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特別支援学校における不登校生徒の外部機関との連携を通した支援体制

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Academic year: 2021

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Ⅰ 問題意識  1960年代以降、通常学校における不登校児童生徒 の増加は大きな教育問題となり、文部科学省(当時の 文部省)は、1992年に適応指導教室を各地に設置し、 フリースクールでも在籍校の校長の判断で出席扱いで きるように通知した。また2003年には、教育支援セ ンターと名称変更して不登校支援を行い1 、現在、約 12万人とされる不登校の小中学生に対して、フリース クールで教育を受けた場合でも義務教育の修了を認め る案が2018年成立に向けて示されている2 。  一方、特別支援学校の場合、不登校が通常学校で大 きな教育問題になり始めたときでも、子どものニーズ を受け止める特別支援学校である限り、不登校は大き な学校課題にはなり得ないと一般的に考えられてい た。事実、1979年の養護学校義務制に伴い障害の重 度重複化が進んだときも、教育課程の自主編成のもと、 障害や生活年齢や発達年齢などの個別の実態や課題に 応じた学習内容や学習集団を設定してきたことで、「何 らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・ 背景により、登校しないあるいはしたくてもできない 状態にある」不登校児童生徒については学校課題には 挙がらなかった。それどころか、中学校時代から不登 校であった生徒が、特別支援学校高等部に入学する ことによって不登校が改善された例も報告され(竹本 ら,2007)、筆者もこれまで、地域の中学校から特別支 援学校中学部への転入や、地域の中学校卒業後、特別 支援学校高等部への入学で、学校の中に居場所を見つ けたことで不登校が改善された事例を多く経験してき た。  しかしながら、2007年度に特別支援教育が制度化 され、それまでは地域の小学校や中学校に在籍してい た比較的障害の程度が軽い児童生徒が特別支援学校に 多く転入学するようになった頃から、不登校が学校課 題となってきた。それまでも病弱養護学校では、医療 と連携して「心身症」あるいは「小児心因性疾患」等 の診断がついた不登校児の取り組みが多く報告されて いた(玉村ら,2012)3 が、知肢併置の特別支援学校にお いても不登校の児童生徒が多く存在することが、アン ケート調査(芦谷ら,2016)で明らかになった。さらに その調査によると、小学部よりも中学部、中学部より も高等部と不登校数が大幅に増えていることや、不登 校継続年数も不登校児童生徒の6割以上で3年以上継 続していたことから、地域の小学校や中学校に在籍し ていた児童生徒が不登校になり、特別支援学校に転入 学してきた場合も、継続して不登校状態であったこと が推察される。  また、周囲との人間関係がうまく構築できないこと や、学習のつまずきが克服できないことで不登校に なっている事例に、自閉症、学習障害、注意欠陥/多 動性障害等の発達障害があることが指摘され4 、田口 (2012)も発達障害と不登校との関連性を示唆してい る。特別支援学校の不登校の事例は、発達障害の児童 生徒が抱えるしんどさと関連していることが推察され る。  発達障害の生徒は、年齢を重ねてから特別支援学校 の中学部や高等部へ転入学する場合が多いが、小学部 から入学する例もある。特別支援学校小学部に入学し た発達障害児の中には、年齢が幼いうちは問題が顕在 化しないが、思春期特有の心の揺れが出てくる中学部 になってから、不登校になることもある。  次に、学校の支援体制を考えてみたい。  通常学校の場合、近年のいじめの深刻化や不登校児 童生徒の増加などを受けて文部科学省は平成7年度よ り学校・教育委員会の支援体制として、スクールカウ ンセラーやスクールソーシャルワーカーを全国の学校 に配置し、関係機関との連携強化による組織的・計画 的な支援体制の整備を行ってきた5 。  しかしながら特別支援学校の場合、現在、校内に心 理や福祉の専門家と協力して支援できる体制はない。 不登校児童生徒は心理面での支援や、家庭・地域の福 祉的な支援が必要な場合が多く、外部の専門機関との 連携が望まれる。

Support System through the Cooperation with External Organizations

of Non-Attendant Students at Special Needs Schools

<キーワード> 特別支援学校、不登校、発達障害、外部機関、支援

岡 ひろみ

Hiromi OKA

滋賀県立新旭養護学校

芦谷 道子

Michiko ASHITANI

滋賀大学教育学部

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 本論文は、小学部在学中に不登校は顕在化しなかっ たが、中学部入学後に不登校になり、その対応として 外部機関との連携を積極的に行ってきた発達障害の生 徒事例を取り上げている。本事例を通して、特別支援 学校における不登校支援について考察することが、目 的である。 Ⅱ 研究方法 1 対象 ①支援対象生徒:  軽度知的障害を伴う広汎性発達障害であり、B特別 支援学校(知肢併置)の小学部に入学、中学部3年生 までをフォローした男子生徒A。 ②外部支援機関: ・C総合病院小児科 ・ D大学附属教育実践総合センター 大学教員(臨床 心理士)   2 研究期間  X年4月~ X+2年11月(B特別支援学校中学部1 ~ 3年生) ・ C総合病院小児科との連携:2 ~ 4 ヵ月に一度、A及 び保護者が通院。筆者を含む学級担任が、通院同行 や医者との懇談及び、保護者から通院時の様子の聞 き取りを行った。 ・ D大学附属教育実践総合センター 大学教員との連 携:Aと保護者のカウンセリングや、学部教員との コンサルテーションを実施し、校内研修の講師とし て依頼した。  X+1年 4月 A及び保護者のカウンセリング  X+1年 8月 学部研修会講師  X+2年 8月 教員コンサルテーション  X+2年 8月 全校研修会講師  X+2年11月 事例研究会講師 3 研究方法  Aの個別の支援計画や個別指導計画及び通院同行記 録、懇談記録、連絡帳等々の学校生活における記録類 から経過を整理するとともに、当時関わった教員の聞 き取りを含めて、本事例における支援体制のポイント を明らかにした。  事例の整理は、第1期の登校期、第2期の不登校期、 第3期の再登校期の3期に分けて各時期での様子と支 援内容を記した。  なお、事例公表に関してはAの保護者の了解を得た が、守秘のため本質に触れない程度に事実を改変して いる。 Ⅲ 結果  1 第1期:登校期   幼児期前半に父母が離婚。祖父母に引き取られ姉と 共に育てられた。  特別支援学校小学部入学後、小学部6年間は体調の 悪いときや定期通院、親戚の家に行く等の家庭事情で 休む以外は、登校していた。  小学部のときから話し言葉を獲得し、一方的なとき もあるが日常生活の中で指導者と言葉でのやりとりを していた。運動能力やバランス感覚に優れていた。自 傷やこだわりがあり、物を隠すことや小さい子を押す などの問題行動もみられた。給食での偏食はなく、食 べるスピードはとても速かった。気持ちの不安定さが、 足や心臓の痛み、便秘や発疹などの身体症状として現 れることが多く、歩けないとの訴えで一時期車椅子を 使用していたこともある。行動のモデルでありライバ ルでもある同学年の男子や、Aが常に世話を焼く年下 の男子がいた。 2 第2期:不登校期  不登校になったのは中学部1年生であった。小学部 から中学部へは同じ校舎の1階から2階への教室移動 であったが、Aにとって場所の変化は大きかった。学 習内容や指導者や友だちも変わったことで新しい学習 環境に適応できず、入学当初から落ち着かない状態が 続き、5月の運動会の頃には心身の不調が現れていた。  祖母は、障害を持った孫を大変な思いで育てておら れ、その強い思い故、当初は学校の思いとの間に齟齬 が生じAの断続的欠席につながっていた。しかし家に いると昼夜逆転リズムになり、食欲もない状態が続い たことから、祖母は一転してAに登校を促すものの、 今度はAに欠席の意志が強く現れ、登校しても手もみ や目が泳ぐ等の落ち着かない様子を見せ始め、10月半 ばからは欠席が連続した。そこで週に1 ~ 2回程度家 庭訪問を行い、心身の状態に合わせて少しずつ興味関 心が持てる活動を家の中や外で行うことで、指導者と 一緒に楽しめる活動を増やしていった。祖母との関係 も少しずつ改善していき、家での様子や祖母の思いを 聞くことができるようになった。連続した欠席は3学 期末まで続いた。  この頃の行動上の特徴として、力の調整が難しいこ とが挙げられる。例えば毎朝のランニングや運動会の 徒競走などでは、常に持てる力を全て出し切るまで頑 張ってしまうため、ゴール後は倒れ込んでいた。また 気温に応じて服装を調整できないこと、散髪を極端に いやがること、年度の終わりにはおしゃれめがねをす るようになったことなど外見上の自分らしさを保つた めの決めごとがいくつかあった。  やりとりは一方的であり、指導者には、自分が好き なゲームやキャラクターの話しを一気にとても嬉しそ

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うに話すが、自分の気持ちや考えを伝えることは難し く、イエスとノーの意思表示もできなかった。  身体症状として、発疹、自律神経失調症、ホルモン バランスの崩れ、吐き気、甲状腺異常の疑い、成長痛、 ふらつき、足・心臓・胸・大腸の痛み、百日咳の疑い 等が現れ、症状を訴える度に近くの医者やかかりつけ のC総合病院を受診していた。また、バランス感覚は とても良いが、自分で耳を傷つけて血を出すことや、 自転車でこけてけがをすることや、家の敷居で躓いて 怪我をすることがあった。  【医療との連携】  C総合病院小児科は、Aが3歳からのかかりつけ医で あり、約2 ~ 4 ヶ月に1回、定期的に通院し、その時々 の身体症状や言動について治療や相談を受けていた。 気になる症状があるときには、随時通院し、検査結果 をもとに薬の処方も受けていた。  中学部1年生6月にはCTと筋肉の検査で成長痛の診 断を受け、学校では車椅子を利用していた。7月の電 話相談後、自律神経失調症と診断され、登校時には足 の痛み等を訴えて保健室のベッドで寝ていた。10月の 通院時は担任が同行した。食欲がない、大腸が痛い、 便秘等の身体症状や、部屋へ閉じこもり「僕を馬鹿に している人がいる」と言うことや、気分の落ち込みが あることを聞いた医者は、親戚に鬱はいないか確認 し、触診や聴診器で表情や身体の部位を診た。「13歳 なので身体症状と気分の落ち込みは、大人と同じよう にあり、何もしたくないめんどくさいと思うことはあ る。自分が周りからどう見られているのか気にするこ とや、ちっぽけな存在に見えることはよくあること。 それが一時的なものなのか思春期鬱なのかを、今後の 自信の付け方や体重の減り方等の経過を見て判断す る」「まずは生活リズムを整えることが大事。朝が無 理なら夕方でも外に行くのは良い」ということで、便 秘の訴えに対する下剤のみが処方された。この時Aが 話したことは「寝ている他は何をしているの?」と聞 かれて「あ-」と答えただけであった。3月の通院時は、 食事をとらず、夜も寝られず、思春期で不安定になっ ていることから若年性うつと診断され、抗鬱剤が処方 された。学校に無理に行かせると逆効果になるとの意 見を受けて、積極的に登校を促すことはせず、家庭訪 問中にAが学校のことを聞いたときにのみ学習内容や 友だちの様子を少し伝えるようにした。 3 第3期:再登校期   (1) 中学部2年生時  不登校の時期を経て再び登校するようになったの は、中学部2年生からであった。中学部1年生が終わっ た春休みに「入学式は行く」と宣言し、スクールバス はうるさいから嫌だと言う理由で、初日から祖母が運 転する車の送迎で登校した。登校できるようになった ことで、睡眠や食事のリズムが大きく崩れることはな くなった。しかし依然として就寝時間は遅く、朝食は 食べず、夕食も1人で食べるなど生活リズムの不安定さ はみられ、祖母が注意しても改善しなかった。特にテ レビの深夜アニメを見るようになってからは、就寝時 間が明け方になることも多かった。身体症状について は、運動会のクラス種目などの行事に部分的に参加し た後に頭痛の訴えはあるものの、続くことはなかった。  また、給食をランチルームで食べることへの抵抗は 大きく、まずは落ち着いて食べられる環境を作るため に指導者と一対一で教室で食べるようにした。2学期 末には、少しずつ関係を拡げるためにランチルームの 端で指導者と一対一で食べ、3学期末には、ランチルー ムで友だちと一緒に食べることができた。一方、調理 実習で残った食材や友だちが食べ残したものを気にす るなど、食に対して執着する姿も見られた。  人との関わり方は、誘いに乗り気でないときに、 「えっ」と躊躇するような返事でノーの意思表示がで きるようになったことは大きな変化であった。しかし まだ、これをやりたいというイエスの要求を伝えるこ とはなく、理由や意図を伝えることもできなかった。  毎日の送迎の際に、祖母と日常的に家庭や学校での 様子を詳しく話ができるようになった。 【医療との連携】  前年3月に処方された薬は約1週間後、祖母の判断で 服用を中止した。6月の通院では、祖母が「本人が大 腸が痛いと言っても学校に行く習慣が大事と思い強引 にでも連れていっている。家では冷蔵庫に入っている 物をお腹が空けば1人で出して食べている。独り言が 多いことが気になる。風呂に入るように言っても「ま だ入らない」と強く反発するようになった。何回も手 洗いをする」と話していた。12月の通院時は担任が 同行した。独り言や咳が多いことから、レントゲンと 血液検査を受け、気管支拡張剤等が処方された。医者 は「思春期・反抗期はどの子も通る道である。今は、 自分の意見を言う時期だけどそのうちに、嫌だけども 頑張ろうと思える時期は来る。文化祭の参加方法は、 自分の気持ちを伝えて学校と相談すると良い。学校 は、見通しが持てることや代わりのものを準備すると 良い。部屋にテレビがない方が良い」と話していた。 12月には医者と担任だけでの30分程度の懇談を行い、 「テレビやパソコンを自室に置くのは勧めない。他者 視点が難しい子は外からの枠組みが必要である。生来 的な双極性かどうかは,学校や家の様子を聞いて小児 科で判断できないときは精神科に回す。統合失調症で はなく、独り言についても妄想等の病的なものではな いだろう。学校が行っているような、人・場所・活動 を固定して徐々に誘う方法は良い関わり方である。失 敗しても良いと伝えることや、やったらできる状況や コミュニケーションや作業面で生きていくことにつな

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がるようなことをすると良い。先生同士でAの様子を 共有することや、わかりやすい状況を作ることや、理 由ではなくどうしたかったのかという意図を聞くこと も良い。今のようにAの気持ちを大事にして見通しが 持ちやすい状況を作り、できることを増やしていくこ とが良い」との意見であった。学校で大事にしてきた 支援方法や内容を支持してもらったことや、精神疾患 ではないだろうとの所見を聞き、学校での基本的な関 わり方を変えずに支援を継続した。  【大学附属教育実践総合センター 大学教員との連携】  この年から、D大学附属教育実践総合センターとの 連携を始め、臨床心理士である大学教員の支援を受け 始めた。4月にAと祖母がカウンセリングを受け、担 任と養護教諭も一緒に話をする機会を持った。Aは学 校や家ではほとんど話すことがなかったが、この個別 カウンセリングの場では、箱庭を作成しながら、自身 の思いをさまざまに表現したとのことであった。また 祖母も子育ての不安やAの今後への心配を涙ながらに 話し、日常生活でのアドバイスを受けながら、僅かな がらほっと荷を下ろす時間を持たれたようであった。 「自分では言えないから先生から伝えてほしい」とA から希望があったとのことで、全員が顔を合わせるな か、Aがこれからどうしていきたいと思っているのか、 どのような手助けが欲しいと思っているのかについ て、大学教員から保護者と担任、養護教諭に伝えられ た。「Aは自身の思いを表現する力があるので、Aの思 いをゆったりと聞いてあげて欲しい。Aも勇気をもっ て伝えてごらん」と大学教員よりアドバイスと励まし を受けた。また、「学校はこれまで丁寧に適切に対応 されている。Aが嫌なことを嫌と表現できることが大 事で、それによってAの輪郭が作られる。社会では思 うようにいかないこともたくさんあるので、Aの様子 を見つつ、思いを受け止める指導者や厳しい指導者な ど、様々な刺激があってもよいのでは」との意見を聞 いた。  また臨床心理士である大学教員を学部研修会の講師 に招いて、通常学校における不登校児童生徒の例をも とに、思春期や発達障害についての理解を深めた。ま たAの現状報告も行い、保護者の思いを受け止める教 員同士のつながりが大切であること等のアドバイスを 受けた。 (2) 中学部3年生時  春休みから続いている唇の荒れがひどく、発熱欠席 があった。年度はじめの給食はランチルームで食べた が、翌日から10日間程度全く給食を食べない日が続い た。Aと相談した結果、教室で落ち着いて食べられる 状況を作った。新年度になり教室の場所や友だちが少 し変わったことで音が気になるのか、教室の間仕切り を開けてソファーを置いただけの居場所では落ち着か なかったため、完全に教室の間仕切りをした。  体調に波があり、朝からハイテンションで話をする ときとソファーで熟睡してしまうときがみられた。テ レビの深夜アニメの影響は大きく、エログロナンセン ス的な物に特別な関心を示し、バーチャルな世界への はまり込みは以前より強くなっていた。週1回だけ深 夜アニメの放映がない日があり、その翌日は体調が良 く、活動にも参加できることが多かった。毎日の授業 や行事への参加は、基本的にはAの思いを受け止めて、 1日に1 ~ 2コマ参加する授業を決めていた。夏休み 以降、学校生活に慣れてきた頃からは、Aが即答で拒 否せずに迷っている様子がうかがえたときには、再度 活動内容の説明をして授業に誘うようにした。その結 果、行事や授業に参加できる時間や回数は増え、クラ ス校外学習と修学旅行、運動会のクラス発表や文化祭 は参加した。  こだわりについては少し柔軟性が見られるようにな り、同じ服の着回しではなく新しい服を買って着るよ うになった。落ち着ける居場所を作ったことで、友だ ちと一緒に学習できることも増えてきた。人との関わ りでは、明確に「いや、いいよ」「やらない」とノー の意思表示ができるようになり、時には理由も答えら れるようになった。またイエスの意思表示について は、病院や学校の先生に早く寝る方が良いと言われて も「いや、嫌だなあ。テレビ見るよ」と自分の意思を 伝えるようになっていた。相手を気にしながら話すこ とや、友だちの動きを見て思いを聞いた上で自分のや りたいことを考えることもあった。また、時間に縛ら れ融通がきかないこともあるものの、予定を確認する ことでスムーズに活動に参加できることもあった。 【医療との連携】  6月や8月の通院時に、今まで診察の場で話すこと がほとんどなかったAが、学校での様子を生き生きと 話すようになっていた。修学旅行や運動会、文化祭等 の行事への参加の仕方を相談したときには、部分的な 参加の仕方でよいとのアドバイスを受けた。これは学 校とAとで相談していた参加方法と同じであった。10 月の通院時には、夜中のテレビやパソコン視聴が原因 で昼間学校で寝ていることについても祖母が相談した が、登校して授業にも出られるようになってきている 今、テレビやパソコンが見られなくなるような急な変 化は良くないとのことであった。医者の意見を受けて、 学校も家庭もテレビやパソコンを無理に止めさせるこ とはしなかった。 【大学附属教育実践総合センター 大学教員との連携】  8月に学部の教員と大学教員とで、学校や家庭での Aの経過資料をもとに、現状の捉え方や関わり方を共 有し、今解決すべき課題や今後の関わり方等のコンサ ルテーションを行った。この場では、「発達検査の詳 しい資料があればAの発達的な課題がわかりやすい。

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イエスとノーが言えるようになってきたことは大きな 成長である。深夜テレビについては、知的障害の子は 自己コントロールが難しいので、周囲がコントロール して枠付けしてあげることも大切である。グロテスク なものや興奮しすぎるものに触れることは、周りの大 人が調整したい。食べられない、寝られないから元気 が出ないという悪循環になっている可能性がある。食 べ方は生き方であるため、食事をどこで誰とどのよう に食べるかは大事である。音刺激への過敏さについて は、教室の仕切りにコルクボードを使い布をかけるな どの反響音を減ずる方法で楽になる子がいる。関わり 方の多様性も重要である。全てAの思いを叶えようと するのではなく、Aの思いを受け止めた上で、無理な ことは無理と一緒に残念がったり悲しんだりすること が必要なこともある」等のアドバイスを受け、A自身 の課題から関わり方のポイントまで多岐にわたって話 ができた。 Ⅳ 考察 1 本事例における外部機関との連携  登校期である小学部時代は、こだわりが強く気持ち の不安定さが身体症状に出ることはあったものの、当 時の小学部教員は、中学部になって不登校になるとは 思わなかったと振り返っていた。この時期は心理面で の課題は感じなかったため、病院とは通院時の様子を 祖母から聞くのみで積極的な連携は取らなかった。  しかし、小学部から中学部への環境の変化に適応で きず不登校になった中学部1年生時からは、病院との 連携は不可欠になってきた。学校での様子を伝え、今 の身体症状や心理的な状態の捉え方を聞くために、通 院時の担任同行や、病院と学校との個別懇談等の連 携を積極的に取ってきた。そして2年生で再び登校し たときには、“1人の教室で、好きな先生と、好きな活 動” という3要素を大きく崩さない日課で、Aの思い を最大限受け止めながら、時間をかけて少しずつ場所 や人や活動を拡げてきた。病院との積極的な連携は継 続して行い、その時々の様子を伝え、学校の思いやス タンスを伝えながら医者の意見を聞いた。学校のスタ ンスを支持してもらうことが多く、学校が日頃話して いることと同じ内容を病院から祖母に話されたときに は、祖母の気持ちも穏やかになり、学校としても力強 い味方を得た思いであった。3年生時は、学部校外行 事と定期通院日を除いては継続して登校することがで きた。2年生時に比べて参加できる授業も増え、自分 の気持ちも出せるようになってきたことで、通院時も 自信を持って学校での様子を報告できるようになって いた。  また2年生から始めた臨床心理士である大学教員と の連携は、まず、Aと保護者のカウンセリングを行っ た。その後、複数回、会って話をする機会を作れたこ とで臨床心理士である大学教員と学部教員との信頼関 係も作れ、心理の専門家と連携した支援体制を作るこ とができた。学校での対応方法を認めてもらったこと で、教員も自信を持つことができた。  しかしながら課題も大きい。深夜テレビの影響で昼 間学校で眠ることも多く、番組内容も殺人や性描写な どが多く含まれるため、日常的な会話の中にもバー チャルな世界と現実を混同しているような言動が見ら れた。また、家庭や地域との関係についても、毎日 の送迎や余暇や休日の過ごし方について、保護者を支 えられるような福祉の支援体制を整えることも課題で あった。  通常学校では、心の専門家として臨床心理士などの スクールカウンセラー、福祉の専門家としてスクール ソーシャルワーカーが全国に配置され、現在不十分で はあるが児童生徒の心理面や福祉面での支援ができる 体制が整えられている。  しかしながら特別支援学校はスクールカウンセラー やスクールソーシャルワーカーの配置はなく、心理や 福祉面での支援体制は整っていない。このため児童生 徒が発達相談や服薬管理等で医療機関を利用している 場合には、積極的に医療機関との連携を取るようにし てきた。インフォームドコンセントが提唱されるよう になった今、保護者の同意の下で、学校の様子や見立 てに対する医者の意見を聞ける支援体制が作れるよう になってきた。また福祉行政や支援機関とケース会議 等で連携を取っている例もある。  本事例については、病院との連携に加えて、臨床心 理士である大学教員との連携も積極的に行ったこと で、心理の専門家との連携を通した支援体制を作って きた。  ここで、臨床心理士である大学教員とのコンサル テーションに参加した教員の感想を記してみたい。 * 本人を知って頂いていることから、継続的に話 をして頂いたのは良かった。本人の多様性につ いてもう一度考え直せるきっかけになった。 * 彼の課題がより明らかになり、今後の指導の方 向性がより明確になったと感じました。こちら が指導する時に迷っていたことやこうじゃない かなと感じていたことについて専門的な視点か らアドバイスを頂いたので2学期からの指導に 生かしていきたいと思います。 * 長い時間をかけて頂き、幼い頃から現在の姿ま で知って頂けて良かったし、今できることは何 かを改めて見直すことができた。 * ここ数年の実態に先生が感心して下さり、現在 の指導体制を褒めて下さったのが良かった。テ レビのない環境作りや高等部へのイメージづく りなど今後目標とするものもわかって良かっ た。

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* 本人も保護者も知ってもらっている先生と話せ たことで、より正確に情報を共有し、方向性に ついても共有できたことが良かった。  次に、同じくコンサルテーションに参加した教員に、 今後の不登校支援のあり方について尋ねた結果を記し てみたい。 * 複数担任であるために、日常的に直接複数の目 で見られる。以前は学校だけの対応では難しさ を感じることもあった。カウンセリング等の専 門の方とつながる第一歩の情報を知ること、そ こから事例検討会のような流れはとても大切だ と思った。 * 他機関と連携することで、校内だけでは見えて いないことや、新たな見解を示してもらえたこ とは大きい。 * 今後も他の機関と連携しながら実施する方向で 良いと思う。 * 実際にどうカウンセラーとつなぐかが課題であ る。 * やはり、教員と保護者だけでなく、色々な視点 で子ども達を見ていく必要があると感じていま す。連携の形や方法についてもその子どもの ケースによって変わっていくだろうし、それを 見据えて動ける教員のフットワークの軽さも求 められると思います。 * やはりケースを紹介して意見を頂くと言う回数 が多ければ多いほど参考になります。 2 外部機関との連携を通した支援体制のポイント  以上見てきた事例やコンサルテーションに参加した 教員の感想から、外部機関との連携を通した支援体制 のポイントを整理してみたい。 (1)学校とは違う立場からの支援  学校の教員は、児童生徒や保護者に対して、その時々 に最善と思われる方法で日々関わっているが、これで 良かったのかと悩むことや、学校だけの対応では難し さを感じることもある。そうしたときに外部機関の専 門家と連携することで、児童生徒の別の側面や、新た な関わり方が見えてくることもある。  特別支援学校では複数担任の場合が多く、日々の様 子や個々の対応について担任間での情報共有が欠かせ ない。また担任同士だけでなく、他クラスの担任や学 部主事、あるいは管理職とも日々の会話や会議で話を する機会は多い。こうして常に校内では様々な場面で 情報を共有し、関わり方を相談して大きな意見の相違 は生じないようにしてきている。だからこそ少し学校 とは違う立場で、客観的に流れを見て判断できる人の 存在が必要である。  本事例で、外部の専門機関の意見を聞いて具体的な 支援方法を検討した例として次のようなことが挙げら れる。  例えば心理の専門家との連携の中で、思春期特有の 気持ちの不安定さが明らかになってきた。学校での本 人の様子だけでなく、成長痛、自律神経失調症、思春 期鬱、統合失調症等の医学的な検査結果と所見とを合 わせて支援方法を考えることができた。また知的障害 の場合、物事を客観的総合的に捉えることや自分で判 断して考えることが難しい場合がある。この対応とし て、外から物事を整理し、判断基準を示す枠組みが必 要であると医者からも臨床心理士からも聞いた。この 意見を受けて学校では、Aに対して授業への参加の仕 方を明確に示すようにしてきた。 (2)複数の人が関わっていく支援  1つの事例に対する色々な可能性を探るために、関 わる人を複数確保することが大切である。コンサル テーションの場では、外部の専門家を交えて、学部の 全教員が参加したことでお互いの思いを知り合い、多 くの情報を一所に集めることができた。  本人の思いの伝え方や自己肯定感の持たせ方等、す ぐに答えが出ない課題についても、複数の人が様々な 可能性を出し合いながら方向性を一緒に考えていくこ とができた。 (3)本人や保護者を知っている人との支援   医者は、本人や保護者のことを長年の関わりの中で 知っている人であり、臨床心理士である大学教員も本 人や保護者を直接カウンセリングしたことに加えて、 幼少期からの経過をまとめた報告資料から経年的な変 化も知っている人である。このように本人や保護者を 知った人同士、お互いに同じ立場で正確な情報をもと に支援を考えていくことができた。 (4)継続性のある支援  本事例の臨床心理士である大学教員とは、本人と保 護者のカウンセリングから始まり、学部研修会や全校 研修会で思春期・不登校・発達障害をテーマにした講 演を依頼し、事例検討会も複数回持つことができた。 まずはお互いに情報を共有した上で、コンサルテー ションを行う流れは有効であり、意見交換できる回数 も多かったため、信頼関係を深めることができた。 (5)一方的な指導ではない支援  外部機関との連携の場が一方的な指導になってしま うと、「そんなつもりで関わったのではなかった」「所 詮、校外の人には学校の思いはわかってもらえない」 と教員が拒否感を感じる可能性もある。本事例では、 臨床心理士である大学教員が、日常的に関わっている 教員の意図を理解した上でのコンサルテーションを行 うことができた。  また、日々試行錯誤しながら直接関わってきた学校 の指導体制を高く評価してもらったことで、教員側の モチベーションを上げることができた。結果はすぐに

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現れるものでなく、特に心理的な問題が大きい場合、 表面上良くなっても後になって大きく落ち込むこと もあるため教員は日々悩みながら関わっている。本事 例では例えば、テレビのない環境作りや高等部へのイ メージづくりについて、お互いの思いを出しあって、 やりとりができたことで、今後の支援の見通しを持つ ことができた。 (6)地理的に近いところにある身近な支援  学校が終わってからの時間でも気軽に行き来できる 距離であると、本人や保護者とも継続的に関わる機会 を持つやすく、日々の変化も共有できる。本事例では 夏季休業中に学部教員が大学での検討会に参加できた が、日常的に放課後や勤務後に行き来できる距離であ ることが望まれる。 3 今後の課題  以上6つのポイントを提起したが、これらは全て相 手との信頼関係を構築することにつながっている。人 と人との関わり合いがある教育や心理の現場におい て、いろいろな人との信頼関係を築くことがとても大 切であり、また難しくもある。  例えば、カウンセリングは本人だけでなく、保護者 に対しても必要である。子どもが不登校になってすぐ は、保護者はまず原因探しをする。その場合、特定の 教員や学校に非難の目が向けられることが多い。その 時にどれだけ保護者の本音を受け止めて支援していけ るかが大切であるが、ここで重要なのは、話を聞いた 教員が一人で抱え込まないことと、学校ではない外部 の立場の人の関わりを持つことである。正面から向き 合っている関係では見えなかったアドバイスを受ける ことができる。  保護者との信頼関係づくりに、特効薬や秘策はない。 関係する人たちが連携し合って、困っている子どもに 誠実に向き合うことで今の状況を的確に捉えて方向性 を見いだしていくしかない。こうしたやりとりをどこ で誰が行うのか、実際に臨床心理士やカウンセラーと どうつながっていくのか、教員のフットワークの軽さ や個人的な関係だけでなく、組織的な連携にしていく ことが今後の課題である。  今後も学校内外を通じた切れ目のない支援の充実の ために、学校と外部機関が連携して、不登校児童生徒 の実態に応じた具体的な支援策を組織的・計画的に実 施していく方法を模索していきたい。 Ⅴ おわりに  特別支援学校に障害の程度が軽い児童生徒が増えて きた現在、心理的問題、思春期的問題、社会との接点 など、従来の発達的視点に加えて、多岐にわたる見立 てや支援が必要となっている。  本事例では、主に共同研究という形で大学と連携体 制を取ることができたことで、多様な専門家を交えて 内外の連携を深めた支援体制を構築していくことの重 要性が確認できた。  しかし、地域によっては小児や思春期を対象にした 専門外来や、臨床心理士による心理的な支援を受けら れる外部機関が乏しいところもある。特に障害のある 児童生徒の場合、発達面や心理面に対する専門的な支 援が受けられる外部の専門機関の充実が望まれる。  今後も継続して、より充実した豊かな支援体制の構 築を模索し続けたいと考える。 謝辞  本事例の公開をご快諾くださったAくんの保護者様 に深く御礼申し上げます。 1)  不登校に関する調査研究協力者会議(2015)『中 央教育審議会初等中等教育分科会資料3-2』 2)  2018年11月13日付け朝日新聞(朝刊) 「義務教育の段階に相当する普通教育の機会の確保 に関する法律案」が2017年の通常国会で成立すれ ば2018年4月に実施されるとの方向性が示された。 実施されると、義務教育の場を学校に限った1941 年の国民学校令以来の大きな転換になる。 3)  病弱養護学校では、1961年以来、1990年代始め までに400名を超える登校拒否・不登校の子ども 達が、心身症、自律神経失調症等の診断名で入学 していた。1990年代末、寄宿舎のある病弱養護学 校の調査では、内部疾患、喘息、肥満、アトピー 性皮膚炎、心身症などであったが、入学する以前 はほとんどの子どもが不登校状態であった。寄宿 舎で生活の枠組みを整え、仲間の中で困難を乗り 越えていった実践が数多く紹介されている。 (玉村 ら,2012) 4)  「 不 登 校 問 題 に 関 す る 調 査 研 究 協 力 者 会 議 」 (2003)報告によると、不登校の要因・背景の多様化・ 複雑化として①無気力、学習意欲の低下等、不登 校がどの子にもおこりうる現代の社会状況である こと、②家庭の教育力の低下③学校におけるいじ め、暴力等 ④LD,ADHD、児童虐待等の課題が あげられ、早期の適切な対応の重要性が指摘され ている。また、発達障害にも触れ、LD,ADHD等 の児童生徒については、周囲との人間関係がうま く構築されない、学習のつまずきが克服できない 状況が進み、不登校にいたる事例は少なくないと された。 5)  学校における教育相談体制やカウンセリング機 能の充実を図るため、文部科学省は平成7年度から、 調査研究委託事業で、臨床心理に専門的な知識・ 経験を有する学校外の専門家である臨床心理士な どをスクールカウンセラーとして全国に配置した

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(平成7年度154校)。その専門性や外部性が評価さ れ、平成13年度からは各都道府県等からの要請を 踏まえて国庫補助事業として実施され、全国の中 学校に計画的に配置することを目標とされ、平成 25年度においては7,065人が20,310箇所に配置さ れている。平成18年度において全国の中学校7,692 校(4校に3校の割合)に配置されるとともに、小学 校1,697校、高等学校769校にも派遣されている。 しかしながら、各都道府県における中学校へのス クールカウンセラーの配置率は、人材の不足や偏 在、財政状況等の理由によって活用の状況は様々 である。スクールカウンセラーは非常勤職員で、 その8割以上が臨床心理士である。また、相談体制 は1校あたり平均週1回、4 ~ 8時間といった学校 が多い。 引用・参考文献 芦 谷道子・岡ひろみ(2016) 特別支援学校における不 登校生徒の現状と支援体制.パイデイア 滋賀大学 教育学部附属教育実践総合センター紀要,24,67-72 新 井英靖・渡辺健治(2000) 病気による長期欠席児の 教育的対応に関する研究-寄宿舎併設病弱養護学校 児童生徒の実態と特別な教育対応について.東京学 芸大学紀要1部門,51, 253 田 口正敏(2012) 発達障害・不登校のための新しい学 びの場,日本評論社.44 竹 本弥生・芳川玲子・橋爪美津子(2007) 中学校時代 不登校であった生徒が養護学校で改善されたことに ついての考察.日本教育心理学会発表論文集,49, 230 玉 村公仁彦・山崎由可里・近藤真理子(2012) 病弱教 育の歴史的変遷と生活教育-寄宿舎併設養護学校の 役割と教育遺産-.和歌山大学教育学部教育実践総 合センター紀要,22,152. 文 部科学省HP www.mext.go.jp/ 中央教育審議会 初等中等教育分科会第100回(2015年9月14日開催) 配付資料 不登校に関する調査研究協力者会議中間 報告について資料3‐2 不登校児童生徒への支援に 関する中間報告(概要)資料3‐3

参照

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