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滋賀県高月町における「高月学園構想」の成立及び具体化とその有効性に関する考察 : 学校の小規模化にともなう問題改善の一方策

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1 、はじめに 本稿は、滋賀県高月町において策定された「高 月学園構想」が、何をめざし、どのようにして 成立してきたか、またそれがどのように具体化 されようとしたかについて述べるとともに、こ の施策がどのような課題や可能性を持ち、今後 の学校教育改革に如何に有効であるかを検討す ることを目的とする。 さて、高月町は滋賀県北東部に位置し、人口 約 1 万人、東西 8Km・南北 4Km、面積約 41 平方キロメートルの比較的小さな町である。高 月学園構想は、同町教育委員会によって設置さ れた高月町学校教育将来構想懇話会が 2008 年 1 月に出した最終答申で提案した学校教育改革 構想であり、それは町内にある 1 中学校、4 小 学校をひとつの学校とみたて、中学校を核とし て各校の相互の接続・連携・協働により町全体 として学校を運営していくひとつのシステムの 構築を主たる内容とするものである。 周知の如く、現在学校教育をめぐっては様々 な問題が生じ、それは年毎に深刻さを増してい る。田園風景が広がり、自然と文化資源に恵ま れたこの高月町においても、児童生徒の問題、 学力問題をはじめ様々な問題があるが、とりわ け児童生徒数の減少にともなう学校の小規模化 は大きな問題である。高月学園構想は、こうし た問題を解決するひとつの方策として中学校改 築問題とからめて提言されたものであり、この 提言を受けた教育委員会、また町当局はその実 現、具体化に向けて、町の施策の最優先事項と して取り組みを進めていった。 ところで、高月町を含む滋賀県湖北 1 市 6 町 の合併がかねてより検討され、協議がなされて いたが、2009 年 3 月に合併協定書に調印がな され、2010 年 1 月 1 日をもって高月町も、新 長浜市に編入合併されることになった。このよ うな動きの中で、高月学園構想が新市の下でど う扱われ、また引き継がれていくのかについて、 本稿執筆時点でいまだ不透明な状況である。 高月学園構想の策定には筆者自身も関わった が、その方策はひとつの小さな町にとどまらず、 児童生徒の学力問題や問題行動、小規模校問題 などを抱える一定の他の自治体の教育施策策 定、あるいは今後の各自治体の学校改革の検討 にひとつの素材として有用であると信じてい る。また、身近なところでは、合併後の新長浜 市の教育行政においても、参考に供する点が

藤 田 弘 之

A Study on the Reform of the School System in Takatsuki Town,

Shiga Prefecture, Japan

―― With Special Reference to the Strategy for Improving Education

in the Schools which hold a Small Number of Pupils ――

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多々あるのではないかと思う。 本稿は以上のことをふまえて、まず、高月学 園構想がどのように成立し、それはどのような 内容であったかを述べる。次に、この構想が教 育委員会、また町当局によってどのように具体 化され、実践されつつあるかについて言及する。 その上で、高月学園構想に基づく教育実践がど のような成果と問題点を持ち、そのさらなる可 能性を担保するためにどのような条件が必要で あるかを検討し、この構想をさらに発展させる 教育施策や教育実践のあり方を探る。最後に、 高月学園構想の意義と有効性について、総括す る。 2 、「高月学園構想」の成立 (1)高月町学校教育将来構想懇話会設立事情 すでに述べたように、高月学園構想は、高月 町教育委員会が 2007 年に設置した高月町学校 教育将来構想懇話会によって練り上げられ、会 の議論の中で成熟し、形成されていったもので ある。しかし、その下地をつくり、懇話会に助 言し、さらに構想の具体化の衝にあたり、イニ シャチヴをとったのは、教育長西坂重和であっ た。 西坂は高月町に生まれ、高月町の学校で学び、 地元の虎姫高校を卒業した。同校卒業後、金沢 大学理学部で数学を専攻し、同大学を卒業した 後、滋賀県内の高等学校教員を勤め、滋賀県教 育委員会事務局職員を経て、母校虎姫高等学校 校長となった。そして、2004 年 3 月定年で同 職を退いたのち、同年 10 月 1 日付で高月町教 育長に任ぜられたものである。 西坂は教員及び行政職員としての経歴を持つ が、とりわけ学校管理職になってからは「組織 によどみを作らないこと」を信条として学校の 運営にあたったという。すなわち、組織自体が 常に活動し、前に向いて進んでいる状況をつく り出すことであり、沈滞した教員、または教員 集団がいる場合は、強いて石を投げ改善の波を 起こそうとした。こうした姿勢は教育長になっ てからの方策にも現れている。小さな町の教育 委員会でありながら、平成 18 年度は、10 件、 また平成 19 年度には 11 件の国及び県の研究事 業を引き受け、管理下の学校教員の研究、研修 を活発化させようとした。 本稿で扱う高月学園構想の萌芽的なことにつ いても、西坂はすでに町議会での就任の挨拶の 中で次のように述べている。「・・・私は、こ れまでの学校教育、生涯学習、関連施設の有効 活用など、本町の教育の現状に学び、整理し、 課題を明確化することから始めて参りたいと 思っております。特に、幼・小・中の連携強化 と、一貫教育の推進により、本町の子どもたち を、9 年ないし 11 年間を通して、どのように 育て上げるかを考えてまいりたいと思います。」 (1)ここで述べられている教育及び関連施設の 有効活用、幼・小・中の一貫教育は、後に高月 学園構想の柱の一部になっていくことである。 さて、高月町では教育の施設整備を年次計画 的に行なってきた。そして、各小学校の整備が 終わった後、老朽化した中学校校舎の改築が予 定されていた。しかし、おりしも北陸線米原以 北の直流化工事が行なわれ、これに伴って駅周 辺の整備を優先する必要があり、中学校校舎改 築は先送りされることになった。そしてこの整 備が終了した後、町長北村又郎は中学校の改築 問題に着手する意志を固め、教育長の西坂に打 診した。これを受けた西坂は、中学校改築を機 に高月町の教育を抜本的に改革していくことを 考え、その検討のための機関の設置を決めたの である。 こうして設置された高月町学校教育将来構想 懇話会は、同設置要綱に基づき、2007 年 6 月 25 日に第 1 回の会合を開いた。同懇話会は、 15 名の委員から成り、委員の任期は翌 2008 年 3 月末とされた。(2)懇話会に対しては、教育 長より、「新しい時代に適応する高月町の学校 教育の在り方について」と題する諮問がなされ た。そして、検討を要望することとして、中学 校の校舎整備について、小学校の適正規模の確 保について、就学前教育の充実について、まち づくり総合計画への提言について、その他の当 面する課題についての 5 項目があげられた。こ うした検討事項は、懇話会の発足に先立ってな された町民への教育行政に係るアンケート調査 の結果を参酌し提起したものであった。第 1 回 の会合に提出された町民アンケートの集計結果

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また、必要に応じて取り組むのがよいとされた 事項としては、学校運営協議会制度(59.1%)、 コンピューター校内 LAN の整備(53.1%)、認 定子ども園の設置(49・8%)、小中一貫教育 (48.9%)、小学校の適正規模化(45.2%)、幼稚 園の 3 年教育(42.4%)などがあげられていた。 (3)懇話会はまず、以上のような検討要望事項 や町民の要望を勘案して何を優先し、どのよう に検討していくか協議した。そして、事務局の 考えも参考に、町民の関心が高く、かつ懸案と なっている中学校の施設整備問題から検討を始 め、これとの関わりで諮問検討事項及び町が抱 える教育問題を順次審議していくことになっ た。 懇話会は、2007 年 6 月から 2008 年 1 月まで、 合計 8 回にわたって開催され、当初は中学校問 題を、さらにその後それとの関わりで、小学校 問題、就学前教育問題、高月町総合計画につい て、現地視察、各種の資料の参照・検討などを 行ないつつ、議論を進めていった。第 1 回の懇 話会では冒頭、教育長から、「現行の制度を超 えて、将来のモデルになる思い切ったアイデア で、大胆な案を期待する。必要なら教育特区を 申請するなど、実現に向けて最大限の努力をす る覚悟でいる」との積極的な姿勢が示されたが (4)、この会の議論はきわめて活発で、町議会 から委員として参加していた村井弘は、「これ まで様々な委員会に関わったが、このように活 発な委員会を経験したことがない」というほど であった。教育長西坂は、中学校改築計画、そ れと関わった小中一貫教育について一定の腹案 を持っていたが、高月町の教育の将来像につい て特定のモデルがあったわけではなく、こうし た活発な審議の中で改革構想が熟成され、やが て、高月学園構想として集約していった。「高 月学園」という言葉を最初に使ったのは、兵神 装備株式会社の常務取締役を務め、企業関係者 として懇話会に参加していた藤本峯男であっ た。彼は、議論の中で出てきた様々な考え方を 提出されたのである。 (2)高月町学校教育将来構想話会答申の内容 2008 年 1 月 31 日付で教育長に提出された、 『新しい時代に適応する高月町の学校教育の在 り方』と題する答申は、教育長から検討の要望 があった各々の事項に応え、具体的に提言する 以下のような内容となっている。(5) 1 、安全で安心ができ、また良質の学習環境 の整備のために老朽化が進み、耐震性に 問題がある高月中学校を全面改築する必 要がある。 2 、小・中学生がかかえる諸問題、小学校の 小規模化の問題を解決し、すべての子ど もたちの学力の向上と心身の健全育成を 図るために義務教育 9 年間を見通した新 しい学校づくりを可能にする施設整備が 必要であり、そのため中学校の移転改築 が必要である。 3 、学校の施設設備を可能な限り住民に開放 し、住民のための学習・交流の場に供す ると共に、地域の人々の支援や交流を受 けつつ中学校教育が展開出来るように、 中学校をまちづくりの核と位置づけ、多 目的複合的な機能をもつ町のシンボル的 施設にするべきである。 4 、小規模化する小学校の適正規模化を可能 にするために新しい義務教育学校像、「高 月学園」を構想する。それは義務教育 9 年間を見通し、高月町の学校を1校5キャ ンパスとみなし、中学校を核として 4 小 学校を総合的、一体的に捉え、学校間の 接続・連携・協働によって学校教育を有 機的、効果的に進めようとするものであ り、その実現をめざすべきである。 5 、3 年制幼稚園の早期導入など地域の要望 に応え、幼稚園、保育園の総合化をはか る必要があり、そのため就学前教育のた めの複合・総合施設の実現をめざす必要

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がある。 6 、上記をふまえ、また高月町のまちづくり の観点から、高月中学校を核とする教育 関係施設の集積を図り、「高月町教育ゾー ン」の実現をめざす必要がある。 7 、中学校の移転改築が行なわれた場合、配 送業務などの利便性に問題が生じること から、施設設備の老朽化が進んでいる高 月町学校給食センターの移転改築を検討 する必要がある。 8 、以上の改革を進めるために、構造改革教 育特別区域の指定を受けるべく検討する 必要がある。また、平成 12 年に策定さ れた 「第 5 次高月町総合計画」 の見直し、 修正が必要である。 以上述べたように答申は、中学校の移転改築、 改築する中学校の複合施設化、就学前教育の総 合化とそれに必要な施設の複合化、学校給食セ ンター施設の移転改築、これら諸施設の教育 ゾーンへの集積化などの施設・設備整備の必要 性を指摘するとともに、小学校の小規模化をは じめとする種々の教育問題を解決するために義 務教育 9 年間を見通し、高月町の学校を 1 校 5 キャンパスとみなす高月学園構想を提言してい る。 これらの提言のうち、高月学園構想は学校教 育推進の点から見て最も重要なことであるが、 この構想に関する内容をいま少し敷衍すると以 下のとおりである。  ・ 小学校の小規模化が進んでいるが、学校 規模を重視する余り無理な統合を進める ことはすべきではないこと。  ・ 小学校 6 年生を中学校に吸収し、小中の 連携を深め、小中学校の円滑な接続を図 ること。  ・ 小学校 5 年生までの児童は、各小学校で 学ぶことになるが、小規模学年が多く、 この問題を解消するために、定期的に他 の小学校の同一学年との交流・集合学習 を実施すること。  ・ 交流・集合学習について、5 年生につい ては週 2 日程度中学校で行い、4 年生ま では教科別に週 2 回程度各小学校を活用 して行なうこと。  ・ 各小学校では、地域文化や伝統、先達に ついての学習と継承活動など特色ある教 育を実践しているが、今後は、歴史的、 文化的資産に恵まれた高月町において、 中学校を核として、深化充実させる必要 がある。  ・ 年齢主義を弾力化し、適切と思われる特 定教科において、学年を超えて学ぶこと ができるシステムを研究し、個に応じた 学習体制を推進することができるように すること。  ・ 交流・集合学習のための移動についてス クールバスの導入を検討すること。  ・ コンピューターシステムなどの高度な機 器は、中学校に常に最新の充実した設備 を整備し、必要時に小学校からきて活用 するなどによりコストの効率性を高める こと。 以上の高月学園構想をイメージ化したものが 図 1 である。(6) ところで、国の中央教育審議会の初等中等教 育分科会において、小・中学校の小規模化にと もなう学校の適正規模化と適正配置、学校段階 間の連携・接続問題、すぐれた才能や個性を伸 ばす学習機会などは当面議論すべき重要な課題 にあげられ、検討が進められてきている。また、 各地方当局においても、地域の実情を踏まえた 種々の方策が検討され、実施されつつある。「高 月学園構想」もまた、こうした課題に対する一 つの答えである。学校の適正配置問題について は、特に小学校について安易な統廃合を行なわ ず、既存の学校施設を活用しながら、小規模化 の弊害を解決しようとするひとつの試みであ る。 高月学園構想に類似した実践は、例えば、岩 手県宮古市において、「宮古・四つ葉の学校」 として行なわれており、検討にあたっては、こ の実践も参考にされた。宮古市の資料によれば、 この事業は「山間部にある 4 つの小規模小学校 で学習する児童へ基礎基本の定着を図り、個性 の伸張を図るために、計画的・定期的に集合学 習の場を設定、適正規模で授業を実施すること

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を目的」としており、2006 年度、2007 年度に は毎週火曜日、5・6 時間目に実施されている。 またこれは、体育、音楽、国語、社会の 4 科目 について行なわれている。(7)高月学園構想で は、こうした交流や集合学習の機会をさらに大 幅に拡充し、集団を再編成して行おうとするも のである。 学校段階間の接続問題については、幼小、さ らには小中一貫と様々な先行する取り組みがあ るが、接続段階区分、連携の内容、一貫化の理 由などについて極めて多様であり、いまだ試行 の状態にあるといってよい。この問題について、 高月学園構想では、少子化にともなう適正規模 確保と児童生徒の教育問題解決を主たる目的と して行なおうとするものである。しかしそれと 共に、学力向上のために個に応じた学習の推進 も視野に入れている。またこの構想では、6 年 生ないしは 5 年生の組み入れはめざしている が、学校そのものを統合するのではなく、既存 の学校を存続させながら、学校間の有機的連携 により、これを行なおうとする点で特色がある。 さらに、一般に小中一貫校は、1 つの小学校と 1 つの中学校を繋ぐ試みが多いが、ここでは 1 つの中学校に小規模な 4 つの小学校を接続しよ うとする試みであり、寡聞の故か他の類例が多 くあるのを知らない。   3 、高月学園構想の具体化 (1)高月学園構想実現に向けての高月町教育 施設整備計画の策定 2008 年 1 月に出された懇話会答申の内容は、 教育委員会で審議承認されたのち、教育長によ り町長北村又郎に報告された。報告を受けた北 村はこれを全面的に支持し、町議会で報告し了 承を得るとともに、以後これを高月町の最重要 施策に位置づけた。また時を待たずに、答申の 趣旨をふまえて 2000 年(平成 12 年)に作成さ れた『第 5 次高月町総合計画』が修正され、「少 子化の進展に対応すべく新たな就学前教育・学 校教育システムの構築」、「高月町教育ゾーンの 実現―高月中学校を核とする教育施設の集積を 図り教育ゾーンを形成」などが盛り込まれた改 訂版が出された。こうして、高月学園構想具体 化の動きが始まった。 高月学園構想の具体化は、教育実践のための 学校教育システムの基本計画、実施のための条 件整備となる教育施設整備事業計画の両者が作 成され、それに基づき行なわれることになった。 このうち教育施設整備事業計画は、国への補 助金申請の関係から、地域振興課職員と教育長 西坂はじめ教育委員会職員が相互に検討を加え ながら練られていった。こうして 2008 年 6 月 に『「高月学園」構想実現に向けての新しい時 代をリードする高月町教育施設整備計画』がま とめられた。計画は、懇話会答申を反映した施 設づくり概念図を基礎に(図 2)、“ 育みの郷 ” と命名された高月町教育施設集積区域(教育 ゾーン)の買収予定用地、用地内の施設配置計 画、各施設の設計図、事業費、財政計画を説明 したものである。図 3 は、施設配置計画完成イ メージ図である。(8)これに見られるように、 高月中学校ゾーンは北東部に配置されたが、同 中学校の一部に地域交流センターを置き、この 地域交流センターを通じた住民の学習や交流、 学校利用や支援が考えられ、中学校の複合施設 化が図られている。その後この計画に基づき、 2009 年 2 月に中学校ゾーンの用地買収が完了 し、11 月には用地造成、設計が完了した。 (2)高月学園基本計画の作成と具体化 高月学園構想については懇話会答申が出た直 後から、その具体化が検討された。教育長西坂 は、関係機関との折衝の中で、この構想をスムー ズに実現するためには、文部科学省の学力向上 実践研究推進事業の指定を受けるのがよいとの 示唆を得ていた。したがって、懇話会答申が出 された直後の 2008 年 2 月に同研究推進事業の 指定を受けるべく奔走し、3 月これが認められ た。こうして 2008 年 4 月より、学力向上実践 研究推進事業と絡んで、高月学園構想の具体化 がなされていった。 教育委員会はこれと並行して、高月学園構想 に基づく教育基本計画を検討し、2008 年 10 月 に「新しい学校教育システム『高月学園』基本 計画」を作成、刊行した。同基本計画は、計画 制定の趣旨の中で、「・・・学校教育目標の達 成のためには、従来の教育内容や指導方法の研

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図 3、高月町教育ゾーン施設整備完成図

図 2、高月町教育ゾーン施設づくり概念図

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究改善に加え、学校教育のシステムを見直し、 新しい教育制度を構築する必要がある」と述べ、 システムを見直し、新しい教育制度を構築する 点を明確にしている。同計画は、“ 高月町にお ける新しい義務教育システム「高月学園」” と 題した項を設け、そこで「新しい時代をリード する学校教育システムに基づくめざす学校像」 として、以下をあげている。(9) ア、小規模小学校の長所を活かしつつ、指導 上に必要な適正規模を確保し、学習成果を 高め、切磋琢磨と活力ある学校 イ、小・中学校間の円滑な接続により、不登 校などの中 1 ギャップのない学校 ハ、地域社会総がかりではぐくむ学校 以下、こうした学校を目指すシステムについ て、計画書の内容の一部を引用する。 1 、新しいシステムの特徴 (1)小・中学校を一体的に捉えた、1 校 5 キャンパ ス構想 ①成長段階にふさわしい意識づけを図るため、小・ 中学校 9 年間を 4・3・2 年の節目を設ける ②発達段階に応じた切磋琢磨による成長を促すた め、集合学習時間には、4 小学校混成の学級編 成を行う ③基礎・基本の着実な定着と学力向上および学校 不適応児童生徒の解消を図るため、小・中学校 間で学力観・指導観を共有した連携強化 ④社会性の基礎としての人間関係の育成を図るた め、校種を超えた異学年生や地域住民とのふれ あいや交流 (2)集合学習の導入 ① 4 小学校の 6 年生を中学校施設に収容し、教科 学習特性に応じた適正規模を確保するため、4 小学校混合の新たな学級を編成し、集合学習を 展開(成果を見極め、5 年生に拡充) ②当面、小学校 5 年生は、同様の集合学習を適宜 実施 ③小学校 6 年生の部活動への参加 (3)交流学習の計画的・定期的実施 ①小学校 3・4 年生は小学校施設で週 2 回程度交 流学習(4 小学校施設を巡回的に活用、週 4 時 間程度) 2、教育内容 (1) 学習の積み重ねが必要な「国語科や算数・数学 科、英語科など」9 年間の教育内容の系統性を はかり、習熟度別学習や複数教員のきめ細かな 指導により基礎基本の着実な定着を目指す (2) 体育科や音楽科など、少人数の弊害をカヴァー し、指導効果の向上を図る (3) 自然体験や郷土学習を小学校区を超えて展開 し、広域な郷土愛の育成と小中学校間の一貫性 を図る 計画書ではさらに、教職員組織について、全 ての教員に兼務辞令を発令し、校種間、学校間 の相互乗り入れを行うこととしている。また、 指導方法では、小学校での教科担任制の導入、 複数教員による指導の充実、小中学校教諭間の 交流の必要性を述べている。 計画書は、また教育ソフト事業について次の ような年次計画を示している。 学力向上実践研究事業(平成 20 年度から平成 22 年度まで)、 高学年の集合学習(平成 20 年度から平成 22 年度 試行、平成 23 年以後本格実施)、 中学年の交流学習(平成 20 年度から平成 22 年度 試行、平成 23 年度以後本格実施)、 共通教育課程の編成(平成 20 年度から平成 22 年 度、新指導課程先行実施、その後小中ごとに完 全実施)、 研究指定小学校英語活動(平成 20 年度指定終了、 以後全校実施)、 事業指定学校支援地域本部(平成 20 年度指定終了、 以後全校実施) また、平成 21 度に向けて、教育課程の基準 によらない特別教育課程の編成・実施を可能と する教育課程特例校指定の申請を行うことも記 している。 以上計画書の内容を引用したが、その核とな るのは中学校、または小学校に集まって行われ る横断的かつ縦断的な集合学習、交流学習であ り、そのあり方や進め方、条件づくりが重要な 研究課題となるのである。

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文部科学省がその向上を目指して行っている重 点事業のひとつである。この事業は、2005 年 から 2007 年まで行われた学力向上拠点形成事 業のあとを受けて 2008 年度から始まったもの であるが、「都道府県との連携・協力の下、地 域の実情や課題を踏まえ、基礎的・基本的な知 識及び技能を確実に修得させ、これらを活用し て課題を解決するために必要な思考力、判断力、 表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体 的に学習に取り組む態度を養うために実践研究 を推進し、その成果の普及を図ることにより学 力向上に資する」事業とされている。これは手 続き的には、都道府県の教育委員会が申請し、 それを審査して文部科学省が当該都道府県教育 委員会を推進地域として委嘱する。そして、委 嘱を受けた都道府県教育委員会が推進地区を指 定し、推進地区の関係校が推進校として研究を 進めることになる。したがって、高月町の推進 事業も、推進地域として委嘱された滋賀県教育 委員会が高月町教育委員会を推進地区に、また 管理下の学校を推進校に指定し、研究活動を展 開する形をとっている。 この事業の実施について滋賀県教育委員会関 係職は、必要な支援、指導助言、条件整備、成 果の検証などを行うが、実質的には、高月町教 育委員会の下で、関係推進組織が立ち上げられ、 その下で事業が実施されている。すなわち、高 月町に事業推進本部会議が設置され、その下に 事業推進プロジェクトチームが置かれ、さらに その下に、学力向上推進部会と教育改革推進部 会が組織され、その下で各推進校が研究を進め ている。(10) 事業推進本部は、実践研究推進計画の策定や 実施に関わって必要な指導・助言を行い、成果 や課題の検証を行うほか、推進校の取り組みを 支援する。また、事業推進プロジェクトチーム は、本部会議の指導助言の下に、推進計画の具 体化や推進校における事業の円滑な実施と関 わって連絡調整を行い、成果発表会や研修会の 項として、確かな学力の形成と教育効果を高め る新しい教育システムの構築の 2 点があげられ ている。研究は各推進校ごとに、または推進校 が協働して行なうが、それを推進するのが学力 向上推進部会(校長および園長各 1 名と各校代 表 5 名から成る)と教育改革推進部会(校長 1 名と各校代表教諭 5 名から成る)である。 学力向上推進部会は、確かな学力の形成に向 けて、各推進校における円滑な実施と実践の成 果の普及に努めるとともに、交流・集合学習に ふさわしい教育内容や指導法の充実、一貫性を 目指した取り組みを行うことを任務としてい る。すなわち、指導方法、指導形態、教材研究 等の実践研究と新しい学習指導要領への取り組 み、さらにはカリキュラムの系統性を図り、幼 小中間の円滑な接続のための交流・集合学習に 生かせる教育内容や指導方法を研究することと している。この部会の下で各推進校は、学力向 上に向けた独自の研究課題を持ち、それぞれ研 究を進めている。これらの研究は、主として、 算数、国語、英語などの授業改善や指導力向上 に関わること、読書や家庭学習の習慣づくりな どであり、町内の各校でのそれらの実践や成果 の共有化が目指されている。これらは集合学習、 交流学習の基礎となるものであるが、概ね他市 町の学校において取り組まれている課題でもあ り、必ずしも独自なことではない。 その反面、教育改革推進部会は、教育効果を 高める学習システムを構築することをめざし、 年次計画を策定し実践を積み重ねていくことを 任務としており、高月学園構想の具体化と直接 関わる課題の研究を推進しようとしている。そ の研究計画の内容は以下の通りである。

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①小規模化する学校及び少人数化する学級の適正規 模の確保と活性化への工夫   ・各小学校間の交流学習や集合学習の場の設定 と拡大、実施   ・上記の理解の促進   ・各小学校の教育課程や年間指導計画の調整、 系統的で各校共通な教育課程の編成 ②小中学校間の円滑な接続を図り、中 1 ギャップを 解消する工夫   ・小学生の中学校での交流・集合学習の実施   ・小中児童生徒間の交流学習の実施   ・幼小中教員の交流と相互理解(指導方法、指 導形態、生徒指導問題など)   ・小学校高学年への教科担任制の導入   ・小 6 生の中学校部活動への参加   ・小中の系統的な教育課程の編成   ・郷土学構想立案(小中一貫した指導計画) ③地域社会総がかりでの学校づくり   ・学校支援内容の明確化   ・地域住民に各校園の教育への理解を求め、住 民の支援体制の組織化   ・住民への学校園施設の開放   ・幼児、児童・生徒の地域活動への参加 2008 年度に助走を始めたこの研究は、2009 年度には本格化し、後述、教育課程特例校制度 によって認定を受けた英語科や郷土学の新設教 科などを加えて、小中接続に配慮した一貫教育 課程の編成や指導方法の研究が進められようと した。また、小学校間、小中学校間の交流、集 合学習も回数、内容をさらに充実させて実施さ れてきた。ここでは特に高月学園構想と密接に 関わることから、交流学習、集合学習の実施状 況の概要を見てみよう。 交流学習は町内各小中学校の児童生徒が一緒 になり、多人数で一緒に活動しつつ学習する形 態であり、2008 年度には、子ども一斉クリー ン作戦(1 日、全幼稚園児、小・中生、地域住 民参加)、七郷小学校と古保利小学校の 5・6 年 生の交流学習(3 日、水泳)、5・6 年生の合同 陸上練習(1 日、町内 5・6 年生)などが行われ、 また 2009 年度の 12 月までに、小学校 3 年生の 交流学習(1 日、キックベース)小学校 4 年生 の交流学習(1 日、ハンドベースボール)、小 学校 5 年生の集合・交流学習(2 日、算数、体育、 ドッジボール)、子ども一斉クリーン作戦(1 日、 幼稚園児、小・中生、地域住民参加)が行われ た。小学校 6 年生の中学校部活動の参観、オリ エンテーション、体験入部も行われた。特に 2009 年度は、集合学習とともに、こうした交 流学習を拡大する予定であったが、新型インフ ルエンザの影響で大幅に予定が縮小された。 集合学習は、町内 4 小学校の児童が 1 箇所に 集合し、教科等の学習を共に行うことによって、 学力を向上させ、また協調性や社会性の育成を 目指すものである。使用できる施設の問題も あって、2008 年はごく限定的にしか実施され なかったが、2009 年度に入って、高月中学校 内に小学校教師の打ち合わせ室や各小学校の児 童のための教室が整備されたこと、集合学習実 施要項が作成されたこと、さらには学力向上事 業支援委員として町費で元校長横幕正樹が任用 され、各関係者との連絡調整を精力的に行うよ うになったことなどによって大幅に拡大され た。 集合学習実施要項では、町内 4 小学校の 6 年 生と 5 年生を対象とし、高月中学校の施設を利 用して行なうこととしており、特に 6 年生は、 定期的に週 2 日の集合学習を行なうことになっ た。学習する教科類も大幅に増え、国語科、社 会科、算数科、理科、音楽科、道徳、学級活動、 英語科、郷土学、さらには学校行事の一部など をこの集合学習でおこなうこととなった。すで に述べたように、教諭や教務主任には町内全校 の兼務辞令が出され、他校の児童も指導できる 措置した。(ただし、小学校教諭で該当科目の 中学校の免許を持たないものは中学生を指導で きない)集合学習にともなう通学は、徒歩、バ ス、自転車を利用して弾力的におこなうとされ、 必要な安全確保体制が検討された。さらに学習 の内容、児童の様子、指導者の感想など、集合 学習に関する情報を地域や保護者に発信するこ ととされ、学校だより、町広報、HP、集合学 習通信などを通じて配信され、学習参観の機会 を設け理解を深めてもらうこととされた。この うち集合学習通信は、実質的に支援委員である 横幕が編集発行しているものであるが、資料 1 に例示している通り、教育実践の状況や方針、

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資料

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学習の成果などを分かりやすく説明しており、 保護者の理解を得るのに有用な手段となってい ると思われる。 支援員横幕がまとめた 2009 年度の集合学習 実施の実績、また実施予定授業時数であるが、 6 年生については、1 学期:70 時間、2 学期: 51 時間、3 学期〔予定〕:33 時間、合計年間 154 時間になっている。(注、本来、2 学期には さらに時間数を増やして実施する予定であった が、インフルエンザの関係で時間数が大幅に減 少した。)集合学習の授業時間の多い教科は、 順に、算数(年間 30 時間)、社会(年間 23 時間)、 国語及び英語(年間 18 時間)、体育(年間 17 時間)、音楽及び理科(年間 16 時間)となって いる。(11) 集合学習の指導形態は、中学校に集まった各 校小学生は、元の小学校ごとホームルームに属 し、各校学級担任が学級活動を指導する。しか し、教科の学習に際しては、こうした集団を再 編成して集団を組みなおし、これと関わって、 多様な指導形態をとって指導が行われ、効果的 な指導形態や方法が模索されている。 その集団編成は、A: 全児童の 3 班集団編成(各 班約 30 名)、B: 全児童の 5 班集団編成(各班 約 20 名)、C: 習熟度別の集団編成、D: 複数学 級の集団編成(指導者の関係で英語のみ)の 4 つの形態である。このうち、習熟度別集団編成 については、教師がプレテストや試験の結果で 水準を把握しているが、諸般の事情を考慮して、 あくまでも本人の希望によって所属集団を選ば せており、本人の習熟度と指導の水準に齟齬を 生じる場合があるという。またこれらの集団編 成に対応する指導形態は、①小学校教科担任の 指導、②小学校複数教員の指導、③小学校教員 の指導、④小・中学校教員の指導、⑤小学校教 員と ALT の指導と分けられており、授業科目 や指導内容によって、これらの組み合わせが工 夫されている。例えば、音楽や理科などは、3 班編成で、小学校教科担任による指導、または 小中教員による複数指導がなされており、また 算数科については、授業によって、3 班、5 班、 習熟度別の編成で、小学校複数教員による指導、 小学校と中学校教員合同の指導がなされてい る。 2010 年度の研究については、小学校 4 年生 以下の交流学習、また 5・6 年生の集合学習の 回数をさらに大幅に拡大すること、集合学習の 場を高月中学校の他小学校や役場などに求めこ うした場所でも行うこと、縦割りの小中生間の 交流をさらに促進すること、児童生徒指導・教 育相談・就学指導などについて、小中関係教員、 スクールカウンセラー間の情報交換や相互理解 を一層の推進すること、カリキュラムや指導体 制の一貫化を着実に定着させることなどが議論 されている。 (4)教育課程特例校指定による高月学園構想 の具体化 教育課程特例校制度とは、旧構造改革特別区 域研究開発学校として教育課程の基準によらな い特別の教育課程を編成実施することを認めら れていた制度が、2008 年文部科学省告示第 30 号附則第 2 項によって、同年 4 月から文部科学 省に申請をし、審査の結果教育課程特例校とし て指定されることによって、こうしたことが可 能になった制度である。この制度は、学校また は地域の特色を生かした特別の教育課程を編成 して教育を実施することを可能にするものであ り、その手続きが簡素化されたものである。こ の特例校の申請については、2008 年 10 月 16 日付で初等中等教育局長名で通達が出された が、高月町教育委員会はこの通達を受けて、11 月 19 日付でこの教育課程特例校指定申請書を 提出し、翌 2009 年 2 月 23 日に指定を受けたも のである。こうして、以後学力向上実践研究推 進事業の一環として取り組まれることになっ た。 高月町教育長西坂は、基準によらず特別の教 育課程を編成実施する科目として、英語ととも に特設領域学習である郷土学を申請したが、そ の趣旨は、申請の際の実施計画書に以下のよう に書かれている。 すなわち、高月町の自然環境、歴史や遺跡、 文化財、地域伝統行事、独自の食文化、輩出し てきた偉人などに言及したのち、「・・・郷土 学の実際においては、高月学園構想における小 学生と中学生の交流や高学年の集合学習、中学 年での交流学習を実施する他、学年をまたがる

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い。また、子どもたちの学習においては、地域 住民や図書館、資料館、出土文化財事務所、芳 洲庵、博物館などの関係機関を大いに活用しな がら、体験的・探求的な学習を多く取り入れ、 先人の築いたゆたかな感性や豊かな創造性、進 取の気性などを肌で学ぶことにより、郷土を愛 し、地域の発展に尽くそうとする態度の育成に 努めていく必要がある。」(12) この書類に見られるように、英語と郷土学を 2 つの柱として、9 年間連続一貫した教育課程 を編成し、高月学園構想に示す、町内の学校が 一体となった教育を推進することを目指したも のである。 この 2 つの科目のうち英語については、これ まで町内の古保利小学校において研究が進めら れてきたが、小学校段階ではその取り組みをモ デルに他の小学校に拡大しようとした。その上 で、中学校への接続のためのカリキュラムや指 導方法の検討が進められてきた。しかし、湖北 1 市 6 町の合併により、新長浜市が誕生するこ とになり、合併後の教育のあり方についての調 整がなされる中で、英語教育について先行して 特区の指定を取り、早くから小学校の英語教育 を実践してきた長浜市の英語教育との調整が行 なわれることになった。 高月学園構想実現のための小中間で接続し、 連続するカリキュラムや教材の研究が不可欠で あり、これまで研究が進められようとしたが、 もっともそれが進んでいるのは、特例措置を受 けた郷土学である。資料 2 はその大まかな見取 り図である。 この郷土学は、高月学園構想全体を貫く柱の ひとつとして重要である。すなわち、これから の子どもの多くは、必ずしも高月町内にとどま るのではなく、広く日本国内、あるいは、アジ ア、世界に出て行く可能性がある。こうした子 供たちに、郷土の文化や伝統、郷土の先覚、偉 人などを学ばせ、郷土への愛着と誇り、またア イデンティティを形成することは、彼らの今後 4 、高月学園構想に基づく教育実践の検討 (1)高月学園構想に基づく教育実践の評価 すでに述べてきたように、高月学園構想の具 体化は、学力向上実践研究推進事業と絡めてそ の実現が図られてきた。この事業は 2008 年度 から始まり、2009 年から本格化してきた。現 在これまでの実践の評価や検証が進められつつ あるが、現時点でその客観的な評価のデータは ない。この事業には多くの教員が関わり、また 広範で多岐にわたっている。そのため全ての側 面で必ずしも適正な評価をすることができない し、いわんやその成果を数値で示すことは困難 である。したがって、その評価は現時点で限ら れた側面からの暫定的なものにならざるを得 ず、ここでは特に集合学習について行なわれた アンケート調査や主観的評価、さらには事業の 実施に関わった教員のコメントを参考に、一定 の評価をしておくこととする。 学力向上事業支援員である横幕正樹は、1 学 期が終了する前に、6 年生の児童に対して集合 学習に関してアンケート調査を行っている。そ れは中学校への登下校、他校児童と共に学習す ること、中学校の生徒との交流、中学校の先生 から習う授業、他の小学校の先生から習う授業、 中学校での教室や校舎の移動、50 分授業、中 学校での生活リズム等について調査したもので あるが、そのほとんどについて 8 割以上が肯定 的な意見を寄せている。(13)横幕によれば、 とくに満足度が低い項目は中学生との交流であ るが、それは、当初学校側が不測の事態を恐れ て小学生が利用できる部屋やスペースを制限し ていたためであり、2 学期以後このような制限 はとられ、小学生が自由に中学校の施設を利用 し、中学生と交流できるようになったことから 児童の話や態度からみてほとんどの児童が肯定 的な評価をしている。 教育長西坂の下で学校教育課長として高月学 園構想のまとめやその具体化の実務を担い、同

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と言いこれに満足し、肯定的評価をしている。 彼は、それは幾つかの点で成果となって現われ ていると言う。すなわち、研究の本題である学 力向上であるが、学力調査や CRT テストが行 われて以後、何度か小テストが行われたが、そ の結果から見て児童が十分な力をつけているこ とがわかり、ほとんどの児童が必要とされる水 準をクリアーしている。また、学力の基本とな る学習態度や生活態度にも中学校での学習によ るよい影響が認められ、それは例えば、挨拶や 安定した授業態度に表れているという。さらに 驚くべきことは、伊香郡の水泳や陸上の記録会 における成績が高月町内どの学校についても大 きく伸びたことである。またこうした記録会の 競技において、他校の児童を一生懸命応援しあ う光景がしばしば見られたといい、こうしたこ とは交流・集合学習において、人間関係やコミュ ニケーション能力が培われている証左であると 考えられる。(14) アンケート調査は保護者にも行われている。 それによれば、保護者はおおむね集合学習を肯 定的に評価しているが、同時に、学力向上や通 学、児童生徒間関係、授業方法などについて一 定の不安を感じているものも多く、こうした点 からの批判も一定数ある。交流・集合学習につ いては、その目的や実践を理解してもらえるよ う、各種の広報活動がなされており、実績とこ うした広報活動により、保護者の理解もやがて 得られると考えられている。 高月町内の各学校の教師に対するアンケート 調査も行われている。町内の教師に対しては、 2008 年度から継続的に研修会が設定され、高 月学園構想、それに基づく実践の意義について 理解を得られるような努力がなされてきた。ま た、各部会や校長などよりも所属職員に対する 説明がなされてきた。しかし、一部の教員にそ の趣旨や意義、目的が理解されているとは言え ず、教師の間で一定の意識差があると考えられ る。このことは、教員のこの事業の関わりの度 問題も生じている。これらはひとつには、教員 養成の問題でもあり、今後の学校改革の観点か ら見て、小中学校両方の免許を取得しておく必 要があり、小学校教員の場合も一定の得意分野 を持っておく必要があると考えられる。しかし、 一般論として言えばこうした研究を推進する 際、学校や教員に固有の問題もある。すでに多 くの指摘があるように、一部の学校や教員は現 状維持志向が極めて強く、保守的であり、変化 を嫌うということである。特に、地方の小さな 町では、競争要因が乏しく、こうした傾向はよ り顕著である場合がある。今日の大きな社会経 済的変化の中でその変化に対応するためには、 教職員が一体となって学校を改善していく必要 があり、教員に一層の理解を求めることは重要 な課題である。 (2)高月学園構想による学校教育改革・改善 の可能性 高月学園の考え方は、必ずしも特別の原理の もとに構想されたわけではない。しかし、それ を子細に検討するとその背後にある、①教育の 総合的統合的マネジメント、②教育資源の効率 的効果的利用、③教育システムの柔軟化・弾力 化の 3 つの要素ないしは原理を析出することが できる。そして、こうした要素が今後の学校改 革に有効であり、またひとつの方向を指し示す ものであると思う。以下、この 3 点を手がかり に、高月学園構想を再度見直し検討するととも に、それがさらにいっそう有効な学校改革にな るに必要と考えられる方策を探ることとする。 ①総合的統合的教育マネジメント 現在の教育行政、学校マネジメントの考え方 は、学校へ一定の権限を教育委員会から移譲し 学校の裁量権を増大すること、そして、個々の 学校が特色ある学校づくりをすることが主流と なっている。高月学園構想は、ある意味ではこ れとは逆の方向に向かおうとするものであり、

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一つの自治体の教育行政や教育を一体的に捉 え、総合的統合的に実現していこうとするもの である。すなわち、学校を個別化するのではな く、町内の全ての学校が協働し一体となって、 児童生徒の教育を保障しようとするものであ る。さらには町をひとつの共同体として、同町 内の教育資源をフルに活用し、教職員を中心に して、行政、さらには地域の保護者 ・ 住民など が一体となって、望ましい教育を実現して行こ うとする考え方である。こうした方向について は批判も予想されるが、自治体や地域によって はこうした方策が有効であり、特に、小規模化 が進む学校を多く抱える自治体については施策 の選択肢の一つになる。 このように学校を一体的に捉え、教育を総合 的統合的に実現していくためには、それを達成 するにふさわしい組織が必要であり、またいわ ゆるマネジメント的手法を取り入れる必要があ る。高月学園構想は学力向上事業と絡めてその 具体化が図られたが、その際、高月町内の旧来 の学校の組織や意思決定システム、職務分担を そのまま維持して、新たに研究のための組織を 追加してその実現が図られたために、全体とし て組織が複雑になり、機動性・機能性を欠き、 重複が生じ、さらに教職員の余分な負担が生じ た面があると思う。また、研究を実施する組織 そのものについても、いわばフラット型を意識 したものであり、複雑なものとなっている。こ の点は、学力向上事業に基づく研究の過程でも 課題として指摘されている。(15) 上記のことは時間的にやむをえないことで あったが、高月学園の有効性を担保し、さらに その実をあげていくためには、意思決定や組織 を思い切って合理化し、さらにマネジメント的 手法を取り入れる必要がある。 まず不可欠なのは高月学園全体を統括するマ ネジメントの中核的組織、及び中心的リーダー である。いわばその最高経営会議が必要であり、 これは町内各学校長から構成され、学園が中学 校を核とするものであることから、高月中学校 長がこの会議を主宰し、統括的機能を果たすべ きである。この最高経営会議の下に、町内各学 校や機関の連絡調整にあたる組織と、学校評議 員にあたる諮問助言機関が置かれるべきであ る。前者は各学校の教頭、または教務主任クラ スで構成され、後者は保護者、教育委員会、地 域の代表などから構成される。 この最高会議は、町内の各学校あるいは教職 員の意向や状況を踏まえつつ、学園全体のヴィ ジョンや、目標・方針、組織のあり方を決定す る。とりわけ、何年かの中期計画や目標の策定、 単年度の目標設定、あるいは優先課題や重点目 標の決定など、学園全体が向かうべき方向を決 定するのである。また、日常的に生起する教育 課題で高度の意思決定する必要な事項も扱うべ きである。諮問助言機関は、こうした意思決定 に際して、最高会議に指導助言する。 高月学園は町内の学校を一体化すると共に、 教育ゾーン化し、関係サービスや行政間の連携 協力もその構想に含まれている。こうした学校 間、関係機関の連絡調整にあたる組織が最高会 議の下に置かれるべきであり、これが全体の教 育の進展を把握し、調整にあたり、さらには評 価、検証の役割も果たすべきである。 以上のような組織の下で、現在各学校に置か れている校務分掌組織や意思決定組織を抜本的 に見直し、合理化していく必要があり、さらに は連絡手段、会議などの効率化・合理化なども 必要であると思うのである。 ②教育資源の効率的、能率的活用 望ましい教育を実現していくためには、人、 金、物など様々な教育資源が必要であり、こう した教育資源を改善し、豊かにしていく努力が 必要である。しかし、こうした改善も一定の限 界があり、限られた教育資源で最大限の成果を あげる努力も必要である。これは先に述べた総 合的統合的な教育マネジメントによって可能と なるが、高月学園構想はこうした教育資源の効 率的、能率的な活用の点でも極めて大きな有効 性を持っている。学力向上研究事業では、こう したことの研究・検討はなされていないが、今 後この構想が成果をあげるためには不可欠なこ とである。 教育資源の効率的、能率的活用については、 教職員、学校の施設・設備・備品、町内に存在 する人、施設・設備、文化財などの教育資源が 考えられる。

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のの原則として全ての学校の児童生徒の教育に 関われることから、チームでの教育活動を考え ることができる。すなわち、個々の教員が持っ ている様々な特別な技能や深い専門性を、町内 の全ての学級や学年での教育に活かす仕組みを つくっていくことが可能になると思う。 物的資源であるが、施設、設備の効率的利用 については、高月中学校を複合施設として構想 していることから、移転改築が終わった段階で は、上記最高会議や連絡調整組織の下で効率的 運用が可能になる。また、備品についても、す でに懇話会答申にも含まれているが、高月中学 校を核とし拠点とすることからここにセンター を設置して、各学校に不可欠な備品は別として、 共用できる備品や教具、あるいは高価な備品を ここに集中して、これを町内の各学校、さらに は住民が活用することも考えられる。このセン ターはさらに、各学校や各教科などの担当者が 行う教育内容や教材研究の成果も集積し、全て の教職員が活用することもできる。 これと関わるが、高月中学校に事務センター を置いて、不可欠な一部を除き町内の全ての学 校の事務を一括処理する体制を整備することが 考えられる。学校事務の合理化については、す でに中央教育審議会の答申で示されており、ま たこれまで全国でも先駆的な実践があるが、県 内では例えば栗東市において実践事例がある。 すなわち、同市では 2001 年より一部関係者を 中心に、学校のスリム化をめざして学校事務を 削減し効率化するため業務仕分けを行い、不必 要なものは廃止し、必要なものについて標準化 と共同実施を行なうべく検討を進めてきた。そ して、2003 年から同市葉山中学校に栗東市小 中学校事務支援センターを設置し、事務処理の 合理化・共同化に向けた取り組みを進めた。こ の試みは現在諸般の事情により、必ずしも順調 に機能しているとはいえないが、こうした取り 組みは高月学園のような構想の中でこそいっそ う有効に作用すると考えられる。事務センター 業務が考えられる。こうした事務の一括処理に より、経費が節減でき、また各教師の職務負担 が減り、その分子どもの教育活動により多くの 時間を費やすことができると考えられる。(16) 次に学校外資源の有効活用である。すでに高 月町学力向上事業でも学校支援本部が設置さ れ、元校長友田昭夫の下で研究実践が進められ ている。高月学園では、中学校の一部に地域交 流センターが設置される予定であり、ここでこ うした役割が果たされるものと思う。こうした 学校外資源の活用は、きめ細かな教育指導には 不可欠なものになっており、この本部が有効に 機能し、学校外の様々な人的物的資源を学校教 育に機能的に結びつける役割を果たす必要があ る。その際重要なのは、こうした学校外資源に ついての、教職員の理解や認識と、学校に学校 外資源を結びつけるコオーディネーターの存在 である。一般に教職員は、学校外資源の利用に ついてはその必要性を了解しているが、学校を とりまく地域及びその資源について理解が乏し いことがある。学校外資源を利用するためには、 教職員による地域や地域の人々の理解が重要で ある。またこうしたことのためには、適切なコ オーディネーターの配置が肝要である。全国で 学校支援事業が成功している例を見ると、例外 なくこうしたコオーディネーターに適材が配置 されている。学校支援は、スクール・ガードや 地域の伝統・伝承、地場産業などとの関わりで 利用されることが多い。しかし、後述のように きめ細かな教育指導、個性に応じた教育を進め ていく場合、日常的な教育活動に直接タッチす る外部の人材を得ることも重要である。例えば、 町内の定年退職教員、あるいはこれに準じる 人々である。さらには、教科に関係して教員よ りもはるかに専門性を持った人材もいる。先進 的な学校ではこうした人々の協力を得ながら、 スポット的にだけではなく一定の期間教育活動 に組み入れている。 以上と関係するが、必要であるが現在の学校

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教育の枠内では困難な教育活動を行なうため に、社会教育の場や活動を利用することである。 社会教育の場におけるこうした機会の設定も、 上記学校支援組織の協力が欠かせないであろ う。もちろん、現在スポーツや行事などで、地 域の社会教育関係者や団体が指導を行ってい る。しかし、近年一定の自治体で、社会教育の 場で、あるいは学校施設を利用して、学校の延 長としての学習機会の提供が進んでいる。町内 の教育資源を活用して、児童生徒の教育を保障 していく観点からすれば、学校もこうした活動 の機運を醸成し、またそうした活動と連携して 学校教育を推進すべきであると思う。 ③教育システムの柔軟化、弾力化 教育システムの柔軟化、弾力化はもともと高 月学園構想の基本にある理念である。そこでは 小中の学校段階、個々の学校や学校内の学級の 枠を壊して、子どもに応じた教育を展開するこ とが志向された。この点に関して、規模の大き な学校では、その意欲さえあれば、学習集団の 種々の再編や個別化、組織化による学校改革は 可能である。しかし、小規模校ではその選択肢 は限られ、システムを弾力化、柔軟化すること ができない。 教育活動を行なう場合、どのような規模の集 団でそれを行うかによって、その成果やあり方 は変わってくると思う。教育課題によって、全 校、学年を通した大集団、学級集団、さらには 小集団等をさまざまに選びながら教育活動を展 開する必要がある。高月町の学力向上推進事業 の一環で取り組まれている小中の接合や集合、 交流学習もその試みの一端である。特に集合学 習は、町内の児童を中学校に集め、集団を幾つ かの種類に再編して教育活動を展開しており、 現在その成果が検証されているところである。 高月学園の研究の中で限定的にしか実践され ていないのが、習熟度別集団の学習である。こ れは保護者や関係者の批判を多分に意識したた めと考えられるが、とりわけ能力差が大きく現 れる教科の学習や学習内容によっては習熟度別 の学習は不可欠である。その際、集団を均等に 分けるのではなく、進度の遅い子どもについて は集団を小さく、逆に進度が速く理解が早い子 どもについては集団をある程度大きくするなど して、きめ細かく対応する必要がある。また、 習熟度別学習を実施する際スティグマを回避し ようとすれば、児童生徒自らに学習レベルを選 択させることも一つの方法である。しかし、そ の際学習が進むにつれて齟齬が生じてくる可能 性が強く、個々の児童生徒に対する学習相談な どの便宜を提供し、児童生徒にあうレベルを助 言する体制も必要である。 教育活動を展開する場合に、一定の規模の集 団の中で行う学習が重要であるとともに、教育 を個別化し、個々の発達に即した教育を保障す ることも重要である。高月学園での現在の研究 は、こうした課題に取り組んでいないが、学園 構想のメリットを十分生かすためには、こうし た個別化の問題も重要であると思われる。現在、 学力低下問題を背景に、その向上のために様々 な事業や施策がなされているが、その中心は もっぱら授業や指導法の改善であり、必ずしも 個々の児童生徒に即した対応になっていない。 こうした中で、個々の児童生徒の学習診断を基 に、進度の速い子の教育をどう保障し、進度の 遅い子の学習をどう支援していくかの仕組みづ くりは一つの重要な課題である。こうした点に つき、一定の学習課題について長年先駆的な実 践を行ってきたのが、愛知県東浦町緒川小学校 である。しかし、緒川小学校の実践も、近年の 教育課程改革の動向の中で縮減する傾向にあ り、その実践の再評価とさらなる拡大が必要で あると考える。(17) 高月学園では、英語や郷土科という特定の教 科を 9 年間見通して編成するための手段として 教育課程特例校制度を利用したが、この制度は、 さらにこれをいっそう進めて、最低基準は守り つつも、学年の枠を取り払って柔軟に、また弾 力的に、個々の進度別にきめ細かい教育課程を 編成し、指導方法を工夫することにも使用する ことができると考える。いや、こうした可能性 を開くことにこそこの特例校制度の意義がある と考える。したがって、今後可能であれば、こ うした点に配慮したきめ細かな教育課程、教材 開発、評価方法などの研究に、高月町内の教員 が一体となって、共同して取り組むべきではな いかと思う。

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よる通学が行われているが、これは地理的条件 の優位性のためであって、他市町でこのような 施策をとる場合は、児童生徒の移動のための交 通手段の確保は同じく不可欠なことである。 すでに述べたように、教師の意識改革も重要 な課題である。教師の一部には、多忙感もあり、 現状維持志向が強く、改革への意識的抵抗が大 きい場合も多い。改革は、単なる枠組みを変え ただけではだめであり、関係者の意識が変わら なければ成功しない。したがって、改革や事業 の意義を十分理解してもらい、目的を共有して もらう努力が必要である。関係者の話では、こ れは先述した緒川小学校が学校改革を始めたと きの状況でもあった。さらに改革の趣旨は、人 が変わり、体制が変わっても関係者に引き継が れ、さらなる改善や改変が続けられる必要があ り、その意味で高月学園構想についてもこうし た継承が望まれる。 ここで蛇足ではあるが、教職員が改善研究に 取り組む意味について一言しておく。中四国地 方における 5 人の名校長の一人として広く知ら れている元東広島市立寺西小学校校長織田壽子 は、学校マネジメントの一つの重要な柱に所属 教師の職務能力の向上を位置づけた。その方策 として、赴任した先の学校の地域特性を常に分 析し、それをふまえた的確な研究課題を設けそ のテーマについて研究指定をとり、教師の研修 を奨励し、活発化した。実際、織田の下で育っ た教師達は大きな力をつけ、人事異動に際して 他の学校から引く手数多であったと仄聞してい る。教育委員会、また学校で行なわれる研究は 教師のキャリアアップの重要な機会であり、そ の過程で大きな力量を形成していることを自覚 すべきである。問題は、個々の教師がどのよう な意識を持って、課題にどう向き合い、どう取 り組み、何をつかもうとしているかである。 事業を説明して理解と支援を得ようと努めてい た。その際文部科学省のある高官は、「インハ イぎりぎりですな」と言いながらも、この計画 に理解共感し、親身のアドヴァイスをしてくれ たという。(18)この事業が、一定、法や基準 に抵触する部分があったのである。 高月学園構想でもっとも重要なのは、小さな 町の小さな教育委員会が中心となって、ある意 味では、法や基準に抵触する可能性があるよう な大きな改革を進めていることである。今日教 育改革の時代といわれているが、こうした時代 にあっても多くの場合は上からの改革であり、 あるいは横並び志向がある。教育行政機関もま た学校現場も、中央省の意向のままに、それを 唯々諾々と実施していることが多いのが現状で あると思われる。もちろん国の政策や方向性は 尊重しなければならないが、しかしそうであっ ても地方の状況を踏まえ、地方から発する改革 も必要であり、今日求められているのは、いわ ば下からの、あるいは草の根からの改革であり、 様々なブレークスルー的な試みであると思う。 その際重要なのは、人であり、とりわけ町長や 教育長の資質とリーダーシップは肝要である。 高月町の例は、中央教育審議会などで小規模教 育委員会の沈滞化やマンネリ化、非能率に対す る批判がなされる中で、有用な人材を得れば、 なお教育委員会が有効に作用することを示すひ とつの証拠である。 高月学園構想に基づく実践はまだ始まったば かりで、その成果を例えば数値で詳細に評価し、 成否を論じることはできない。また実践が進む につれて、改善し解決すべき点も多々ある。し かし、不十分さや改善の余地はあるとしても、 総合的統合的な教育マネジメント、限られた教 育資源の効率的活用、教育システムの弾力化・ 柔軟化などの本質を持った高月学園の実践は、 今後の教育改革、改善に向けた大きな可能性を 秘めていると思われるし、ひいては児童生徒、 地域住民の教育保障に有効に資するものと考え

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られる。また、特に小規模校化にともなう諸問 題を解決する一つの有効な方策であると思う。 ところで、はじめに述べたように、高月町は 2010 年 1 月 1 日をもって、湖北の他の 5 町と ともに長浜市に編入合併されることになり、合 併協定書締結以後合併後の教育行政のあり方に ついて関係者の話し合いが続けられてきた。そ して、2009 年 11 月 27 日に、1 市 6 町の教育委 員会の間で協議調整事項が確認され、高月町の 学力実践推進事業と教育課程特例校の事業が当 面新市でも引き継がれることになった。しかし、 高月学園構想の基本部分についてそのゆくえは 不透明である。今後は新長浜市において改めて 高月学園が評価され、そのあり方や存否も決 まってくると思われる。新しい市が誕生するこ とにより、今後市としての一体性の確保がさら に重要な課題になる。しかし、こうしたことは 一定の期間を経てその方向に向かうものであ り、旧町において積み重ねられてきた実践やそ の特色は、地域の意向に即して可能な限り尊重 されるべきである。その上で、新長浜市におい ても、高月学園構想は一定有効であると考えら れる。高月学園は高月町をエリアとした実践で あったが、新市においては、例えば近接する複 数の学校のマネジメントのひとつの形態として 考えられる。特に、新長浜市は小規模学校を多 数抱えることになり、早晩学校の適正規模の問 題や適正配置が問題になる。その際、中学校の 適正規模化は可能な場合は、ある程度急ぐべき である。しかし、小規模であっても地域と密接 な関わりを持つ小学校は、画一的な基準で安易 に統廃合すべきではない。したがって、適正規 模化した中学校を核として、校区内の小学校の マネジメントを考えていくべきである。そのあ り方は校区ごとに条件や地域性があり、それぞ れの地勢に応じて学校や教育のあり方を検討す べきである。また小規模化が相当程度進み、や むを得ず統廃合をしなければならないとして も、こうした実践を積んでおけば、その過程を スムーズに進めることができる。さらに、こう した中学校を核としたマネジメント体制への一 定の教育委員会権限の移譲による独自な学校マ ネジメントや教育実践を奨励することも考えら れる。こうしたことを考える際、高月学園の実 践は、ひとつの有用な参考事例になるものと思 う。(19) (1) 西坂重和保管文書より引用。 (2) 懇話会の委員は以下の通りである。(各職などは 当時のものである)藤田弘之(滋賀大学、会長)、 八田茂春(町観光協会、副会長)、村井弘(町議 会代表)、山岡孝明(町議会代表)、友田昭夫(高 月中学校長)、菅井政晴(高月小学校長)、野瀬 謙治(学校評議員)、前田清隆(町 PTA 連合会 代表)、村井憲之(区長会代表)、橋爪里美(女 性会代表)、山岡直芳(まちづくり代表)、大比 叡延子(福祉関係)、藤本峯男(企業関係者)、 保積豊年(一般町民)、小野一美(一般町民) (3) 第 1 回高月町教育将来構想懇話会(平成 19 年 6 月 25 日)への提出資料。 (4) 『資料、高月町学校教育将来構想懇話会会議録』 (平成 20 年 1 月)、高月町学校教育将来構想懇話 会、1 ページ。 (5) 以下は、高月町学校教育将来構想懇話会答申、『新 しい時代に適応する高月町の学校教育の在り方』 (平成 20 年 1 月 31 日)を要約した。 (6) 上記答申、8 ページ。 (7) 『宮古・新教育プラン』(宮古市教育委員会提供 文書) (8) 『「高月学園構想」実現に向けての新しい時代を リードする高月町教育施設整備計画』、(平成 20 年 6 月)、8 ページ、11 ページ。 (9) 以下、「新しい学校教育システム『高月学園』基 本計画」(平成 20 年 10 月)を要約した。 (10) 以下、学力向上実践研究推進事業については、 高月町事業関係文書による。 (11) 横幕正樹から提供された「6 年集合学習、教育課 程の実施状況と今後の見通し」による。(2009 年 12 月 8 日、ファックス通信) (12) 高月町教育長西坂重和より文部省初等中等局長 宛文書(高教委学第 2270 号、平成 20 年 11 月 19 日)による。 (13) 高月町学力向上実践研究推進事業、事業推進本 部会議(2009 年 9 月 1 日)提出資料。 (14) 吉田源市より筆者への情報。(2009 年 12 月 11 日) (15) 『平成 21 年度第 2 回高月町教職員全員研修会資 料』(2009 年 9 月 1 日)、5 ページ。 (16) 栗東市事務支援センターについては、栗東町学 校事務標準化関係文書(三上清美提供)、及び三 上清美からの情報による。 (17) 緒川小学校の実践の経緯については、『個性化教 育 30 年―緒川小学校の現在』、中部日本教育文 化会、2008 年。

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の答弁を行っている。 付記 高月学園構想の懇話会でのとりまとめ、また その具体化にあたっては、筆者もその一端を担 山田美恵子の諸先生に心より謝意を表したい。 また、高月学園構想の具体化に向けて、ご尽力、 ご協力いただいている高月町内各学校の諸先生 方にも同じく謝意を表し、ご慰労申し上げたい と思う。 (2009 年 12 月 8 日脱稿)

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