博 士 ( 工 学 ) 国 栖 広 志
学 位 論 文 題 名
水中トンネルに作用する流体カの評価法と 係 留 シ ス テ ム の 安 定 性 に 関 す る 研 究
学位論文内容の要旨
海峡の 水深が深く、対岸距離も比較的長い場合の渡海方法として水中トンネル という新たナょ構造形式が提案され実用化に向けて世界各地で研究が実施されてい る。 水中トンネルは過剰浮カを有する中空状のチューブを海底面で支持された係 留索 などによって海中に強制的に引き込み固定する構造である。中空部分を列車 や自 動車や人などが利用することから、構造物の規模は数メートルから数十ケー トル に達し、海中構造物としては従来のパイプラインやジャッケト式構造物の数 十セ ンチメートルから数メートルの規模とは比較にならない程大断面の構造物と なる。
従 来の研究では、水中トンネルのようにトンネル直径が水深の
20
%も達する大 断面の没水構造に研究はほとんどなく、土木工学としていまだ経験したことのナょ い構造物であり多くの課題が残されている。本研究では大断面の構造物が外洋に設置され場合、工学上重要ナょ課題である波 浪を 対象として、水中トンネルに作用する波力特性、動揺特性(トンネル変位、
速度 およ び加 速度 )な らび 係留 索に 働く 張力 特性 を対 象とし て研究を行った。
構 造物に作用する波カは一般に,慣性力,抗力,回折波カなどがある。回折波 カは 構造物の規模が波長に比べて大きいとき,波が構造物周囲に回り込むことに より が発生するカである。この波カは完全流体の非回転運動の条件を仮定するこ とにより,速度ポテンシャルを用いて求めることができる。
一 方,慣性力,抗力,揚カは構造物の規模が波の波長に比べ比較的小さいく,
人射波が構遣物によって変形しナよいときに支配的な波カである。慣性カは流体そ のも が有する加速度成分によって発生する波力成分と,構造物が流体におよばす カの 反作用として受けるいわゆる付加質量カとの合カである。加速度成分によっ て発 生する慣性カはポテンシャル理論から求めることができる,しかし、波浪に よっ て動揺する場合、付加質量カは波浪条件によって異なり解析的に解くことは 困難である。
抗カは流体の有する粘性に起因するカであり,完全流体の仮定では発生しない。
この カは構造物の表面の摩擦により流線の剥離や渦の発生に伴う後流域での圧力 低下 に伴ない発生する波カである。この波カは理論的に求めることが出来ず通常 実験から求める必要がある。
こ のように、水中トンネルに作用する波カは種々のものが考えられるが、本研 究で は数値計算および水理実験から水中トンネルに作用する波カが慣性カである ことを明らかにした。
っぎに、水中トンネルのようナよ水中に設置される浮遊式構造物を係留する場合、
それ らの安定性を確保するためには係留方式に対する動揺や係留索に発生する張 カを 十分把握することが重要である。本研究では大水深域におけるー形式である テン ショ ンレ グプ ラッ トホ ーム
(TLP)
にならって、係留方式は緊張係留とした。しかし、TLPは鉛直係留方式であるため横方向の拘束カが弱く水平方向への動揺が 大き い。そこで本研究では鉛直係留のほかに斜係留を用いたて水平方向の動揺を 抑制 する係留方式にっいても検討した。係留索で最も重要な課題は過大な波カが 作用 することによって発生する係留索の「たるみ亅であり、復元時にトンネル浮 カに よってもたらされる衝撃的な張力「スナップ荷重」の発生にともなう索の破 断で ある。そこで、本研究では作用波カおよびトンネルの構造条件から、係留索
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第
2
章で は先 ずポテ ンシ ャル 理論 を用 いた2
次元 境界 要素 法と3
次 元特 異点分 布法に対する波カの解析法を紹介し、この理論を用いて水中トンネルの基本的形 状に対する波力特性にっいて計算を行い、実験値との適合性のよいことを示した。また、水中トンネルの形状を楕円にした場合や設置水深を変化させたときの波力 特 性を 明ら かに した 。さ らに、3次元特異点分布法をもちいて斜め人射波に対す る波カっいて検討を行い直角入射の場合が波カとして最も厳しいことを示した。
一方、水理実験から水中トンネルに作用する波力特性にっいて検討した。実験 波 カの 評価 は、 流速 の2乗 に比例する抗カと流体の加速度に比例する慣性項の和 で示されるモリソン式を適用した。モリソン式で用いる項力係数と慣性力係数を 実測波カを、最小自乗法をもちいて算定し付加質量係数がK.C.数の関数で整理出 来ることを示した。また波カの実測値から慣性カと項カとの比を求め、水中トン ネルに作用する波カの領域にっいて検討した。そして、ポテンシャル理論から算 定される波カとモリソン式から算定される波カと実測波カとの比較を行い、いず れの計算式を用いても精度良く波カを算定可能であることを明らかにした。実測 波力波形から抗カと慣性カの大きさを比べた結果、慣性カが卓越していることを 明らかにした。また、不規則波を用いた実験と計算値から、最大波カは最大波高 が発生する時刻と同じであることを示した。
第
3
章 は水 中ト ンネ ルの動 揺と係留索に働く張力特性にっいて数値計算と水理実 験 によ り検 討を 行っ た。 係留 形式 はA(鉛直 係留 )、BおよびC係留(斜係留)の3
タイプで、規則波および不規則波に対して行った。まず水中トンネルの運動方程式を提示し、トンネル比重、減衰定数、トンネル のバネ定数がトンネルの動揺(トンネル変位、速度、加速度)に与える影響につ いて、時刻歴解析と周波数領域に対する数値解析法を用いて検討し、数値計算の 妥 当性 は各 係留 方法 に対 する固有周期にっいては2次元模型実験の結果と比較し た。また、減衰定数は水理実験から得るとともに、トンネルの変位によらずほば 一定であることを明らかにした。
A
係 留は 水平 変位 が大き くその大きさは波高に比例するが、その動揺周期は波 浪と構造物の固有周期との共振によって長周期の動揺が発生する。トンネルの直 径を変化させると係留索の「ゆるみ」を防止するためには鉛直波カの押し込みカ に対抗できる浮カの確保が必要である。B
係 留の 水平 変位 はA係 留に比べて1%以下と小さいが、変位を拘束するため係 留索には過大な張カが発生する。このため、係留索には「たるみ」が発生し、そ の原因はトンネル浮カによって発生する係留索の初期張カが波カによってゼロと なるためである。これを防ぐためにはトンネルの浮カを大きくすることや、係留 索 の角 度を 大き くす るこ とナ ょど によ って 対処 できる ことが明らかとなった。C
係 留はB
係留 に対 して 係留 索の 係留 角度 を大 きくし た場合であり、係留索の「 た る み 」 を
B
係 留 よ り さら に 発 生 を 抑 制 可 能 で あ る こ と を 明 ら かに した 。ー 137―
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学 位 論 文 審 査の 要 旨 教授
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水 中 ト ン ネ ル に 作 用 す る 流 体 カ の評 価法 と 係 留 シ ス テ ム の 安 定 性 に 関 す る 研 究
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第
1
章は本論 文の目的 ならびに 本論文で取り扱った波カと動揺に関する既往の 研 究と問題点を明確にするとともに、研究で対象とした範囲にっいての内容と構 成 にっいて 記述して いる。第
2
章 で は先 ず ポテ ン シ ャル 理 論を 用 い た2次元境 界要素法 と3次元特異 点分 布法に対 する波カ の解析法 を紹介し、この理論を用いて水中トンネルの基本的形 状に対する波力特性にっいて計算を行い、実験値との適合性のよいことを示した。また、水 中トンネ ルの形状 を楕円にした場合や設置水深を変化させたときの波力 特性を明 らかにし た。さら に、3次元特 異点分布 法をもち いて斜め入射波に対す る波カっ いて検討 を行い直 角人射の場合が波カとして最も厳しいことを示した。
一方、水 理実験か ら水中ト ンネルに作用する波力特性にっいて検討した。実験 波カ の 評 価は 、流速02乗 に比例す る抗カと 流体の加 速度に比 例する慣性 項の和 で示され るモリソ ン式を適 用した。モリソン式で用いる項力係数と慣性力係数を 実測波カを、最小自乗法をもちいて算定し付加質量係数がX.C.数の関数で整理出 来ること を示した 。また波 カの実測値から慣性カと項カとの比を求め、水中トン ネルに作 用する波 カの領域 について検討した。そして、ポテンシャル理論から算 定される 波カとモ リソン式 から算定される波カと実測波カとの比較を行い、いず れの計算 式を用い ても精度 良く波カを算定可能であることを明らかにした。実測 波力波形 から抗カ と慣性カ の大きさを比べた結果、慣性カが卓越していることを 明らかに した。ま た、不規 則波を用いた実験と計算値から、最大波カは最大波高 が発生する時刻と同じであることを示した。
第3章 は水中ト ンネルの動 揺と係留 索に働く 張力特性 にっいて 数値計算と水理実 験 に より 検 討を 行った。 係留形式 は
A(
鉛直係 留)、Bおよ びC
係留( 斜係留) の3
タイ プで、規 則波および 不規則波 に対して 行った。まず 水中トン ネルの運動 方程式を 提示し、トンネル比重、減衰定数、トンネル のバ ネ定数が トンネルの 動揺(ト ンネル変位、速度、加速度)に与える影響につ いて 、時刻歴 解析と周波 数領域に 対する数値解析法を用いて検討し、数値計算の 妥当 性は各係 留方法に対 する固有 周期にっ いては
2
次 元模型実 験の結果と比較し た。 また、減 衰定数は水 理実験か ら得るとともに、トンネルの変位によらずほば 一定 であるこ とを明らか にした。A
係留 は水平変 位が大きく その大き さは波高 に比例す るが、そ の動揺周期は波 浪と 構造物の 固有周期と の共振に よって長周期の動揺が発生する。トンネルの直 径を 変化させ ると係留索 の「ゆる みJを防止 するため には鉛直 波カの押し込みカ に対 抗できる 浮カの確保 が必要で ある。B
係留 の水平変 位はA係留に 比べて1
% 以下と小 さいが、 変位を拘束するため係 留索 には過大 な張カが発 生する。 このため、係留索には「たるみ」が発生し、そ の原 因はトン ネル浮カに よって発 生する係留索の初期張カが波カによってゼロと なる ためであ る。これを 防ぐため にはトンネルの浮カを大きくすることや、係留 索 の 角度 を 大き く す るこ と など に よ って 対 処で き る こと が 明 らか と なっ た。C
係 留はB
係 留に対 して係留 索の係留 角度を大 きくした場 合であり 、係留索 の「 た る み 」 を
B
係 留 よ り さ らに 発 生 を抑 制 可 能で あ るこ と を 明ら か にし た 。 第4章は 、各章にお いてそれ ぞれ得ら れた工学的に有意な結論を取りまとめて記 述した 。これを要するに、著者は水中トンネルに作用する流体カの評価法と保留シス テム の安定性に関する諸問題を解決したもので、港湾工学、海岸工学の進展に貢 献す るところ大 なるもの がある。
よっ て著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認め られ る。
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