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農村共有資源の維持管理活動に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 高 山 太 輔

学 位 論 文 題 名

農村共有資源の維持管理活動に関する研究

一北海道の農業水利施設を対象として

学位論文内容の要旨

  農村共有資源は排他性が低く、競合性が高い財であり、一般的にコモンズと呼ばれる。

農業水利施設は、農村共有資源のーっと考えられるようになった。日本の農村において農 業用水路等の水利施設は、農村集落や施設を利用する利用者組織が中心となって維持管理 を行い、持続的に利用してきた。近年、農業水利施設の管理水準は、集落内での農家比率 の低下、兼業化、高齢化、混住化の進展により、低下傾向にあることが指摘されている。

そして、農家においても農業用水路等を維持管理する活動への参加に対して負担を感じて きており、今後の管理水準の低下が危惧されている。また、農家や利用者組織が管理する 末端施設だけでなく、頭首工などの基幹水利施設は、農家を組合員とする土地改良区が維 持管理の中心的な担い手として大きな役割を果たしてきたが、基幹水利施設機能の高度化 や都市化に伴う管理事業の量的な拡大が維持管理費の増大をもたらしている。土地改良区 は水利施設の維持管理に要した費用を組合員から賦課金として徴収しているが、米価下落 の状況下では経常賦課金の値上げは難しく、水利施設の維持管理に要した費用を賄うこと が困難になっている。その結果、多くの土地改良区の財政基盤は不安定になり、農家にお いても米価下落の中、経常賦課金の負担が大きくなっている。このように農業水利施設は、

土地改良区と農家およびその利用者組織により維持管理されてきた。しかし、農業農村を 取り巻く状況の変化により、農家の水利費負担や農業水利施設の管理のあり方に様々な問 題が生じている。

  既存研究では、集落や非農家を対象として都府県の事例や特定地域の調査データを用い て農業用水路をはじめとする農村共有資源管理のあり方や管理メカニズムの分析を行って いる。し かしながら、北海道では農家1戸当りの農村共有資源管理の負担量が大きく、さ らに農家減少率が高いため管理の負担量の増加スピードも大きく、農村共有資源管理の持 続性が最も危惧されている地域であるにもかかわらず、北海道を対象とした研究はなされ ていない。一方、近年、農家と共に共有資源の管理主体となる土地改良区が行っている合 併の効果や規模拡大が土地改良区運営の効率化や組合員が支払う経常賦課金にどのような 影響を与えるかを分析した研究は少ない。

  そこで、本研究では北海道を対象とし、農業水利施設の管理主体である農家、利用者組 織、土地 改良区の3つのレベルで管理行動を分析し、農業水利施設管理のあり方について 検討した。

  まず、農業用水路の末端利用者組織である管理組合が行う農業用水路の維持管理作業を 対象とし て、組合員の維持管理作業への参加に影響を与える要因を明らかにした。第1に 共同作業に対する出不足金や出役金などの金銭的インセンテイプを付与したルールを持つ 管理組合 に所属する農家であるほど、維持管理作業に参加する傾向が強い。第2に現時点 での経営規模ではなく、経営規模の拡大志向を持つ農家ほど共同作業ヘ参加する傾向があ

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る。っまり、担い手となる農家については農業用水路の維持管理に関心が高く、共同作業 へ参 加する。 第3に 入作を 行っている主業農家ほど共同作業に参加しない傾向がある。こ のような農家は、水田を転作田として活用するために入作を行っており用水路管理への関 心が低くなっている。

  次に、農業用排水路の管理水準を被説明変数とする順序口ジットモデルを用いて農業用 排水路の管理形態の決定要因を明らかにした。農業用排水路の管理形態には「全戸出役に よる管理」、「農家のみによる出役」「集落として非管理」「非実施」がある。この中で「全 戸出役による管理」は集落内の協力・合意が最も必要とされ、これらの形態の中で最も管 理水準が高い形態とみなせる。ゆえに「全戸出役による管理」、「農家のみによる出役」、「集 落として非管理」、「非実施」の順に集落の農業用排水路管理に対する協力水準は低くなる。

第1に既存 研究と同 様に北 海道においても農業用排水路を管理する集団規模や集落内での 非農 家率など が管理 形態の選択に影響を与えている。第2に都府県と異なる北海道の特徴 として、集落内に非農家、主業農家、第二種兼業農家、自給的農家が一定の割合で均一に 存在し、多様性を伴う集落ほど低い管理水準の管理形態を選択する確率が高くなる。逆に 主業農家と非農家に二極分化が進んだ集落であるほど管理水準の高い管理形態を選択する 確率が高くなる。このように農村集落内の構成員のあり方が管理形態の選択に影響を及ぽ して いる。第3に集 落内の 農家の農業経営規模が二極化するほど低い管理水準の管理形態 が選択される傾向にある。この点は都府県を対象とした農業経営規模の分極化が管理水準 を高めるという既存研究と異なる結果を示した。

  最後 に、DEA法によ り土地改良区の合併の効果や合併が農家の負担金である経常賦課金 へ与 える影響 を分析 した。第1に土地改良区の事業規模と運営効率との問に有意な相関関 係は 認められ なかっ た。第2に効率的土地改良区と非効率的土地改良区を比較すると面積 規模 や組合員 数の大 小に有意な差はなかったが、職員1人当たりの事業量に有意な差が認 められた。第3に効率的土地改良区は運営事務費の削減により、運営効率を改善していた。

以上より、運営効率の改善には合併による単純な事業規模の拡大ではなく、合併後に職員 1人当たり の事業量 を増や していくことが必要である。また、合併しても水利施設の統廃 合はできないため維持管理費を大幅に削減することは難しく、合併による経常賦課金の低 減は限られたものとなる。

  本研究の結果から、北海道における水利施設の持続的管理のあり方について、次の結論 を導くことができる。

  水利施設の管理主体である農業集落や利用者組織である管理組合において、高齢化によ り農家減少率が上昇し、集落内の構成員の多様化や農地の集積により経営規模の二極化も 進むため、管理水準が低下する。そして、農村共有資源管理の担い手となる大規模農家の 管理負担の問題も生じてくる。また、土地改良区の合併によっても基幹水利施設の水利費 負担は変わらないため経常賦課金の大幅な軽減は望めない。

  今後、各農村における農業水利施設の管理形態は異なるであろうが、土地改良区が基幹 水利施設を管理し、農家を中心とする利用者組織が末端水利施設を管理していくことは変 わらない。そこで、末端水利施設管理の担い手となる大規模農家とその他の農家を中心と して持続的に維持管理を行っていくためには、農家間の経営面積の格差などを考慮し、末 端水利施設における共同部分の用水路の維持管理作業に対して、管理労働量の公平性を確 保する必要がある。その時に、金銭的インセンテイプを与えるルール作りや金銭的調整を 利用者組織内で行うことが効果的である。

  また、土地改良区において労働生産性が運営効率の改善に最も重要である。土地改良区 の運営基盤の安定や運営効率性を向上させるためには、合併後において事業規模の拡大と 同時 に職員1人当た りの事 業量を増やすべきである。そして、効率性の改善を図ることに より、経常賦課金を軽減することが必要である。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    長南 史男 副 査    教 授    坂下 明彦 副査   准教授   近藤   巧

学 位 論 文 題 名

農村共有資源の維持管理活動に関する研究

ー 北 海 道の 農 業水 利 施 設を 対 象と し て

  本論 文は6章か らなり、図11、表27、文献110を含む頁数82の和文論文であり、別に 参考論文1編が添えられている。

  農村共有資源は排他性が低く、競合性が高い財であり、一般的にコモンズと呼ばれる資 源のーっと考えられている。日本の農村において農業用水路等の水利施設は、農村集落や 施設を利用する利用者組織が中心となって維持管理を行い、農村共有資源として持続的に 利用されてきた。しかしながら、近年、集落内での農家比率の低下、兼業化、高齢化、混 住化の進展により、農業水利施設の管理水準は低下傾向にある。一方、頭首工などの基幹 水利施設は、農家を組合員とする土地改良区が農家から賦課金を徴収し、維持管理の中心 的な役割を果たしてきた。減反政策や米価下落により土地改良区の財政基盤が脆弱になり、

基幹水利施設機能の高度化や都市化に伴う管理事業の量的拡大によっても維持管理費が増 大し、農家の経常賦課金の負担が大きくなっている。このように、農業水利施設の管理の あり方には様々な問題が生じている。とりわけ、農業用水路等を維持管理する活動への参 加に対して農家は負担感を増してきており、今後の管理水準の低下が危惧されている。

  本研究では歴史的にも府県と大きく異なる北海道を対象とし、農業水利施設の管理主体 である農家、利用者組織、土地改良区の3つのレベルで農業水利施設の維持管理活動を分 析し、今後の農業水利施設管理のあり方にっいて検討した。

  まず、農業用水路の末端利用者組織である管理組合が行う農業用水路の維持管理にっい て、鷹栖町北斗地区において実態調査を実施し、組合員の維持管理作業ーの参加に影響を 与える要因を明らかにした。参加゜不参加農家の2項ロジット分析の結果、共同作業に対 する出不足金や出役金などの金銭的インセンティブを付与したルールを持っ管理組合に所 属する農家であるほど、また経営規模の拡大志向を持つ農家ほど共同作業ー参加する傾向 がある。っまり、将来的に担い手となる農家は農業用水路の維持管理に関心が高く、共同 作業へ参加する。一方、入作農家は水田を転作田として利用するために、用水路管理への 関心が低くなる傾向にある。

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  次に 、2000年 の農 林業 セン サス 農業 集落 調査 の個 票デ ー タを 使用して、順序ロジット分 析 によ り農 業用 排水 路の 管理 形態 の決 定要 因を 明ら かに し た。 農業用排水路の管理形態に は「全戸出役による管理」、「農家のみによる出役」「集落として非管理」「非実施」がある。

こ れら 形態 のう ち、 集落 内の 協力 ・合 意が 最も 必要 とさ れ る「 全戸出役による管理」が最 も 管理 水準 が高 いと みた され てい る。 分析 結果 は農 業用 排 水路 を管理する集落戸数が大き く なる ほど 協力 水準 の低 い管 理形 態が 選択 され 、水 田割 合 が高 ければ協力水準の高い管理 形 態が 選択 され る。 また 非農 家率 が高 くな ると 管理 水準 は 低く なる。以上の結果は府県の 分 析結 果と 整合 的で ある 。し かし 、北 海道 では 主業 農家 と 非農 家に二極分化が進んだ集落 で あ る ほ ど 管 理 水 準 の 高 い 管 理 形態 を選 択す る確 率が 高く なり 、府 県と 大き く異 なる 。   最 後に 、土 地改 良区 運営 実態 調査 を使 用し て、DEA法 によ り運 営効 率を 計測 し、 土地 改 良 区の 合併 効果 や合 併が 基幹 水利 施設 の農 家負 担金 であ る 経常 賦課金へ与える影響を分析 し た。 土地 改良 区の 事業 規模 と運 営効 率と の間 には 有意 な 相関 関係は認められず、効率的 土 地改 良区 と非 効率 的土 地改 良区 を比 較す ると 、面 積規 模 や組 合員数規模に統計的に有意 な 差 はな いが 、職 員1人当 たり の 事業 量に 統計 的に 有意 な差 が認 めら れた 。そ して 運営 事 務 費の 削減 は運 営効 率を 改善 して いた 。分 析結 果は 、組 織 的な 合併によって水利施設の統 廃 合は でき ない ため 経常 賦課 金の 大幅 な軽 減は 望め ない こ と、 したがって、合併による単 純 な 事業 規模 の拡 大で はな く、 合併 後に 職員1人当 たり の事 業量 を増 やし てい くこ とが 運 営効率の改善に必要であるこ とを示唆している。

  本研 究の 結果 から 、北 海道 にお ける 水利 施設 の持 続的 管 理の あり方にっいて、次のよう な 結論 を導 くこ とが でき る。 各農 村に おけ る農 業水 利施 設 の管 理形態は異なるが、土地改 良 区が 基幹 水利 施設 を管 理し 、農 家を 中心 とす る利 用者 組 織が 末端水利施設を管理してい く こと には 変わ りを い。 末端 水利 施設 管理 の担 い手 とな る 大規 模農家とその他の農家が中 心 とな って 持続 的に 維持 管理 を行 って いく ため には 、農 家 間の 経営面積の格差などを考慮 し 、末 端水 利施 設に おけ る共 同部 分の 用水 路の 維持 管理 作 業に 対して、管理労働量の公平 性 を確 保す る必 要が ある 。そ の方 法と して 金銭 的イ ンセ ン ティ ブを与えるルール作りや金 銭的調整を利用者組織内で行 うことが有効である。

  以 上、 本研 究は 農業 水利 施設 の管 理主 体で ある 農家 、利 用 者組 織、 土地 改良 区の3つ の レ ベル で管 理行 動を 分析 し、 農村 共有 資源 とい う新 しい 視 点か ら北海道の農業水利施設の 持 続的 な管 理の あり 方に 関し て実 証的 な研 究成 果と して 高 く評 価され、制度設計の観点か ら農業政策への含意も大きい 。

よ って 、審 査員 一同 は高 山大 輔氏 が博 士( 農学 )の 学位 を 受け るのに十分な資格を有する ものと認めた。

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参照

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