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感情馴化による情動的注意補足の解消 [ PDF

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Academic year: 2021

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感情馴化による情動的注意捕捉の解消

キーワード:情動誘発盲,感情馴化,注意,情動,気分 行動システム専攻 原口 恵 問題と目的 情動刺激は人間の注意を引きつける。たとえば時 間的な注意の捕捉に関する現象の一つとして,情動 刺 激 を 用 い た 注 意 の 瞬 き 現 象 に つ い て 研 究 が 行 わ れている。高速逐次視覚系列中のターゲットを検出 する際,ターゲットが二つある場合は先行するター ゲ ッ ト へ 注 意 を 向 け る こ と に よ っ て 後 続 の タ ー ゲ ットが見落とされるが,Anderson and Phelps (2001) は 情 動 的 な 英 単 語 を 後 続 タ ー ゲ ッ ト と し て 提 示 す ることで見落としが減少することを示している。

さ ら に は , 高 速 逐 次 視 覚 提 示 (rapid serial visual presentation: RSVP)さ れる 刺激 の中 から 単一 のター ゲットを検出する際,ターゲットの前に課題非関連 な情動刺激が出現すると,それが中性刺激である場 合と比較して検出率が低下する。これを情動誘発盲 (emotion-induced blindness; Most, Chun, Widders, & Zald, 2005) という。 ネガティブ 刺激による見落と しについては,Most et al. (2005) がターゲットの前 に脅威画像,中性画像,あるいは脅威画像を 48 分 割し,それをランダムに並べた画像を先行刺激とし て実験を行い,200ms 前に出現する脅威刺激によっ てターゲットの見落としが生じることが示された。 また,課題非関連なポジティブ刺激によるターゲッ トの見落としについては Ciesielski, Armstrong, Zald, and Olatunji (2010) によって示されている。彼らは 恐怖,怒り,官能,中性の 4 種類の画像を刺激とし て使用し,ターゲットの 200ms,400ms,600ms, 800ms 前 に こ れ ら の 画 像 を 提 示 し た 。 そ の 結 果 , 200ms 条件で,恐怖および怒りといったネガティブ な 画 像 に よ る タ ー ゲ ッ ト の 見 落 と し が 生 じ た だ け でなく,官能的な画像がネガティブ画像条件や中性 画 像 条 件 と 比 較 し て タ ー ゲ ッ ト の 処 理 を 大 き く 妨 害したことを明らかにした。 情動誘発盲の生起要因としては,感情システムの 働 き に よ る 不 快 刺 激 へ の 注 意 の 自 動 的 な 停 留 が 考 えられる。Dijksterhuis and Smith (2002) の実験では, 実験参加者は,単語の頭文字を答える課題を行うこ とで,情動刺激を繰り返し観察した。その後の単語 の情動価の評価課題において,繰り返し観察した情 動刺激については,極端な情動性の評価が低下した ことが示された。この結果から,情動刺激の反復提 示 に よ っ て 感 情 シ ス テ ム の 反 応 が 馴 化 さ れ る こ と が示唆された。しかしながら,これは情動刺激の主 観的な評価への影響について検討したものである。 す な わ ち 感 情 シ ス テ ム の 働 き が 情 動 誘 発 盲 の 生 起 要 因 と な っ て い る か ど う か は 仮 説 的 に 提 案 さ れ た 段階であり,このことが直接的に確かめられたわけ ではない。 そこで本研究では,情動誘発盲が情動刺激への感 情 系 の 反 応 に 基 づ く 注 意 の 非 自 発 的 停 留 に よ る も のであるかどうか明らかにすることを目的とした。 そこで,本研究では閾下および閾上での感情馴化課 題 を 用 い て 観 察 者 の 感 情 シ ス テ ム の 反 応 を 一 時 的 に低下させ,その間に情動誘発盲が解消されるかど うかを検討した。もし情動誘導盲の原因が感情シス テムによる注意捕捉反応であるならば,感情馴化に よって情動誘発盲は低下するだろうと考えられる。 すなわち,本実験では,感情馴化課題で中性単語を 繰り返し観察した実験参加者において,不快刺激と ターゲットの時間間隔 (lag) が短いときは,中性刺 激 が 提 示 さ れ る 条 件 と 比 較 し て タ ー ゲ ッ ト の 同 定 率が低くなる (情動誘発盲) が,情動刺激を観察し た実験参加者は,lag が短い条件であっても,妨害 単 語 の 情 動 価 の 違 い に よ る タ ー ゲ ッ ト 同 定 率 の 差 は生じなくなると予測された。 第 1 実験 第 1 実験では,閾下感情馴化手続きを行ったあと, RSVP 課題において情動誘発盲が生じるかどうかを 検討した。 実験参加者 24 名 (男性 7 名,女性 17 名) の大学生および大 学院生が実験に参加した。実験参加者は半数ずつ, 感 情 馴 化 課 題 に お い て 情 動 語 を 提 示 さ れ る 群 (情 動語馴化群) と中性語を提示される群 (中性語馴化 群) とに分けられた。

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刺激 感情馴化課題では,刺激はターゲットと先行マス クおよび後続マスクで構成された。ターゲット刺激 は五島・太田 (2001) から選定した漢字二字熟語で, 6 語の快単語と 6 語の不快単語,および 12 語の中 性単語を用いた。先行マスクと後続マスクには 6 文 字の英字 (それぞれ”AAAAAA” ,”XXXXXX”) を用 いた。刺激の大きさは先行マスクおよび後続マスク が視角 0.7˚×4.2˚ ,ターゲットが視角 1˚×2˚であった。 刺激の提示時間は,先行マスクが 200ms,ターゲッ トが 13ms,後続マスクが 500ms であった。RSVP 課題では,刺激はターゲット,妨害刺激,妨害単語 から成った。ターゲットとして I,O,Q,Z を除い たランダムな 2 文字の英字,妨害刺激としてランダ ムな 4 桁の数字,妨害単語として快,不快,中性の 漢字二字熟語を 6 語ずつ使用した。なお,感情馴化 課題で使用した漢字二字熟語は RSVP 課題では使 用 し な か っ た 。 刺 激 の 大 き さ は タ ー ゲ ッ ト が 視 角 0.7˚×1.4˚ ,妨害刺激が視角 0.7˚×2.8˚ ,が視角 1˚×2˚ であった。刺激は SOA 23ms,ISI 82ms で高速逐次 視覚提示された。これらの刺激はすべて灰色の背景 画面に黒字で提示された。なお,本研究で使用した 漢字の平均画数に関しては,各情動価の単語間での 差はなく,快単語は 9.42 (SD = ± 3.60),不快単語は 9.04 (SD = ± 3.74), 中性単語は 9.67 (SD = ± 3.21)で あった。 装置 パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ ( D E LL O P T I P L E X 3 6 0 ) , C RT デ ィ ス プ レ イ ( S O N Y C P D - E 2 3 0 ) , 心 理 学 実 験 用 ソ フ ト E - P R I M E 2 . 0 を 使 用 し 実 験 を 行 っ た 。 ま た , 実 験 参 加 者 の 視 野 は 顎 台 に よ っ て デ ィ ス プ レ イ か ら 5 7c m の 位 置 に 固 定 さ れ た 。 手続き 実験は感情馴化課題と RSVP 課題の 2 つのセッシ ョンと,2 回の気分状態の評定課題から構成されて いた。まず,感情馴化課題 (図 1) では,参加者は ターゲットである漢字二字熟語が,快,不快あるい は 中 性 的 の い ず れ の 印 象 を 受 け る か を 評 価 す る よ う求められた。ターゲットの前後には,マスク刺激 (先行マスク ”AAAAAA”,後続マスク ”XXXXXX”) が提示された。馴化課題では参加者の半数ずつが情 動語馴化群と中性語馴化群とに分けられており,情 動語馴化群は快および不快な単語 (例:快晴,自殺) を 6 語ずつ,中性語馴化群では中性的な単語 (例: 水道) を 12 語提示され,各単語について 6 回ずつ, 計 72 回の判断が行われた。次に,RSVP 課題 (図 2) では,実験参加者は 14~23 フレームの妨害刺激 系列中に出現するターゲットの同定を求められた。 ターゲットは,刺激系列開始から 9~13 フレーム後 に出現する妨害単語の 2,3,7 フレーム後 (それぞ れ lag2,lag3,lag7 とする) に提示された。同一の 妨害単語は各 lag 条件につき 4 回ずつ提示され,全 試行数は 54 試行であった。実験参加者はこれら 2 つのセッションを交互に 4 回ずつ行った。さらに, 1 回目の馴化課題後と4回目の RSVP 課題後に,実 験参加者の気分状態を 9 件法 (1:快,9:不快) に て測定した。 結果と考察 情動語馴化群,中性語馴化群それぞれで,RSVP 課題でのターゲット同定率について,妨害単語の情 動価 (快,不快,中性) と,妨害単語とターゲット との lag (lag2,lag3,lag7)を要因とした被験者内二 要因分散分析(ANOVA)を行った。その結果,中性語 馴化群 (図 3a) において lag の主効果に有意差が認 められ[F (2,22) = 10.80, p < .01],lag2 および lag3 で の同定率は lag7 のときと比較して有意に低かった

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[それぞれ t (22) =4.36, p < .01; t (22) = 3.57, p < .01]。 また,妨害単語の情動価について,主効果は認めら れなかった [F (2, 22) = 3.43, p = .051]。さらには, 妨 害 単 語 の 情 動 価 と , 妨 害 単 語 と タ ー ゲ ッ ト 間 の lag との交互作用が有意であった [ F (4,44) = 2.64, p < .05]。多重比較の結果,lag3 条件において,不 快刺激がターゲットの直前に出現した場合は,中性 刺激,快刺激の場合よりもターゲット同定率が有意 に低下した [それぞれ t (66) = 3.12, p < .01; t (66) = 2.92, p < .01]。一方,情動語馴化群 (図 3b) では, 妨害刺激の情動価の主効果は有意ではなかった [F (2, 22) = 0.28, p = .76]。また,妨害単語とターゲッ ト 間の lag の 主 効 果には 有 意差 が認 めら れ [F (2, 22) = 5.07, p < .05],lag2 の際のターゲット同定率は lag7 の 時 と 比 べ て 有 意 に 低 い と い う 結 果 が 得 ら れ た [t (22) =3.18, p < .01]。また,妨害単語の情動価 と,妨害単語とターゲット間の lag の交互作用は有 意でなかった [F (4, 44) =1.09, p > .10]。 また,気分状態得点については,中性語馴化群は 1 回目が 4.50 (SD = ±1.98),2 回目が 5.42 (SD = ± 1.62),情動語馴化群は 1 回目が 4.58 (SD = ±1.93), 2 回目 5.67 (SD = ±1.92)であった。各測定時にお ける得点を t 検定で分析したところ,いずれの測定 時においても,情動語馴化群と中性語馴化群との間 で有意な差は認められなかった [t (22) = 1.36 , p > .10 ; t (22) = 0.10 , p > .10]。 本実験では閾下感情馴化課題を用いて,情動誘発 盲が消失するかどうかを確認することであった。実 験の結果,中性語馴化群においては不快単語による 後続刺激の見落とし (情動誘発盲) が生じ,情動語 馴化群においては見落としがなくなった。さらに群 間での気分状態の違いは認められなかったため,実 験 中 の 気 分 状 態 が 課 題 成 績 に 及 ぼ す 影 響 は な か っ たといえる。よって,RSVP 課題中のターゲットの 見落としがなくなるのは,事前の情動語の反復提示 による影響であることが示された。 第 2 実験 第 2 実験では,閾上感情馴化手続きを行ったあと, RSVP 課題において第 1 実験と同様の結果が得られ るかどうかを検討した。 実験参加者 34 名 (男性 8 名,女性 26 名) の大学生および大 学院生が実験に参加した。なお,本実験の参加者は 第 1 実験には参加していなかった。 実験装置および刺激 第 1 実験で使用したものと同様であった。 手続き 本実験の手続きは第 1 実験とほぼ同様のものであ った。ただし,感情馴化課題において,第 1 実験で は 刺 激 単 語 の 前 後 に マ ス ク 刺 激 を 提 示 し た の に 対 し,本実験ではマスク刺激を提示せず,灰色の画面 のみが提示された。 結果と考察 第 1 実験と同様に,情動語馴化群,中性語馴化群 それぞれで,RSVP 課題でのターゲット同定率につ いて,妨害単語の情動価 (快,不快,中性) と,妨 害単語とターゲットとの lag (2,3,7) を要因とし た被験者内二要因分散分析(ANOVA)を行った。その 結果中性語馴化群 (図 4a) において lag の主効果お よび交互作用が有意であった [それぞれ F (2,32) = 11.61, p < .001; F (4,64) = 4.09, p < .01]。また,妨害 単 語 の 情 動 価 の 主 効 果 は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た [F (2, 22) = 3.43, p = .051]。多重比較の結果,lag3 条件において,不快刺激が妨害単語として出現した 場 合 は 中 性 刺 激 の 場 合 よ り も タ ー ゲ ッ ト 同 定 率 が 有意に低下した [t (96) = 2.58, p < .05]。一方,情動 語 馴 化 群 (図 4b) で は交 互 作 用 は 有 意 で な か った

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[F (4, 64) =.86, p = .49]。 また,気分状態の得点については,中性語馴化群 は 1 回目が 5.12 (SD = ±1.45),2 回目が 5.82 (SD = ±1.55),情動語馴化群は 1 回目が 4.53 (SD = ±1.07), 2 回目 5.65 (SD = ±1.58)であった。t 検定による分 析を行った結果,いずれの測定時においても情動語 馴 化 群 と 中 性 語 馴 化 群 間 の 気 分 状 態 に 差 は な か っ た [それぞれ t (32) = 1.35 , p > .10 ; t (32) = 0.33 , p > .10] 。 実験の結果,閾上感情馴化課題後では,中性語馴 化群においては情動誘発盲が生じ,情動語馴化群に おいては見落としがなくなった。さらに群間での気 分状態の違いは認められなかったため,情動刺激の 反復提示によって,情動誘発盲が解消されたことが 示唆された。 総合考察 本研究の目的は,感情システムの働きが情動誘発 盲 の 生 起 に 関 与 し て い る か ど う か を 直 接 的 に 確 認 することであった。第 1 実験では閾下感情馴化課題 を用い,第 2 実験では閾上感情馴化課題を用いて, そのあとの RSVP 課題において情動誘発盲が生じ るかどうかを確かめることでこの問題を検討した。 本研究の予測としては,閾上および閾下感情馴化課 題のいずれにおいても,馴化課題にて中性語を反復 提示された群では情動誘発盲が生じ,情動語を反復 提示された群では,情動誘発盲が消失するというも のであった。実験の結果,閾下感情馴化課題の際に 中 性 語 を 提 示 し た 参 加 者 群 で は 情 動 誘 発 盲 が 生 じ た一方で,情動語を提示した参加者群において,情 動誘発盲の消失が認められた。さらに,閾上での感 情馴化課題後でも同様の結果が得られた。中性語馴 化 群 と 情 動 語 馴 化 群 と の 間 で の 気 分 状 態 の 違 い は 認められなかったため,本実験の結果について気分 状態によるものではないと考えられる。また,感情 馴化課題と RSVP 課題とで,使用した単語は異なる ものであったため,刺激そのものへの順応はなかっ たといえる。さらには,閾下での感情馴化において 情動誘発盲が消失したため,馴化課題で情動語を観 察することによる RSVP 課題への認知的構えや方 略の違いでもこれらの結果は説明できない。これら の余剰変数が排除されたことから,感情システムの 機 能 が 低 下 し た と い う 理 由 で の み 本 研 究 の 結 果 を 説明するができると考えられる。したがって,本研 究の結果は,情動誘発盲の生起には感情システムが 関与していることを示唆する。 主要引用文献

Anderson, K, A., & Phelps, A, E. (2001). Lesions of the human amygdale impair enhanced perception of emotionally salient events, Nature, 411, 305-309. Ciesielski, G. B., Armstrong, T., Zald, H. D., Olatunji,

O. B. (2010). Emotion Modulation of Visual Attention: Categorical and Temporal Characteristics . PLoS ONE 5(11): e13860. doi:10.1371/journal.pone.0013860

Dijksterhuis, A., & Smith, P. (2002). Affective habituation: Subliminal exposure to extreme stimuli decreases their extremity, Emotion, 2, 203-214. 五 島 史 子 ・ 太 田 信 夫 ( 2 0 01 ) . 漢 字 二 字 熟 語

に お け る 感 情 価 の 調 査 . 筑 波 大 学 心 理 学 研 究 2 3 , 45 -5 2 .

Most, S., Chun, M., Widders, D., & Zald, D. (2005). Attentional rubbernecking: Cognitive control and personality in emotion-induced blindness,

参照

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