.ついて −エア∂− が,まず前者と関係サる問題提起は次の如くである。 組織に.おける各個人の行動ほ,彼に.よれぼ,、意思決定の過程に閲す−る理論紅 より説明できるとする。7)したがって,サイモンに.よれば,組織体においてほ 各個人の意思決定の過程が特紅重要なのであるが,従来の伝統的理論は,この 場合合理的な経済人を仮定し,この観点から考察する。この場合,まず第一・ に・,その問題とする領域は,組織休の本来的な社会的・心理的側面を超えるも のであり,第二に,そ・の分析視角に不可分離に措定される社会的原理は,決し で−・義的な性格をもつものでほなく,本来それは,各人の考え方乃至信念を含 むからして,理論的に解決し得ない側面をもつこととなる。だから,もとより それが重要な研究領域を構成することは否定し得ないが,さらに.伝統的終始論 と異って組織体の本質的な社会的・心理的過程を対象領域とし,そこでの・−・般 原理を究明する組織原理が,新たに要請されたのである。8)伝統的組織論に対 してサイモンが示した如上の反省から,彼の新しい組織論の性格が,観織体の 経済的活動原理でほなくて,その本来的な社会的組織体原理を明かにするこ と,つまり,規範的政策でなくて∴理論の体系化を志向しようとするものである ことが,容易に察知されるのである。すなわち,人間乃至その集団が実際にお こなう意思決定がどのような原理紅もとづいているかを記述し説明しようとす るものである。 なお,サイモンは以上のぺたごとく伝統的組織論に対して若干の批判を加え てはいるが,彼はその意義と重要性とを充分に承認していたのである。しか しドイツ経営学の展開過程で見受けられたような方法論的吟味のうえにたっ て,その批判と自己の近代的組織理論の正当性を主張しようとするものではな い。むしろ,伝統的組織論と彼の近代的組織論とは,併存しながら相互補完的 立場に立つことを主張しようとしたのである。 7)この点に関しては,バノーナードは,個人の組織行動は,意思決定のプロセスであり, 意思決定を彼の組織論の中心的な概念に位置づけており,サイモンはこれをそのまゝ踏 襲していると云える。
Cf,C.,Ⅰ.Be工nard,The Funciions ofthe E.xecutive1938田杉窺訳,『経営 者の役割』。
香川大学経済学部 研究年報 5 ∫一965 −プア4−− ところで,組織体の基本的な心理的側面紅ついでの理論的分析ほ,社会学・ 心理学において−既に一応は,体系化されている筈である。これらの理論に対し てサイモンの細線論ほ,いかに.してその存在の積極的意義を主張しうるであろ うか。 サイモンの規定に.よれほ,心理学は,人間行動における目的性を捨象したも のであり,たとえ目的を意識したとしてもそれは重要な因子とは.ならないが, 行動科学においては行動の目的への接近の効率が極めて:大きな役割を有し,こ のことにおいて決定的にそのアブロ・−チの方法が異なるとする。10) 第二に数鼠科学的側面の考察であるが,サイモンは,数学モデルを積極的に 援用し活用することに.よって,それが事象間の隠れた諸関係を別映する機能を 高く評価している。11)すなわち,彼に.おいては,従来,定式化の不可能と看徹 されていたモラール,インセンチィプ,影響力などの定性的諸概念にかんし て,極めて.精緻な分析を行いながら,これを出来うる限り定量的紅処理するこ とが望ましいとし,単に叙述的方法をもって事足れりとしているのではない。 以上のような数愚科学の組織理論にたいする活用のうえに,サイモンは,数 量科学がその対象領域の理論的解明に用いた数学的モデルを,組織体のすべて の行動分析に適用して,数鼠科学の認識の豊穣化をもたらすととも紅,数豊科 学の果した理論的成果の実り豊かな結実を約束すべき組織体の意思決定原理を 吟味することをその課題とする,新たな組織理論の提唱を試みたのである。 さて,サイモンは以上のごとき基礎づけによって,新たな組織理論の提唱を 試みたのであるが,この点にこそ,われわれの課題とする数員科学と行動科学 の関連を発掘すべき論点が伏在すると考えられるのである。 ところでいうまでもなく,企業の目的は利潤の獲得である。しかし,行動科 学的アブロ・−チの強調する主要論点の1っは,企業の単一・目的としての利潤極 大化の否定にある。経営科学およびビジネス・エコノミックスほ,ともに企業の 目的を利潤極大化におく。こうして,それはもっばら,経済学,論理学,工学 にかかわり,その結果,経営管理が究極的に人間を問題とする点を忘れがちで 10)J∂オd.,pp・1−3 11)∫∂まd。,pp88−89い,97−99・,pり142・
現代企業の意思決定について −J75− あるとみるのが行動科学の側か らするチャ−−㌣である。この2っのアブロ・−チ
の相違ほ,もろもろの計画設定に対する考え方の相遵となって端的にあらわれ
る。そこでまず,経営意思決定原理の究明を企某組織論の課題としたサイモン に.とって:,企業の目的に.かかわる行動基準が本来いかなるものであったかをみ よう。 サイモンは,合理的行動基準として次のモデルを提示サーる。 (1)ニつ以上の選択可能な代替的行動 (2)企業が設定した代替的行動のサブ・グループ …AO (この場合 AO⊂A) (3)選択の結果(生起し得ると予想される未来の状態) ぶ (4)選択の結果に対する評価(pay−Off) (結果におかれる効用の程度) ‥ Ⅴ(ざ) (5)A乃至AOのうちαが選択された場合のぶの生起するための情報′…& (6)5における確率に関する情報 (この場合∑j㌔(ぶ)ニ1) 5α 以上によって,合理的選択行動の基準は周知の如く次の8通りの何れかにお く。AはAOに_おきかえてもよい。 1. マックス・ミン ルール &に対する最少の評価をⅤ(ぶ)とおけば /\ y(a)=几劇おy(ぶ)=肋∬腫〝Ⅴ(ぶ) 5eぶa αgAざe5α 2.確率ルール /\ Ⅴ(a)=∑y(∫)Pa(ぶ)=肋∬∑Ⅴ(5)Pα(5) 5e5急 αgA5ゼ5α 3.確定ル・−ル /\ y(a)=Ⅴ(∫畠)=此奴∬Ⅴ(助) αどA これら3っのルールは古典的な判定基準として,前提的命題として付与され るものであるが,これだけでは何ら問題提起の解とはならない。そこで,さら にこれらを現実的な基盤のうえ紅検討する必要がある。そもそも,上式におけj965 香川大学経済学部 研究年報 5 ーJ76−− る共通の問題点は,実際には儀一・にそれぞれの行動に対して対応する結果が復 数であること,第二に意思決定の結果に対する評価がそう簡単に・いかないこと, の二点常ある。 サイモンは古典的判定基準の特徴は,−儀的に不確定状況における場合に適 許できないことにあり,つまり意思決定者の環境につきまとう不確定性の問題 が捨象できないことに存することを認めた。12)すなわち彼によれば,未来の価 値紅対する知識ほ何らかの法則性紅依存するか,全くあてにならないかのどち らかであり,少くとも前者に対しては確率分布によって,後者に対してほ類型 化された諸手法一例えばラプラスの原理,ノルゲィッツの原理など一によ って補完するしか方法がないとする。そこで,サイモンにおける不確定性の下 の判定基準はいかに修整されているかをみよう。問題を単純化するために,あ る個人が家屋を売却する事例を想定する。時間的経過によって価格は異なる が,この場合日程単位を採用すると,ある日における価格(受容価格)をd(ゐ), と置く。ゐは売却公示日よりゐ日の経過を示す。売却人が烏日に受容価格より高 価で売却が可能な場合も起り得るし,しからざる時は翌日に.持越すことにな る。かくすると新受容価格ほ♂(ゐ+1)となる。売却人が1日ごとの申込み件数 の確率分布を得るデータを作成するならぼ,受容価格をば彼の望む期待価値 Ⅴ〔二d(ゑ)〕の最大の額において設定することができる。すなわち,烏日紅中越ま れた最高価格をプとすると,そ・の確率はj摘(グ)で示される。そこで, ∞ 裾d)=Jタた(グ)み (2,1) d(た) (2,1)式ほ,点日までに売却されないで,摘において売却される確率を示す。 (>○
ど疋(d)=.′プ拍,烏)亘γ
(2,2) α(た) (2,2)式において烏日に売却した場合の期待値が提示され,ゑ日以前の確率ほ12)H.A.Simon,RationalChoice and the Structcre of the EnvirIOnment
現代企業の意思決定について −ヱ77− セー1、 £烏(d)=どた(d)口(1・・一・か(d)) ブ=1 (2,3) で表わされ,(2,3)式ほゐ日における売却人の受取る無条件期待値に等しい。 y(♂(ゑ)〉=差1月ね(d) (2,4)式は売値に対する期待値を示す。 さて,(2,4)式を最大にするには, ∂y ≡ ∂gね(d) (2,4) (左■=1,・ ,〝). (2,5) ∂♂(オ) £1 ∂d(ブ) しかし 些迎一(用(d)), ∂dg () (2,6) そして ・二・ゲ∴‘J ∂d(Z) 旦些空也 ∂d(オ) それ故最大値は, ∂Ⅴ 面河「 (トPノ(d))(−・歌いくゐ (2,7) た_1 どた(d)ロ ブ≠g プ=1 0,∠>烏 (2,8) 官−1 =−一d(査)勿(d)口(1一戸プ(d)) ブこ1
C¢た_1 +∑どた(d)n(1−・Pタ(d)勿(d)=0,
た=∫+1 J≠も (2,9) ♪乙(d)を要素に分解すれば COた_1 ∑どた(d)口(1−βJ(d)) む=仲1 .プ≠£ 官_1 口(1−・♪タ(d)) ブ=1 ∞ 々_1 = ∑どむ(d)H(1一・♪プ(d)). 九=f十1 ブ=¢十1 (2,10)ユタ6β 香川大学経済学部 研究年報 5 ーJ7β・−
なる式を得ることができる。(2,2)式紅おいて,購買中越件数の確率分布は時の経
過に.つれ下降を示していることがわかる。このことほ売値の値下りと未来価格
を高利子率で現偶に割引いたγの動向(時間割引)に相応するものである。また
(2,10)式において:オ日日の合理的受容価格ほノ,オ日日に売却されない場合の売却
期待値紅等しい。そして■受容価格ほ翌日適正に.設定される。このことは(2,4)式に
おいて■,ゐ=1の代りにゐ=査十1と置くことによっても得られる。かくして,
一度受容価額が設定されても,売却人ほ,なおそれに関する追加情報を得るこ
とが如何に大切であるかがわかる。情報こそ不確定状況に処する解決の鍵であ
る。すなわち,追加情報に.よる確率の修正が,不確定性の問題に関して見逃すこ
とのできない支柱であり,この点に関してほ所謂ベイ汐アンの理論(Bayesian
theoryof decisionmaking)として発展せしめられた。しからば,このような
情報をもたない時は如何にするか。サイモンによれば,環境を短期の反応に対
してこ短期的紅対応するという意思決定がなされ,意思決定ほ逐次的なものとな
る。1B)ここにおいて,行動科学理論ほ組織における意思決定を対象領域とする
が,その原義において環境からのフィード・バックを観察しながら逐次的に意
思決定をおこなっていこうとする志向が看取されるのである(good enougbの試行錯誤)。この意味において,極めて叙述的・理論性的性格に加えて規範的
特徴を有するものと云えよう。確率分布計算を基底とする規紺睦ほ,むしろ数
蔓科学的アブロ−チに多くみられるところである。これらは勿論,載然と分け
られるものではなく,サイモンにおいてほ,著しく理論体系化的色彩が濃厚で
あるが,意思決定がいかに.なさるぺきかの課題に関しては,相当に規将的モデ
ルを内容としていることに注意すべきである。意思決定紅関する論議をめぐっ
て,われわれほ数量科学と行動科学との関連を中心にして.論述をす1すめてきた
のであるが,ビジネス・エコノ ミックスと行動科学理論の省察によって,前
者が意思決定はいかになさるべきかの方法を内容とし,後者は意思決定がどの
ような原理にもとづいているかを叙述するものであるとの−応の区別づけが可 13)H.A.Simon,ABehavioralModelofRationalChoice,6?uarterl.yJouYnalof Ec〃乃β∽∠(5.VOlume69,FebI・uaIy1955現代企業の意思決定について ーヱ79− 能であると考えられるに至った。しかしサイモンにみる如く必ずしもこれらの 範疇に属さない立場もあり,−・線を区切ることは問題であるが,両者の関連と共 に一応の区別づけの整理をおこなうことほ,議論の混乱を避けるために.はきわ めで有用であろう。 とこ・ろで,上述の数学的モデルは不確定状況における諸問題を解決するため の−」手法として提示したものであるが,これらのなかにほ,第二の問題点,す なわち期待ペイオフの諸課題をも内包していることが既軋気づかれるであろ う。そこで,次に・ぺイオフに関する諸問題につき考察しよ.う。 伝統的に意思決定の基準とされてきた経験あるいは勘に基づくgood enough 式の欠陥は,それが現代競争構造わけてこも革新競争に.適合し得ない点紅求めら れる。そ・こで何らかの科学的方法による意思決定方法を樹立すべく苦闘してき たのが,ここ数年来の現実的課題であった。そ・して,それほ数曳科学の発達と 相倹って急速に・論究者の問題意識として発展せしめられ,ここに相当の成果を みるまで紅進展したのである。しかし,この問題に関して:の最大の癌は,意思 決定の繹異に対する評価すなわちぺイオフの問題である。 ぺイオフの尺度ほノ,サイモンによれば,価値乃至効用で示されるべきであ る。14)しかしながら,効用ほ人によって異なり,しかもこ.れを測定することは 甚だ困難である。そこで方便として−貨幣単位で表示されるが,本質的には常に 効用との関係において論ざれることを忘れてほならない。しかも,ぺイオフの 尺度としてこは.,スカラー・ペイオフでほなくベクトル・ペイオフを考えるぺき である。蓋し意思決定の結果を評価するのに多元的なものがあり,目標の多元 性に.関してそれぞれの評価が考えられるからである。そこで次にこれらの諸点 について一考察しよう。 サイモンは,単純化の一・方法として効用に対しての二つの基準,すなわち端 的に言えは満足か不満足かを考えるべきであるとする。15)これは複雑な問題の 大きさにくらべると,人間が問題を定式化し解く能力のきわめて小さいことに 14)Hl・A.Simon,Modes oj Man1957,P一ト 244 宮川公男助教授稿「デシジョン・メーーキング理論の問題点をさぐる」『企業会計』第 17巻第2号,この論稿からは,多大の示唆を得たことを−・言しでおく。 15)J∂∠dい p.246
香川大学経済学部 研究年報 5 J965 ーーJgO叫 由来している。そこ/で人間は現実の簡嘩化されたモデルをつくらざるを得な い。かかるが故に,完全な合理性を想定する最適化原理よりも満足基準原理紅 従うことになる。最適化原理の条件ほ,仙選択できる凡て−の代替的行動が与え られなければならない。【2)名代替的行動に対して1は,達成される場合の結果が 与えられていなければならない。(3)意思決定者は,結果の評価軋朴する明確な 価値体系を有していなければならない,とされるが,こ.れらの条件ほ,現実紅 は種々の制約があり,人間の合理性は限られたものであるこ.とをサイ声ンは強 調するのである。このような最適化原理の限界から,行動科学理論に・おける意 思決定の基準として−は満足度の基準が設定されるのである。これほ,次のこと を意味していることに注意しなければならない。第一・に満足基準の中には機会 原価概念が包含されていることである。すなわち,前例から引用すると,家屋 をある価格で売却するか,しないかに差別なく,或る一定額以上の価格である なら,すべてこれ満足基準に.適合するものとする。(心理学では.,売却できた 場合のみ考える)第二に将来における期待価格はある利子率で割引いた現在価 値であるとする。もっともこ.れらの点ほ意思決定と情報との関係を情報による 確率の修正という概念を処理する方法により改善されることは前述したが,こ れらの点を検討する為紅,さらに満足度概念をベクトル・ペイオフ概念を媒介 として考察しよう。 伝統的基準は,スカラ」−・・ぺイオフ軋よって成立しており,結果の評価に対 する完全な価値体系を要求する。しかし,サイモンによればスカラ√−・ぺイオ フに代るにべクトル・ぺイオフにすべきだとすることほ触れたが,今,ベクト ル・ぺイオフをy(5)とおくと,yほ仇,陥,‥1なる成分を有し種々の情況を 取り扱うことが可能となる。先づ,組織内のグル・−プによっておこなわれる意 思決定に際し,各成分ほグループ内の各個人のぺイオフを示す。この場合,あ る特定の個人が選択する事項は,必ずしも他の人によって選択されるとは限ら ないことほいうまでもない。次に,個人の場合において共通の尺度を香しない 方法で評価をおこなうこともありうる。例えば,ニつの職務を評価する場合に, 給料・気候・仕事の快適さなど紅かかわらしめるが如きである。さらに.,代替 的行動αが乳通りの結果5bを惹起すると予想される場合,刀次元のベクトル・ ペイオフが考えられる。
現代企業の意思決定について −JβJ− ところでサイモンに.よれぼ以上の如き心理的満足評価を基準として,代替手 段の価値変動を把握する原理こそが,行動科学理論の特徴であり,そこに貫か れる未来志向的な価値づけは,意思決定原理にとって現実的な価値原理に立脚 するものであるからして,本来的かつ理論的な決定原理であるとされているゐ である。しかも彼によれば上述の如き価値評価にもとずく心理的な意思決定の 原理によって−,後述するごとく,カ■プチイマルな選択にたいする限界を排除 し,数鼠科学的アブロ−チ・をより積極的に活用して,組織の維持を確保し,合 理的な行動に導きうべき指標が示されるという期待が寄せられるのである。も っとも彼は,かかる意思決定原理のより体系的な展開を試みることなく,むし ろそれが繁雑かつ費用のかかる手続を招来せしめるからして,実際的利用のた めにほ.現実的妥協が必要であるとして,安易な妥協に陥っていることほ,指摘 されねばならない。とはいえ.,彼の主張した本来的な意思決定原理が,極めて 叙述的な性格を有していること,さらにオプティマルな選択が組織的な意思決 定の基準として擬制的なものであり,この擬制的な決定基準から,いかにして も企業の現実的意思決定の原理を把握しえないことほ,注意されねばならな い。そこで,現実の企業経営を轡導する決定基準とされている行動科学的原理 は,いかにしてどのようにあるべきであろうか。 われわれは,つぎにさきに触れた効用に・関連して,ぺイオフの多元性の問題 を考察しなければならない。これは企業目的を単一・に利潤極大化に置くことの 誤りを指摘するものである。すなわら,意思決定者の目的は複数であり,例え ば利潤の外に売上高,市場占拠率,俸給,安定性,地位,権九 威信,社会奉 仕などいろいろなものがあり,意思決定の結果を評価するにもこれらのいろい ろな目的のそれぞれに関しての評価が考えられる。これらの目的は互に関連が あるけれども,それぞれ独立の意味と理由とを持つものである。したがって, それらの間の均衡と調和を念頭において,動態的にこれらの拡大均衡を実現さ せていくことこそが重要であり,それらは窮極においてほ.,利益の延長線上で 統合されるとは.云え,個々の意思決定者にとってほ目的の多元性は依然として: 前面に存在するものである。これを行動科学固有の組織論からいえば,経営組 織は利潤極大化を目指すものではなくて,組織均衡の理論を通じて経営組織の 維持と成長をはかるものというべきか。こ.こ.に・ペイカ■フは一つの数字でほなく
香川大学経済学部 研究年報 5 ーーJぶご− J965 てベクトルとなる所以が見出される。かくして目的の主観的重みづけが意思決 定者にとっての緊要事となる。このような主観的な重みづけの給果,決定のペ イオフほ一つの加重平均値となるが,サイモンに.おいては,とのような多次元 的目的を−・次元のもの紅還元することほ不可なりとすることほ,前述した通り である。蓋し,それぞれのぺイオフは同一・の次元で比較できないものが多く, 特に.目的の間に.矛盾さえ含まれることもあり得るからである。これらの理由に よってさらに満足基準原理の妥当性が主張されるわけであるが,そこ.紅は幾多 の解決され得ない課題が存在してこいることを,われわれは見落してほならな い。次紅これらの問題に関して一考察しよう。(図1,図2参頗) さて,以上のごとき満足基準原理によって確認されるぺイオフほ.,既に指摘 したごとく,古典的な最適化原理に.よって示される局部的乃室限られた合理性 を排除し,企菜の親政体としての本来の評価基準であり,組織の構成メンバー に.おける異なった選好体系を保証すべき基準であると,理解されているのであ る。したがって行動科学理論における意思決定概念に.ほ,優れて叙述的な性格 が賦与されている。それは意思決定がいかに.なさるべきかの指針は与え得ても, 現実に行なわれている意思決定の過程を説明し得ない。ここに‥おいて,何ら かの最適化原理を中核とする新らしい意思決定の原理が建設されなければな らない。この点に関して,われわれはサイモンの主張する原理に.依拠して,ザ − − − − − − ‥ − 「 l := ll 亡 .1 【 Ⅳ(S) 点l l■l 凶2
現代企菜の意思決定について ーJββ− インゾレ∵ン的な性格をもつ意思決定理論を考察しようとするものである。この 意味に.おいて,サイモンは個有の行動科学派の泰斗であり,しかもその主流に 属さない特異な学説を主張した極めて優れた学者セあると考えるものである。 この点に.最適化原理と満足基準原理の課題,冒頭に述べた数鼠科学と人間行動 科学との接点が問題となるのではなかろうか。 Ⅱ 伝統的に.経営意思決定の基準とされてきた如good enougb”式の最も重大な欠 陥ほ.,いうまでもなく,意思決定機能が経営に.おけるり−ダーーたるものの最大 にして.最重要な機能に.も抱らず,科学的に.解決しえない点にある。然る紅,企 業規模や経営活動の複雑性が増大するにつれ,とくに.大規模企業に.おいてこは事 態は復姓であり,一山つの問題紅ついても多方面からの専門家的アプロ・−チが必 要となると,One−man managerの如く自分独りの頭脳を通ずる意思的行為に 集約されるが如きあり方は,不可能となる。そこで,経営活動に.対し,「何を なすべきや」と「如何に.それをなすべきや」の二つの方向を明示する科学的な 手段の確立が要請される。つまり,厳密に.ほ意思形成の過程と決定とを判然と 区別し,それぞれに対応する科学的アブロ・−サが確立されねばならない段階と 局面を迎えるにし、たったのである。ここに意思形成の過程とほ,経営の制度的 な組織や機関がこれに.関与し,これら意思形成の過程を経て,最終的な決定に. 至るのである。しかも意思決定に.おける機能的種類分けを認識することが経営 学的には,もっとも必要であり,これらの諸点を捨象して数鼠科学的アブロ・− チなり行動科学的アブロ・−チせ論じて:も,経営学的意味は把握し得ず,したが って論議の空転に・なることほ必須である。すなわち,(1)経営的意思決定(創造 的意思決定),(2′管理的意思決定(執行的意思決定),全般的意思決定,部門 的乃至個別的意思決定の区分づけがこれである。そして,(1)の経営意思決定ほ. (2)の管理的志思決定の包摂的な上位概念であり,管理的決定ほ,経営的意思決 定に.制約され,その大枠の制約内における自主的な執行的決定であると解され る。そして,経営的意思決定の機関は,取締役会,社長,時とすると常務会な どもそれに当る。これに対して,管理的決定でも,全般的意思決定は,社長, 時には稀に常務会がそれに当るわけであるが,部分的意思決定は,各部門,各
香川大学経済学部 研究年報 5 エ965 −Jβ4→ 階層毎のマネジヤ一に委譲されてノいる権限の範囲やそのあり方如何紅よって, 各階層のマネジヤ・−が,意思決定を行なっているわけであるが,これも全般的 な管理的意思決定の制約の下に.おける制限付き自主性でありいわば常規的な意 思決定ということができる。これに.対して,例外的意思決定もあるが,これほ 部門管理者でも比較的上位層紅属する機能であり,また更に重要な例外事項は 社長にまでさかのぼる。 行動科学的アブロ・−チほ,組織による意思決定を志向し,主として各部門乃 至個別的意思決定を基礎とし,これらの組織論的考察から漸次最高経営層の意 思決定紅及び,いわばup to theline の方向を辿った。これに反し数蟄科学 的接近ほ,対墟関係に‥おける経済予測の問題から次第に下部へ論点が移動した とみるべきである。従って, ̄F■から上への方向と,上から下への方向におい て,両者は交わることなくそれぞれの体系化を進歩させて溶くことであろう。 単純に.両者を接合させるの患は試みるペきではない。そ・れに.も拘らず,われわ れは数孟科学と人間行動理論との論理的関連を発掘しようと努力するものであ る。もしも両者の論理的関連を発掘しうるとすれば,そこに.意思決定原理に.よ って統括される現代企業のあり方が提示される筈である。われわれが意思決定 の問題をとりあげた意味のひとつほここの点に.ある。そしてそれらの位置づけ を明確に.し,両者を論理的に周遊せしめようとするならば,経営の機能的構造 を媒介とする必要が認められるのである。すなわち,意思決定とは社会事象そ のものとしてはどこに/でもみられる現象であり,これが企業内1で問題となるの ほ,また企業に.おける問題としてとらえる価値のあるものは何か。つまり意思 決定が経営学に.とってもっとも意味のある点は何かを考察することからほじめ なければ,経営に.おける総合的意味関連へと築きあげることは不可能である。 この意味において,すべての執行に.は意思決定が伴なうものであるとしても, 経営学的に・ほまず経営者の意思決定,換言すれば最高意思決定を問題とすべき であり,これから先ほ,この最高意思決定できめられたことを執行する管理段 階に・なることを銘記すべきである。また,経営学でほ「誰が」乃至「どの機関 が」を捨象して,−・般的法則性を考察することほできない。この点ほ,本稿の 課題を究明するのに特に鹿妻である。 さて上述した如く,経営実践の基準たるぺく役割を担う経営意思決定理論は,
現代企業の意思決定についで −ヱβ5− 企業の機能的階層に.おける分析を基底として−,はじめてそれぞれの意味づけを 有し得ることが明らかとなった。そして,もっとも影響力のあるのは,いうま でもなく,企業の最高意思決定に関連サーるものである。 ところで,サイモンは既に考察した如くこの場合近代数豊科学の精緻な分析 手法を直線的軋活用すべく満足基準原理と並行して最適化原理を採用すべきで あるとする。これは一見矛盾する如く考えられるが,何らかの最適化原理を消
化することなし軋意思決定原理の成立し得るはずはなく,決定と過程との,前
者に.おいてほ,とくに.それが最高決定の場合に.はたとえ限られた合理性を背景 とするものであっても,規範的な性格を満足することが必要とされるからであ る。彼によれば,かくの如き最終目標の選択紅関連する限りに・おいては,これ を価値判断(value judgments)と呼び,決定がかかる目標の達成に関連す’る 限りにおいて,ほ.,これを情勢判断(factual.judgements)と呼んだ。16)前者は機 能的に.最高経営意思決定機能であり,後者は管理的意思決定機能である。価値 判断においては,満足基準原理と共に限定された局部的な最適化原理を中核と し,情勢判断においてほ純粋な最適化原理を内容とする.のが意思決定原理の現 実的あり方ではなかろうか。蓋し経営学的意思決定ほ,めまぐるしく変化する 条件に対して如何に対処すべきかの自主積極的な適応力を意味し,オプティマ ルな選択軋灯する限界が現存するところから,すべて二科学的な手段のみで行な いうるものではないからである。 さて,さきに考察したごとく,サイモンが経営実践の基準たるべく構想した 経営的意思決定は,限られた合理性を背景とする最適化原理,すなわち最低必 要満足基準であった。そこでの伝統的な規範的計算原理に・対する主要な批判の 観点が,市場条件の変化に対応して選択の合理性に・たいする限界的存在と多元 的目標の考慮にはかならなかったことからすれば,経営実践の基準たるべくさ し示された,この最低必要満足基準の構想が,かかる限界性と目標の安定化と をその核心的課題としていることほ,いうまでもなく明らかである。そ・こで, サイモソに.おけるかかる問題の定式化を検討しよう。 れ……Al巨裁なる代替可能な行動において,Alが選択される場合の確率 16)H‖ A.Simon,AdminisirativeBehavior,1947,pp 4f香川大学経済学部 研究年報 5 ヱ965 −Jβ6− 好2 同じくA之の選択される場合の確率 β1才…才回の試行におけるAlの生起する確率 如レい・同じくA雲の生起する確率(1一夕1) か′ い…♪1紅漸近するか′回の試み 1【・花・2 〆1= (トー方1)・十(ト方2) 打1 (1−が) 世相1) 方2 この場合
♪(…)=口和,
n= 何となれば, ♪1(才+1)=冗1少1(f)+(ト花・2)什−♪1(≠)) それ故,もし♪1(才+1)ニ少1(わ=か′ ならば,(3,1)式から (1−・蒜1十1・−方2)β1′ニ(1一方2) 特別な場合として,符1>勘∴なる場合は常に.Alが選択される。何となれば期待 値は 須>〆机+(1−れ′)方2 さらに.,戦略的要因をα,βとすると, (α) (β) (3,5) 行は意思的戦略要因に対応し,列は感性的戦略要因紅対応する。 不満足を示す行列は (α) (β) で示される。 さて, ♪ (Ⅰ)の戦略を採用する場合の確率 /L (α) 〝現代企業の意思決定について 点 期待不満足の値 とすれば 属=P〝・0+P(1・】〝)(方・−−1)十(トP)〝(一方)+(11・一・・・・P)(トー〝)−0 =p(1−・〝)(方−1)−(1・−P)〝方. ー・−ヱβ7・r■−・ (3,6) =−=0 ミニ・マックスの原理
(3,7)
(3,6)式から 0=・−・P(方・−・i)叫(1一P)方 P=方 上式によって+応最低必要満足基準が提示されたが,Al,A2の行動選択紅 よるぺイオフは,−・定の確立.を有する自由戴曳の記号を意味し,目標の多元性 ほ〝次元のベク†ル行列式に示し得る。17) 以上のごとき彼の主張において,第一・に.企業は純粋単純な戦略を行使するも のではなく,組織体の目的が期待値よりも現在の利得を最大ならしめんとする 傾向のある場合にかからわしめて,適正なべイオフ行列式が,現実的には有効 であり,第二にフォン・ノイマンーモルグン1/.ユテルンにより展開せしめられ たゲ−ムの理論は,静態的な統討プロセスによって貰ぬかれた実験的刺激を仮 定としなければ成立し得ない所以を知るのである。例えば動態的パターンを前 提とする場合,複合的戦略(mixed strategy)を用いることによってのみ効果が あるのである。蓋し期待ぺイカ・フの尺度としての効用ほ,ゲームの理論を論議 する場合,何らの現実的尺度とほなり得ないし,選択結果の報酬の確率はまた 千変万化であるからである。 上式において,方1ほ.Alが報酬を受けることを表わすと同時に漸近的確率を も示し,この意味で意思決定者は,一・定の情況でほ常に.Alなる行動を選択し, 同様に方2もA2なる行動を選択する際の報酬を提示するのであるから,両者と も個々別々に選択される固執的行動の条件付き確率にすぎない。したがって,行 動の変化に対応する条件付き確率は(1一方1)と(ト方2)となるわけである。かく て方1が方2より大なるような特別の場合は,ゲ−ム理論的考察濫よれば常にAlが17)HlAlSimon,A Compa工ison of Game Theory and Learning TheoI・y,
香川大学経済学部 研究年報 5 エ965 一Jββ叫 選択されることになる。しかしながら,ゲ・−・ム理論の合理性は,結果に対する 確率が常に予知し得る情況のみにおいて成立することを見落してほならない。 然らざる場合は,感性的戦略に依処せざるを得ないのである。感性的戦略と は,すなわち意思決定者の後悔を最少にすること,換言すれば,最低必要満足 基準にはかならない。これはつぎのことを意味してごいる。各代替手段にとっ て,意思決定者の選択を固執するか変化するかの区別を明らかにし,固執する とすれば,感性的戦略に拘わりなく方なる確率を示す評価を得るのであろう。 この場合,前の選択がAlかA雲か,別個に・行なわれたとすれば好こ方1乃至カニ須 を示してこいる。また,変化するとすれは,(α)なる戦略をとれほ,その報酬ほ 0であり,(β)なる戦略をとれほ,1なる報酬を得るとすると,これらの仮定 に対するペイオフマトリックスほ前記の如くなるこキは述べた。この際,行行 列ほ意思決定者の戦略に対応し,列行列は感性的戦咤に応ずる。「後悔」ほ与 えられた一・組の戦略の評価と感性によって実際軋採用された戦略が予期される ならば,実現されるであろう評価との差異として定義される。例えば前者が行 列式の(Ⅰ),(β)で示され,後者が(Ⅱ),(β)で表わされる。上の減算をした 結果,後悔を示す行列は.前の α β の如く紅なる。この式は,同じ列のうち各要素から最も大きな要素を差し引く ことによって\第1番目のマトリックスから得られる。さて,意思決定者が(Ⅰ) なる戦略,例えば固執的なものを用いるとすればその確率は.Pなることを示し, 感性的なものが用いる戦略(α)を用いた場合の確率を〝とすれぼ,後悔の期待 値は(3,6)式の如くなる。後悔が最少紅なる条件,すなわち必要絡足基準乃至ミ
ニマックスの式は(3,7)式によって与えられる0雷ニ0を用いて(8,6)式から
(3,8)式が得られ,最終的に(3,9)式が得られる。忠思決定者は確率方を固執する と,(1.一打)ほ,変動した場合を・表わすが,これは厳密紅は.(3,2)式に含まれてい る仮定である。それ故,サイモンにおいては最低必要満足基準が,局部的にオ プティマルな代番手段の発見と選択紅従事することを包損しながら,大部の代 番手段の発見と選択にかかわることを知るのである。現代企兼の意思決意について ーJβクー さて1サイモンは,現代の企業の当面する意思決定の不確定性と目標の多元 性の問題を自覚し,その主要な原因を環境の情況と大規模生産技術の進展にも とずく沈下費用の作用を緩和しえない代沓的手段の範囲の限定とに求めたごと くであった。かくして彼は,かかる当面の問題把.対処しうぺき可能性を支える ものとして−,感性的戦略にもとづく最低必要満足の原理を示したのである。み られるごとくに・,不確定性や目標の多元性という,高度に複雑な現代企業の環 境構造にかかわる問題の主要な原因を,その基礎に触れることなく,より一・般 的な感情の論理と,数学的計算技術紅轡導される経営実践とに求めたこと自体, 現象局面の理解に.とどまる狭院な認識態度を示すにすぎないことは,ことわる
までもないが,現段階的な意思決定のあり方としては高く評価されるべきであ
ろう。最低満足基準原理は行動科学的アプローチの−・つの表象とみるべく,こ れほまた−■般に学習理論として心理学上の主要論点をも包含しているとみるぺ きである。18)数学的モデルを中級とする満足基準は,経済学者,統計学者によ って支持され得るであろうし,学習的側面ほ心理学者によって二受容されるであ ろう。しかし現段階でほ最低必要基準を決定する,より厳密な論理的展開ほ期 待できない。蓋しそれが内省的感性的領域を主要課題とするからである。上述 の論議においてもっとも有益と思料されるのほ,知覚的評価的前提のもとにお ける主観的合理性と,実験的デ一夕に.基づく客観的合理性との差異を明瞭なら しめる点にあると言える。蓋し,この区別ほ,合理的選択紅おける経済学者や 統計学者によってほ明確に認識されることははとんどなく,彼らの注意は行動 を観察する際の説明形式として合理的選択の用式を説明するにとどまるからで ある。Al,A2なる二つの行動に.対する評価が,−・定の確率を有してはいるが 自由裁恩であることを認知している意思決定者にとって,期待利益を最大なら しめるような行動,前例では常紅Aiを選択するような行動のしかたを学ばな いのは−・見不合理のよう紅みえる。確率が変化するような情況にある意思決定 18)学習理論とダーム理論とは,共に統計的決定理論と接着して,合理的行動理論を提 供せんがためのものである。しかし学習理論が多かれ少かれ,皿Otivationの仮定を前提 として,目標達成のための近似的な行動パターンを獲得しようとするものであるに対 し,ダーム理論ほ最適化を前提として,ある特定の情況における行動のし方を発見しよ うとするものである。従って,それらの依拠する基盤は全く異なるものである。香川大学経済学部 研究年報 5 J96 −ブタクー 雪と,期待利益を最大に.するよりも感性の方向に行動しようと.する意思決定者 とほ確に.相遵がある。もし合理隆が主観的感性と抱わりなく何らかの客観的意 義を有すべきだとするなら,認識自体の合理性と与えられた認識過程での選択 の合理性とを,われわれは区別しなければならないであろう。もし,組織的行 動が主観的合理性を意味し,複雑な現実在にとって,客観的合理性が意味ない ものとすれば,合理性の仮定ほ,行動を予測する機能を全く消失するであろ う。経済人が如何に行動するかを予測することは,彼が合理的であることをわ れわれが知っているから可能であるほかりでなく,いかに彼が世界を知覚し, 彼の選択のあり方を規定し,それが如何なる結果を生ずるかを前提としている からに.はかならない。しかしながら,前に述べた如く経済人を修整する必要が あると言っても,直ち軋それが合理性概念などなくとも何とかやっていけると 速断して−はならない。ゲ−ム現論で訓練され,またそれに適合する情況に置か れた人は.,常紅Alを選択するであろうし,より簡単な学習理論モデルの条件 でこの行動を説明しようと試みることよりも,モデルそのものを変更すること の方がより簡単のよう把思える。ゲ−ムの理論家で意思決定者によっで行なわ れる「∵連の実験で学ぶべきものありとすれば,それは∴一度モデルが設定された あとの行動では.なくして1モデルそのものの設定方法にあるというべきであ る。 以上のごとく,サイモンの構想した経営意思決定原理は.,期待ペイオフの満足 水準を基準とする評価原理と数愚還元による確率計算との絡み合わせたもので あり,経営組織体紅おける均衡の理論を通じて経営組織の維持と成長に資する ことを核心的課題とするものであった。そして,それが単に企業内の問題とし ででなく,市場経済との関連において:とりあげられた経営経済計算の提示ほ, 既に示したごとく,彼の意思決定原理に叙述的な性格とともに規鞄的な政策論 的性格を与えるものとして,そこに.彼の問題提起の新鮮さと,めまぐるしく変 転する諸条件へ対処するというととを切実な経営実践とした現代企業の息吹き を感じとることができるであろう。 ところで,以上紅よって確認されたモデル設定の基本問題は,満足基準と最 適基準との均衡に適合すべく,意思決定者の主観的判断による目標の歪みづけ である。この問題に関してほ,チヤ−チマン,エイコフ,ア・−ノフらの見解を
現代企業の意思決定について ー∫9J− 検討しよう。19)彼ら紅よれば,企業規模拡大の結果,経営職能の分化と専門化 ●●●○●○●○●○ が促進され,企業全体としての均衡を維持するべく,全体に.かかわらしめて最 良の状態を維持すべきことが経営者の最大の任務があり,こ.こに於て1組織の 管理者に.その組織の成分の交互作用を含む問題を組織全体紅最も有利なよ.うに 解決するための科学的基礎が,数還科学の目的であるとする。20)すなわち,雑繊 の中の管理者の問題紅対する最適解を全体として理解することが,彼らの経営 経済計算論の課題とされるのである。これらのための基本概念は効率関数と有 効さ函数であり,前者ほ.各行動のしかたの各目的に対する効率を可能な変動を 反映せしめたものであり,後者は各行動のしかた対する歪みと効率関数とを結 合することによって獲得されるものである。数患的に表現すれば,一つの行動 のしかた紅よる結果が変動するという問題を取り扱うために,まず行動を一つ 一・つの目的の見地から考察し,各目的の見地から成功の確率を推定することを 試みる。それは標準の目盛で測った,特定の目的のそれぞれに関してある効率 が得られる確率を記述する一山つの曲線によって.表わされる。その行動のしかた に.よって∴芳だけの効率が得られる確率は影をつけた面積の全面積に対する比紅 よ.って∴表わされる。各行動のしかたについて各目的に関係しで一つずつ効率函 数が得られる。たとえば,もし行動のし かたが3通りあって,目的が4とおりあ れば,効率関数は12個できる。有効さ関 数ほ,この仝確率を標準尺度で表わした 効率の任意の値に対して与えるものであ る。したがって,最後の問題は−・つの判 定基準をつくって,それによって最良の 有効さ函数をきめることである。21)かく みてくると,当然のことながら,有効さ ∬ 標準の尺度による効率
19)ClW.Churchman,R L Ackoff,Eり Lい Arnoff,Iniroduclion to OPera・
路川5点郎玖財・Cゐい1951.森口繁−・監訳『オぺレ−ションズ・リサ−チ入門.』上・下巻。
20)C.W.Churchman.R.LAckoff,EIL.Arnoff,OP,Citpp小4−9・前掲
訳本,4−11ぺ一一汐。
香川大学経済学部 研究年報 5 Jタ65 −Jタゴー 関数の前提をなす各行動のしかた対する歪みづけとは如何にして決定されるか の疑問が生ずる。また,彼らの構想した経営価値計算ほ,いかにその合理性を 貫徹し可動的な経営政策を最良のしかたで導く可能性を有しているであろうか の設問が生まれてくる。 チャ−チマンらは,大規模生産技術の展開にともなって必然化された大企其 の登場とともに,意思決定の複雑化が進展す・る事実を確認して\これを数鼠科 学的方法によって解決しようと試みたのである。すなわち,敦盛科学的方法は 全き合理性を以て接近す・るかの如くみなされがちであるが,われわれの見落し てこならないのは,そ・こに厳として存在する主観的判断の重要性が介入する事実 である。彼らによれぼ,多くの場合に単位の同等さの決定ほ過去の行動の研究に よって−なされるが,他の場合にはそのような決定を,いろいろな関係者によっ てなされる判断に依拠せざるを得ないとする。22〉例えば,意見として1単位.の 待ち時間が何ドル分の値打があると簡単に決めてしまうがごときである。しか もこのような推定が数鼠科学的方法の基盤をなしている。したがって,それら について.−の最適化原理の適用は,上に述べた手続きの実用性に関して考察すれ ほ,かなり疑わしいものと考えざるを得ない。もとより確率概念導入のきわめ て大きな貢献は,これによって不確定性のベールを通して将来に対する見通し を行なうとともに.,ぬぐい去り切れない不確定性湛対処してどのような決定を 行なうことが現在の段階として最も有効であるかを教えてくれることにあるこ とほ否定できない。従って益々その適用については今後の動向として一層その 威力を加えるであろうが,それにほさらに多量な迅速な情報の伝達とその処理 が必要条件であり,意思決定に伴う主観的判断の領域を徐々に局限することの 努力が大切であると考えられる。 私見によれば,サイモンによってこ提示された行動科学の立場からの意思決定 の組織的な原理は,チャ・−チマンらによって示される数遠科学的原理を消化す ることにより,最適化原理を中核とする満足基準原理の補強によって,さらに 洗鉄されたものになるとみるものである。さら紅,これら原理を経営学的に位 置ずけるとすれば,単に包括的に意思決定概念にとどまらず,概能的に機関的 22)∫∂gd.,p‖122.前掲訳本,]51ぺ・−ジ。
現代企業の意思決定について −・J9β− にそれを解説する要があると思われる。すなわち,意思決定機能ほ,計画策建 とも関連し,また職務権限のあり方,委譲ともかかわらしめながらノ,そのプロ セスを総合的・組織的に考える必要があるのである。然らざれば,いかに.厳密 な数学的方法と云えども,経営の機能面から浮き上って:しまい,単なる数学的 手法の訓練の為の学生用の教材としか意味をもたなくなる。これも思考訓練の ためにほ意義なしとしないが,−・般に意思決定に関する論議は,どうもこのよ うな浮き上りが目についてならない。経営学で云う意思決定は事実上,具体的 の決定を意味するのであって,決定し得る権限をもつ職位者なり会議体が,あ る案件を採択し得ることを本質とする。しかして決定に.いたるまでには,その 前過程があるのであって,これを意思形成甲プロセスといい,この両者を厳に 区別して:考える必要があるのでほないかと思う。かく区別づけると,チャーチ マンらの数学的方法ほこのプロセスにおける課題であり,最終的決定ほ,数量 科学的方法のみでほ決しておこなわれ得ない。既に示した如く経営における数 学的思考ほ,あくまでその基底ほ主観的判断によって成立しており,その事自 体,判断の領域は時と共に局限されつつあるとは.云え,決して消失するもので ほないのである。したがって−,決定機能とは,企業の将来の時点における経済 的,社会的条件,とくに需要藍や価格変動などの市場条件の変動性を科学的に 予測した上で,さらに経営者の主体的条件を勘案し,その上で必要なことは経 営者の経験と直感とほたまたヴィジョンや期待が加えられてこ・そ,奥の意思決 定というぺきである。そしてこその為に手法的には,可能な限りの勝れた経済予 測や,0・点的手法の駆使が望まれるのであって,決して科学的な処理のみで 能事終れりということは.あり得ないのである。さし当って,この点の認識が, ・一・般的に特に0・屈研究者にとって重要である。 Ⅳ 以上によって企業の意思決定における行動科学的アブロ・−チの重要内容を概 観し,あわせてこ数鼠科学的アブロ」−チとの関係について考察した。既にみたご とく,サイモンは.,彼の新たな組織的経営意思決定原理を展開するにあたっ て,伝統的な古典的最適化計算の欠陥を吟味しながら,方法において局限され た最適化原理を中核とする満足基準原理の積極的な提示の理論的かつ実践的な