ブータン王国 派遣隊活動報告
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ブータン王国 派遣隊活動報告
2015年9月∼2016年3月
京都大学医学部附属病院
〒 606-8507 京都市左京区聖護院川原町 54 TEL.075-751-3111(代表) ブータン和文_表紙1-4.indd 1 16/03/18 9:19ブータン王国 派遣隊活動報告
(2015年9月∼2016年3月) 平成28年3月 発行 発行 京都大学医学部附属病院 総務課秘書・広報掛 〒606−8507 京都市左京区聖護院川原町54 TEL:075−751−4334ブータン王国 派遣隊活動報告
CONTENTS
1.病院長挨拶……… P1
2.ブータンにおける臨床とフィールド医学……… P1
3.ブータン医科大学長 Dr. Kinzang P. Tshering 寄稿 ……… P2
4.ブータン医療交流小委員会委員長寄稿……… P3
5.ブータン王国の概要及び医療状況等について……… P4
6.ブータン王国への医師及び看護師派遣者一覧……… P5
7.ブータン王国への医師及び看護師派遣者 活動報告……… P7
第6陣 派遣隊活動報告(初期診療・救急科)
派遣期間:H27.9.6 - H27.12.1 ………
P8
第6陣 派遣隊活動報告(放射線部)
派遣期間:H27.10.12 - H27.11.20 ………
P9
第6・7陣 派遣隊活動報告(呼吸器内科)
派遣期間:H27.9.16 - H28.3.11 ………
P10
第6陣 派遣隊活動報告(静岡県立こども病院)
派遣期間:H27.10.5 - H27.10.17 ………
P11
第6陣 派遣隊活動報告(看護部)
派遣期間:H27.9.6 - H27.12.1 ………
P12
第7陣 派遣隊活動報告(病理診断科)
派遣期間:H28.1.8 - H28.1.29 ………
P14
第7陣 派遣隊活動報告(耳鼻咽喉科)
派遣期間:H28.1.11 - H28.3.19 ………
P15
第7陣 派遣隊活動報告(検査部)
派遣期間:H28.1.8 - H28.2.5 ………
P16
第7陣 派遣隊活動報告(感染制御部)
派遣期間:H28.2.2 - H28.2.29 ………
P17
8.ブータン医療交流WG委員長寄稿 ………P18
1
ブータン王国 派遣隊活動報告
ブータン王国 派遣隊活動報告
ブータン王国 派遣隊活動報告
1. 病院長挨拶
2. ブータンにおける臨床とフィールド医学
当院のブータンでの活動報告の挨拶を行う前
に、まずは、ブータン王国のジグメ・ケサル・
ナムゲル・ワンチュク国王とジェツン・ペマ王
妃に皇太子がご誕生されましたことを心よりお
慶び申し上げます。
さて、当院は、2013 年 10 月からブータン王
国保健省及びブータン医科大学と当院との3者
で締結したMOUに基づき、医師、看護師及び
技師などの医療スタッフをブータン王国に派遣
し医療支援を行っています。
本事業では、当院医療スタッフが現地の病院
や医療キャンプ等で臨床活動を行うとともに、
ブータン王国の医師不足解消のためジグミ・ド
ルジ・ワンチュク病院(以下;JDW病院)に
おいて専門医研修プログラムの作成を補助して
います。現在では、内科、外科、小児科などの
研修プログラムが完成し、外科からは専門研修
医を2名ずつ輩出するなど実績を上げてきてい
ます。またBLS講習会を開催したり、5S活
動を啓蒙したりするなどして積極的に教育に取
り組んでおり、今後も継続して活動を行ってい
く予定です。その他にも、2016 年からは当院の
栄養士をJDW病院に派遣し、同院の栄養指導
体制をサポートするとともに、ブータン王国の
医療スタッフを当院に招聘して研修を行うこと
も計画しています。
また、当院の医療スタッフにとってもブータ
ン王国の医療環境に身を置きながら同国の医師
や看護師と共に活動し、ブータン王国の患者さ
んと接することは、当院での診療活動では得る
ことのできない貴重な経験・財産であり、日本
とは違う環境の中でそれぞれが「学び」、「考え」、
「悩み」、「行動する」ことは、今後の当院での診
療活動にも還元されていくものと期待してい
ます。
さて、これら派遣者達の活動を纏めたものが
本書であり、もちろん報告の中心は医師・看護
師・技師などの派遣者ですが、派遣にあたって
は派遣診療科のみならず、薬剤部、感染制御部、
手術部、事務部などの各部門がこの活動をバッ
クアップしています。つまりは「オール京大病
院」としての事業報告であり、各派遣者の活動
の背景には当院の多くの医療スタッフの努力が
あります。
当院としては今後もこの事業を継続したいと
考えており、これから派遣する医療スタッフの
活動が当院、ひいては日本とブータン王国との
より良い関係に繋がることを願っています。
京大病院が正規医療スタッフをブータン王立
病院へ派遣開始してから2年半が経過した。こ
の派遣交流は、当時京大病院長の任にあった三
嶋理晃教授が、2013 年5月に総長の名代として
ブータン王立大学とのMOU締結のためブータ
ンを訪れた際に、ブータン王立病院長との懇談
のなかで内意ができ、帰国後、三嶋教授が京大
病院執行部の賛意を得て動き出したものである。
京大病院としてはまことに大英断であったと敬
服する。
京大病院とブータンとの交流に先立つこと約
3年前の 2010 年から、東南アジア研究所では、
坂本龍太・白眉特定助教を東ブータンのカリン
に長期派遣して、地域在住高齢者のヘルスケ
ア・デザインの構築を始めていた。その趣旨は、
以下のようなものである。
臨床医学とはその名のとおりベッドサイドで
患者さんと対応するそのありかたをいうが、急
性疾患と異なり多くの慢性疾患をかかえる高齢
者医療では、病院のみでは完結しない。病院に
おける患者さんのありようは、いわば「仮の姿」
である。種々の慢性疾患をかかえた高齢者のほ
んとうの姿は、あくまで生活の場である家庭や
地域にある。したがって、ありのままの高齢者
の医学的問題をすくい上げようとするならば、医
療スタッフのほうが高齢者が暮らしている地域
にでていって、さまざまな自然環境、文化的背
景のなかで暮らす高齢者の姿をとらえなければ
わからない。
病院を中心とした医療はこれまで、急性期疾
患の救命と寿命の延長に多大な貢献をもたら
した。しかし、病院医学が高度に専門分化した
結果、医師はその専門の臓器病変のみに関心を
集め、それ以外の問題を顧みる余裕がないのも
実情であろう。
高齢者がどういうふうに暮らしており、どん
な仲間や家族がいてどんなものを食べ、日常生
活の上でどんな医学的課題を抱えているのか、ま
た、生きがいに関する智慧とはいったい何か、こ
ういった問題は病院中心の医療ではほとんどみ
えてこない。
私たちが、病院から地域や家庭にでていった フ
ィールド医学 の消息はこのような認識によっ
ている。
坂本医師を始めとする東南アジア研究所「フ
ィールド医学」チームは、ブータンの各地域高
齢者のヘルスケア・デザインの構築をすすめ、本
方式は、ブータン保健省の第 11 次5カ年計画に
ももられ、将来はブータン全土に及ぼされる予
定である。とはいえ、ブータンの郡部病院や
BHUの医療レベルには、人的にも医療設備的に
も限界がある。現在、東南研の坂本医師、藤澤
医師などによって、地域医療スタッフを育成す
る た め の プ ロ グ ラ ム:Training of Trainer
(TOT)が進行中である。
将来、京大病院からブータン王立病院に派遣
されている高度先進医療を身につけた医療スタ
ッフと東南研・草の根の「フィールド医学」チー
ムが、協働できればと期待するものである。
京都大学 医学部附属病院 病院長 京都大学 東南アジア研究所 教授稲垣 暢也
松林 公蔵
2016ブータン王国派遣隊活動報告.indd 1 16/03/17 19:14The University Of Medical Science Of Bhutan is the fi rst Medical University ever established in the country. It was established on the 2nd May 2013 by the Act of the Parliament with the aim to address the shortage of health human resources in the country. Furthermore, on 28th of February 2105, Her Majesty Jetsuen Pema Wangchuck, the Queen of Bhutan formally launched the Khesar Gyalpo University of Medical Sciences Of Bhutan.
The University established its fi rst institutional collaboration with the Kyoto University Hospital, Japan by formally signing a Memorandum of Understanding (MOU) on 29th October 2013. This linkage with the Kyoto Hospital helped in further promoting the cooperation and the friendship between the two countries which dates back to early 1950s, where there were numerous exchanges in the fi eld of researches and students.
As a result of the collaboration, numbers of Doctors and nurses from Kyoto University Hospital have come to Bhutan and worked in various departments at Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital helping the Bhutanese doctors to gain skills and knowledge. This visit by the health professionals from KUH has had great positive infl uence to the hospital and the people at large.
Lately 23 Japanese health offi cials have come into different departments in Jigme Dorji Wangchuck National Referral Hospital in different batches from last September till now. With diverse skills and specialties of the Kyoto Doctors, the exchange program has immensely helped in curbing the shortage of doctors and transfer of knowledge and skills besides cultural exchange to the Bhutanese Doctors.
Different ideology and work ethics of the KUH offi cials has left a huge impression on the staffs of JDWNRH. All the staffs at JDWNRH are fully inspired and charged up with energy from the hardworking officials of KUH to work tirelessly and evermore effectively to take medical care to a greater height and provide the best health care possible to our people.
We would like to express our deep gratitude to Kyoto University Hospital for generous help extended to us and we look forward to further consolidate and strengthen this collaboration for mutual benefi ts.
ブータン医科大学(University of Medical Sciences of Bhutan)は、ブータンで最初に設立された医科大学です。
この国の医療人材不足を解消することを目的として、2013 年5月2日に国会で設立が決まりました。さらに、2015
年2月 28 日には、Jetsuen Pema Wangchuck ブータン王国皇后陛下が正式に Khesar Gyalpo University of
Medical Sciences of Bhutanとして本学を開学されました。
本学初の組織間協定として、日本の京都大学医学部附属病院(以下;京大病院)と 2013 年 10 月 29 日、覚書
(MOU)に正式調印いたしました。この京大病院との連携によって、多くの研究者や学生らが交流を行ってきた
1950 年代初期にさかのぼる2国間の協力及び友好関係をさらに深める結果となりました。
この連携の結果、京大病院の多くの医師や看護師らがブータンを訪問し、Jigme Dorji Wangchuck National
Referral Hospital(以下;JDW病院)の様々な部署で活動し、ブータン人医師らの技術や知識の向上を手助けし
ました。京大病院からの医療専門家らの訪問は、JDW病院、さらには国民全体に良い影響を与えました。
最近では 23 名の京大病院の日本人医療専門家らがこの9月から現在まで、JDW病院の各診療科に何陣かに分
けて派遣されました。多様な技術と専門性を持ち合わせておられる京大病院の医師らによって、この交流プログ
ラムは医師不足を解消させていくとともに、ブータン人医師への知識や技術の移転、加えて文化交流を行う上で
非常に有意義なものとなりました。
京大病院スタッフらの、我々とは異なる価値観と職業倫理は、JDW病院のスタッフに強い印象を残しました。
医療の高みを目指し可能な限り最高の医療を提供するため、疲れを知らずかつてないほど効果的に働く勤勉な京
大病院スタッフにJDW病院スタッフは皆、おおいに鼓舞され、力を得ました。
京大病院が広く寛大な援助を差し伸べてくださいましたことに深い感謝の念を表明したいと思います。そして、
共に得るものに向かって、さらにこの協力関係がより強固なものになっていくことを期待しております。
3. ブータン医科大学長
Dr. Kinzang P. Tshering 寄稿
Contribution
ブータン王国 派遣隊活動報告
3
ブータン王国 派遣隊活動報告
4. ブータン医療交流小委員会委員長寄稿
私とブータンとの繋がりは平成 25 年 10 月に
第一陣としてブータンの首都ティンプーにある
JDWNRHospital を拠点に外科診療を3ヵ月間
行ったことに始まります。
外科スタッフと共に、主に入院患者対象の診
療を行い、現地の医療事情を考慮しつつ、一般
外科、外傷外科(救急)、消化器外科、小児外科
を主に担当し、合わせて 180 例の手術に参加し
ました。
ブータンでは医師不足が深刻であり、外科医
も全国で6名(脳外科医、泌尿器科医、小児外
科医も含む)しかいないため、開頭術や多数の
泌尿器科手術の介助もする機会を得ました。ま
た、術前評価や治療方針の助言を行い、ブータ
ンでは施行が難しくインドを初めとした諸外国
への搬送を考慮する症例についても、明確な治
療適応・要搬送症例の判別を行うことで不必要
な搬送症例の減少を図りました。肝胆膵分野の
手術症例においては、従来であればブータン国
内で手術を行うことが困難な症例に対し、技術
指導を行いながら手術を行うことで海外への患
者搬送を回避することもできました。
ブータンでは、外科医はティンプー市内の病
院にしかいないことから、国内の全ての患者さ
んが数日かけてティンプーに搬送されてきます。
残念ながら、間に合わずに道中で亡くなられる
方もあり、そういった状況を解消すべく、数週
間単位で地方の病院に泊まりがけで手術にいく
Surgical campというものがあり、それにも参
加しました。Surgical camp では外科医、看護
師、麻酔科医の多くがボランティアで各地に赴
いて手術を行っており、比較的軽症な日帰り、も
しくは翌日退院の症例を選んで手術を行ってい
ました。また、ブータンにおける医学教育シス
テムの把握を行い、今後の医療体制を充実させ
る上でどのような教育システムの改善が必要と
されているかを考えてみました。
地方の病院でも医師不足は深刻であり、そう
いった状況もふまえ外国からの医師の応援も必
要と思われます。
また、医療物資の不足も深刻な様子です。
毎週、referral meetingがあり国外(主にイン
ド)に搬送する患者を検討しており、毎週、約
15 ∼ 20 名程度の患者が国外に紹介されている
が、その渡航費や治療費は全て国が負担してい
るため政府としても大きな負担であると感じら
れました。
結果、外科でも縫合糸、手術器具などはかな
り制限され、期限切れ、再利用も多く、器具、物
品があればもう少し高度なことができるかなと
思う事もあり、医療物資の確保も課題となって
います。
今回外科医として派遣されましたが、各診療
科の問題点を抽出して少しずつ改善していくこ
とがブータンの将来へ繋がっていくので、可能
な限り広く診療科を網羅して現状把握を目的に
派遣を継続させることの必要性を感じました。
慣れない場所で、いきなり医療を行うことに、
どうなるかと思っていましたが、ブータンの人々
にとても暖かく受け入れていただきました。医
療の状況は自分が研修医だった頃、あるいはそ
れ以前なのかもしれません。現在の日本では経
験できない疾患も多く戸惑うこともありました
が、第一陣の皆に助けられブータンの人々のひ
との良さに救われもしました。とても貴重な経
験をさせていただきました。ありがとうござい
ました。
また、平成 27 年には第6陣団長として再び
ブータンの方々とお話しする機会をいただくと
ともに、ブータンへの派遣者のアドバイザーも
務めさせていただきました。今後も様々な形で
この活動に携わっていきたいと考えております
のでどうぞよろしくお願いいたします。
ブータン医療交流 小委員会委員長 肝胆膵・移植外科 准教授岡島 英明
医科大学長表敬訪問 看護学部長表敬訪問 2016ブータン王国派遣隊活動報告.indd 3 16/03/17 19:14【概要】
ブータン王国は中国の南側、ネパールの東側に位置し、中国とインドと いう二つの大国に挟まれている。面積は約 38 万k㎡で日本の九州とほぼ 同じ大きさである。東西に広がる国土の7割は、森林や山間部が広がり、 平野部が少ない。また、北はヒマラヤ山岳地帯で海抜 7,000m、南は海 抜 300mと大きな高低差がある。西部にある首都ティンプー(Thimphu) 市も海抜約 2,500mと高地にある。ブータン王国は、GNH(国民総幸福量:Gross National Happiness) を重視する国として国際的に知られており、教育費や医療費は全て無料で ある。ブータン王国の医療機関には、専門的治療を受けられる基幹病院 (Referral Hospital)と県レベルの地方病院(Regional Hospitalおよ びDistrict Hospital)があり、さらに各地に診療所(Basic HealthUnit) と診療所配下のOut-reach Clinicがある(表「ブータン王国の医療機関」 参照)。3つの基幹病院は、首都ティンプー市、南部のサルパン(Sarpang) 県 ゲリフ(Gelephu)市、東 部 の モ ン ガ ル(Mongar)県 モ ン ガ ル (Mongar)市に置かれ、首都にある基幹病院、ジグミ・ドルジ・ワンチ ュク国立病院(Jigme Dorji Wangchuck National ReferralHospital) (以下JDW病院)が国内トップレベルの病院である。 ブータン王国の 医療機関 医療機関数 基幹病院3 地方病院22 診療所192
【医療における課題】
このように病院・診療所の数はそれなりにあるものの、ブータン王国で は医師数が絶対的に不足しており、2014 年現在、全国で約 200 人し かおらず、人口 10 万人あたりの医師数は約 25 人である(日本は 10 万 人あたり約 230 人)。医師が常駐しているのは、地方病院の District Hospitalまでで、専門医は十分な人数がいない状態にある。 こうした地方の医師不足を背景に、東部に暮らす住民の多くは、本格的 な治療を受けるために西部の首都ティンプー市にあるJDW病院まで行か なくてはいけない。しかし、東部からJDW病院まで行こうとすると険し い山道を2~3日かけて移動しなくてはならず、患者の搬送は大変困難で ある。【医師教育システムの不在】
上記の絶対的な医師不足の状況をさらに悪化させているのが、ブータ ン王国における医師教育機関の不在という問題である。ブータン王国には 医学部を有した大学がなく、医師を志す者は外国で医学教育を受けなけ ればならない。また、海外の医学部を卒業すると研修医として帰国するこ とになるが、国内での初期研修(基幹病院や地方病院の各診療科への勤 務や地方の診療所でのインターン等)を受けた後、今度は各診療科の専 門医になるために、再度、海外で専門医研修を受けなければならない。こ の専門医研修の期間は、通常5年以上を要する。このことはブータン王国 で勤務する医師をますます減少させているだけでなく、医師を目指す若者 の減少にもつながっている。ブータン王国の国民は、家族と過ごすことを 重視する傾向が強く、医師になるには長期間の海外生活を余儀なくされ るため、若者が医師を目指すことを躊躇する場合が多いからである。【中堅医師・専門医の不足】
専門医研修を受講する医師は、臨床経験をある程度積み上げてきた 30 代の働き盛りの世代であり、海外研修中はブータン王国内で医療に従事 することができない。こうした中堅医師が外国に流出することで、ブータ ン王国に残るのは、医学部教育を受けた研修医になりたての 20 代の若 手医師と、40 歳代以上の診療部長・教授クラスの医師だけとなる。この ような、中間世代が存在しないいびつな医師分布構造の中で診療が行わ れているのである。 ブータン王国では全般的な医師数の不足もさることながら、専門医の 数はさらに少ない。たとえば外科 医は泌尿器科外科医等を含めても 全国で6名しかいない。この6名 は、外科手術の多様化や症例の増 加に対応するため、首都ティンプー のJDW病院に集中しており、その なかでローテーションを組むこと で精一杯である(表「JDW病院に おける医師数(専門別)」参照)。そ のため、地方の基幹病院や地方病 院では、患者が専門的手術や治療 を受けることが難しい。【国家財政の圧迫】
海外での専門医研修はブータン 王国の財政にも大きな負担を強い ている。ブータン王国政府は、海 外での医学部教育と専門医研修の 費用を全額負担しており、学費や 研修費のみならず、滞在費、旅費に至るまで、全て政府が保証している。 また、ブータン王国では保健医療も全て国費で賄われており、国民には無 料で医療が提供されている。しかし上述の専門医不足の影響で、高度な 手術を要する場合には、患者をインド等の国外に搬送し、海外の医療機 関で治療を受けさせなければならない現状がある。その場合、海外への 患者搬送等の経費は、ブータン王国政府が負担するが、その経費は日本 円にすると年間で数億円に達する。【施策】
こうした現状に鑑み、ブータン王国における地方の医療過疎問題の解 決の一助となるべく、ブータン王国内で医師が研修を受講できる体制を 確立し、中堅医師層の外国への流出を食い止め、国内の医師不足の解消 を目指している。これにより現在は医療設備のみが整備された地方基幹 病院にも十分な人数の医師が常駐できるようになると思われる。また、国 内における医療研修体制を確立すれば、ブータン王国政府の財政負担の 軽減にもつながり、これまでは海外医療研修や海外患者搬送に使用され てきた予算を、ほかの住民福祉政策などに回すことが可能になると期待 される。 ブータン王国政府も国内に医師育成および専門研修体制を構築するこ との重要性を認識しており、2013 年にはブータン医科大学(University of Medical Sciences of Bhutan, UMSB)を設置し、JDW 病院内に も専門研修・医学教育センター(Postgraduate Medical Education Centre, PGMEC)設置した。しかし、現在開講されているのは看護・公 衆衛生学部と伝統医薬学部、の2学部と助産師用コースであり、肝心の 医学部がない。その理由の一つは、指導医となり得る医師の不足である。 そのため、現在ブータン王国では医学部設立に先立ち、JDW病院と京大 病院が協力して専門医を育成する「専門医研修プログラム」に着手して いる。本事業は、この専門医研修プログラムのさらなる充実と体制化を目 指すことも一つの計画としている。国内で全診療科の専門医を養成する ことで医師不足の解消をはかり、指導医にも数的・時間的余裕ができるよ うになれば、国内の医学生教育にも目が向けられるようになり、最終的に は医学部設立につながると考えている。 JDW病院における医師数 (専門別) 専門 人数 外科(一般外科、泌尿器科等) 4 内科(循環器内科、消化器内科、 腎臓内科、神経内科等) 6 麻酔科 5 産婦人科 4 整形外科 4 耳鼻咽喉科 3 眼科 4 小児科 4 皮膚科 3 歯科 6 精神神経科 3 放射線科 3 病理診断科 5 救命救急科 2 合計 56ブータン王国 派遣隊活動報告
5. ブータン王国の概要及び医療状況等について
6. ブータン王国への医師及び看護師派遣者一覧
5
期間(到着日 出発日)
氏 名
所 属 ・職 位
第6陣
(短期)
H27.9.6 - H27.9.10
岡島 英明
肝胆膵・移植外科 准教授
H27.10.12 - H27.10.14
柴田登志也
放射線部 准教授
H27.9.16 - H27.9.23
室 繁郎
呼吸器内科 講師
(長期)
H27.9.6 - H27.10.7
森 智治
初期診療・救急科 医員
H27.10.5 - H27.11.6
下戸 学
初期診療・救急科 特定病院助教
H27.10.28 - H27.12.1
大鶴 繁
初期診療・救急科 講師
H27.9.6 - H27.12.1
松山 愛
看護部 看護師
H27.9.6 - H27.12.1
上田 育美
看護部 看護師
H27.10.5 - H27.10.17
田中 靖彦
静岡県立こども病院 新生児科 科長
H27.10.12 - H27.11.6
今峰 倫平
放射線部 助教
H27.10.28 - H27.11.20
古田 昭寛
放射線部 特定病院助教
第7陣
(短期)
H28.1.8 - H28.1.15
大槻 文悟
整形外科 特定病院助教
H28.1.8 - H28.1.15
木村 彩乃
事務部 事務補佐員
H28.2.24 - H28.3.1
松原 亜海
疾患栄養治療部 栄養士
H28.2.24 - H28.3.1
角田 茂
消化管外科 助教
H28.2.24 - H28.3.1
二階堂光洋
消化器内科 大学院生医師
H28.2.24 - H28.3.1
松山 愛
看護部 看護師
(長期)
H28.1.8 - H28.1.29
吉澤 明彦
病理診断科 講師
H28.1.8 - H28.1.29
平田 勝啓
病理診断科 技師
H28.1.8 - H28.2.5
田中 洋子
検査部 技師
H28.1.11 - H28.2.5
鈴木 千晶
耳鼻咽喉科 医員
H28.2.2 - H28.2.29
北村 守正
耳鼻咽喉科 助教
H28.2.24 - H28.3.19
坂本 達則
耳鼻咽喉科 助教
H28.2.2 - H28.2.29
土戸 康弘
感染制御部 大学院生医師
H28.2.19 - H28.2.29
長崎 忠雄
呼吸器内科 医員
H28.3.1 - H28.3.11
德田 深作
呼吸器内科 医員
6. ブータン王国への医師及び看護師派遣者一覧
6. ブータン王国への医師及び看護師派遣者一覧
回診の様子 JDW病院長表敬訪問 2016ブータン王国派遣隊活動報告.indd 5 16/03/22 13:47ブータン医療関係施設
ブータン保健省 JDW病院 病院内の様子 ブータン医科大学 地方病院(District Hospital)7. 各診療科(部)活動報告
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7. 各診療科(部)活動報告
7. 各診療科(部)活動報告
活動内容について
待ちに待ったブータン派遣!! 先遣隊の活動報告から刺激され、今か 今かと派遣への期待が大いに膨らんでいた初期診療・救急科のメンバー、 森 智治(9/7-10/7)、下戸 学(10/5-11/6)、大鶴 繁(10/27-12/1)の3名は、このたび第6次派遣隊としてブータン王国最大の病 院、JDWNRHにて救急医療の診療支援をする機会を頂きました。 JDWNRHの救急部は発足して5年あまりの歴史であり、スタッフは 脳外科医の救急部長と救急科専門医2名に加え、Medical offi cer5名、 Intern2名で構成されており、そこへ海外ボランティア(救急専門医) が1名ずつ交代で業務支援に入っている状況でした。 救急外来を訪れた患者さん達は、まず 24 時間常駐しているトリアー ジナースによって重症度が判定されます。その後軽症患者の部屋、ある いは中等症・重症患者の部屋へ入室し、診察・検査を受ける、というの が基本的な診療の流れになります。 救急外来には昼夜を問わず様々な主訴の患者さんがやって来ます。も ちろん CPA、全身熱傷や溺水、敗血症、ショックなどから、国民的ス ポーツであるアーチェリーや大型ダーツによる刺創、打撲、骨折、脱臼 などや、肺結核、気管支喘息、COPDなどの呼吸器疾患、肝硬変、消化 性潰瘍などの消化器疾患、妊産婦や新生児、小児救急患者など外来のベ ッドが空くことはなかなかありませんでした。 そこでは北米型ERのように、ありとあらゆる疾患に対応する幅広い 知識、手技、経験が求められます。救急外来の看護師はトリアージの他 に静脈路確保、創処置や縫合までも担当する事が可能であり、医師はよ り多くの時間をかけて重症患者の診療にあたることが出来るシステムに なっています。 現地では慢性的な医師不足や、限られた勤務時間(9:00-15:00 または 13:00-19:00)であるため、救急医の研修医教育に関して は、内科、外科、眼科、小児科、産婦人科など研修プログラムがすでに 確立されている診療科とは異なり、研修プログラムがまだシステムが構 築中の段階でした。卒後すぐのInternへの教育には、特にボランティア スタッフに任せるような傾向があり、内容に関しても最新の知見を提供 することを我々に期待している印象を受けました。週2回(水・金)午 後、研修医を対象とした卒後教育の時間が 30 分間から1時間用意され ており、我々もそこで様々なトピックを取り上げて講義を担当しました。 その内容は、二次救急救命処置(ACLS)、骨髄針、熱傷初期診療 (ABLS)、外傷初期診療(JATEC)などであり、時には患者さんの協力 を得て、ベッドサイドで救急に必要なエコー検査の手技を指導しました。診療面での課題や問題点など
患者さんの家族は、待合室で待機するのではなく、基本的にベッドサ イドに付き添っており、ストレッチャーへの移乗や、検査室までの移動 に協力するのが普通の光景です。このような協力が得られる一方で、救 急外来患者の待ち時間は一般的に6時間以上、時には 18 時間以上にわ たることもあります。血液検査やX線検査、超音波検査などに時間がか かり、さらにCT検査を行うとなればさらに多くの時間がかかることも あり、患者本人に安全管理面でのリスクが大きくなるだけではなく、家 族にも大変な身体的・精神的負担がかかっている様子でした。 また、JDWNRHがある首都ティンプーまでは、東部ブータンから車 で数日間を要することもあり、発症した時点から時間が経過して、残念 ながら病状が進んでしまう場合もあります。11 月からは傷病者搬送用 のヘリが運用開始となり、地方の重症患者の救命率アップが期待されて います。今後の派遣に向けて
JDWNRHでは、勤務する医師だけではなく看護師など病院スタッフ への教育には、まだまだ我々外国人のスタッフが本領を発揮して「何か」 を伝えられる機会が十分にある、という印象を強く受けました。 今回の派遣中にDr. Chencho Dorjee看護学部長のご厚意により、看 護学部教員 15 名にBLS講習を担当する機会に恵まれました。トレーニ ング用のマネキン、AEDなどの機材は寄付によって質・量ともに大変充 実していたものの、ほとんどが新品同様であり、使用されないままスト ックされている物品も多くありました。 受講者の方々は大変熱心に取り組まれましたが、中でも、実習はこの 日がほぼ初めてという受講生の方が、トレーニング用AEDのボタンを押 す瞬間のキラキラとした目の輝きは大変印象的でした。受講後に、「とて も楽しい実習であった。インストラクターの一人一人がとても丁寧に指 導してくれて本当に有難い。」とのお言葉を頂きました。京大看護部スタ ッフ、京大医学部学生、アメリカ人医師など、皆が力を合わせて取り組 んだ試みでしたので大変嬉しい経験となりました。 これは「可視的なもの」により支援をすることよりは、むしろ「目に 見えないもの」によって何かを伝えることが必要とされているからなの ではないでしょうか。 幸せの国ブータンで何かをつたえるために、皆様方と力を合わせて参 りたいと思っております。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。所感
我々が派遣された期間は、ちょうどブータンの気候が雨季から乾季に 変わる季節であり、多くの祭りが開催されました。なかでもティンプー のツェチュは最大規模であり、国中から人々が訪れ、カラフルな民族衣 装に着飾った老若男女が、民族舞踊や歌に酔いしれる3日間でした。 JDWNRHもこの期間は休診であり、スタッフの多くが休暇をとります。 チベット仏教が人々の生活の中にしっかりと根ざしており、街には多く の僧侶も見かけられます。 パジョディンという修道院で出会った若い僧侶と、「善行」について話 をする機会がありました。彼らは、医療従事者のことを「朝起きた瞬間 から、すること全てが善い行いである」と言いました。なぜなら、病院 を訪れる患者は医療従事者を頼ってやってくるし、そういう患者に対し て医療従事者はできる限りの努力をすることがすなわち善行であり、そ の行いにつながることは全て善い行いであるというものでした。「朝起き て顔を洗って、食事をして、着替えたりするひとつひとつの事も全て善 い行いなんだよ」と、満面の笑顔で、遠い国からやってきた我々のこと を歓迎してくれたのでした。初期診療・救急科
講師
大鶴 繁
初期診療・救急科
特定病院助教
下戸 学
初期診療・救急科
医員
森 智治
第6陣 派遣隊活動報告
(
初期診療・救急科
)
第6陣 派遣隊活動報告
(
初期診療・救急科
)
第6陣 派遣隊活動報告
(
初期診療・救急科
)
派遣期間:
H27.9.6 - H27.12.1
活動内容について
放射線診断科からの派遣の主な目的は、エコーガイド下で生検や治療 を行うことでした。派遣時、JDWNR病院には画像診断専門の放射線科 医が勤務しているのみでしたが、生検針や穿刺針、ドレナージカテーテ ルなどの治療器具は現地にあり、手技は可能でした。まず到着後、X線 透視室とエコー機器の確保、モニターの手配や緊急時の対応を調整しま した。X線透視装置の視野は非常に狭く、画質が悪い年代物でしたが、エ コー装置は比較的新しい機種が完備され、使用には十分耐えうるもので した。また、不慣れなフリーハンドで手技を行わなければなりませんで したが、幸いとても熱意ある技師さんがいましたので、彼と協力しなが ら行いました。肝腫瘤などの生検、経皮経肝的胆嚢ドレナージ、肝や横 隔膜下などに存在する膿瘍ドレナージ、経皮的腎瘻形成術、胸水ドレナー ジ等を施行し、さらに手技後のドレナージカテーテルの管理も行ってい ましたので、頻繁に患者さんの様子を見まわりました。今回は合併症な くすべて終えましたが、病院には血管内治療室や止血するための道具は なく、穿刺に伴う出血への不安は拭えませんでした。 派遣中、エコーガイド下手技の依頼がたくさんありました。なかには、 画像検査で偶然発見された肝嚢胞や腎嚢胞に対するドレナージや、手技 自体が禁忌な場合もあり、治療の不要や禁忌を主治医や患者さんに説明 することも仕事の一環でした。 CTやMRIの読影に関しても、現地の放射線科医から多くの相談を受 けましたので、時間の許す限り画像所見に関する議論をするよう心がけ ました。日本ではあまり見られない寄生虫などの感染症の症例が多くあ り、彼らと議論することで我々も非常に勉強になりました。 超音波検査はスクリーニングとして多用されており、専門の技師さん が担当していました。時折、技師さんから相談を受け、エコー検査を一 緒に施行し、指導や議論をしました。診療面での課題や問題点など
感じた問題点は3つ、読影環境、手技に必要な道具と人材育成につい てです。 読影環境については、読影レポートがワードで作成されているため、ほ ぼゼロから作成しています。そのため、1つのレポートが完成するのに 膨大な時間がかかります。また、仕分けもなされていないため過去の画 像を探し出すことが困難な状況です。改善策は、ファイルメーカーなど を導入することで、所見記載の短縮化を図るとともに、症例の整理にも 役立つと思いました。また、余裕ができた時間は若手への画像診断の教 育に費やすことができ、将来的にそれが、ブータン国内での放射線科医 のライセンス取得につながるかもしれません。 次に手技に必要な道具の問題ですが、穿刺方向をアシストするプロー ベアタッチメントがないことがあげられます。穿刺は外科医や救急医も 行っていましたが、目標を超音波で確認して方向を定めてから、盲目的 に穿刺しているようでした。合併症を減らすためには、リアルタイムに放射線部
助教
今峰 倫平
放射線部
特定病院助教
古田 昭寛
放射線部
准教授
柴田 登志也
脈管の位置を確認しながら穿刺することが必要ですが、プローベアタッ チメントを用いることでより安全な穿刺ができると思いました。 最後に、比較的低侵襲なうえ低コストであるエコーガイド下の手技を 十分に施行できる放射線科医、あるいはそれを担当する他科の医師がブー タン国内には不在のようであり、その育成の必要性も感じました。(派遣 の終盤で知りましたが、実際の手技を見学されたためか、1人の放射線 科医が興味を持たれていました。)今後の派遣に向けて
私達が感じたように、はじめて赴任される場合、ブータンの勤務時間 や勤務形態に慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。日本に比べ てゆったりしていますので、そのリズムに物足りなさを感じるかもしれ ません。ただ、その時間軸で過ごすと改めて気づくこともあり、とても 有意義な時間でした。 現地の放射線科医や技師さんは非常に気さくなので、他科の医師は頻 繁に画像のコンサルトに来られました。もし赴任された時は気軽に相談 されると、とても協力的と思います。 現在、CTとMRIはブータン国内にJDWNR病院が保有する1台ずつ のみなので、本当に必要と考えられる症例に対して画像検査されている のが現状です。あらためて、漠然としたスクリーニング検査ではなく、明 確な目的をもった検査をすることが大切だと感じました。 最後に、今後安全なエコーガイド下の手技が広まることを望みます。医 療物資が少ないなか、超音波と最低限の必要な道具があればどこでも行 える手技ですので、費用対効果が望める治療と思いました。所感
すでに多くの先生や看護師さんが道を切り開いてくださっていたため、 想像よりも早く馴染み、仕事を開始することができました。放射線科は 他科からの依頼に対応することが多く、その仲介を同時期に派遣された 救急科の医師や看護師さんに手伝って頂いたため、問題なく仕事を遂行 することができたと感じております。ありがとうございました。 ブータンの放射線科の先生達には、仕事とプライベートの両面で非常 にお世話になりました。彼らのおかげで、滞在中は何不自由なく過ごせ たことにとても感謝しています。今回の派遣で、ブータンの医療にいさ さかなりとも貢献できたとしたら幸いに思います。 放射線科は国際医療支援に縁がないことも多いですが、今回のブータ ンへの医療支援派遣を通して、その大切さを実感しました。このような 機会を我々に与えて頂き、京都大学の関係者ならびにJDWNR病院の関 係者に深く御礼を申し上げます。第6陣 派遣隊活動報告
(
放射線部
)
9
第6陣 派遣隊活動報告
(
放射線部
)
第6陣 派遣隊活動報告
(
放射線部
)
派遣期間:
H27.10.12 - H27.11.20
2016ブータン王国派遣隊活動報告.indd 9 16/03/17 19:14活動内容について
2015 年9月と 2016 年2-3月に1名ずつ3回に分けての派遣とな った。9月当初はカウンターパートのいない(呼吸器内科医のいない) 状態であり、循環器医のDr. Yeshey Penjor、および内科部長Dr. Tashi Wangdiの両先生にコンサルトしながら手探りで呼吸器内科診療への貢 献を模索した。具体的な活動内容としては、院内各所の見回りにより、呼 吸器内科診療とその周辺の状況の視察・現状の把握と今後の課題の洗い 出しを主目的と考えた。この時点で、2014 年の入院患者のICD10 分 類の統計を出していただいたところ、呼吸器疾患は内科入院のほぼ4分 の1を占めており(一部小児科症例も含まれると考えられるが)、呼吸器 疾患に対するニーズが高いことが確認できた。この当時は内科医師のマ ンパワーの問題で、呼吸器疾患は一般内科医が診療する方針であり、レ ジデント・若手医師を含む内科医師全体への呼吸器疾患の啓蒙が必要と 感じられた。その後の 2016 年2月、二人目の派遣時(現報告書記載時 点)では呼吸器内科医・Dr.GAKIが常勤しており、今後のコアパーソン になると期待できる。病棟関連の具体的な活動は、ICU/病棟回診見学・ コンサルト、内視鏡/呼吸機能/画像診断などの診療技術関連の視察と 現状把握、などであった。9月派遣時には、COPD増悪一例入院、左肺 をほぼ占拠する巨大腫瘍一例、原因不明の 30 代女性の低酸素血症 (PAH?)などが印象的であった。ERも随時視察したが、9月 18 日は とくにCOPD増悪症例3例、粟粒結核+気胸の若年男性など、呼吸器疾 患のニーズが大きいことを実感した。また、2月派遣時には2日間で COPD8例(うち女性5例。ブータンでは女性のCOPDも多いらしい) +喘息1例の他、膿胸1件、COPD、肺炎1件、結核疑い、肺塞栓2例、 肺高血圧3例の入院症例のコンサルトを受けた。 また、隣接する看護学校で、学生にたいして 45 分の講義(COPDと 喘息)をする機会をいただいた(写真参照)。