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1 目次序章第一章航空施策の展開及び国内航空市場の発展第一節 2015 年の政府活動報告における規制改革の注目ポイントについて第二節航空輸送需要のさらなる増大と課題第二章航空事業分野における新規参入と課題第一節 LCCの急速に発展の軌道に乗る背景とその実態第二節高速鉄道の発展に伴う航空事業分野に与え

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Kobe University Repository : Kernel

Title

中国の航空事業分野における規制改革と競争政

策(Regulatory Reform and Competition Policy in the

Chinese Aviation Industry)

Author(s)

施, 海淵

Citation

六甲台論集. 法学政治学篇,62(2):1-33

Issue date

2016-03

Resource Type

Departmental Bulletin Paper / 紀要論文

Resource Version

publisher

URL

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009212

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目 次 序章 第一章 航空施策の展開及び国内航空市場の発展  第一節 2015年の政府活動報告における規制改革の注目ポイントについて  第二節 航空輸送需要のさらなる増大と課題 第二章 航空事業分野における新規参入と課題  第一節 LCCの急速に発展の軌道に乗る背景とその実態  第二節 高速鉄道の発展に伴う航空事業分野に与える影響 第三章 航空事業分野における規制緩和とLCCの急成長などの動向  第一節 航空事業分野における規制緩和とLCCについて  第二節 急速に発展する中国市場のLCCとその市場戦略について  第三節 北京の新空港プロジェクトの動向 第四章 航空事業分野における規制改革と競争政策  第一節 混雑航空の発着枠(スロット)配分問題  第二節 規制改革と競争政策上の問題  第三節 航空事業分野における連絡運輸・共通切符と独占禁止法の関係

中国の航空事業分野における

規制改革と競争政策

施   海 淵

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序章

中国経済は世界金融危機後、2010 年にいち早く力強い回復ぶりを見せた。その景気回復 の波に乗った航空業界には、過去最高の利益がもたらされた。大韓航空が 2010 年 12 月に発 表した中国市場報告によると、大陸部市場における同社の 2010 年旅客輸送部門の売上高は、 前年同期比 33 %増の 2 億ドル、貨物輸送部門は同 35 %増の 5 億 4 千万ドルにそれぞれ達した。 このうち、中国発米国路線の売上高総額は、同52%と大幅に増加した(1) 中国の航空会社は規模では決して世界最大ではないが、中国経済の急成長と中国航空市場 の潜在力が、中国航空会社に対する投資家の信頼をいっそう高めている(2) 中国の飛行機利用者は中華人民共和国建国当初の1950年、飛行機の利用者は延べ1万人に すぎなかったことに対して、2008年にはすでに、延べ1億9200万人にも達した。 資料によると、建国当初の1950年、中国の民間航空は7路線しか運営されておらず、就航 都市も 8 カ所しかなかった。民間航空の旅客輸送量は延べ 1 万人、貨物輸送量は 157 万トン キロ・767 トンであった。しかし、2008 年の旅客輸送量は延べ 1 億 9200 万人、貨物輸送量は 376 億トンキロ・407 万トンに達した。更に、2012 年の民間航空の旅客輸送量はすでに 3 億 人の大台を突破して、3 億 2 千万人に達している。中国はすでに米国に次ぐ世界 2 位の民間 航空大国となっている。 中国の民間輸送空港は 2008 年末までに 160 カ所に達し、定期路線は 1532 本にのぼった。 大陸部の 150 カ所に定期便が運航するようになり、海外の都市も 104 カ所が中国から結ばれ るようになった。中国で保有されている民間航空機は計1259機にも達した。 国際航行運送協会(以下においては、英文の略語の「IATA」と略称する)によると、 2010 年の世界航空業総利益のうち、アジア・太平洋地域の航空会社によるものが 77 億ドル と、過半数を占めるということであった。この数値は、同地域で過去最高の利益額となり、 中国市場の力強い増加によるところが大きいと言えよう。航空会社別にみると、中国国際航 空は時価総額 200 億ドルで航空会社のトップに立ち、シンガポール航空とキャセイ航空がそ れに続いて、中国南方航空は時価総額 110 億ドルで第 4 位となった。これは、アジア・太平 洋地域の航空会社の軒並みずば抜けた利益を挙げていることを示すだけではなく、同地域の (1) 中国航空市場の繁栄ぶりは、エールフランス・KLM大中国区のMark Arxhoek販売部長も高く評 価し、「見通しの明るいこの中国市場で、我々はこの得難いチャンスを逃さず、利益増を図る」と意 気込みを示している。同社の 2010 年の中国市場旅客輸送量は 40 %増、貨物輸送も 3 割以上増加した ということであった。2010年12月20日付「北京青年報」の報道による。 (2) 2010年12月20日付「人民日報」の報道による。

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航空会社、特に中国の航空会社を、投資家が非常に有望視していることを裏づけている(3) 改革開放政策が実施されて以来、中国民間航空市場の規模は拡大を続け、輸送能力は着実 に向上し、路線ネットワークも不断に改善してきた。以前は紹介状がなければ乗ることもで きなかったのに対し、民間航空業の高速発展によって、飛行機は、一般市民も利用できる交 通手段となった。 すばやく快適な空の旅は人々に歓迎されている。中国民間航空の旅客輸送量は 2004 年に 初めて年間延べ 1 億人を超え、2006 年には延べ 1 億 6 千万人を突破した。自費での利用は公 費での利用をすでに超え、55%に達している。 資料によると、中国の民間定期便の貨物輸送量(トンキロ)は 1978 年、国際民間航空機 関の加盟国中 37 位にすぎなかった。その順位は 05 年末までに 2 位に上がり、2009 年 9 月時 点でも同じポジションを維持している(4) 最近、南アフリカ航空、スイス航空、シンガポール航空、ルフトハンザ・ドイツ航空、ス カンジナビア航空をはじめとする世界の航空会社が、相次いで中国市場に焦点を合わせ、中 国人観光客の海外旅行をより便利にするため、直行便の路線やチャーター便の路線をいくつ も開通させている。 南アフリカ航空は 2012 年初め、北京とヨハネスブルクを結ぶ直行路線を開通させ、大陸 部・南アフリカ間の直行便がついに実現した。同便は週 3 便、飛行時間は約 15 時間であり、 これまで乗り継ぎにかかっていた時間が大幅に短縮された。 スイスインターナショナルエアラインズは2012年5月に北京・チューリヒ間の直行便を開 通し週 7 便で運航している。同社は上海と香港への便をすでに運航しており、北京はサービ スを展開する3番目の都市となった。 シンガポール航空は 1985 年に中国市場に進出して以来、中国を重要市場の一つと位置づ けてきた。2012年3月25日からは、同社と子会社の地域航空会社・勝安航空(シルクエアー) (3) 国際航空運送協会(IATA)のトニー・タイラー理事長(最高経営責任者(CEO)を兼任)が 2012 年 6 月 7 日に北京で述べたところによると、その時、世界の航空企業は燃料価格の高騰、グローバル 経済の低迷、欧州連合(EU)の炭素排出権取引をめぐる計画といったさまざまな課題に直面していた。 しかしながらその課題を前にして、中国の航空会社は力強く成長しており、2011 年は世界の航空会 社の利益のうち 2 分の 1 が中国の航空会社のものであった。また旅客数は 3 億人、売上高は 576 億ド ルに上り、中国は世界 2 位の航空市場に成長したということである。タイラー理事長によると、旅客 輸送量を基準とすれば、中国の航空会社は世界の 10 大航空会社のうち 3 社を占めている。IATAに加 盟する会社は 19 社で、うち 11 社が大陸部の会社である。中国の航空インフラの発展規模もこれまで にないほど大きなもので、2011年から2015年にかけて新空港70カ所が建設され、2020年までに計97 空港が新たに建設される見込みである。2012年6月8日付「人民日報」の報道による。 (4) 2009年9月4日付「人民日報」の報道による。

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とで毎週100便以上を運航し、大陸部とシンガポールの間を結んでいる。北京発便は週28便、 上海発便は週 35 便、広州からシンガポールへの直行便は週 12 便に上る。過密な便数と路線 網によって、中国の旅客に便利で迅速な選択肢を提供し、シンガポールを中継地として、同 日内にオーストラリア、ニュージーランド、西アジア、アフリカ、欧州などの目的地に出発 することが可能になっている。 全日本空輸(ANA)はこれまでに中日路線 21 本を開通し、中国の 11 都市から日本の主要 空港へ毎日 26 便の直行便を運航している。ANA はスターアライアンスに加盟する中国国際 航空との間で他社に先駆けてコードシェアを実現し、カバー範囲が最も広い中日間の航空路 線ネットワークシステムを構築した。中国を出発する観光客は、その日のうちに日本のほと んどの都市に到着することが可能になった。 このように、世界の航空会社は中国での発展をますます重視するようになっており、これ は中国の巨大な市場空間と切っても切り離せないことを示している。中国は世界の航空輸送 量の増加に最も大きく貢献することが予想される。 また、世界の航空会社は北京、上海、広州などの一線都市だけでなく、二線都市にも目を 向け始めている。武漢、西安、瀋陽、廈門(アモイ)、青島といった二線都市には、航空機 を利用して出入国する旅客がすでに多数あり、国際路線を増やして旅客の伸びに対応する必 要に迫られている。 ルフトハンザ・ドイツ航空は2012年3月に瀋陽・フランクフルト路線を開通し、瀋陽桃仙 国際空港初の欧州への直行路線となった。毎週火曜、木曜、土曜に瀋陽を出発し、月曜、水曜、 金曜に瀋陽に到着する。この路線は瀋陽にとって真の意味で初めての欧州路線であり、同路 線開通によって東北 3 省の旅客は上海や北京を経由しなくても欧州に行けるようになり、移 動時間が大幅に短縮されるということになる。 勝安航空は成都、重慶、廈門、深セン、昆明、長沙などに拠点を設置した。2012年4月24 日にはシンガポール・武漢直行便を開通し、週 3 便を運航して、華中エリアや華南エリアか らの旅を便利にするサービスを提供している。 フィンエアーは2012年5月から、重慶・ヘルシンキ路線を開通し、これは重慶にとって初 めての欧州直行路線であり、西部地区にとって初めての欧州直行路線でもある。開通当初は 週4便を運航し、年間のべ約10万人の旅客を見込んでいる。 韓国の大韓航空は近く韓国から桂林へのチャーター便 22 便を運航し、韓国の旅客を桂林 観光へと運ぶ予定である。2011 年末、同航空は中国の 23 都市へ 30 本の路線を開通している。 湖北省観光局との間で調印した戦略的協力合意により、今後は各路線の便数を適宜増やした り、ソウル・武漢直行便を開通したりして、武漢を韓国人観光客の中国各地への移動に際し ての最も重要なターミナルにする計画である。 このように、世界の航空会社が中国市場に進出する時には、さまざまな位置づけを行い、

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特色あるサービスを備えてやってくるのが常である。中国の旅客によりよいサービスを提供 するため、南アフリカ航空は北京・ヨハネスブルク直行便に中国語が話せる乗務員を 1 人以 上配置し、スイスインターナショナルエアラインズは北京・チューリヒ間のすべての便に中 国籍の乗務員を配置している。 ANA は中国語のホームページの充実を図り、中国の旅客のネット予約を可能にしている。 日本国内では中国人旅客に便宜を図るため、各地の空港カウンターすべてに中国語が話せる 人員を配置し、表示や案内などはすべて中国語を併記し、同社の公式ブログでは、無料で日 本を体験できるさまざまな機会を提供している。 シンガポール航空は中国を出発するすべての便のすべての座席に、娯楽システムの「銀刃 世界」を装備し、中国語のシステム操作案内を提供している。旅客は同システムを利用して、 テレビを見たり、ゲームをしたり、音楽を聴いたりすることができる。中国を往復するすべ ての便に中国籍の客室乗務員を配置し、中国の旅客によりよりサービスを提供することを目 指している。中国籍でない客室乗務員も中国語でのやりとりが可能である。中国市場をにら んだキャンペーン活動も恒常的に展開しており、2012 年 5 月 1 日からは、毎月 1 15 日の間 に同社または勝安航空の公式サイトを訪れるだけで、2 カ月先までの航空券を割引価格で予 約購入することができるというキャンペーンを行っている(5) エアバス社はロンドンで 2012 年 9 月 4 日、「2012 − 2031 年のグローバル市場の見通し」を 発表し、約 20 年後に中国国内の航空旅客数が米国を上回り、世界最大の国内航空市場とな (5) 2012年5月2日付「人民日報」の報道による。

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ると予想している(6) 更に、エアバス社が2014年9月に発表した世界航空市場予測によると、今後20年間(2014 ∼ 33 年)に世界の航空旅客輸送量の年平均増加率は 4.7 %に達し、旅客機(座席数 100 席以 上)と貨物機合わせて 3 万 1400 機が新たに必要となり、価格にして総額 4 兆 6 千億ドル(約 503 兆 1020 億円)に相当するということである。現在、世界の稼働中の旅客機・貨物機は 1 万 8500 機に上り、33 年には 3 万 7500 機に達するとみられ、約 1 万 9 千機の需要がある。燃油 効率の低い旅客機・貨物機約1万2400機がまもなく現役を退き、新しい機体に代わることも 予想される。また今後 10 年以内に、中国の国内航空市場は世界最大の航空市場に成長する 見込であると発表した。 報告によると、アジア、中南米、アフリカ、中東などの新興市場の経済成長ペースが発達 した地域を追い抜き、2033 年にはアジア地域の中産階級が現在の 4 倍になり、世界では中産 階級の割合が33%から63%に増加するということである。都市化の進展と富の集中により、 世界では超大型規模の航空都市の数が倍増して、91カ所に増えると予想している(7) (6) 同報告書によると、旺盛な需要によるけん引を受け、今後 20 年間の世界航空市場において、座席 数 100 席以上の航空機が 2 万 7350 機必要となる。世界の航空旅客数は今後 20 年間、年間平均 4.7 %の 増加率を維持し、同期間中、1 万 350 機の航空機が退役し、燃費の良い新型機がこれに代わる。2031 年の世界の就航中の旅客機数は、現在の1万5550機から3万2550機に増加するということである。 エアバス社は、「中産階級の人口増、都市化の加速が、世界航空旅客数の増加の主因」と指摘した。 今後 20 年間で、世界の中産階級は 50 億人に倍増する見通しである。2031 年になると、世界の大都市 数も倍増し、92都市に達する。世界航空輸送量の90%以上は、これらの大都市間に集中するとしている。 エアバス社のジョン・リーヒー顧客担当COOは、「今後 20 年間、世界の航空輸送量は絶えず増加 するが、世界の航空輸送量ランキングによると、トップ 4 はすべて国内航空市場となっている。2031 年、航空輸送量が最大の主要国内航空市場には、米国・中国・西欧・インドが含まれ、世界航空輸 送量の 3 分の 1 を占めると見られる。約 20 年後、中国の国内航空市場の航空旅客数は米国を上回り、 世界一の航空旅客市場となる」と分析した。 エアバス社はまた、「今後20年間で、新興国の航空輸送量の成長が、全体の成長の過半数を占める」 とした。地域別に見ると、アジア太平洋地域で新たに増加する航空機の需要は、世界全体の 35 %を 占める。欧州と北米の需要がこれに続き、それぞれ21%を占めるということである。 2011 年発表された報告書の中で、エアバス社は中国航空市場が 7.2 %の年間平均成長率を維持する と予想していた。同社は2012年、中国市場に対する予想を上方修正した。2012年9月5日付「人民日 報」の報道による。 (7) エアバスのジョン・リーヒ最高商務・顧客担当責任者は、「航空産業は急速に成長しており、私た ちの最新の予測でも目下の長期的な成長の勢いが認められる。北米や欧州のような成熟した航空エ リアが持続的に成長するとともに、アジアの成長がより注目を集める見込だ。今後 10 年以内に、中 国の国内航空市場は世界最大の市場になることが予想される」と話している。2014年9月30日付「人 民日報」の報道による。

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中国の中央政府はすでに、『一ベルト、一ロード(シルクロード経済ベルト、21 世紀海上 シルクロード)』、『北京・天津・河北の共同発展』、『長江経済ベルト』の 3 大戦略を重点的 に実施すると表明している。すなわち、2015 年以降の経済成長はおそらく、空間的な配置 によってもたらされた新たな成長の極によってけん引されるということである。 これら 3 大戦略と既存の地域発展全体戦略は、互いに矛盾するわけではない。例えば、長 江経済ベルトは中部・東部・西部をつなぎ、発達した地域が立ち遅れた地域の発展をけん引 するというものである。2014 年 9 月に中国国務院が発表した「黄金水道に依拠した長江経済 ベルト発展推進に関する指導意見(ガイドライン)」では、鉄道・道路・航空・パイプライ ンの建設を統一的に計画し、総合立体交通回廊を建設すること、および世界クラスの産業ク ラスターと都市群を建設することが提起された。ここからも、地域連動の構想が伺える。 運輸事業分野においては 1970 年代後半以来世界的な規模で規制緩和、競争導入策が打ち 出されてきた。周知のように、先鞭を付けたのは 1978 年の規制緩和法によってほぼ完全な 自由市場が実現したアメリカの国内航空であり、この改革は運輸のみならず電気通信、金融、 エネルギー部門の競争導入につながった。同様の動きは 1980 年代にサッチャー政権下の英 国にもみられた。英国の場合、国営企業というある意味ではきわめて強い公的規制が存在し ており、規制改革のプロセスは公企業の民営化をともなって行われた。 規制緩和の政策目的とするところは、①経済的・効率的かつ低廉な航空サービスの確保、 ②効率的な運営がなされている航空企業の利益保護、③市場での独占排除と反独占的行為の 禁止、④市場への参入促進による事業拡大と中小航空企業の事業力強化による航空産業全体 の強化等であった。航空貨物輸送規制緩和法は、旅客輸送と同様に国内航空貨物輸送につい て参入・撤退の自由化、運賃の自由化を定めており、これによって従来、特定地域内で運行 していた中小旅客航空企業やフォワーダーがキャリアと同様の運行の資格を有するようなな り、国内旅客及び貨物路線の開設・運行が可能となった。 一方、中国の航空輸送は、参入と価格設定に関する直接規制のみならず公的出資や行政主 導による企業統合にみられるように、事業者の意思決定余地はきわめて限定されていた。こ の種の規制は負担者の側の不公平感を喚起し、また市場の競争圧力を欠いた事業運営は内部 非効率を発生させる。結局利用者には「高い航空運賃」を押しつけられているとの印象が否 めず、アメリカの象徴的な航空規制緩和の情報が中国に及ぶとともに、競争導入の要求は一

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段と高まることになった(8) 中国の場合、事業法である「中華人民共和国民用航空法」が 1996 年 3 月 1 日に施行され、 2009 年 8 月 27 日に幾つか刑事責任の条文が改正されたものの、規制緩和及び競争導入に触 れた条文全く見当たらない。競争が実体的に機能するかどうかはそのための法的前提が事 業法においては満たされていないと言ってよい。一方、独占禁止法は一般法として 2008 年 8 月 1 日に施行されている以上、もちろん航空事業分野においても適用し、競争制限的な問題 については所管官庁との協働することは望ましいことは言うまでもない。さらに、物理的な 問題として新規参入を阻害するポトルネック施設が存在する場合には有効な競争は担保され ない。航空事業分野の場合、ポトルネックに成り得る施設は数多く存在するが、とりわけ混 雑空港における発着枠(以下では、スロットと呼ぶ)問題が競争上の隘路になることがあり、 (8) 日本の場合は 1985 年、航空輸送における競争の促進の促進を提唱した運輸政策審議会の中間答申 が出され、従来、航空憲法と呼ばれるほどの重みをもっていた「45・47 体制」が廃止され、さらに その翌年の最終答申にもとづく新政策によって、日本航空の完全民営化とともに事業分野規制の緩 和ないし競争原理の導入の促進が行われた。これは、米国の規制緩和による市場の再編のもとで強 まった外圧の影響にもよる。 結果的に政府は、1999 年に航空法を改正し、事業免許を許可制に改め、運賃についても事後変更 命令付きではあるが、原則として届出制とした。つまり、事業法の条文から判断する限り日本の国 内航空も米国同様、事業参入と価格設定についてほぼ自由化されたことになる。

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そのあり方について議論することが必要である(9) また、過度の介入を避けて規制の透明性を確保するためには、過去のしがらみから航空会 社が解放されるよう、規制当局の組織・役割を見直す必要がある。さらに、経営資源が寡占 3社(10)に偏在している実態を踏まえ、掠奪的価格の設定などによる競争の実質的な制限行為 を防止するため、独占禁止執行機関の監視機能を高めことが求められる。

第一章 航空施策の展開及び国内航空市場の発展

第一節 2015年の政府活動報告における規制改革の注目ポイントについて 2015 年の中国経済の「新常態」(ニューノーマル)を迎えた状況下、中国政府はいかなる 手を打っていくのか。第12期全国人民代表大会第3回会議で提出され審議に付された政府活 動報告はこの疑問に、実務的・全面的でプラスのエネルギーに満ちた回答を出してくれた。 約 1 万 8000 字にのぼる 2015 年の政府活動報告から中国の 2015 年の政府活動の「ルートマッ プ」となる規制改革の注目ポイントを抜き出してみた。 1、今年も一連の行政審査・認可事項の撤廃や移譲を進め、非行政許可の審査・認可を撤廃 (9) 一方、日本の航空事業分野における規制緩和も、一気に実現したものではなく、1986 年の「45・ 47 体制」廃止から 1999 年の改正航空法施行による需給調整規制廃止に至る一連の政策変更を通じて、 段階的に行われてきたものである。まず参入に関しては、「45・47 体制」とよばれる大手 3 社間の事 業区分が廃止され、新たな路線参入ルールとして複数社運航を認めるダプルトリプル政策が導入さ れた。その後、同政策の基準値が数次に亘り引き下げられ、1997 年に廃止されることとなり、航空 会社によるある程度自由な路線設定が可能になった。また、1998 年に新規企業の参入を認める参入 規制の実質的な緩和がなされた。運賃については、1994 年に 50%以内の割引が認可制から事前届出 制となり、1995 年に一定の範囲内で運賃を自由化した幅運賃制が導入された。このように、90 年代 後半に参入・路線および運賃における規制緩和の進展がみられた。さらに 1998 年に運輸政策審議会 において需給調整規制廃止を基本とする新たな事業制度が提案され、これを受け、1999年6月に航空 法が改正し、2000年2月に施行されたのである。改正航空法施行に伴い、参入規制は路線免許制から 事業単位許可制へと変更された。定期・不定期の事業別規制は一本化され、路線・便数設定とその 変更も自由化された。また、1997 年における羽田の新規発着枠の配分を契機に、路線免許と切り離 した発着枠(スロット)使用がある程度認められようになった。なお、混雑空港の特例として、スロッ ト利用の許可制、スロットの回収・再配分制度、路線・便数変更に関する認可制が設けられた。 運賃は事前届出制へと移行し、上限・下限規制も撤廃され、航空会社による自由な運賃設定が可 能となった。一方、不当運賃への変更命令制度が新設された。このように、需給調整規制廃止によ る参入・運賃自由化に伴い、日本国内線に、米国と同様、自由競争市場が導入されることとなった のである。 (10)すなわち中国国際航空、中国南方航空及び中国東方航空の三社のことである。

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し、規範的な行政審査・認可の管理制度を構築する。 2、市場参入のネガティブリストを制定し、省級政府の権限リストと責任リストを公表する。 3、全国統一の社会信用コード制度と信用情報共有交換プラットフォームを構築する。 4、政府による投資プロジェクトの審査・認可の範囲を大きく縮小し、審査・認可の権限を 移譲する。 投資プロジェクトの事前審査・認可を大幅に減らし、プロジェクト審査・認可の オンラインでの一括処理を実施する。民間投資の市場参入を大きく緩和し、社会資本による 株式投資ファンド設立を奨励する。 5、インフラや公共事業などの分野では、政府と社会資本の協力モデルを積極的に推進する。 6、政府が価格を決める種類と項目を大きく減らし、競争の条件を備えた商品やサービスの 価格は原則としてすべて自由とする。 7、ほとんどの薬品の政府による価格決定を取り消し、一連の基本的な公共サービスの費用 徴収の価格決定権を移譲する。 8、法で定められた秘密情報以外は、中央と地方のあらゆる部門の予算・決算は公開とし、 社会の監督を全面的に受けるものとする。 9、条件の整った民間資本による中小銀行などの金融機関の法に基づく設立を推進する。成 熟したものから順に許可するものとし、限度額は設けない。 10、預金保険制度を打ち出す。 11、人民元レートを合理的でバランスの取れた水準で維持し、人民元レートの双方向の変動 の柔軟性を高める。 12、「深港通」(深セン・香港の株式市場相互乗り入れ)の試行を適時に始動する。 13、株式発行登録制改革を実施する。 14、災害保険と個人税収繰延型商業養老保険を打ち出す。 15、国有資本の投資会社や運用会社の試行を加速し、市場化運用のプラットフォームを構築 し、国有資本の運用効率を高める。 16、輸出還付税の負担制度を整備し、増量部分は中央財政が全額負担し、地方と企業を落ち 着かせる。 17、外商投資産業指導目録を修正し、サービス業と一般製造業の開放を重点的に拡大し、外 資の投資制限項目を半減させる。すべてを登録対象とし一部のみを審査・認可対象とする管 理制度を全面的に推進し、奨励項目の審査・認可権を大幅に移譲し、投資前の内国民待遇と ネガティブリストを合わせた管理モデルを積極的に検討する。 18、登録制を中心とした対外投資管理方式を実行する。 19、シルクロード経済ベルトと 21 世紀海上シルクロードの協力を推進する。「コネクティビ ティ」「効率的な通関プロセス」「国際物流大通路」などの建設を進める。中国・パキスタン、 バングラデシュ・中国・インド・ミャンマーなどの経済回廊を構築する。

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20、中韓と中豪の自由貿易協定を早期に締結し、中日韓自由貿易区の交渉を加速し、湾岸 協力会議やイスラエルなどとの自由貿易区の交渉も推進する。中国ASEAN 自由貿易協定の バージョンアップの交渉と地域の全面経済パートナー協定の交渉の妥結に努め、アジア太平 洋自由貿易区を構築する。 第二節 航空輸送需要のさらなる増大と課題 中国の航空輸送は、旅客、貨物ともに急激な発展を遂げ、高速鉄道が出現し、大きな発展 を遂げたまでには、国際旅客と国内ビジネス長距離旅客の大半が航空を利用し、貨物につい ても、付加価値の高い製品を中心に幅広く利用されるに至り、遠距離高速輸送の主要な担い 手として位置付けられることとなった。 その理由としては、①所得水準の向上と産業活動の活性化により時間価値が高まり、こ のことは時間短縮効果が大きく快適性にも優れた航空輸送の特性に合致したこと、及び② ジェット機の就航、ジヤンボ機の就航等の一層の高速化・大型化の進展及び燃費向上等の技 術革新による生産性の向上により、輸送コストが相対的に低下し、実質的な航空運賃が低下 したこと、が挙げられる。 中国で 2014 年 12 月の時点において、年間旅客数が 1 千万人を超える空港はすでに 24 港に 達した。北京首都国際空港の年間旅客数は 5 年連続、世界第 2 位の座をキープした。また、 上海浦東空港の貨物取扱量は7年連続世界第3位であった。2014年12月25日に開かれた「全 国民用航空工作会議」において、中国民用航空局(民航局)がここ数年、航空経済の発展推 進を大々的に提唱しており、各地で民間航空業の発展ブームが巻き起こったことが明らかに なった。現時点で、全国 62 都市が計 54 空港を中心にした、63 カ所の臨空経済区建設を計画 している。2014 年 11 月の時点で、全国の貨物航空会社は 51 社、一般航空会社は 238 社、貨 物機は 2334 機、一般航空機は 1621 機にそれぞれ達した。航空貨物の取扱いが認可された空 港は 202 港に増え、うち年間貨物取扱量が 1 千万トン級の空港は 24 港、3 千万トン級の空港 は7港となったのである。 統計データによると、2014 年 1 年間の貨物輸送量はトンキロベースで 742 億(前年比 10.4%増)、旅客数は延べ3億9千万人(同10.1%増)、貨物取扱量は591万トン(同5.3%増) にそれぞれ達している。2014 年 1 月から 11 月の国内航空業全体の利益は 299 億 4 千万元(約 5800 億円)であった。民航局の予測によると、2015 年の貨物輸送量はトンキロベースで 817 億2千万(前年比10.2%増)、旅客数は延べ4億3千万人(同10.0%増)、貨物取扱量は627万 トン(同6.0%増)となったのである(11) (11)2014年12月26日付「人民日報」の報道による。

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中国では近年、航空需要が拡大していることを背景に、中国南方航空(CZ)もパイロッ トが不足している問題を抱ええ、同社は経営再建中の日本航空(JAL)はワイドボディ双発 ジェット機「ボーイング777のパイロット45人を2012年3月にレンタルしたことにより、少 しでもその問題が解消できるようと図っている。 一方のJAL は経営破綻後、燃費が悪いジャンボ機の全廃や、赤字路線からの撤退を急速 に進め、パイロットに一時的な余剰が出ていた。レンタル出向したパイロットの人件費は中 国南方航空(CZ)側が負担するため、日本航空(JAL)は年間数億円程度の人件費を節約 できると見込んでいる。 もっとも、現在、中国のほかに韓国でも、ジャンボ機を含めパイロットが不足しており、 パイロットレンタルのニーズが高まっている(12)

第二章 航空事業分野における新規参入と課題

第一節 LCCの急速に発展の軌道に乗る背景とその実態 航空需要の伸びがさまざまなタイプの航空会社の発展を後押ししており、全方位的なサー ビスの航空会社から格安航空会社(以下においては、LCC という)に、さらにはサービス にもコストにも配慮した航空会社へと幅広い発展を遂げている。アジアの航空市場には力強 い成長の潜在力があり、各タイプの航空会社がいずれも急速に発展している。2012 年には アジア・太平洋地域内の旅客および同地域に出かける旅客が世界の航空市場の総旅客数に占 める割合は33%に達し、2015年にはさらに37%に増える見込みである。 実際、中国を含むアジアのLCC 開発には大きな可能性がある。アジア航空市場において LCCのシェアは15%にとどまり、世界平均の23%や欧州平均の39%を下回る(13)。ここ数年 のアジア・太平洋地域のLCC 市場の急速な発展は、アジア経済の急成長によるところが大 きく、経済貿易、文化、科学技術などの分野で各国間の人の往来がますます密接になってい る。IATAの予測によると、2010年から2015年にかけて、世界の旅客総数はのべ35億5千万 人に増加する見込みである。前の 5 年間より増加するとみられる 8 億 7700 万人のうち、2 億 1200万人は中国路線の利用者だと予想される。 東南アジア地域の経済が力強く成長していること、ほかに信頼できる代替品がないことか ら、LCCは今後より急速な成長を遂げていくことであろう。 (12)2014年3月19日付「人民日報」の報道による。 (13)捷星公司のブルース・ブキャナン最高経営責任者(CEO)によれば、中国のLCC普及率は 5 %に 満たないということである。

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一方、日本は国内経済が不調で、一部のビジネス関係者は価格の安いLCC に乗り換えざ るをえなくなり、このことが日本のLCC産業の発展を直接的に促進している。 アジア内の資金調整がアジア・太平洋地域のLCC 発展を背後から支援している。例えば 日本のピーチ・アビエーションは全日本空輸(ANA)と産業革新機構、香港のファースト イースタン・インベストメントグループが共同出資して設立されたLCC である。エアアジ ア・ジャパンはANA とエアアジアが共同設立したものであり、ジェットスター・ジャパン の株式は日本航空(JAL)と三菱商事のほか、カンタス航空も 42 %を保有している。イン ドのスパイスジェットの筆頭株主であるマザーサングループは、インドの有名な大手財団で あり、業務範囲は航空産業や映画・テレビ産業に及んでいる。同グループの株式買い増しに より、スパイスジェットは今後のより堅実な発展に向けて力強い後ろ盾を得たことになる。 LCC は通常よりも座席を 25 %増やし、電子チケットや自動チェックインサービスを利用 するなどの方法により、価格面で優位に立っている。発展ぶりは急速で、伝統的な航空会社 にとって大きな圧力となっている(14) アジア最大のLCC でマレーシアに本部を置くエアアジアは、低価格戦略で市場拡大を続 け、現在は 24 カ国・地域の 80 都市に就航する 165 本の路線を運行している。日本発着路線 をみると、片道運賃は大手航空会社の半分以下である。2012 年 3 月 28 日に運営をスタート したエアアジア・フィリピンの価格は、シティグループがまとめた統計によるとライバル他 社より22 37%低いということである。 シンガポール航空が 100 %出資するLCC スクートは 2012 年内に運航をスタートする計画 である。シンガポール紙「連合早報」が伝えたところによると、スクートはシンガポールと 天津を結ぶ直行便を初めて開通させ、これを中国の二線・三線都市の航空市場にコマを進め るための第一歩にするということである。 「連合早報」によると、シンガポールのチャンギ空港のLCC ターミナルビルは急増する需 要に追いついておらず、2012 年 9 月に閉鎖され、2013 年からもっと大きなLCC ターミナル ビルの建設を始め、その新ビルは 2017 年にサービス提供を開始し、1 年間でのべ 1600 万人 の旅客がここを利用することが見込まれている。 インドのLCC も飛躍的に発展しており、観光やターミナルビルなどの関連産業も急速に (14)「韓国先駆報」(コリア・ヘラルド)によると、中国と日本のLCCが 2012 年内にもソウル発着の新 路線を開通する予定であり、韓国の航空会社はより大きな圧力を感じている。日本のピーチはこの ほど、2012 年 5 月 8 日に開通する関西国際空港と韓国の首都ソウルを結ぶ路線の航空券価格を発表し た。燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を含まない片道価格は 5280 2 万 3980 円であり、ANA、 JAL、大韓航空などの大手の 2 分の 1 以下である。日本国内市場をみると、ピーチの価格は親会社で あるANAのわずか3分の1にとどまることになる。

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発展している。LCC が価格面で十分なサービスを提供するとすれば、これまで国内線・国 際線ともに航空機の利用を考えなかった人々が航空機での旅を選択するようになり、新たな 市場ニーズが喚起されることになる。 LCC の乗客はその多くが観光旅行を目的とする人々であり、各地の観光地や旅行目的先 の政府はLCC に大きな期待を寄せている。ピーチは関西国際空港から長崎に向かう第一 便の機内で、テーマパークのハウステンボスのチケット抽選会を行った。同社の井上慎一 CEO は、長崎はアジアとの関係で長い歴史があり、アジアの観光客を引きつけるに違いな いと確信するとし、この路線を気軽に利用してほしいと呼びかけている。 日本の成田空港のある千葉県と成田市はLCC の就航を首を長くして待っていた。県は LCC の就航を利用して、経済特区を設立し、空港と東京を結ぶ鉄道路線や高速バス路線な どの公共交通設備を充実させて、経済に活力を与えたいとしている。成田市は市内の観光資 源の宣伝に力を入れ、サービス産業を通じて現地経済の発展を促進したい考えだ。空港周辺 のホテルもさまざまな準備を進めており、LCC がもたらすであろう巨大なビジネスチャン スに期待を寄せている。 第二節 高速鉄道の発展に伴う航空事業分野に与える影響 中国は高速鉄道の時代へと急速に進んでいる。これに伴い、中国の航空会社は国際航空市 場により多くウェイトをおくようになるとみられ、ひいてはアジア全体の航空業界に「中国 高速鉄道時代の衝撃波」となって伝わることが予測されている(15) 日本やフランスなどの先進国の例をみると、高速鉄道は安全で速く、快適で全天候型の輸 送方式の一つであり、現代交通輸送システムの重要な構成部分であり、輸送市場の競争局面 に重要な影響を与える存在である。中国の高速鉄道はスタートが遅かったが、急速に発展し ており、特に国内での投資拡大、成長促進を背景にして、未曾有の発展チャンスを迎えて いる。中国の中・長期鉄道網計画によると、2020 年には鉄道建設投資が総額 5 兆元を突破し、 営業距離は 12 万キロに上り、うち時速 200 キロ以上の区間は 1 万 8 千キロに達して、世界の 高速鉄道の総営業距離の半分以上を占める見込みである。 投資と技術とが両輪となって、中国は高速鉄道の新たな時代へと急速にコマを進め、国内 航空輸送業はますます大きな挑戦を受けることになった。一部の国内民用航空支線市場は高 (15)中国南方航空集団公司の司献民総経理(社長)は 2009 年 10 月 29 日に閉幕した 2009 年アジア航空 展望サミットで、「変幻自在で予測不可能なマクロ情勢に比べ、中国高速鉄道の急速な発展が航空業 界にもたらす影響は確実かつ明確で長期にわたるものだ。中国運輸市場の競争局面を根本的に変え、 国内の航空運輸企業の経営環境を大きく変え、アジアや世界の航空輸送の局面に間接的に影響を与 えることが予想される」と発言した。2009年10月30日付「人民日報」の報道による。

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速鉄道と競合しており、市場シェアを高速鉄道に奪われつつある。国内民用航空幹線市場は そのほとんどが高速鉄道のサブ路線のような状態に陥っている。国内で経済が最も発達し、 人口が最も密集する中心都市のほとんどが高速鉄道網のカバー範囲に入っており、民用航空 輸送市場の 80 %が高速鉄道からなんらかのダメージを受けている。北京・上海間の鉄道旅 行は乗車時間はほどほどで、運賃も相対的に安いため、多くの旅客が飛行機をやめて鉄道に 流れている。高速鉄道には安全、快適、時間が正確、輸送量が大きいといった優位点があり、 中・短距離路線では特にこうした特徴が活かされる。 現在中国三大航空グループのうち、南方航空の国内路線ネットワークが最も細かく、運航 量も最も多い。主なカバー範囲は中南地区や東北地区などで、高速鉄道から受けるダメージ が大きい。特に北京 瀋陽路線、北京 太原路線、上海 武漢路線の 3 つの旅客路線が最も大 きな影響を受けている。高速鉄道の強い競争力に迫られて、世界第 2 の民用航空大国として 立つために、中国の航空会社は比較的優位に立つ国際路線により多くのエネルギーを注がざ るを得ない。このことは国際航空市場の競争を加速させ、アジアの航空業界全体が中国高速 鉄道の衝撃波を間接的に受けるようになることを意味している。 例えば、北京 上海を結ぶ京滬高速鉄道が開通した。同鉄道のチケット価格は航空機のチ ケット価格よりも大幅に安くなっている。また、中国の各航空会社、旅行代理店および武漢 天河空港によると、高速鉄道の開通で武漢からの出発が便利になり、同市半径 600 キロ以内 の短距離航空便はすでに7割近くが運航を停止したということである。 武漢 南昌線の運航停止が 2011 年 3 月 1 日に発表された。これに先立ち、南京 武漢線もす べて運航停止した。2010 年 5 月以降、省内路線のうち武漢 宜昌、武漢 襄陽などの路線が相 次いで運航を停止している。武漢 宜昌鉄道の開通、武漢 恩施鉄道の開通予定、武漢 恩施 高速道路の開通の影響を受け、両市間のフライトは5便から2便に減った。 武漢の天河空港の概算によると、同空港発着の片道 600 キロ以内の短距離線はすでに 7 割 近くが運航停止、恩施、運城、太原の各便は残っている。片道 800 キロ前後の広州、上海な どの路線でも利用者が激減しており、東北、西北、西南の各方面のフライトのみ従来の利用 者数を維持している。 アナリストによると、武漢 広州高速鉄道、合肥 武漢旅客専用鉄道の 2 路線がいずれも武 漢を発着点とし、更に、武漢 北京高速鉄道が開通することにより、国内主要都市を 5 時間 でカバーする交通権が基本的に誕生するため、北京、広州、上海、杭州などの鉄道利用者は 今後さらに増えるということである。 中国の交通管理機関の統計によると、2011年の「春運(旧正月期間の帰省・観光ピーク)」 期間中、武漢 広州高速鉄道の平均乗車率は2010年同期比60%以上増えたが、天河空港利用 者数は延べ67万7700人で同8.52%減少、23年ぶりのマイナスとなった。 高速鉄道の追い上げに直面する中、各航空会社は次々に航空業界への影響が予想されると

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表明している。では、航空会社はいかにしてこの状況を打開していくのであろうか。 武広(武漢 広州)高速鉄道の開通による衝撃もさめやらぬ中、2011年6月に最高時速400 キロの高速鉄道車両が京滬高速鉄道上海区間(棗庄西 南京南 上海虹橋)で投入されること は、業界にとって大きな衝撃となった。ちなみに武広高速鉄道は完成からわずか 2 年で、す でに武漢 広州便のフライトスケジュールに影響をもたらしている。 中国民用航空局が発表した 2010 年全国空港利用者数ランキングでは、武漢天河国際空港 が 14 位と大幅にランクを落とした。全国の上位 20 空港を見ても、年間利用者量の増加率は 低く、わずか3%にとどまった。 南方航空湖北公司では、高速鉄道の影響で、武漢・広州間のフライトが毎日 8 便から 6 便 に減少した。東方航空武漢公司でも、武漢・上海を結ぶ高速鉄道の開通に伴い、武漢 上海 間のフライトが全盛時の20便から11便前後に縮小された。 京滬高速鉄道の二等席のチケット価格が 555 元であり、さらに北京から上海までの所要時 間が約 5 時間であることを考えると、民用航空と比べても十分な吸引力を持っており、かつ て航空便を利用していたビジネス客の一部が高速鉄道に流れるのは必至である。 航空機の利用では所要時間の問題がある。北京−上海間を例にとると、飛行時間はわずか 1 時間強ではあるが、市内から空港までの距離も長く、空港に着くまでの時間、空港から目 的地までの時間、搭乗手続き、セキュリティーチェック、飛行時間などを含めると4 5時間 はかかる。このため短期的に見ても、京滬高速鉄道は間違いなく打撃を与えることになろう。 また、民用航空業界では、フライトの定時到着率が近年最低レベルに落ち込んでいる。飛 行機の遅延は乗客にとっても日常茶飯事となっていることから、定時に到着する高速鉄道の

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開通は、北京 上海間のフライトに大きなマイナス影響を及ぼすことになる(16)

第三章 航空事業分野における規制緩和とLCCの急成長などの動向

第一節 航空事業分野における規制緩和とLCCについて 中国の航空事業分野を所管する直接の官庁である中国民用航空局は2012年8月に中国国家 発展改革委員会と共同で、国内航空券の値下げ幅の制限を排除することを決定した。航空会 社は市場の需要と供給の状況に応じて自主的に価格を確定することができるようになった。 航空会社は標準価格をベースにし、最高 25 %値上げすることができる一方、値下げ幅の制 限はないとしている。 中国民用航空局の夏興振副局長は 2013 年 11 月 5 日に「今後数年間は格安航空会社(LCC) などの低コストの航空産業の発展に力を入れ、低価格の航空券や各方面に通じるネットワー クを整えて、民用航空サービスを普通の人々に届ける必要がある」と述べている。 夏副局長は次のような見方を示している。すなわち、LCC の航空機調達、輸送価格、路 線参入などをめぐる政府規制の緩和を研究して、中国LCC 産業のためにより緩和された経 営環境を作り出さなければならず、同局は最近、国家発展改革委員会と提携して、国内の航 空旅客輸送の価格の下限についての規制を撤廃し、航空会社は市場の需給状況に基づいて価 格水準を自主的に確定できるようにし、こうすれば、LCC は価格的優位や大衆性といった 長所を存分に発揮できるようになるとしている。 (16)世界の運航関連情報を提供する米フライトスタッツ社のウェブサイトによると、世界の主な 61 空 港のうち、定時運航率が最低だった 7 空港は軒並み、中国大陸部の空港であった。このうちワースト 3は、上海虹橋空港(37.17%)、上海浦東空港(37.26%)、杭州蕭山空港(37.74%)。香港「南華早報(電 子版)」が2015年3月21日付で報じた。 今回の調査では、上記 3 空港のほか、深セン宝安空港、広州白雲空港、重慶空港、北京首都国際空 港が、「定時運航率世界ワースト7空港」に入っていた。 フライトスタッツの調査対象となった世界各地の 374 空港の中では、大阪の伊丹空港が定時運航率 94.56 %で首位となった。世界の主な 61 空港だけを見ると、東京の羽田空港がトップの座に輝き、定 時運航率は89.76%に達した。 中国民航管理幹部学院の鄒建軍氏は、「中国の空港管理は、需要に追い付いていないのが現状であ る上、空港ネットワークが少数の地域に偏っている」と指摘した。同氏はまた、「路線が北京、上 海、広州などの都市に集中しすぎており、このような状態は、管理側に大きな圧力をもたらしている。 一つの大空港に小さな問題が生じると、他都市数多くのフライトに影響が及ぶ恐れがある」と続けた。 アジア・太平洋地域だけで見ても、中国の各空港の状況は良いとは言えない。昨年実施されたア ジア・太平洋地域 121 空港に対する調査の結果、中国の空港のランキングは軒並み後ろの方であった。 2015年3月23日付「人民日報」の報道による。

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現在、世界には170社を超える格安航空会社があり、市場シェアは26%を超える。アジア・ 太平洋地域のシェアは約30%である。中国国内の航空市場では7%にも満たないことから考 えて、その発展には巨大な潜在力が秘められていると言える。 LCC とは、低価格の航空輸送サービスを提供する航空会社のことである。その安全性を 考察する前に、その発展の歴史とビジネスモデルに注目してみよう。 LCC は、効率化の向上によって低い運航費用を実現し、低価格かつサービスが簡素化さ れた航空輸送サービスを提供している。LCC は 1990 年初めに米国で出現し、そのビジネス モデルが世界に急速に広まった。飛行機に乗る際、多くの乗客は安全かつ早く目的地に着く ことを望み、それほど多くのサービスを受けることは望んでいない。LCCはそのようなニー ズに応え、低価格を実現することで、大手航空会社や鉄道などの乗客を取り込むことに成功 した。シェア拡大のため、LCC はお得なセット商品などを度々販売し、その割引幅は、主 流の航空会社を大きく上回っている。2001 年 9 月 11 日に米国で同時多発テロ事件が発生し て以降、世界の航空会社は低迷するようになり、欧米の大手航空会社の多くは、過剰な輸送 能力や航空機数に頭を悩ませるようになった。そんな中、一方のLCC は成長を続け、その 勢いは増すばかりとなっている。 例えば、エアアジアは 1993 年にTune Air として設立し、毎年赤字が続き、経営破綻状態 になったため、2001 年に持株会社のチューンエアに経営が移り、格安路線に移行した。急 速に成長し、保有機材数 2 機、1 路線から、保有機材数 80 機、就航地 96 都市の航空会社へと 成長した。 今回事故(17)を起こしたジャーマンウイングスは、1997 年にドイツの航空会社・ユーロウ イングスの一部門としてスタートした。2009 年 1 月に、ユーロウイングスとともにルフトハ ンザドイツ航空の完全子会社となった。現在は、欧州の60都市以上と結ぶ110路線を運営し ている。現在、世界にLCCが170社以上あり、シェア26%を占めるようになっている。また、 欧州連合(EU)の航空会社上位 5 位に、名を連ねるようになっており、米国でも、市場で 重要な位置を占めるようになっている。アジア太平洋地域でも、シェアが 30 %近くになっ ている。 長期にわたる低価格を実現するため、LCC は、複数のコスト削減手法を採用するなど、 独自のビジネスモデルを確立している。コスト削減法の 1 つに、混雑した大空港をできるだ (17)ドイツの格安航空会社(LCC)ジャーマンウイングスの旅客機9525便(A320機)が2015年3月24日、 フランス・アルプスの山深い場所に墜落し、乗客乗員150人全員が死亡した。2015年3月25日付新華 網が報じた。そして、2014 年 12 月 28 日、インドネシアのLCCエアアジアの 8501便が墜落し、乗客 乗員 162 人全員が行方不明となってから、3 カ月もたたない間に、今回再びLCCが墜落事故を起こし たとあり、「LCCの飛行機に乗るのは安全なのか?」と懸念する声が上がっている。

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け使用せず、大都市周辺の混雑していない地方の中小空港に乗り入れることによって、着陸 料などの使用料金を抑えることができる。 また、多頻度・定時運航によって航空機を有効活用するのも 1 つの手法である。LCCは通 常、できるだけ多くの客を乗せ、当日中に往復できる近・中距離路線を運営している。欧 米のLCCは、1機を1日に8度使用することに対して、大手航空会社は通常、4 5回である。 そうすることにより、必要な飛行機の数を最低限に抑えることができるのである。 更に、いくつもの対策を講じて、管理費や人件費の節減を実現している。例えば、LCC の多くは、オンライン予約やオンライン手続きを採用し、チケット販売や空港カウンター で必要な人件費を抑えている。しかも、2 3 時間の短時間飛行の路線がほとんどであるため、 乗務員も少ないほか、機内食や飲料はすべて有料販売にしているところも多い。その他、前 後のシートピッチを詰めることで座席数を増やし、座席ごとに異なる料金を設置したり、預 かり手荷物を完全有料化したりするなどしている。 LCC は格安チケットを提供しているものの、順守すべき航空運営規則は他社と同じであ る。というのは、順守しなければ営業停止に追い込まれるからである。もっとも、LCC の 事故発生率が従来型の航空会社より高いことを示すこれまでのデータはない。 米国のサウスウエスト航空は 1967 年に設立されたLCC の老舗であり、保有機材数は 600 機以上を数え、2 年連続で米国国内線の利用者数が最も多かった航空会社になっている。ス イスの航空輸送格付け機関から「世界で最も安全な航空会社」の10社のうちの1社に選定さ れている。その他の欧米の主なLCCも高い安全性を誇っている(18) 第二節 急速に発展する中国市場のLCCとその市場戦略について 低コスト航空輸送産業は中国では2002年8月、フィリピンのセブパシフィック航空が首都 マニラと広東省広州市を結ぶ路線を開通したことが始まりである。現在、中国市場に進出す る海外のLCC はエアアジアやジェットスターなどの 13 社であり、大陸部の航空会社では春 秋航空が初のLCCである(19) 中国のLCC の春秋航空は 2011 年 8 月 17 日に民営初の「ドル箱路線」である上海 北京路 線の就航認可を中国民用航空局から取得し、早くて9月下旬にも就航した。1日1往復のみで、 (18)例えば、エアアジアは 09 年から 14 年まで、6 年連続で、「ローコストキャリアナンバー 1」に選ば れた。また、昨年12月28日に8501便が事故を起こすまで、高い安全性を誇り、大きな航空事故を起 こしたことはなかった。今回事故を起こしたジャーマンウイングスも、これまでに大きな航空事故 を起こしたことはなかった。また、LCCの航空機が欧州で墜落事故を起こしたのは今回が初めてで あった。 (19)2013年11月6日付「人民日報」の報道による。

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しかも北京発が午前6時、上海発が午後10時という人気のない時間帯ではあるが、参入には 歴史的意義がある。これまで同路線は国航、東上航、海航、南航などが運営している。午前 7 時から午後 10 時まで 1 日約 50 往復という中国一のドル箱路線である。春秋航空は民営とし て初めて参入し、199元の格安チケットを打ち出している。 春秋航空の「歴史的快挙」について、競争相手である既存航空事業者の東航の羅祝平氏は 「春秋の差別化路線は市場にとって良いことだ。だが昼間の時間帯は申請が難しいため、春 秋の格安チケットが短期間で市場を揺るがすことは考えにくい」と主張している。  それに続いて、LCCの「吉祥航空」(本社上海)も2011年9月18日、中国で「ドル箱」路 線と言われる上海 北京線の運航認可を取得したことを明らかにした。就航日は2011年10月 6 日であり、同路線の認可を取得した民営航空会社は先月 2011 年 8 月 17 日に認可を受けた格 安航空会社「春秋航空」に次ぐ2社目である。 ただ春秋航空のフライトは北京発が午前6時であり、上海発が午後10時という利用者の比 較的少ない時間帯であるに対し、吉祥航空は利用者の多い時間帯のフライト認可を得てい る(20) 一方、海外の航空事業者の合弁或いは単独による中国国内市場への参入も活発になってき ている。例えば、オーストラリアのカンタス航空と中国東方航空は2012年4月に声明を発表 し、香港に格安航空会社・捷星香港有限公司(ジェットスター香港)を合弁で設立すること を明らかにした。第一弾としてエアバス社の「A320」3 機を導入する計画である。合弁会社 の登録資本金は 1 億 1500 万ドルで、両社がそれぞれ株式の 50 %を保有する。東方航空によ ると、合弁会社は2015年にはA320を18機保有する予定ということである。 ジェットスター香港は、香港で設立された初のLCC(格安航空会社)であり、中国本土 の航空会社が格安航空事業を手がけた初の試みである。香港はアジアの最重要の航空交通中 枢であり、3 5 時間の飛行直径内に、100 万人以上の都市を 250 都市以上有する。LCC が現 在香港市場で占めているシェアは低いが、将来的に高い潜在力を秘めている。 捷星香港有限公司はカンタス航空の中国市場における踏みきり台になり、アジアの航空産 業におけるカンタス空港の重要な中枢になるとみられる。オーストラリアの観光・交通産業 の関係者によると、中国人の海外旅行者数は驚くべきペースで増加しており、世帯収入の増 (20)吉祥航空のカスタマーサービスセンターによると、2011 年 10 月 6 日に運航を開始する同社の上海 北京線は、1 日 2 便を予定しているということである。上海発北京行きは、北京発上海行きともに、 昼の便は出発時刻 11 時 05 分であり、到着時刻 13 時 25 分であり、夜の便は出発時刻 20 時 25 分であり、 到着時刻は 22 時 35 分である。就航日 10 月 6 日の午前の便のチケット価格(税抜き)はファーストク ラス568元(約6800円)、エコノミー468元(約5600円)である。夜の便はファーストクラス738元(約 8860円)、エコノミー638元(約7660円)である。2011年9月20日付「人民日報」の報道による。

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加にともなって、今後10年間で1億1千人が海外に旅行すると予想されるとしている(21) また、韓国の格安航空会社(LCC)チェジュ航空は 2012 年 5 月 2 日、2012 年 5 月末に韓国 の仁川と中国の青島を結ぶ路線を開通させ、週に往復 7 便を運航した。同航空が大陸部路線 を開通するのは今回が初めてのケースである。 チェジュ航空が開通した国際路線はこれまで日本や東南アジアが中心であり、青島路線は 中国市場開拓の第一歩と言える。同航空は 2012 年 2 月、同国の清州・上海路線を週 7 便運航 することのできる割り当てを獲得し、現在は同路線を運航している。 チェジュ航空は 2012 年 6 7 月に韓国から中国主要都市へのチャーター便サービスを開始 した。2012 年 6 月 2 日には釜山 延吉路線を開通し、毎週火曜と土曜に計 2 便を運航してい る。2012 年 7 月 3 日には釜山 張家界路線を開通し、毎週火曜と土曜に計 2 便を運航している。 2012年の時点では、チェジュ航空が運航する路線は、韓国国内路線が3本、日本路線が6本、 タイ路線と香港路線がそれぞれ 2 本ずつ、フィリピン路線とベトナム路線がそれぞれ 1 本ず つとなっている。 なお、新規航空事業者の戦略として、低価格をもって市場シェアの拡大を図ることである。 2014 年 7 月 2 日、中国聯合航空有限公司は、LCC(格安航空会社)に転身することを発表し た。同社が今後販売する航空券は、その他の航空会社および同社のこれまでの価格から 2 − 4 割引きされ、同社は中国初の、国有LCCとなった。同社の株式を保有する中国東方航空の 関係者は、「今回の転身は民間航空改革の大きな流れに順応したもので、北京・天津・河北 経済ベルトのLCC 市場の空白を埋めた」と語った。同社は、「低価格は低コストによって実 現される。単一機種、北京南苑空港の航空管制面などの優位により、コストを削減できる」 と表明した(22) 同社の航空便は北京南苑空港と広東省の仏山沙堤空港を中心としており、これに内モンゴ ル・東北地区の航空便が加わるということである。同社の保有するB737 型機は 2014 年末ま でに 31 機に、2019 年までに 80 機に増やす計画であり、北京首都第二空港の竣工後に入居を 予定している。 LCC は 2014 年に入ってから特に注目を集めている。初の LCC である春秋航空は経営基盤 (21)2012年4月9日付「人民日報」の報道による。 (22)2014年7月3日付「人民日報」の報道による。

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を固めており、民間企業の九元航空も2014年2月に設立された(23)。中央企業の背景を持つ同 社の転身により、LCCが高度発展段階に突入したと目されている。 中国聯合航空公司は 2015 年 3 月 29 日から低コスト航空事業モデルを全面的に実施し、 ファーストクラスとビジネスクラスをやめ、年内に価格8元(1元は約19.5円)の航空券を8 万枚以上販売するとともに、航空券価格を全体として 2 ∼ 3 割引き下げるとの方針を明らか にした(24) この動きは春秋航空、九元航空に続くもので、国内の格安航空陣営が拡大したことにな る(25)。これまでステータスの象徴とされてきた空の旅が、一層身近なものになることが予想 される。 聯合航空は2015年3月29日からファーストとビジネスを廃止し、すべての定期便で8元の 「超格安航空券」を売り出した。年内にこの水2本分の航空券を8万枚販売する予定である。  また、毎年販売する 600 万∼ 700 万枚の航空券のうち、15 ∼ 30 %を 188 元からおよび 388 元からの格安航空券にする計画である。 航空輸送サービスを除く各種の付加サービスは航空券価格には含まれず、旅客自身に選択 権を委ねることになる。春秋航空、西部航空、聯合航空などの格安航空会社ではこの方式が 一般的である。 聯合航空の新商品計画のうち、188 元からおよび 388 元からの格安航空券には無料の飲食 物は含まれない。食べたり飲んだりしたければ追加料金を支払い、座席指定にも受託手荷物 にも機内持ち込み手荷物にも料金がかかる。聯合航空はこのようにして航空券価格の「ダイ (23)九元航空は 2014 年 2 月、中国民用航空局から設立認可を得て、2014 年下半期に運航サービスを開 始した。九元航空の紀広平社長は、「九元航空の誕生によって、LCC市場に新たな動きが起こり、新 たな顧客源が発掘され、新たな航路が開拓されるという期待が大きい。また、他の航空会社と直接バッ ティングすることもあり得ない。9元(約150円)、99元(約1600円)、199元(約3200円)、299元(約 4900 円)などの各種格安チケットを出す予定だが、格安チケット展開戦略はまだ煮詰まっておらず、 具体的な路線プランも確定していない」と続けた。2014年5月16日付「人民日報」の報道による。 (24)2015年3月20日付「北京日報」の報道による。 (25)格安航空会社(LCC)の九元航空は2015年01月10日、旅行情報プラットフォーム在線旅遊の去哪 児網で初めて航空券の販売を行い、これにより同社の航空券販売が正式にスタートした。九元航空 は 2015 年 1 月 10 日の早朝に航空券販売をスタートし、2015 年 1 月 15 日出発の広州 温州 哈爾濱(ハ ルビン)の往復便を売り出した。これと同時に、去哪児網のパソコン端末・モバイル端末での販売 もスタートした。価格は広州 温州間が 199 元(1 元は約 19.1 円)、温州 哈爾濱間が 599 元、広州 哈 爾濱間が 699 元である。なお、九元航空は吉祥航空、億利資源集団公司、新華聯森株有限公司(新華 聯集団)などが共同出資して設立した航空会社であり、広州市を拠点とする 2 番目の航空会社であり、 中南部地域初のLCCでもある。2014 年 12 月 2 日に初運航を成功させたが、航空券の販売は遅れてい た。2015年1月12日付「人民日報」の報道による。

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エット」を行っているのである。 低コスト運営のため、聯合航空は国内外の格安航空会社で一般的に行われているモデルを 参考にして、思いがけない災害や航空管制などの第三者が原因で起きた不可抗力の遅延や欠 航に対しては賠償金を支払わないとしているが、航空便の配置調整、機体のメンテナンス、 乗務員などの主観的な原因で起きた遅延・欠航に対しては、これまで通り相応の賠償金を支 払うとしている。 しかし、格安航空会社はこれから大きな課題に直面することになると予想され、それは運 航路線が増え続け、擁する機体が増え続けることにより、格安であり続けることができなく なり、従来の航空会社との違いがはっきりしなくなると指摘できよう。 例えば、運航路線が増えると、格安航空会社はどの路線でも高い搭乗率を確保することは できなくなるが、ネットワーク化された運営を保証するため、搭乗率が低い路線もそのまま 継続しなければならず、コスト増大につながる。 また、中国国内の格安航空市場の可能性はそれほどバラ色ではない。中でも大きな衝撃は 高速鉄道の広がりである。高速鉄道の沿線では、人々は高速鉄道を中距離や短距離の移動で の重要な交通手段と考えており、格安航空会社に残された市場の空間は高速鉄道が開通して いない地域に限られる。こうした場所は遠隔地であったり、一人あたり平均収入が低かった りすることが多く、空の旅を選択する人は限られるということになろう。 第三節 北京の新空港プロジェクトの動向 中国の国家発展改革委員会は 2014 年 12 月 15 日に公式サイトを通じて、北京に新しい空港 を建設するプロジェクトがこのほど認可を受けたことを明らかにした。これにより今後は、 北京地域の航空輸送需要に対応し、中国民間航空の競争力を強化して、北京の南北都市エリ アのバランスの取れた発展と北京・天津・河北の共同発展を促進し、全国の対外開放により よいサービスを提供することになると期待されている。 新空港建設プロジェクトの実施地点は永定河北岸にあり、北京市大興区の楡垡鎮と礼賢鎮 および河北省廊坊市広陽区の中間エリアに位置する。新空港からの直線距離は、天安門広場 まで約 46 キロメートル、廊坊市中心部まで約 26 キロメートルである。プロジェクトの設計 目標は、2025 年に旅客処理能力のべ 7200 万人、貨物処理能力 200 万トン、離着陸回数 62 万 回を達成することで、4Fレベルの空港を目指すこととしている(26) 中央政府は、2019 年に運用を開始するよう指示している。現在、新空港を含む北京空域 計画方案の制定が進められている。2014 年 12 月に開催された「北京・天津・河北民間航空 (26)2014年12月16日付「人民日報」の報道による。

参照

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