博 士 ( 工 学 ) 延 兼 啓 純
学位論文題名
Discovery of Majorana Fermions in Sr2Ru04 superconductors
(Sr2Ru04 超伝導体におけるマヨラナフェルミオンの発見)
学位論文内容の要旨
素粒子物理の現象を表す理論的構造と固体物理の現象を表す理論的構造が同じ普遍数理構造を持 つことが示唆されている。例えば、素粒子のパイオンの崩壊確率は、量子的対称性の破れ(カイラ ルアノマリー)によって説明される。このとき理論形式にトポロジカル項(チャーン・ポントリャー ギン項)が付く。また、最近固体物理の2次元電子系グラフェンにおいて量子ホール効果が発見さ れ た。こ れらの 現象は全く異をるエネルギースケールで起こり、一見関連しをい。しかし、グラ フ ェンは 単位格 子のA格 子とB格 子から2成分擬ス ピノー ル表記 ができ 、相対 論的を 量子力学の 場として扱える。グラフウンにおける量子ホール効果はパリティアノマリーとして理論形式にトポ ロジカル項(チャーン・サイモン項)が付くことで説明可能である。以上のように次元の違いはあ る ものの 素粒子 物理と固体物理においてトポロジカル項に関する普遍数理構造が明らかにをって きた。
現 在、ニ ュート リノはその質量の発見によルマヨラナフェルミオンであることが有力視されて いる。しかし、まだ確定はしていをい。果たしてマヨラナフェルミオンは自然界に実在するだろう か。マヨラナフェルミオンとは、粒子と反粒子が同一視される粒子で、実数場のみで記述される。
素粒子物理において、パリティの破れたニュートリノの発見は現在の標準理論の構築に大きを寄与 をはたしている。もしマヨラナフェルミオンが実在すれば、トポロジカル項に関する普遍数理構造 から素粒子物理の未解決問題を解決できる可能性がある。これに対し、いくっかの固体物理系にお いてマヨラナフェルミオンの観測が示唆されている。本研究の目的は、実験室で固体物理系を用い てマヨラナフェルミオンを探索することである。
本論文は全六章から構成される。
第 一章で は、序 論とし て、本 研究の背 景と目的を述べた。さらに、今回用いたSr2Ru04超伝導 体のカイラル単一ドメインによる電子輸送測定の必要性を記述した。ミリメートルサイズの大き毅 単結晶では、クーパー対の内部自由度によるドメイン構造が試料に形成され、Sr2Ru04の本質的を 現象が平均化され観測でき誼い可能性がある。
第二章では、超伝導の発見から今日までのその後の発展について簡単に振り返った。特に、本研 究 で用い るSr2Ru04がス ピン三 重項お よびカ イラルp波超伝 導体であると示唆している実験結果 に ついて 記述し た。また |大き をSr2Ru04単結晶で既に報告されている電子輸送測定の結果をま とめた。
第 三章で は、Sr2Ru04単結晶 作成から 電子輸 送測定 の方法 までを述べた。Sr2Ru04は固相反応
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法 によって作成した。この作成法ではミリメートルサイズの大きを単結晶を作成する事は困難であ る が、マイクロメート ル程度のSr2Ru04であれば十 分作成できる。作成したSr2Ru04を2‐プロパ ノ ール溶液中で分散させ、表面が酸化膜でコーティングされたシリコン基板上に滴下した。結晶性 の 良い試料に電極を作製するために組成分析および菊池線回折パターンの実験結果から良質を単結 晶 を選び出した。電子ビームリソグラフイーを使って試料に電極パターンを描画し、金電極を作製 し た。試料と電気的接触を取るために電子ビームを試料上の電極に局所的に照射し、接触抵抗を大 幅に減少させることに成功した。
第 四章 では 、マ イ クロ サイ ズのSr2Ru04単結 晶 における電子輸送測定を行っ た。測定は希釈 冷 凍 機を 使用 し 、最 低温 度60mKまで 行っ た。 電気 抵 抗の 温度 特性 からSr2Ru04の 超伝 導転 移
(疋=1.6K)が観測された。次に、各温度で電流一電圧特性を測定した。ここで一般的を電流_電圧特 性 で は、 発生 電圧 レ が電 流Iに対して奇関数と菰る 。すをわちH十D=−レ卜Dで ある。驚くべき こ とに、廴以下のSr2Ru04の電流‐電圧特性は、電 圧レが電流川こ対して偶関数 とをることを発 見 した。これは、パリティの破れた電流−電圧特性である。この異常を結果は、交流測定や複数の 試 料 にお いて 再現 し た。 また、め面に垂直に磁場 を印加すると+4500e付近で、 発生電圧レが正 から負ヘ反転することを発見した。
第五章では、パリティの破れた電流‐電圧特性の起源に関する解釈を行った。まず、我々が測定し た 試料サイズは1〜10pmであり、これまでに報告さ れているカイラル単一ドメイ ンサイズと同程 度 であることから単一ドメイ ンに由来する現象を観測して いると考察した。外部磁場H= +4500e を 印加したとき、最も伝導率が上昇し、超伝導の振る舞いを示した。この結果よルクーパー対の時 間 反転対称性が破れ、自発的を磁場が生じていると解釈できる。また、外部磁場印加において発生 電 圧レの正負が反転している ことから、単一ドメインのカ イラリティを操作していると考えられ る 。次に、カイラル単ードメ イン上で電圧発生の起源を考 察した。カイラルp波超伝導体Sr2Ru04 に おいて試料端ではギャップレスの励起が可能である。また、その時励起される準粒子がマヨラナ フェルミオンであると理論的に指摘されている。我々のパリティの破れた電流―電圧特性の結果は、
試料端でのマヨラナフェルミオンの励起を観測したと考えている。
第六章では、本論文の研究成果を総括した。
以上、本研究はマイクロサ イズのSr2Ru04単結晶を用いて、固体物理系におけるマヨラナフウル ミ オンの探索を目的とし、パリティの破れた電流―電圧特性から試料端で励起されたマヨラナフェ ル ミオンを観測することに成功した。素粒子物理と固体物理の普遍数理構造から、我々の実験結果 から素粒子物理ヘ提言できる可能性がある。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査 教授 丹田 聡 副査 教授 田中啓司 副査 講師 浅野泰寛
副査 教授 網塚 浩(理学研究院)
副査 教授 矢久保考介
学位論文題名
Discovery of MajoranaFermionS inSr2Ru04SuperCOnduCtorS
(Sr2Ru04 超伝導体におけるマヨラナフェルミオンの発見)
素粒子物理の現象を表す理論的構造と固体物理の現象を表す理論的構造が同じ普遍数理構造を持 つことが示唆されている。例えば、素粒子のパイオンの崩壊確率は、量子的対称性の破れ(カイラ ルアノマリー)によって説明される。このとき理論形式にトポロジカル項(チャーン・ポントリャー ギン項)が付く。また、最近固体物理の2次元電子系グラフェンにおいて量子ホール効果が発見さ れた。 これら の現象は全く異なるエネルギースケールで起こり、一見関連しをい。しかし、グラ フェン は単位 格子のA格子とB格子から2成分擬 スピノ ール表 記がで き、相 対論的 を量子力学の 場として扱える。グラフェンにおける量子ホール効果は′Xリティアノマリーとして理論形式にトポ ロジカル項(チャーン・サイモン項)が付くことで説明可能である。以上のように次元の違いはあ るもの の素粒 子物理と固体物理においてトポロジカル項に関する普遍数理構造が明らかに教って きた。
現在、 ニュー トリノはその質量の発見によルマヨラナフェルミオンであることが有力視されて いる。しかし、まだ確定はしてい;をい。果たしてマヨラナフェルミオンは自然界に実在するだろう か。マヨラナフェルミオンとは、粒子と反粒子が同一視される粒子で、実数場のみで記述される。
素粒子物理において、パリティの破れたニュートリノの発見は現在の標準理論の構築に大きを寄与 をはたしている。もしマヨラナフェルミオンが実在すれば、トポロジカル項に関する普遍数理構造 から素粒子物理の未解決問題を解決できる可能性がある。これに対し、いくっかの固体物理系にお いてマヨラナフェルミオンの観測が示唆されている。本研究の目的は、実験室で固体物理系を用い てマヨラナフェルミオンを探索することである。
本論文は全六章から構成される。
第一章 では、 序論と して、 本研究の 背景と目的を述べた。さらに、今回用いたSr2Ru04超伝導 体のカイラル単一ドメインによる電子輸送測定の必要性を記述した。ミリメートルサイズの大きを 単結晶では、クーパー対の内部自由度によるドメイン構造が試料に形成され、Sr2Ru04の本質的を
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現象が平均化され観測できをい可能性がある。
第二章では、超伝導発見 から今日までのその後の発展について簡単に振り返った。特に、本研究 で用 いるSr2Ru04がス ピン 三重項および カイラルp波超伝導体である と示唆している実験結果に ついて記述し た。また、大きをSr2Ru04単 結晶で既に報告されている 電子輸送測定の結果をまと めた。
第 三章 では 、Sr2Ru04単 結晶作成から 電子輸送測定の方法までを述 べた。Sr2Ru04は固相反応 法によって作成した。この 作成法ではミリメートルサイズの大きを単結晶を作成する事は困難であ るが、マイク ロメートル程度のSr2Ru04で あれば十分作成できる。作 成したSr2Ru04を2−プロパ ノール溶液中で分散させ、 表面が酸化膜でコーティングされたシリコン基板上に滴下した。結晶性 の良い試料に電極を作製す るために組成分析および菊池線回折パターンの実験結果から良質を単結 晶を選び出した。電子ビー ムリソグラフイーを使って試料に電極パターンを描画し、金電極を作製 した。試料と電気的接触を 取るために電子ビームを試料上の電極に局所的に照射し、接触抵抗を大 幅に減少させることに成功した。
第 四章 では 、 マイ クロ サイ ズのSr2Ru04単 結晶 における電子輸送 測定を行った。測定は希釈 冷 凍 機 を使 用し 、 最低 温度60mKまで 行 った 。電 気抵 抗の 温 度特 性か らSr2Ru04の 超伝 導 転移
(廴ご1.6 K)が観測された。次に、各温度で電流―電圧特性を測定した。ここで一般的を電流‐電圧特 性では、発生電圧レが電流 川こ対して奇関数とをる。 すをわちW十D=―レく‑Iである。驚くべき ことに、疋以 下のSr2Ru04の電流ー電圧特 性は、電圧レが電流′に対 して偶関数とをることを発 見した。これは、′ミリティの破れた電流―電圧特性である。この異常誼結果は、交流測定や複数の 試料 にお いて 再 現し た。 また、め面に垂 直に磁場を印加すると+4500e付近で、発生電圧レが正 から負へ反転することを発見した。
第五章では、パリティの破れた電流‐電圧特性の起源に関する解釈を行った。まず、我々が測定し た試料サイズ は1〜10pmであり、これまで に報告されているカイラル 単一ドメインサイズと同程 度であることから単一ドメ インに由来する現象を観測 していると考察した。外部磁場H〓 +4500e を印加したとき、最も伝導 率が上昇し、超伝導の振る舞いを示した。この結果よルクーパー対の時 間反転対称性が破れ、自発 的顔磁場が生じていると解釈できる。また、外部磁場印加において発生 電圧レの正負が反転してい ることから、単一ドメイン のカイラリティを操作していると考えられ る。次に、カイラル単ード メイン上で電圧発生の起源 を考察した。カイラルp波超伝導体Sr2Ru04 において試料端ではギャッ プレスの励起が可能である。また、その時励起される準粒子がマヨラナ フェルミオンであると理論的に指摘されている。我々のパリティの破れた電流_電圧特性の結果は、
試料端でのマヨラナフェルミオンの励起を観測したと考えている。
第六章では、本論文の研究成果を総括した。
以上、本研究はマイクロ サイズのSr2Ru04単結晶を用いて、固体物理系におけるマヨラナフェル ミオンの探索を目的とし、 パリティの破れた電流―電圧特性から試料端で励起されたマヨラナフェ ルミオンを観測することに 成功した。素粒子物理と固体物理の普遍数理構造から、我々の実験結果 か ら 素 粒 子 物 理 ヘ 提 言 で き る 可 能 性 が あ る 。 よ っ て 工 学 博 士 の 授 与 に 値 す る 。
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