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(1)

vajra考 (川崎信定教授退任記念号)

著者名(日)

渡辺 章悟

雑誌名

東洋学論叢

31

ページ

180-165

発行年

2006-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003232/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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は じ め に

vajra 考

(21)

渡辺章悟

vajraは一般 に 金剛 と訳 される が, ダ イ ヤ モ ンド(diamond) と い う 意 味 と ,電 撃(thunderbolt )とい う 両 義 が あ り, 従来しばし ば 混 同され て 用 い ら れて い るレ 前 者であ れ ば, 他 の す べ て を 砕 く 最 も圖 い もの で あり , 後 者で あ れば す べ て を 切 り裂 く 破 壊的力 と い う ほ ど の 意味であろ う。し か し, 仏教 文 献 の 中 で用 いら れる 場合 , そ れ が ど ち ら で あ る の か , あ る い は 別 の意味である の か 曖昧であ り,経 文 の理 解を困 邨 に し て いる。 そこで 最初に(1)vajraと い う語 の 言 語的 な 分析 を お こ ない,(2)リグ・ ヴェーダ(RV )を 中心と し て,古代 イ ン ドの 宗 教文 献 中で説 か れ るvajra とそ の 後 の 展 問 について検討 す る。 本 来 で あ れ ば こ れ に 次 い で,(3)イ ン ドのvajraが 何らか の 接 点を持 つ と予 想 される 古代ギ リシ ヤの 稲 妻に着 目 し,そ の 文化史的な 意味を 考 察 し,そ の 上 で, (4)vajraが イ ン ド ラ と ヴァジュラ パ ー ニ の持 ち 物と な っ てゆく 経 緯,(5)ダ イ ヤ モ ン ド と 訳 さ れ る 理 由,(6)vajra の破壊力が内 化 さ れ る 意義 な ど を 解 明する つも りで あった が ,筆者 の 怠 惰 の た め に 所 期の 目 的を果 た す こ と が できな かった。そ こ で 本 稿 で はvajraの言語 的 分 析 に と ど め ,後半(3)(6)は また別の 機 会 に 譲 る。

第1 章vajra

の語義分析

1.vaira の 意 味 最 初 に 印 欧語 の 語 源 を 見 て み た い。ま ず , ターナ ー(R.L.Turner )の 『比 較 印欧 語 辞 典』で はvairaは 男 性 名 詞 でthunderbolt, 川生名 詞と中性 名 詞でdiamond と する。また, マ イ ヤ ホーフ ェ ル(M.Mayrhofer) の『古 代イ ンド語 源 簡 略 辞 典』で 乱Donnerkeil とDiamant と い う2 つの 訳 語

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(22) が 挙 げ ら れ る。こ の よ う に 印 欧 語 の 祖 形 の 意 味 と し て は こ の二義 に 辿 れ る よ う で あ る。た だ し , タ ー ナ ーでは 前 者 の 出 典 は ,『リ グ ・ ヴ ェ ー ダ』で あ り, 後 者 は『サッド ヴ ィ ン シ ャ ・ ブ ラ ー フ マ ナ 』(SadvimsaBrahmana ) で あ る と い う し ,マ イ ヤ ホ ー フ ェ ル に よ れ ば, 前 者 は『リ グ・ ヅ エー ダ 』 な ど, 後 者 は「ブ ラ ー フ マ ナ」 や 『 マ ヌ 法 典 』 な ど で 用 い ら れ る と い う。 次 に 最 も 詳 細 な 解 説 で 定 評 の ある ベー ト リ ン ク と ロ ー ト に よ る『梵 語 辞 典 』 を 見 て み よ う。本 辞 典 に よ れ ば,vaira に は以 下 の よ う な19 種 類 も の 訳 語 が あ げ ら れ て い る。1 )m 。n.イ ン ド ラ の 雷 鳴 , 雷窪(Indra'sDonnerkeil ),2 )n. 電 撃 の よ う な言葉 で,vac,vakya と も に 用 い ら れ る。3 )m. 軍 隊 の 陣 形vajra-vyuha,4 )m. 柱 の 形,5)m. 月の形,6 )n. 坐 相vajrasana,7 )m 。n.ユ ー ホ ルビ ア (euphorbia), カ リ ロ ク(詞梨 勒haritaki)( シ ク ン シ 科 の 高 本 ) な ど の 植 物 名,8 )n. 星 座,9 )m. 時 の 分 割,10 )m. ソ ー マ 酒,11 )m. 販悔 ,12 )m 。n.ダ イヤ モン ド,13 )n. 鋼.14 )n. 滑 石 の よ う な 性 質,15 )m. 堅 固 に 塗 り 込 ま れ た漆 喰,16 )n.子供 あ る い は 弟 子.17 )m.Aniruddha やVisvamitra の 息 子 と い っ た 固 有 名 詞,18 )f.女 性 形vajraで 植 物 拡Durga 女 神 の足,Vaisvanara の 娘 の 名 前,19)vajr 比 い う 女 性 形 で ユ ー ホ ル ビ ア (euphorbia ) 属 の [多 肉 性 ] 植物 (ト ウ ダ イ グサ 科う6。 語 義 と し て あ げ ら れ た19 種 類 中 で最も 詳 細 に 説 明 さ れ る の は ,1 ) の 「イ ン ド ラ の 雷 霞」の 項 で,vajra の 項全体 の 半 分 が こ の 語 義 説 明 に 費 や さ れ, 多 く の 出 典 が 明 記 さ れ て い る。そ れ ら は 主 に , ヴ ェ ー ダ (Rg-v.,Atharva-v. ), ブ ラ ー フ マ ナ (Aitareya-B.,Sata-B.,Pancav-B.,Sadv-B. ), ウ パ ニ シ ャ ッド(Katha-U. ) な ど の ヴェー ダ 文 献 が 中 心 で あ る が ,『バ ー ガ ヴ ァ タ・プ ラ ー ナ』,『マ ハ ー バ ー ラ タ』,『ハ リ ヴァン シ ャ 』,『ラ グヴ ァ ン シ ャ』,『カ ター サ リット サ ー ガ ラ』な ど の 文学文 献 か ら も 幅 広 く 引 用 さ れ て い る。 次 に12 ) の ダ イ ヤ モ ン ド が 重 要 で あ る。こ の 項 の 解 説 は 第1の 談 義 に 比 べ る と ず っ と 簡 潔 な記 載 と なって い る が , 特 徴 的 な の は そ の 引 用 文 献 で あ る。こ こ で は『マ ハ ー バ ー ラ タ』,『ハ リ ヴ ァ ン シ ャ』,『ラ グ ヴ ァ ン シ ャ』,rブ リ ハット サ ン ヒ タ ー』,『ニ ー テ ィサ ー ラ』な ど の 文 学 ・ 教 訓 詩 の 類 に 限 定 さ れ , ヴェ ー ダ 文 献 か ら の 引 用 は 見 ら れ な い。こ の 傾 向 179

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(23) は 先 の タ ー ナ ー や マ イ ヤ ホ ー ヘ ル の 印 欧 語 辞 典 に も 共 通 し て い る 。 こ れ は 偶 然 で あ ろ う か 。 あ る い は 編 者 の 恣 意 的 な 操 作 な の で あ ろ う か 。 次 に 文 学 書 か ら の 記 載 が 多 い ア プ テ [Ante1986 ] を み て み た い 。 本 書 に よ れ ば,vajra は 以 下 の よ う に4 つ に 区 分 さ れ て 記 載 さ れ る 。 ① 形 容 詞(vajra )1

)hard,adamantine;2 )severe;3 )forked,zigzag;4)cross(2) 男 性 及 び 中 性 名 詞 (vajrah,vajram)1 )athunderbolt;2 )anydestructiveweaponlikethethunderbolt;3 )adiamond-pin;4)adiamondingeneral,anadamant;5 )sour8gruel(3) 男 性 名 詞 (vajrah)1 )aformofmilitaryarray;2)akindof<Kusa>grass;3 )nameofvariousplants;4 )akindofpillar ( 軍 隊 の 陣 形 ,ク シ ヤ 草 の 一 種, さ ま ざ ま な 植 物 の 名 前 , 石 柱 の 種 類 ) (4 ) 中 性 名 詞 (vajram )1

)steel;2 )akindoftalc;3 )thunder-likeorseverelanguage;4 )achild;5

)emblicmyrobalan;6 )theblossomofthesesamumorVajraplant;7)denunciationinstronglanguage;8 )aparticularpostureinsitting ( 話 の 一 種 , 雷 の よ う な 激 し い 言 葉 , 子 供 , 植 物 , 威 嚇 , 判 こ日 の 一 掃 ) 以 上 の よ う に,vajra に は 多 く の 意 味 が あ る が , 巾 の 形 容 詞 か ら い う と ,1 ) 堅 固 な,2) 激 烈 な,3 ) 枝 分 か れ し た , ジ グ ザ グ の ( 稲 妻 形 の ),4 )「 十 字 形 の 」 と い う4 種 で あ る 。 こ の う ち ,3 ) と4 ) は , そ れ ぞ れ 「 堅 固 な < ダ イ ヤ モ ン ド > 」 と ,「 激 烈 な < 稲 妻 > あ る い は そ の 具 象 化 で あ る < 金 剛 杵 > 」 と の 関 連 を 想 起 さ せ る 。 さ ら に (2 )∼(4 ) の 名 詞 を 大 別 す る と ,1. ダ イ ヤ モ ン ド あ る い は 鋼 の よ う な 堅 固 な も の,2. 電 撃 , 稲 妻 あ る い は そ の よ う に 激 烈 な も の ( 武 器 と し て の 金 剛 杵 , 言 語卜3. 植 物 の 一 種,4. そ の 他 ( 陣 形 , 座 相 , 石 柱 , 子 供 な ど ) の 四 つ に な る 。 そ れ ら の 内 容 も 基 本 的 に は ベ ー ト リ ン ク [Bohtlingk 工990] と 一 致 す る と 言 え よ う 。 以 上 の よ う に お お よ そvajra は , 古 い ヅ エ ー ダ 文 献 に は 「 電 撃 , 稲 妻 」 と し て , そ の 後 に 展 開 し た 文 献 , 特 に 文 学 や 法 典 類 な ど で は 「 ダ イ ヤ モ 178

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(24) ンド 」あるい は「鋼 」とい う 硬質のもの を含む ように なるの である。 そ の 詳細な 素材の 検討は後 述するこ とにし て,こ れを辞 書に よる限 りでの とりあ えずの字 義としてお く。 2.Vaira とその 語 根 動 詞 マ クド ネル[Macdonell1976 ]は ,語 源としての動 詞 の 下 位 に 名詞を

体系づけ て 掲 絨 する,そ の 説明によれ ば,vajra に は1)thunderbolt,2 )adamant,diamond とい う二つ の 意味 が あ り,1 )thunderboltに ついて は ,

「イ ン ド ラ神や他の神々 の神 秘的 な武器, 破壊的 呪 文 ・ 魔 法」と 解説し ,2 )adamant,diamond (堅 固な も の,ダイヤ モンド) の方 は ,「 一般 的 に

は 中 性 名 詞」 と付記 し,こ れに 関 連 す る 動 詞 と し て, 括 弧 付 きで,√vai(tobehardorstrong) を措定 し て い る,つ 動 詞√吸毎に つ い て は,別 項 目 で 掲載 しているが ,その 説明で は √vrajは 一 類 動 詞で [動く,進 む]「到達 す る,得る」「 出 発す る, 即 れる」 と い う 動きに 関す る 意味の他,「 逆 ら う, 敵を攻撃す る」(togoagainst,attackanenemy (vidvisa))と い う 意 味 もあ る と す るが,vajra と関連付 けて はい な い。 次にモ ニ ェ ル[Monier1899 ド )を 見 る と, 動詞√vajは お そ ら く√vraj の崩れ た形であ る と して,そ れ ぞ れ以 下のよ うに説明 する。

√vaj:cl.1.P.vajati(pf.vai 面‘a ,fuいvajita&c. ,Gr.),togo,Dhatup ,vii

,78:Caus.ord.10.p.vajayati ,topreparethewayt(trimorfeatheranarrow(marga-,ormargana-samskare ),Dhatup. χχχii,74.

√vraj :cl.1,p.vrajati,togo ,walk ,proceed ,travel,wander,move.Dhatup.viii ,79,togoagainst ,attack(anenemy;alsowith [vidvisam ]) ま ず,語 根√vai は「 行 く 」あ る い は,「 道 を 整 え る,弓 矢 に 羽 根 を 付 け る 」 と い う 意 味 で あ る が , √vrajは 「 行 く , 歩 く , 前 進 す る , 歩 き 回 る 」 等 の 他 に ,「[ 敵 を ] 攻 撃 す る 」 と い う 意 味 が あ る か ら , 稲 妻 の 威 力 に 関 連 す る の は こ の 語 根 √vrajiこ由 来 す る と 想 定 し た も の と 思 わ れ る。た だ し , −177 −

(6)

(25 )

本辞 典では√vaj の意味が (togo) と さ れ て いるよ う に ,√vajそ のも の の解 説では なく, 明ら か に√vrαノと 同一 視し た 結 果,こ の ような 記載 を し た ものと 考え られるっ モニ エ ル の 説 明 で 注目され る のは,t{gra バ刀as,vajra,vajaか ら推定 される語 源 とし て,「堅 固 に する, 固 く す る」を 意味す る動 詞√vaiあ る い は√爾を指 示 し てい る 点 で ある, また,ugra の項でも,この 語は 「√麗 に 山 来す る と さ れるが , おそらくは√ujあ る い は√vaj に 肝来す る もので あ る。そ し て ,ojas,vajra,vaja もまた同様] と 述べて い る。これ らugra-,やoμas-は 水 や 光 明 ,エネ ル ギー ,力 など とい う意味であるか ら , 明らかに 「稲妻 , 雷 電」と い う意味 のvajraと 同 類 の 語 源 を 意味し , ダイ ヤモンドと い う意味 で はない 。 ター ナ ーもモニェ ルと同 じ く,vairaの 語 源 に√s バbestrong ) を明 記 し,こ の動詞から派生 し た 語 と して,ugra-,ojas-,ojman-,vajra- ,vaja-をあ げてい るこ と が 指 摘できるし ,通常の辞 典では ないが,『リグ・ヴェ ー ダ』(RV )の 最 も詳細 な 辞 典 であ る グラスマ ン[Grassman1955 ]に よ れ ば, 語 根vaj,ujは同 項 目で,regeseinkraftsein と し,vajra をその 派 生 語の 一つとす る。 以十。の よ うにvajra の 語根は 「 堅固に する,強くする 」を 意 味 す る 一類 の 動 詞√vaj,uj であって,モニエ ルが ,その 元 の 形 とも言われる √vraj「歩 く , 動く,[ 敵 を ] 攻 撃 す る ] であ る とする 解 釈 は 無 理であ ろ う。そして こ の ヴァジュ ラは インド 神 話では 常にイ ン ド ラ神 の 武 器 と し て知ら れ る ものであ る,

第2 章 リ グ・ヅエーダのインド ラ神とvajra

1. イ ン ド ラ 神 と 雷 霊 の 系 譜 インド ラは 天 空 神 と 似 た 性 格 を 持つが , そ の 性 格 はディ ヤ ウス (Dyaus ) に 帰す べきで あ る。デ ィヤウ スは起源的にインド ・ヨーロ ッ パ 語族 共 通 時 代に さ か の ぽ ること が で き る最も古 い 神 であ る。そ の こと はDyaus (< √dyut“ 輝 ぐ )とい う 語形 か ら言え る。この 語形 はギリ シ ヤ 語 の ゼウスZeus (Djeus )と同 語 源 で あ る ことを示し ,また ディヤ ウ ス・ ピ ク ル(Dyaus-pitar 天な る 父)と い う サ ン ス ク リ ッ ト 語形 はギリ シ ヤ −176 −

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(26) 神 話 の ゼ ウ ス ・ パ テ ー ル (ZeusPatir ),ロ ー マ 祁 話 の ユ ピ テ ルIuppiter (Dyu-piter 父 なる 神 )と対 応 す る。,し か し 汀 リ グ・ヅ エ ー ダ 』に は, デ ィ ヤ ウ ス単 独 の 讃 歌 は な く, 大 地 の 神プ リ テ ィヴ ィ ー(Prthivi ) と 常 に 対 を な し てdyavaprthiviと 呼 ば れ , 讃 歌 が 捧 げ ら れ た。こ の 二 人 の 子 加 イ ン ド ラ で あ る (4.17)。 イ ンド ラ の 出 生 は 特 異 で あ る。彼 自 身 は 生 ま れ る こ と を 欲 せ ず , 母 は 非 常 に 長 く彼 を 体 内 に 宿し (3.48:4.18), 母 は 神 々 の 嫉 妬 か ら 彼 を 守 る た め に 生 ま れ た 後 に 彼 を 捨 て た。彼 の 父 も 彼 の 力 に 敵 意 を もっ て お り , お そ ら くそ の 自 衛 の た め に 父 親 を 殺 戮 し た。こ の 特 色 は 嵐 の 雲 を 雲 散 霧 消 さ せ る 光 明 の 概 念 に 由 来 す る。彼 は 生 ま れ て か ら 天 空 を 輝 か せ る (3.44) と 伝 え る の も, こ の 説 の 根 拠 と なる。 イ ンド ラ は 様 々 な点 て ギ リ シ ア の ゼ ウ ス(Zeus ),ロ ー マ の ジ ュ ピ ター (Jupiter), チ ュ ー ト ン 口euton 北 方 ゲ ル マ ン ) 人 の ト ー ル (Thon つ 神 な ど と 類 似 し てい る。こ れ ら は み な 天 空 神 であ り ,宇 宙 の 支 配 者 で あ る 。 ま た 彼 等 は 戦 闘神 で あ り ,杵■ 雷 寝 ) と い う 共 通 の 武 器 を も つ 。 例 え ば , 鍛 冶 神 ト ゥ ヴ ァ シ ュ ト リ は , ヅ リ ト ラ と 戦 う イ ン ド ラ の 武 器 〔 ヴ ァ ジ ュ ラ 〕を 作 っ た が, ギ リ シ ヤ に お い て は 鍛 冶 神 ヘ フ ァ イ スト ス(Hephaistos ) が , テ ュ フ ォ ン を 打 倒し た ゼ ウ ス の 武 器で あ る 雷 寝 を 作っ た と さ れ る。 また, 北 欧 神 話 の雷 神 ト ー ル( 古 ノ ルド 語 で は ソ ー ル <Pbrr>) はブ ロ ッ クと エ イト リ 兄 弟 が 作っ た 槌 あ る い は杵 で あ る ミ ョ ル ニ ル(Mjollnir) を 用 い て 巨 人 を 撃 ち 殺 す。ト ー ル 神 は イン ド ラ 神 と同 じ よ う に 常 に 槌 を 持 っ た 姿 で 表 さ れ , 北 欧 の 多 く の神 殿 で 見 い た さ れ た とい う 。 2. イ ン ド 神 話 に お け る イン ド ラ 神 イ ンド 神話 にお い て , イ ン ド ラ (Indra ) は 武 勇 の 神 で あ り , イ ン ド の 先 住 民 を 征 服 し , ア ー リ ア ン に 勝 利 を も た らす 神 で あ る 。 ま た 自 然 神 と し て は 天 空 の 神, 特 に 雷 を 操 る 雷 逞 神 であ り, 旱 魅 や 暗 黒 の 悪 魔 を 克 服 し , 光 の 勝 利 あ る い は 水 の 開 放 を も た ら す 。 こ れ が 神 話 的 な 彼 の 性 格 を 規 定 す る とい っ て よい 。 『 リ グ・ヴェ ー ダ 』(RV ) の 中 に は250 の 讃 歌 が イ ンド ラ に 捧 げ ら れて い る が , こ れ は 全 体 の 四 分 の 一 に 及 ぶ 数 で あ る。 そ も そ も イ ン ド ラ 神 は イ ン ド ・ イ ラ ン の 共 通 時 代 に 遡 る 古 い 神 で あ り , 紀 元 前14 世 紀 の ア ナ ト リ 175

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(27) ア 半 島 を 支 配 し た ヒ ッ タ イ ド エ ス ピ ル リ ウ マ (BC1380-1346 ) と ミ タ ン ニ 王 マ テ ィ ワザ と の 間 に 結 ば れた ヒ ッ タ イト 条 約 の 中 に も ,ミ ト ラ,ヴ ァ ル ナ , ナ ー サ テ ィ ア ( ア シ ュ ヅ イ ン双 神 ) の 名 と と も にIndar あ る い はIndara の 名 で 記 さ れ て い るこ と は よ く知 ら れ て い る。 そ の 姿 は 黄 褐 色 (hai-i)号 頭 髪 も 髭 も 同 じ く 黄 褐 色 で (10.96.5,8;10.23.4 ),暴 風 神 の マ ルト 神 群 を 従 え る。 二 頭 の 名 馬 ハ リ (hari) の 曳 く 戦 車 に 乗 っ て空 中 を 駆 け め く丿 (10.96), 神 酒 ソー マ を 飲 んで に ヒ気 を 高 揚 さ せ て 敵 と 戦 う 。 そ の時, 神 々 の 大 工(鍛 冶 神 )ト ヴ ァ シュ ト リ(tvastr) の 作 っ た 武 器 で あ る ヴ ァジ ュ ラ を 振 る い , 電 光 と 雷 鳴 を 轟 か せ て 敵 対 す る ブ リ ト ラ (vrtra) を 殺 戮 す る。 3. リ グ ・ ヴ ェ ーダ に お け る イ ンド ラ 神 『 リ グ・ ヴ ェ ー ダJ(1-85-9,8-29-4) で は , イ ン ド ラ 神 は 蛇 の 姿 を と る ヴ リ ト ラ を ヅ アジ ュ ラ (電 撃 ) で 粉 砕 し , 水 と 光 明 を 人 間 界 に 解 放 し た と い う。そ の あ り さ ま は , 次 の よ う に 述 べ ら れ る。, 1 。 名 匠 ト ゥ ヴ ァ シュ ト リO 二巧 神 ) が , い み じ く 作 ら れ た る 黄 金 ・ 千 鈷 の ヅ ア ジ ュ ラ ( 電 撃 ) を 転 現 せ し め た る と き , イ ンド ラ は 〔 そ れ を 〕 手 に と れ り, 雄 々 し き業 を な さ ん が た め に 。 彼 は ヅ リ ト ラ (悪 魔 ) を 殺 し た り, お び た だ し き 水 を 流 出 せ し め た り 。(1.85.9)23 [辻1970:63]2. ( イ ン ド ラ ) は 手 中 に 置 か れ た る ヴ ァ ジ ュ ラ ( 電 撃 ) を た ず そ う。 そ れ に よ り 彼 は 仇 敵 ( ヴ リ ト ラ等 ) を 撃 滅 す 。(8.29.4.1)[辻1970:228]3. わ れ は 今 宣 ら ん。 イ ン ド ラ の 武 勲 〔 の数 々 〕 を , ヴ ァ ジ ュ ラ (電 撃 ) 手 に 持 つ 〔 神 〕 が , 最 初 に た て し と こ ろ の。 彼 は ア ヒ (「 蛇 」 = ヴ リ ト ラ) を 殺 し , 水 を 穿 ち い た し , 山 々 の 眸 腹 を切 り 裂 い た。(1.32.1八 辻1970:150]4. ト ゥ ヅ ア シ ュ ト リ ( 工 巧 神 ) が イ ン ド ラ の た め に 鳴 り 響 く([ 辻 ]970:152 ]注田 で,「鳴り響く」を( 太陽のごとく輝く壮 する) ヴ ァ ジ ュ ラ を 造 っ た 。(1.32.2)5. 嗚 き つ つ 〔仔 牛 の も と に 赴 く 〕 乳 牛 の ご と く , 水 は 流 れて , 速 や か に 海 に向 か っ て 落 下 せ り 。(1.32.2) 174

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(28) 6 。 寛 容 な る 〔 イ ン ド ラ 神 〕 は 飛 び 道 具 と し て , ヴ ァ ジ ユ ラ を 執っ た。 (1.32.3)7. 彼 は 蛇 族 の 初 生 児 な る も の ( ア ヒ ) を 殺 し か。(1.32.3)8. そ の と き 太 陽 ・ 天 界 ・ 暁 紅 を 出 現 せ し め , 爾 後 汝 は 実 に 敵 対 者 を 見 出い だ さ ざ り き。(1.32.4)〔 出 典 : 辻 直 四 郎『リ グ・ ヴ ェ ー ダ讃 歌レ 岩 波 書 店,1970,p.150 』 上 記 のよ うに, イ ン ド ラ 神 はヴ ァジュラ に よって アヒ (蛇 =ヴリ ト ラ・) を 殺し,水を穿ち い だ し た と するが ,ヴリトラvrtraと は「妨 げるも の」, す な わち 空 を 覆う雲で あ り,旱 勉 の悪魔 で ある。した がっ て, 雷遷(vajra) を操 る雷神イ ン ド ラ が こ れ を打 ち 破 り,水と 光 明 を 人 問世 界(地 上)に も た ら す と い う , 自 然 現 象 を テー マ にし た 神 話 な の で あ る。 「鳴 き つ つ〔仔 牛 のもと に赴 く 〕 乳牛のご とく, 水 は流 れ て,速 やか に海 に 向 かっ て 落 下 せ り」と は, まさに 電 撃 と 雷嗚をと も な う 雨をイ メー ジしてい る。な お , イ ンドラ 神を 「ヴァジ ュ ラ を 手 , あ るい は 腕 に 持つ もの」と 称 する のは , このため で あ る。 4. イ ン ド ラ 神 の 異 名 と し て のvajra 関 連 語RV に お けるvajra につい て は ,す で にBlinkenberg が 比 較 文 化 の 視 点 か ら,Macdonell が 厳 密 な 文 献学を 踏 まえた 分 析 を し て い るが ,こ こでは 彼 等 の 研究を 踏 ま え て ,ヴァ ジ ュラ と イ ン ド ラ 神 の 関係を 示 す術語に つ い て , さ ら に 厳 密 に 考 究 し て み た い。 筆 者 の 見る 限りRV に おけるvajra の 用 例 は 合 計286 件で ある。それ ら の ヅア ジ ュラ を雷 宣と訳 す る根 拠 は前 に述べた が,ヴァ ジ ュラ は イ ン ド ラ 神 に 結 びつけ ら れ る 最 も 適 当 な 武器と さ れ る。,そ の イ ンド ラ の別 名に は ,vajra-daksina( ヴァジ ュ ラを右 手 に 持って い る ),vajra-bahu ( ヴ ァ ジュ ラ を 手 に携え て い る),vajra-bhrt (ヴァジ ュ ラ を携え て いる),vajrivat (ヅア ジュ ラを腕と す る ),vajra-vahor-vah ( ヴァジ ュラ を 振 る う , 持

つ ),vajra-hasta ( ヅ ア ジュ ラを 手 に す る ),vajrin( ヴァジ ュ ラ を 持 つ ),suvajra (よ きヴァジ ュ ラ を 持った)な ど が 見 ら れ よ う に ヴ ァジ ュラに 関 連す るも の が最 も 多 い。

そ の 中 で も 代 表 的 な の はvajrin,vaira-bahu,vajra-hasta (1.32.1,-15;

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1。85.9;2.12.12,-13,2.19.2a,2.33.3a)で あ り,いずれも「vajra を( 于 あ る い は 腕 ) と す る」と い う意味 の 術語 である.RV に おけ るこら れ の 使 用 頻 皮 を 見 る と ,主 な も の は,vajrin (35 件:vairi は79 件),vajri(18 件 ),vajrahasta( 。19

件),vajrabahu (17 件) と な っ て い る, な お , 後 代 の 密 教 で 「 金 剛 手」あ る い は「 執金剛 」 な ど と 訳 さ れ るvajrapani [ ヴァジュラ を 于 に 持つ レ者 ]) とvajradhara (ヅアジ ュ ラ を 保 有 す る 者)は.RV に は見 られな いこ と を敢えて指 摘 し て お く。 5.Vajra の 形 状 と 素 材 ヴ ァ ジ ュ ラ の 形 状 に つ い て は ,上に 引 用 し たRV の よ う に 「 い み じ く 作 ら れ た る 黄 金 の干鈷」(vajramsukrtamhiranyamsahasrabhrstim ) と さ れ る。そ の 他 に も「干 鈷の“ か ね ”のヴァ ジ ュラ 」「va」raayas的sahasrabhrstir1.80.12 ),r干鈷 の ヴ ァ ジ ュラ」va」ramsahasrabhrstim (6.17.10),「干li'iJsahasrabhrsti(9.83.5,9.86.40 ) の よ う に ヴァジュ ラ の 形 状 は 干 鈷 と い う 放 射 型のイメージ がある。そ れ 以 外 に も,n?

鈷 の ヴァジ ュラ 」(vajrenasataparvana8.6.6 ),「四 角 の」(caturasrim,4.22.2 ),「鋭 い 」(tigmam,7.18.18) な ど も あ る。た だ し , そ の 川 例 は 例 外 的であ る と言わざ る を 得 な い。つ 素 材 に 関 わ る も の と しては , ダディ ーチャ(dadhica ) イIllの 骨 と す る 伝 承 が あ る。 それ はRV の 「インドラはダディーチャの 骨 か ら , 制 御 で き な い ヅ リ トラを 九 十 九(の方 法 ) によって〔 多数 の ヴ リ ト ラ を〕殺 し た 」 と い う 叙 述 を 源 とする。こ の 伝承 は 後 代 に なってMahabharata (Mbh ) 等に お いて さ ら に変更 が 加 え られつっぱダ デ ィーチ ャ[仙 ] の 骨 か ら 破 壊 的 な 悪 魔であるヴァ ジ ュラ が 造 ら れ た」 。「以 前 に 偉 大 な る イ ン ド ラ[神]のヴ ァジュ ラがヴリ ト ラ の 殺害にお い て 造 ら れ た。 ま さ に 十 の 方 法 , ま た は 百 の 方法 で,そ のブ リ ト ラ の 頭 を 砕 い た 」 な ど の よ う に 述べられる。 し か し , そ れ は「イ ン ド ラ の 黄金の ヅアジュ ラ」「indrasyava 」rah…hiranyayah1.57.2), 「 黄 金 の腕で あ る ヅ ア ジュラを 持 つ[も の]」「vajrihiranyabahuh7.34.4 ),「 褐色のくか ね> のヴァ ジ ュラ」「vajroharito …ayaso10.96.3 ),「 褐 色 の 武 器であ る ヴァ ジュ ラ」「ayudhamvajram …harim3.44.4 ), 明る く輝くヅア ジ ュ ラ (vajramsukrair3.44.5 ).「< か 172

(11)

(30) ね > の ヴ ァ ジ ュ ラ 」(vajramayasam1.52.8 ) な ど の よ う にvajra が 金 属 (hiranya,ayasa ) と 関 連づ け ら れ る 。Hiranya は 一 般 的 に は 金 (gold ) で あ る が, 銀 (silver) を 意 味 す る 場 合 や , 貴 重 な 金 属 一 般 (anypreciousmetal) を 意 味 す る こ と も あ る。ayasa ( か ね )がvajraに 関 連 づ け ら れ て 用 い ら れ る 例 は ,RV で は 少 な く と も5 例 以 上 あ る 。ayasa は 一 般 的 に は 「 鉄(iron ),鉄 製 の 」 と 訳 さ れ て い る が , こ れ が そ の よ う な 具 体 的 な も の を 意 味 す る か ど う か は 疑 問 で あ る 。 リ グ ・ ヴェ ー ダ が 成 立 し た 時 代 (BC12ca) に , 製 鉄 技 術 が 知 ら れ て い た か , ど れ ほ ど 普 及 し て い た か は , 疑 問 視 さ れ て い る し , 現 在 の 研 究 状 況 か ら し て , こ の 問 題 を 軽 々 に 断 定 す る こ と は で き な い 。 た と えD. コ ー サ ー ンビ ー (ISIH70-71 ) の 主 張 す る よ う にvrtra が 悪 魔 で は な く ,「 堰 」「 ダ ム 」 を 意 味 し た と し て も , 鉄 製 の 武 器vajraで ダ ム を 決 壊 さ せ て, 河 川 が 停 止 状 態 に な っ た(tastabhanah ) とい う ヴ ェ ー ダ の 解 釈 は , 巨 大 な 破 壊 兵 器 を 想 定 し な い 限 り ,あ り 得 な い で あ ろ う 。 し た が っ て ,RV に お い てvajraを 形 容 す るhiranya は やayasa を , 金 や 鉄

と 言 っ た 具 体 的 な 鉱 物 と す る 解 釈 は 採 用 で き な い 。

お そ ら く,hiranya もayasa も , 金 , 銀 , 鉄 と い う 具 体 的 な 物 よ り ,metallic ( 金 属 製 ) な も の , 最 も 堅 固 な も の と い う 程 度 の 意 味 で あ る の

だ ろ う 。 ま た そ の 輝 き も重 要 な 要 素 で あ っ た に 違 い な い 。

そ のこ と を 明 確 に 示 す の が , 辻 [1970:150 ] の [ 飛 び 道 具 ](1.32.3) と い う 訳 で あ る 。 そ の 原 語 は 実 はsayaka (missile ,arrow) であ り, そ の 限 り で は 問 題 が な さ そ う で あ る 。 辻[1970:172 ]は 別 の 同 様 の 箇 所 で も 「 イ ン ド ラ は ヴ リ ト ラ の 急 所 に ヴ ァ ジ ュ ラ ( 電 撃 ) を 飛 ば し た り 」 (8.100.7cd ) と 一 貫 し た 翻 訳 を 行 っ て い る 。 こ の 「 ヴ ァ ジ ュ ラ ( 電 撃 ) を 飛 ば し た り 」 の 原 文 を 見 る と,vairam …apipatat (Caus.aor )で あ る 。 こ こ で 辻 が 「 飛 ば し た り」 と訳 し た 動 詞apipatatの 語 根 は, √pat( 落 ち る )で あ る か ら ,こ の 箇 所 は[ ヴ ァ ジ ュ ラ を 落 と し た り ] と 訳 す こ と が で き る 。 ま さ に こ れ は 落 雷 を イ メ ー ジ さ せ る 文 脈 で あ る 。 た だ 問 題 は こ の よ う な 表 現 が 次 第 に 具 体 的 な イ メ ー ジ を 強 化 し ,ayudha ( 武 器 ) と し て の 金 剛 杵 を 形 成 し て い っ た 可 能 性 は 否 定 で き な い 。 た と え ば ,「vajraを 武 器 と し て 手 に 持 つ 」「va」ramhastaahitam, 171

(12)

(31) hastaayudham )(RV8.29.5) とい う言葉 は,手 の中 に収 まる 具体 的な 武 器を想 定 させる こ と に なり, 素 材や 形状 も より 具体 化 し ていっ たは ず であ る。 なれ 『ア タル ヴ ア・ヴェ ーダ』ではそ れが 梶棒 とし て 具象化 さ れる。 さら にSadvimsa-Brahmana で はdiamond とし て の用 法もあ っ た とい う二 ●● ● ● こ の問 題につい て は, 後述 するつ もりであ る。 [ 本 稿は ,平 成 拓 ∼17年 度 科学 研 究 費 補助 金 一基 盤研 究C (2)「 金 剛 般若 経の 成立 と展開 につ いて の研究 」 の研究 成 果の一 部 であ る。] −170 −

(13)

(32)

(Footnotes)

IM.Monier-Williams,Sanskrit 一Engli・shDi・ctionary,Ety 槻ologicaUyPhiloligicallyArrangedwithSpecialReferencetoCognateIndo-EuropeanL 皿iguages ,OxfordUniversityPress

ユ899 では ,この 意味の他にvaira は,「呪 文 あ る いは魔力(spells01 ・charms) と いった 破 壊的な,どのよ う な神謡 の 武器にも 適 用される」 と い う言語的意味 を 加え てい る。こ れ はマ ン ト ラ( 貞 山 と し て の機 能で あ ろうが, この説 明で も破 壊 的(destructive )と さ れ る 点 が重 要 で あ る。2R.L.Turnei

・,AComparati ・veDi・ctionaryoftheIndo-AryanLanguages ,0 χfordUniversityPress,1966,#11202,11204.3ManfredMayrhofer,KurzgefatesetytnologischesWorterbuchdesAltindischen,AConciseEtymologica,SanskritDictionary,Heidelberg,1956.4

また,Mayrhofer [1956,126] は以 ドの 記 述は 如実 では な い としな が ら,ギリ シ ヤ謡で破 壊 を意味す る「aryXfiiに 「 裂 く 」を意味 す るトカ ラ語A,B のwak 一

その他, ソ ク ド語 のvz'rk(buzuruk ) や インド・ア ーリ ヤ 語 起源の フ ィ ン ラ ン ド 謡でハンマー を意味す るvasara ,トカラ謡 Λ.B の・wastr-コ ー タン・ サ カ 語 のvaiira-な ど が 共 通 語 源と して 指 摘 さ れ て い る。,5OttoBohtlingkundRudolphRoth,Sanskri

t-ぶ∂rterb政ch.HerausgebenvonderKaiserlichenAkademiederWissenschaften,NeudruckderSt.PetersburgAusgabevon1855-1875,ReprintEdition,MothilalBanarsidass:Delhi,1990.vajra

の 介 成 語 の 後分 と して,indra-vaira.indra-vajra,upendra-,karma-vajra,inana-,dana-,nica-,llla-,Saivala,Sona-,sv

arna-を 付 記 し ている。6Chr.Blinkenberg,TheThunderweaponinReligionandFolklore,AstudyinComparativeArchaeology(Cambridge,1911,p.113)

で は , これをanameforplantscontainingamilkyjuice

(euphorbia ) と す る。7VamanShivaramApte,ThePracticalSanskrit-EnglishDictionary,Revised&EnlargedEdition,1986,Kyoto:Rinsen.8

こ の う ち 第1の「 宙 電」に は.theweaponofIndra(saidtohavebeenformedoutofthebonesofthesageDadichi )と い うSakuntal 瓦2.16 の 例を引 川 し,第3

に は ,aninstrumentforperforatingjewels と し て,Raghuva 押a1.4 を引 川 , 第4 に はUttararamacarita2.7 とRaghuvam 仙6.19 を引 用 する。第5 は「酸っぱ い 粥」とい う 意味で あ るが ,珍 し い 用 法 で あ る。9

[Macdonell1976 ]A.Macdonell,APracticalSanskri ・?Di・ctmnary,OxfordUniversityPress,1976.

(14)

(33)

10M.Monier-Williams,ASanskrit-EnglishDictionary.Oxford.1899,pp.913-914. 11Another √vaioruj,'tobehardorstrong',maybeinferredfromugra,ojas,vajra,vaja

(qq.w.),thelastofwhichgaverisetotheNom.vajaya,q.v.[Forcognatewordsseeunderugraandojas.].. なお ,√vaj と√uj を同 じ 語 根と見

る のは,Grassmam[1955] も 同 様である。12

その匈graIよpowerful 、violent,mighty,impetuous,strong 、huge,formidable,terrible の 他,hi^h,noble やcruel,fierce,ferocious,savage ;angry,passionate,wrathful

;hot,sharp,pungent な どを意味する形 容詞 で あ り ,またojas は「強 さや力 ,活 力」 (bodilystrength,vigour,energy,ability,power) などの他 , 「水 , 光 明, 輝 き,光 沢」 (water,light,splendour,lustre )を 意味す る巾 性 名 詞 とする。13Turner[1966:#11202,11204!

.なお,タ ー ナー に よ れ ばvajra はPaliではvajira-,Prakrit で はvajja-,vayara-,vaira- と す る。14HermannGrassman,W

∂rterbuc/?zuntRig-Veda,OlUHarrassowitz:Wiesbaden,1955,#1196.15

針 旦 川 生『ヴ ェーダ か ら ウ パ ニ シ ャ ッ ド へi (清 水 占 院,2000,pp.3'1-'15), 辻 直卜│ 郎r 辻 心 川郎 著 作 ≪i│第 ミ巻 <文学 > (法蔵館,1982,pp.2;iO-231) を 参照。16 ヘパイ ス トス は オリン ポ ス 十l 神 の一つ で 火 山 の 神, 鍛冶 の神 で,ローマ 神 話の ウ ル カヌ ス (Vulcanus 卜笑 語 読 み で ヴ ァル カン (Valcan )にあた る。上 記 の鍛冶 の神につい ては,M. エリア ー デ 著,荒木 ・中 村・松 村 訳『世 界宗教 史IJ 「冶金術の 宗 教的 文脈- 一一鉄 器 時 代 の 神 話」(筑 摩 書))),1991,p.58) を参照 し た。17 文字通 り「打ち砕 くも の 」と いう 意味。ト ール 神 が 持 つ こ と か ら 「トゥ ール ハ ン マ ー」 あ る い は「ウ ォーハ ン マー」と 呼 ば れ る。投げれ ば 相 手を打った 後 に町び 手 元 に 戻 り , 掲 げる こ と で 雷 を呼び出 すこと も でき, 大き さも 自 在 に 変える こ と ができる と さ れ る。ソール 神 とイ ン ドラ の類 似性に つ いては,M. エ リ ア ー デ 著,島田裕巳・柴 田史子訳「世 界 宗教 史 」「ア ー ス 神 族 冶 テュール , ソール, バ ルド ル」( 筑 摩 書房,1991,pp- 。172-173) を参照。「 エッグ」 で は,オー デ ィ ン と ヨル ズ の子。18 ブ レ イ ザー(JamesG.Frazer ) によ れ ば ご 占代ゲ ル マ ン人の雷違神ドナ ル , あ る い はトゥ ナル ,チ ュー ト ン 人の 雷 神 ド ナル ,ト ゥナ ル,トール(Donar,Thunar,Thor ),イタ リアの雷神 ユーピ テ ル, ス ラブ人 の 雷 神 ベ ルン ,リ トゥ アニア人の 主神ペ ル ク ナ ス ,あ るい はペル ク ン ス な ど の 雷 や雨 の 神 が. カシ ワ(の 樹)と 並 ん で,彼 等 の 万 神 殿 の 主 神で あ'), アーリ ア 系民族 に 共通の - 168

(15)

(34 )

信 仰であった こ と が 述べら れ ている。『ブ レ イ ザー著・永橋 卓 介 訳r 金枝篇』

第二l巻, 岩 波書店,1990 年版,pp.31-36) 。な お , バ シ ャ ムは イ ン ド ラ 神 が雲

中の ヅ リ トラを 打 ち 倒す讃 歌 につい て , マ ル ドゥク神が混 沌の神 テ ィアマ ト

を打ち倒し , 宇 宙 を 創 造 す る という , メ ソ ポ タ ミ ア の 天地 創 造 神 話 の 異 形 と 推 測 し て い る。A.L.Basham,TheWonderthatwasIndia,London,1954( 日 野 ・ 金 沢 ・ 水 野 ・ 往 ヒ訳『バ シ ャ ム の イ ン ド 百 科』山喜 房仏書林, 平 成16,p.392 )。19 イ ン ド ラ がヅ アジュラ を 用 い て アーリ ア ン の 敵を 粉 砕する 様 子 は ,『リ グ ・ ヴ ェ ー ダ』に 次 の よ うに説 か れ て い る。(ム ド ガ ラMugada 仙の 言 葉 )「敵意 を 抱き 殺害 せ ん と する者のヴァ ジ ュラ(武 器 , 梶 棒)を阻Ih せ よ, イ ン ド ラ よ。 あ る い は ダーサ(先 住 民)あ るいはアー リ ア 人 の凶器を,寛 容 なる [刊│]( イ ンドラ ) よ , 遠 方 に駆逐せよ。」(10.102.3)[ 辻心 四 郎『リ グ ヴ ェーダ 讃 歌 』 岩 波書店,1970,p.332 ]。こ の 讃 歌 は ム ドガラ仙が, 戦 争競争 に 臨 ん で , イ ン ド ラに 勝 利を祈願 するもので あ る。辻 が こ こ で「凶 器」と 訳すのはvadhaf 武 器」 で あ り, ヅ アジュ ラ はアーリ ア 人 ばか り でなく, ダ ー サ といわれる先 住 民の 武 器 と さ れ る。20 辻直 四郎『イ ン ド 文 明 の 曙 − ヅエーダと ウパニ シ ャ ッドー 』岩 波書店,1967,pp.28ff.21 し ば し ば持 金 (hiranyaya) と し て 描 写 さ れ る こともある(1.7.2 )。22 針 汁 邦生F ヴ ェ ー ダ からウパニ シ ャッド へ』清 水 書 院,2000,p.42. な お,RV ではvaira は一般 に ト ヴァシュトリ (tvastr)が 造 っ たとす る が, 例 外 的 に イン

ドラ の 父(ディヤウスdyaus )が 造っ たとする 筒 所 も あ る(2.17 几23tvastayadvairamsukrtamhiranyamsahasrabhrstimstuapavartayat/dhatt ・● ● ● ● ● ● ●・●●indronariapamsikartaveahanvrtramnirapamaubjadarnavani//

[BarendA.VanNooten&GaryB.Holland1994:50124Blinkenberg

[1911,113 ]に よ れ ば,RV に お け る ヴァジ ュラ は イ ン ド ラ の 武 器

で,1,000 の 突 先,100 の刃 先 が あ る と い う。そ れ はayasas{ 鉄 製 も し く は 銅 製) と い わ れ , あるい は 一 ヵ 所 が 石(沿man) の 鉄 製 か , 黄 金製(hiranyayas) と

い わ れる。25A.A.Macdonell,VedicMythology,Strassburg,1898.Reprint:MotilalBanarsidass:Delhi,!974,p.55.26

通常は インド ラ 神に 帰 さ れ る 属 性 で あ る が, 例 外 的 に ル ド ラ 神(vajrabahorudra-2.33.3) の こ と と さ れ る。ル ド ラ 神 も 最 強 の 神であり , イ ン ド ラ 神 の 配

下である マ ルト神 群 の 交 友 関 係 に あ る。ル ド ラは台風 の よ う な 強 力 な 力 を 持

(16)

(35)

つ 神 で あI), 怖ろ し い 獣 のよう な 荒々し く,破 壊的な神で あ る。ヴェー ダの

聖仙は ルドラの脅威を他 に 振り向 ける ため に,この 讃 歌を 捧 げ る。27HermannGrassman,W 容rterbuchziim?Rig一Veda,OttoHarrasowitz:Wiesbaden,1955,p.1195.

そ の他,r 雄牛Ivrsana-.vrsabha-(5.40.3,7.49.1 」,「 寛容 な 神」maghavan

と い う 語 も 見られる。28

翻訳は[辻1970:150,152.155 ]を参 照された い。29indrodadhicoasthabhii"vrtrani 叩ratiskutah/jagliananavatlrnava/ バ1,84.13)30 インド ラが ブ ラ フ マーにヴリ トラを 殺 す 方 法 を尋。ね,ブ ラ フ マ ーがダ ディ ー チヤの 骨 に よっ て造られ たヴ ァ ジュ ラで ヴリ ト ラを殺す方 法 を 教 示 す る。さ

ら に,身を 捨てた ダデ ィ ーチヤ の骨 か ら トヴ ァシュトリが ヴァジュ ラ を作 り ,

インド ラ がヴリ ト ラを 殺す 話 は[Mbh3.98 ]以下 に 述 べ ら れ る。な お ,マハー ・

バ ー ラ タ のテク ス トは,TheMahabharata,textasconstitutedinitscr. ・tkalEdition,BhandarkarOrientalResearchInstitute,Poona,1971

を 使 用 し た。31dadhlcasyaslhitovajramkrtanidanavasudanai ソ/ (1.127.12c,d)32/purakrtammahendrasyavairamvrtranibarhane/da

乱dhaSaladhacaivatacchirnamvrtramurdhani//(1.158.47 )33ayas.ayasa を日 本語で「 鉄」 では な く,「強剛」な 素 質」,「か た く て丈 夫 な も の」 とい う 意味で 「鋼」 と 訳 すとし ても,一般 的 に は「硬 く 鍛えた鉄 , 鋼鉄 」と いう 意味で川い ら れる (広 辞 苑,漢 字 源) ため, ここでは〔しろがね・くろが ね・ こが ね・あ かがね〕 な ど の 金 属を総称す るとい う 意味で 「か ね」と訳 してお く こ と に した。 討D. チ ャットー パーデ ィヤー ヤ著,佐藤任 訳r 占代インド の科 学 と 技 術 の歴史 初 期 段 階j( 束方出 版.1992.p.430 ),多 く のインド 人 研究 者は , この問題に つ いて は様々 な 見 解 を持っている。ヴィ バ・トゥ リ パテ ィは , これら の凹 題 を 要 領 よ く 要 約 している の で。そ れを参照 して い た だ き たい。なお,N.R. パ ネ ル ジ ーは , 紀元 前一千 年 頃 に アーリ ア 人が 製 鉄 技 術をイン ド に 伝 え たものと考 え, インドに おける 鉄 屈 辱代の区 分に つ いて。 は以下 の よ う に区 分してい る。 卜 前1300-1畑 叫 ,(b) 肘00 −前800年,(川 畑0-liijGOO 年,(d) 前600 − 前200年。し か し 最 初 の(a)の 区 分 の 前1300年 と い う のは ,ラ ジャ ス タン の アハル(Ahar)とノホ(.Noh)の わず か な 証 拠に基 づいたも ので, 証 拠が 不十分 で あ り,あまり明確で な いと し て いる (N.R. バ ネ ルジー 「川家形 成と イン ド の 物質文化へ の 鉄 生 産の 影 響」〔D.チ ャ ットー パ ー デ ィヤ ー ヤ 著,佐 藤 任 訳『古 代 インドの 科 学と 技術 の 歴史 自 然利・学の 理 論 と理 論 原理 の形 成』所 −166 −

(17)

(36) 収〕 東 方 出 版,1993,pp,331-343,esp.pp.332-333. ) ま た,『チ ャ ラ カ ・サ ン ヒ タ ーjCaraka-samhitai.27.7 に は 鉄 (ayas ) は, ひ どい 皮 膚 の 腫 れ物 や , 精 系 静 脈 瘤 な ど の た め に, 湿 布 薬 と し て 用 い ら れ て い た。ま たayasa は 微 細 な 鉄 の 粉 末 , ま た は 特 別 に 調 察 さ れ た 鉄 (kalaloharajas,krsnayasa,kalayasarajas ) が あ り ,外 用 や内 服 用 に 用 い ら れ てい た こ と が 知 ら れる。D. チ ャ ッ ト ー パ ーデ ィ ヤ ー ヤ 著 ,佐 藤 任 訳『占 代 イ ンド の 科 学 と 社 会 一 古典 医 学 を 中 心 に』(同 朋 舎,1985,p.98-99) 参 照。35D. チ ャ ッ ト ー パ ーデ ィ ヤ ー ヤ 著 ・ 佐 藤 任 訳 , 前 掲書,p.422.36BarendA.VanNooten&GaryB.Holland [1994:20]37niSimvrtrasyamarmanivajramindroapipatat/ バMandala8.100.7cd)[BarendA.VanNooten&GaryB.Holland1994:416]38Turner[1966:653 ],11204vajraの頂。 −165 −

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