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(2) 現況水質等 A ポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表 -2 図 -2 に示す 表 -2 水質分析 計量項目 単位 計量場所ピット吐出口 BOD mg/l CODcr mg/l 硫酸イオン濃度 mg/l 全硫化物 mg/l

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硫化水素抑制対策実証試験の事例報告

㈱極東技工コンサルタント 広島事務所 吉本 英敏 1. はじめに 実証試験を行ったA市は、気候穏和な人口24万人の臨海都市である。市街地の周囲は、 起伏が大きい地形に囲まれているため、汚水幹線を圧力輸送する「圧力式下水道輸送シス テム」としている箇所が多い。その中の一つであるA汚水幹線は、圧送距離が約3km あり、 その間の圧送管は起伏が激しく、最大約32m の高低差がある。(図-1参照)過去に吐出 口付近で、硫化水素に起因した腐食劣化による道路陥没事故が発生したこともあり、硫化 水素発生抑制対策として、硝酸塩 による薬品添加(過去にはポリ鉄 を実施)を行っているが、薬品代 (年間約 1,300 万円)による年間 維持費が高いことが問題であった。 そ こ で 、 設 備 の 建 設 コ ス ト ( 約 5,300 万円)は高価となるが、注入 ガス(空気は無料)は薬品に比べ 安価であり、導入後の維持費が抑 えられることからガス注入方式へ 変更が可能となるか、実証試験を 行った。 2. 硫化物生成を左右する要因 一般的に汚水圧送管路における硫化水素の発生は、圧送管内が嫌気状態になることが大 きな要因である。圧送管は密閉状態であり今回のように約3km と延長が長い場合、吸込み から吐出まで約 7 時間かかるため、酸素が消費されて嫌気状態になる。 一般に、溶存酸素が1mg/L 以上あると、酸化還元電位が高くなり、硫酸塩還元細菌の 活動が阻害される事で硫化物の生成量は減少し、硫化水素の発生量が減少する。 3. 現況 (1) 施設の諸元 Aポンプ場のポンプ諸元を表-1に示す。 図-1 A汚水幹線概略縦断図 表-1 施設諸元一覧表 DCIP φ350mm 圧送延長 ポンプ吐出能力 ポンプ口径 圧送管種・管径 3,317m 項目 内容 2.4m3/分 吐出φ100mm×吸込φ150mm 57m 全揚程

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(2) 現況水質等 Aポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表-2、図-2 に示す。 圧送管吐出口位置において、硫化水素濃度を測定した結果、最大値は 1,000ppm 以上を 記録した。水質分析結果からは、吐出口で溶存酸素濃度が0になり、嫌気状態であること がわかる。なお、図-2で硫化水素濃度が0付近を示している日は、硝酸塩を注入した期 間であり、硝酸塩の効果は一目瞭然である。 4. 効果的な抑制方式の選定 (1) 効果的な抑制方式の選定 硫化水素の抑制方式として、一般に以下の4方式がある。 ①ガス注入方式(空気注入方式・酸素注入方式) ②薬品添加方式(硝酸塩添加方式・ポリ鉄添加方式) Aポンプ場では、冒頭に述べているように、硝酸塩による薬品添加方式を実施してい るため、ガス注入方式として、空気注入方式もしくは、酸素注入方式のいずれかより選 定する。以下に空気注入方式及び酸素注入方式を選定するときの注意点を述べる。 ①空気注入方式 窒素の溶解度が低い事により、標準揚程に比べて必要揚程が若干増加する傾向にあ る。このため、ポンプ揚程のチェックを必ず行う必要がある。特に下り勾配の配管路 がある場合には揚程の増加は大きい。一般的に揚程は60m程度を超えると、空気搬 送に限界がある。揚程の負荷を考慮しないで稼動する場合は、ポンプの損耗負荷が大 きく耐用年数が短くなる場合がある。 硝酸塩注入 ピット 吐出口 BOD mg/L 130 94 CODcr mg/L 370 280 硫酸イオン濃度 mg/L 25 59 全硫化物 mg/L 1.6 7.2 溶存硫化物 mg/L 検出されず 2.1 溶存酸素 DO mg/L 0.7 検出されず 酸化還元電位 ±mv -170 -320 計量場所 計量項目 単位 表-2 水質分析 図-2 硫化水素濃度測定

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②酸素注入方式 酸素ガスは、空気の約4倍の溶解力があるため、空気注入のような揚程の増加は顕 著に現れないと言われている。このため、ポンプへの負荷は空気注入より軽減される と判断される。なお、酸素は助燃性が高いため貯留には、安全管理体制が必要である。 (2) 抑制方式の決定 図-1のとおり当路線は、長距離圧送路線で縦断の起伏が大きいことから空気注入方 式では、全揚程の試算を行うとポンプ揚程が大きくなるため採用は困難と判断した。よ って、実証試験は、「酸素注入方式」で行った。 5. 実証試験方法 (1) 実証試験の方法 実証試験においては、酸素注入方式以外に、汚水の滞留時間を短くすることで溶存酸 素量の減少を減らすことを目的とし、汚水ポンプの連続低水位運転も実証試験として組 み入れた。試験は、1ケース1週間のサイクルで表-3に示す。 ケース1-低水位運転 ポンプ稼働水位を下げる事で稼働回数を増加させ、圧送管内滞留時間の短縮を図り、 圧送管内より溶存酸素量が多いポンプ井の汚水を注入することで溶存酸素量を増やす。 ケース2-酸素注入① ポンプ稼働時に圧送管に注入する酸素量は6m3/h と一定にする。 ケース3-酸素注入② 同様に注入する酸素量は昼間は6m3/h、夜間は9m3/h と硫化水素発生量のピーク 時に合わせて注入量を変更する。 (2) 実証試験のまとめ 吐出し部の硫化水素濃度測定及び水質測定分析結果(各ケースの最終日)を表-4、 5に示す。 ① ② ③ 実証試験ケース 低水位運転(連続運転) 酸素注入①(昼夜、注入量一定) 設定条件 ポンプ起動水位(HWL)-0.10mで運転 酸素注入量 Q= 6m3N/h 空気弁2/3閉+酸素注入量の変更(夜間9m3N/h) 酸素注入②(夜のみ注入量の増加) 表-3 実証試験ケース一覧表 表-4 硫化水素濃度測定結果 表-5 水質測定分析結果 通常運転(無対策) 7.1 検出されず -300 硝酸塩注入 - - - 低水位運転 7.1 検出されず -280 酸素注入① 6.9 検出されず -250 酸素注入② 7.0 20 +100 ※溶存酸素において「検出されず」とは0.1mg/L以下である。 酸化還元 電位 (mV) 溶存酸素 (mg/L) pH 運 転 方 法 月 火 水 木 金 土 日 ppm 最大 1000UP 888 850 817 793 801 784 ppm 平均 278 245 228 245 273 258 232 回 稼働回数 41 42 41 44 41 44 42 ppm 最大 100 247 352 400 455 469 530 ppm 平均 25 61 78 96 127 112 139 ppm 最大 427 717 671 536 520 540 644 ppm 平均 196 236 214 156 154 164 158 回 稼働回数切替日 57 49 49 59 58 57 ppm 最大 464 658 231 550 598 490 664 ppm 平均 153 123 67 113 131 139 165 m3/日 酸素注入量 27.90 45.87 46.50 47.20 48.40 50.10 4.80 ppm 最大 674 661 261 332 186 39 25 ppm 平均 175 72 15 21 7 6 5 通常運転 (無対策) 硝酸塩注入 運 転 方 法 最大値平均値 測定濃度 低水位運転 単位 酸素注入① 酸素注入②

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6.実証試験方法の評価 (1) 実証試験方法の評価 1)「低水位運転」による評価 硫化水素発生抑制効果 → △ ・低水位運転により、ポンプ稼働回数が42回/日から59回/日程度に増加した。 ・水質については、「通常運転(無対策)」と同様、硫化水素が発生しやすい、硫化物 が生成しやすい環境に変わりはない。但し、ポンプ場ピット内での水質分析を行っ たところ、溶存酸素は0.7mg/L しか検出されておらず、低水位運転は酸素量を 増加するものではなく、酸素を維持するという観点であるため、ピット部において 既に1.0mg/L 以下となっている場合は、効果が低いと思われる。よって、低水 位運転での効果を期待するのであれば、ポンプ場ピット内の水質改善が必要である。 2)「酸素注入」による評価 硫化水素発生抑制効果 → ○ ・酸素注入方法は、1週間毎の2ケースに分けて行った。1週目は酸素注入量を一定 にして空気弁は開放し、2週目は一週目の硫化測定結果ならびに巡視点検より空気 弁からの酸素漏れを勘案し、空気弁を2/3閉めて行った。1週目の硫化水素の発 生パターンから、1日の硫化水素発生量のピークが早朝であったため夜間の酸素注 入量を増加させた。 ○1週目 硫化水素濃度が最大で664ppm(平均165ppm)と高濃度を確認した。 ○2週目 硫化水素濃度が最大で25ppm(平均5ppm)と硫化水素の抑制効果を確認した。 ・水質分析結果からも、1週目は溶存酸素が検出されていないことに対して、2週目 は、20mg/L 検出されており、嫌気化を防いでいる状態にある。同様に、酸化還 元電位も1週目は-250mV 以下に対して、2週目は+の値を示しており、細菌 の活性化はほとんど起こっていない。 試験結果から、①硫化水素濃度と酸素注入量の関係、②汚水送水量と酸素注入量 の関係、③ポンプ吐出量と酸素注入量の関係について次頁に示す。 ①硫化水素濃度と酸素注入量の関係 次頁の図-3より、硫化水素濃度は午前8時頃にかけて高くなっている。(1週 目)グラフより空気弁を閉めるまでは、酸素注入量に対して大きな抑制効果が確認 できない。(2週目)空気弁を閉め、夜間時に酸素注入量が増大した後は、硫化水 素濃度の平均値が5ppm と、硫化水素の抑制効果が現れている。

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②汚水送水量と酸素注入量の関係 図-4より、空気弁を閉めるまでは汚水送水量の低下は見られず、夜間に注入量 が増大した後から送水量の低下が確認された。空気弁を閉めたことで酸素の抜け道 が遮断され、圧送管内に酸素が溜まりポンプ効率の低下によって送水量の低下が生 じたと思われる。合わせて夜間注入量の増加により酸素溜まりがより多く生じたも のと推測される。なお、グラフの二本線は上が主ポンプ1号機、下がポンプ2号機 を表し、送水量に差が生じていることを表す。(次頁の図-5も同様となる) ③ポンプ吐出量と酸素注入量の関係 次頁の図-5より、汚水送水量と同様に夜間、酸素の注入量が増加した後からポ ンプ吐出圧力の上昇が確認できる。このことから送水量と酸素注入量の関係が読み 取れる。圧力が0.1Mpa 上昇すると揚程は10m上がることになり、実証試験中 の圧力は最大0.06~0.07Mpa 上昇したので、揚程は6m~7m上がったこ とになる。 ケース1 ケース2 ケース1 ケース2 8:00 図-3 硫化水素濃度と酸素注入量の関係図 図-4 汚水送水量と酸素注入量の関係図

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以下に実証試験の結果を表-6にまとめる。 7. おわりに 今回の「低水位運転(連続運転)」で、ピット部において既に溶存酸素が少ない施設に ついては低水位運転の効果が低いことがわかった。小規模でポンプ稼働率が低く、比較的 短い距離の圧送管路であれば、抑制効果が期待できるのではないかと思われる。 「酸素注入方式」は、“90%濃度の酸素は、空気の約4倍の溶解量があるためポンプ 揚程は増加しない 1)”と言われているが、Aポンプ場の圧送管の縦断形では、溶けきれな かった酸素が集まって酸素溜まりが発生し、ポンプ揚程が増加した。よって、現時点では 酸素の溶解を促す有効な酸素注入方式がないため、当方式の採用は見送った。 「酸素注入方式」による硫化水素抑制効果は確認できたが、導入には縦断形を含めた慎 重な検討が必要である。また、空気弁の開閉の取り扱いには注意が必要な手法であること が確認できた。以上より、Aポンプ場の硫化水素抑制対策は、硝酸塩添加方式の継続とな ったが、季節毎の適用量を把握し調整することで、添加量を減らし薬品代の縮減を行う方 針とした。 【参考文献】 1)圧送管路の硫化水素抑制対策技術マニュアル –2007 年 3 月- (財)下水道新技術推進機構 図-5 ポンプ吐出量と酸素注入量の関係図 表-6 実証試験のまとめ 溶存酸素 酸化還元電位 吐出量 圧力 硫化水素濃度 酸素注入量を一定 夜間、酸素注入量を増加 水質測定結果 項目 実験手法 (ピット内)0.7mb/l → (吐出口)0.1mg/l以下 (ピット内)-170mv  → (吐出口)-280mv (最大値)717ppm  (平均値)168ppm (ピット内)0.7mb/l → (吐出口)0.1mg/l以下 硫化水素濃度が平均して最大5ppmまで下がる。 酸素注入量が増大した後から汚水量が低下。 (最大値)664ppm  (平均値)165ppm (最大値)25ppm  (平均値)5ppm 同様にポンプ吐出圧力が上昇。 低水位運転 酸素注入量 Q= 6m3N/h 酸素注入量 Q= 6m3N/h → 夜間9m3N/h ポンプ起動水位より、0.10m下げて実施。 空気弁「閉」+酸素注入量を増 空気弁を閉めるまでは、抑制効果が無い。 空気弁の取り扱いは、注意が必要。 酸素注入方式 酸素注入方式 (ピット内)0.7mb/l → (吐出口)20mg/l (ピット内)-170mv  → (吐出口)-250mv (ピット内)-170mv  → (吐出口)+100mv 空気弁「開」 水質は変化無し。 空気弁「開」 効果 評価 抑制効果 無 × ポンプ場ピット内の水質改善が必要。 - 無 × 有 ○ 導入の適性 不適 × 不適 × 不適 ×

0.55 Mpa → 変わらず 0.55 Mpa → 0.61 Mpa (110%増) ポンプ

稼働状況

- 2.4m3/分 → 変わらず 2.4m3/分 → 1.4m3/分 (58%減)

参照

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