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「世田谷区における医療度の高い子どもの在宅医療供給システム構築に関する基盤研究」

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(1)2012 年度(後期)一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書. 研究題目. :. 「世田谷区における医療度の高い子どもの 在宅医療供給システム構築に関する基盤研究」. 研究者:福田志穂 所 属:日本女子大学人間社会研究科社会福祉学専攻博士課程前期 所在地:神奈川県川崎市多摩区西生田 1-1-1 電 話:044-966-2121 職 名:大学院生、理学療法士 共同研究者:木村真理子 所 属 :日本女子大学人間社会学部社会福祉学科 職 名 :教授. 提出年月日:2014 年 2 月 28 日. 1.

(2) 目次: はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第1章. 4. 先行研究のレビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 5 1.問題提起 2.問題の背景・理論枠組み. 第2章. 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 12. 1.研究の問い 2.予測される結果 3.本研究における用語の定義 4.研究の設計 5.調査の対象 6.データの収集方法 7.倫理的配慮 8.データの分析方法 9.本研究の限界 7. 第3章. 調査研究の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 第4章. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 28. 第5章. 結論と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 31. 終わりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 32. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 33. 〈付録 A〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35. 2.

(3) ※図表目次 表 1-1「小児在宅医療の類型」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 表 2-1「本研究における用語の定義」・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 13 図 3-1「今後、小児の訪問診療を実施または継続されますか」に対する回答 ・・・ 19 表 3-1「今後、小児の訪問診療を実施または継続していくには、 どのような条件が必要と考えますか」に対する回答・・. 20. 図 3-2「今後、小児の訪問看護を実施または継続しますか」に対する回答 ・・・ 23 表 3-2「今後、小児の訪問看護を引き受ける、または、継続していくには、 どのような条件が必要と考えますか」に対する回答・・・ 23 図 3-3「今後、子どもの訪問介護を、実施または継続しますか」に対する回答 ・・ 25 表 3-3.「今後、子どもの訪問介護を引き受ける、または継続するには、 どのような条件が必要と考えますか」に対する回答・・・ 26 表 3-4 「ラベルの内訳と度数」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 図 4-1 「世田谷区における子どもの在宅医療供給システム(概念図)」・・・・・ 30. 3.

(4) はじめに. 近年、増加の傾向にある医療度の高い子どもの在宅生活において、 教育や社会参加、さ らには成人期に移行後は社会人としてどのように社会生活を営んでいくかといったいくつ かのライフステージのなかで、ある程度の見通しをたてながら連続性のあるケアが必要と なる。その前提として、生活の基盤となる体調管理の面で 在宅医療はどのような仕組みで 提供されるのが望ましいだろうか。こうした子ども達は、絶対数が少なく地域に点在して いるため、集約してサービスを提供することがなかなか難しい。しかしながら、子どもの 在宅生活における医療の供給体制が整い、多くの子どもや家族の社会参加へと繋がるよう システムを整備していく必要性が求められている。 本研究では、都市部において在宅医療を必要としながら生活を送る子どもに今後関わる 可能性のある医療・介護従事者、特別支援学校の教員に対し調査を実施した。主な調査内 容は、在宅医療を必要とする子どもへの今後の介入について、また介入にあたり必要な条 件、ケアコーディネートに必要と思われる能力等についてである。これらの結果から、都 市部における在宅医療供給システムの構築に向け課題を検討したので報告する。 なお、本研究は日本女子大学人間社会研究科社会福祉学専攻博士課程前期の学位論文 の一環として、ならびに、公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成対象研究として 実施した。. 4.

(5) 第1章 先行研究のレビュー. ここでは、本研究の基盤となる先行研究のレビューを行う。特に、在宅医療を必要とす る子どもに関する全国的な傾向や、社会面・医療面での問題、こうした子どもを取り巻く サービス供給システムにおける特徴について述べ、現状について明示する。先行研究と比 較して、本研究がどのような意義をもつかについても述べる。. 1.. 問題提起. 我が国では、医療の高度化と技術の進歩に伴い、医療依存度の高い児が地域で暮らすケ ースが増加している。その流れを受けて、全国的に小児の在宅医療に対する関心が 徐々に 高まりつつある。一方で、絶対数の少ない子どもの在 宅サポートシステムに普遍的なモデ ルは存在せず、地域に適したネットワークの構築が求められている(土畠. 2010)。厚生. 労働省は平成 24 年に、新たに医療計画を「5 疾病・5 事業及び在宅医療」 (厚生労働省ホ ームページ)とし在宅医療を加えた。この在宅医療の体制構築に係る指針のなかで、近年 疾病や障害を抱えながらも自宅や住み慣れた地域で生活をする小児や若年層の在宅療養者 が増加していることを述べている。医療保険の訪問看護を受ける小児(0~9 歳)の数は、 平成 13 年の1ヶ月あたり 842 人から平成 21 年の 2,928 人へと約 3.5 倍に増加してい る。疾病構造の変化や高齢化、QOL 向上を重視した医療への期待の高まり等により、在 宅医療のニーズは増加し多様化しているとしている。 立松,市江(2009)は、障害児(者)における「医療的ケア」の研究動向を明らかにす る調査を実施した。その結果から、児が病院を退院した後の在宅生活において、自宅・学 校・病院・施設で関わる多職種が、児や家族に対する共通認識を持ち、ケアが迅速かつ的 確に実施できるような情報共有が必要であることを述べている。アメリカのマサチューセ ッツでの調査からは、慢性的に人工呼吸器を必要とする子どもやその家族の社会環境にお けるケアの障壁のひとつとして、医療従事者と地域のサービスプロバイダーの連携の不足 が指摘されており(R.J.Graham. 2008)、在宅生活で関わる専門多職種間の連携が重要で. あることは多く言われている。しかし、これらに関し現状を把握できるような先行研究で は、全国規模の調査や他県における調査はみられるものの、東京 23 区の情報は少ない。 従って、本研究では東京 23 区において、地域性に適した子どもの在宅医療供給システム の構築を目的に、まずは現状把握のための調査を行うこととする。それとともに、調査の なかでは、どういった条件が整備される必要があるかを明らかにすることで、今後取り組 むべき実践課題を整理する。さらに、調査結果の分析と先行研究の考察から、都心におけ る子どもの在宅医療供給システムの一つのモデルを提示することが、本研究の意義である と考える。 5.

(6) 2.. 問題の背景と理論枠組み. 在宅医療を必要とする子どもと家族を取り巻く現状 近年、医学の進歩により救命率が向上している。これに伴い、急性期病院における NICU・小児科長期入院における社会的な問題として、ベッド稼働率の低下から生じる新 たな患者の受け入れ困難が指摘されている。2007 年に行われた全国 8 府県のアンケート 調査によると、急性期治療を行った病院に長期にわたり入院し続けている超重症児は、全 体の 15%であり大都市圏に多いとされている。また、その約 7 割で家族ケアが行えず自宅 で引き取れないために退院先がない状態であり、入院が継続されている(日本小児科倫理 委員会 2007)。このような児の転院先として、重症心身障害児施設が挙げられるが、施設 の高齢化が進行し満床状態である。また、患児への影響として、入院が長期化することに より、児がその時に一番愛情をくれる人を敏感にかぎ分け、特異的な行動を取るような「病 院の子」になってしまうことや、長期間の父母との分離により、親の極度の育児不安を誘 発することも知られている。こうした親の一部は虐待につながるケースもある。また、児 の兄弟は手がかからないことを求められ自分を押し殺すことを覚えてゆくのに対し、近年 こうした「きょうだい児」への支援の必要性が挙げられている(吉野 2008)。 全国重症心身障害児(者)を守る会の平成 24 年度重症心身障害児者の地域生活モデル 事業報告書(2013)によると、きょうだい及び家族支援の取り組みを通し、重症児者の兄 弟姉妹がいることで友達関係がうまくいかないこと、重症児者の介護で忙しい母親に構っ てもらえない寂しさを抱えていること、情緒不安定となり不登校になるなど、様々な悩み を抱え暮らしていることが分かってきた、としている。また、在宅会員を対象に実施した 調査結果では、「通所施設で困っていること」のひとつに「医療的ケアへの対応が不十分」 であること、 「短期入所」においても医療的ケアが必要な場合は利用を断られることが多く (特に人工呼吸器使用の場合)、これをなくして在宅生活は維持できないこと を述べている。 鈴木ら(1995)は、医療依存度の高い児のなかで、特に医学管理下に置かなければ 呼吸 をすることや栄養を摂ることが困難な障がい状態にある障がい 児を、超重症児スコアを用 いて必要な医療処置によって点数を付け、スコア 25 点以上を超重症心身障害児(以下、 超重症児)、10 点以上を準超重症心身障害児(以下、準超重症児)としている。この基準 に基づいた超重症児における調査報告は多数みられる(日本小児科倫理委員会 2007;前田 2009;吉野 2009)。そのひとつである日本小児科学会倫理委員会による宮城県・千葉 県・ 神奈川県・滋賀県・奈良県・大阪府・兵庫県・鳥取県の病院・重症児施設などの管理的医 師を対象とした悉皆調査では、20 歳未満の同地域人口 1000 人あたりでみた超重症児の発 生率は、大略 0.3 程度と推測され、全国の発生数を概算すると 2007 年 5 月 1 日時点で 7350 人となる。この 0.3 という数字は 2000 年に岡田らが発表した「重症心身障害児(者)」の 比率(岡田 2001)に相当することから、重度な医療的ケアが必要な超重症児の数は明ら 6.

(7) かに増加していることが分かる。また、この調査において、在宅で生活する児の訪問診療 の利用率は全体の 7%に過ぎず、病院外来での定期的な診察が主であった。また、訪問看 護の利用率は 18%で地域差がみられた。これは、高齢者の介護保険の利用を主とした運営 と異なり、医療保険での対価の低さと居住地域が広範囲になることでの訪問効率の悪さも 関係して、事業そのものが成立しにくいことが関係していると思われる。 介護の面では、 97%が家族介護により支えられており、その殆どである 93%が母親によるものであり、ヘ ルパー利用率は 12%であった。 平成 24 年に出された東京都 NICU 退院支援モデル事業報告書(東京都福祉保健局ホー ムページ)によると、周産期母子医療センター等における長期入院児の医療ケアに関する 調査を行ったところ、平成 23 年度調査での一年以上の入院児では「経管栄養」 「気管挿管・ 気管切開」「レスピレーター管理」「一時間に一回以上の吸引」の順に多く、医学管理を必 要としない児はいなかったと述べている。また、この事業では、NICU 入院児支援コーデ ィネーターの配置と支援として、医学的問題と社会的問題の両方の課題を見極め、適切な 養育環境へ移行することができるような院内支援体制を構築する取り組みが 必要と考え、 看護師とソーシャルワーカーの 2 職種のコーディネーターを周産期母子医療センター内に 配置した。課題として、特に医学的リスクケースの退院では、院内のコーディネーターの ような役割を担う地域のコーディネーターを担う機関が明確ではなく、誰と相談すればい いのかわからないという点が挙げられていた。また、乳幼児の在宅医療を支える資源は高 齢者と比べて整備が遅れ不足しており、とりわけ 経管栄養・人工呼吸器などを装着して在 宅で療養するには、医療ケアをサポートする診療所小児科医師、訪問看護ステーション、 家族の休養をサポートするレスパイト(短期入所)、日中預かるデイサービス、通所サービ ス等が必要であるとしている。 カナダの Cohen ら(Cohen et al. 2011)は、小児期の死亡率を減らすために医療と科学 の進歩は続き、複雑な医療を必要とする子ども(children with medical complexity : CMC) が劇的に増加する結果になっていると述べている。こうした児に対し、チームをベースと した対応を供給することを目標とし、Integrated Complex Care Model : ICCM が試みら れている。そして、既に児や家族・プロバイダー・組織・出資者・政策立案者の面で、い くつかの肯定的な結果が明らかにされている。トロントにおける主要な地域保健の統合ネ ットワーク(Toronto Central Local Health Integration Network : TC-LHIN)は、オン タリオ州の 14 の地域のヘルスネットワークのひとつで、脆弱な子ども達のケアとサービ スを提供することを含め、Integrated Care for Complex Populations として戦略的に着手 している。複雑なケアマネージメントの従来のパラダイム では、これまで一人のプライマ リーケアのプロバイダーに焦点化していたが、そうではなく、カナダ全域でイニシアチブ を再形成するプライマリーケアは、チームをベースとした対応を供給すること である。こ 7.

(8) こにはキーワーカーの概念が含まれ、クリニカルニーズに焦点を当てることに優れている クリニカルキーワーカーと、地域の資源を含めたシステムニーズを扱うシステムキーワー カーの存在が特徴的と考えられる。医療とシステムの両側面で、各職種が同じ目的をもち 情報を共有することで、統合されたケアシステムの構築へと前進できる のではないかと考 えられる。. 子どもの在宅医療における特徴 前田(2009)は、在宅医療を必要とする小児の在宅生活において 6 つの特徴を挙げてい る。その特徴とは、①高度な医療ケアの必要性②小児在宅医療を行う医療機関の絶対的不 足③小児の訪問看護が抱える問題④貧弱で制度が複雑な社会資源⑤教育との関わりの難し さ⑥小児の終末期ケアの難しさ、である。①高度な医療的ケアの必要性とは、小児在宅医 療の適応ケースは、高齢者に比較し障害が重く医療ニーズが高いことを示している。③小 児の訪問看護が抱える問題については、小児の訪問看護を行う訪問看護師が少ないことを 挙げている。この理由として、濃厚な医療的ケアを必要とする小児の訪問看護では 、ICU や NICU など集中治療的管理の経験がないと踏み込んだ看護介入が難しいことを述べてい る。また、親が壁となり看護介入そのものが困難になるとの見方もあるようである。これ は、親が医療度の高いケアに熟達していることが多いため、看護師に求める水準も高くな るという理由からである。⑤教育との関わりの難しさでは、学校における医療行為は、殆 どが家族の責任で行うことになっているのが実状で、家族への重い負担となっていること を挙げている。 前田(2009)吉野(2009)は、小児在宅医療が「介護保険制度の対象でない」ことも特 徴であると述べている。特に、ケアマネージャーにあたるケアコーディネーターが制度上 不在であり、制度について殆ど知識のない家族がケアコーディネートしなければならない。 特に、介護者を休ませたり、介護者の病気や急用に対応できるショートステイのための施 設を探すことの困難さが、とりわけ大きな問題である。また、介護福祉施設等が使えない ことも、レスパイトケアのうえで大きな問題点となっている。小児のレスパイトケアは、 居住地により大きな差異がある。都道府県が制度化している場合や、重度障害児施設でデ イケアやショートステイを行っているところがあるなかで、居住地によっては、全く受け ることが出来ないケースもある。医療・福祉制度の面では、障害児者の制度は申請主義で あり、こうした子どもの数は少ないうえに制度は複雑である。そのため、ケアマネージャ ーにあたる役割の担い手が不在である子どもの場合、母親がこうした役割を担うケースが 多い。群馬県で実施された調査(吉野 2008)によると、介護保険制度上の「ケア会議」 に相当する会議がもたれていたのは全体の 28%、そのケアコーディネートを主に行ってい るのは 61%で親であることが明らかとなった。 8.

(9) 社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会 による平成 24 年度重症心身障害児者 の地域生活モデル事業報告書(厚生労働省ホームページ)において、世田谷区を対象とし た事業への取り組みの課題のひとつとして、 「相談支援事業」について触れている。そこで は、障がい児者に対する相談支援事業は、平成 24 年 4 月から施行された「整備法」に新 たに規定された事業であることから、まだその趣旨や仕組みが浸透しておらず周知が行き わたっていない実情があり、十分に機能するためにはもう少し時間を要することを述べて いる。また「重症児者や家族に対する支援」においては、現状では医療・教育・福祉など 各分野の連携が少ないため、それぞれの分野にコーディネーターが存在するような状況に あり、重症児者の全ライフサイクルを見渡して相談支援や障害福祉サービスの提供につい て、組み立ててくれるコーディネーターが存在しないことを挙げている。. 子どもの在宅医療に対する専門職の意識 このように多くの課題が挙げられるなか、群馬県における 小児の訪問看護経験のない事 業所を対象とした調査(吉野 2008)から、今後の小児の受け入れの見込みとして、60% で将来的に小児の訪問看護を行うことができる可能性があることが示された。そして、そ のために必要なこととして約 80%で「指導してくれる医師がいること」がとても重要と回 答した。一方で、「経済的利益があること」は 14%にとどまった。また、静岡県浜松市内 の開業医を対象とした調査報告(遠藤,鈴木 2012)では、今後重症児者の診療については 「関われる」「条件が整えば関われる」とした診療所が 58.3%、その条件として「総合病 院主治医との連携」「患者家族の協力」「緊急時等の総合病院のバックアップ」の声が多く みられた。こうした調査結果から、子どもの在宅医療に携わろうとする想いをもっている 医師・看護師が多くいることが示された。 山 口 県 の 全 養 護 学 校 教 諭 と 小 中 学 校 特 殊 学 級 担 任 教 諭 を 対 象 と し た 調 査 ( 林 ,木 戸 ら 2005)においては、教員が他機関との連携の必要性を感じていることが明らかとなった。 一方で、医療機関は教育側からみると敷居が高く、医療機関側がどのような形で敷居を下 げていくかが検討課題である、としている。. 本研究の必要性と意義 このように他県での調査報告はみられるが、東京 23 区内の報告は少ない。しかし、こ うした子どもは大都市圏にも多数在住することが予測される。従って、調査により地域の 現状と問題点を把握する必要性があると考える。 土畠(土畠 2013)は、子どもの在宅医療を 展開するうえで以下の類型に分けることが できるとして次のように述べている(表 1‐1)。第 1 類型:開業医/総合病院-重複主治 医型は、退院後も総合病院小児科勤務医が主治医となるが、予防接種や感冒罹患時などの 9.

(10) 受診については地域の開業医が「かかりつけ医」として行うものである。良い点は、在宅 移行がスムーズで、病院勤務医の負担が軽減されることである。悪い点として、主治医間 の情報共有が煩雑で、診療が分断される点である。介護者や在宅スタッフがどちらに相談 すればよいかわかりにくい点も挙げられる。また、ケアマネージャーに相当する役割の介 入が必須である。第 2 類型:開業医・総合病院-連携型は、退院後は地域の開業医が単独 の主治医になり、入院が必要となった際は地域の総合病院に依頼する。良い点は、受診が 容易で地域の社会資源を有効活用できる点である。悪い点として、引き受けてくれる開業 医が見つかりにくく、在宅移行が困難になる点である。また、開業医の負担が大きく、緊 急入院や定期的な検査入院の病床確保が困難である点も挙げられる。第 3 類型:総合病院 -包括型は、退院後も総合病院小児科勤務医が単独の主治医となり、予防接種や感冒罹患 時などの受診も全て包括的に行うものである。良い点は、急性期から主治医が変わらない ため家族が安心する点である。また、診療が分断されないため臨時受診や緊急入院の際も 困ることが少ない。悪い点として、自宅から病院までが遠い場合は受診が困難である点で ある。また、地域の社会資源の活用が困難で、病院勤務医の負担が大きいことが挙げられ る。第 4 類型:総合病院-アウトリーチ型は、退院後も総合病院の小児科勤務医が単独の 主治医となり、自ら地域に出向き(アウトリーチ)、訪問診療や地域の社会資源の調整など 在宅管理の全てを行い、急性増悪時の対応や緊急入院についても対応する。良い点として、 全てを同じ医師が担当してくれるという安心感がある点である。大規模な診療システムの 構築が可能で、症例の集約による在宅医療の質の向上 が挙げられる。悪い点として、シス テム構築が困難である点や、200 床以上の病院では「在宅時医学総合管理料」の算定がで きない点を挙げている。地域の開業医が在宅医療にあまり関心を持たなくなることも挙げ ている。この類型では、第 1 類型から第 3 類型は子どもの在宅医療に外来受診で介入する 方法であり、第 4 類型のみ訪問診療を行うアウトリーチという方法をとっている。このよ うに類型化されたモデルをもとに、本調査の結果から、世田谷区の場合にはどのようなモ デルが該当するかについても検討する。. 10.

(11) 表1-1 小児在宅医療の類型. 出 拠 (土 畠 2013)をもとに筆 者が作 成. 11.

(12) 第2章 研究方法. ここでは、先行研究から導き出された研究の問いを提示し、それらを明らかにするため の研究の方法について記述する。. 1.. 研究の問い. この研究の中心となる問いは、次の通りである。 ① 医療的ケアを必要とする子どもの在宅生活 に関与する開業小児科や在宅療養支援診療 所と中核病院の医師・訪問看護師・訪問介護従事者が、有機的に連携し機能するため の必要な条件は何か。 ② 医療的ケアを必要とする子どもに学校教員が関与する場合、子ども に関わる他の職種 と有機的に連携し機能するための必要な条件は何か。 ③ 世田谷区の地域性から、どのような子どもの在宅医療供給システムが適しているか。 ④ 先行研究の多くは地方における 調査結果であったのに対し、医療・福祉の資源が多い 都心における子どもの医療供給システムの特異性は何か。 ⑤ 子どもの在宅生活において、どのような職種や立場、知識や経験をもつ人がコーディ ネートの役割を担うべきか。 ⑥ ①から⑤までの問いから明らかにされたことを統合した世田谷区における子どもの 在 宅医療供給システムとは、どのような要素を含む か。. 2.. 予測される結果. 先行研究より、本研究において以下のような結果の予測が導かれる。 ① 医療を必要としながら在宅生活を送る子ども において、現在関与していない医師・看 護師・介護従事者・教員も必要条件が整備されれば介入可能となる。 ② その必要条件とは、主に医療面に関する条件である 。開業医や在宅療養支援診療所の 医師の介入にあたっては、訪問看護ステーションが 24 時間対応できることや、中核病 院での緊急時の対応が確保されることが予測される。また、学校教員 は、ケース毎に 主治医に相談しやすい環境づくりを求めていることが予想される。このような、医療 面でのバックアップ体制を整備することが求められている 。 ③ 中核病院が存在する世田谷区においては、土畠が類型化した(2013) 「総合病院-アウ トリーチ型」に類似すると考えられる。しかし、全てを中核 病院で請け負うのではな く、都心の特色である開業小児科や在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション など の資源が多いことを活かし、近隣の医療従事者が軽い感冒罹患時や 予防接種などを請 け負うことは、子どもやその家族にとってのメリットだけではなく、 地域の医療者側 12.

(13) にとっても子どもや家族を理解する機会となる。 ④ 高度な医療を必要とする子どもの場合、その重症度から主治医の多くは規模の大きい 病院の勤務医であることが予測される。一般的に開業小児科や在宅療養支援診療所にソ ーシャルワーカー等が配置されていることは少ない。従って、中核病院に子どもの在宅 生活を支援する部門を設け、そこで医療面と社会面の両側面において、継続的にコーデ ィネートを実施できる体制を整備することが必要である。こうした部門が設置されるこ とで、ケースに関する多職種カンファレンスの実施が行いやすくなり、主治医と在宅生 活で子どもに関わる各専門職との関係性が築きやすい環境になると考えられる。. 3.. 本研究における用語の定義. 調査結果や分析結果に一貫性をもたせるため、本研究における操作上の用語の定義を 、 以下の通りとした(表 2‐1)。. 表2-1. 4.. 本研究における用語の定義. 研究の設計. 本研究は、他に類似する研究が少ないため探索的研究の要素を含む。そのため、仮説を 事前に用意するのではなく、先に述べたような問いを明らかにする方法を用いた。そして、 地域を限定し状況を把握するためにサーベイの方式を用い、質問紙調査の郵送調査を実施 した。その質問項目により、量的方法と質的方法の両者を採用した。量的方法は、個々の 事例の特殊事情に偏らず全体的な傾向を捉えることができ、且つ、客観的に現象を理解す ることに適していると考えられるため(武田 2004)、用いることとした。また、質的方法 は、現象の深い理解や詳細の記述を目的としており、先行研究からは情報の少ない内容に 13.

(14) 関する質問項目について、回答者から詳細に意見を収集することに適している(武田 2004) と考えられたため、採用することとした。質問紙票の質問項目の多くは、設定した選択肢 から回答を選択するものであるが、一部自由記述式で回答する項目を設けた。回答を選択 する選択肢については、過去の調査報告から傾向を調べ、回答として多いことが予測され る選択肢を設定した。調査は、地域全体の傾向を出来る限り的確に把握するため、対象と なる全施設・全事業所に質問紙票を郵送した。実施にあたり 2013 年 5 月~6 月にプリテ ストを行い、質問紙票の内容に関する妥当性について検討を行った。. 5.. 調査の対象. 本研究では、調査結果から分析される現状と問題点をよ り明確なものにするため、調査 範囲を焦点化し、調査地域を世田谷区とした。世田谷区は、障害者(児)施策推進におい て区市町村の関与が低かった時代から、独自に障 害者(児)施策を積極的かつ先進的に推 進してきた歴史がある。東京 23 区は地方分権推進により地域の特性に応じサービス内容 等に変化がみられるなか、平成 17 年度~平成 26 年度までの「世田谷区地域保健医療福祉 総合計画」 (世田谷区ホームページ)において、今後の施策の方向性として「在宅生活を支 える環境の整備」等を挙げ、障がい者(児)を含む在宅療養のための保健医療福祉のネッ トワークづくりを進めることについても触れている。また、平成 24 年度~26 年度「第 3 期世田谷区障害福祉計画」 (世田谷区ホームページ)においても、今後の方向性として、専 門支援拠点を中心に障がい児に関わる各機関が相互連携を深め、ライフステージで途切れ ることのない総合的で継続的な地域生活への支援を行うなど、障がいと共に生活する 子ど もの支援についても言及している。社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会によ る平成 24 年度重症心身害児者の地域生活モデル事業報告書(厚生労働省ホームページ) では、世田谷区には周産期医療及び新生児集中治療の機能を有する国立成育医療研究セン ターがあることから、同センター周辺には、障がい児の治療を目的として移り住んでくる 家族が多いことが確認されたと述べている。こうした点から、世田谷区は子どもの保健・ 医療・福祉の連携について関心の高い地区で、加えて、在宅医療を必要としながら生活を 送る子どもが多数いることが考えられるため、調査地域に選定した。 調査対象は、世田谷区に所在する小児科一次診療受け入れ施設、在宅療養支援診療所な らびに在宅療養支援病院と、小児科一次診療受け入れ施設と在宅療養支援診療所の両者の 機能を有する施設 253 件(「東京都医療機関案内サービスひまわり」掲載)、訪問看護ステ ーション 54 件(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」掲載)、居宅 介護事業所 117 件(独立行政法人福祉医療機構「WAMNET」にて“障害児”“居宅介護”での検索結果の 掲載)、特別支援学校 1 件(「世田谷区ホームページ」掲載)とした。. 14.

(15) 6.. データの収集方法. 2013 年 7 月、調査対象となっている各施設の施設長宛に本研究の趣旨に関するカバー レター(付録 A)と調査のお願いの文書・同意書(付録 B)、返信用封筒を質問紙票(付録 C)とともに同封し郵送した。回収については同封した返信用封筒を利用し、自署済みの 同意書と回答を終えた質問紙票を返送するようお願いした。記入方法は自記式とした(儘 田 2002,大谷ら 2002)。. 7.. 倫理的配慮. 本研究は「日本女子大学ヒトを対象とした実験研究に関する倫理審査委員会」の承認を 得たうえで調査を開始した。また、協力者に対しては、調査前に調査の意義や匿名性の担 保に関する文書を提示し、調査への同意を得て実施した。 なお、本調査は公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成を受け実施した。そのた め、インターネット上に本研究の最終報告書が掲載される予定であり、この件に関しても 説明を加えた。. 8.. データの分析方法. SPSS ソフトを利用し記述統計を行った。データの分析には単純集計を用い、必要に応 じて 2 つの質的変数間の関係を分析するためにクロス集計を行った(儘田 2002,大谷ら 2002)。自由記述回答のデータについては、データを意味の区切りで切片 化し、ラベルを つけ概念化を行った。そのなかから研究の問いに関するものだけを特定したのち、グルー プに分類しカテゴリー生成を行った。. 9.. 本研究の限界. 本研究では、在宅医療を必要とする子どもにおいて、先行研究で述べられていた重要な 課題の一つである通所・入所施設や、保健師等の行政の機関については対象から外れてい る。また、医療施設や事業所を継続していくためには報酬等の経営面の視点も重要である が、このような点については殆ど触れておらず、地域のシステムを検討するには極めて内 容が限定的である。また、後に述べるが、本調査では教育機関からの回答は得られなった ため、考察において教育の視点が欠如している。さらに、今回は世田谷区に所在する施設・ 事業所を対象としたが、世田谷区以外で当区をサービスエリアとし介入している施設 ・事 業所があることを考えると、全体のシステムを検討するには情報量が不十分であると言え る。また、子どもはいずれ成人領域に移行することを考慮すると、調査範囲は益々拡大す ることを視野に入れ、考察・結論を述べる必要があると考えられる。 調査対象については先に述べた世田谷区に所在する施設・事業所の全数であるが、回答 15.

(16) が得られたのはごく限られた施設であり、回答が得られた施設については子どもの在宅医 療に関心が高いことが予測され、回答の内容には偏りがある可能性も考慮しなくてはなら ない。. 16.

(17) 第3章 調査研究の結果. 以下に、2013 年 7 月~9 月に収集された、世田谷区における医療機関・訪問看護ステー ション・居宅介護事業所に対する調査及び分析結果を示す。. 回答が得られたのは、医療機関では小児科一次診療受け入れ施設/在宅療養支援診療所 /小児科一次診療受け入れ施設・在宅療養支援診療所 の両者の機能を併せもつ施設の管理 者である医師 54 名(住所不定で 3 件返送されたため全 253 名)、有効回答率は 21.6%で あった。訪問看護ステーションでは、所長である看護師 15 名(全 54 名)、有効回答率は 27.7%であった。居宅介護事業所では、事業所所長 15 名(全 115 名)、有効回答率は 13.0% であった。今回は、特別支援学校からの回答は得られなかった。 なお、質問紙票では、このような子どもが生活する自宅を訪問し介護支援を実施す従事 者について「訪問介護士」と記載していたが、これを「訪問介護従事者」と改め、訪問介 護従事者が所属する事業所については「訪問介護事業所」を「居宅介護事業所」と 記載を 改めた。. 1.. 小児科一次診療受け入れ施設/在宅療養支援診療所/小児科一次診療受け入れ施 設・在宅療養支援診療所. ここでは、開業小児科と在宅療養支援診療所、および両者の機能を併せもつ施設の管理 的立場にある医師から得られた回答の結果を示す。施設の属性と勤務体制、在宅医療を必 要とする子どもの外来と訪問診療または往診についての実態と、今後実施する場合の必要 な条件についての回答を記載する。また、子どもの在宅生活におけるケアコーディネート を行うにあたり必要な能力についても、自由記述式の回答から分析を行った のでその結果 を示す。. 施設の属性と勤務体制 回答が得られた施設の属性(「東京都医療機関案内サービスひまわり」掲載)は、小児 科一次診療受け入れ施設が 63.6%(35 施設)、在宅療養支援診療所が 32.7%(18 施設)、 両者の機能を有する施設が 3.6%(2 施設)であった。このうち、医師 1 名での勤務体制 の施設が 60%(33 施設)であった。. 子どもの外来と訪問診療または往診の実態 「現在、医療的ケアを必要とする小児の外来診療を実施されていますか」につい て、 「は い」が 30.9%(17 施設)であった。外来診療を実施している 17 施設の内訳は、小児科一 17.

(18) 次診療受け入れ施設が 15 施設、在宅療養支援診療所が 1 施設、両者の機能を有する施設 が 1 施設で、小児科一次診療受け入れ施設で最も多かった。このうち、医師 1 名での勤務 体制の施設は 8 施設であった。「今後、医療的ケアを必要とする子どもの外来診療を実 施 または継続されますか」に対し、「積極的に引き受ける」が 10.9%(6 施設)、「条件が合 えば引き受ける」が 29.1%(16 施設)、「やむを得ない場合は引き受ける」が 20.0%(11 施設)、「基本的に断る」が 34.5%(19 施設)であった。この回答のうち「積極的に引き 受ける」「条件が合えば引き受ける」「やむを得ない場合は引き受ける」の前向きな回答を 合わせると 60%(33 施設)であった。内訳は、小児科一次診療受け入れ施設が 22 施設、 在宅療養支援診療所が 9 施設、両者の機能を有する施設が 2 施設であった。このうち、医 師 1 名での勤務体制の施設は 19 施設であった。また、現在医療的ケアを必要とする子ど もの外来診療を実施していないが、前向きな回答を示したのは 37 施設中 17 施設であった。 「成人・小児を含め、訪問診療または往診のご経験はありますか」の質問において、 「は い」が 63.6%(35 施設)であった。このうち、20 施設が医師 1 名の勤務体制であった。 さらに、「小児の訪問診療または往診のご経験はありますか」の質問に、「はい」と回答し たのは全体の 25.5%(14 施設)であった。この 14 施設の内訳は、小児科一次診療受け入 れ施設が 8 施設、在宅療養支援診療所が 5 施設、両者の機能を有する施設が 1 施設であり、 子どもの訪問診療または往診の経験は、在宅療養支援診療所よりも小児科一次診療受け入 れ施設で多かったことが示された。このうち、5 施設が医師 1 名の勤務体制であった。一 方でこの 14 施設に対し、現在何名の子どもに訪問診療または往診を実施しているかを尋 ねたところ、「1 名」と回答した 3 施設は全て小児科一次診療受け入れ施設、「2 名以上」 と回答した 3 施設全てが在宅療養支援診療所であり、在宅療養支援診療所で小児科一次診 療受け入れ施設よりも一施設あたりの在宅における子どもの診療人数は多か った。また、 7 施設で「現在はなし」、1 施設が無回答であった。子どもの訪問診療または往診の経験は ないが、依頼をされた経験をもつ 5 施設が受け入れを断った理由(複数回答可)について は、「緊急時の対応が困難」が 1 施設、「所属施設の人手不足」が 2 施設、「コスト面での 理由」が 0 施設、「小児科診療の経験者が不在」が 2 施設、「小児の診療に関する知識やス キルが不十分」が 3 施設であった。. 子どもの訪問診療に対する意識と実施にあたっての必要な条件 「今後、小児の訪問診療を実施または継続されますか」に対し、 「積極的に引き受ける」 の回答はなく、「条件が合えば引き受ける」34.5%(19 施設)、「やむを得ない場合は引き 受ける」が 20.0%(11 施設)、「基本的に断る」が 38.2%(21 施設)であった(図 3-1)。 「積極的に引き受ける」という施設がなかった一方で、「条件が合えば引き受ける」「やむ を得ない場合は引き受ける」といった前向きな考えを示す回答は合わせて 54.5%(30 施 18.

(19) 設)であった。このうち、医師 1 名の勤務体制の施設は 18 施設であった。また、子ども の訪問診療または往診の経験がない 20 施設中 11 施設で前向きな回答がみられた。 「今後、小児の訪問診療を実施または継続していくには、どのような条件が必要と考え ますか」(複数回答可)に対し、「主治医との共同診療」が 49.1%(27 施設)、「主治医が いる病院での臨時入院がいつでも可能」が 63.6%(35 施設)、「訪問看護ステーションと の連携」が 40%(22 施設)、 「所属施設の人手が十分にある」が 36.4%(20 施設)、「研修 などで知識やスキルを身につける」が 32.7%(18 施設)、「コスト面での優遇」が 20.0% (11 施設)、「定期的な訪問診療のみであれば可能」が 12.7%(7 施設)、「居住地が近い」 が 38.2%(21 施設)、 「長期的にみて小児期以降の引き継ぎ先が確保されている」が 25.5% (14 施設)、「条件に関わらず実施は不可能」が 14.5%(8 施設)、「実施する必要がない」 が 1.8%(1 施設)であった(表 3-1)。回答のなかで最も多くみられたのは、「主治医がい る病院での臨時入院がいつでも可能」で6割を超え、次いで「主治医との共同診療」が 5 割ほどであった。「条件に関わらず実施は不可能」「実施する必要がない」と回答した 9 施 設に対し「訪問診療以外で関わる場合、どのような関わりが可能ですか」 (複数回答可)と 尋ねたところ、 「外来での予防接種」が66.7%(6施設)、 「定期的な外来診療」が 44.4% (4 施設)、「感冒罹患時等の臨時の外来診療」が 70%(7 施設)、「関わるのは難しい」が 11.1%(1 施設)であった。. 5.5% (3施設) 1.8% (1施設). 38.2% (21施設). 「条件が合えば引き受け る」「やむを得ない場合 は引き受ける」 「基本的に断る」. 54.5% (30施設). 「その他」. 無回答. 図3-1. 「今後、小児の訪問診療を実施または継続されますか」に対する回答. 19.

(20) 表3-1. 子どもと家族にとって今後必要だと思われる支援 「その他、医療的ケアを必要とする子どもとその家族がより安心して在宅生活を送るた め、必要だと思われることは何ですか」(複数回答可)という質問では、「ショートステイ 等の預かり施設」が 80%(44 施設)、「家族への支援」が 65.5%(36 施設)、 「ケアコーデ ィネーターの存在」が 63.6%(35 施設)、「子どもの兄弟へのサポート」が 30.9%(17 施 設)であった。. ケアコーディネートの担い手について 「医療的ケアを必要とする小児の在宅生活において、誰がケアコーディネートの役割を 担うのが適していると思われますか」 (単一回答)の質問では、 「主たる介護者」が 18.2% (10 施設)、 「医師」が 9.1%(5 施設)、 「看護師」が 27.3%(15 施設)、 「訪問介護従事者」 が 1.8%(1 施設)、ソーシャルワーカーが 20.0%(11 施設)、「その他」が 18.2%(10 施 設)であった。「その他」では 8 施設で複数の職種を選択し、「チーム医療が不可欠」が 1 施設、「選択が難しい」が 1 施設であった。ケアコーディネートの役割を担うのに適して いると思われる理由についての質問では、70.9%(39 施設)から有効な回答が得られた。 この自由記述内容から、ケアコーディネートを行うに当たり必要だと考えられる「能力」 に焦点をあて、ラべリングにより回答の分類を行った。なお、一つの回答のなかに複数の 内容の記述が含まれる場合、文意が変わらないことに留意し内容ごとに区切り、ラべリン グを行った。その結果、46 の記述があり、質問の意図にそぐわないものを除外すると 36 20.

(21) の記述が見出された。ラべリングの結果から、「ソーシャルワークの知識」「看護の知識」 「医学的知識」を「知識」とし、 「客観的な見方ができる」 「フットワークが軽い」 「子ども や家族の変化に気づきやすい」「最終決定権がある」を「立場」とし、「複数の専門職の視 点をもつ」「縦割りの立場を繋ぐ」「俯瞰的なケアを行う」を 「機能」としてカテゴリー生 成を行った(表 3-4)。このように「能力」は「知識」「立場」「機能」の 3 つに分類された 結果、「知識」の面においては主に「医学的知識」「看護知識」「ソーシャルワークの知識」 が求められていることが示された。また、 「立場」の面においては、主に「客観的な見方が できる」「フットワークが軽い」「子どもと家族の変化に気づきやすい」ことが求められ、 「機能」の面では、 「複数の専門職から構成れている」 「俯瞰的なケアを行う」 「縦割りの立 場をつなぐ」ことが求められていることが示された。. 開業小児科と在宅療養支援診療所、および両者の機能を併せもつ施設の管理的立場の 医師に対する調査結果において、特に興味深いと考えられたのは、半数以上で今後の訪問 診療の実施に対し前向きな回答が得られたことである。また、 今後訪問診療を行ううえで 必要な条件として「主治医がいる病院での臨時入院がいつでも可能」 「 主治医との共同診療」 が多かった点である。マンパワーが少なく入院施設を備えない開業医の場合には、単独で 全てを診ることの困難さを示していると考えられた。開業医の場合、コスト面での負担も 予測されるところではあったが、コスト面での優遇が必要との回答は 2 割程度であった。 このことから、他機関との連携が大きな課題であることが示された。それと同時に、他機 関との連携が可能となることで、医療的ケアを必要とする子どもに地域で関わることので きる開業医が増加する可能性も示唆された。 また、今後医療的ケアを必要とする子どもの訪問診療や往診において「条件に関わらず 実施は不可能」「実施する必要がない」との回答をした 9 施設に訪問診療以外で関わる方 法を尋ねたところ、「感冒罹患時等の臨時の外来診療」が 7 割、「外来での予防接種」が 6 割を超えていたことから、地域で暮らす医療的ケアを必要とする子どもと開業医が関わる 方法として、定期的な外来や自宅へ訪問すること以外にも、こうした関わり方の可能性が 考えられることが示された。. 2.. 訪問看護ステーション. 次に、訪問看護師に対して実施した調査結果を示す。主に、事業所の属性と子どもの訪 問看護の経験の有無や、今後子どもの訪問看護を実施する場合に必要な条件についての回 答を記載する。また、子どもの在宅生活においてケアコーディネートを行うにあたり、必 要だと思われる能力についても自由記述式の回答から分析を行ったので、その結果を示す。 21.

(22) 事業所の属性 回答が得られた事業所の設置主体は、 「社会福祉法人」が 20.0%(3 施設)、 「医療法人」 が 40.0%(6 事業所)、「看護協会」が 6.7%(1 施設)、「営利法人(会社)」が 26.7%(4 事業所)、「その他」が 6.7%(1 事業所)であった。. 子どもの訪問看護の実態 「小児の訪問看護のご経験はありますか」の質問に対し、 「はい」が 46.7%(7 事業所) であった。 「現在、何名の小児に訪問看護を実施していますか」については「1 名」が 2 事 業所、「5 名」が 1 事業所、「6 名」が1事業所、「18 名」が 1 事業所、「現在なし」が 2 事 業所であった。子どもの訪問看護の経験がない 7 事業所に対し、子どもの訪問看護を依頼 されたことのある 1 事業所に対し断った理由について尋ねたところ、「小児看護の経験者 が不在」という回答であった。. 子どもの訪問看護に対する意識と実施にあたっての必要な条件 「今後、小児の訪問看護を実施または継続しますか」の質問 に対し、「積極的に引き受 ける」が 6.7%(1 事業所)、 「条件が合えば引き受ける」が 46.7%(7 事業所)、 「やむを得 ない場合は引き受ける」が 13.3%(2 事業所)、「基本的に断る」が 26.7%(4 事業所)で あった(図 3-2)。このうち、「積極的に引き受ける」「条件が合えば引き受ける」「やむを 得ない場合は引き受ける」の前向きな回答を合わせると 66.7%(10 事業所)であり、子 どもの訪問看護経験がない 7 事業所中 4 事業所で前向きな回答であった。 「今後、小児の訪問看護を引き受ける、または継続していくには、どのような条件が必 要と考えますか」(複数回答)について は、「指導してくれる医師がいる」 が 66.7%(10 事業所)、「主治医がいる病院での臨時入院がいつでも可能」が 66.7%(10 事業所)、「小 児の看護経験のある訪問看護ステーションとの連携」が 46.7%(7 事業所)、「所属事業所 の人手が十分にある」が 53.3%(8 事業所)、「研修などで知識やスキルを身につける」が 80.0%(12 事業所)、「コスト面での優遇」が 6.7%(1 事業所)、「条件に関わらず実施は 不可能」が 0 事業所であった(表 3-2)。最も多かった条件として、「研修などで知識やス キルを身につける」が 8 割を占め、「指導してくれる医師がいる」と「主治医がいる病院 での臨時入院がいつでも可能」がともに 6 割を超えていた。. 22.

(23) 6.7% (1事業所). 「積極的に引き受ける」「条 件が合えば引き受ける」「や むを得ない場合は引き受け る」 「基本的に断る」. 26.7% (4事業所) 66.7% (10事業所). 図3-2. 無回答. 「今後、小児の訪問看護を実施または継続しますか」に対する回答. 表3-2. 子どもと家族にとって今後必要だと思われる支援 「その他、医療的ケアを必要とする子どもとその家族がより安心して在宅生活を送るた め、必要だと思われることは何ですか」(複数回答可)について、「ショートステイ等の預 かり施設」が 73.3%(11 事業所)、「家族への支援」が 73.3%(11 事業所)、「ケアコーデ ィネーターの存在」が 66.7%(10 事業所)、「子どもの兄弟へのサポート」が 73.3%(11 事業所)であった。. ケアコーディネートの担い手について 「医療的ケアを必要とする子どもの在宅生活において、誰がケアコーディネートの役割 を担うのが適していると思われますか」(単一回答)については、「医師」 が 13.4%(2 事 23.

(24) 業所)、 「看護師」が 33.4%(5 事業所)、 「ソーシャルワーカー」が 26.7%(4 事業所)、 「そ の他」が 6.7%(1 事業所)で複数の職種を選択していた。ケアコーディネートの役割を担 うのが適していると思われた理由についての質問に対しては、73.3%(11 事業所)から有 効な回答が得られた。この自由記述内容からケアコーディネートを行うにあたり必要だと 考えられる「能力」に焦点をあて、ラべリングにより回答の分類を行った。なお、一つの 回答のなかに複数の内容の記述が含まれる場合、文意が変わらないことに留意し内容ごと に区切り、ラべリングを行った。その結果、13 の記述があり、質問の意図にそぐわないも のを除外すると 12 の記述が見出された。ラべリングの結果から、 「ソーシャルワークの知 識」「医学的知識」を「知識」とし、「他機関とのつなぎ役」を「機能」としてカテゴリー 生成を行った(表 3-4)。このように「能力」は「知識」と「機能」の 2 つに分類された結 果、 「知識」の面においては主に「ソーシャルワークの知識」と「医学的知識」が求められ ていることが示された。また、「機能」の面では、「他機関とのつなぎ役」 が求められてい ることが示された。. 訪問看護師に対する調査結果では、今後訪問看護を実施することに対して 6 割以上で前 向きな回答が得られた。さらに、実施するにあたっての必要な条件として、 「コスト面での 優遇」を選択したのはわずか 1 事業所であり、8 割で「研修などで知識やスキルを身につ ける」、7 割近くで「指導してくれる医師がいる」との回答であり、医師や子どもの訪問看 護経験がある事業所等の他機関との協力体制の必要性が伺えた。. 3.. 居宅介護事業所. 次に、子どもの訪問介護従事者から得られた結果を示す。ここでは主に事業所の属性と 子どもの訪問介護の実態、今後訪問介護を実施する場合の必要な条件について回答を記述 する。また、子どもの在宅生活においてケアコーディネートを行うにあたり、必要だと思 われる能力についても自由記述式の回答から分析を行ったので、その結果を示す。. 事業所の属性 回答があった事業所の設置主体は、 「医療法人」が 6.7%(1 事業所)、 「社団・財団法人」 が 6.7%(1 事業所)、 「協同組合」が 13.3%(2 事業所)、 「営利法人(会社)」が 53.3%(8 事業所)、「特定非営利活動法人(NPO)」が 20.0%(3 事業所)であった。. 子どもの訪問介護の実態 「子どもの訪問介護のご経験はありますか」 の質問について、「はい」が 33.3%(5 事 24.

(25) 業所)であった。子どもの訪問介護の経験がある 5 事業所に対し、「現在、何名の子ども に訪問介護を実施していますか」と尋ねたところ、「1 名」が 13.3%(2 事業所)、「2 名」 が 6.7%(1 事業所)、「5 名」が 6.7%(1 事業所)、「現在はなし」が 6.7%(1 事業所)で あった。子どもの訪問介護の経験がない 10 事業所に対し「これまで、子どもの訪問介護 の依頼をされたことがありますか」について尋ねたところ、 「ある」が 13.3%(2 事業所)、 「ない」が 53.3%(8 事業所)であった。子どもの訪問介護の依頼をされたことがある 2 事業所に対し「引き受けなかった理由は何ですか」(複数回答)と質問した ところ、「所属 事業所の人手不足」が 2 事業所、「コスト面での理由」はなく、「子どもの介護に関する知 識やスキルに自信がない」が 1 事業所であった。. 子どもの訪問介護に対する意識と実施にあたっての必要な条件 「今後、医療的ケアを必要とする子どもの訪問介護を実施または継続されますか」につ いては、 「条件があえば引き受ける」が 66.7%(10 事業所)、 「基本的に断る」が 26.7%(4 事業所)であった(図 3-3)。「今後、子どもの訪問介護を引き受ける、または継続するに は、どのような条件が必要と考えますか」について は、「指導してくれる医師がいる」が 46.7%(7 事業所)、「訪問診療医がいる」が 46.7%(7 事業所)、「緊急時対応先の確保」 が 60%(9 事業所)、 「主治医がいる病院での臨時入院がいつでも可能」が 40.0%(6 事業 所)、「訪問看護事業所との連携」が 73.3%(11 事業所)、「子どもの訪問介護経験のある 事業所との連携」が 40.0%(6 事業所)、「所属事業所の人手が十分にある」が 46.7%(7 事業所)、「研修などで知識やスキルを身につける」が 53.3%(8 事業所)、「コスト面での 優遇」が 20.0%(3 事業所)、「条件に関わらず実施は不可能」が 20.0%(3 事業所)であ った(表 3-3)。. 6.7%(1事業所). 26.7% (4事業所). 図3-3. 「条件が合えば引き受ける」. 66.7% (10事業所). 「基本的に断る」 無回答. 「今後、子どもの訪問介護を、実施または継続しますか」に対する回答. 25.

(26) 表3-3. 子どもと家族にとって今後必要だと思われる支援 「その他、医療的ケアを必要とする子どもとその家族がより安心して在宅生活を送るた め、必要だと思われることは何ですか」については、 「ショートステイ等の預かり施設」が 60.0%(9 事業所)、 「家族への支援」が 66.7%(10 事業所)、 「ケアコーディネーターの存 在」が 66.7%(10 事業所)、「子どもの兄弟へのサポート」が 40.0%(6 事業所)、「その 他」が 20.0%(3 事業所)であった。. ケアコーディネートの担い手について 「医療的ケアを必要とする子どもの在宅生活において、誰がケアコーディネートの役割 を担うのが適していると思われますか」については、「主たる介護者」が 20.0%(3 事業 所)、「医師」の回答はなく、「看護師」が 20.0%(3 事業所)、「ソーシャルワーカー」が 46.7%(7 事業所)、「その他」が 13.3%(2 事業所)であった。「その他」は、「専門のケ アマネージャー」 「相談支援担当者」という回答であった。ケアコーディネートの 役割を担 うのが適していると思われる理由についての質問では、86.7%(13 施設)で有効な回答が 得られた。この自由記述内容からケアコーディネーターに必要だと考えられる「能力」に 焦点をあて、ラべリングにより回答の分類を行った。なお、一つの回答のなかに複数の 内 容の記述が含まれる場合、文意が変わらないことに留意し 、内容ごとに区切りラべリング を行った。その結果、12 の記述があり、除外すべき記述はなかった。ラべリングの結果か ら、 「医学的知識」 「医療面と制度面の両方の知識」を「知識」とし、 「子どもや家族とコミ ュニケーションをとりやすい」 「 柔軟に対応ができる」 「 多くのネットワークをもっている」 26.

(27) を「立場」とし、 「家族や各機関同士をつなげる」を「機能」としてカテゴリー生成を行っ た(表 3-4)。このように「能力」は「知識」 「立場」 「機能」の 3 つに分類された結果、 「知 識」の面においては主に「医学的知識」と「医療面と制度面の両方の知識」が求められて いることが示された。また、「立場」の面では「柔軟に対応ができる」「多くのネットワー クをもっている」、 「機能」の面では、 「家族や各機関同士をつなげる」が求められているこ とが示された。. 訪問介護従事者に対する調査結果からは、今後訪問介護を実施することに対し 6 割以上 で前向きな回答が得られた。また、実施するにあたっての必要な条件として、 「コスト面で の優遇」を選択した事業所はなく、7 割以上で「訪問看護事業所との連携」、6 割で「緊急 時対応先の確保」との回答であり、医師や訪問看護事業所等の他機関との協力体制の必要 性が示された。. 表3-4 ラベルの内訳と度 数. ※()内は記述数. 27.

(28) 第4章 考察. ここでは、本調査結果を踏まえ、在宅医療を必要とする子どもの訪問を実施するにあた り、医師・訪問看護師・訪問介護従事者に共通して示された必要な条件を整理する。そし て、その条件を補うためにはどのようはシステムが必要かについて考察する。. 医療的ケアを必要とする子どもの訪問にあたり必要な条件 医療的ケアを必要とする子どもの訪問診療または往診を今後実施継続するかについての 質問において、小児科一次診療受け入れ施設/在宅療養支援診療所/小児科一次診療受け 入れ施設・在宅療養支援診療所の両者の機能をもち併せる施設では、前向きな回答が半数 を超え、そのうちの半数以上が医師 1 名体制の施設からの回答であった。そして、そのた めの必要な条件として、最も多かった回答が「主治医がいる病院での臨時入院がいつでも 可能」であり、次いで「主治医との共同診療」であった。多くが医師 1 名での勤務体制で あり、入院施設を備えていない。さらに、在宅医療を必要とする子どもは、前田( 2009) が述べているように高度な医療的ケアが必要であるため、専門の主治医がい る場合が少な くない。こうした子どもに対し、子どもの訪問診療を主な業務 としていない医師が他の業 務を行いながら全面的に対応することは当然困難である。このような状況であ りながら、 医療的ケアを必要とする子どもの訪問診療や往診の実施に前向きな回答が得られたことは、 子どもの在宅医療に対する支援体制が不十分であることや、その必要性の高さが認識され ているためと理解できる。一方で、医療的ケアを必要とする子どもの外来診療に関して は、 現在行っている施設が 3 割程度、今後実施継続するかの質問に対しては 6 割で前向きな回 答が得られた。これらの結果から、それぞれの状況に即したやり方で医療的ケアを必要と する子どもと関わりをもとうとしていることが伺える 回答が半数を超えていることが示さ れた。 在宅生活を送る子どもとその家族は、大規模な病院に勤務する主治医との関係だけでは 居住する地域において孤立してしまうことが考えられる。そのため、家族以外に子どもの ことを理解している医師が近隣にいること、そして、その医師が主治医と顔見知りである ことは在宅生活を送る子どもやその家族にとって非常に重要である。その関わり方につい ては様々なかたちがあることが考えられる。例えば、主治医の勤務する病院が遠隔地の場 合、軽い感冒罹患時や予防接種の際に近隣医師と主治医が連絡を取り合うことができれば、 子どもや家族は頻繁に長距離を移動しなくてすむ。また、地域の医療従事者も、近隣に居 住する在宅医療を必要とする子どもに関する理解を深める機会にもなると考えられる。し かし、こうした関わりをもつためには、地域の医師と主治医との情報交換や緊急 時の受け 入れ先が確保されていることなどのバックアップ体制の整備が前提となる。 28.

(29) 訪問看護ステーションに対する「今後、小児の訪問看護を実施または継続しますか」の 質問では、前向きな回答は 6 割を超えていた。そして、そのために必要な条件として、最 も多い 8 割で「研修などで知識やスキルを身につけること」と回答し、次いで「指導して くれる医師がいること」「主治医がいる病院での臨時入院がいつでも可能」が 6 割を超え ていた。研修会の実施は、知識やスキルを向上させるだけではなく、普段はなかなか顔を 合わせることのできない子どもに携わる他施設や他職種のスタッフと接点をもつ機会にも なる。全国的にも小児の在宅医療を専門とする施設は 少なく、なかなかそのノウハウは蓄 積されない。そのため、小児の在宅医療に関して指導を行うことのできる専門家が限られ ていることも課題のひとつと考えられる。 居宅介護事業所に対する「今後、医療的ケアを必要とする子どもの訪問介護を実施また は継続されますか」の質問では、前向きな回答は 7 割近くであった。そのための必要な条 件として、 「訪問看護ステーションとの連携」が 7 割以上、次いで「緊急時対応先の確保」 が6割であり、ここでも他機関との連携を求められていた。. 子どもの在宅医療における課題 以上より、医師・訪問看護師・訪問介護従事者が在宅医療を必要とする子どもの訪問を 実施するにあたり、共通して求められていた課題は、他機関とどのように連携するかであ った。土畠(2013)は、人工呼吸器を必要とするような重度障がい児の在宅医療について、 また症例数の多い都市部においては病院小児科勤務医が「アウトリーチ」する形で在宅管 理を行うシステムが最も理想的であると述べてい る。このことは、医療従事者にとっても 経験が蓄積されるため、指導できる人を育成することにも繋がると考えられる。また、土 畠(2013)は、小児科医のマンパワーの問題もあるため、予防接種や軽微な感染による臨 時受診については、地域の開業小児科医に依頼できるような仕組みも望まれると述べてい る。 一方、子どもの在宅医療におけるケアコーディネートに必要だと思われる能力について は、医学的知識やソーシャルワークの知識、フットワークが軽いこと、 子どもや家族とコ ミュニケーションがとりやすいなどの立場、そして家族や他機関を繋ぐ機能が求められて いた。これらの役割を、既にあるいずれかひとつの職種で対応することは困難であると考 えられる。カナダの統合されたケアモデル(Choen. 2011)で行われているように、それ. ぞれのライフステージに即したケア全体の連続性を必要とする子どもの場合、医療とサー ビスの両側面を統合させたケアコーディネートを提供することが重要と考えられる。先に 述べたアウトリーチ型の在宅管理システムが可能な場合には、医師のみ のではなく多職種 で専属のチームとなり、キーワーカーとなる人材が機能しコーディネートしていくのがよ いのではないだろうか。 29.

(30) 世田谷区の場合には、中核病院が存在するため 、そこでのアウトリーチ型の在宅管理シ ステムを検討することは、子どもの在宅医療を発展させる可能性のあるひとつの 方法では ないだろうか。これを図式化したものを図 4‐1 に示す。このような部門が主導的立場を とり在宅生活を送る子どもや近隣のサービス提供者などとのつなぎ役として機能する 場合、 より柔軟に多くの子どもの対応を可能とするために、専属の医師等のスタッフが配置され ることが理想的ではないかと考えられる。こうした取り組みは、中核病院の主治医の負担 軽減だけではなく、地域においても子どもとその家族を理解し関わりをもつ人が増えるこ とで孤立を防ぎ、より暮らしやすい環境づくりにつながるのではないかと考えられる。 し かし、これには問題点もある。まず、システムの構築が大がかりで ありマンパワーを要す ることが挙げられる。そして、病床数が多い病院の場合、在宅時医学総合管理料の算定が できない点が挙げられる。また、成人期に移行する子どもたちとどのように関わっていく かについても重要な課題である。. 図4-1 世田谷区における子どもの在医療供給システム(概念図). 本章では、調査結果より示唆された内容から考察を述べた。在宅医療を必要とする子ど もの訪問を実施するにあたり、医師・訪問看護師・訪問介護従事者に共通して示された必 要な条件とは「他機関との連携」であった。そして、これを補うひとつの方法として、世 田谷区の場合には中核病院によるアウトリーチ型の在宅管理システムを検討することを提 示した。しかし、それには問題点も多く、慎重な検討が必要である 。 30.

(31) 第5章 結論と今後の課題. 本調査から、世田谷区において在宅医療を必要とする子どもに携わろうとする意識をも つ医療・介護従事者の存在が示された。一方で、こうした子どもの訪問に介入する場合、 必要な条件として挙げられた項目に共通して求められていた課題は、他機関とどのように 連携するかであった。また、子どもの在宅医療におけるケアコーディネートに必要だと思 われる能力として、共通して求められていたのは、家族や他機関を繋ぐ機能であった。こ のような役割をもち合わせた在宅医療の供給システムについて、土畠(2013)の小児在宅 医療の類型をもとに検討した。その結果、総合病院-アウトリーチ型に類似すると考えら れた。しかし、これには問題点も挙げられる。それは、システムの構築が大がかりでマン パワーを要すること、病床数が多い病院の場合には在宅時医学総合管理料の算定ができな い点、また、成人期に移行する子どもたちとの関わりについてなどである。また、システ ムの検討にあたっては、本調査では対象となっていなかった世田谷区外に所在し 世田谷を サービスエリアとする訪問実施施設等をはじめ、保健師等の自治体や行政機関、入所施設 を含めた更なる検討が必要である。 多職種の連携が重要であることはこれまで多くの先行研究で述べられてきた。また、現 場で実践する方々がそれを強く感じていることは言うまでもない。しかし、多職種の有機 的な連携は、個々の努力のみによるものではなくシステムとして機能させていくことで、 継続的で質の高いサービスの提供とより多くの子どもや家族への対応を可能にすることに つながるものと考えられる。. 31.

参照

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