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漁業労働の現代的評価に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

・I尊士(水産学)三輪千年

学 位 論 文 題 名

漁業労働の現代的評価に関する研究

  漁 業 に お け る 生 産 力 発 展 の 推 進 力iま , 機 械 カ の 導入 , 普及 に基 づく 漁業 技術 の 発 展 に あ っ た こ と は い う ま で も な い 。 し か し な が ら , 全 て の 産 業 技 術 が そ う で あ る よ う に , そ の 過 程 に お い て は 労 働 カ の 機 械 カ ヘ の 置 き 換 え が 単 純 に 進 行 し て い る 訳 で は な い 。 漁 業 生 産 カ の 発 展 は 新 た な 労 働 過 程 , 新 た な 技 術 の 再 編 を 伴 い つ つ 推 進 さ れ て い く も の で あ る か ら で あ る 。 本 研 究 は , 漁 業 労 働 過 程 に お け る 漁 業 用 作 業 機 械 の 導 入 , 展 開 が 漁 業 労 働 過 程 と 労 働 力 編 成 に い か な る 変 化 と 影 響 を 及 ぼ し た の か に つ い て , 機 械 力 導 入 の 典 型 的 業 種 と 目 さ れ る 大 型 イ カ 釣 船 凍 漁 船 の 技 術 展 開 を 対 象 と し て 考 察 し た も の で あ る 。 こ の 考 察 を 通 し て 漁 業 生 産 カ に お け る 技 術 の 実 体 ( 存 在 形 態 , 意 義 , あ り 方 ) に ア プ ロ ー チ し う る も の と 考 え る 。   方 法 と し て , くD大 型 イ カ 釣 船 凍 漁 船 に お け る 船 内で の 労働 過程 はイ カ釣 機な ど の 漁 労 装 置 が 自 動 ・ ロ ボ ッ ト 化 し た こ と で ど の 様 に 変 化 し た の か 。 ◎ イ カ 釣 漁 船 の 船 凍 ( 冷 凍 ) 化 は , 漁 獲 物 の 処 理 ・ 製 造 に 従 事 す る 乗 組 員 の 労 働 と 生 活 に い か な る 影 響 を 及 ぽ し た の か , と い う2つ の 側 面 か ら , 労 働 と 船 内 生 活 過 程 の 具 体 的 観 察 を 行 っ た 。 本 研 究 で は , 自 動 イ カ 釣 機 な ど の 漁 業 生 産 諸 手 段 の 科 学 技 術 的 な 発 展 過 程 を 考 察 す る だ け で な く , 漁 業 生 産 諸 手 段 と 対 応 す る 乗 組 員 が 労 働 体 験 か ら 修 得 し た 「 経 験 」 や 「 勘 」 , さ ら に は 「 技 能 」 に っ い て も 客 観 化 し う る も の と 評 価 し , そ の イ カ 釣 漁 業 生 産 カ ヘ の ビ ル ト ・ イ ン の 過 程 を 解 明 し て い く 。   1章 で は , 自 動 イ カ 釣 機 が 自 動 ・ ロ ボ ッ ト 化 す る こ と で イ カ 釣 漁 船 乗 組 員 の 労 働 は 漁 獲 労 働 か ら 解 放 さ れ , 代 わ っ て , ロ ボ ッ ト 化 し た 自 動 イ カ 釣 機 の 監 視 労 働 と , イ カ 釣 生 産 過 程 で 突 発 的 に 発 生 す る 糸 絡 ま り な ど の ト ラ ブ ル の 修 復 労 働 へ と 移 行 し て い く こ と を 明 ら か に す る 。 次 い で , 漁 業 用 作 業 機 械 な ど が 進 化 す る こ と に よ り , 乗 組 員 の 労 働 形 態 ・ 内 容 が 変 化 す る 様 を 考 察 す る と と も に , 漁 労 装 置 な ど 生 産 手 段 が 技 術 革 新 を 遂 げ て も , 乗 組 員 の 「 技 能 」 が 果 た す 役 割 が あ ら た め     ‑ 164

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て重視されることを,イカ釣漁船での労働工程分析を通して実証的に明らかにし た。

  第2章 では ,大型イカ釣船凍漁船での漁獲物の冷凍処理・製品化過程における 乗組員の労働内容・形態を解明する。大型イカ釣船凍漁船が生産する冷凍イカ製 品は,珍味加工原料及びスーパーマーケットや外食産業向けの総菜用加工原料と して,同一サイズ,定品質,規格化が求められており,冷凍製品化過程において は製品の標準・規格化に沿った「マニュアル化」された労働が行われていること が明らかとなる。そして,かって荷役などの日本人乗組員の補助的な就労に限ら れていた外国人乗組員|ま,船内作業の大半が「マニュアル化」された今日では日 本人とほとんど区別し得ない従事内容となっている現実を明らかにした。さらに,

品質管理分野での「マニュアル化」された労働過程の内実にっいての問題も指摘 する。

  第3章 は, 大型イカ釣船凍漁船の冷凍機器の運転とメンテナンスを生産現場で 指揮・監督し,冷凍イカ製品の品質管理責任者である機関長の船内での位置と労 働過程を船内生活時間や行動分析を通してみていく。新たな技術的要請を伴って いる船凍漁船内の製品化作業においては乗組員の作業により強度の高い労働が強 制され,精神的での負担も強められている。

  第4章 では ,イカ釣漁業技術が「道具」の段階から「機械」(自動・ロボット 化)へと発展していく過程の特徴を,イカ釣漁船内の作業体系変化,及び漁船の 船凍化に伴う漁獲物の処理・製造過程の労働編成の展開と併せ,史的段階的に考 察する。そして,イカ釣漁業におけるハード・システム技術の進展が,その下で 働く乗組員の「技能」や「ノウハウ」といったソフト技術をも変化せしめるとい った相互規定的な関係にあることを明らかにした。

  第5章 にお いては,漁船での生産過程で生起する労働災害の態様と特徴を分析 することによって,労働災害と漁業用作業機械などの生産システムとの関係につ いて論述する。漁船での労働災害の多くは操業中に起こるものであること,また 漁船乗組員の高年齢化や,外国人船員などの未熟練労働カの増加に関連した労働 災害も増加している。労働災害は現実には技術の進歩ほどには減少しない。その 要因として,漁業用作業機械の開発,導入がいわゆる熟練乗組員を中心としてい ることを明らかにした。

  本研究の結論は,次の3点である。

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  第1に,漁業生産における機械化体系の展開は船内労働編成,労働過程のそれ への適従化をもたらすと共に,新たな「技能」労働の発生と対処の問題を惹起し た。ここでは,近代的な装置を環境変化に合わせて有効に稼働させるためには,

定型化した作業だけではこなし切れない作業領域における労働が不可欠であり,

経験に培われた漁業者の「技能」の展開が重要課題になっている。漁業の機械化 体系において,客観化できる「技能」労働過程の評価軸,並びに新たな労働力養 成の問題が提起されたというべきであろう。

  第2に,冷凍イカ製品の市場での需要拡大に伴って,船内の冷凍製品製造過程 において市場の求める定型化した商品創造の工程が新たに付加され,従来の漁労 作業体系とは異なった労働過程,労働環境が船内で造出されている。ここでも,

安定した製品生産,商品管理の作業に対応した熟練乗組員の「経験」や「勘」に 基づく作業が必要とされている。末端商品化の展開が生産過程に持ち込まれるこ のと少なくない今日の漁業生産は,船内労働編成,及び労働力配置と養成におい て あ ら た め て 合 理 的 方 策 の あ り 方 が 検 討 さ れ る べ き で あ る 。   第3に,漁業生産においても,ハード,ソフ卜両面にわたる技術革新によって,

高年齢化し,未熟練な労働カでも対応可能な生産技術体系が創出されてきた。高 齢者と未熟練な外国人の就業者が漁船漁業を担っている現状がある。しかし,漁 業技術は彼らの就業を可能とする一方で,技術の導入に伴って必要とされる新た な技能労働が欠如した状況の中で,彼らを犠牲者とする労働災害も多発している。

新たな技能労働の要請と併せ,労働安全や労働環境の側面から,労働編成と漁業 技術のあり方が検討されるべきである。また,新しい漁業技術に対応した労務管 理のあり方の考究とともに,労働カの質に対応した管理手法の確立も急がれると ころである。

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主査 副査 副査 副査

教 授 教 授 助 教授 講 師

廣吉 天下井 古林 見上

学 位 論 文 題 名

勝治    清 英一 隆克

漁業労働の現代的評価に関する研究

  裸の人間労働がなお重視される漁業生産においても、機械技術の展開は著しい。

  主論文は現代の漁業技術の展開が漁業労働過程や労働カ編成にいかなる変化、影響 を及ぽすのか、そこにみられる技術と技能の関係性、漁業生産力体系の整備に内包す る新しい問題等に関し、機械制漁業の本系的整備が最も進捗した業種のひとっといわ れる大型イカ釣り漁業において実証的に検討しようとしたものである。評価すべき主 論文の論点は以下の5点である。

  第1に、自動イカ釣機の導入による労働カの機械への置き換えが、新しい作業工程

・労働技能の出現を再度もたらし、同時にそれが商品生産を実現する過程を内包した 労働過程の付加に伴ってイカ釣り漁業のクリティカル.モメントの再形成を促した、

という漁業生産力形成のダイナミックな変貌過程が労働過程論的視点で分析された。

  第2に、自動イカ釣機体系の展開のなかでもたらされ、付加された新しい労働工程 がじっは漁獲物処理作業工程にみられるように量販店等の末端流通資本の商品政策と マーチャンダイジングを反映したものであることを立証し、商品市場形成を含めた漁 業技術考察の重要性が指摘された。

  第3に、大型イカ釣り漁船において、冷凍関連機器のオベレーション、船内工場や 製品管理の責任を負った機関長・機関部の役割、位置づけが重視されていることを観 察し、作業機械導入が労働力編成と賃金体系全体の再編をもたらしていることを考察 した。

  第4に、イカ釣り作業機械導入の経緯、プロセスの考察において、機械と技能との 結合の要請により「作業マニアル」という形でイカ釣り技術体系のなかにトータルと して管理される労働・作業が必要とされた。そのことが作業内容において、乗組員に 新たな労働の強化をもたらし、かつ船内生活にも強いストレスを及ぼすところとなり 新 し い労 働 問 題 、 労 務 管 理 問 題 を 惹起 す る こ と と な っ た こ と を考 察し た。

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第5に、そこでみられる労儀災害発生の態様を分析した。船内作業はマニアルに基 づく作業のみならす、糸からまりや事故処理といった事態にも対応可能な労働を要請 しているのだが、それが乗組員の高齢化、外国人化、及ぴ未熟練者の配置という実態 のなかで労働災害の発生を助長している。労働意欲、モラールの低下といった問題も みられる。こうした機械作業体系化の意義と問題を考察して労務管理の在り方、技能 養成の在り方等について指摘した。

  以上のように、本研究は大型イカ釣り漁業において、作業技術体系の完成に伴って 養成される新しい技能労働の展開と評価を主軸に、漁業技術の存在形態、及び展開過 程について実証的に検討したものであるが、そのなかで客観化しうる技能労働と漁業 技術との関係の捉え方や在り方について、広く示唆したものとなった。かかる研究は 従来の労働科学的観点からの研究や技術論的研究の欠落部分を補完するものであり、

漁業労働と漁業技術に関する今後の研究を発展させ広げる契機になるものと期待され る。また、本研究が今後の海上労働行政、水産行政に及ぼす貢献度も小さくはないと 判断しうる。

  以上により、申請者の研究成果は漁業労働経済の分野において学問的、かつ政策的 貢献度が高く、審査員一同は本研究の申請者は博士(水産学)の学位を授与される十 分な資格を有すると判定した。

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参照

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