Linuxといえばコマンドラインで多くの操作ができるOSです。 しかし、サーバーだけではなくデスクトップPCやノートPCでも広 く使われるようになってきたため、今ではGUI(Graphical User Interface)から操作できるデスクトップ環境が⼤幅に強化されて きています。 初期の頃のデスクトップ環境は、複数の処理を同時実⾏できるマ ルチタスクOSの特徴を⽣かすためのシンプルなウィンドウシステ ム*でした。それが、WindowsなどのパソコンOSの進化に合わせ て操作性や⾒栄えが⼤きく向上しました。 アプリケーションを選んで起動できる「メニュー」、時計やネッ トワークの状態を⽰すアイコンを配置した「パネル」を備え、利⽤ 者がデスクトップ画⾯の背景やウィンドウの外観を様々に変えられ るようになりました(図1)。 図1●PCのデスクトップ環境として進化
2010年10⽉16⽇にリリースされたUbuntu 10.10 Desktop ⽇本語 Remixのデスクトッ プ画⾯です。 最近ではスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の普及 により、メニューから操作を選ぶのではなく、アイコンやボタンを マウス(または指)で選択して起動するデスクトップ環境になって きています。使いたいアプリケーションをすぐに起動できるよう に、よく使うアプリケーションの起動アイコンを配置した「ラン チャー*」も備えています(図2)。
図2●スマートフォンの影響を⼤きく受けたデスクトップ環境 2012年3⽉29⽇にリリースされたUbuntu 12.04 LTS ベータ2のデスクトップ画⾯で す。 このようなデスクトップ環境は、スマートフォンやタブレットで 成功している機能などを取り⼊れながら開発が進められています。 なので、まだ完成形とはいえませんが、LinuxではUbuntuや Fedora、WindowsではWindows 8がいち早くこのようなデスク トップ環境を採⽤してきています。数年後には⼀般的になってくる でしょう。
最新UbuntuとWindowsの画⾯
では、2012年4⽉26⽇にリリースされたUbuntu 12.04 LTS と、2012年中に出荷される予定のWindows 最新バージョン8のデ スクトップ画⾯を⾒ていきましょう*1。 (1)Ubuntu 12.04 TLS Ubuntu 12.04 LTSは、旧版のUbuntu 11.10と同様にデスク トップインタフェース*2の「Unity」を採⽤しています(図3)。 Unityはアプリケーションを選択起動する「Dash」と、Webブラ ウザーやオフィスソフト、ソフトウエア導⼊・削除ソフト 「Ubuntuソフトウェアセンター」、仮想デスクトップ*切り替 え、ゴミ箱などのアイコンを配置したランチャーで構成されます。 図3●Ubuntu 12.04 LTSのデスクトップ画⾯ Unityはアプリケーションを選択起動する「Dash」と、1クリックで起動するラン チャーで構成されます。 [画像のクリックで拡⼤表⽰] このDashとランチャーは、旧版に⽐べて⾒た目に⼤きな変更は ありません。ただし、“多くの中から選ばなくても使える”機能がい くつか加わっています。Dashのホーム画⾯は、ランチャーの上に■Ubuntu 12.04 LTS 図4●Dashホーム画⾯の違い Ubuntu 12.04 LTSでは最近使ったアプリケーションと最近使ったファイルの⼀覧が 並びます。 ⽇常的に使うアプリケーションが、数種類に絞られる⼈は多いで しょう。ファイルを直接開く場合も、最近使ったものをすぐに選べ ると便利です。Ubuntu 12.04 LTSなら、少ない操作で求める指⽰ ができます。よく使うアプリケーションは、デスクトップ環境を使 い込めば使い込むほど絞られてきます。 アプリケーションを初めて使うときは、Dash上部の検索テキス トボックスにアプリケーション名の⼀部を⼊れて検索します。下部 の定規や鉛筆が並んだアイコンをクリックして、出てきたアプリ ケーション⼀覧から起動することもできます(図5)。
図5●アプリケーションの選択
下部の定規や鉛筆が並んだアイコンをクリックすると、アプリケーション⼀覧が表⽰され ます。
操作メニューを「検索」
Ubuntu 12.04 LTSには「HUD」(Head Up Display)と呼ぶ 新機能があります。HUDは、アプリケーションの操作メニューを キーワードで検索して使えるようにしたものです。標準では、アプ リケーションを起動した後で、[Tab]キーを押すと、Dashの検索 ボックスと同じ位置にメニュー検索⽤のテキストボックスが表⽰さ れます(図6)。この検索⽤のテキストボックスにメニューの名前 の⼀部を⼊⼒すると、関連するメニューがその下に表⽰されます。 その中から該当するものを選ぶだけで操作が実⾏されます。 図6●「HUD」(Head Up Display) アプリケーションの操作メニューを検索できます。 これまでと同じように、マウスを使ってメニューを選ぶ⽅が楽な 気もしますが、次世代のデスクトップ環境を作る上でHUDの機能 は⽋かせません。HUDではメニューを1カ所で管理し、かつ⾔葉で 選択できます。スマートフォン「iPhone」にも「Siri」という⾳声 認識機能がありますね。PCが備えるすべての機能をHUDに集めて おき、Siriのような⾳声認識機能と組み合わせれば、⽂字⼊⼒の⼿ 間が省けて、クリックやタップすら不要になるかもしれません。 キーボードやマウスがないタブレットなどでは、とても便利そうで す。 Ubuntu 12.04 LTSのデスクトップ環境では、このような機能を ⽤意していますが、使ってみて気に⼊らなければカスタマイズした り変更したりできます。Linuxではデスクトップ画⾯も1つのソフ トウエアなので、⾃由に⼊れ替えられます。⼊れ替え⽅法やデスク トップ画⾯のカスタマイズ⽅法は、次回以降で紹介していきます。 (2)Windows 8
図7●Windows 8のデスクトップ画⾯ カラフルなタイル上のボタンをクリック(またはタップ)すると、アプリケーショ ンが起動して目的の操作を実⾏できます。 [画像のクリックで拡⼤表⽰] 従来と同様のデスクトップ画⾯も⽤意されています。左下の「デ スクトップ」のタイルをクリック(またはタップ)すると開きま す。開いたデスクトップはとてもシンプルで「スタート」メニュー はありません(写真1)。左下にマウスを移動すると最初の画⾯に 戻れます。 写真1●従来型のデスクトップ画⾯ 「スタート」メニューはありません。 Webブラウザーやメールクライアント、写真編集ソフト、⾳楽 や動画再⽣ソフトなど、個⼈ユーザーが必要なものはタイルをク リック(またはタップ)するだけで使えます。他のソフトを使う場 合は、まず最初の画⾯で右クリックし、下部に表⽰された「すべて のアプリ」アイコンをクリック(またはタップ)します(図8)。 すると、インストールされているアプリケーションの⼀覧が表⽰さ れます。その中から目的のアプリケーションを探してクリック(ま たはタップ)して起動します。 図8●アプリケーションを選択する 画⾯で右クリックし、下部に表⽰された「すべてのアプリ」アイコンをクリック (またはタップ)すると、アプリケーション⼀覧が表⽰されます。 [画像のクリックで拡⼤表⽰]
Windows 8のデスクトップ画⾯は、⽶Microsoft社が1社で開発 しているので、操作の統⼀性が取れています。動作もとても軽快で す。 Windows 8のような新しいデスクトップ環境を備えるOSが登場 してくると、多くの開発者をかかえるLinuxやオープンソースソフ トウエアにもよい影響を与えます。このデスクトップ環境をヒント に、より洗練されたデスクトップ環境が⽣まれるかもしれません。