• 検索結果がありません。

1 問題の所在

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1 問題の所在"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 1 題材名 絵で語ろう・絵への思いを伝えよう(鑑賞) (中学2年) 2 題材の目標 ○作品のよさや美しさを鑑賞する喜びを味わおうとする。 (美術への関心・意欲・態度) ○自分自身の価値意識をもって作品を鑑賞し、作者や作品に対する考えを説明し合うなどして、感 じ取る力や思考する力を養うことができる。 (鑑賞の能力) ○美術や文化に対する理解を深め、作者の心情や表現の工夫を感じ取り、作品の見方の幅を広げて 表現の多様性を理解することができる。 (鑑賞の能力) 3 評価規準(評価方法) 美術への関心・意欲・態度 鑑賞の能力 ・形や色彩などの特徴や印象、本質的なよさや美 しさ、作者の心情や意図と創造的な表現の工夫 などに関心を持ち、主体的に感じとろうとして いる。(観察) ・級友の感想や意見に耳を傾け、共感や意見、疑 問をもって、より深く作品について考えようと している。(観察) ・作品の見方や味わい方を学び、造形的なよさや 美しさ、作者の心情や多様な表現などについて 感じとろうとしている。(観察) ・最初の印象や直感を大事にしながら、形や色彩 などの特徴や印象などから、全体の感じ、本質 的なよさや美しさ、作者の心情や意図と創造的 な表現の工夫などを感じ取り、自分の価値意識 をもって味わっている。(観察・ワークシート) ・作品に対する思いや考えを述べ合い、互いの意 見を尊重しながら、見方や感じ方を広げてい る。(観察、ワークシート) ・造形的なよさや美しさ、作者の心情や主題など について感じとった考えを言葉でまとめ、表現 している。(観察、ワークシート) 4 題材について (1) 教科の観点 基本的な鑑賞の能力を「作品を広い視野で味わい、自分の意見、感想、作者の表現のねらい等を 考える力」として捉え、写真のように上手に絵が描けているかといった価値判断だけにならず、作 品鑑賞の視点を多く持ち、幅広いものの見方で味わうことができるようにすることが重要である。 そのため、絵画表現は実物通りに描く技術以外にも、様々な魅力的な要素があることに注目させ、 作品に対する個々の感想、意見、互いの価値観の違い等を意見交換する中で、作品の味わい方の幅 を広げ、多様な表現について、理解を深めさせたい。 この授業では、西洋の近代絵画を比較して鑑賞し、表現方法の違いに気づくとともに、美しさや

美術科学習指導案

指導者 松﨑 美香 ・思考力・判断力・表現力等の育成と言語活動の充実との関連 ④ ・言語の役割を踏まえた分類 主たる分類(1)イⅰ 関係する分類(2)イ ・言語活動の充実に関する指導事例集 美術-1 (関連)

(2)

2 作者独自の表現を求める普遍的な心情など、その共通性にも目を向け、浮世絵から影響を受けた印 象派以降の美術作品のよさや美しさなどを味わわせる。さらに、画家があえて抽象的な背景で表し た意図や、作品で伝えたかった思いを生徒に想像させ、作者が作品の中に込めた主題(願いや考え) や表現の工夫(構図、色、技法など)を考える力を養う。 (2) 本題材で扱う主な言語活動とその意図 本題材では、「作品との出会い」に重点を置き、テーマを設けて尐人数で意見交換する言語活動 を行う。そして、作品に親しみ、感性を養うと同時に、表現の多様性についての理解を深め、自分 の価値意識をもって味わったことを、言葉で表現できるようにする。本題材で言語活動を設定する 主な場面は、次の2つである。 ① 「作品などに対する思いや考えを述べ合う」際に、作品のもつ多様なよさや美しさ を味わい、自分の言葉で意見を述べる。(鑑賞する) ② 自分の言葉で意見を述べ、意見を整理しながら聞き、話し合うことを通して、より様々な観点 からの意見と向き合い考えを深め、意見をまとめて発表する。 (鑑賞する 共感的に聞く 批判的に聞く 多面的にみる・多角的にみる) これらの言語活動を通して、作者や作品の知名度などの知識や先入観に左右されない、率直な感 想・意見に耳を傾けさせ、自分の感想と比較することで、作者や作品への興味関心を深め、対象の 見方の幅を広げる。意見交換に際し、より適切な、深い内容で自分の考えを表現し、共有するため、 鑑賞活動で使える美術科特有の語彙(色味や筆づかい、質感、構図、作者の表現意図等の視点に注 目した感想を表現する言葉)を提示し、その活用を図る。また、意見交換の際は、グループ内で司 会等の役割を設け、根拠を明らかにしながらテーマに沿った話合いができるよう支援する。 (3) (1)と(2)の基盤となる言語環境や継続的な取組 全校で取り組んでいる帯学習「書くこと」で「美術」の鑑賞に関する内容を取り上げたり、授 業内容と関連した掲示物や作品を鑑賞の視点と一緒に校内に掲示したりする。 特に、制作主題や作品コンセプトの記述、制作作品の鑑賞会、話合い、発表等では、漠然とし た表現の仕方にならないよう、鑑賞の視点や有効な語彙を示し、普段から、日常的、継続的に指 導する。特に、作品の制作場面では、自分の作品主題を、言葉を使って具体的に書くことを、ワ ークシート等を利用して重点的、継続的に指導するとともに、記述したワークシート類は、生徒 の振り返りの記述と共に、中学校3年間を通して生徒個人のクロッキー帳にポートフォリオのよ うに貼りため、必要に応じて見返したり、活用したりできるよう指導している。 (※詳細は、8 成果と課題 参照) 5 生徒の実態(指導の経緯) 学校敷地内を題材とした風景画の制作では、見慣れた景色を改めて見直し、そこから得た気持ち を自己の主題として表現することに取り組んだ。その際、制作前や制作途中で、ワークシートに記 入した自分の作品構想文を何度も振り返ることで、自己の主題を意識した表現を常に心がけさせた。 また、浮世絵を題材とした鑑賞学習では、小グループでの話合いを通して、自分の注目した視点と 同じだと共感したり、違う視点によって鑑賞した意見から新たなものの見方や感じ方を得たりする ことができた。本題材では、これらの既習経験を生かし、浮世絵に影響を受けたゴッホ作品、及び、

(3)

3 ジャポニスムの流れを汲む作品、それ以降の近年の多様な表現の鑑賞学習へと発展させる。 また、学区には千葉市美術館もあることから、毎年、全学年に、任意の課題として美術館へ出か け、美術館鑑賞レポートをまとめることを働きかけている。中には都内の美術館にまで足を延ばす 生徒もいて、鑑賞への関心は低くない。一方、表現領域については立体が好まれ、特に絵画に対す る苦手意識が、全体として、強い傾向にある。 6 指導計画(全3時間扱い) 時 学習内容 指導や支援の手だて (◇は評価) 1 ○ テーマを設けて個々に絵を鑑賞し、感じた印 象などを言葉で記述する。 ○ 作品をみて、友人と感想や意見を出し合い、 互いの意見を尊重しながら作品を味わう。 ・作品のよさや美しさを味わい、作者の表現意 図や工夫について考え、発見させる。 ◇絵をみて感じとったことや絵に対する考え を、自分の言葉で表現できる。(鑑賞の能力) 2 本 時 ○ グループ内で、共感的に聞いたり、批判的に 聞いたりして意見交換をする。 ○ 共感度の高かった意見をもとに、各グループ でテーマを設けた絵の鑑賞文をまとめる。 ○ グループごとに、テーマを設けた作品の鑑賞 文の発表をする。 ・互いの発表を聞きながら、多面的、多角的に作 品の見方、味わい方を深める。 ・着目した視点ごとに、既習の語彙をどう活用 するかを、机間指導によって助言しながら、 グループ内発表の意見・感想のまとめを記入 させる。 ・グループ内で意見をまとめるタイミングを見 計らって指示を出し、グループ代表に発表準 備をさせる。 ・発表の仕方にも注目するよう助言する。 ◇鑑賞を通して多様な表現を味わう視点を広 く考え、意見・感想をまとめることができる。 (鑑賞の能力) 3 ○ 各作者の人生の歩みや作品が生まれた背景を 大まかに学び、作者の心情や表現意図、表現 の多様性などについて理解を深める。 ・ワークシートやノートの整理をし、まとめと学 習の振り返りをする。 ・感想の発表をする。 ◇美術の表現の多様性に気づき、社会における 人間と美術の関係について考えることがで きる。(関心・意欲・態度)(鑑賞の能力) ・ワークシートを整理させ、作品の見方、味わ い方に広がりが持てたか振り返らせる。 7 本時の目標と展開 (1) 本時の目標 〇 友人の感想や意見を聞いて、共感や疑問を持ちながら、作者の表現意図や心情、多様な表 現について考え、味わおうとする。 (関心・意欲・態度) 〇 自分の意見や感想を持ち、グループでの鑑賞活動を通して互いの意見を尊重し、自分の価 値意識を持って考えながら作品を味わい、対象の見方や感じ方を広げることができる。 (鑑賞の能力)

(4)

4 (2) 本時の展開 (本時2/3) 時配 学習内容 指導や支援の手だて ◇は評価 13 〇前時の振り返りを行い、本時の学習の見通し を持つ。 ・作者名、題名が伏せられた掲示(配布)資料を 見て、設定したテーマで鑑賞する。 【前時に提示し、設定したテーマ】 人のいる風景、 空の表情 風景の中の時間、 心を描いた景色 テーマに基づいて、作品を選び味わおう。 ・鑑賞の視点(色、構図、筆のタッチ、人物や 背景の描写、作者の心情、表現のねらい等) を確認し、語彙の活用法を復習する。 ・本時の学習課題と鑑賞の仕方を理解する。 ・5つのグループに分かれて、司会進行、記録 者、発表者を決める。 〇作品を味わう視点の例(題材・色・人物描 写の仕方・作者の心情・主題等)を示す。 ・「何が描かれているか」「何をしていると ころか」「季節や時刻はいつ」「背景の空 や景色の描き方で気がつくところは」「な ぜ、このような色や形で描かれているのか」 等、具体的な発問をしながら前時の鑑賞で のテーマや視点を振り返らせ、考えを言葉 で表す時に使う語彙の例を示す。 ◇作品鑑賞について関心、意欲を持つことが できたか。(関心・意欲・態度) ・グループを作る指示を出す。 ・仲間の感想、意見を尊重してきちんと聞く 姿勢を作らせる。 17 〇グループごとに作品を鑑賞する。 ・グループで決めたテーマで作品を選び、感想 や意見を出し合いワークシートにまとめる。 ・2,3点の作品を比較して鑑賞する。 ・司会進行のもと、共感的・批判的に感想・意 見を聞き合う。 〇グループ内感想の中から、最も共感した意 見をもとに、グループごとにテーマを設定 させ、そのテーマで選んだ作品について話 合いをさせる。 ・設定したテーマの視点で選んだ作品の感想、 意見をグループでまとめ、記録者と共に、 全員に要点を記録させる。 12 3 【グループ代表による発表】(本時は途中まで) ・グループで話し合った作品の鑑賞文を、代表 が発表する。(最低3グループ、時間による) ・発表を聞きながら、作品を再度味わう。 ・他の人の意見や感想を聞くことで、作品に対 する新たな興味、共感、疑問、作者の心情等 について多面的、多角的に考えを深める。 【全体で、作品に対する感想や意見の交換】 ・グループ代表による鑑賞文の発表で、共感し たことなどをワークシートに記入する。 ・質問や付け加えの感想を伝え合う。 ・グループ内で、最も共感しあえた意見をも とに、代表発表させる。 ・感想がどんな観点に注目し、述べられた意 見かを板書で整理する。 ・注目ポイントを持って見てみると、より深 い味わい方ができることや、作品から伝わ る味わいの幅が広がることに気づかせる。 ・自分の初めの感想との変化や、価値意識の 深まりについて考えさせ、自分の感じ方の 変化に気づかせる。 ねらいと学習の流れ ワークシートの使い方 話合いの約束事

(5)

5 (3) 資料・見本等 掲示・配付作品資料・ワークシート 5 ・次回、グループ代表の後半の発表を聞くこと を理解し、本時の発表の要点や感想を忘れな いよう、記録としての感想をまとめる。 ・自分が特に注目した作品(作者)について、 作品の特徴や作者の表現意図(作者は何を表 そうとしたのか)について自分の考えをまと める。(同じ感想や印象、違う感じ方等、友 人の意見と合わせ自分を振り返り、自分の初 めの感想との変化や深まりを考える。) ・作品には作者のメッセージが込められている ことを理解する。 ◇互いの意見を尊重し、自分の価値意識を持 って考えながら作品を味わい、対象の見方 や味わい方の幅を広げて鑑賞することがで きたか。(鑑賞の能力) ◇共感や疑問を持ちながら、作品にはいろい ろな良さや表現の多様性があることを理解 し、作者の表現意図や心情について考えな がら味わうことができたか。(関心・意欲・ 態度) ・次回の授業の見通しを伝える。 【鑑賞】 絵で語ろう・絵への思いを伝えよう 2年 組 番 氏名 1.選んだテーマ 2.選んだ作品(番号) 3.選んだ作品の感想・そのテーマや作品に注目した理由 4.小グループごとに、注目作品についての意見交換をしてみよう(メモはクロッキー帳の右のページに) 5.グループ内で、作品についての意見・感想で、共感度が高かった作品(及び、テーマ)は? テーマ 作品番号 グループ内で共感度の高かったテーマと作品について、選んだ理由や意見・感想等をまとめよう。 6.自分の感想、意見等と比べながら、「各グループの代表による鑑賞意見の発表」を聞いてみよう。 (メモはクロッキー帳の右のページに) 7.もう一度作品全体を見て味わいながら画家たちの生き方や作品に込めた思いを見つめてみよう。 作品全体を通して鑑賞し、気づいたこと・感じたことは? これらの作品の魅力は何だろう?(授業を終えての感想)

(6)

6 掲示・配付作品資料・ワークシートつづき 8 本実践の成果と課題 (1)実践を終えて 美術科における学力を表現力と捉えると、その力が伸び悩む生徒は、明確な主題を持たず漠然と制 作していることが多い。仮に、『思い』はあってもそれを形に表現する力の未熟さによって、作品に表 現意図が表れない場合も多いからである。そこで、自らの思いをより主体的に表現させるために、作 品の主題を言葉に表す学習活動の経験を積ませ、「どう表現したいから、どういう技法を用いるか」を 考えさせる指導を心がけた。また、鑑賞によって、感じたり気づいたりする力が磨かれ感性が養われ ると、表現力の向上が期待できる。そこで、学習の柱を以下の2点に置き、3年間を通じた各題材で 実践を継続した。 (Ⅰ)作品の表現意図を言葉で表す学習活動を意識的、継続的に取り入れ、明確に主題をもって制作 する能力を育成する。 (Ⅱ)鑑賞の経験を増やし、多様な表現への理解を深める。特に、美術科特有の語彙の活用に習熟さ せ、より適切に考えを述べる力を養う。

(7)

7 (Ⅰ)の考察 ① 自分の表現のねらいや主題を言葉に表し明確にさせたことで表現意欲が高まり、主体的な活動 が促された。 → 具体的な質問項目を設けるよう書式を工夫し、表現意図を文章で書かせることによって、漠然と描く のではなく、「季節感や色合いなどをどう描きたいのか」を考え、意識しながら描くように、取組姿勢 が変わった。 実際に外に出て描く場所を散策して決め、授業で2回(2時間)下絵を描き、次週から着色して いくという段階で図1の①②を記入させた。また、作品が仕上がった時に、制作中に考えていたこ とがこのワークシートの欄に記入できるようにと毎時間声をかけた。制作中の授業の出だしでは、 何度もこのワークシート(クロッキー帳に貼ってある)を振り返らせ、テーマをもって作品を描く ように指導した。ただ漠然と風景を描くのではなく、どこをどんな風に描きたいかという意思をも って制作するという意識づけに効果があった。 ② 具体的な表現力を身につけるために、評価の観点と目標を明記し、課題意識をもって作業させ るとともに基礎的な表現技術の指導を行いながら、よりよい表現方法を考えさせる場を設定した。 → 題材ごとに作品コンセプトや自分の感想を表すための語彙の指導をした上で、自己表現につ いて振り返り、言葉で記録(図2)を書かせた。生徒は自分の表現のねらいに対し、制作した作品は どうだったかを見直すことで、表現力向上のヒントを自分自身で見いだすことができた。 図1: → 思考操作が言 語化されたも のの例 『身近な風景』 を描く水彩画 の制作におけ る自分の主題 について記入 学習の記録 (クロッキー帳にて)

(8)

8 また、評価の観点を、身につけたいポイントとして各制作段階での指導に活用した。評価の観点を あらかじめ伝えることで、評価に関する説明や規準をはっきり示して制作させることができた。生徒 にとっては、どのような点を努力したらよいのかを具体的に知る手立てとなり、意識して作業する姿 が見られるようになったので、結果的に表現力の向上に効果があったと思われる。 また、題材ごとに制作のまとめを行い、学んだ内容の定着(図3)を図った。この場面の鑑賞 では、「よいと思う作品を選ぶ・よいと感じる理由を考える・他の作品と比較して、それぞれに 違う魅力を感じ取る・よいと感じさせる作品の共通点を見いだす」等の思考操作を自然に行って いる。あくまでも自分で色々な作品を鑑賞した中から「発見する」ことを大切に扱い、「なんと なく思うこと」を、より具体的な自分の気づき(視点)とするために、言語活動が活用された。 図2→ 思考操作が言 語化されたも のの例 自己表現につい て振り返り、言 葉で記録 図3: → 思考操作が 言語化され たものの例 鑑賞にて、 学んだ内容 の定着のた めの記録

(9)

9 (Ⅱ)の考察 ① 表現への関心を高め、鑑賞力を向上させるために、作者の主題や表現の多様性を理解させる鑑 賞授業を増やした。 → 作品についての意見や感想を語り合う場を多く設定した。 → 鑑賞を通して表現の工夫や多様性を学び、自分の考えを言葉に表す訓練をした。(図4) ② 作品についての意見や感想を語り合う場を多く設定した。 → 鑑賞の学習において、作品についての意見や感想を述べる時に有効な美術科特有の語彙を提示し、活用 できるよう意識的、継続的に指導した。また、自分の言葉で考えを述べ、意見を整理しながら聞き、話 し合う学習の場を多く設け、自分の考えを言葉に表す訓練をした。(本指導案の重点実践) → 意見交換や発表、美術館鑑賞レポートまとめ等の場では、言語活動を具体的な手段とし、「鑑賞する」「説 明する」「共感的に聞く・批判的に聞く」「多面的にみる・多角的にみる」等の力を重点的に養った。 → 題材ごとにコンセプトや自分の感想を表すための語彙や鑑賞の視点を指導(図5・6)した。 ③ (2)の考察としての授業の実践を終えて 題材:2年「作品との出会い Part 1 ~浮世絵鑑賞(『神奈川沖浪裏』他)~ Part 2 ~絵で語ろう(ジャポニスム以降の近代西洋絵画)~ 作品との出会いに重点を置き、知識や先入観に左右されずに率直な意見、感想を述べ合い、作品に対する興 味を深めさせる。自分の言葉で思いを述べる力を養い、作品の味わい方の幅を広げさせた。 ア 学習の中で言語活動を活用し、思考・操作を促す場面 ・作品について自分が注目した点とその感想を、小グループ内で意見交換し、作品の注目要素を 広げた。意見発表時は、小グループごとに司会をたて、全員が発言した。複数の意見を集約(図 7)するトレーニングを行い、それをグループ代表が発表し、全員がメモをとった。 ここでの活動ポイントは、以下の2点である。 ・一人一人が自分の考えを持ち、他者の考えとの共通点や相違点を意識しながら考えを深める場 面の設定 ・自分でまとめた意見等の事柄について説明したり、相手の感想や考えを尊重したり、批評し合 うことで、多角的な視野でとらえ、考えを深める場面の設定 ←図4: 表現の多様性を学び、 自分の考えをめぐらす 思考操作としての鑑賞 の場面、及び、そのた めに活用された言語活 動 多版多色刷り木版画の 技法で制作段階に合わ せて色を塗り、作品の 感想をまとめるなどし て活用したもの

(10)

10 → 小グループでの話合い活動は、全体の場で個々に発言させるより、気楽に述べ合える利点が ある。しかし、話合いの仕方によっては内容が深まらない可能性もある。あらかじめ司会者な どの役割を決めておき、感想を引き出す発言や、意見の集約ができるよう司会の発言の仕方を よく指導しておく(例:下記点線枠)ことが大事である。具体的には、グループ内で端から順番 に言わせるのみならず、以下のような意見の出させ方を日頃から訓練しておきたい。 なお、話合いをする小グループの人数は、今回は多様な視点を重視し6人組としたが、一 人ずつの発言の機会や内容の深まりを重視する場合は、3~4人組と人数を尐なくしてもよい。 ・「なぜ、そう思ったのですか?」(思考操作に関わる言語:原因) ・「同じ考えをもった人はいませんか?(違うとらえ方をした人はいませんか?)」(分類) ・「その点を比べてみたら、どうですか?」(比較) ・「付け足しで感想はありませんか?」(共通・区別) ・「人の意見を聞いて、感じ方に変化があった人はいませんか?」(変容) …など ただし、あくまでも美術の鑑賞という学習の場であり、上手に文章を書くことが第一目標に ならないよう気をつけたい。いろいろな受け止め方、感じ方を共に語り合う中で、美術作品に 対する興味・関心を高め、感受性が豊かになるよう目指すことが大切である。 ← 図5 クロッキー帳のメモの抜粋 ↓ 図6 ←図7 作品(絵画)鑑賞の視点の指導と、グループ活動 による感想・意見交換の記録 鑑賞の時に心がけ るよう投げかけたキ ーワード(予想・疑 問・特徴をつかむ) 他人まかせになるので記録係は決めず、“要 点だけでよい”と限定して、全員に簡単なメ モを速記させる。生徒は、そのメモを見て、 自分の感想とじっくり比べて考えを深めるこ とができていた。このような具体的な思考・ 操作の作業を取り入れることで『共感的に聞 く・批判的に聞く』『多面的にみる・多角的 にみる』といった学習活動が効果的になった。

(11)

11 イ 本授業(「絵で語ろう Part 2」)における生徒の反応と、鑑賞内容の変容 初めに絵画作品を鑑賞する時の目の付け所についてふれておいた成果として、個人の感想は様々な 観点で具体的に出てきた。(例:色について、作者の思いについて想像したこと、絵に対する疑問な ど)また、感想を語り合う視点としてテーマを設けたことで、同じ作品に対しても、違う見方や受け 止め方が出てきて、意見を比較しやすくなった。人それぞれに、違う感じ方やとらえ方があることが 理解され、作品の見方を広げることができた。また、作者の制作意図を想像するという新たな鑑賞の 観点にふれ、知識や先入観、技術の優劣等にとらわれない純粋な感想が多く出され、表現の多様性に ついて学ぶことができた。 (↓ 図8:鑑賞授業「絵で語ろう」での板書) (2) 日常的な取組 ← 図9:廊下の掲示物 自分の制作主題・表現意図に関わるもの、題材ごとの振り返りや 作品鑑賞会で書いたもの、様々な鑑賞授業のワークシートなど ←「時間」をテーマに対話が進んだ時は、「この絵は朝か夕方か?」と、違う 感想や受け止め方で、話題が広がった。 ←「空」をテーマに対話が進んだ時は、作者の内面やねらいを 想像した発言が多く出て、作品の主題にせまる話題が深まった。 (実際の生徒の発表内容の抜粋) 左:色はきれいな青い空だが、楽しい感じではない。手前の木 と背景の家々と空の組み合わせの構図が大胆である。 右:夕方の空だと思う。手前の人の心を空が表しているような 気がする。不安な感じがする。 絵で語ろう 絵への思いを伝えよう テーマに基づいて作品を味わおう 作品(絵画)を味わう時の 注目ポイント(視点) 色 色彩 色合い 構図 筆づかい 筆のタッチ 何が描かれているか 何処を描いているか 主役の描き方 背景の描写 作者心情 表現のねらい(伝えたい思い) ……想像してみよう etc 4つのテーマから選ぼ う 人のいる風景 空の表情 風景の中の時間 心の中の景色 グループで話題になった感 想・意見の報告 グループで選んだテーマ 共感度の高かった感想・意見 比較した感想・意見 ① 日頃から言語活動を活用した実践例として生徒の書いたものを 美術室前に掲示し(図9)、どんな言葉を使って意見、感想が 述べられているかを日常的に目にして、語彙の活用を生徒同士 で学べるようにした。

(12)

12 (3) 実践のまとめ ① 成果 ア 自分の言葉で意見を述べることや、人の意見を聞き合うトレーニングをしたことにより、幅広 い視点で鑑賞する力を養うことができた。 イ 自分の表現意図や主題について言葉で表す作業を取り入れたことは、自分の制作意図が明確に なり、制作に主体性を持たせることにつながった。 ウ 表現力を向上させ、制作活動に達成感を持たせるためには、意欲の喚起と技能の習得が不可欠 であり、両面に手応えを持つ生徒が増えた。 ② 課題 ア 鑑賞で提示する資料として、画集等のカラーコピーを活用したが、本物の作品の筆のタッチや 迫力、作品の実際の大きさにせまることは到底できず、作品資料の“写真”の感想にすぎない。 今回の授業では、本物の作品をいつか見てみたいという思いを持たせるきっかけとしてカラーコ ピーを使ったが、鑑賞授業の資料としての適性には、疑問が残る。 イ 鑑賞で使う語彙が尐なく、感想の伝え方がまだ十分とは言えないので、引き続き「興味」「感 受」「思考」「表現技能」「鑑賞」が連携して培われるような題材配列を検討したい。 ウ 鑑賞活動において、元々の言語力のみに頼ることなく、教科として身につけさせたい言語表現 を整理して、題材ごとに指導に取り入れることや、発問の仕方を検討する必要がある。 エ 個性や学習のねらいをふまえた努力等を認めつつ、客観性をもった評価の工夫を要する。 ← 図 10:日常の言語活動のトレーニング(実施後、クロッキー帳に 貼付、時期をみて再活用) ② 朝の学活前の10分間を、読書活動以外に9教科が交代で、そ れぞれの教科の学習内容に即したテーマで、記述訓練を実施し ている。美術科では「水彩画の主題」(図 10)や「ピトグラム に対する意見」といった内容の記述を、全校生徒に行った。回 数を重ねた生徒、また、学年が上がった生徒ほど、書くことに 慣れてきたせいか、しっかりと論点を押さえて美術的な意見、 感想が書けるように変容してきた。

参照

関連したドキュメント

この説明から,数学的活動の二つの特徴が留意される.一つは,数学の世界と現実の

現実感のもてる問題場面からスタートし,問題 場面を自らの考えや表現を用いて表し,教師の

○本時のねらい これまでの学習を基に、ユニットテーマについて話し合い、自分の考えをまとめる 学習活動 時間 主な発問、予想される生徒の姿

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

関西学院大学には、スポーツ系、文化系のさまざまな課

そのため、ここに原子力安全改革プランを取りまとめたが、現在、各発電所で実施中