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地形第 36 巻, 第 1 号,pp.23-48,2015 Transactions, Japanese Geomorphological Union 36-1 p (2015) 花崗岩地域における土層構造と表層崩壊形状に与える山地の開析程度の影響 The Effects of the

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(1)

花崗岩地域における土層構造と表層崩壊形状に

与える山地の開析程度の影響

The Effects of the Degree of Mountain Denudation on Soil Layer Structure,

Shallow Landslide Properties on Granite area in Japan

松澤 真

1

・木下篤彦

2

・高原晃宙

2

・石塚忠範

2

Makoto Matsuzawa

1

, Atsuhiko Kinoshita

2

,

Teruyoshi Takahara

2

and Tadanori Ishizuka

2

Abstract

In 2009, numerous shallow landslides occurred due to heavy rainstorms in a cretaceous granite region near Hofu city, Yamaguchi Prefecture, in western Japan. We examined the relationship between the degree of denudation of the mountains and several geographic features of the landslides, including the soil profile, information from geological and topographic surveys, geographical properties, and detailed field surveys. We classified mountain slopes into three categories: (1) gentle slopes on the summit (Gen-S), (2) upper dissected slopes (Up-S), and (3) lower dissected slopes (Low-S). The number of landslides in the Gen-S, Up-S, and Low-S regions was 23, 54, and 21, respectively. The density of landslides was 76.9/ km2, 112.2/ km2, and 41.6/ km2 in the Gen-S, Up-S, and Low-S regions, respectively, with

average volumes of 432 m3, 410 m3, and 173 m3 in the Gen-S, Up-S, and Low-S regions. Landslides in the Gen-S and

Up-S region were “saturated soil slides” while “soil fall” landslides occurred in the Low-S region. The landslide areas in Gen-S were covered by thick weathered residual soils, and the landslide areas in Up-S and Low-S were covered by colluvial soils. Landslides in the Up-S area had a thick soil layer, while the landslides in the Low-S area contained many rocks, and soil depth was, therefore, low. These differences in soil layer structures were regulated by the type and properties (e.g., density, volume) of the landslides.

Key words:shallow landslide,degree of mountain denudation,granite,soil profile

2014 年 5 月 7 日受付、2014 年 11 月 5 日受理

1独立行政法人土木研究所(現所属:パシフィックコンサルタンツ株式会社)

1Public Works Research Institutes, 1-6 Minamihara, Tsukuba-shi, Ibaraki-ken, 305-8516, Japan (currently PACIFIC

CONSULTANTS CO.,LTD, 1-7-5 Sekido, Tama-shi, Tokyo 206-8550, Japan )

2独立行政法人土木研究所

2Public Works Research Institutes, 1-6 Minamihara, Tsukuba-shi, Ibaraki-ken, 305-8516, Japan

地形 第36 巻,第 1 号,pp.23-48,2015 Transactions, Japanese

Geomorphological Union 36-1 p.23-48 (2015)

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1. はじめに 侵食平坦面などの小起伏面山地は,長年の風化 作用などにより脆弱な深層風化層が形成されてい ることが多く,その特異な土層構造のため,豪雨時 にたびたび表層崩壊が群発し,深刻な被害を引き 起こしている.特に,中国地方は,侵食平坦面が日 本で一番広く分布する地域(岡崎,1967;藤原,1996) であり,さらに脆弱なマサを形成することで知ら れる花崗岩類が 30%以上分布しているため,豪雨 時にたびたび,表層崩壊が群発し,深刻な被害が生 じている.例えば,1964 年島根県加茂町(三浦, 1966,1967;大八木,1968),1999 年広島県広島市 (Chigira,2001;黒木・長谷川,2003),2004 年岡 山県玉野市(鈴木・西垣,2004),2009 年山口県防 府市(若月・石澤,2010;大川ほか,2012)などが ある.このような形態の土砂災害の被害を軽減す るためには,表層崩壊が群発する領域を明らかに することが重要である. 花崗岩地域において表層崩壊が群発する地質的 な素因に関しては,花崗岩,花崗閃緑岩などの岩相 の違いにより崩壊の発生頻度が異なること(大八 木,1968;奥西・飯田,1978),粒度の違いにより 崩壊の発生頻度が異なること(大川ほか,2012), 花崗岩特有の風化構造であるマイクロシーティン グが崩壊を誘発していること(Chigira,2001)な どが明らかとなっており,地質的な素因からある 程度の危険箇所の絞込みが行えるようになってき た. 一方,表層崩壊の発生場に関する研究では,0次 谷,遷急線直下などで崩壊が発生しやすいことが 指摘されており(塚本,1973;羽多野,1974,1979 など),微地形が崩壊発生場に強い影響を与えてい ることが明らかとなっている.また,山地の開析と 地形及び崩壊発生場との関係を議論した研究はい くつか実施されている(例えば,竹下・中島,1960; 羽田野,1974,1979,1986;田村,1974,1987;早 川・三島,1997;小口,1988A,1988B;吉木,1993, 2000 など).竹下・中島(1960)は,斜面の微地形 と土層構造に関する検討を行っており,開析が進 行した谷型斜面は崩積土的な性格が強く,開析が 進んでいない尾根型斜面は匍行土的な性格が強い 土層が分布すると指摘している.羽田野(1974, 1979)は,日本の山地のほとんどは,一~数段の遷 急線が認められ,その起源は高位のものほど古く て,低位のものほど新しいこと,そして,通常は侵 食の進行に伴い,遷急線は上流側(山側)に移動す ることを指摘し,このように,より新規の侵食領域 が旧期の侵食領域を蚕食することにより形成され た遷急線を侵食前線,後に後氷期開析前線(羽田野, 1986)としている.仙台付近の丘陵地において谷頭 部の地形・土層の調査を行った田村(1974,1987) は,丘陵地谷頭部の地形を微地形特性から分類し, 微地形分類により土層構造及び崩壊の発生しやす さ等が異なることを指摘している.このように,日 本の山地は,開析作用により徐々に山地が削剥さ れており,開析の進行程度と土層構造及び崩壊特 性との間に関係があることが明らかになってきて いる.しかし,崩壊の発生場を予測する上で重要で ある,崩壊の形態・規模,発生頻度などの崩壊特徴 と山地の開析程度との関係についての研究はほと んど行われておらず,未だに不明確なままである. 以上の背景から,本研究では,2009 年の豪雨に より表層崩壊起因の土石流災害が発生した山口県 防府市の剣川及び阿部谷川に分布する花崗岩分布 地域を対象として,山地の開析程度の分類,及び土 層構造と崩壊地の調査を実施した.その結果から, 山地の開析程度が斜面断面構造及び土層構造に与 える影響について検討し,さらに,それぞれの開析 程度の地域で発生した崩壊地の特徴を明らかにし, 最後に,山地の開析程度と崩壊危険度との関係に ついて検討を行った. 2. 調査地概要 山口県防府市では,2009 年 7 月 20~21 日の総 雨量 331mm(アメダス観測地点「防府」)の豪雨に より表層崩壊が群発し,それにより土石流被害が 発生した.本研究では,予察的な現地調査から山地 の開析程度が異なる斜面が分布すると推定された 剣川及び阿部谷川流域を調査対象とした(Fig.1). 剣川で発生した土石流は,下流の国道 262 号に隣 接する家屋を襲うとともに,さらに,国道 262 号 線に沿って流下し,国道 2 号線までの間にある勝 坂,山口,右田市などの家屋に損害を与え,死者・ 行方不明者が 4 名におよんだ(川田ほか,2010). 阿部谷川で発生した土石流の大部分は,沢出口に 設置された砂防堰堤に捕捉されたため,堰堤より

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下流では人的被害は発生しなかったが,流下した 土砂により数多くの民家で床下・床上浸水の被害 が発生した(川田ほか,2010).また,災害地周辺 の雨量観測所データを用いて,災害当日の日降水 量の分布を調べた山本ほか(2011)によると,7/21 の日降水量は両渓流ともに 250~300mm と同程度で あると推定されている. 本研究での調査対象渓流である剣川(流域面積 1.82km2,阿部谷川(流域面積 0.64km2)は,山口 県防府市北方の丘陵地に位置し,国土地理院発行 の 25,000 分の 1 の地形図幅「矢田」の範囲内であ る(Fig.1).当該渓流には,標高 100~400m 程度の 丘陵地が広がっており,標高 426m の右田ヶ岳から 北方に伸びる稜線を境界として,西部に剣川,東部 に阿部谷川が分布する.阿部谷川の上流部及び剣 川の上流の一部には,緩傾斜の斜面から成る小起 伏面が分布している事が特徴的である.また,調査 地の南西方向には北西から南東に走る小鯖断層が,

Fig.1. Topographic map of study area

Counter interval 10m. Transportation and Deposition zone were interpreted by Yamaguchi Office of River and National Highway, Chugoku Regional Bureau. Fault and Probable Fault modified from Imaoka et al. (2012).

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南東には佐波川断層の延長に位置する伏在断層が 北東から南西方向に分布すると考えられており (今岡ほか,2012),地質は,広島型花崗岩類に含 められる後期白亜紀の防府花崗岩である(山本ほ か,2006;今岡ほか,2012).防府花崗岩は,山口・ 防府・宇部の 3 市及びその周辺町村にまたがって 分布し,南北 38km,東西 50km の広がりを有するバ ソリソをなしている(山本ほか,2006;今岡ほか, 2012). 3. 方法 調査方法の詳細については,それぞれの項で述 べるが,本研究は,以下の流れに沿って行なった. まず,Table.1 に示す災害前後に国土交通省中国地 方整備局山口河川国道事務所により撮影・作成さ れた航空レーザ測量データによる 1m メッシュの DEM を用いて,等高線図や傾斜図などを作成した. 照射平均密度は,災害前(2005 年)で 1.2m,災害 後(2009 年)で 0.8m である.災害後のデータは厳 密には 1.0m の解像度は無いが,2m メッシュでは表 現できない微地形を表現することができるため, 本研究では 1m メッシュの DEM を使用した.そして, 災害後に撮影されたオルソ写真の判読と現地踏査 によって 2009 年の豪雨災害による崩壊地の分布を 明らかにした.さらに,作成した図面の判読及び現 地踏査から,山地の開析程度に注目した地形分類 図及び地質図の作成を行った.これらを基に,地形 分類及び地質区分と崩壊分布との関係について検 討を行い,崩壊特徴の詳細現地調査を実施する地 域を決定し,実施した. 3.1 地形判読・調査 2009 年の豪雨災害による崩壊地は,災害後の 2009 年 8 月に撮影されたオルソ写真の判読と現地 踏査によって抽出した.なお,現地踏査の結果,明 らかに渓岸侵食により発生したと推定される崩壊 は除外した. 地形分類図は,災害前の1mDEM(Table.1)を 用いESRI 社製の ArcGIS 10 により八点法(3.3 章 参照)で作成した傾斜図の判読及び現地踏査により 作成した.本研究では,特に山地の開析程度の判読 例 (Fig.2)に示すように,山地の開析程度に注目し 判読を行った.Fig.2(a)は傾斜図(暗色の部分が急 傾斜地,明色の部分が緩傾斜地)であり,一部不明 瞭の箇所もあるが,2 本の遷急線が認められた.2 本の遷急線のうち上位のものを高位遷急線(Upper convex break of slope),下位のものを低位遷急線 (Lower convex break of slope)とした.また,一 部の区間においては,山頂付近に低位遷急線のみ が分布する箇所も確認されたが,これは,熊木 (1991)が指摘するように,下位の遷急線ほど山 頂・山稜領域への侵食速度が早いため,上位の遷急 線に追いつき1 本に収斂した可能性がある. Table.1. Specifications of the Airborne Laser Scanning. (Yamaguchi Office of

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現地調査により明らかとした斜面上の露岩の分 布状況をFig.2(b)に示す.露岩の分布は,遷急線を 境界に明瞭に異なっており,低位遷急線より下位 に位置する斜面は,斜面の凹凸が激しく,硬質な露 岩が点在していた.一方,高位遷急線より上位に位 置する斜面は,斜面の凹凸が小さい滑らかな地表 面を呈しており硬質な露岩は認められなかった. そして,高位遷急線と低位遷急線に挟まれた範囲 は,両者の中間の特徴を呈していた.これは,山地 の開析作用による土層の除去程度を表していると 考えられる.また,この露岩の分布(Fig.2(b))と Fig.2(a)に示す凹凸が激しく急傾斜な箇所(暗黒の 部分)の分布は良く一致しているため,傾斜図の凹 凸の激しい箇所の多くは,露岩箇所を示している ことが明らかとなった. 以上の地形判読及び現地踏査の結果より,高位 遷急線より上位斜面を山頂緩斜面(Gentle slopes on the summit),高位遷急線と低位遷急線に挟ま れた範囲を開析斜面上部(Upper dissected slopes), 低位遷急線より下位斜面を開析斜面下部(Lower dissected slopes)と分類した(Fig.2(c)).なお, 遷急線が不明瞭な区間は,露岩の状態,すなわち傾 斜図の凹凸程度に注目し,凹凸が激しく露岩が点 在すると想定される領域は開析斜面下部,凹凸が 小さく露岩が分布しないと想定される領域は山頂 緩斜面,中間の領域は開析斜面上部とした.調査地 の山地の開析程度と地形区分を模式的に Fig.3 に 示す. 3.2 地質調査 本地域の地質は,山本ほか(2006),今岡ほか (2012),大川ほか(2012)によって検討され,彼 らの地質図が公表されているが,本研究では詳細 に斜面崩壊との関連をみるため,山間部を詳細に 調査して新たに地質図を作成した.なお,本研究の 地質区分は,大川ほか(2012)の区分を基準とし, 防府花崗岩体を粗粒花崗岩(主な粒径が3~5mm), 中粒花崗岩(主な粒径が1~3mm),細粒花崗岩(粒 径は1mm 以下),及び貫入岩(デイサイト,流紋 岩)の4 つに区分した.花崗岩は,いずれも黒雲母 を多く含んでおり,構成鉱物は類似していた. 3.3 地形量の算出 山地の開析程度と崩壊特徴との関係を定量的に 把握するため,地形量の算出を行った.算出した 地形量は,斜面傾斜(°)と崩壊地の崩壊面積(㎡), 崩壊土砂量(㎥),崩壊深(m)である.斜面傾斜は, 災害前の1mDEM(Table.1)を ArcGIS 10(ESRI 社製)により解析し,以下の八点法により算出し た. 行列上の任意の点(i行j列)の標高をZij とす るとき,同じ場所の斜面傾斜角(θ)は以下の式 で求める. θ=arctan(√((dz/dx)2)+(dz/dy)2))×180/π (dz/dx) = ((Zi +1 , j +1 +2Zi +1 , j +Zi +1, j -1) - (Zi -1 , j +1 + 2Zi -1 , j +Zi -1 , j -1)) / 8 (dz/dy) = ((Zi -1 , j -1 + 2Zi , j -1 +Zi +1 , j -1) - (Zi -1 , j +1+ 2Zi , j +1 +Zi+1 , j+1)) / 8

Fig.2. An example of classification of mountain denudation

(a) Slope map. Gray scale shows slope inclination. Darker color is steeper and brighter color is gentler. (b) Counter map. Counter interval is 10m. Upper convex break of slope is clear, but lower convex slope is not clear. Distribution of the rock were confirmed by field survey. (c) Slope classification map.

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*dx,dy は x,y それぞれの方向のメッシュ間隔 であり,本研究では1m である. 崩壊面積,崩壊土砂量は,ArcGIS 10(ESRI 社製) により算出した.崩壊面積は,崩壊地ポリゴンの面 積を算出することにより求めた.崩壊土砂量は, Table.1 に示す災害前後の 1mDEM から,メッシ ュ単位ごとに標高の差分値を算出し,崩壊地単位 で合計することにより求めた.また,崩壊深は,崩 壊土砂量を崩壊面積で除することにより求めた. 3.4 各開析程度の斜面上で発生した表層崩壊 地の詳細現地調査 山頂緩斜面,開析斜面上部,開析斜面下部で発生 した崩壊地の現地確認をそれぞれ10 箇所程度実施 し,その中から崩壊形状,崩壊面積,土層構造が代 表的な1 箇所をそれぞれ選び,詳細な調査を実施 した.山頂緩斜面,開析斜面上部,開析斜面下部の 崩壊地を,それぞれ,Gen-L(Gentle slopes on the summit Landslide),Up-L(Upper dissected slopes Landslide ) ,Low-L ( Lower dissected slopes

Landslide)と呼ぶ(斜面の位置は,Fig.4 参照). 調査は,まず,斜面崩壊形状(平面形状,横断形 状,縦断形状)を得るためレーザ距離計(Nikon 550AS)により簡易測量を行った. 次に,表層土 層厚を調べるために SH 型貫入試験機(吉松ら, 2002)を用い簡易貫入試験を実施した. SH 型貫 入試験機は,重錘の重さを3kg と 5kg の 2 種類か ら選択可能となっており,3kg と 5kg を併用した 場合,換算式により対比可能である.しかし,換算 値ではデータの信頼性が劣るため,本調査では全 て5kg の重錘を用い,1 打撃毎の貫入量(mm)を 計測した.なお,本研究では,小山内ほか(2005) に従い,従来の調査結果との比較が容易であるよ うに,同じ土層が 10cm 続いていると仮定した値 (Nc/drop,以下では単に「Nc 値」とする) を用 いた.さらに,簡易貫入試験結果と土層構造との関 係を明らかにすること,及びすべり面の深さを特 定することを目的に,滑落崖を整形して土層の鉛 直断面を作成し,土層構造の観察を実施した.なお, Fig.3. Schematic diagram showing the mountain denudation classification

Gen-S: Gentle slopes on the summit. Up-S: Upper dissected slopes. Low-S: Lower dissected slopes. Up-C: Upper convex break of slope. Low-C: Lower convex break of slope.

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Low-L は,簡易貫入試験が急勾配なため実施出来 ず,土層観察のみを実施した. 4. 結 果 4.1 崩壊跡地及び地形・地質の分布 4.1.1 崩壊跡地及び地形の分布 崩壊跡地及び地形の分類結果を Fig.4 の地形分 類図に示す.判読の結果,調査地域には178 個の 崩壊跡地が分布することが明らかとなった.また, 地形は,3.1 章に示した 3 つの開析区分(山頂緩斜 面,開析斜面上部,開析斜面下部)と,渓床堆積物, その他斜面の合計 5 つに分類した.各地形の特徴 と分布状況を以下に示す. (ⅰ)山頂緩斜面 山頂緩斜面は,阿部谷川山頂付近の標高300~ 390m 付近に面的に広く残っており,剣川上流の 尾根付近の一部にも分布する(Fig.4).幅広い尾 根上に位置し,滑らかな表面形を呈しており,基 盤岩の凹凸やガリーなどの微起伏をほとんど持 たない事が特徴的である.崩壊による山地の開析 は,まだ十分に進行していないため斜面上に岩盤 は露出しておらず,崩壊は,沢沿いの斜面下部に て発生していた.防府地域の侵食平坦面を詳細に 調査した例はないが,岡山県西部から広島県中部 Fig.4. Geomorphic classification map

Gen-L: Gentle slopes on the summit Landslide (Fig.9). Up-L: Upper dissected slopes Landslide (Fig.10). Low-L: Lower dissected slopes Landslide (Fig.11).

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を調査した藤原(1977,1980,1996)は,海抜 300 ~450m の水準に世羅台地面が存在することを指 摘している.調査地域の山頂緩斜面は,分布標高 から世羅台地面に相当すると考えられる.藤原 (1996)によると世羅台地面は,鮮新世末~更新 世初に形成されたと考えられており,深層風化が 深部まで進行していると指摘されている. (ⅱ)開析斜面上部 開析斜面上部は,5 つの地形区分の中で分布面 積が最も広く,剣川では中流部の大部分,阿部谷 川では中流部の一部に分布する(Fig.4).開析斜 面上部は,山頂緩斜面より山地の開析が進行して いる領域であり,斜面には,過去の崩壊により形 成されたと推定される滑落崖などの凹地が点在 し,所々に露岩も認められる.山頂緩斜面領域に 比較すると地表面の凹凸が大きく,急傾斜な斜面 の割合が多い事が特徴的である. (ⅲ)開析斜面下部 開析斜面下部は,阿部谷川の下流部と剣川下流 の左岸側に分布する(Fig.4).阿部谷川の左岸側 は,下流から開析斜面下部,開析斜面上部,山頂 緩斜面が連続的に分布しており,Fig.3 に示した 山地の開析程度を典型的に表している領域であ る.一方,剣川下流の左岸側は低位遷急線が上位 の高位遷急線に追いついているため,開析斜面上 部領域を挟まず山頂緩斜面と接している.開析斜 面下部は,山地の開析が非常に進行した領域であ るため,やせ尾根や尖峰が分布する.斜面には露 岩が点在するため,非常に凹凸が激しく,急傾斜 な斜面となっている. (ⅳ)渓床堆積物 剣川,阿部谷川の本流及び支流沿いの砂礫など

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の渓床堆積物が厚く分布する領域である.現地踏 査結果から,約 1m 以上渓堆積物が堆積している と推定した範囲である. (ⅴ)その他の斜面 (ⅰ)~(ⅳ)以外に,剣川下流左岸側の山脚部の一 部(標高80m~140m)に,斜面傾斜が緩い領域が 認められた.分布範囲が狭く面的な広がりが確認 出来ないが,定標高性も持つことから,瀬戸内面 (貝塚,1950)に相当する可能性がある. 4.1.2 地質分布 調査地域の地質図をFig.5 に示す.本地域の大部 分には粗粒花崗岩と中粒花崗岩が分布しており, 細粒花崗岩は右田ヶ岳と剣川上流の一部に分布す るのみである.粗粒花崗岩は剣川の北部から南西 部にかけて分布し,中粒花崗岩は阿部谷川の全域 と剣川の南東部に分布している.本調査により両 者の接触部を直接観察することは出来なかったが, 山本ほか(2006)によると両者の接触部はシャー プな境界を示さず境界部に急冷縁を伴わないこと から,両者はあまり温度差がなく,流動可能な条件 下で固結したと考えられている.貫入岩は,所々に レンズ状に分布しており,特に断層周辺で多く確 認された.このことから,断層運動に伴い貫入岩が 形成された可能性が示唆される.これらの地層の 相互関係は,粗粒花崗岩を中粒花崗岩が貫き,それ らを細粒花崗岩が貫き,最後に貫入岩が貫入した と考えられている(山本ほか,2006). ここで地形区分図(Fig.4)と地質図(Fig.5)を 比較すると,山地の開析区分と地質区分の境界は 一致せず,両者は無関係であると言える.つまり, Fig.4 に示した山地の地形区分は,地質の影響,す なわち本研究では粒度の違いに起因するもではな い. 4.1.3 地質・地形区分と崩壊頻度 地質区分及び地形分類ごとの崩壊の発生しやす さを定量的に評価するため,崩壊地面積率及び崩 壊地密度を算出した.崩壊地面積率は,対象とする 区分の全面積に対するその区分の崩壊地面積の比 率(%)である.崩壊地密度は,対象とする区分別 に算出した,単位面積あたりの崩壊地の源頭部の 数(個/km2)である.なお,算出の対象とした地質 は,崩壊が発生した中粒花崗岩,粗粒花崗岩,貫入 岩であり,崩壊が発生しなかった細粒花崗岩は対 象外とした. 1)地質区分と崩壊頻度との関係 崩壊地面積率は,中粒花崗岩,粗粒花崗岩,貫入 岩分布域でそれぞれ,1.7%,2.5%,3.1%を示し, 崩壊地密度は74.7,99.5,27.3 箇所/km2を示した (Table.2).貫入岩は分布面積が中粒・粗粒花崗岩 の10%以下のため議論出来ないが,どちらの結果 からも,崩壊は粗粒花崗岩分布地域で密に発生し ていたことが明らかとなった.この結果は,同様に 2009 年 7 月豪雨により防府花崗岩体で発生した崩 壊の単位面積あたりの源頭部の数(個/ km2)を調 べた大川ほか(2012)と整合的であり,鉱物粒径が 崩壊の発生しやすさに影響を与えている事が明ら かとなった. 2)山地の開析程度と崩壊頻度との関係 山地の開析程度と崩壊密度との関係を明らかに するためには,地質の影響,すなわち本調査地の場 合は花崗岩の粒度を除外する必要がある.そこで, これ以降の検討では,山頂緩斜面,開析斜面上部, 開析斜面下部領域が広範囲に分布する中粒花崗岩 分布地域を対象とした. 中粒花崗岩分布地域を対象とした山地の開析程度 と 崩 壊 地 面 積 率 及 び 崩 壊 地 密 度 と の 関 係 を

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Table.3 及び Fig.6 に示す.崩壊地面積率は,山頂 緩斜面,開析斜面上部,開析斜面下部地域でそれぞ れ,2.1,2.7,0.5%を示し,崩壊地密度は 76.9, 112.2,41.6 箇所/km2を示した.このように,どち らの結果からも,開折斜面上部,山頂緩斜面,開析 斜面下部の順に崩壊が密に発生しており,山地の 開析程度が崩壊の発生に影響を与えていることが 明らかとなった. 4.2 山地の開析程度と地形量 山地の開析程度と崩壊特徴との関係を定量的に 把握するため,中粒花崗岩分布地域を対象として 地形量の比較を行った.算出した地形量の一覧を Table.4 に示す. 1)斜面全体と崩壊地斜面の斜面傾斜ヒストグ ラム 各開析程度の斜面全体及び崩壊地斜面の傾斜角 を崩壊発生前のDEM(Table.1)から算出し,山地 の開折程度と斜面傾斜との関係の検討を行った. 計算の対象とした斜面全体の面積は,山頂緩斜面, 開析斜面上部,開析斜面下部でそれぞれ,0.299km2 0.481km20.504km2である.崩壊地は,山頂緩斜 面,開析斜面上部,開析斜面下部でそれぞれ,23 箇 所(合計面積 0.006km2), 54 箇所(合計面積 0.013km2, 21 箇所(0.003km2)である.

Table.3. Landslide characteristics in three different degree of mountain denudation on the medium-grained granite.

Fig.6. Density of landslide and Ratio of landslide areas of three different degree of mountain denudation on the medium-grained granite.

Gen-S: Gentle slopes on the summit. Up-S: Upper dissected slopes. Low-S: Lower dissected slopes.

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まず,斜面全体の傾斜分布を山地の開析程度ご とに考える.Fig.7(a)は,斜面全体の傾斜の相対頻 度分布を示している.斜面全体の斜面傾斜の平均 値と最頻値は,山頂緩斜面,開析斜面上部,開析 斜面下部分布地でそれぞれ,25.2°と 25~30°, 33.2°と 35~40°,40.2°と 40~45°であり,明 らかに山頂緩斜面分布地の斜面が相対的に緩傾斜 であることがわかる.ここでの頻度とは,特定の斜 面傾斜(5°間隔)のセルの数を対象範囲の全体の セル数で除したものである. 次に,崩壊斜面の傾斜の頻度分布をFig.7(b)に示 す.崩壊斜面の傾斜角の平均値と最頻値は,山頂緩 斜面,開析斜面上部,開析斜面下部分布地でそれぞ れ, 28.5°と 25~30°,33.2°と 30~35°,39.9° と 40~45°である. 斜面全体と崩壊斜面の傾斜の頻度分布・平均値・ 中央値を山地の開析程度ごとに比較すると,全て の結果が,開析斜面下部が最も急傾斜であり,次に 開析斜面上部,そして,山頂緩斜面が最も緩傾斜で ある事がわかる. 2)山地の開析程度と崩壊土砂量 崩壊土砂量は,山頂緩斜面,開析斜面上部,開析 斜面下部でそれぞれ,432m3410m3173m3であ り,開析斜面下部で発生した崩壊は,崩壊土砂量が 小さい事がわかる(Table.4).Fig.8 に崩壊土砂量 頻度分布を示す.開析斜面下部で発生した崩壊の 崩壊土砂量は,400m3以下の小規模な崩壊が多く を占める.一方,山頂緩斜面及び開析斜面上部で発 生した崩壊は,400m3以上の比較的大規模な崩壊 も発生している事が,平均値の差に現れたと言え る. 平均崩壊深は,山頂緩斜面,開析斜面上部,開析 斜面下部でそれぞれ,1.5m,1.5m,1.4m であり,開 析斜面下部が若干薄いが,崩壊土砂量のように明 瞭な差がなかった. 4.3 各開析程度の斜面上で発生した表層崩壊 地の詳細現地調査 各開析程度の斜面上で発生した表層崩壊地の形 状や土層構造の実態を把握し,それらに与える山 地の開析程度の影響について検討した. 1)表層崩壊形状 斜面崩壊形状の調査結果をFig.9~11 に示す.な お,表層崩壊前の地表面は,崩壊面の縦横断形状及 び崩壊前の傾斜図から推定して,Fig.9~11 中に破 線で示した.Gen-L は,幅約 10m,長さ 22m で, 崩壊面の縦断形状は横断形状ともにやや円弧状で あり,斜面上部が深く崩壊している.崩壊面の勾配 は28~34°程度であり,周辺斜面の凹凸は少なく 平坦な形状を呈している(Fig.9(a), (b)).Up-L は, 幅約12m,長さ約 20m で,崩壊面の縦断形状は平 板状,横断形状は円弧状であり,崩壊面の勾配は32 ~36°と Gen-L に比べて急勾配である(Fig.10(a), (b)).Low-L は,幅約 4m,長さ 10m で,崩壊面の 縦断形状は横断形状ともに平板状であり,崩壊面 の勾配は36~40°と非常に急勾配である.周辺斜 面には露岩が多く土層は薄いが,崩壊は局所的に

Table.4. Topographical features of landslide in three different degree of mountain denudation on the medium-grained granite.

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土層が厚く堆積している箇所にて発生していた (Fig.11(a), (b)). 2)土層構造及び崩壊深の推定 土 層 構 造 の 調 査 結 果 を Fig.9 ~ 11 に 示 す . Fig.9,10 中の A,B の文字は簡易貫入試験及び土層 構造の観察箇所を示し,Fig.11 中の C の文字は土 層構造の観察箇所を示している. 4.3.1.山頂緩斜面領域で発生した崩壊(Gen-L)

Gen-L の崩壊地外の土層(Fig.9 の A1~A3)は, 典型的な風化残積土(Weathered residual soil)の 構造を示していた.風化残積土は,大別すると岩石 の一時的風化産物であり明確な岩石組織を残して いるサプロライト(一般には「まさ土」と呼ばれる) と,それが極端に風化して土壌化した二次産物で あるラテライトの2 つに区分される(西田,1986). 本研究では,サプロライトの風化程度に注目し,サ プロライトをDH 級,DM 級,DL 級岩盤の 3 つに 分類した.分類の基準には,D 級岩盤が細かく分類 されている本州四国連絡橋公団の岩盤分類(宮島, 1981)を用いた.各岩級と簡易貫入試験結(Nc 値) を比較すると,DH 級は 20 以上,DM 級は 10~20 程度,DL 級は,3~10 程度に相当すると考えられ る.調査地のラテライトは,赤褐色を示しており, 礫分及び粘土分が少ないため海砂のように粘り気 の少ない土層であった.層厚は40~100cm 程度で あり,Nc 値は 1~3 程度と非常に緩い事が特徴的 である.また,ラテライトの上位には,有機質土が 10~20cm 程度分布していた.A1,A3 付近の崩壊 面には,DL 級の岩盤が面的に分布していたことか ら,斜面上部では,DL 級岩盤上位の土層が崩壊し たと推定される.また,崩壊地内の土層(Fig.9 の A4)は,DL 級が存在せず,DM 級も 2cm と非常 に薄い.これは,斜面崩壊時に,DL 級及び DM 級

Fig.9. Landslide characteristics of the “Gentle slopes on the summit” on the medium-grained granite. (a)Plane view of slip scar, (b) Longitudinal sections and cross sections, (c) Profile of the Nc value and soil. Location is shown in Fig.4

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の一部が除去されたと考える事ができる.DM 級の 上位には,斜面崩壊時の崩土の一部が流下せずに 崩 壊 面 上 に 堆 積 し た と 考 え ら れ る 崩 積 土 (Colluvial soil)が 60cm 堆積していた. 以上の状況から,崩壊面は,斜面上部ではDL 級と ラテライト層の境界,または DL 級の内部と推測 できる.崩壊下部の一部では,崩壊時にDL 級及び DM 級岩盤の一部も巻き込みながら流下したと考 えられる. 4.3.2.開析斜面上部領域で発生した崩壊(Up-L) Up-L の崩壊地外の土層(Fig.10 の B1~B3)は, 全ての箇所でDL 級岩盤は分布せず,B2,B3 では DM 級岩盤も分布していなかった.これは,開析斜 面は,過去に崩壊を繰返し形成された斜面のため, 風化によりDL~DM 級岩盤が形成されるより前に, 崩壊が繰り返し発生したためと考えられる.また, 土層スケッチに示すように,Up-L の土層は,礫分 を大量に含み,マトリックス部はGen-L に比べ粘 土分が多かった.礫分とマトリックス部の境界は, 明らかに連続していなかったため,この土層は,過 去の崩壊により堆積した崩積土と判断した.崩積 土の層厚は,70~120cm 程度であり,Nc 値は,2 ~50 程度である.しかし,土層観察結果から Nc 値 10 以上は礫当たりと考えられるため,土層の強度 を示すマトリックス部のNc 値は,2~10 程度と考 えられる.また,崩積土 の上位には,有機質土が 10~20cm 程度分布して いた. 崩壊地内の土層(Fig.10 の B4)には,斜面崩壊 Fig.10. Landslide characteristics of the “Upper dissected slopes” on the medium-grained

granite.(a) Plane view of slip scar. (b) Longitudinal sections and cross sections. (c) Profile of the Nc value and soil. Location is shown in Fig.4.

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時の崩土の一部が流下せずに崩壊面上に堆積した と考えられる崩積土が30cm 堆積していた. 以上の状況から,崩壊面は,崩積土と DH 級また はDM 級岩盤の境界と推測できる. 4.3.3. 開 析 斜 面 下 部 領 域 で 発 生 し た 崩 壊 (Low-L) Low-L の崩壊地外の土層構造(Fig.11)の C1~ C3)は,Up-L と同様であった.全ての箇所で DL 級岩盤は分布せず,C2 では DM 級岩盤も分布して いなかった.また,崩壊地内には,CL 級以上の硬 質な岩盤が広範囲に露出しており,崩壊地外の周 辺斜面にも硬質な露岩が点在していた.崩積土の 層厚は,50~150cm 程度であるが,100cm より深 い箇所は,岩盤の凹部に局所的に厚く溜まった箇 所であるため,土層の厚さとしては100cm 以下と 考える事が妥当である.また,崩積土の上位には, 有機質土が10~20cm 程度分布していた. 以上の状況から,崩壊面は,Up-L と同様に,崩 積土とDH 級または DM 級岩盤の境界と推測でき る. 5. 考 察 5.1 山地の開析程度と土層構造 現地踏査及び,崩壊地の詳細調査から考察した 中粒花崗岩分布地域の山地の模式断面図と模式土 層構造をFig.12 に示す.なお,模式断面図(Fig.12 (a))に示す土層は,表層の有機質土層は除外し, 特徴を判読しやすいように層厚を誇張して図示し ている.模式柱状図(Fig.12(b))の各層厚は,崩 壊地の詳細現地調査結果から想定される平均的な 値とした. 調査地には,一部不明瞭な箇所もあるが,2 本の 遷急線が分布しており,山地の開析程度は,これら の遷急線を境界として異なっている.高位遷急線 Fig.11. Landslide characteristics of the “Lower dissected slopes” on the medium-grained granite.

(a) Plane view of slip scar. (b) Longitudinal sections and cross sections. (c) Profile of the soil. Location is shown in Fig.4.

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より上位に山頂緩斜面が,高位遷急線と低位遷急 線に挟まれた範囲に開析斜面上部,低位遷急線よ り下位に開析斜面下部が分布する.低位遷急線は 最下位に分布することから,後氷期~現在の地形 形成条件に対応して形成された後氷期開析前線 (羽田野,1979,1986)に相当すると考えられる. 山頂緩斜面領域は,起伏が小さく滑らかな斜面 が分布しており,主に風化作用により形成された と考えられ,連続的な構造が残り均一性が高いラ テライト及びサプロライトが1.0~2.0m 程度分布 する.開析斜面上部領域は,現在,開析が進行中 の斜面であるため,山頂緩斜面に比較し,起伏が 大きく,急傾斜な斜面が分布する.この領域は, 過去の繰返しの崩壊により形成された斜面である ため,山頂緩斜面に分布する脆弱なラテライト及 びDL 級のほとんどは除去され存在しない.それ に代わり,斜面上には,過去の崩壊により形成さ れた崩積土が主に分布する.崩積土は,礫の含有 量が多く,土層厚は,1.0~2.0m 程度である. 開析斜面下部領域は,開析が最も進行した領域 であり,急傾斜な斜面により形成されている.土 層の多くは既に過去の崩壊により除去されている ため,硬質なCL 級以上の露岩が点在しており, 全体的に土層は0.4~1.0m 程度と薄い.しかし, 局所的な凹地に1.5m 程度分布しており,この様 な箇所にて崩壊が発生したと考えられる.この領 域に分布する土層は,開析斜面上部領域と同じく 主に崩積土により構成されている. ここで,調査地域の土層構造の形成過程に関し て若干の考察を行う.調査地域周辺の地形発達過 程は,第四紀の隆起量・侵食基準面の変動などに 関する研究は行われていないため詳細は不明であ るが,第四紀における地形発達史の研究(藤原, 1996;貝塚,1969;平川・小野,1972;羽田 Fig.12. Schematic diagram showing the slope and soil profile on the medium-grained granite.

(a)Slope profile. (b)Soil profile. Gen-S: Gentle slopes on the summit. Up-S: Upper dissected slopes. Low-S: Lower dissected slopes. Up-C: Upper convex break of slope. Low-C: Lower convex break of slope. Organic soil layer is excluded the soil layer shown in (a) Slope profile, and soil layer thickness is exaggerated. Layer thickness of (b) Soil profile was an average value estimated from detailed field survey results of landslide (Fig.9, 10, 11).

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野,1979,1986 など)を参考に調査地域の土層 構造の形成過程を考えると以下のように考える事 ができる. まず,鮮新世末から更新世初期にかけて,現在, 山頂緩斜面として上流部(標高300m 以上)に残存 する厚い風化層を持つ世羅台地面が形成され,下 流域まで広がっていたと想定される.藤原(1996) によると,侵食の深さは瀬戸内海に近いほど大き かったと指摘しているため,瀬戸内海から5km 程 度しか離れていない剣川及び阿部谷川は河床の下 刻が急激に進行した事が推測される.河床の下刻 は,山地斜面にとっての侵食基準面の低下を意味 するため,山地斜面では崩壊が多発し,下流から 徐々に山頂緩斜面が開析され,現在の開析斜面上 部が形成された.この開析作用の最前線が高位遷 急線に相当する. さらに,後氷期には降水量の増加に伴う流量の 増加により谷はさらに下刻傾向にあった事が明ら かになっている(貝塚,1969;平川・小野,1974 など).この後氷期における河床の下刻量の増加に より,開析斜面部はさらに開析され,その開析の最 前線が低位遷急線(後氷期開析前線(羽田野,1979, 1986))と考えられる.以上のような地形発達によ りFig.12 に示す土層構造が形成されたと考えられ る. 5.2 山地の開析程度と崩壊特徴 崩壊地の詳細現地調査結果から考察される各開析 程度の斜面領域において発生した崩壊の模式断 面図をFig.13 に示し,各崩壊のメカニズムについ て考察する. 山頂緩斜面領域にて発生した崩壊は,主にDL 級とラテライト層の境界,またはDL 級の内部に て発生しており,崩壊地下部の一部においては DM 級も巻き込み流下したと推定される.主な崩 壊土層であるラテライト層,及びDL 級は,それ ぞれ,Nc 値 1~3,Nc 値 3~10 であり,両者と もNc 値 10 以下の脆弱な土層である.風化花崗岩 斜面において簡易貫入試験を実施した奥西・飯田 (1978)は,崩壊により Nc10 以下の土層が除去 されることを指摘しており,この結果は,本調査 結果と整合的である.開析斜面上部領域では, DH 級または DM 級と崩積土との境界が崩壊面と

Fig.13. Schematic diagram showing the three landslide types on the medium-grained granite. (a)Gentle slopes on the summits area. (b)Upper dissected slopes area. (c)Lower dissected slopes area.

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なり崩壊が発生したと推定される.主な崩壊土層 は礫質な崩積土である.崩積土のNc 値は,2~10 程度であり,Nc 値 10 以下の脆弱な土層が除去さ れたと言える.開析斜面下部領域では,DH 級以 上の硬質な岩盤の上に局所的に厚く堆積した崩積 土が滑ることにより崩壊が発生したと推定され る.主な崩壊土層は,開析斜面上部領域と同じく 礫質なNc 値 2~10 程度の崩積土である. 上記したように各開析程度の斜面は,特有の土 層構造を持つため崩壊面となる土層は異なるが, いずれの崩壊も,Nc 値 10 以下の脆弱な土層が除 去されることにより発生したと言える. 山頂緩斜面及び開析斜面上部領域で発生した崩 壊は,従来,多くの研究者(例えば,芥川・風 間,1984;岡ほか,1993;笹原ほか,1996;笹 原,1999)が指摘しているように,降雨浸透に伴 い,次第に地下水位が上昇し地下水面が形成され ることにより,土層内には間隙水圧が発生し,せ ん断抵抗力の低下やパイプ流の発生によって斜面 の安定性が低下することにより発生した湿潤型崩 壊であったと考えられる.一方,開析斜面下部で 発生した崩壊は,局所的な凹地に比較的厚く堆積 した土層が,難透水性のDH 級以上の岩盤状上に 発生した飽和側方流により流動した抜け落ち型の 崩壊であったと考えられる. 5.3 山地の開析程度と崩壊危険度 最後に,山地の開析程度ごとに崩壊危険度を考 察する.崩壊危険度を考える場合,崩壊の発生し やすさと,発生した場合の被害の大きさに影響を 及ぼす崩壊規模が重要となるため,崩壊地面積率 (Table.3)と平均崩壊土砂量(Table.4)から崩壊危険 度を検討する. まず,崩壊地面積率は,開析斜面上部 (2.7%),山頂緩斜面(2.1%),開析斜面下部 (0.5%)の順に高く,この順に崩壊が発生しやす いと言える(Table.3).しかし,この値は斜面傾斜 の分布頻度を考慮していないため,実際の崩壊の 発生しやすさとは言えない.そこで,特定の斜面 傾斜(5°間隔)と崩壊地面積率との関係(Fig.14) から崩壊危険度を検討する.なお,Fig.14 では, Fig.14. Relationship between ratio of landslide areas and Slope angle for three

different degree of mountain denudation on the medium-grained granite. Legend are the same as those in Fig.3.Ratio of Landslide areas(%)=Landslide area of the specific range of slope angle(km2)/Area of the specific range of slope

angle(km2).Slope angle is separated by 5 °range. The distribution range of less

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データの信頼性が劣る斜面全体の分布頻度が 1%以下の範囲は除外している. Fig.14 より,山頂緩斜面領域の崩壊地面積率 は,45~50°の区間においてが若干低下している が,急傾斜の斜面ほど高くなっている.山頂緩斜 面領域は,風化残積土を主体とした均一性が高い 土層であるため,斜面傾斜と土層厚との関係があ まりなく土層が全体的に厚いと想定される.実際 に,岩種は安山岩であるが,山地の土層厚を調査 した飯田・田中(1997)によると,山頂緩斜面領域 では,全般的に土層厚が2m 以上と厚い傾向にあ る事を指摘している.このような土層構造のた め,駆動力(松倉,2008,p.91)が大きくなる急斜 面ほど崩壊が多発したと考えられる.開析斜面上 部領域の崩壊地面積率は,5~30°区間では急傾 斜の斜面ほど高くなるが,30~45°の区間におい ては急傾斜になるに従い低くなり,45~55°の区 間ではほぼ一定となった.1953 年 6 月の豪雨に よって発生した門司・小倉地区の崩壊について本 調査と同様に崩壊地面積率と斜面傾斜(0~22°~ 32°~42°~52°~62°の 5 段階に区分)の検討 を行った竹下(1971)は,42°までの斜面は急傾斜 になるに従い崩壊地面積率が上昇するが,42°以 上の斜面は急傾斜になるに従い減少する事を明ら かにしている.そして,この理由について,崩壊 の発生は,斜面傾斜と斜面上の不安定土砂量の積 (駆動力と同意)が重要であり,傾斜があまりに急 になると不安定土砂量が減少するため,崩壊が発 生しづらくなったと指摘している.竹下(1971)と 本調査では,斜面傾斜の算出方法が異なるため, 一概に比較することは出来ないが,開析斜面上部 領域では,竹下(1971)の指摘と同様な傾向が認め られたと考えられる.すなわち,開析斜面上部領 域は,崩壊などにより発生した土砂が二次的に堆 積した崩積土を主体とした土層であるため,堆積 作用が卓越する30°以下の緩斜面では崩壊の発生 に必要十分な土層が斜面全体に分布する事が想定 される.そのため,駆動力が大きくなる急斜面ほ ど崩壊が多発したと考えられる.一方,30°以上 の急斜面は,花崗岩地域の土層厚を調査した逢坂 (1994)も指摘するように,急傾斜の斜面ほど限界 土層厚が薄くなる事が想定される.そのため,急傾 斜になるに従い駆動力が減少し,30~45°の斜面 では,急斜面ほど崩壊面積率が低下したと推定さ れる.45~55°の区間において崩壊地面積率がほ ぼ一定になった理由の詳細は不明であるが,急傾 斜になるに従う駆動力の増加と,土層厚が薄くな る事による駆動力の減少のバランスが取れたため 崩壊地面積率が一定になった可能性がある. 開析斜面下部領域の崩壊地面積率は,斜面傾斜 に関係なく0.5%程度と低い事がわかる.開析斜 面下部領域で発生した崩壊は,斜面傾斜に関係な く局所的に土層が厚く分布する箇所にて崩壊が発 生したため,傾斜と崩壊地面積率との間に相関が なかったと考えられる. 以上の結果より,斜面傾斜も考慮した崩壊の発 生しやすさは,30°以下の緩傾斜斜面では開析斜 面上部,山頂緩斜面,開析斜面下部の順に高く, 30°以上の急傾斜斜面では若干山頂緩斜面が高い 傾向にあるが,開析斜面上部と山頂緩斜面が同程 度であり,開析斜面下部が低いと言える. 次に,平均崩壊土砂量(Table.4)を比較すると, 山頂緩斜面,開析斜面上部領域にて発生した崩壊 は400 ㎥程度,開析斜面下部領域にて発生した崩 壊は200 ㎥以下であり,開析斜面下部領域で発生 した崩壊は,他の2 地区に比較し半分以下と小さ い事がわかる.これは,開析斜面下部領域で発生 した崩壊は,局所的な凹地に厚く堆積した土層が 崩壊することにより発生したため,面的な広がり が小さかったためと考えられる. 以上の結果から調査地域における集中豪雨によ る表層崩壊の崩壊危険度を判断すると,30°以下 の斜面では開析斜面上部>山頂緩斜面>開析斜面 下部となり,30°以上の斜面では開析斜面上部≒ 山頂緩斜面>開析斜面上部であると言える. 6. 結論 本研究では,2009 年の台風によって表層崩壊 が多発した中粒花崗岩分布地域において,山地の 開析程度と土層構造及び崩壊特徴との関係を明ら かにした.研究にあたって,航空レーザ測量デー タを用いた地形分類図の作成,地質調査,崩壊地 の地形量の解析,崩壊地の詳細現地調査を行っ た.そして,これらの結果に基づいて,山地の開 析程度と斜面断面・土層構造,及び崩壊メカニズ ムとの関係について考察を行った.最後に,山地

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の開析程度と崩壊危険度との関係について検討を 行った.得られた結果は,以下のように要約され る. (1) 調査地の山地の地形は,開析程度により,山 頂緩斜面,開析斜面上部,開析斜面下部の3 つ に区分され,開析斜面上部領域で発生した崩壊 が54 箇所(112 箇所/km2)と最も多く,次に 山頂緩斜面領域で23 箇所(77 箇所/km2)の崩 壊が発生し,開析斜面下部領域で発生した崩壊 は最も少なく21 箇所(42 箇所/km2)であっ た. (2) 航空レーザ測量データを用いた崩壊地の各種 地形量の解析により,崩壊土砂量は,山頂緩斜 面,開析斜面上部,開析斜面下部でそれぞれ, 432m3,410m3,173m3であり,開析斜面下部で 発生した崩壊は,崩壊土砂量が小さかった. (3) 山頂緩斜面領域は風化残積土を主体とした砂 質な土層であり,開析斜面上部及び開析斜面下 部領域は崩積土を主体とした礫質な土層であ る. (4) 山頂緩斜面,開析斜面上部,開析斜面下部領 域で発生したいずれの崩壊も,Nc10 以下の脆 弱な土層が除去されることにより発生してい た.山頂緩斜面領域,開析斜面上部領域で発生 した崩壊は,湿潤型崩壊であり,開析斜面下部 で発生した崩壊は,抜け落ち型の崩壊であっ た. (5) 崩壊の発生しやすさと崩壊規模から調査地域 における集中豪雨による表層崩壊の崩壊危険度 を判断すると,30°以下の斜面では開析斜面上 部>山頂緩斜面>開析斜面下部となり,30°以 上の斜面では開析斜面上部≒山頂緩斜面>開析 斜面上部である. 花崗岩類が深層まで風化しているか否かは地域に よって異なるかも知れないが,それが同じ条件で あれば,以上に述べたことは,防府だけでなく他 の花崗岩類分布域においても成り立つものと考え られる.山地の開析程度の分類を行うことにより 崩壊危険度評価に貢献できるようにしていきた い.今後,各開析程度の斜面において土層厚及び 詳細な土質試験を実施し,定量的な危険度評価を 実施予定である. 謝辞 本研究を進めるにあたり,国土交通省中国地方 整備局山口河川国道事務所には航空レーザデータ を提供して頂いた.山口大学の金折祐司教授に は,調査地の地質・地形についてご教授頂いた. また,独立行政法人土木研究所の武澤永純博士, 清水武志氏,秋山怜子氏,水谷 佑氏には現地調 査を手伝って頂いたほか,有益な議論をしていた だいた.これらの方に,深く感謝いたします. 引用文献 芥川真知・風間秀彦(1984) ゆるみによる砂質 斜面の不安定化と表層滑落:応用地質,25-3,32-40. Chigira, M (2001) Micro-sheeting of granite and its relationship with landsliding specifically after the heavy rainstorm in June 1999,

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参照

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